本明細書に記載されるように、必要に応じて、特定の先験的知識なしに、様々な技術、技法等がsaRNAを提供することができ、ここでは、かかるsaRNAは直接的又は間接的に投与され、細胞増殖に影響を与えることができる。様々な例では、細胞増殖を阻害するポリペプチドの存在によるものではなく、むしろ1つ以上のポリペプチドの産生に関する機構(又は機構(複数))を制御することにより、細胞増殖が影響を受ける。本明細書に記載されるように、かかる1つ以上のポリペプチドのそれぞれは、ポリペプチド分子それ自体の存在によって、細胞増殖を阻害する場合も阻害しない場合もある。
本発明者は、インビボ又はインビトロでアルブミン産生をアップレギュレートする新しい方法を提供することに着手した。本発明者は、アルブミン産生をアップレギュレートする新しい短鎖RNAsを開発した。このアップレギュレーションは、アルブミン産生に関与する標的遺伝子をアップレギュレートすることにより達成される。これらRNAsは遺伝子発現を活性化するので、これらは短鎖活性化RNA(saRNA)とも呼ばれる。用語「短鎖RNA」と「saRNA」とは本明細書で互換的に使用される。
理論によって束縛するものではないが、本発明の短鎖RNA分子は、上述の機構A及び/又はBを通して作用することができると考えられる。本発明の短鎖RNAsは、標的遺伝子の領域にアンチセンスである標的RNA転写物のsiRNA様切断を誘導することにより、標的遺伝子の調整を達成することができる。また、本発明の短鎖RNAsは、アルゴノート(Argonaute)タンパク質との複合体で、調節クロマチン修飾タンパク質のためのアンカーとして作用することもできる場合がある。作用のsRNA機構は、例えばポリコーム群タンパク質を通してのクロマチン再構築に関与する。ポリコーム群タンパク質は、明らかにプロモータ関連RNAsを含めるncRNAsと直接的に相互作用することができ、これによって、プロモータに提供され、サイレンシングに影響を及ぼす。したがって、saRNAは、かかるポリコーム提供ncRNAsを妨害することにより、プロモータにおけるポリコームレベルを低減し、トライソラクス(Trithorax)群タンパク質などの「積極的」クロマチン再構築複合体が積極的ヒストンマークを確立することを可能にする。
したがって、saRNA分子は、標的アンチセンスRNA転写物のダウンレギュレーションを介してアルブミン産生をアップレギュレートすることができる。
本発明者は、好適なRNA標的転写物の同定及びこれらsaRNAsの設計に好都合な方法/アルゴリズムを使用した。その結果、本発明者は、アルブミン産生に関与する標的遺伝子をアップレギュレートするために、宿主細胞中でRNA転写物を標的とする新規な短鎖RNAsを提供した。
本発明の短鎖RNAsは、本明細書では「アルブミン産生アップレギュレート」RNAsとも呼ばれる。本発明のsaRNAsの好ましい機能を以下に説明する。
「アルブミン産生に関与する標的遺伝子」とは、本明細書では好都合に「標的遺伝子」と呼ばれ、活性化/アップレギュレートされる場合、アルブミン産生を増加させる遺伝子を意味する。実施例に示すように、アルブミン遺伝子をアップレギュレートするsaRNAs、又はCEBPA遺伝子をアップレギュレートするsaRNAを使用して、アルブミン産生が特にアップレギュレートされ得る。したがって、標的遺伝子は、好都合にアルブミンをコードする遺伝子(「アルブミン遺伝子」)であり得、この場合saRNAは直接的影響を有すると思われる。あるいは、標的遺伝子は、アルブミンの産生を直ちに又は最終的に調節する因子をコードすることができ、この場合、saRNAは間接的影響を有すると思われる。かかる因子は、例えば転写因子であり得る。好ましい例としては、CEBPA及びHNF4αが挙げられる。
アルブミンは、身体の有力な血清結合タンパク質である。これはいくつかの重要な機能を有する。アルブミンは浸透圧に影響を及ぼすために、静水圧を相殺するために十分なコロイド浸透圧をアルブミンがもはやそれ以上維持しない場合、浮腫が発症する。アルブミンは、ビリルビン、脂肪酸、金属、イオン、ホルモン、及び外因性薬剤を含める様々な物質を輸送する。アルブミンは血小板機能にも影響を及ぼす。
CCAAT/エンハンサー結合タンパク質アルファ(CEBPA、C/EBPαとしても既知)は、タンパク質の塩基性ロイシンジッパークラスをコードするイントロン不含遺伝子である。CEBPAタンパク質は、2つのN末端トランス活性化ドメイン、塩基性DNA結合ドメイン及びC末端ロイシンジッパードメインからなる。CEBPAは、ラットの肝臓核から最初に精製された配列特異的なDNA結合タンパク質である。CEBPAに関する結合部位としては、CCAATボックス及びエンハンサーコア相同体が挙げられる。これは、シス-調節DNA配列と選択的に統合し、mRNA合成を積極的に制御することができる。シス-調節配列を積極的に調節するこの能力に基づくと、CEBPAは転写因子としてクラス分けされる。
CEBPAは、これが脂肪細胞、II型肺胞細胞及び肝細胞を含む多くの細胞型の分化において重要な役割を果たす様々な組織において発現される。マウスでは、CEBPAは、脂肪、肝臓及び肺組織において最も豊富に見出される。CEBPAは、最終分化肝実質細に更に限定される。肝細胞におけるCEBPAの機能的役割が、Darnellらによって報告され、そのα-1-アンチトリプシン、トランスチレチン及びアルブミンの調節を示している。更に、肝細胞系(HepG2)における機能的CEBPAの発現は、シトクロームP450のレベルを増加させ、シトクロームP450は、内因性基質の代謝に関与し解毒作用及び重要な薬物動態の代謝活性化において重要な役割を果たすモノオキシゲナーゼのスーパーファミリーである。CEBPAは、アルブミン遺伝子のプロモータ要素上のその存在によって証明されるように、肝臓特異的遺伝子において生理学的に関連する役割を果たす。
HNF4A(肝細胞核因子4アルファ)は、いくつかの遺伝子の発現を制御する核転写因子である。これはホモ二量体として結合し、肝臓、腎臓、及び腸の発生において役割を果たすことができる。HNF4A変異は、単一遺伝子常染色体性優性非インスリン依存性I型糖尿病に関連する。
本発明によるアルブミン産生アップレギュレーションは、好ましくは上述の標的遺伝子から選択される単一の標的遺伝子をアップレギュレートすることにより、若しくは少なくとも2つ又は少なくとも3つの異なる標的遺伝子をアップレギュレートすることにより達成され得る。好ましい組み合わせは、アルブミン遺伝子とCEBPA遺伝子;アルブミン遺伝子とHNF4A遺伝子;CEPBA遺伝子とHNF4A遺伝子;又はアルブミン遺伝子、CEBPA遺伝子及びHNF4A遺伝子のアップレギュレーションである。任意の特定の標的遺伝子のアップレギュレーションは、単一のsaRNA(一本鎖又は二本鎖)若しくは2つ又はそれ以上の異なるsaRNA(一本鎖又は二本鎖)の組み合わせを使用して達成され得る。2つ又はそれ以上の標的遺伝子がアップレギュレートされる場合、このときは、第1の標的遺伝子に特異的な少なくとも1つのsaRNAと第2の遺伝子に特異的な少なくとも1つのsaRNAが使用される。したがって、少なくとも1、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14の異なるsaRNAが、任意の組み合わせで使用されてもよい。好ましくは、saRNAは、配列番号5~36の配列を含む又はこれらからなる第1の鎖を含む。
