JP2010532706A - 粒子を含む実質的に均一なエマルジョンを調製するための機器および方法 - Google Patents

粒子を含む実質的に均一なエマルジョンを調製するための機器および方法 Download PDF

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Abstract

油中水型エマルジョンを形成するための方法およびシステムを記載する。例えば、水相中に分散した複数の粒子を含有する第1の区画;油相を含有する第2の区画;第1の区画と第2の区画とを分離する多孔質層;および圧力を第1の区画に対して適用するための装置を含む機器を記載する。多孔質層表面に対して油相を移動させるステップと、同時に、粒子を含む水性組成物を多孔質層を通して流れる分散媒体中に押し出し、それによって、油相中に分散した、粒子を含有する水性組成物の液滴を形成するステップとを含む方法を記載する。水性組成物は、1以上の核酸の鋳型およびPCR試薬類等の核酸を増幅するための試薬類を含むことができる。第1および第2の主要表面、ならびに多角形、卵形、楕円形、亜鈴型、蝶ネクタイ型、およびそれらの不規則な形状から選択された横断面の形状を含む、少なくとも2つの真直ぐに通り抜ける孔を含む多孔質の仕切りを記載する。

Description

本願は、2007年5月18日に出願された米国仮出願第60/924,544号および2007年5月24日に出願された米国仮出願第60/924,664号に対する優先権の利益を主張する。これらの出願の各々は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
本明細書で使用するセクションの見出しは、組織化の目的に限られ、いずれの場合であっても本明細書に記載する対象を限定すると解釈してはならない。
分野
本出願は一般に、実質的に均一な油中水型エマルジョンを形成するためのシステムおよび方法に関し、このエマルジョンは、連続的な油相、および粒子に結合しているオリゴヌクレオチドを含有する水相の離散的な液滴を含む。
緒言
エマルジョンは、2つの非混和性の液体を組み合わせる、食品の調製、化学薬品、化粧品および医薬品のプロセスにおいて活用される。均一サイズのエマルジョン液滴を有するエマルジョンはまた、単分散エマルジョンとも呼ばれ、多分散エマルジョンよりも安定である。エマルジョン液滴の内部に含有される粒子によって、追加の特性をエマルジョンにもたらすことができる。
エマルジョンは、2つの非混和性の液体をボルテックスおよび撹拌することによって、または第1の非混和性の相を膜中の孔を通して第2の非混和性の連続的な相中に押し出すことによって調製することができる。いずれの過程においても、エマルジョン液滴のサイズおよびエマルジョンの安定性の変動が見られる。エマルジョンの均一性および安定性を改善するための多数の手順が開発されている。
Tadao Nakashimaらが最初に、エマルジョンを調製するためのシラス多孔質ガラス(SPG)膜の使用を報告した(非特許文献1;特許文献1(1987年))。水相を膜の孔を通過させることによって逆エマルジョン(油中水型)を調製するためには、少なくとも連続的な油相に面している膜表面が、疎水性でなければならない(非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。膜および内部の孔の表面の疎水性が、エマルジョンのサイズ、安定性および形成速度に対して影響を及ぼす。膜および膜の孔の内部表面の表面特性を変化させるための方法は、多種多様であり得る。
Nanomi Emulsification Systems(Enschede、オランダ)は、シリコンウエハを膜のために使用してトラックエッチング多孔質膜を調製する(J. Wissinkら、特許文献2)。縦軸に沿って補助的な構造を含む≧2μの直径を有する孔が、シリコンウエハ中に反応性イオンエッチングまたはその他のリソグラフィーの技法によって形成される。これに続いて、シラン試薬を用いて膜に対する化学蒸着(CVD)を実施して、孔の内部表面を含めた全ての膜表面を疎水性にする。水相を孔を通して押し出し、膜の反対側まで通過させる際には、疎水性によって水相は膜表面上に水たまりに代わって液滴を形成することができる。臨界圧力Pcが膜上の離散的な相の接触角cosθに比例するので、水相を孔を通して押し出すためには比較的高い圧力が必要であり、内壁が疎水性である場合、孔のうちのごく一部によって水相が膜を押し通るのが可能になるに過ぎず、その結果、形成速度が異なり、エマルジョン液滴のサイズが変動する(非特許文献5)。
米国特許第4,657,875号明細書 米国特許出願公開第2007/0227591号明細書
Tadao Nakashimaら、Ceram. Jpn. 1986年、21巻、408頁 C.−J. Chengら、J. Colloid Interface Sci. 2006年、300巻:375〜382頁 N. Yamazakiら、J. Dispersion Sci. & Tech. 2003年、24巻:249〜257頁 K. Suzuki、Reza Kenkyu 1993年、21巻:26〜31頁 C. Charcossetら、J. Chem. Tech. Biotech. 2004年、79巻、209〜218頁
概要
本実施形態により、複数の実質的に均一サイズのエマルジョン液滴(少なくとも1つのエマルジョン液滴は粒子を含む)を形成するための装置を開示し、この装置は複数の粒子を含む水相を含有する第1のチャンバー;水非混和性の液体を含む油相を含有する第2のチャンバー;ならびに第1のチャンバーと第2のチャンバーとを分離する仕切りであって、少なくとも第1の主要表面、第1の主要表面に対向する第2の主要表面、および少なくとも2つの、第1の主要表面を第2の主要表面に接続する画定された真直ぐに通り抜ける孔を含み、該第1の主要表面は第1のチャンバーの壁を形成し、該第2の主要表面は第2のチャンバーの壁を形成する仕切りを含み、前記水相が前記少なくとも2つの真直ぐに通り抜ける孔のうちの2つを通過して前記油相に至る際に、該水相は複数の離散的な実質的に均一サイズのエマルジョン液滴を形成し、その複数の液滴のうちの少なくとも1つは複数の粒子のうちの少なくとも1つの粒子を含み、該少なくとも1つの粒子は、少なくとも1つの、粒子に結合している核酸を含む。
また、別の実施形態では、実質的に均一サイズのエマルジョン液滴を形成するための第1の相を第2の相中に通過させる仕切りも開示し、この仕切りは第1の主要表面;第1の主要表面に対向する第2の主要表面;さらに多角形、卵形、楕円形、亜鈴型、蝶ネクタイ型およびそれらの不規則な形状からなる群から選択された横断面の形状、ならびに第1の主要表面と第2の主要表面との間の仕切りを横断する内壁を含む、少なくとも2つの真直ぐに通り抜ける孔を含み、第2の相中において第1の相を含む実質的に均一サイズのエマルジョン液滴を形成するように構成される。
さらに別の実施形態では、実質的に均一サイズのエマルジョン液滴を形成する方法を開示し、この方法は、仕切りの第1の主要表面と接触している複数の粒子を含む水相を仕切り中の少なくとも2つの真直ぐに通り抜ける孔を通して分散媒体中に押し出すステップと、同時に、仕切りの第2の主要表面に対して平行にかつそれと接触した状態で分散媒体を移動させるステップであって、第2の主要表面が第1の主要表面に対向しており、それによって、分散媒体中に分散した水相の実質的に均一サイズのエマルジョン液滴を形成するステップとを含み、複数の液滴は少なくとも1つの粒子を含む。
以下の説明において、特定の態様および実施形態が明らかになる。所与の実施形態が、本明細書に記載する全ての態様および特色を必ずしも有する必要はないことを理解されたい。これらの態様および実施形態は例示および説明のためのものに過ぎず、本発明を制限するものではないことを理解されたい。
前記の一般的な記載および以下の詳細な記載の両方は、例示および説明のためのものに過ぎず、請求する本発明を制限するものではないことを理解されたい。
本明細書中に組み込まれ、その一部を構成する付随の図面は本開示のいくつかの例示的な実施形態を例証し、記載と一緒になって特定の教示を説明する役目を果たす。
