JP7178254B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、ブロックを多数配置したトレッド部を備える空気入りタイヤに関するものである。
従来、ブロックを多数配置したトレッド部を備える空気入りタイヤにおいて、各ブロックにサイプと呼ばれる切り込みを多数形成することで、エッジ効果や除水効果を高めて氷雪路面でのタイヤ性能を高めた空気入りタイヤが知られている(特許文献1参照)。
近年、乾燥路面でのタイヤ性能の確保と氷雪路面でのタイヤ性能の向上の両立が要求されている(特許文献2参照)。氷雪路面でのトラクション性能や操縦安定性能を高めるためには、サイプを多く設けることが有効である。しかしながら、サイプを多く設けると、ブロックの倒れ込みが大きくなり過ぎて、エッジ効果が低下してしまう。乾燥路面での操縦安定性能も低下する傾向にある。
特許文献3-5には、それぞれ、タイヤに関する諸課題を解決するため、サイプの形状を工夫することが記載されている。しかしながら、これらの文献には、乾燥路面での操縦安定性能を確保しつつ、氷雪路面でのトラクション性能及び操縦安定性能を向上させることに関して、その解決手段を示唆するものではない。
特開2017-190123号公報 特開2012-180007号公報 特開2012-250590号公報 特開2017-024476号公報 特開2018-095156号公報
本発明の目的は、ブロック剛性の最適化を図り、乾燥路面での操縦安定性能を確保しつつ、氷雪路面でのトラクション性能及び操縦安定性能を向上させた空気入りタイヤを提供することである。
本発明の空気入りタイヤは、ブロックを複数含むトレッド部を備える空気入りタイヤであって、
前記トレッド部のトレッド面は、50度以上のゴム硬度を有し、
前記ブロックには、第1サイプと第2サイプとを含む複数のサイプをタイヤ周方向に間隔を空けて配列してなるサイプ群が形成されており、
前記第1サイプは、前記ブロックの外縁で開口する開口端部を有し、前記第1サイプの開口端部では前記第1サイプの中央部に比べて深さが小さく、
前記第2サイプは、前記ブロックの外縁で開口する開口端部を有し、前記第2サイプの開口端部では前記第2サイプの中央部に比べて深さが小さく、且つ前記第1サイプの開口端部に比べても深さが小さく、
タイヤ周方向における前記ブロックの両端部の各々に前記第2サイプが配置されており、
前記ブロックの両端部の各々に配置された前記第2サイプを除いて、前記サイプ群を構成する複数の前記サイプの中央部の深さが一律に設定されている。
トレッド面のゴム硬度を50度以上と、適度に高く設定することで、ブロック剛性を過度に低下させない。これにより、乾燥路面での操縦安定性能を確保できる。50度以上のゴム硬度を有するトレッド面を使用することで、ブロック剛性が高まり、乾燥路面での操縦安定性能を確保しやすい。さらに、ブロックを倒れにくくすることでエッジ効果が高まり、氷雪路面でのトラクション性能及び操縦安定性能を向上させる。
サイプの開口端部におけるブロック剛性は、サイプの中央部におけるブロック剛性よりも低い。そこで、サイプの開口端部におけるサイプの深さを、サイプの中央部におけるサイプの深さよりも小さくする。これにより、サイプの開口端部の倒れ込みを抑えて、氷雪路面でのトラクション性能と操縦安定性能、及び乾燥路面での操縦安定性能を向上させる。
タイヤ周方向におけるブロックの両端部におけるブロック剛性は、タイヤ周方向におけるブロックの中央部におけるブロック剛性よりも低い。そこで、開口端部の深さが相対的に小さい第2サイプをブロックの両端部の各々に配置する。これにより、タイヤ周方向におけるブロックの両端部でのサイプの開口端部の倒れ込みを抑えて、氷雪路面でのトラクション性能と操縦安定性能、及び乾燥路面での操縦安定性能を向上させる。
また、ブロックの両端部の各々に配置された第2サイプを除いて、前記サイプ群を構成する複数の前記サイプの中央部におけるサイプの深さを一律に設定することで、エッジ効果を適切に発揮させ、氷雪路面でのトラクション性能と操縦安定性能を向上させる。