以下に説明されるように、多くの状態が低アルブミン血症を特徴とするために、かかる状態に冒されている患者においてアルブミンレベルを増加させる必要性が存在する。したがって、本発明は、かかる状態の治療のために新しい治療的アプローチを提供する。
驚くべきことに、本発明者は、実施例で示すように、過剰増殖性細胞中でアルブミン発現をアップレギュレートすることが、この細胞の増殖を阻害し、インビボでアルブミン発現をアップレギュレートすることが、腫瘍発生及び成長を阻害することを見出した。このことは、過剰増殖性障害の治療に新しい治療的アプローチを開く。
本明細書で記載されるように、細胞は単鎖活性化RNAの投与により修飾され、これにより細胞に分子の産生を増加させ、この産生が細胞増殖に影響を与えることができる。例として、肝細胞は、saRNAの投与によりアルブミンの産生を増加するよう修飾される。その後、分裂する(すなわち、増殖する)ための肝細胞の能力が、悪影響を受ける。言い換えると、アルブミンの産生における増加に関連する機構又は機構(複数)は、処置された肝細胞が低減された増殖を呈することを引き起こす。本明細書で記載されるように、saRNAは、原発性肝癌などの癌の治療又は予防に有用であり得る。例えば、肝臓癌に関して、治療又は予防は、saRNAを肝硬変(例えば、肝炎ウイルス又はエタノール中毒に起因する)を有する患者に投与することにより生じ得る。
例としては、ヒト肝細胞癌(HepG2)細胞系において細胞増殖に及ぼすアルブミンmRNA転写物をアップレギュレートする影響を探求する目的で、試験が行われた。この試験は、アルブミンを標的化する合成saRNAの使用を含み、これはナノフェクチン(Nanofectin)・リポソーム法を使用してHepG2にトランスフェクトされた。これら試験については、トランスフェクションの成功は、HepG2細胞中のmRNAレベルにおける増加により測定された。影響を立証するために、細胞増殖の変化が、テトラゾリウム塩、4-[3-(4-ヨードフェニル)2-(4ニトロフェニル)2H-5-テトラゾリオ]1,3ベンゼンジスルホネート(WST-1)増殖アッセイを使用して測定された。
これら試験は、アルブミン遺伝子のプロモータ領域を標的化したsaRNAが、HepG2細胞中に成功裏にトランスフェクトされたこと(例えば、スクランブルされたRNA対照でトランスフェクトされた細胞と比較する場合、アルブミンmRNAレベルが増加したために)を裏付ける結果を示した。これら結果は、細胞増殖が、アルブミン発現をアップレギュレートするよう再プログラムされた細胞でのみ著しく低下することを示した。かかる効果はまた、アルブミンを発現するヒト細胞系においても観察された。更に特記すべきことに、アルブミンを発現しないラットの肝臓線維芽細胞については、同一のsaRNAsでのこれらラット細胞のトランスフェクションは、アルブミンmRNAのアップレギュレーション又は細胞増殖を変化させなかった。
本明細書に記載されるように、HepG2細胞中でアルブミン転写物を増強させることは、細胞増殖を間接的に抑制する。転写因子p53、HNF4-α、CEBPA-α及びCEBPAがアルブミン発現及びアポトーシスの誘導で有する確立された役割に即して、本明細書で記載される技法、技術等は、アルブミンに特異的なsaRNA分子で肝臓癌を標的化するための機会を提供する。本明細書に記載されるように、より一般的には、saRNA分子は1つ以上の分子の産生を増加することができ、これによって産生に関連する機構又は機構(複数)は細胞増殖に影響を与えることができ、具体的には細胞増殖を低減することができる。細胞増殖における低減は、様々な状態の治療に有益であり得る。
肝細胞は、一般的には、いくつかの生体機能の維持のために重要であるとして認識されている。例えば、肝細胞は炭水化物及び脂質代謝並びに外因性及び内因性化合物の解毒を調節することができる。これらはまた、アルブミンなどの血漿タンパク質を産生することができる。アルブミンは、身体を通しての粒子の輸送及び血中の血清コロイド浸透圧の保存に重要である典型的な肝臓特異的遺伝子である。アルブミンに関する遺伝子(アルブミン遺伝子)は出生後に肝臓内で高度に発現され、この調節は、アルブミンプロモータ要素に結合する多数の因子により示されるように、転写的に制御される(例えば、Panduroら著、1987年;Tilghman及びBelayew著、1982年を参照)。アルブミンプロモータ内にはいくつかのシス作用性要素が存在する(部位A~F)。B及びD部位は、これら要素に結合する肝臓特異的転写因子として重要であると示されている(例えば、Marireら著、1989年を参照)。HNF-1がB部位に結合することが示されている(例えば、Courtoisら著、1988年;Lichtsteiner及びSchibler著、1989年を参照)。転写因子のロイシンジッパータンパク質に属するC/EBP族の構成員は、アルブミンプロモータのD部位において相互作用することが示されている(例えば、Descombesら著、1990年;Landschulzら著、1988年;Muellerら著、1990年を参照)。
一般的に、いくつかの事象は、アルブミン遺伝子の発現に影響を及ぼす場合がある。生理学的条件下で、細胞外膠質浸透圧は、HNF-1を介してアルブミン遺伝子発現を制御することが示されている(例えば、Pietrangeloら著、1992年;Pietrangelo及びShafritz著、1994年を参照)。肝臓の急性相反応などの病理学的状態の間に、アルブミン遺伝子発現はダウンレギュレートされることが示されている(例えば、Trautweinら著、1994年を参照)。近年、いくつかの転写因子がクローンされ、これが急性相遺伝子の調節への関与を示した。これら転写因子としては、STAT3、C/EBP-β、IL-6-DBP、NF-IL6、LAP又はCRP2が挙げられる(例えば、Akiraら著、1990年;Akiraら著、1994年;Caoら著、1991年;Changら著、1990年;Descombesら著、1990年;Poliら著、1990年;Williamsら著、1991年;Zhongら著、1994年を参照)。転写因子のC/EBPファミリーは、アルブミンプロモータのD部位に結合するこのファミリーの構成員として特に関係があり、p53及びHNF4-αを介して細胞周期停止も調節する(例えば、Baroneら著、1994年;Buckら著、1994年;Johnson著、2005年、Nagaoら著、1995年を参照)。HNF4-α及びCEBP-αは、双方ともに肝臓機能及び分化に重要であることが示されている(例えば、Hayhurstら著、2001年:Leeら著、1997年;Wangら著、1995年を参照)。いくつかの研究は、腫瘍抑制因子p53の過発現によるHNF4-α及びCEBPの双方の転写抑制は、癌における不良肝臓分化に相関することを示した(例えば、Itohら著、2000年;Nagaoら著、1995年;Ngら著、1995年を参照)。p53レベルにおける増加が、恐らくはCEBP-α及びβ転写活性の阻害を通してのアルブミン発現における低減に相関することが示されている(例えば、Kubickaら著、1999年)。通常の条件下では、p53の野生型レベルは、非常に低く、DNA損傷、成長因子の除去及び低酸素症などの細胞ストレスに応答してのみ増加する(例えば、Prives著、1998年を参照)。p53タンパク質レベルの緊密な調節は、細胞周期の遮断及びアポトーシスの誘導を妨害するために必要とされることが示された。