油相中に分散した少なくとも1つの粒子を含有する水相の均一サイズの液滴、すなわち、逆エマルジョンを形成するためのシステムおよび方法の改善が依然として求められている。したがって、連続的な油相と接触している膜表面が疎水性であり、一方、膜の内壁表面は親水性であって、その結果、逆エマルジョン液滴の調製のために水相を多孔質膜の仕切りを通して押し出すのに必要な適用圧力が低下するようになることが望ましい。水相に面する多孔質膜表面、および内壁表面が親水性の特徴を有し、かつ油相に面する膜表面が疎水性の特徴を有するように調製する方法によって、実質的に均一な逆エマルジョン液滴の形成が改善される。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅等の核酸の増幅を実施するための微小反応装置として粒子を含有する逆エマルジョン液滴を使用することができる。
本教示のこれらおよびその他の特色を本明細書に記載する。
以下に記載する図面は例証のためのものに過ぎないことを当業者であれば理解する。図面は、いずれの場合であっても本教示の範囲を制限するものではない。
図1はエマルジョンを形成するための装置の斜視図を示す。 図2は、エマルジョンを形成するための装置の横断面図を示す。 図3は、図2の横断面図を拡大した部分を示す。 図4Aは、真直ぐに通り抜ける孔の形状および仕切り内の孔の配置の例を示す。 図4Bは、真直ぐに通り抜ける孔の形状および仕切り内の孔の配置の例を示す。 図4Cは、真直ぐに通り抜ける孔の形状および仕切り内の孔の配置の例を示す。 図4Dは、真直ぐに通り抜ける孔の形状および仕切り内の孔の配置の例を示す。 図4Eは、真直ぐに通り抜ける孔の形状および仕切り内の孔の配置の例を示す。 図4Fは、真直ぐに通り抜ける孔の形状および仕切り内の孔の配置の例を示す。 図5Aは、例示的な孔の形状の横断面図を示す。 図5Bは、例示的な孔の形状の横断面図を示す。 図6は、図3の仕切りの表面処理の横断面図を示す。 図7は、図6の横断面図を拡大した部分を示す。 図8は、実質的に均一サイズの逆エマルジョンを形成する一般的な方法を示すブロック図を示す。
詳細な説明
本明細書を解釈するために以下の定義が適用され、適切である限り単数で使用する用語はまた複数も含み、逆も同様である。以下に記載するいずれかの定義が、参照により本明細書に組み込まれている任意の文献を含めた何らかのその他の文献中におけるその語の使用法と対立する場合、本明細書およびそれに伴う特許請求の範囲を解釈するためには、(例えば、その用語の元々使用されている文献中の)相反する意味が明確に意図されない限り以下に記載する定義が常に優先すべきである。本明細書および付随の特許請求の範囲において使用するように、単数形である「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、1つの指示対象に明白にかつはっきりと限定されない限り複数の指示対象を含むことに留意されたい。「または(or)」の使用は、別段の記載がない限り、「および/または(and/or)」を意味する。「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」および「含む(including)」の使用には、互換性があり、制限する意図はない。さらに、1つまたは複数の実施形態の記載が、「含む(comprising)」という用語を使用する場合、いくつかの特異的な場合においては、1つまたは複数の実施形態を「から本質的になる(consisting essentially of)」および/または「からなる(consisting of)」という言葉を使用して選択的に記載することができることは当業者であれば理解する。
本明細書で使用する場合、「膜」、「仕切り」、「層」および「被膜」という句には、互換性があり、制限する意図はない。
本明細書で使用する場合、「核酸」、「オリゴヌクレオチド」および「(1つまたは複数の)ポリヌクレオチド」という句には、互換性があり、制限する意図はない。
本明細書で使用する場合、「離散的な水相」、「水相」および「油非混和性の液体」には、互換性があり、制限する意図はない。
本明細書で使用する場合、「水相」という句は、油非混和性の液体を指す。
本明細書で使用する場合、「油相」という句は、水非混和性の液体を指す。本明細書で使用する場合、「連続的な相」、「連続的な油相」、「油相」、「水非混和性の液体」および分散媒体には、互換性があり、制限する意図はない。
本明細書で使用する場合、「離散的な相」という句は、油相内に乳化させた水相を指す。
本明細書で使用する場合、「分散相(dispersed phase)」および「分散相(disperse phase)」という句は、非混和性の液体内に乳化させた相を指す。説明すると、通常のエマルジョン中では、油相を水相中に乳化させ、水相中に「分散」したということができる。逆に、逆エマルジョン中では、水相を油相中に乳化させ、油相中に「分散」したということができる。
本明細書で使用する場合、「通り抜ける孔」という句は、多孔質層の第1の主要表面を第2の主要表面に接続する孔を指す。
本明細書で使用する場合、「真直ぐに通り抜ける孔」という句は、多孔質層の第1の主要表面を第2の主要表面に接続し、孔の壁には接触も交差もしない、それを通る直線を描くことができる孔を指す。また、「真直ぐに通り抜ける」孔は、「トラックエッチングした」孔も指す。
本明細書で使用する場合、「縦軸」(longitudinal axis)という句は、真直ぐに通り抜ける孔を通して描いた直線を指し、これは、真直ぐに通り抜ける孔の内壁には接触も交差もしない。
本明細書で使用する場合、「内壁」という句は、多孔質層の第1の主要表面を第2の主要表面に接続する、多孔質膜内の真直ぐに通り抜ける孔の表面を指す。
本明細書で使用する場合、「実質的に均一な」という句は、本明細書に開示する装置および方法によって形成したエマルジョン液滴のサイズおよび体積を指す。形成した複数のエマルジョン液滴は、サイズおよび体積に関して、少なくとも5%〜20%および少なくとも10%〜15%の変動係数パーセントを有する。
本明細書に記載するシステムおよび方法は、通常の、すなわち、水中油型エマルジョン、または逆の、すなわち、油中水型エマルジョンのいずれにも等しく適合できる。粒子に結合しているオリゴヌクレオチドを含有するエマルジョン液滴を形成するための、開示する方法は、オリゴヌクレオチドが結合している粒子を含有する水相を2つの非混和性の相を分離する、真直ぐに通り抜ける孔を有する仕切りを通して押し出すステップを含む。
膜エマルジョン装置によって形成したエマルジョン液滴は、単分散の、サイズおよび形状が実質的に均一な液滴であり得る。所望のエマルジョンを得るために適した膜表面、内壁、および孔の形状の改変形態および処理ならびに2つの非混和性の相を当業者であれば理解する。
水性の液滴中に封入された粒子を含む逆(すなわち、油中水型)エマルジョンを調製するためのシステムおよび方法を本明細書に記載する。核酸増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)の過程を実施するために水性の液滴を含有する粒子を使用することができる。
ここで、付随する図面に示されている、本開示のいくつかの例示的な態様を詳細に参照する。可能な限り同一の参照番号を図面全体にわたり使用して、同一または類似の部分を指す。
図1は、本開示の種々の例示的な態様による、単分散の実質的に均一サイズのエマルジョンおよび逆エマルジョンの形成において使用するための例示的な装置を模式的に示す。
機器は、連続的な油相42を含有する、少なくとも1つの区画40を含むことができる。油相42はまた、界面活性剤を含むこともできる。界面活性剤は、イオン性界面活性剤であっても、または非イオン性界面活性剤であってもよい。この区画40は、真直ぐに通り抜ける孔114を含む多孔質の仕切り100によって、水相32、すなわち、第1の組成物(その中には少なくとも複数の粒子210が懸濁している)を含有する少なくとも1つの区画30から分離することができる。
機器は、水相32を含有する区画30の内容物を加圧するための装置10を含むことができる。この装置10は、水相32を含有する区画30に開口部14において接続している、加圧されたガスを含有するタンクを含むことができる。装置はまた、多孔質の仕切り100に対して移動可能であり、水相32を含有する区画30の容積を減少させるために移動させることができる壁34を含むこともできる。また、水相32を含有する区画の内容物を加圧するための、その他の装置も使用することができる。
機器はまた、水相32の機械的な撹拌をもたらすために、水相32を移動させる装置を含むこともできる。機械的な撹拌部は、シャフト22を有するモーター20を含むことができ、シャフト22は、モーター20から、水相32を含有する区画30の内部に位置する翼板24に至る。