以上により、ブロック剛性の最適化を図り、乾燥路面での操縦安定性能を確保しつつ、氷雪路面でのトラクション性能及び操縦安定性能を向上させる。
前記第1サイプと前記第2サイプが交互に配置されていてもよい。第1サイプと第2サイプとがバランスよく配置され、乾燥路面での操縦安定性能を確保しつつ、氷雪路面でのトラクション性能及び操縦安定性能を向上させる。
タイヤ周方向における前記ブロックの両端部の各々に配置された前記第2サイプの間には、前記第1サイプのみが配置されていてもよい。これにより、タイヤ周方向におけるブロックの中央部におけるブロック剛性が低下し、氷雪路面でのトラクション性能及び操縦安定性能を向上させる。
前記ブロックは、センターブロック及びクォータブロックの一方、又は、両方のブロックに該当し、
前記センターブロックは、タイヤ赤道と重なる位置に設けられ、又は、前記タイヤ赤道と重なる位置に配置された溝に隣接して設けられ、
前記クォータブロックは、前記センターブロックと、タイヤ幅方向最外側に設けられたショルダーブロック又はショルダーリブとの間に設けられていると好ましい。上記構成を備えるサイプをセンターブロックに設けると、主に氷雪路面のトラクション性能の向上に寄与する。また、上記構成を備えるサイプをクォータブロックに備えると、主に氷雪路面の旋回時の操縦安定性能の向上に寄与する。
前記空気入りタイヤは氷雪路用タイヤであってもよい。
本発明に係る空気入りタイヤの一実施形態におけるトレッド部を示す展開図 図1のセンターブロックの拡大図 図2の各サイプの延在方向に延びる線分における断面図 図1のセンターブロックのタイヤ幅方向外側からみた側面図
以下、本発明に係る空気入りタイヤにおける一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る空気入りタイヤの一実施形態におけるトレッド部を示す展開図である。トレッド部100は、路面に接地するブロックを複数含む。ブロックは、第1溝と第2溝とによって区画されるか、第1溝と第2溝と接地端TEとによって区画される。第1溝に相当する傾斜溝1は、センター側からショルダー側に向かってタイヤ幅方向に対して傾斜し、かつ、緩やかな曲線で延びている。第2溝に相当する交差溝2は、複数の傾斜溝1に交差し、二つの傾斜溝1の間を接続する。傾斜溝1及び交差溝2は、それぞれタイヤ周方向に間隔を設けて繰り返し配置されている。
本実施形態では、トレッド部100に形成されたトレッドパターンが、ブロックを基調とするブロックパターンである例を示す。但し、図1に示されたトレッド部100のブロックパターンは一例であり、第1溝及び第2溝の形状や幅、長さを変えることで様々なブロックパターンを採り得る。例えば、第1溝は、タイヤ幅方向に対して平行に延びてもよく、タイヤ幅方向に対して傾斜するが直線をなすように延びてもよい。また、第1溝は、全て同じ長さの溝であってもよく、異なる長さの溝であってもよい。第2溝も同様である。
本実施形態では、複数のブロックは、タイヤ赤道CLと重なる位置に設けられたセンターブロック4、5を含む。センターブロック4、5のそれぞれのブロックの重心が、互いにタイヤ赤道CLを挟んだ反対側に位置している。また、センターブロック4、5の形状は、互いに異なる形状をしている。センターブロック4、5は、それぞれ、タイヤ周方向に繰り返して配置されている。
タイヤ赤道CLがセンターブロックと重ならずに溝とのみ重なる場合は、そのタイヤ赤道CLと重なる位置に配置された溝に隣接して設けられたブロックをセンターブロックとする。また、センターブロックがタイヤ幅方向に重ならないように配置されていてもよい。センターブロックの形状は、互いに異なる形状を有するに限らず、異なる三種類以上の形状を有していてもよい。また、一種類の形状を有するセンターブロックが、タイヤ赤道CLと重なる位置にタイヤ周方向に沿って間隔を空けて配置されてもよい。