アルブミンは細胞増殖において役割を有するとは考えられず、すなわち、アルブミンは細胞周期には関与せず、かつ細胞増殖に必要とされず、アルブミンの正常レベルが細胞増殖に影響を及ぼすことも考えられない。アルブミンは、細胞増殖に関与するサイクリン及びサイクリン依存的キナーゼなどのタンパク質とは対照的であり得る。理論によって束縛されようとするものではないが、本発明者は、アルブミン産生のアップレギュレーションによって、細胞の供給源が細胞増殖から逸らされ、細胞増殖が結果的に低下し又は完全に停止することを提案する。
本明細書に記載されるように、例として、アルブミンのアップレギュレーション(図23を参照)は、p53レベルが低減され、HNF4α、CEBPA-α及びβの転写における増加が生じ、細胞増殖及び成長を制限する通常の条件へ細胞を「騙して」復帰させることであり得る(例えば、Maedaら著、2002年を参照)。試験からの証拠は、saRNAによるアルブミンのアップレギュレーションが、肝臓癌細胞系の増殖を顕著に抑制することを裏付けている(図3を参照)。
したがって、一態様では、本発明は、過剰増殖性障害を治療する又は予防する方法を提供し、方法は、これを必要とする被験者に、アルブミン産生をアップレギュレートすることによって細胞増殖を阻害する短鎖活性化RNAを投与する工程を含む。
別の観点では、本発明は、短鎖活性化RNAを提供し、これは、アルブミン産生をアップレギュレートすることによって、療法における使用のために、好ましくは過剰増殖性障害を治療し又は予防する上での使用のために細胞増殖を阻害する。
更に提供されるものは、細胞増殖を阻害するインビトロ、エクスビボ又はインビボの方法であり、方法は、細胞(試料)、組織(試料)、器官又は被験体を、アルブミン産生をアップレギュレートすることによって細胞増殖を阻害する短鎖活性化RNAと接触させる工程を含む。
更に提供されるものは、過剰増殖性障害を特徴とする状態を有する被験者を治療する方法であり、方法は、該被験者に、アルブミン産生をアップレギュレートする短鎖活性化RNAを投与する工程を含む。
別の観点では、本発明は、療法における使用のために、好ましくは過剰増殖性障害を特徴とする障害を治療する上での使用のために、アルブミン産生をアップレギュレートする短鎖活性化RNAを提供する。
更に提供されるものは、細胞によるアルブミン産生をアップレギュレートするインビトロ、エクスビボ又はインビボの方法であり、方法は、細胞(試料)、組織(試料)、器官又は被験者を、アルブミン産生をアップレギュレートする短鎖活性化RNAと接触させる工程を含む。
別の態様では、本発明は、アルブミン産生をアップレギュレートすることが可能なsaRNAを提供する。saRNA分子の任意の機能は、本明細書の別の箇所に記載される。
本発明のsaRNAsは、二重効果を好都合に及ぼすことができ、すなわち、細胞増殖を阻害しかつアルブミンレベルを増加させることである。過剰増殖性障害に冒された被験者に投与される場合、saRNAsは過剰増殖性細胞の増殖を低減するばかりではなく、これらはまた肝機能を改善するなどの種々の肯定的な結果を有することができる。低アルブミン血症に冒された被験者に投与される場合、saRNAsはアルブミンレベルを増加させることによって低アルブミン血症を軽減し、これらはまた過剰増殖性障害の発生を予防するよう補助する。多くの肝臓障害、特に肝硬変は、低アルブミン血症で特徴付けられ、特に処置されないままの場合、典型的には癌を発生する被験者のリスクを増大させる。本発明は、かかる肝臓障害のための特に有利な治療、低アルブミン血症を軽減し、癌のリスクを低減する治療を提供する。したがって、本明細書で提供されるものは、低アルブミン血症及び過剰増殖性障害を特徴とする状態を同時に治療するsaRNAsである。
「アルブミン産生をアップレギュレートすることが可能」とは、アルブミンを産生する、好ましくは自然にいくつかのアルブミンを産生するための必要な可動部を有する細胞内にある場合、saRNAがアルブミン産生をアップレギュレートすることを意味する。好都合なことに、アルブミン産生をアップレギュレートすることが細胞増殖、特に過剰増殖を阻害することで、該saRNAは細胞増殖、特に過剰増殖を阻害することが可能である。「細胞増殖を阻害することが可能」とは、saRNAが、細胞増殖のために必要な可動部を有する細胞内にある場合、細胞増殖を阻害することを意味する。
別の態様では、本発明は、本発明のsaRNA分子を含むエクスビボ又はインビトロの細胞を提供する。別の態様では、本発明は、本明細書で開示された方法により、その中でアルブミン産生がアップレギュレートされたエクスビボ又はインビトロの細胞を提供する。したがって、かかる細胞は、本明細書で開示された方法により得られ又は得られることが可能である。更に本明細書で提供されるものは、治療における使用、好ましくは低アルブミン血症を特徴とする状態又は任意の他のタイプの肝臓疾患の治療における使用のためのかかる細胞である。
「過剰増殖性細胞」とは、同等で健康な細胞(「対照」と呼ばれ得る)の増殖速度と比較して異常に速い速度で増殖する任意の細胞であり得る。「同等で健康な」細胞とは、細胞の正常で健康な対応物である。したがって、これは同一の型の細胞であり、例えば、比較物細胞と同一の機能(複数可)を実行する、同一の器官からのものである。例えば、過剰増殖性肝細胞の増殖は、健康な肝細胞を参照することによって評価されるべきであり、一方過剰増殖性前立腺細胞の増殖は、健康な前立腺細胞を参照することによって評価されるべきである。
「異常に高い」増殖の速度とは、過剰増殖性細胞の増殖の速度が、同等で健康な(非過剰増殖性)細胞と比較するとき、少なくとも20、30、40%、又は少なくとも45、50、55、60、65、70、75%、又は少なくとも80%まで増大することを意味する。「異常に高い」増殖の速度はまた、同等物の増殖速度と比較して、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9倍まで、又は少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍まで、又は少なくとも60、70、80、90、100倍まで増大する速度を指す。