機器はまた、連続的な油相42を多孔質の仕切り100の表面104に対して移動させるための装置50を含むこともできる。この装置50は、連続的な油相42を多孔質の仕切り100の表面104上にポンプで送るように構成されたポンプを含むことができる。油相42の流れは、多孔質の仕切り100の第2の主要表面104に対して平行であり、水相32の、多孔質の仕切り100の真直ぐに通り抜ける孔114を通る流れ16に対して直交する層流44であってよい。装置はまた、乳化の間に連続的な油相42を撹拌するまたはそれに揺れを起こすように構成された撹拌装置または揺れを起こす装置を含むこともできる。揺れを起こす装置は、これらに限定されないが、ボルテックス装置、ロッカー、シェイカー、オービットシェイカーまたは超音波処理器を含めた、機械的な装置であってよい。このリストには制限する意図はなく、また、乳化の間に連続的な相を多孔質の仕切りの表面上に流すまたはそれ以外の様式で移動させる、その他の装置を使用することもできる。
機器はまた、実質的に均一サイズのエマルジョン液滴200を収集するためのリザーバ60を含むこともでき、エマルジョン液滴200は、区画40から、連続的な油相42によってリザーバ60に運ばれる。
図2は、本開示の種々の例示的な態様による、単分散の実質的に均一サイズの逆エマルジョン液滴200の形成において使用するための図1の例示的な装置の横断面を模式的に示す。図2は、逆エマルショの形成を示すが、当業者であれば、通常のエマルジョンを形成するために、図1および2の装置の改変形態を思い浮かべることができる。
機器は、連続的な油相42を含有する少なくとも1つの区画40を含むことができる。油相42はまた、界面活性剤を含むこともできる。界面活性剤はイオン性界面活性剤であっても、または非イオン性界面活性剤であってもよい。真直ぐに通り抜ける孔114を含む多孔質の仕切り100によって、水相32を含有する少なくとも1つの区画30からこの区画40を分離することができ、水相32中には複数の粒子210が懸濁している。複数の粒子210のうちの少なくともいくつかには、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド212が結合している。
連続的な相42は、水非混和性の液体(例えば、油相)を含む。例示的な水非混和性の液体として、これらに限定されないが、シリコン油類(これらに限定されないが、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、およびそれらのコポリマーを含む)、ペトロレウムスペシャル(petroleum special)(Fluka)、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素類、そのハロゲン化誘導体、およびそれらの組合せが挙げられる。脂肪族炭化水素類は、直鎖状であっても、または分枝状であってもよく、例として、これらに限定されないが、ヘキサン、イソオクタン、デカン、ドデカン、1−ドデセン、ペンタデカン、ヘキサデカン、石油エーテル類および鉱油類)、ヘプタデカン(bp302℃)、ヘプタメチルノナン(bp240℃)、ヘプタデセン(bp159℃/11mmHg)、ペルフロウロトリデカン(perflourotridecane)(bp196℃)、およびFLUORINERT(商標)Electronic Liquid FC−770(3M、St.Paul、ミネソタ州から入手)、芳香族炭化水素類(これらに限定されないが、ベンゼン、トルエン、クメン、アルキルベンゼン類およびアルキルアリールベンゼン類を含む)、エステル類(これらに限定されないが、フタル酸1,4−ジオクチルを含む)、フッ素化炭化水素類(これらに限定されないが、FLUORINERT(商標)FC−75(3M)およびCTSOLV−100(Asahi Glass)を含む)、ならびにその他のハロゲン化炭化水素類、さらに、これらに限定されないが、FOMBLIN(登録商標)、(d1.88〜1.92g/cm、粘度60〜1500cSt、Ausimont USA,Inc.(Thorofare、ニュージャージー州)から入手)、およびDEMNUM(商標)(Daikin Industries、日本)を含めた、ペルフルオロポリエーテル類であってよい。使用することができる、追加の水非混和性の液体には、これらに限定されないが、植物油(すなわち、飽和および不飽和の脂肪酸類および誘導体)等の天然に存在する油類が含まれる。
96℃超の沸点(bp)を有する水非混和性の液体であればいずれも、連続的な相42として使用することができることは、当業者であれば理解することができる。連続的な相の液体は、芳香族炭化水素、その誘導体、およびそれらの組合せであってよく、例として、これらに限定されないが、2,3,4,5,6−ペンタフルオロアニソール(bp139℃)、1,3,5−トリメチルベンゼン(bp166℃)、ヘキシルベンゼン(bp226℃)であってよい。連続的な液体の相は、エステルであってよく、例として、これらに限定されないが、テレフタル酸ジオクチル(bp400℃)およびフタル酸ジイソブチル(bp327℃)であってよい。連続的な液体の相は、0.5〜3.0g/cmの範囲の密度を有することができ、例として、これらに限定されないが、ヘキサン(d0.66g/cm、bp69℃)、ブロモベンゼン(d1.49g/cm、bp159℃)、ペルフルオロケロセン(d1.94g/cm、bp210〜240℃)、およびテトラブロモエタン(d2.97g/cm、bp190℃)を挙げることができ、0.5〜100mPa・sの範囲の粘度を有することができ、例として、これらに限定されないが、トリクロロエチレン(0.545mPa・s、bp87℃)、ペンタクロレタン(pentachlorethane)(2.254mPa・s、bp162℃)、ヘキサデカン(3.03mPa・s、bp287℃)、フタル酸ジメチル(14.4mPa・s、bp282℃)、および重質鉱油類(約70mPa・s)が挙げられる。
連続的な相42はまた、イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤を含有することもできる。連続的な相中で使用することができる、例示的な非イオン性界面活性剤として、これらに限定されないが、SPAN(商標)系界面活性剤、例えば、SPAN(商標)80、BRIL(商標)系界面活性剤、例えば、BRIL(商標)72、TETRONIC(商標)系界面活性剤、例えば、TETRONIC(商標)901、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(2e.o.)(Wako、日本)、およびABIL(登録商標)EM−90(Degussa)が挙げられる。この例示的なリストには制限する意図はなく、また、フッ素化部分を含むその他の界面活性剤を含めて、その他のイオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤を使用することもできる。イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤の親水親油バランス(HLB)の値は、1〜10、2〜6、3〜5等であってよい。
水相32は、試薬(例えば、核酸を増幅するための試薬)を含む水溶液であってよい。例示的な試薬として、これらに限定されないが、塩化マグネシウム、およびデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)、酵素等の生体分子、共有結合または非共有結合で結合したオリゴヌクレオチドを有するビーズまたは粒子、鋳型、緩衝剤、ならびにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の効率および/または特異性を増強するために有用である、その他の添加剤が挙げられる。水相32はまた、イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤を含有することもできる。非界面活性剤には、これらに限定されないが、TWEEN(商標)系界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)20、PLURONIC(登録商標)系界面活性剤(両親媒性ブロックコポリマー)、例えば、PLURONIC(登録商標)F38、SPAN(商標)系界面活性剤、例えば、SPAN(商標)20、これらに限定されないが、ポリ(ジメチルシロキサン−ブロック−エチレンオキシド)、ポリ(メチルフェニルシロキサン−ブロック−エチレンオキシド)、ポリ(ジメチルシロキサン−ブロック−2−ヒドロキシエチルアクリレート)、およびポリ(アルキレン−ブロック−2−ヒドロキシエチルアクリレート)を含めた両親媒性ジブロックコポリマーが挙げられる。水相32中のイオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤は、5〜40、10〜40、20〜40、5〜10、10〜20等の範囲の親水親油バランス(HLB)の値を有することができる。
