JP2019211254A - カートリッジ - Google Patents

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光夫 西村
裕司 前原
Yuji Maehara
裕司 前原
浩 城井
Hiroshi Shiroi
浩 城井
元木久子
Hisako Motoki
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Abstract

【課題】 試料の分析を行う領域において、充填される液滴の液滴径のばらつきを抑制することにより分析結果の信頼度を向上させることができる。【解決手段】 液滴に含まれる対象物の分析に用いるカートリッジであって、複数の前記液滴を生成する生成手段と、複数の前記液滴のうち、所定の液滴径の液滴の流動を抑制する抑制部と、を備えることを特徴とする。【選択図】 図1

Description

本明細書の開示は、カートリッジに関する。
従来、サンプル中に含まれる化合物や粒子といった分析対象物を分析する方法として、油中水型エマルジョンを反応場とした核酸試料デジタルPCR(dPCR:digital Polymerase Chain Reaction)法が提案されている。デジタルPCR法において、サンプルを含む反応液を物理的に独立した多数の反応場に分割する方法として、反応液の液滴をオイル中に形成する方法、すなわち、油中水型エマルジョン(W/Oエマルジョン)を形成する方法がある。この方法では、油中水型エマルジョン中の1つ1つの液滴を反応場として用いる(特許文献1)。
特表2012−503773号公報
しかしながら、異なる径の液滴をカートリッジ内の同じ領域に充填された状態で分析が行われると、液滴同士の重なりによって分析結果の信頼度が低下してしまうという課題があった。
本明細書の開示は、試料の分析を行う領域に充填される液滴の液滴径のばらつきを低減することを目的の一つとする。
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本明細書の開示の他の目的の一つとして位置付けることができる。
本明細書の開示に係るカートリッジは、液滴に含まれる対象物の分析に用いるカートリッジであって、複数の前記液滴を生成する生成手段と、複数の前記液滴のうち、所定の液滴径の液滴の流動を抑制する抑制部と、を備えることを特徴とする。
本明細書の開示によれば、試料の分析を行う領域に充填される液滴の液滴径のばらつきを低減することができる。
第1の実施形態に係るカートリッジの外観を示す図。 第1の実施形態における全体の処理手順の一例を示すフロー図。 第1の実施形態に係る一連の分析システムを示す図。 第1の実施形態に係るカートリッジの外観を示す斜視図。 第1の実施形態の変形例に係るカートリッジの外観を示す図。 第1の実施形態の変形例に係るカートリッジの外観を示す図。 第1の実施形態の変形例に係るカートリッジの断面図。
以下に、本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されるものではない。また、本明細書においては、カートリッジの底面をX軸とY軸で示し、Z軸はカートリッジの高さ方向(底面に直交する方向)を示すものとする。すなわち、カートリッジは、第1の軸と第2の軸と、前記2つの軸で規定される底面に垂直な第3の軸とで形成される3次元空間上の前記底面に設置されたカートリッジである。
<実施形態1>
本実施形態に係るカートリッジは、試料の分析に用いることができるカートリッジである。ここでいう試料とは、検体そのものであってもよいし、検体に対して精製や濃縮、分析対象物の化学修飾や断片化など、分析のための前処理や調整を施したものであってもよい。分析対象物は、例えば、核酸、ペプチド、タンパク質、酵素などが挙げられ、これらが共存していてもよい。分析対象物は、核酸、ペプチド、タンパク質、酵素の少なくともいずれかが共有結合等で結合または付着した分子、マイクロ粒子、ナノ粒子、さらにはウイルス、細菌、細胞などであってもよい。
分析方法の一例としては、デジタルPCR法が知られている。デジタルPCR法では、分析の対象とする核酸を含む試料を、核酸を増幅するための増幅試薬、核酸を検出するための蛍光試薬などと混合して希釈し、物理的に独立した多数の反応場に分割する。エマルジョンに含まれるそれぞれの液滴はデジタルPCR法において反応場として用いられることがある。そして、多数の反応場(液滴)のそれぞれにおいて独立にPCRが行われ、核酸が増幅される。増幅後に蛍光試薬により核酸を検出し、当該蛍光試薬のシグナルが検出された反応場の数(陽性反応場数)と、増幅後にシグナルが検出されなかった反応場の数(陰性反応場数)とに基づいて、試料中の核酸の濃度を推定することができる。