過剰増殖性細胞の例としては、癌性細胞(上皮癌、肉腫、リンパ腫及び芽細胞腫を含める)が挙げられる。かかる癌性細胞は、良性又は悪性であってもよい。過剰増殖性細胞はまた、リウマチ性関節炎、炎症性胃腸疾患、又は乾癬などの自己免疫性症状からの結果であり得る。過剰増殖性細胞はまた、過敏な免疫系を有する患者がアレルゲンに接触する中で生じることもある。過敏免疫系に関与するかかる症状としては、喘息、アレルギー性鼻炎、湿疹、及びアレルギー性アナフィラキシーなどのアレルギー反応が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用するとき、用語「過剰増殖性細胞」とは、大部分の細胞と比較するときより速い速度で自然に増殖する細胞を指すものではなく、これらは健康な細胞である。一生を通じて一定に分裂することが知られている細胞の例は、皮膚細胞、胃腸管の細胞、血液細胞及び骨髄細胞である。しかしながら、かかる細胞がこれらの健康な対応物に比べてより速い速度で増殖する場合、このときこれらは過剰増殖性である。
「過剰増殖性障害」とは、上記で定義した過剰増殖性細胞に関与する任意の障害であり得る。過剰増殖性障害の例としては、癌などの腫瘍性疾患、乾癬性関節炎、リウマチ性関節炎、炎症性胃腸疾患などの胃過剰増殖性障害、乾癬を含む皮膚疾患、ライター症候群、毛孔性紅色ひこう疹、及び角質化の異常の過剰増殖性異形が挙げられる。
癌は特に関心がもたれる過剰増殖性障害を代表するものであり、例えば、固形腫瘍及び血液癌を含む全ての型の癌が含まれる。癌の代表的型としては、子宮頚部癌、子宮癌、卵巣癌、腎臓癌、胆嚢癌、肝臓癌、頭頚部癌、扁平上皮癌、胃腸管癌、乳癌、前立腺癌、精巣癌、肺癌、非小細胞肺癌、非ホジキンスリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病(急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病など)、脳腫瘍(例えば、星状膠細胞腫、神経膠芽種、神経髄芽細胞腫)、神経芽細胞腫、肉腫、大腸癌、直腸癌、胃癌、肛門癌、膀胱癌、子宮体癌、形質細胞腫、リンパ腫、網膜芽細胞腫、腎芽細胞腫、ユーイング肉腫、黒色腫及び他の皮膚癌が挙げられる。肝臓癌又は前立腺癌が好適である。肝臓癌は、胆管癌、肝芽種、血管肉腫、又は肝細胞癌(HCC)を含み又はこれらからなり得る。HCCは、特に関心がもたれる。
好ましくは、腫瘍発生及び/又は成長が阻害される。好ましい実施形態では、固形腫瘍が処置される。別の好ましい実施形態では、転移が予防される。
「細胞増殖の阻害」又は「低減した増殖」とは、増殖が低減されるか又は完全に停止されることを意味する。したがって、「低減した増殖」とは、「増殖を阻害する」の実施形態である。細胞の増殖は、本発明のオリゴヌクレオチドで処置される前の該細胞の増殖と比較して、又は同等の未処置細胞の増殖と比較して、本発明のオリゴヌクレオチドの存在下で、少なくとも20%、30%又は40%まで、又は好ましくは少なくとも45、50、55、60、65、70又は75%まで、更により好ましくは少なくとも80、90又は95%まで低減される。細胞増殖が過剰増殖性細胞中で阻害される実施形態では、「同等の」細胞もまた過剰増殖性細胞である。好ましい実施形態では、増殖は、同等の健康な(非過剰増殖性)細胞の増殖速度に匹敵する速度まで低減する。別の観点では「細胞増殖を阻害する」好ましい実施形態は、過剰増殖性の阻害、又は増殖の正常で健康なレベルに到達するまで細胞増殖を調整することである。
当業者であれば、過剰増殖性細胞を同定する方法を完全に認識するであろう。動物内の過剰増殖性細胞の存在は、X線、MRI又はCTスキャンなどの走査を使用して同定可能であり得る。MTT、XTT、MTS又はWST-1アッセイなどの細胞増殖アッセイを使用するインビトロでの試料の培養を通して、過剰増殖性細胞はまた同定され得、又は細胞の増殖はアッセイされ得る。インビトロでの細胞増殖はまた、フローサイトメトリーを使用しても決定され得る。
上記に列挙した細胞増殖アッセイは、同一の原理によって全て機能する(主に細胞表面において生じる複雑な細胞機構により、安定なテトラゾリウム塩が切断され、可溶性ホルマザンを形成する)。この生体還元性は、生細胞中のNAD(P)Hの解糖産生に大きく依存する。したがって、形成されたホルマザン染料の量は、培養中の代謝的に活性な細胞の数に直接相関する。組織培養プレート中で増殖された細胞は、試薬と共に約0.5~4時間インキュベートされる。このインキュベーション時間後に、形成されたホルマザン染料が、走査マルチウェル分光光度計(ELISAリダー)で定量化される。測定された吸光度は、生細胞の数に直接相関する。
腫瘍発生又は成長は、外部ノギスを使用する腫瘍サイズの測定、例えばエリプソイドフォーミュラ、コンピュータ断層撮影法(CT)、マイクロCT、ポジトロン放射型断層撮影法(PET)、マイクロPET、磁気共鳴撮影法(MRI)、免疫組織化学法及び/又は生物発光撮影法(BLI)又は蛍光撮影法(FLI)などの光学撮影法の使用による腫瘍体積の計算などの1つ以上の既知の技術を使用してアッセイされ得る。動物試験では、一旦動物を致死させて、水置換体積を測定することによって腫瘍体積が決定され得、腫瘍重量がスケールを使用して決定され得る。
本発明の方法は、好ましくは少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80又は90%まで腫瘍体積を低減することが好ましい。好ましくは、1つ以上の新しい腫瘍の発生が阻害され、例えば本発明により処置された被験者は、より少ない腫瘍及び/又はより小さい腫瘍を発生する。「より少ない腫瘍」とは、被験者が時間の設定期間にわたって同等の被験者よりも少数の腫瘍を発生することを意味する。好ましくは、被験者は、同等の対照(未処置)被験者よりも少なくとも1、2、3、4又は5少ない腫瘍を発生する。「より小さい」腫瘍とは、この腫瘍が同等の被験者の腫瘍よりも重量及び/又は体積で少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、又は90%小さいことを意味する。
時間の設定期間は、任意の好適な期間、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10ヶ月又は数年であってもよい。
好ましくは、癌の発病が予防され又は遅延される。このことは、同等の対照(未処置)被験者を参照することによって評価され得る。
「同等の被験者」とは、例えば、同様な年齢、性並びに肝臓の健康状態又は癌のステージなどの健康状態の被験者、若しくは本発明による治療の前の同一の被験者であり得る。同等な被験者は、被験者が本発明によるsaRNAでの治療を受けていないことで「未処置」である。しかしながら、被験者は、本発明のsaRNAで処置される被験者が同一又は同等の通常の抗癌治療を受ける限りにおいて、通常の抗癌治療を受けてもよい。
アルブミン発現は、当業者が十分に理解する十分に確立された技術を通してアッセイされ得る。アルブミンをコードするメッセンジャーRNAのアップレギュレーションは、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、好ましくは半定量的又は定量的PCR(qRT-PCR)を使用して決定され得る。この方法は、定量的アッセイのためのハイブリダイゼーションリポータプローブの存在下でリアルタイム増幅サイクルを実行する前に、単離されたmRNAをcDNAに逆転写することを必要とする。アルブミンmRNA発現はまた、ノーザンブロット分析を使用して決定され得る。