水相32は、水溶性ポリマーを含むことができる。乳化の有効性を制御するためおよび/またはエマルジョンの安定性を改善するために、水溶性ポリマーを水相32に添加して、水相32の密度および/または粘度を調整することができる。例えば、水溶性の、臭素または塩素で置換したポリマーを水相32に添加して、水相の密度を増加させることができる。比較的大きな分子量、例えば、1,000,000〜10,000,000MWを有する水溶性ポリマーを添加して、水相32の粘度を増加させることができる。水相に添加することができる水溶性ポリマーには、これらに限定されないが、水溶性ポリアクリルアミド類、水溶性ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、水溶性ポリ(エチレングリコール類)、水溶性ポリ(エチレンオキシド類)、それらの誘導体、およびそれらの組合せが挙げられる。
装置は、水相32にも連続的な相42にも不溶性である固体の材料であってよい粒子210を含むことができる。図1および2に示すように、水相32は、膜100を通過し、得られたエマルジョン液滴200にまたはその内部に組み込まれる粒子210を含む。粒子は、例えば、これらに限定されないが、金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属水酸化物、ケイ素、二酸化ケイ素、シリカ、石英、ガラス、ガラス状炭素、炭素、ポリマー、またはそれらのブレンドおよび組合せ等の材料を含むことができる。粒子は、不規則な形状を有しても、または円柱、球体または円盤等の規則的な形状を有してもよい。粒子のサイズは0.1〜100ミクロンの範囲であってよい。粒子の表面は物理的または化学的に改変することができる。例えば、固定化ポリヌクレオチド212を含むように粒子の表面を改変することができる。固定化ポリヌクレオチドは、例えば、エマルジョンPCR(ePCR)反応におけるPCRプライマーとしての役目を果たすことができる。粒子の表面はまた、それに続く、例えば、バイオコンジュゲーション等の反応のために、その他の反応性の基を含有するように改変することもできる。粒子の表面はまた、アレイに共有結合または非共有結合で結合させるために改変することもできる。
水相中に捕捉した粒子が、乳化の間に膜の孔に詰まるのを阻止するために、膜100の孔110は、真直ぐに通り抜ける孔114であり得る。真直ぐに通り抜ける孔を有する膜は、例えば、Whatman(英国)、PALL Corporation(米国)、Micropore Technologies(英国)、およびNanomi Emulsification Systems(オランダ)から入手可能である。上記のリストには網羅的である意図はなく、また、真直ぐに通り抜ける孔を有する膜は、その他の供給元からも入手可能である。多孔質の仕切りの孔の一部または全部が、真直ぐに通り抜ける孔であってよい。さらに、膜を(例えば、スクリーンまたはハウジングによって)支持または補強することもできる。孔は、粒子が、乳化の間に捕捉されてしまわないようなサイズにすることできる。真直ぐに通り抜ける孔を有する膜を使用する膜乳化法を使用して、所望のサイズおよび実質的に均一な分布の液滴を生み出すことができる。
装置は、仕切り100を形成する膜を含むことができる。多孔質の仕切り100は、仕切りホルダー122内の仕切りホルダーの突起120によって支持される。仕切り100は、ある形状を有する画定された孔の開口部110を有する、少なくとも2つの真直ぐに通り抜ける孔114を有する。仕切り100は、水相32に面する第1の主要表面102および油相42に面する第2の主要表面104を含む。
図3は、装置内の仕切り100の拡大図の例を示す。仕切り100は、親水性であってよい第1の主要表面102および疎水性であってよい第2の主要表面104を含み、孔の内壁表面112は独立に、疎水性または親水性である。仕切り100は、親水性である第1の分散する水相32と疎水性である第2の連続的な相42とを分離する役割を果たす。第1の相32が、親水性の表面102から真直ぐに通り抜ける孔114を通過して疎水性の相42の中に入ると、実質的に均一サイズの逆エマルジョン液滴200が形成される。逆に、疎水性の相42が、疎水性の表面104から真直ぐに通り抜ける孔114を通過して親水性の相32の中に入ると、実質的に均一サイズの通常のエマルジョン液滴が形成されることが、当業者であれば分かる。
図4は、例示的な孔の形状の横断面および例示的な膜100の内部における孔の配置の両方を示す。孔110の形状および横断面において見られる孔110の形状は、多角形、卵形、楕円形、亜鈴型、蝶ネクタイ型、凧型、およびそれらの不規則な形状であってよい。多角形は、四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形の形状、およびそれらの不規則な形状であってよく、四辺形は、凧型、ひし形、不等辺四辺形、台形、二等辺四辺形、平行四辺形、長方形の形状、およびそれらの不規則な形状であってよい。多角形および蝶ネクタイ型の形状は、角の丸み(radius corner)111を有し得る、図5A。孔110の形状は、孔が、少なくとも4ミクロンから少なくとも16ミクロンまでの画定された長さ132、および少なくとも1ミクロンから少なくとも4ミクロンまでの画定された幅130を有するようになされる、図5B。
多孔質の仕切り100は、2〜98%の範囲に制御された多孔率および1.0〜200μmの範囲に制御された孔のサイズを有する多孔質膜であってよい。面積当たりの孔の数は、多数の構成があり得る。孔の密度の配置例には、43.89mm当たり91,500個または183,000個の孔、4mm当たり15,200個または30,400個の孔、2.1mm当たり4200個の孔、および1.8mm当たり7000個の孔がある。所与の面積当たりの孔の数は、孔と孔の間の距離(ピッチ)および孔の列と列の間の距離に依存する。孔と孔の間のピッチの距離は、20から、21、22、23、24、25、26、27、28、29および30μmまで、ならびにそれらの間であってよく、孔の列と列の間の距離は、10、15、20、25または30μm、およびそれらの間であってよい。膜の厚さは、25、30、45または50μm、およびそれらの間であってよく、一方、仕切りの非多孔質の領域の厚さは、400〜500μmである。孔の寸法の例には、1〜4μmの幅、4〜16μmの長さ、およびそれらの間の範囲がある。横断面において測定した孔(幅×長さ)の例として、1.5×7.3μm、1.7×7.5μm、2.5×8.6μm等が挙げられる。多孔質の仕切り100は、多孔質膜のセクション間または多孔質膜内で、例えば、突起部またはスクリーンを使用して補強することができる。
図5Aおよび図5Bは、角の丸み111を有する長方形の孔ならびに丸型突出形状の第1の孔109および第2の孔118を有する亜鈴型の形状の孔の両方の長さおよび幅を示す。孔110は、孔110の長さ132と該孔の幅130との比の測定値である縦横比を有する。これは、l/sとして示すことができ、ただし、「l」は、孔の長さであり、「s」は、孔の幅である。
孔の縦横比は、少なくとも3:1、少なくとも3.1:1、少なくとも3.2:1、少なくとも3.3:1、少なくとも3.4:1、少なくとも3.5:1、少なくとも3.6:11、少なくとも3.7:1、少なくとも3.8:1、少なくとも3.9:1、少なくとも4:1、少なくとも4.1:1、少なくとも4.2:1、少なくとも4.3:1、少なくとも4.4:1、少なくとも4.5:1、少なくとも4.6:1、少なくとも4.7:1、少なくとも4.8:1、少なくとも4.9:1、少なくとも5.0:1、少なくとも5.1:1、少なくとも5.2:1、少なくとも5.3:1、少なくとも5.4:1、少なくとも5.5:1、少なくとも5.6:1、少なくとも5.7:1、少なくとも5.8:1、少なくとも5.9:1、少なくとも6.0:1、少なくとも6.1:1、少なくとも6.2:1、少なくとも6.3:1、少なくとも6.4:1、少なくとも6.5:1、少なくとも6.7:1、少なくとも6.8:1、少なくとも6.9:1、少なくとも7.0:1、およびこれらの範囲内の間である。孔110の幅130は、少なくとも1.0マイクロメートルであり、最大では200マイクロメートルであり得る。可能なl×sの値は、3.3:1の縦横比の場合、6ミクロン×1.8ミクロン、4.4:1の縦横比の場合、7.9ミクロン×1.8ミクロン、および3.5:1の縦横比の場合、9.5ミクロン×2.7ミクロンである。