複数のブロックは、タイヤ幅方向最外側にショルダーブロック8、9を含んでいてもよい。ショルダーブロック8、9は、それぞれ、複数の傾斜溝1と交差溝2と接地端TEとで区画される。そして、ショルダーブロック8、9は、タイヤ周方向に繰り返して配置されている。
接地端TEは、正規リムにリム組みして正規内圧と正規荷重を負荷したタイヤを平坦路面に接地させたときのタイヤ幅方向の最外位置である。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAに規定される標準リム、TRAに規定される“Design Rim”、あるいはETRTOに規定される“Measuring Rim”である。正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、例えば、JATMAに規定される最高空気圧、TRAの表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、あるいはETRTOに規定される“INFLATIONPRES SURE”である。正規荷重とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、例えば、JATMAに規定される最大負荷能力、TRAの上記表に記載の最大値、あるいはETRTOに規定される“LOAD CAPACITY”である。
センターブロック4とショルダーブロック8との間にクォータブロック6が配置され、センターブロック5とショルダーブロック9との間にクォータブロック7が配置される。クォータブロック6、7は必須のブロックではなく、トレッド部100に含まれるブロックがセンターブロック4、5とショルダーブロック8、9とで構成されていてもよい。また、ショルダーブロック8、9に代えてショルダーリブでもよい。
本実施形態では、回転方向が指定された方向性タイヤとして構成されている例を示し、その回転方向を矢印RDで表している。回転方向RDの前方側(図1の下側)はブロックの踏み込み側となり、回転方向RDの後方側(図1の上側)はブロックの蹴り出し側となる。回転方向の指定は、例えば回転方向を示す矢印などの表示を、空気入りタイヤのサイドウォール部の表面に付すことで行われる。
トレッド部100のトレッド面は、50度以上のゴム硬度を有する。即ち、トレッド部100の外表面は、50度以上のゴム硬度を有するゴムにより形成されている。ゴム硬度は、JIS K6253に準拠し、23℃雰囲気下でタイプAデュロメータを使用して測定された値(デュロメータ硬さ)である。50度以上のゴム硬度を有するトレッド面を使用することでブロック剛性が高まり、乾燥路面での操縦安定性能が向上する。ゴム硬度は、55度以上であるとより好ましく、60度以上であるとさらに好ましい。
図2は、図1におけるセンターブロック5の拡大図を示している。センターブロック5には、センターブロック5の外縁を区画する溝(即ち、傾斜溝1及び交差溝2)よりも幅の小さい複数のサイプからなるサイプ群が形成されている。ブロックを区画する溝は1.5mm以上の幅を有するのに対し、サイプ群を構成する各サイプは1.5mm未満の幅を有する。サイプ群は、第1サイプ51と第2サイプ52、52’とを含む複数のサイプをタイヤ周方向に間隔を空けて配列してなる。また、各サイプは、0.5mm以上の幅を有しているとよい。
図3(a)は、図2における第1サイプ51のサイプ延在方向に延びるA-A線分での断面図である。第1サイプ51は、センターブロック5の外縁で開口する開口端部51eを有し、開口端部51eの深さH1eは、第1サイプ51の中央部51cの深さH1cに比べて小さい。深さH1eは、深さH1cに対して、50%以上の深さであると好ましく、55%以上の深さであるとより好ましい。また、深さH1eは、深さH1cに対して、70%以下の深さであると好ましく、65%以下の深さであるとより好ましい。