アルブミンタンパク質の産生のアップレギュレーションは、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を使用して決定され得る。このELISAは、AssayMax Albumin ELISAキットなどのサンドイッチELISA法であってもよい。ここでは、試料がアルブミンに特異的な抗体で予め被覆されたマイクロプレートに加えられる。任意の非アルブミンタンパク質を除去する洗浄の後に、残存するアルブミンが別の特異的抗体を使用することによりサンドイッチ状態になる。検出可能な標識を有する二次抗体が加えられる前に、過剰な抗体が洗浄される。タンパク質発現はまた、ウェスタンブロット分析又はタンパク質質量スペクトル分析を使用して決定され得る。
「アルブミン発現をアップレギュレートする」とは、saRNAオリゴヌクレオチドの不在下のアルブミンの発現と比較して、本発明のsaRNAオリゴヌクレオチドの存在下で、アルブミンタンパク質の発現が、少なくとも20、30、40%まで、より好ましくは、少なくとも45、50、55、60、65、70、75%まで、更により好ましくは少なくとも80%まで増加させることを意味する。更に好ましい実施形態では、アルブミンタンパク質の発現は、saRNAオリゴヌクレオチドの不在下のアルブミンの発現と比較して、本発明のsaRNAオリゴヌクレオチドの存在下で、アルブミンタンパク質の発現が、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10倍まで、より好ましくは少なくとも15、20、25、30、35、40、45、50倍まで、更により好ましくは少なくとも60、70、80、90、100倍まで増加させることを意味する。別の好ましい実施形態では、アップレギュレーションは、血清アルブミンタンパク質の合成及びその活性型への処理の双方に関連する。
アルブミン産生のアップレギュレーションは、本発明のsaRNAsでの処置の前に試験細胞によるアルブミン発現を参照することにより、又は同等の未処置細胞(対照)によるアルブミン発現を参照することによりアッセイされてもよい。
好ましくは、本発明の方法は、アルブミンの分泌、より好ましくはアルブミンの分泌を増大させる。好ましくは、細胞内アルブミンレベル及び/又はアルブミンの血清レベルが増大する。
一部の実施形態では、本発明の方法は、CEBPA及び/又はHNF4Aの発現をアップレギュレーションさせるが、他の実施形態では、本発明の方法は、CEBPA及び/又はHNF4Aをダウンレギュレーションさせる。
一部の実施形態では、本発明の方法は、αフェトタンパク質及び/又は肝細胞成長因子をダウンレギュレーションさせる。
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法は、被験者へのsaRNAの投与の前及び/又は後に、細胞増殖をアッセイする工程及び/又はアルブミン産生をアッセイする工程を含むことができる。例えば、方法は、本発明による治療の結果として、アルブミン発現が増加したこと及び/又は過剰増殖性細胞、例えば癌細胞の増殖が低減したことを決定する工程を含むことができる。
低アルブミン血症は、血液血清内のアルブミンが不十分に又は異常に低い状態である。低アルブミン血症を特徴とする多くの状態があり、これらは低アルブミン血症を引き起こす状態及び低アルブミン血症の原因である状態を含める。かかる状態としては、限定されないが、B型肝炎及びC型肝炎などの肝疾患、肝臓のウイルス感染症、脂肪肝、肝硬変又はアルコール性肝炎などのアルコール性肝臓疾患、ネフローゼ症候群などの過剰レベルのアルブミンが排出されることを引き起こす状態、メネトリエ病などの胃腸を通してアルブミンが損失されることを引き起こす状態、血漿損失を通してアルブミンを損失する熱傷患者、及び浮腫などのアルブミンの再分布を引き起こす状態が挙げられる。かかる状態は、本発明のsaRNAオリゴヌクレオチドによって提供され得るアルブミンの増加したレベルから利益を得ることができる。
アルブミンの不十分なレベルは、その動物にとって健康であると考えられるレベルから外れるアルブミンのレベルによって定義される。例えば、ヒトでは、アルブミンの不十分なレベルは、38g/L以下又は35g/L以下、若しくは更に32又は30g/L以下のレベルであると考えられる。
したがって、肝疾患又は不良な肝機能は、低アルブミン血症を特徴とするために、被験者が本発明により提供される療法から利益を得ることができるかどうかを判定するために肝機能を評価することは有用であり得る。肝機能評価はまた、特定の治療の成功を判定する有用な方法も提供することができる。
本発明の治療から利益を得ることができる疾患肝臓を診断するよう使用され得る方法、又は特定の治療の成功を判定するための方法は、当該技術分野で既知である。肝機能試験は、動物から採取された血液試料を分析することを通して実行され得る。かかる肝機能試験において定量化されるタンパク質としては、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ(ALP)、γグルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、総タンパク質及びグロブリンタンパク質、並びに血清アルブミンを挙げることができる。これらタンパク質は、「肝機能マーカー」又は「肝臓健康マーカー」と呼ばれる場合がある。以下は、ヒトにおける上記タンパク質の健康な範囲を示す表である。
上記タンパク質の多くは疾患の肝臓特異的指標ではない。しかしながら、GGT上昇は、通常、単独で肝疾患のいくつかの型を示す。タンパク質レベルのいくつかが、組み合わされて分析される場合、これらは特定の肝疾患を判定する正確な手段であることができる。例えば、GGT上昇、ALTの減少及びALPの減少は組み合わされて、アルコール性肝疾患又は脂肪肝疾患の指標となり得る。GGT上昇、ALT上昇及びALPの減少は組み合わされて肝炎の使用となり得るが、これは脂肪肝疾患の指標となることもできる。
一部の実施形態では、本発明の方法は、肝疾患を診断する工程及び/又は本発明のsaRNA又は細胞から利益を得ることができる被験者を診断する工程を含む。該工程は、これら肝機能試験の1つ以上を実行することを含んでもよい。あるいは又はこれに加えて、方法は、本発明のsaRNA又は細胞の投与後に肝機能を分析する工程を含んでもよい。該工程は、これら肝機能試験の1つ以上を実行することを含んでもよい。好ましくは、該治療後に、該肝機能マーカーの少なくとも1つにおける改善が決定される。
例えば、ビリルビン、AST、ALT、ALP及びGGTの少なくとも1つが、1、2、3、4又は5倍の減少、又は少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80又は90%までの増加を示す場合がある。好ましくは、これらマーカーの少なくとも2、3、4つ又は全てがこのような減少を示す。したがって、本発明の方法は、20、15、10又は5μモル/L未満の血中ビリルビン濃度;45、40、30、25、20、15、10又は5U/L未満の血中AST濃度;45、40、30、25、20、15、10又は5U/L未満の血中ALT濃度;45、40、30、25、20、15、10又は5U/L未満のGGT濃度;及び/又は120、100、80、70、60、50又は40U/L未満であるが、30U/L以上が好ましい血中ALP濃度を与えることが好ましい。