0.1ミクロンから100ミクロンまでの範囲のサイズを有する粒子が真直ぐに通り抜ける孔114中に詰まってしまい、したがって、第1の相が第2の相中に流れるのを遮断するようなことなく膜を通過できるように真直ぐに通り抜ける孔114を設計することができる。粒子210は、1.0〜4.0ミクロン、およびそれらの間のサイズを有することができ、仕切り100の孔は、1.0〜200ミクロン、およびそれらの間の孔110のサイズを有することができる。真直ぐに通り抜ける孔114は、仕切り100を横断する縦軸115を有すると説明することができる。図5Bは、横断面において、亜鈴型の形状の、丸型突出形状の孔の構造を示す。丸型突出形状の孔は、丸型突出形状の孔の軸としての中心部108、および中心部108に隣接し、縦軸115から半径方向に伸長する、少なくとも1つの丸型突出形状109を有する。丸型突出形状の孔は、真直ぐに通り抜ける孔114の中心の縦軸115に対して平行して存在し、かつ第1の丸型突出形状109に対して対称的に位置し、縦軸115から半径方向に伸長し、第1の丸型突出部109から、中心部108によって分離される第2の丸型突出部118を含むことができる。左右対称な丸型突出形状の孔の縦横比は、第1の丸型突出部と第2の丸型突出部とを分離する中心部108の幅130よりも大きい、第1の丸型突出部と第2の丸型突出部との間の長さ132から決定される、図5B。横断面において見られるように、中心部108の幅(s)130は、中心部108の長さ132に対して直角に測定し、長さ(l)132は、中心部108の幅(s)130に対して直角に、かつ孔の長さの対向する末端間に描いた想像上の直線の距離にわたって測定する。丸型突出形状の孔の例示的な例には、蝶ネクタイ型および亜鈴型の形状がある。丸型突出形状の(loped shaped)孔は、左右対称であっても、非対称であってもよい。丸型突出形状の孔は、少なくとも1つの丸型突出部を有する孔を含むことができる。
第1の相32、すなわち、親水性の相は、粒子210をさらに含むことができる。粒子は、ビーズ、円盤、立方体、ピラミッド、球体、多面体、およびそれらの不規則な形状から選択された形状を有することができる。粒子210はまた、磁性であってもよく、またはそれに結合しているビオチン/ストレプトアビジン様の部分を有してもよいし、当該粒子に結合しているオリゴヌクレオチド212をさらに含んでもよい。水相32は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するための試薬をさらに含むことができる。単分散の実質的に均一サイズのエマルジョン液滴200の逆エマルジョンの内部の離散的な相214の内部でPCR反応を起こすことができる。PCR試薬は、緩衝剤、塩化マグネシウム等の塩、少なくとも1つのプライマー、dNTP、鋳型、ポリメラーゼ、およびエマルジョン液滴200の内部の粒子210に結合しているオリゴヌクレオチド212の増幅のための、その他の試薬類を含むことができる。
膜をポリマーから作製することができる。例示的なポリマーとして、これらに限定されないが、ポリ(エーテルスルホン)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ならびにその他のフッ素化ポリマー類および全フッ素置換されたポリマー類が挙げられる。ポリマーの膜表面を(例えば、ナノメートルスケールで)粗面化することができる。表面の粗面化は、機械的または化学的に達成することができる。例えば、超疎水性を達成するために、多孔質の仕切りの表面を酸素プラズマによって粗面化することができる。また、多孔質の仕切りの表面を疎水性にする、その他の方法を利用することもできる。この型の方法が、Liら、Chem. Soc. Rev.、2007年、36巻(8号)、1350〜1368頁に開示されている。
膜はまた、例えば、これらに限定されないが、ソーダ石灰ガラスまたはシラスガラス等のガラスから作製することもできる。膜はまた、例えば、ステンレス鋼または別の金属合金の薄い金属箔であってもよい。膜はまた、ケイ素から作製することもできる。膜はまた、(例えば、シリカもしくはアルミナの粉末を焼結することによって作製した)シリカもしくはアルミナの膜であっても、または多孔質のセラミックの膜であってもよい。多孔質の仕切りの表面を物理的または化学的に改変して、その親水性を調整することができる。
フォトリソグラフィー、化学エッチング、および反応イオンエッチング、RIE)を使用して(トラックエッチングした)多孔質ケイ素膜を作ることができる。そのような方法は、当業者にはよく知られている。1.5〜10μmの穴を有するフォトマスクを使用して、下部の金の層を化学的にエッチングする。それに続くステップでは、反応性イオンエッチングによって、膜のバルクに穴を開ける。
別の実施形態では、仕切り100の表面102および104は、両面が疎水性もしくは親水性であっても、または独立に疎水性もしくは親水性であってもよい。例えば、フォトマスクをケイ素膜表面102または104の上に置くためにフォトリソグラフィーの技法を使用し、真直ぐに通り抜ける孔114を形成するためにケイ素膜を化学的に処理し、個別に親水性および疎水性の表面102および104、または共に親水性または疎水性の表面102および104を得るために、それぞれの表面を段階的にシリル化して、仕切り中に孔を形成する。真直ぐに通り抜ける孔114の内壁112は、マスクされていない表面とともにその表面113を改変することができる。
図6は、逆エマルジョンを形成するための、多孔質の仕切り100の可能な表面処理を示す。仕切りの第1の主要表面102を化学的に改変して、表面102および内壁表面112の両方を親水性にすることができる。第2の主要表面104をマスクによって全体的(孔の開口部110を含む)に覆って、表面102および112に対する化学処理の場合のバリアを作製することができる。そのような処理には、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)部分またはポリ(エチレングリコール)(PEG)部分の、ケイ素および二酸化ケイ素等の表面への化学的な結合(以降、「ペグ化」と呼ぶ過程)が含まれる。油相に面する第2の主要表面104を疎水性にするための化学処理に対して感受性とすることによって、表面104を処理することができる。
図7に示すように、貨幣金属107、例えば、金、または当業者に既知のその他の材料の層を適用する調製において、接着増強剤140、例えば、これに限定されないが、クロムの層を適用することによって、第2の主要表面104を化学的な表面の改変のために調製することができる。貨幣金属の例として、これらに限定されないが、銅、ニッケル、金、白金、青銅および亜鉛が挙げられる。この例示的なリストには、制限する意図はなく、また、当業者に既知のその他の金属を使用することもできる。裸の金表面107に対して、ペルフルオロアルキルチオールのアルキルチオールを使用してチオール化を行い、その表面を疎水性106にすることができる。その他の硫黄含有化合物、例えばこれらに限定されないが、ジアルキルスルフィド類およびそのフッ素化バージョンならびにチオール基および/またはジスルフィド基を含むその他のオリゴマー化合物およびポリマー化合物を使用して、金表面を疎水性にすることができることは、当業者であれば理解することができる。種々の型の直鎖アルキルチオール類および分枝アルキルチオール類は、米国特許第5,395,550号(1995年)に従って合成することができる。全フッ素置換されたチオール化合物は、(C. S. Rondestvedtら、J. Org. Chem. 42巻:2680〜2683頁(1977年))によって報告されている手順に従って合成することができる。これらの参照文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。金のチオール化の典型的な例を以下に示す。
Figure 2010532706
金表面107を疎水性106にするためのチオール化の後、孔114の内部の内壁表面112を含めた残りの表面102をペグ化して、親水性113とすることができる。