本実施形態に係るカートリッジは、ポリカーボネート等の透明性を有する樹脂あるいは、ガラスにより形成される。具体的には、図4に示すように予め定められた厚みの複数の樹脂フィルムもしくはガラスを積層することによりカートリッジを形成する。また、PCR処理の工程で100℃程度の温度が加わるため、これらの材質はガラス転移点が高いことが望ましい。積層するための各フィルムの接合方法には、例えば樹脂のガラス転移点未満の低い処理温度で接合が可能な表面活性化接合や分子接着が用いられる。なお、カートリッジの材質および形成方法などは一例であり、上記に限定されるものではない。
以下、図1から図3を用いて本実施形態に係るカートリッジの構成、及び濃度分析システムを用いたデジタルPCRの一連の処理を説明する。
図1は本実施形態に係るカートリッジ100の外観を示す図である。
図1(a)はカートリッジ100の平面図である。図1(b)はカートリッジ100のA−A’断面を示す断面図である。図1(c)はカートリッジ100のB−B’断面を示す断面図である。なお、図1において、カートリッジ100の斜線部分は樹脂等で形成される部分を示しているが、図1(a)においては内部の構造を示すために上面の樹脂(図1(b)の液滴充填領域107上面の黒い部分)を便宜的に除いて示している。
以下、図1(a),(b)を用いてカートリッジ100の構成を説明する。
第1の部材101は、液滴を生成するための第1の液体(水相)が注入される部材である。第1の部材101に注入された第1の液体(水相)は、生成部102へと送液される。生成部102は、複数の孔を有しており、注入された第1の液体が複数の孔を透過することで互いに物理的に独立した複数の反応場、すなわち液滴が生成される。第1の流路103は、第1の部材101および液滴保持領域104と接続されている。液滴保持領域104は、核酸増幅処理を施すために生成部102で生成された液滴を保持する。第2の流路105は、液滴保持領域104、液滴充填領域107および第2の部材110と接続されている。また、第1の流路103と液滴保持領域104と第2の流路105とはU字型に連通している。入口部106は、液滴充填領域107の入り口の断面を示している。液滴充填領域107は、複数の領域に分岐しており、それぞれ異なる液滴径の液滴が充填される。液滴堰き止め部108は液滴充填領域107の終端部に備えられており、各液滴充填領域の入口部106の断面積よりも終端部の断面積を小さくすることにより液滴充填領域107に充填される液滴の流出を防ぐ。排出部109は、第2の液体が排出される部材である。第2の部材110は、第2の液体が注入される部材である。抑制部111は、所定の液滴径の液滴の流動を抑制する。
上記のように本実施例では説明の便宜上、カートリッジ100内の連通している1つの空間を第1の流路103、液滴保持領域104、第2の流路105及び液滴充填領域107を、Z軸方向の高さが異なる4つの空間に分けて規定する。具体的には、第1の流路103と第2の流路105に比べて液滴保持領域104のZ軸方向の高さが低く、液滴保持領域104に比べて液滴充填領域107のZ軸方向の高さが低い。
しかし、空間の分岐点は上記に限定されず、分岐した空間を規定する手段も種々の手段で実現される。例えば、第1の流路103、液滴保持領域104、第2の流路105を1つの液滴保持領域と規定してもよい。また、カートリッジ100底面からのZ軸方向の高さが異なる2つの空間を液滴保持領域と液滴充填領域などと規定してもよい。
次に、図1から図3を用いて本実施形態における全体の処理を説明する。
(S2000)(第2の液体(油相)を注入する)
ステップS2000において、図3に示す油相注入手段306によって第2の液体(油相)が注入されカートリッジ100に充填される。第2の液体(油相)は、油と界面活性剤とを含む。油相は水相と相溶せず分離する溶剤から成り、典型的には脂肪族炭化水素やシリコーンオイル等のオイルから成る。
また、油相注入手段306には、シリンジ等の所定の容量の液体を吐出する手段や、流路内の空気を加圧または減圧するポンプやポンプとバルブの組み合わせなどを用いることができる。すなわち、油相注入手段306は、カートリッジ100内に油を注入できる機能を有する任意の手段により実現される。