図3(b)は、図2における第2サイプ52のサイプ延在方向に延びるB-B線分における断面図である。第2サイプ52は、センターブロック5の外縁で開口する開口端部52eを有し、開口端部52eの深さH2eは、第2サイプ52の中央部52cの深さH2cに比べて深さが小さい。深さH2eは、深さH2cに対して、20%以上の深さであると好ましく、25%の以上の深さであるとより好ましい。また、深さH2eは、深さH2cに対して、40%以下の深さであると好ましく、35%以下の深さであるとより好ましい。また、深さH2cは、深さH1cと同じ深さであるとよい。ただし、深さH2cを、深さH1cより小さくしてもよい。
第1、第2サイプの開口端部51e、52eが位置するセンターブロック5の外縁付近におけるブロック剛性は、サイプの中央部51c、52cが位置するセンターブロック5の中央部のブロック剛性よりも低い。そのため、サイプの開口端部51e、52eにおけるサイプの深さを、それぞれ、センターブロック5の中央部51c、52cにおけるサイプの深さよりも小さくする。これにより、第1、第2サイプの開口端部の倒れ込みを抑えて、氷雪路面でのトラクション性能と操縦安定性能、及び乾燥路面での操縦安定性能を向上することができる。また、倒れ込みの抑制は、サイプを閉じにくくして水の掃き出し作用の低下の抑制につながり、耐ハイドロプレーニング性能の確保も可能となる。
サイプの開口端部のブロック剛性に関し、タイヤ周方向におけるブロックの両端部におけるブロック剛性は、タイヤ周方向におけるブロックの中央部におけるブロック剛性よりも低い。そのため、第2サイプ52の開口端部52eの深さH2eを、第1サイプ51の開口端部51eの深さH1eよりも小さくする。これにより、サイプの開口端部の倒れ込みを抑えて、氷雪路面でのトラクション性能と操縦安定性能及び乾燥路面での操縦安定性能を向上することができる。また、倒れ込みの抑制は、サイプを閉じにくくして水の掃き出し作用の低下の抑制につながり、耐ハイドロプレーニング性能の確保も可能となる。
タイヤ周方向におけるセンターブロック5の両端部の各々に第2サイプ52が配置されており、両端部の各々に配置された第2サイプ52の間には、第1サイプ51が含まれる。また、複数並ぶ第1サイプ51の間に、第2サイプ52’が配列されていてもよい。
第2サイプ52’について説明する。図3(c)は、図2における第2サイプ52’のサイプ延在方向に延びるC-C線分における断面図である。第2サイプ52’の開口端部52’eの深さH2’eは、第2サイプ52の開口端部52eの深さH2eと同じ大きさであると好ましいが、ブロック剛性の最適化のため、深さH2’eを深さH2eと異ならせてもよい。いずれにせよ、第2サイプ52’の開口端部52’eの深さH2’eは、第1サイプ51の開口端部51eの深さH1eよりも小さい。
第2サイプ52’の中央部52’cの深さH2’cは、第1サイプ51の中央部51cの深さH1cと同じ値、すなわち一律に設定している。ブロックの中央部におけるサイプの深さを一律に設定することで、エッジ効果を適切に発揮させ、氷雪路面でのトラクション性能と操縦安定性能を向上させる。
以上により、乾燥路面で操縦安定性能を確保しつつ、氷雪路面でのトラクション性能と操縦安定性能を向上させる。
図4(a)は、センターブロック5におけるタイヤ幅方向外側からみた側面図である。同図に示すように、第1サイプ51と第2サイプ52(52’)とを1本ずつ交互に配置されていてもよい。これにより、タイヤ周方向におけるセンターブロック5の中央部におけるブロック剛性の低下が抑制される。そのため、ブロックの倒れ込みが抑制され、乾燥路面での操縦安定性能を確保できる。
図4(b)は、センターブロック5の他の実施形態におけるタイヤ幅方向外側からみた側面図である。同図に示すように、センターブロック5の両端部の各々に配置された第2サイプ52の間には、第1サイプ51のみが配置されていてもよい。これにより、タイヤ周方向におけるブロック5の中央部におけるブロック剛性が低下し、氷雪路面でのトラクション性能及び操縦安定性能を向上させる。