表面102および112の表面ペグ化は、約5〜約10000個の反復単位、例えば、約6〜約300個の反復単位、または例えば、約10〜約200個の反復単位を含むω−メトキシ−ポリ(エチレンオキシド)、MeO−PEO部分またはポリ(エチレングリコール)、PEG部分を含むモノ−、ジ−、またはトリ−アルコキシシランを用いて実行することができる。当業者であれば、所望の表面の特色を達成するための、PEO部分またはPEG部分の反復単位の数を決定することができる。
本開示によれば、表面をペグ化するために、種々の反応を起こすことができる。ペグ化は、本明細書において具体的には論じないが、本発明の範囲に属する、多くのその他の反応によって達成することができることは、当業者であれば理解する。以下の反応は、ケイ素基材上における、MeO−PEO部分を有するトリメトキシシランを使用する表面ペグ化の例である。
Figure 2010532706
図7は、実質的に均一サイズの逆エマルジョン液滴の形成を促進するための、仕切り100表面の表面処理の例を示す。第1の主要表面102および真直ぐに通り抜ける孔114の内壁112に対してペグ化を行い、第1の主要表面および真直ぐに通り抜ける孔114の内壁表面113を親水性103にする。例示的なペグ化のプロトコールが、US20060091015A1(2006年)およびUS2007009566A1(2007年))に教示されており、それぞれの参照文献全体が、参照により本明細書に組み込まれている。チオール基またはジスルフィド基を含むPEGまたはPEOを用いて金表面107を親水性にすることができ、アルキルアルコキシシランまたはペルフルオロアルキルアルコキシシランを用いて残りの表面102および112を疎水性にすることができ、その結果、通常のエマルジョンの調製のための膜が得られることは、当業者であれば理解する。
図1および図2に示すように、外圧16を粒子210が懸濁している水相32に適用すると、水相32は、膜100の真直ぐに通り抜ける孔114の経路を通って、連続的な相42中に押し出される。連続的な相42は、流れている44(例えば、渦巻いている)であり得、膜100の表面104を横切って流れ、それによって、被包されている粒子210を有するまたは有しない液滴200をリザーバ60まで運ぶことができる。あらかじめ決定した孔のサイズを有する所与の膜の場合、これらに限定されないが、水相に対して適用する圧力、水相の粘度、連続的な油相の粘度、連続的な相の流れによって生じるせん断力、孔110の縦横比、ならびに使用する(1つまたは複数の)界面活性剤の性質および濃度を含めた一連のパラメータによって液滴のサイズを制御することができる。
さらに、多孔質膜100の表面の親水性および疎水性はまた、液滴、すなわち、サイズ、形成、形成速度および均一性に影響を及ぼすこともできる。したがって、逆エマルジョンの調製のために適用する圧力を低下させるためには、連続的な油相と接触している膜表面は、疎水性であり、一方、内壁表面は、親水性であることが望ましい。
Figure 2010532706
例えば、水相に面する表面103が親水性であり、かつ内壁表面113も親水性であれば、全ての表面が疎水性である多孔質膜と比較して、粘度および(1つまたは複数の)用いる界面活性剤等のその他の変数が一致している場合、より低い適用圧力でも、水相32の多孔質膜100の通過が促進される。
離散的な液滴200はそれぞれ、試薬類をその分散している水溶液214中に含み、粒子210をその中に封入しており、この液滴200を使用してポリメラーゼ連鎖反応(例えば、エマルジョンPCR)または連結反応等の反応を実施することができる。エマルジョンPCRのプロトコールは、Williamsら、Nature Methods 3巻(7号):545〜550頁(2006年);Diehlら、Nature Methods 3巻(7号):551〜559頁(2006年);およびMillerら、Nature Methods 3巻(7号):561〜570頁(2006年)に記載されている。
本明細書に記載する乳化の機器および方法を使用して実質的に均一な液滴サイズを有する油中水型エマルジョンをもたらすことができる。真直ぐに通り抜ける孔の内部表面を改変して親水性にすると、水相を膜を通して押し出すのに必要な圧力が低下する。さらに、大部分の孔は、水相の、油相中への通過、したがって、液滴の形成を促進するために使用でき、機能する。この結果、エマルジョンの形成速度が改善され、より均一なサイズの液滴が生成し、液滴サイズの分布が改善される。横断面において見られる、4対1超の縦横比を有する改変した孔の形状はまた、均一サイズの、再現性のある逆エマルジョン液滴の形成の簡素化も促進し、逆エマルジョン液滴の形成速度も増強する。
粒子が液滴中に封入されており、その後の反応(例えば、PCR)を液滴の内部で実施する適用においては、実質的に均一な液滴サイズによって、結果の信頼性を改善することができる。例えば、均一な液滴サイズによって、全ての粒子が、ほぼ同一の全含有量の反応物を含有する環境によって囲まれる可能性が改善され、それによって、より均一な反応結果を液滴中で得ることができる。さらに、全ての液滴が実質的に均一サイズであると、単一の粒子を有する液滴がポアソン分布モデルに従うエマルジョン生成システムを得ることができる。液滴のサイズが、広い分布範囲にわたって変動すると、エマルジョン生成システムの、ポアソンモデルからの、複雑なかつ予測できない様式での逸脱が生じ、結果の予測可能性に悪影響を及ぼす。分布範囲が変動すれば、結果も変動し、結果の予測は経験的な方法によらざるを得ない。
本明細書に記載する方法は、in vitroにおけるタンパク質類およびRNA類の発生(例えば、米国特許第6,489,103B1号を参照されたい)、無細胞クローニング、ならびに配列決定を含めた多様な有望な適用例において使用することができる。これらの技法は、DNAまたはRNAの断片の多種多様なコレクションを相互に単離して一連の増幅試薬類または改変試薬類を使用して増幅または改変する任意の適用例において使用することができる。
多くの改変物、代替物および等価物が可能であることは、当業者であれば理解する。全てのそのような改変物、代替物および等価物は、本明細書に包含されるものとする。
(実施例1)
多孔質のケイ素の層の表面改変
上記に記載したように、多孔質の仕切りは多孔質のケイ素の層であってよい。多孔質のケイ素の仕切りの表面を改変して疎水性とすることができる。疎水性表面を有する多孔質のケイ素の仕切りは、疎水性表面が連続的な油相に面する状態で、本明細書に記載する機器中で使用することができる。
多孔質のケイ素の層(膜)の表面は、自然の酸化物または化学的手段によって産生させた酸化物の表面の層を含有することができる。この酸化物の表面の層をアルキルアルキルシランおよび/またはフッ素化アルキルシラン(1)を用いて改変して、疎水性の特徴を有する表面を得ることができる。
−Si(R(R (1)
式中、
=C2n+1またはCHCH(CFCFであり;
=C2q+1であり;
=ORまたはClであり;
X=0〜2であり;
x+y=3であり;
nおよびmは独立に、4〜25の整数であり;かつ
q=1〜5である。
シリル化すると、表面のフッ素化アルキル基により表面が疎水性になる。これらのフッ素化アルキル基はまた、TEFLON(登録商標)AFまたはCYTOP等、全フッ素置換されたポリマーの追加の上面被覆の接着性を増強するためのつなぎの層としての役割も果たすことができる。それらの構造を以下に示す。
Figure 2010532706
これら2つの全フッ素置換されたポリマーは、全フッ素置換された炭化水素の溶媒に可溶であり、その溶液を表面上にスピンキャスト、浸漬被覆またはスプレーして(spayed)、表面の疎水性を改善することができる。これらのポリマーの単層をナノメートルスケールの粗さを有する表面上に被覆することによって、超疎水性の表面を達成することができる(Liら、Chem. Soc. Rev. 36巻(8号):1350〜1368頁(2007年))。
以下の手順は、ケイ素のウエハ/膜の表面改変のために利用することができる代表的な手順である。
(実施例2)
表面の化学的改変に先立つ前処理ための手順