本ステップにおいて、第2の液体(油相)は第2の部材110の開口部から注入することにより、生成部102を透過せずにカートリッジ100に充填することができるため充填時間は短くなる。なお、第2の液体(油相)は、第1の部材101の開口部から注入されてもよいし、排出部109から注入されてもよい。また、油相注入手段306によって注入される第2の液体(油相)は、カートリッジ100全体を満たすように注入し、少なくとも生成部102が第2の液体(油相)に浸かる程度の量が注入されることが望ましい。
(S2010)(第1の液体(水相)を注入する)
ステップS2010において、水相注入手段305によって第1の液体(水相)が注入され、第1の部材101に充填される。第1の液体(水相)は反応液で構成され、反応液は水と試料と増幅試薬と蛍光試薬とを含有する。なお、反応液の構成はこれに限定されない。また、水相注入手段305には、シリンジ等の所定の容量の液体を吐出する手段や、流路内の空気を加圧または減圧するポンプやポンプとバルブの組み合わせなどを用いることができる。すなわち、水相注入手段305は、カートリッジ100内に第1の液体(水相)を注入できる機能を有する任意の手段により実現される。
(S2020)(第1の液体(水相)から液滴を生成する)
ステップS2020において、駆動手段が第1の部材101からカートリッジ100内を加圧する、もしくは第2の部材110からカートリッジ100内を減圧することにより、カートリッジ100内に充填された第2の液体(油相)を駆動させる。または、両方から圧力を加えることによりカートリッジ100内に充填された第2の液体(油相)を駆動させる。
なお、カートリッジ100が樹脂の薄い層などの機械強度の低い素材で形成されている場合は、破壊や剥離が生じないように第2の部材110から駆動手段により減圧することで連続相を駆動させることが望ましい。一方、カートリッジ100が機械強度の高い素材であれば第1の部材101から加圧して連続相を駆動させてもよい。
また、第1の部材101と第2の部材110のうち駆動手段を用いる方の部材には耐圧栓をつけることで圧力の抜け漏れを防ぐことができる。なお、耐圧栓は必ずしも必要ではない。
また、駆動手段は水相注入手段305もしくは油相注入手段306を用いてもよいし、これらとは異なる手段を新たに用いてもよい。すなわち、駆動手段は圧力を加えることで液体の駆動が可能な手段であれば種々の手段を用いることができる。
そして、第2の液体(油相)の駆動に伴い、ステップS2010において生成部102上面に充填された第1の液体(水相)が生成部102を透過し液滴が生成される。すなわち、第2の液体(油相)を連続相、第1の液体(水相)を含む液滴を分散相とするエマルジョンが形成される。
生成部102は例えば、膜状の部材に孔が複数2次元的に配置された部材であり、連続気泡の多孔質体や、繊維を縦横に配置したメッシュ、単一部材に貫通孔を配置したマイクロチャンネルが使用される。生成部102として使用される物質の孔の直径は、およそ20[μm]であると望ましいが上記に限定されない。また、生成部102は、第1の部材101に備えられていることが望ましい。さらには、第1の部材101の開口方向に略平行に備えられていることが望ましい。なお、液滴生成が可能な位置であれば生成部102が備えられる位置は上記に限定されない。
さらに、エマルジョンの形成方法は上記に限定されない。
例えば、従来公知の乳化方法である撹拌装置や超音波破砕装置などにより機械的エネルギーを付与することでエマルジョンを形成する機械乳化法が挙げられる。また、マイクロ流路乳化法やマイクロ流路分岐乳化法などのマイクロ流路デバイスを用いた方法、乳化膜を用いる膜乳化法などが挙げられる。これらの方法は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも機械的乳化法や膜乳化法は、マイクロ流路デバイスを用いた方法に比べて液滴のサイズのばらつき(分散)が大きくなる傾向にあるものの、スループット良くエマルジョンを形成できるため好ましい。
また、エマルジョンを形成する装置の装置構成を単純にできること、液滴のサイズのばらつきが比較的低いエマルジョンを形成できることなどから、膜乳化法が特に好ましい。
すなわち、生成部102は、乳化膜であることが好ましい。