図4(a)では、サイプ群が、第1サイプ51と第2サイプ52(52’)との二種のサイプからなる例を示した。但し、これに限られず、第1サイプ51と第2サイプ52(52’)とに第3サイプを加えた三種のサイプからなるサイプ群でもよく、更に、四種以上のサイプを含んでもよい。タイヤ周方向中央部に向かうほど開口端部の深さが深くなるように各サイプを配置してもよい。また、第2サイプ52は、タイヤ周方向両端部にそれぞれ複数本配置してもよい。
各開口端部51e、52e、52’eのサイプ延在方向における長さは、全て同じ長さでもよく、異なる長さでもよい。例えば、ブロック剛性の高いタイヤ周方向中央部にある開口端部51e、52’eを短く、タイヤ周方向両端側にある開口端部52eを長くしてもよい。タイヤ周方向中央部に向かうほど開口端部の長さを短くするようにしてもよい。これらにより、ブロック剛性の最適化を図る。また、ブロック内のサイプの左開口端部と右開口端部との長さを異ならせてもよい。
以上、センターブロック5を例に説明したが、センターブロック4、及びタイヤ周方向に間隔を空けて配置される他のショルダーブロックについても同様である。
また上記で説明した内容を、クォータブロック6、7に適用してもよい。これにより、氷雪路面の旋回時の操縦安定性能を向上させる。
本実施形態において、ショルダーブロック8、9を除くブロック、すなわち、センターブロック4、5とクォータブロック6、7に設けられるサイプは、全て2次元サイプにするとよい。2次元サイプとは、サイプの深さ方向に沿ってサイプの形状が変化しないものを指す。これにより、ブロック剛性を十分に低下させることができる。ただし、ブロック剛性が過度に低下したり、トレッド面全体の剛性バランスが崩れたりする場合は、センターブロック4、5及びクォータブロック6、7に3次元サイプを設けても構わない。ショルダーブロック8、9には、2次元サイプと3次元サイプとの一方又は両方を配置してもよい。
サイプの両端がそれぞれブロックの外縁で開口する両側オープン状態であると好ましい。しかしながら、サイプの一部又は全部において、サイプの片端のみがブロックの外縁で開口する片側オープン状態でも構わない。両側オープン状態のサイプが増加するほど、ブロック剛性の低下効果が高くなる。第1サイプと第2サイプが両側オープン状態である場合は、第1サイプと第2サイプ全ての両端の開口端部の各々において、上述の構成が適用されていると好ましい。
本実施形態では、サイプ群を構成する各サイプは、直線か、緩やかな曲線で延びる形状を有しているが、サイプの形状はこれに限らない。例えば、サイプが波形状を有していてもよい。波形状のサイプは、ストレート形状のサイプに比べてタイヤ周方向に生じる偏摩耗であるヒールアンドトウ摩耗を抑えられる。また、波形状の場合、角部を有しておらず、応力集中による偏摩耗が起きにくい。
センターブロックにおけるサイプの延在方向は、タイヤ幅方向に対して0~5度の角度を有すると好ましい。これにより、センターブロックに形成されたサイプ群によるエッジ効果が、特に氷雪路面でのトラクション(駆動・制動)性能の向上に寄与する。クォータブロックにおけるサイプの延在方向は、タイヤ幅方向に対して10~30度の角度を有すると好ましく、20~30度の角度を有すると、より好ましい。これにより、クォータブロックに形成されたサイプ群によるエッジ効果が、特に旋回時における走行性能の向上に寄与する。ショルダーブロックにおけるサイプの延在方向は、タイヤ幅方向に対して10~15度の角度を有すると好ましい。これにより、ショルダーブロックに形成されたサイプ群によるエッジ効果が、特に旋回時における走行性能の向上に寄与する。
また、サイプの中央部が波形状でありサイプの両端部がストレート形状をなす形状であると好ましい。サイプの中央部の波形状では、多方向からの力に対して高いエッジ効果が得られ、サイプの両端部のストレート形状では、サイプ両端部におけるサイプの延在方向とブロック外縁とのなす角部の鋭角度が小さくなり、当該角部における剛性が確保される。これにより、タイヤ幅方向に生じる偏摩耗が大きくなる傾向にある。