鏡面を有するケイ素ウエハまたは多孔質ケイ素膜、例えば、17mm×17mmを30mlの1.0%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)中で、20〜60分間超音波処理することができる。次いで、ウエハ/膜を脱イオン水を用いて十分に濯ぐことができる。それに続いて、ウエハ/膜を5mLの29%NHOH、5mlの30%H、および20mLのDI水の混合液中で、20〜60分間超音波処理することができる。次いで、これをDI水を用いて十分に濯ぐことができる。次いで、ケイ素のウエハ/膜を5mLの38%HCl.、5mLの30%H、および20mLのDI水の混合液中で、20〜60分間超音波処理し、DI水を用いて十分に濯ぐことができる。次いで、ケイ素のウエハ/膜を窒素を用いて乾燥し(例えば、送風乾燥し)、即時に使用することができる。前処理したウエハ/膜の場合、典型的な水に対する静的接触角(2μLの水、マイクロピペットにより手作業で置く)は、≦10度である。
(実施例3)
アルキルシラン試薬類を使用する表面の化学的改変のための手順
35mlの100%EtOH中に、1.0mLのデシルトリエトキシシランを添加し、撹拌して溶解させることができる。次いで、前処理したケイ素ウエハまたは多孔質ケイ素膜をこのシラン溶液中に、(例えば、オービットシェイカーを用いて)撹拌しながら30分間浸すことができる。次いで、ウエハ/膜を取り出して、100%エタノール中に一時的に浸漬することができ、過剰な溶媒を振り落とす。次いで、ウエハ/膜を110℃で20分間硬化させることができる。アルキルシリル化したチップの場合、典型的な水に対する静的接触角(2μLの水、マイクロピペットにより手作業で置く)は、約90度である。
(実施例4)
フッ素化シランを使用する表面改変のための手順
ねじ蓋を有する15mlのガラス製バイアル中に、4mLのフッ素化された溶媒、例えば、ペルフルオロ−(2−ペルフルオロ−n−ブチル)テトラヒドロフラン(FC−75、3Mから入手)、および0.5mLのフルオロシリル化試薬、例えば、(ヘペタデカフルオロ(hepetadecafluoro)−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシランまたは(ヘペタデカフルオロ(hepetadecafluoro)−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)ジメチルクロロシラン(Gelestから入手)を混合して溶解させることができる。前処理し、送風乾燥した鏡面を有するケイ素ウエハまたは多孔質ケイ素膜をこのシラン溶液中に、時折撹拌しながら20分間浸すことができる。次いで、ウエハ/膜を取り出し、過剰なシラン溶液を振って取り除き、窒素を用いて乾燥する(例えば、送風乾燥する)ことができる。次いで、チップを110℃で20分間硬化させることができる。フルオロシリル化したケイ素のウエハ/膜の場合、典型的な水に対する静的接触角(2μLの水、マイクロピペットにより手作業で置く)は、約110度である。
(実施例5)
全フッ素置換されたポリマーを用いてフルオロシリル化されたケイ素のチップを被覆するための手順
全フッ素置換されたポリマー、例えば、TEFLON(登録商標)AF−1600(DuPontから入手)またはCYTOP(Asahi Glassから入手)の、0.5%w/v溶液は、フッ素化された溶媒、例えば、FC−75(3Mから入手)またはCTSOLV−180(Asahi Glassから入手)を使用して調製することができる。フルオロシリル化された鏡面を有するケイ素ウエハまたは多孔質ケイ素膜をこの溶液中に一時的に浸漬し、過剰な溶液を振り落とし、被覆されたウエハ/膜を110℃で20分間硬化させることができる。被覆されたウエハ/膜の場合、典型的な水に対する静的接触角(2μLの水、マイクロピペットにより手作業で置く)は、約120度である。
(実施例6)
多孔質ケイ素膜の表面を親水性にするための溶液ペグ化のための一般的な手順
典型的には、多孔質ケイ素膜は、ペグ化に先立って前処理する。膜を有機溶媒、例えば、J.T.Bakerから入手するPRS−3000(商標)Positive Photo resist Stripper中で超音波処理することによって、フォトレジストを除去した後、表面を多量のエタノールを用いて十分に濯ぎ、窒素を流しながら送風乾燥し、次いで、対流式オーブン中、110℃で30分間焼く。次いで、清浄したケイ素膜を実施例2に従って処理する。前処理したケイ素膜をペグ化のために即時に使用した。
Figure 2010532706
35mLの空洞、および底部に、17mm×17mmのサイズの多孔質ケイ素膜10枚を垂直な位置で保持するためのスロットを有するように構築したTEFLON(商標)の箱を溶液ペグ化のために使用した。このTEFLON(商標)の箱の寸法および容量をスケールアップして、より多くの膜を保持することができる。膜をTEFLON(商標)のペグ化用の箱の中に置いた後、ゴム製の中隔で蓋をした入口および出口を含有する気密キャップが元に戻され密封された。次いで、超純粋アルゴンを用いて、1分当たり500mLで2分間ペグ化用の箱をパージした。30mLの無水テトラヒドロフラン(THF)中の0.5mLの2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、MW:5,910Da(Nektar、Huntsville、アラバマ州)の溶液をシリンジを使用して添加した。これに続いて、1.0mLのトリエチルアミンを添加した。密封したペグ化用の箱をCole−Parmer Rocking Platform上、55rpmで揺り動かした。20時間揺り動かした後、膜を取り出し、THFを用いて手早く濯ぎ、窒素を流しながら送風乾燥し、対流式オーブン中、110℃で10分間焼いた。蓋をしたペトリ皿中に周囲条件下でペグ化した膜を使用まで保った。Kruss(Matthews、ノースカロライナ州)から入手したDrop Shade Analysis System DSA100を使用して水に対する静的接触角を測定した。3つの無作為に抽出した試料から、全部で12個のデータポイントを得た。水に対する静的接触角の平均は、32.1度であり、標準偏差は、0.5度であった。
(実施例7)
金蒸着に先立つケイ素膜のメルカプトシリル化
多孔質ケイ素膜を拭き取り、次いで、洗浄瓶を使用して分析グレードのアセトンを用いて濯ぐことによって調製する。次いで、膜を0.5wt%のTriton X−100を有するMilli−Q水中で、15分間超音波処理し、次いで、多量のMilli−Q水を用いて濯ぎ、次いで、窒素を用いて送風乾燥してから使用する。
改変を加えたA. Rossら、J. Mater. Chem.、13巻:722〜726頁(2003年)の方法を用いて膜のシリル化を行う。90.1μLの3−メルカプトプロピル(メチル)ジメトキシシラン、6.6μLのヘキシルアミン、および100mLのトルエンの新鮮な溶液を調製し、窒素下で混合する。この溶液中に膜を15分間浸す。膜を溶液から取り出し、HPLCグレードのトルエンを用いて濯ぎ、Nを流しながら送風乾燥した。シリル化された膜を金蒸着のために即時に使用した。
(実施例8)
金表面を疎水性にするためのチオアルキル化のための一般的な手順
金層の添加を含めた、化学的な表面改変のために、クロム等の接着増強剤を適用することによって多孔質ケイ素膜の表面を調製する。金を蒸着の過程によって沈積させることができ、次いで、チオール化をアルキルチオールまたはペルフルオロアルキルチオールを使用して行って、表面を疎水性にする。
(実施例9)
金表面を親水性にする一般的な手順
最初に、ケイ素基材に結合したOH基を用いてシラノール基の表面密度を増強するために、金表面をPiranah溶液を用いて清浄する。続いて、シリル化の過程を行って、金層を沈積しようとする、多孔質ケイ素膜の表面を処理する。メルカプト含有シリル化剤(Gelest,Inc.から入手)を膜表面上のOH基と反応させると、表面に硫化水素基(HS)が組み込まれる。シリル化の過程は、金の、多孔質ケイ素膜に対する良好な接着を最終的にもたらす。これは、形成されたHS基(例えば、メルカプト基)が、金と反応し、金との化学結合を形成することによる。シリル化後、金を基板上に蒸着の過程によって沈積する。メルカプト官能基はまた、透明な金層の、膜表面に対する強力な接着ももたらす。これは、共有結合が、沈積した金と硫黄(S)との間に形成されることによる。
次いで、沈積した金層に対してペグ化の過程を行って、金表面を親水性にする。メルカプトで官能化されたポリ(エチレングリコール)(分子量:5,723Da、Nektarから入手)を含有するテトラヒドロフラン(THF)の水溶液に金表面を曝す。メルカプト基が、金層と、硫黄(S)の結合を介して強力な共有結合を形成する。得られた金の表面層は、金に結合したポリ(エチレングリコール)基(PEG)を有する。
(実施例10)
仕切り内の真直ぐに通り抜ける穴の調製