膜乳化法としては、直接膜乳化法やポンピング乳化法などを用いることができる。直接膜乳化法とは、乳化膜を介して分散相を一定圧力で押し出すことにより、押し出される側をゆっくり流れている連続相中に、エマルジョンを形成する方法である。ポンピング乳化法とは、連続相を採取したシリンジと分散相を採取したシリンジとで乳化膜を挟み、2つのシリンジから液体を交互に押し出して乳化膜を通過させることによって、エマルジョンを調製する方法である。
なおポンピング乳化法においては、2つのシリンジの一方に連続相と分散相の混合物を採取しておき、もう一方のシリンジは空にしておいてもよい。ポンピング乳化法においては、それぞれシリンジと接続可能な一対のコネクターの間に乳化膜を挟み込んだポンピング式の乳化デバイスを用いることができる。
(S2030)(液滴保持領域に液滴を保持する)
ステップS2030において、駆動手段が第1の部材101からカートリッジ100内を加圧する、もしくは第2の部材110からカートリッジ100内を減圧することによりカートリッジ100内に充填された第2の液体(油相)を連続相として駆動させる。または、両方から圧力を加えることによりカートリッジ100内に充填された第2の液体(油相)を連続相として駆動させる。そして、連続相の駆動に伴い生成部102により生成された液滴は、第1の流路103を通り液滴保持領域104に保持される。
なお、本実施例では、駆動手段により圧力を加えることで連続相を駆動させたが、カートリッジ100を任意の角度に傾けることにより連続相を駆動させてもよい。例えば、カートリッジ100を傾動手段(不図示)上に設置し、傾動手段上で液滴生成を行う。そして傾動手段を液滴保持領域104に液滴が流れるような角度に傾動させることにより連続相を駆動させ、液滴を液滴保持領域104に保持してもよい。傾動手段には、チルトステージなどを用いることができる。
この場合、カートリッジ100に対して応力を加えなくてよいので、圧力変動による分散相の損失を防ぐことができ分析の信頼性を向上することができる。
さらに、液滴保持領域104に液滴が流れるような角度にカートリッジ100を傾動させることにより、比重の軽い気泡は液滴保持領域104から遠ざかるため生成した液滴をカートリッジ100に混入した気泡から遠ざけて保持することができる。上記により、ステップS2040において、液滴をサーマルサイクルにかける際に気泡の膨らみによる液滴の損失を防ぐことができる。なお、上記の効果は第1の流路103および第2の流路105のZ軸方向の高さを液滴保持領域104のZ軸方向の高さよりも高くすることでより効果を奏する。上記の構成によれば液滴保持領域104から気泡が押し出される方向の圧力が、液滴保持領域104に気泡が入り込もうとする圧力よりも大きくなるため、第1の流路103と第2の流路105の方に気泡が逃げやすくなる。また、液滴保持領域104のZ軸方向の高さは高いほど液滴保持領域104から気泡が逃げやすい。しかし、カートリッジの熱容量が大きくなり長い処理時間が必要となるため、0.2〜0.8[mm]の寸法に収めることが望ましい。なお、液滴保持領域104のZ軸方向の高さは上記に限定されない。
また、チルトステージはカートリッジを傾動させるための手段の一例であり、角度を傾けることで連続相を駆動できる手段であればこれに限定されない。さらに、連続相を駆動させるために傾ける角度も限定されない。
(S2040)(カートリッジに熱サイクルを付加する)
ステップS2040において、図3に示す温度調整手段301により液滴保持領域104に保持した液滴に含まれる核酸試料に対するPCR処理が行われる。具体的には、温度調整手段301は、ペルチェ素子とコントローラを含み、カートリッジ100の液滴保持領域104に保持された液滴内で核酸増幅反応を発生させている。温度調整手段301には、例えばサーマルサイクラーを用いることができる。核酸の増幅反応としては、液滴(反応場)をサーマルサイクルに供することで反応を進行させるPCR法やLCR(Ligase Chain Reaction)法を用いることができる。また、液滴(反応場)をサーマルサイクルに供さずに温度調整することで反応を進行させるSDA(Strand Displacement Amplification)法、ICAN(Isothermal andChimeric primer−initiated Amplificationof Nucleic acids)法、LAMP(Loop−Mediated Isothermal Amplification)法なども用いることができる。なお、温度調整手段301として用いられる装置や核酸増幅の方法は上記に限定されない。