上記空気入りタイヤは、夏の路面と冬の路面とで使用可能な、いわゆるオールシーズン用タイヤでもよいが、主に冬の氷雪路面で用いる氷雪路用タイヤ(いわゆる冬用タイヤ)でもよい。氷雪路用タイヤは、例えばトレッド面のゴム硬度が60度~75度の範囲にあり、オールシーズン用タイヤを含む通常のタイヤに比べて、トレッド面のゴム硬度が低い。
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部を上記の如く構成すること以外は、通常の空気入りタイヤと同等に構成でき、従来公知の材料、形状、構造、製法などは何れも採用できる。図示は省略するが、本実施形態の空気入りタイヤは、一対のビード部と、そのビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部と、そのサイドウォール部の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部100とを備えている。
本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
実施例1として、図4(a)に示した、第1サイプと第2サイプとが交互に設けられたサイプ群を、センターブロックとクォータブロックとに設けたトレッド部を有する空気入りタイヤを評価した。トレッド面のゴム硬度は65度である。第1サイプの開口端部の、第1サイプの中央部に対する深さの比(H1e/H1c)は45~65%である。タイヤ周方向におけるブロック5の両端部の各々に設けられた第2サイプの開口端部の、第2サイプの中央部に対する深さの比(H2e/H2c)は15~35%である。第1サイプ間に設けられた第2サイプの開口端部の、当該第2サイプの中央部に対する深さの比(H2’e/H2’c)は10~30%である。実施例2~4及び比較例2における各サイプの比も同様である。各実施例・比較例において、サイプの本数やサイプ幅等の、記載していない条件については、統一した値を使用している。
実施例2として、図4(b)に示した、ブロックの両端部の各々に配置された第2サイプの間には第1サイプのみが配置されたサイプ群を、センターブロックとクォータブロックとに設けたトレッド部を有する空気入りタイヤを評価した。トレッド面のゴム硬度は65度である。
実施例3として、図4(a)に示した、第1サイプと第2サイプとが交互に設けられたサイプ群を、センターブロックとクォータブロックとに設けたトレッド部を有する空気入りタイヤを評価した。トレッド面のゴム硬度は60度である。
実施例4として、図4(a)に示した、第1サイプと第2サイプとが交互に設けられたサイプ群を、センターブロックとクォータブロックとに設けたトレッド部を有する空気入りタイヤを評価した。トレッド面のゴム硬度は55度である。
比較例1として、サイプの延在方向に同じ深さのサイプを、タイヤ周方向に間隔を空けて配列したサイプ群を、センターブロックとクォータブロックとに設けたトレッド部を有する空気入りタイヤを評価した。トレッド面のゴム硬度は65度である。
比較例2として、図4(a)に示した、第1サイプと第2サイプとが交互に設けられたサイプ群を、センターブロックとクォータブロックとに設けたトレッド部を有する空気入りタイヤを評価した。トレッド面のゴム硬度は45度である。
<評価>
各実施例と比較例の空気入りタイヤをテスト車両に取り付けて、雪上駆動性能、雪上操縦安定性能、ドライ操縦安定性能、及び耐ハイドロプレーニング性能を評価した。評価条件と評価項目の詳細を下記に示す。
<評価条件>
タイヤサイズ:225/50R17
リム:17X7.5J
タイヤ内圧:220kPa
テスト車両:排気量1984ccの乗用車
<雪上駆動性能の評価>
タイヤを車両に装着して雪上路での加速試験を行い、停止状態から20m走行するまでの時間を計測した。評価結果は、計測値の逆数を用い、比較例1の結果を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど雪上駆動性能が優れていることを意味する。