当業者に知られている通常の化学的な慣行を使用して、ケイ素のウエハまたはケイ素の仕切りが、真直ぐに通り抜ける孔を含むように作ることができる(多孔質膜)。例えば、厚さ30〜50ミクロンの間の上部のケイ素の層を有するシリコン−オン−インシュレータ(SOI)ウエハから開始し、フォトレジスト(PR)マスクを上部表面上にスピンする。このケイ素の層は、2ミクロンの酸化物の層の上に存在し、この酸化物の層は、350〜450ミクロンのケイ素の層の上にある。フォトリソグラフィーを実施して、孔の形状、密度およびレイアウトに関するPRマスクのパターンを生成する。乾式反応性イオンエッチング(DRIE)を上部の層に行って、上部の30〜50ミクロンのケイ素の層を下の酸化物の層に達するまでエッチングする。この状態では、ケイ素は、PRによって被覆されていない。次いで、このPRマスクを取り除き、第2のPRマスクをSOIウエハ(表面の厚さは350〜450ミクロンである)の裏側に適用し、フォトリソグラフィーを実施して、仕切りの膜(すなわち、多孔質の領域)に関するPRマスクのパターンを生成する。DRIEを使用して、350〜450ミクロンのケイ素の層を上の酸化物の層に達するまでエッチングして、それに続いて、マスクを取り除く。次いで、ケイ素のウエハまたはケイ素の仕切りをフッ化水素酸中に浸漬して、酸化物の層を取り除くと、上部のケイ素の層の中の孔が、厚いケイ素の層の内部に開通し、仕切りの多孔質膜領域が形成される。
(実施例11)
連続的な相および水相の調製
連続的な相は、鉱油またはその他の適切な溶媒中の4〜10wt%SPAN−80および0.2〜1.5wt%TWEEN−80をそれぞれ含むことができる。以下の表に、1〜2×10個のビーズ、例えば、PCR反応における使用のための1.6〜1.7×10個のP1ビーズを含有する水相の組成を示す。P1およびP2は、プライマーを指定している。水相は、必要に応じて、スケールアップすることができる。
Figure 2010532706
上記の手順は、表面が、これらに限定されないが、穴、真直ぐに通り抜ける穴、柱(post)、柱(pillar)、スパイク、溝、くぼみ、刻み目またはフラクタルの構造を含む、人工的な造作を含むケイ素のウエハ/膜またはチップに適用できることは、当業者であれば理解する。ケイ素のウエハ/マスクの表面はまた、機械的または化学的に粗面化して、ナノメートルスケールからマイクロメートルスケールまでの表面粗さを有することができる。
前記の明細書は、例証のために提供した実施例と共に、本発明の原理を教示するが、当業者であれば、本開示を読み取ることによって、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の点で、種々の変形物を作製することができることを理解する。

Claims (24)

  1. 複数の実質的に均一サイズのエマルジョン液滴を形成するための装置であって、少なくとも1つのエマルジョン液滴は粒子を含み、
    a.)複数の粒子を含む水相を含有する第1のチャンバー;
    b.)水非混和性の液体を含む油相を含有する第2のチャンバー;ならびに
    c.)該第1のチャンバーと該第2のチャンバーとを分離する仕切りであって、少なくとも第1の主要表面、該第1の主要表面に対向する第2の主要表面、および少なくとも2つの、該第1の主要表面を該第2の主要表面に接続する画定された真直ぐに通り抜ける孔を含み、該第1の主要表面は、該第1のチャンバーの壁を形成し、該第2の主要表面は、該第2のチャンバーの壁を形成する仕切り
    を含み、
    該水相が、該少なくとも2つの真直ぐに通り抜ける孔のうちの2つを通過して該油相に至る際に、該水相は、複数の離散的な実質的に均一サイズのエマルジョン液滴を形成し、該複数の液滴のうちの少なくとも1つは、該複数の粒子のうちの少なくとも1つの粒子を含む装置。
  2. 前記画定された孔が、ある横断面の形状を有する、請求項1に記載の装置。
  3. 前記横断面の形状が、多角形、卵形、楕円形、亜鈴型、蝶ネクタイ型、凧型、およびそれらの不規則な形状を含む、請求項2に記載の装置。
  4. 前記横断面の形状が、少なくとも1.0〜4.0マイクロメートルの最小孔寸法を含む、請求項2に記載の装置。
  5. 前記横断面の形状の孔が、少なくとも4対1の縦横比を有する、請求項3に記載の装置。
  6. 前記第1の主要表面および前記第2の主要表面のうちの少なくとも1つ、ならびに前記少なくとも2つの真直ぐに通り抜ける孔のうちの2つが、少なくとも1つの疎水性表面または少なくとも1つの親水性表面を含む、請求項1に記載の装置。
  7. 実質的に均一サイズのエマルジョン液滴を形成するための、第1の相を第2の相中に通過させる仕切りであって、
    a.)第1の主要表面;
    b.)該第1の主要表面に対向する第2の主要表面;ならびに
    c.)少なくとも2つの真直ぐに通り抜ける孔であって、それぞれが、多角形、卵形、楕円形、亜鈴型、蝶ネクタイ型およびそれらの不規則な形状からなる群から選択された横断面の形状、ならびに該第1の主要表面と該第2の主要表面との間の仕切りを横断する内壁を含む、少なくとも2つの真直ぐに通り抜ける孔
    を含み、
    該第2の相中において、該第1の相を含む、実質的に均一サイズのエマルジョン液滴を形成するように構成された仕切り。
  8. 前記横断面の形状が、約4〜16ミクロンの画定された長さ(l)および約1〜4ミクロンの画定された幅(s)を含む、請求項7に記載の仕切り。
  9. 前記横断面の形状の長さ対幅の縦横比が、少なくとも4対1である、請求項8に記載の仕切り。
  10. 前記多角形が、四辺形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形の形状、およびそれらの不規則な形状からなる群から選択される、請求項7に記載の仕切り。
  11. 前記四辺形が、凧型、ひし形、不等辺四辺形、台形、二等辺四辺形、平行四辺形、長方形、およびそれらの不規則な形状からなる群から選択される、請求項10に記載の仕切り。
  12. 前記横断面の形状が、前記真直ぐに通り抜ける孔の中心の縦軸に対して平行である、請求項7に記載の仕切り。
  13. 前記横断面の形状が、前記中心の縦軸に関して左右対称である、請求項12に記載の仕切り。
  14. 前記第1の相が、複数の粒子を含み、該粒子は、それに結合している少なくとも1つの核酸を含む、請求項7に記載の仕切り。
  15. 実質的に均一サイズのエマルジョン液滴を形成する方法であって、
    仕切りの第1の主要表面と接触している複数の粒子を含む水相を、仕切り中の少なくとも2つの真直ぐに通り抜ける孔を通して分散媒体中に押し出すステップと、
    同時に、
    該仕切りの第2の主要表面に対して平行にかつそれと接触した状態で該分散媒体を移動させるステップであって、該第2の主要表面が該第1の主要表面に対向しており、それによって、該分散媒体中に分散した、該水相の実質的に均一サイズのエマルジョン液滴を形成するステップと
    を含み、
    複数の該液滴は、少なくとも1つの粒子を含む方法。
  16. 前記真直ぐに通り抜ける孔が、内壁を含み、該内壁の一部分が、前記実質的に均一サイズのエマルジョン液滴を形成するために設計されている、請求項15に記載の方法。
  17. 前記真直ぐに通り抜ける孔が、ある横断面形状を含む、請求項16に記載の方法。
  18. 前記横断面の形状が、約4〜16ミクロンの画定された長さ(l)および約1〜4ミクロンの画定された幅(s)を含む、請求項17に記載の方法。
  19. 前記横断面の形状の長さ対幅の縦横比が、少なくとも4対1である、請求項18に記載の方法。
  20. 前記横断面の形状が、多角形、円形、卵形、楕円形、亜鈴型、蝶ネクタイ型およびそれらの不規則な形状からなる群から選択された形状を含む、請求項17に記載の方法。
  21. 少なくとも1つの核酸が、前記複数の粒子のうちの少なくともいくつかのそれぞれに結合している、請求項15に記載の方法。
  22. 前記水相が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施するための試薬類をさらに含む、請求項21に記載の方法。
  23. 前記ポリメラーゼ連鎖反応が、前記実質的に均一サイズのエマルジョン液滴の内部で起こる、請求項22に記載の方法。
  24. 前記核酸が、前記ポリメラーゼ連鎖反応によって増幅される、請求項23に記載の方法。
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