(S2050)(液滴充填領域に液滴を充填する)
ステップS2050において、PCR処理を施した液滴を液滴充填領域107に充填する。具体的には駆動手段が第1の部材101から加圧するもしくは第2の部材110から減圧することにより、エマルジョンが駆動し、エマルジョン中に分散相として存在する液滴が第2の流路105を通り液滴充填領域107へと充填される。なお、加圧と減圧の両方を行うことによりエマルジョンを駆動してもよい。
なお、カートリッジ100内の液滴が通過する第2の流路105の下面には凹形状をした抑制部111(以下、凹部)を設けている。これにより、生成した液滴の中に含まれる閾値以下の液滴径を有する小径液滴の移動を抑制し、液滴充填領域107へ充填されることを防ぐことができるため、充填される液滴の液滴径のばらつきをより低減することができる。
これにより、多分散を有する分析システムにおいても液滴径のバラつきから生じる液滴の重なりの発生を抑えることができ、計測精度を向上させることができる。
また、凹部の深さは移動を抑制したい液滴径に応じて設定してもよい。例えば20[μm]以下の液滴の液滴充填領域107への充填を防ぎたい場合には15[μm]程度の深さの凹部を設ける。すなわち、凹部は、Z軸方向の深さが所定の液滴径の液滴の半径以上の深さであることが好ましい。これは、液滴径の半径以上の深さを有する凹部であれば液滴が凹部から抜け出してくる可能性を低減できるためである。
一方、上記によれば充填したい液滴の半径以上の凹部を設けてしまうと、充填したい液滴の液滴充填領域107への移動も抑制されてしまう。そのため、凹部は入口部106のZ軸方向の高さの半分未満の深さ、すなわち充填したい液滴の半径未満の深さであることが望ましい。
また、複数の液滴が凹部に入るとその上を乗り越えて流れる小径液滴も発生するため、凹部は複数設けることが好ましい。このように複数の凹部を設けることにより小径液滴が凹部に入る確率を高められる。また、複数の凹部は、凹部同士の間隔が離れすぎていると1つめの凹部を乗り越えた小径液滴が、凹部間に備えられた液滴充填領域に流入してしまう可能性があるため所定の間隔で連続して設けられていることが好ましい。具体的には、液滴充填領域107の隣り合う液滴充填領域の間隔よりも狭い間隔で設けることが好ましい。さらに、複数の凹部の夫々の深さを、第2の流路105内を液滴が流れる方向に順に深くしてもよい。すなわち、抑制部111は、2つ以上の凹部を含み、凹部はそれぞれZ軸方向の深さが異なる構成でもよい。上記によれば、生成した液滴の中でも液滴径の小さな液滴から凹部に滞留させることができるため、閾値以下の液滴径を有する液滴が液滴充填領域107に充填されてしまう確率をより低減できる。
なお、抑制部111は必ずしも複数設ける必要はなく、1つでもよい。さらに、本実施形態においては第2の流路105上に抑制部111を設けたが、設ける位置は第1の流路103上や、液滴保持領域104上でもよい。すなわち、液滴充填領域107よりも上流側の領域に設けられていればよい。
また、抑制部111のZ軸方向の深さ及び高さは任意に定めることができ、上記に限定されるものではない。
本実施例では、第2の流路105を通り液滴が流れる液滴充填領域107は8つの並列した液滴充填領域に分岐しており、図1(c)のB−B断面図に示されるように夫々のZ軸方向の高さは70[μm]と90[μm]である。なお、本実施例において入口部106は矩形であり、X軸方向の長さはZ軸方向の長さよりも長い。すなわち、Z軸方向の高さは矩形の短辺に相当する。なお、X軸方向の長さの方が短くてもよく、その場合はX軸方向の幅が短辺となる。また、入口部106は必ずしも矩形である必要はなく円形でもよい。この場合、短径が短辺に相当し、円形が真円である場合には、直径が短辺に相当する。液滴充填領域107の短辺(Z軸方向の高さ)は、取り扱う分散相の平均液滴径およびその分散によって、低すぎると球体である分散相形状を変形させてしまい濃度の推定精度に影響する。一方、高すぎると分散相が観察方向に重なり、観察が難しくなる。したがって、本分析システムにおいてはおおよそ20〜200[μm]の値であることが望ましい。なお、液滴充填領域107の数、及び高さはこれに限定されず、液滴充填領域107のZ軸方向の高さは液滴充填領域毎に必ずしも変える必要はなく一律でもよい。