本発明の方法は、少なくとも32、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50g/L、例えば38~55、40~55、42~55、45~55g/Lの血中アルブミン濃度を与えることが好ましい。
本発明による有効な治療とは、処置される疾患、過剰増殖性細胞又は低アルブミン血症に関与するものが治癒されることを意味することができる。しかしながら、有効な「治療」は、それが一時的又は永久的であっても、患者にとって有益であるいずれの転帰も包含する。この治療は、基礎疾患に影響を及ぼす場合があり、及び/又はこれは症状に影響を及ぼす場合もある。したがって、純粋に症状軽減もまた企図される。
本発明による予防とは、本発明のsaRNAオリゴヌクレオチド又は細胞の予防投与が、過剰増殖性細胞又はアルブミンの不十分なレベルに特徴がある状態の発生を予防し、そのリスクを低減し、又はそれを遅延することを意味する。かかる予防投与は、過剰増殖性細胞又は低アルブミン血症に特徴がある状態を発生する危険性がある患者に使用されてもよい。予防投与は、患者の生涯にわたって有効であり得る。しかしながら、予防投与はまた、患者の生涯にわたって、又は患者を危険にさらす状態が軽減され得るまで繰り返される必要があり得る。
本発明の方法では、細胞は本発明の短鎖RNA分子と接触される。この細胞はインビトロ、例えば、確立された細胞系又は被験者から以前に採取された試料であってもよく、若しくはこれらは被験者のインビボであってもよい。短鎖RNA分子は、本発明の短鎖RNAsと併せて任意の好適な送達用試薬を使用することにより、インビトロ又はインビボで細胞に投与され得る。かかる好適な送達用試薬としては、Mirus Transit TKO親油性試薬;リポフェクチン;リポフェクタミン、セルフェクチン;若しくはポリカチオン(例えば、ポリリジン)、ウイルス系粒子、電気穿孔デンドリマー又はリポソームが挙げられる。好ましい送達用試薬は、リポソームである。リポソームを調製するための多様な方法が既知である。
別の好ましい送達用試薬はデンドリマーである。デンドリマーは、Singhaら著(2011年)、Nucleic Acid Ther.、21:133(その全開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。デンドリマーは、規則的な高度に枝分かれした巨大分子である。好ましくは、このデンドリマーは、PAMAMデンドリマーなどのポリカチオン性デンドリマーである。理論によって束縛されようとするものではないが、PAMAMデンドリマーは、核酸結合を容易にするそれらの表面上の第一級アミン基を搭載し、細胞質内の核酸の放出を増強する第三級アミノ基を含有する。
細胞をsaRNAsに接触させる工程はまた、「トランスフェクション」とも呼ばれる。
特に好ましくは、本発明の短鎖RNAを封入するリポソームは、例えば、構造の表面に結合されたオプソニン化-阻害部分を有することにより、単核マクロファージ及び細網内皮系による浄化を回避するよう修飾される。一実施形態では、本発明のリポソームは、オプソニン化-阻害部分とリガンドの双方を備えることができる。
短鎖RNAsを発現することができる組換えプラスミドもまた、直接的に若しくはMirus Transit LT1親油性試薬;リポフェクチン;リポフェクタミン、セルフェクチン;ポリカチオン(例えば、ポリリジン)又はリポソームを含める好適な送達用試薬と併せて投与され得る。短鎖RNAを発現する組み換えウイルスベクター及びかかるベクターを細胞に送達するための方法は、当該技術分野で既知である。
好ましくは該接触させる工程は、複数回で、好ましくは3日毎に実施されるが、これは毎日、又は2、4又は5日毎に実施されてもよい。接触させる工程は、好ましくは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15日間にわたって実施され、約6日又は9日間であることが好ましい。数週間又は数ヶ月間にわたる規則的間隔での接触もまた企図される。
本明細書に開示される方法において、複数の標的遺伝子がアップレギュレートされる場合、このときは異なる標的遺伝子をアップレギュレートするよう使用される短鎖RNAsが、異なる頻度で異なる時間の長さにわたって投与され得る。使用される特定の投与レジメンは、当業者により、当業者の所望の目的、特定の出発細胞型及び送達法に適合するように容易に決定され得る。例として、本発明の短鎖RNA分子のピコモル濃度が使用されてもよい。
本発明の短鎖RNAは、単独で提供されても又は考えられる特定の方法において効力を有することが知られている他の活性薬剤(複数可)と併用されて提供されてもよい。他の活性薬剤(複数可)は、本発明の短鎖RNAと同時に、別個に又は逐次的に投与されてもよい。したがって、単一の本発明の短鎖RNA、2つ又はそれ以上の本発明の短鎖RNAsの組み合わせ若しくは該短鎖RNA(複数可)と他の活性物質(複数可)の併用を使用することが可能である。
本発明の方法は、動物である、より好ましくは哺乳類、例えばマウス、ラット、サル、イヌ、ウシ、ヒツジ、最も好ましくはヒトである細胞又は被験体で実行されることが好ましいが、必要に応じてこの細胞又は被験体は非ヒトである。この細胞又は被験体は、胎児であってもよいが、好ましくは成体である。
本発明の方法は、本発明のsaRNAと接触される細胞の集団内の細胞の全てにおいてアルブミン産生のアップレギュレーションを達成しなくともよく、又は実際に達成する必要はないことが認識されねばならない。したがって、本発明の方法を受ける、すなわち本発明のsaRNAと接触される細胞の集団から、好ましくは10、20、30、40、50、60、70、80又は90%が、より多くのアルブミンを産生するよう惹起され得るが、一部の実施形態では、アルブミン産生は、細胞の少なくとも95又は99%においてアップレギュレートされる。
インビトロ又はインビボ法は、(i)肝細胞などの自然にアルブミンを産生する細胞、(ii)幹細胞などの自然にアルブミンを産生する細胞に分化する可能性を有する細胞、又は(iii)体細胞の非肝臓細胞などの通常はアルブミンを産生しない細胞を使用して実行され得る。肝細胞又は幹細胞が好ましい。幹細胞は、全能性、多能性又は多分化能性、例えば、造血幹細胞(HSC)、間葉幹細胞(MSC)又は誘導多能性幹細胞であってもよい。
国際公開第2005/059113号は、多能性幹細胞の特に有利な型を開示する。この幹細胞は、骨髄及び/又は血液、例えば末梢血液から、若しくは臍帯又は胎盤から採取された物質から直接的に単離されることができ、外胚葉、中胚葉及び内胚葉細胞に分化する独自の能力を有する。故にこれら細胞は、全能性でないとしても、明確に多分化能性又は多能性である。したがって、国際公開第2005/059113号に記載される幹細胞は、自己由来(自家移植)様式で使用され得る組織移植のための細胞の有用な供給源を提供する。