<雪上操縦安定性能の評価>
各タイヤをテスト車両に装着して圧雪路面にて、加速・制動・旋回・レーンチェンジをする走行を実施した。専門のドライバーにより相対的に評価し、比較例1の結果を100として指数で示した。この指数値が大きいほど雪上操縦安定性能が優れていることを意味する。
<ドライ操縦安定性能の評価>
タイヤを車両に装着してアスファルト舗装された乾燥路面にて、加速・制動・旋回・レーンチェンジをする走行を実施した。専門のドライバーが相対的に評価し、比較例1の結果を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど乾燥路面での操縦安定性が優れていることを意味する。
<耐ハイドロプレーニング性能の評価>
タイヤを車両に装着し、テスト車両の左右一方側のタイヤが10mmの水膜を有する濡れたアスファルト舗装路面上を通過し、他方側のタイヤが乾燥したアスファルト舗装路面上を通過するように走行した。前記一方側のタイヤと前記他方側のタイヤとのスリップ率の差が10%を越えた際の速度を測定した。結果は、比較例1の結果を100とする指数で示した。この指数値が大きいほど耐ハイドロプレーニング性能に優れる。
Figure 0007178254000001
表1に評価結果を示す。これより、各実施例は比較例1に対し、ドライ操縦安定性能を確保したうえで、雪上駆動性能及び雪上操縦安定性能を大きく向上させることがわかった。また、耐ハイドロプレーニング性能も確保できることがわかった。また、比較例2では、トレッド面のゴム硬度が低すぎると、ドライ操縦安定性能及び耐ハイドロプレーニング性能が十分に得られないことがわかった。
1…第1溝
2…第2溝
4、5…センターブロック
6、7…クォータブロック
8、9…ショルダーブロック
51…第1サイプ
52、52’…第2サイプ
100…トレッド部

Claims (3)

  1. タイヤ幅方向に対して傾斜して互いに交差する第1溝と第2溝によって区画されたブロックを複数含むトレッド部を備える空気入りタイヤであって、
    前記トレッド部のトレッド面は、50度以上のゴム硬度を有し、
    前記ブロックには、複数の第1サイプと複数の第2サイプとを含む複数のサイプをタイヤ周方向に間隔を空けて配列してなり、前記第1サイプと前記第2サイプが交互に配置され、長さが不統一のサイプ群が形成されており、
    前記第1サイプは、前記ブロックの外縁で開口する開口端部を有し、前記第1サイプの開口端部では前記第1サイプの中央部に比べて深さが小さく、
    前記第2サイプは、前記ブロックの外縁で開口する開口端部を有し、前記第2サイプの開口端部では前記第2サイプの中央部に比べて深さが小さく、且つ前記第1サイプの開口端部に比べても深さが小さく、
    タイヤ周方向における前記ブロックの両端部の各々に前記第2サイプが配置されており、
    前記ブロックの両端部の各々に配置された前記第2サイプを除いて、前記サイプ群を構成する複数の前記サイプの中央部の深さが一律に設定されている、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記ブロックは、センターブロック及びクォータブロックの一方、又は、両方のブロックに該当し、
    前記センターブロックは、タイヤ赤道と重なる位置に設けられ、又は、前記タイヤ赤道と重なる位置に配置された溝に隣接して設けられ、
    前記クォータブロックは、前記センターブロックと、タイヤ幅方向最外側に設けられたショルダーブロック又はショルダーリブとの間に設けられている、請求項に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記空気入りタイヤは氷雪路用タイヤである、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
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