さらに、並列した複数の液滴充填領域は上流側の液滴充填領域ほど液滴充填領域107のZ軸方向の高さを低くすることが望ましい。すなわち、液滴充填領域107に含まれる液滴充填領域は、前記入口の短辺の長さに基づいて並列して備えられていることが望ましい。液滴充填領域107のうち、上流側の液滴充填領域の短辺(Z軸方向の高さ)を下流側の液滴充填領域より高くすると、上流側の液滴充填領域には小径の液滴も一緒に充填されるため、分析結果の信頼度が劣化してしまう可能性がある。具体的には、液滴径が異なる液滴が同じ液滴充填領域に充填されると、液滴充填領域底面からの液滴間の接触点の高さが不均一になってしまうことがある。また、液滴充填領域内で液滴の上に他の液滴が重畳してしまうことがある。こういった場合、ステップS2050においてZ軸方向(撮像方向)から液滴を観察する際に液滴同士が重なり、分析結果の信頼度が劣化してしまう可能性がある。
そのため、上流側の液滴充填領域の短辺(Z軸方向の高さ)を低くし、小径の液滴を上流側の液滴充填領域に先に充填することで下流側の液滴充填領域には大径の液滴が充填され、液滴の重なりを防ぐことができる。
また、短辺がX軸方向の幅である場合、入口部106において断面のZ軸方向の高さを変えずに、X軸方向の幅を変えることによって充填される液滴を液滴径ごとに分けてもよい。この場合、例えば高さは変えずに、X軸方向の幅を70[μm]と90[μm]とする。上記によれば、液滴を液滴径毎に分けて充填する場合に、液滴充填領域107に含まれる各液滴充填領域のZ軸方向の高さを高くする必要がないので領域内で液滴が重畳することをより防ぐことができる。
また、液滴充填領域107は入口部106の断面積と、液滴充填領域内部の任意の断面の断面積とが異なる構成であってもよい。すなわち、入口部106の断面と入口部106とは異なる領域内部の断面とは断面積の大きさが異なっていてもよい。例えば、入口部106の断面積に対して液滴充填領域内部の断面積を大きくする。上記によれば、入口部106の断面積で液滴充填領域に流入する液滴の液滴径を絞り、かつ液滴充填領域内部により多くの液滴を充填することができる。これにより、液滴充填領域107内の液滴充填量が増加し分析結果の信頼度をより向上させることができる。もしくは、入口部106の断面積に対して液滴充填領域内部の断面積を小さくしてもよい。上記によれば、液滴が充填される際に入口部106から断面積が徐々に小さくなるため液滴充填領域終端部には液滴径の小さい液滴が充填され、入口部106付近には液滴径の大きい液滴が充填される。すなわち、各液滴充填領域内部でさらに領域毎に液滴径が揃うため分析時の液滴径のばらつきをより低減することができる。
なお、液滴充填領域107の底面の高さは液滴充填領域毎に必ずしも共通している必要はない。
液滴充填領域107に充填された液滴は終端部の液滴堰き止め部108によって流動が抑制される。液滴堰き止め部108は液滴充填領域107の終端部の断面積が充填される液滴の断面積より小さくなるような大きさで設けられる。すなわち、液滴充填領域107は、入口部106の断面積に比べて終端部の断面積の方が小さい。例えば、入口部106の断面積の大きさが70[μm]で生成部102が生成する液滴の平均径が60[μm]である場合には、断面積が40[μm]の液滴堰き止め部108を液滴充填領域107の終端部に設ける。
上記のように液滴堰き止め部108を設けることにより、連続相は流れるが充填される液滴の流動は抑制することができる。すなわち、液滴が自由に動ける範囲を狭めることによって、液滴の流出を防止できるため観察可能な液滴量が増える。また、液滴堰き止め部108を設けることにより分析時に妨げとなる液滴の流動によるアーチファクトを低減することができるため無駄なく液滴を分析することができる。なお、本実施例では液滴堰き止め部108は、液滴充填領域107の下面に備えられているが、上面に備えられていてもよい。また、液滴堰き止め部108は、液滴充填領域107に含まれる液滴充填領域ごとに異なる断面積で設けてもよい。
なお、本ステップにおいても、カートリッジ100を任意の角度に傾けることにより液滴を駆動させてもよい。
(S2060)(液滴内の核酸増幅産物有無を観察する)