国際公開第2005/059113号で開示される細胞は、当該技術分野では「OmniCytes」として既知である。国際公開第2005/059113号の教示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。OmniCytesは幹細胞であり、これは自己再生が可能で、造血細胞を含める外胚葉、中胚葉及び内胚葉への分化が可能なCD34+である幹細胞である。上述したように、これらは骨髄及び/又は血液から直接的に単離され得る。これらは、培養中にプラスチック(例えば、標準組織培養容器のプラスチック)に接着するそれらの能力に特徴がある。好適な容器は、Corning Incorporated、ニューヨーク、米国によって製造されるものである。
OmniCytesは、これらが支持細胞層、すなわち幹細胞の増殖を支持する細胞(典型的には、それら細胞自体の更なる増殖又は分裂なく重要な代謝物質を供給する、γ放射によって不活性化された)細胞を必要としないという事実に更に特徴がある。
OmniCytesは、
a)CD34+細胞に関する組織又は血液試料の富化と、
b)試料を固体支持体と接触させて、該固体支持体に接着する細胞を採取することとによって、得ることと、に更に特徴がある。好適な組織又は血液試料としては、骨髄、末梢血液、臍帯血又は組織、胎盤及び脂肪吸引法で得られる試料が挙げられる。
より具体的には、これらは、
組織又は血液試料(好ましくは、血液又は骨髄試料などの造血組織)を密度勾配分離にかけることと、
低密度細胞をCD34に関する親和性リガンド(好ましくは常磁性ビーズに付着された)に曝すことと、
該CD34リガンドに付着した細胞を回収することと、
CD34+サブ集団を組織培養等級のプラスチックに曝すことと、
プラスチックに接着性のCD34+細胞を回収することと、によって取得可能である。
OmniCytesは、成体、すなわち非胎児であることが好ましい。
OmniCytesの試料は、2004年9月24日に、Porton Down、Salisbury、SP4 0JGで、ECACCに、寄託番号04092401で寄託された。寄託は、Willow Tree Cottage,Spining Wheel Lane,Binfield,Berkshire RG42 5QH,英国のMyrtle Gordon教授によってなされ、この細胞系は「Stem Cell OmniCyte」と命名された。2012年6月14日に、Myrtle Gordon教授は、Mina Therapeutics社に、寄託生物学的材料を特許出願中で言及することを許可し、Rule 33 EPCに従って、寄託材料が一般に利用可能になるよう教授自身で無条件かつ取消不能の同意を与えた。
実施例において提示されるように、本発明の方法は、アルブミンを産生する細胞の生成を可能にする。より具体的には、これら細胞は、その未処置対応物よりも多くのアルブミンを産生し、したがって、これらはアルブミンを過剰に産生し、又はこれらは典型的にアルブミンを産生するのではなくアルブミンを産生するよう惹起された細胞である。したがって、他の態様では、アルブミンを産生する又は過剰に産生する細胞が提供される。この細胞は、本明細書で開示される方法によって得ることができる。好ましくは、この細胞は、OmniCyteなどのCD34+幹細胞を、アルブミンを産生するよう惹起させることにより得られる。
この細胞はエクスビボであることが好ましく、すなわち、生存生物の一部ではない。必要に応じて、細胞は「インビトロ」又は「単離された」と呼ばれてもよい。
かかる細胞の療法における使用は、本発明の更なる態様を提示する。必要に応じて、本発明の細胞及び本発明のsaRNAは、本明細書に開示される治療的用途において併用して使用されてもよい。「併用して」は、別個の、同時的又は逐次的投与を含む。
別の観点では、本発明は、治療の方法を提供し、方法は、それを必要する被験者に、本明細書で定義されたようなアルブミン産生細胞の治療的有効量及び/又はsaRNAの治療的有効量を投与することを含む。
saRNAsは、標的転写物に相補的であるよう設計されてもよく、これらは、標的アンチセンスRNA転写物をダウンレギュレートすることにより、アルブミン産生にそれらの効果を及ぼしてもよい。
標的RNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位の最大100、80、60、40、20又は10kb下流の遺伝子座から、若しくは標的遺伝子の転写終止部位の最大100、80、60、40、20又は10kb下流の遺伝子座から転写されることが好ましい。必要に応じて、RNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位の最大1kb上流の遺伝子座から、又は標的遺伝子の転写終止部位の最大1kb下流の遺伝子座から転写される。必要に応じて、RNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位の最大500、250又は100ヌクレオチド上流の遺伝子座から又は標的遺伝子の転写終止部位の最大500、250又は100ヌクレオチド下流の遺伝子座から転写され、より好ましくは、この遺伝子座は、標的遺伝子の転写開始部位から500以下のヌクレオチド上流又は下流である。より好ましくは、標的RNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位の最大500ヌクレオチド上流又は最大500ヌクレオチド下流の遺伝子座から転写される。
本発明の標的RNA転写物に関する用語「[特定の遺伝子座]から転写される」とは、「標的RNA転写物の転写開始部位が[特定の遺伝子座において]見出される」ことを意味する。好ましくは、標的RNA転写物の転写開始部位及び転写終止部位の双方は、標的遺伝子の転写開始部位の最大100kb上流又は標的遺伝子の転写終止部位の最大100kb下流のいずれかに別個に位置する。そこから標的RNA転写物が転写される位置に関して上述された好ましい実施形態は、標的RNA転写物の転写終止部位の位置に準用する。
標的RNA転写物は、ゲノム配列のコード鎖に相補的であり、本明細書において「ゲノム配列」というときは、「ゲノム配列のコード鎖」の省略形である。
したがって、標的RNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位の100、80、60、40、20又は10kb上流と標的遺伝子の転写終止部位の100、80、60、40、20又は10kb下流との間に位置するゲノム配列にアンチセンスである配列を含む。より好ましくは、標的RNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位の1kb上流と標的遺伝子の転写終止部位の1kb下流との間に位置するゲノム配列にアンチセンスである配列を含む。より好ましくは、標的RNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位の500、250又は100ヌクレオチド上流と標的遺伝子の転写終止部位の500、250又は100ヌクレオチド下流との間に位置するゲノム配列にアンチセンスである配列を含む。必要に応じて、標的RNA転写物は、標的遺伝子のコード領域を含有するゲノム配列にアンチセンスである配列を含む。最も好ましくは、標的転写物は、標的遺伝子のプロモータ領域と重複するゲノム配列にアンチセンスである配列を含むか又はこれらからなる。したがって、標的RNA転写物は、プロモータ領域に対してアンチセンスである配列を含むことが好ましい。