ステップS2060において、カートリッジ100は観察ステージに移送され蛍光などの光が計測される。すなわち、S2040において増幅された試料中の分析対象物の分析が行われる。蛍光は図3に示す照明手段309と観察手段310とで計測され、照明手段309は、所定の波長の光を液滴充填領域107に保持された複数の液滴に照射する。照明手段309としては、LEDライト、ハロゲンランプおよび蛍光灯などを用いることができる。観察手段310は、光が照射された複数の液滴のそれぞれから発せられたシグナルを検出し、液滴内増幅産物の有無を観察する。また、液滴径の測定を行う。観察手段310としては、フォトダイオードやラインセンサ、イメージセンサ(撮像素子)等を用いることができ、中でも、多数の液滴について一括してシグナルの検出ができる点で、イメージセンサを用いることが好ましい。イメージセンサとしては、CCD(電荷結合素子)、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサを用いることができる。観察手段310は、イメージセンサを備えたデジタルカメラであってもよい。
なお、本ステップS2060において、観察時に液滴の流動を抑制するために観察ステージは傾動する機構を有していてもよい。
(S2070)(核酸増幅前の試料の核酸濃度を推定する)
ステップS2070において、S2060で行われた観察の結果から試料の全体積に対する増幅産物を含まない液滴の体積の割合から試料内の濃度推定を行う。
(分析対象物の濃度の計算)
分析対象物の濃度の計算は、従来行われているデジタル分析における濃度計算方法を採用して実施することができる。温度調整手段301における反応の前に、それぞれの反応場が含む分析対象物が1個または0個のいずれかであるとみなせる場合について説明する。この場合は、分析対象物が検出された反応場(陽性反応場)の数xを、観察手段310が分析対象物の検出の対象とした体積Vsの反応液中に含まれていた分析対象物の数とみなすことができる。よって、下記式(1)により、反応液中の分析対象物の濃度λrを計算することができる。なお、観察手段310が分析対象物の検出の対象とした体積Vsは、観察手段310から取得される反応場のサイズに関する情報に基づいて算出することができる。
λr=x/Vs・・・式(1)
また、例えば、温度調整手段301における反応の前に、1つの反応場に複数個の分析対象物が入り得るとみなせる場合は、ポアソンモデルによる補正を行うことで、分析対象物の濃度を計算することができる。この場合は、温度調整手段301における反応の前にそれぞれの反応場に含まれていた分析対象物の平均個数Cを推定することにより、分析対象物の濃度算出を行う。具体的には、観察手段310が分析対象物の検出の対象とした反応場について、1つの反応場に含まれる分析対象物の平均個数をCとすると、1つの反応場にn個の分析対象物が含まれる確率は、ポアソンモデルの式から、下記式(2)のように表される。
P(n,C)=(C−e−C)/n! ・・・式(2)
ここで、1つの反応場が分析対象物を1つも含まない確率は、式(2)においてn=0として、下記式(3)で表される。
P(0,C)=e−C ・・・式(3)
温度調整手段301における反応の前に1つの反応場中に少なくとも1つの分析対象物が含まれていれば、その反応場からはシグナルを検出することができるが、反応の前にその反応場に含まれていた分析対象物の数の情報までは分からない。そこで、観察手段310が検出対象とした反応場の総数に対する、分析対象物が検出されなかった反応場の割合(シグナルが検出されなかった反応場の割合)に基づいて、式(3)を用いて、検出対象とした反応液中に含まれていた分析対象物の個数を推定する。
具体的には、シグナルが検出された反応場の個数またはシグナルが検出されなかった反応場の個数と、検出対象とした反応場の総数とから、シグナルが検出されなかった反応場の割合F0を算出する。そして、下記式(4)から、検出対象とした反応場に、温度調整手段301における反応の前に1つの反応場に含まれていた分析対象物の平均個数Cを推定する。
C=−ln(F0) ・・・式(4)
ここで、観察手段310が分析対象物の検出対象とした反応場の平均体積をvとすると、下記式(5)により、反応液中の分析対象物の濃度λrを計算することができる。なお、観察手段310が分析対象物の検出の対象とした平均体積vは、観察手段310から取得される反応場のサイズに関する情報に基づいて算出することができる。
λr=C/v ・・・式(5)
なお、反応液中の分析対象物の濃度λrは、分析対象物の平均個数Cと反応場の数を乗じて得られる分析対象物の総数と、反応場の平均体積vと反応場の数を乗じて得られる反応場の総体積と、に基づいて算出してもよい。
このようにして得られた、反応液中の分析対象物の濃度は、検体またはサンプルから反応液を調整した際の希釈倍率を用いることによって、検体またはサンプル中の分析対象物の濃度に換算することができる。
上記の処理によれば、分析対象となる液滴を液滴径毎に流路に充填してから液滴の分析を行うことで定量精度および分析結果の信頼度を向上させることができる。
(変形例1−1)(凸形状の抑制部を設ける)
本実施形態では、カートリッジ100内部に抑制部111を凹形状で設けたが、抑制部111は凸形状で設けてもよい。例えば、凸形状の抑制部111(以下、凸部)を第2の流路105の上面もしくは下面の少なくともいずれか一方に設ける。
図5および図7(b)に示すように凸部を第2の流路105の上面に設けた場合には、閾値以上の大径液滴の移動を抑制し、液滴充填領域107に充填されてしまう確率を低減できる。
一方、図6および図7(a)に示すように凸部を第2の流路105の下面に設けた場合には、凹部と同様に閾値以下の液滴径を有する液滴の移動を抑制し、液滴充填領域107に充填されてしまう確率を低減できる。
また、抑制部111を凸形状にした場合も、複数設けることでより効果を奏する。具体的には、第2の流路105の上面に、複数の凸部を設け、凸部のZ軸方向の高さを液滴が流れる方向に順に高くする。すなわち、抑制部111は、2つ以上の凸部を含み、凸部はそれぞれZ軸方向の高さが異なる構成でもよい。上記によれば、1つめの凸部で移動を抑制しきれなかった大径の液滴を2つ目の凸部で抑制できるため、閾値以上の液滴径を有する液滴が液滴充填領域107に充填されてしまう確率をより低減できる。
100 カートリッジ
101 第1の部材
102 生成部
103 第1の流路
104 液滴保持領域
105 第2の流路
106 入口部
107 液滴充填領域
108 液滴堰き止め部
109 排出部
110 第2の部材
111 抑制部

Claims (11)

  1. 液滴に含まれる対象物の分析に用いるカートリッジであって、
    複数の前記液滴を生成する生成手段と、
    複数の前記液滴のうち、所定の液滴径の液滴の流動を抑制する抑制部と、
    を備えることを特徴とするカートリッジ。
  2. 前記抑制部は、少なくとも1つの凹部を含み、前記凹部は前記カートリッジ内の下面に備えられていることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジ。
  3. 前記抑制部は、2つ以上の凹部を含み、前記凹部はそれぞれ前記カートリッジに直交する方向の深さが異なることを特徴とする請求項1または2に記載のカートリッジ。
  4. 前記2つ以上の凹部は、所定の間隔で並列して備えられていることを特徴とする請求項3に記載のカートリッジ。
  5. 前記抑制部は、液滴充填領域よりも上流側の領域に備えられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカートリッジ。
  6. 前記凹部は、前記カートリッジに直交する方向の深さが前記所定の液滴径の液滴の半径以上の深さであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のカートリッジ。
  7. 前記凹部は、前記カートリッジに直交する方向の深さが、液滴充填領域に前記液滴が流入する入口の前記カートリッジに直交する方向の高さの半分未満の深さであることを特徴とする請求項6に記載のカートリッジ。
  8. 前記抑制部は、少なくとも1つの凸部を含み、前記凸部は前記カートリッジ内の上面および下面の少なくとも一方に備えられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のカートリッジ。
  9. 前記抑制部は、2つ以上の凸部を含み、前記凸部はそれぞれ前記カートリッジに直交する方向の高さが異なることを特徴とする請求項8に記載のカートリッジ。
  10. 前記凸部は、前記生成手段により生成される前記液滴の液滴径に基づいた前記カートリッジに直交する方向の高さを有することを特徴とする請求項8また9に記載のカートリッジ。
  11. 前記凸部は、前記カートリッジの下面に備えられている場合には、前記カートリッジに直交する方向の高さが前記所定の液滴径の液滴の半径以上の高さであることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載のカートリッジ
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