遺伝子は、複数のプロモータ領域を有してもよく、この場合、標的RNA転写物は、1つ、2つ又はそれ以上のプロモータ領域と重複してもよい。注釈遺伝子座のオンラインデータベースは、遺伝子のプロモータ領域を特定するよう使用され得る。
任意の所定のプロモータ領域について、プロモータ領域全体が重複されねばならない必要はなく、プロモータ領域内のサブ配列が標的RNA転写物によって重複されることが十分であり、すなわち、この重複は部分的重複であり得る。同様に、標的RNA転写物全体が、プロモータ領域内の配列に対してアンチセンスである必要はなく、標的RNA転写物がプロモータ領域に対してアンチセンスである配列を含むことが必要であるに過ぎない。
標的RNA転写物と標的遺伝子のプロモータ領域との間の重複の領域は、長さが単一ヌクレオチドと同じほど短くてもよいが、少なくとも15ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも25のヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも50ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも75ヌクレオチド長、最も好ましくは少なくとも100ヌクレオチド長である。以下の特定の配置のそれぞれが、用語「重複」の範囲内に入ることが意図される。
a)標的RNA転写物及び標的遺伝子のプロモータ領域は、長さが等しく、これらはその長さ全体にわたって重複する(すなわち、これらは相補的である)。
b)標的RNA転写物は、標的遺伝子のプロモータ領域よりも短く、標的遺伝子のプロモータ領域とその長さ全体にわたって重複する(すなわち、これは標的遺伝子のプロモータ領域内の配列にその長さ全体にわたって相補的である)。
c)標的RNA転写物は、標的遺伝子のプロモータ領域よりも長く、標的遺伝子のプロモータ領域はこれによって完全に重複されている(すなわち、標的遺伝子のプロモータ領域は、標的RNA転写物内の配列にその長さ全体にわたって相補的である)。
d)標的RNA転写物と標的遺伝子のプロモータ領域は同一又は異なる長さであり、重複の領域は、標的RNA転写物の長さ及び標的遺伝子のプロモータ領域の長さの双方よりも短い。
「重複」の上記定義は、説明にわたり、他の重複配列の説明に準用される。明確に、アンチセンスRNA転写物が、プロモータ領域以外の標的遺伝子の領域と重複するよう記載される場合、このときは、転写物の配列は、プロモータ領域内よりはむしろこの領域内の配列に相補的である。
好ましくは、RNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位を含むゲノム配列にアンチセンスである配列を含む。言い換えると、標的RNA転写物は、標的遺伝子の転写開始部位と重複する配列を含むことが好ましい。
標的RNA転写物は、好ましくは少なくとも1kb、より好ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10kb、例えば20、25、30、35又は40kbの長さである。
本発明に関して核酸配列を説明するために使用される場合、用語「センス」とは、配列が標的遺伝子のコード鎖上の配列に同一性を有することを意味する。本発明に関して核酸配列を説明するために使用される場合、用語「アンチセンス」とは、配列が標的遺伝子のコード鎖上の配列に相補的であることを意味する。
遺伝子の「コード鎖」とは、遺伝子のmRNAに関するコード配列を含有する鎖である。遺伝子の「テンプレート鎖」とは、遺伝子のmRNAに関するコード配列を含有しない鎖である。
好ましくは、標的RNA転写物は、標的遺伝子のコード鎖状の配列に対して、その全長に沿って少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、更により好ましくは少なくとも95%相補的である配列を含む。
本発明は、かかる標的転写物を有効かつ特異的にダウンレギュレートするsaRNA分子を提供する。これは、標的RNA転写物内の配列に対して高度の相補性を有するsaRNA分子によって達成され得る。短鎖RNAは、5以下、好ましくは4又は3以下、より好ましくは2以下、更により好ましくは1以下の標的RNA転写物の領域とのミスマッチを有し、最も好ましくはいずれのミスマッチも有さないであろう。
好ましくは、saRNAは、標的転写物の領域に少なくとも95、98、99又は100%の相補性を有する、少なくとも13ヌクレオチドの配列を含む。好ましくは、標的転写物の領域に少なくとも95、98、99又は100%の相補性を有する該配列は、長さが少なくとも15~20個、例えば少なくとも15、16、17、18又は19のヌクレオチド、好ましくは18~22個の又は19~21個の、最も好ましくは、正確に19のヌクレオチドの長さである。別の箇所に述べられるように、saRNAはまた、3’テールを含んでもよい。
一実施形態では、本発明の短鎖RNA分子は、標的転写物の領域へのsiRNA様相補性、すなわち、saRNA二本鎖内のガイド鎖の5’末端からのヌクレオチド2~6と標的転写物の領域との間の100%の相補性を有してもよい。これに加えて、短鎖RNA分子の他のヌクレオチドは、標的転写物の領域に少なくとも70、80、90、95、99又は100%の相補性を有する。例えば、(5’末端から数えて)3’末端までのヌクレオチド7は、標的転写物の領域に、少なくとも70、80、90、95、99又は100%の相補性を有する。
本発明のsaRNA分子がこれに高度な相補性を有することが好ましい標的RNA転写物内の配列は、好ましくは、標的遺伝子の転写部位最大500ヌクレオチド上流又は下流にあるゲノム配列にアンチセンスである。好ましくは、これは標的遺伝子のプロモータに重複する。
当業者であれば、それによってsaRNAがアルブミン産生をアップレギュレートする機構に関係なく、標的転写物を参照することによりsaRNAを画定することが好都合であることを理解されるであろう。しかしながら、saRNAは、標的遺伝子を参照することによって代替的に画定されてもよい。標的転写物は、標的遺伝子のコード鎖上のゲノム領域に相補的であり、saRNAは、同様に標的転写物の領域に対して相補的であるので、saRNAは標的遺伝子のコード鎖上の領域に対して配列同一性を有するように画定されてもよい。標的転写物を参照することによるsaRNAの画定に関して本明細書で説明される全ての機能は、標的遺伝子を参照することのよるsaRNAの画定に準用し、したがって、「標的転写物」への「相補性」のいずれの説明も、「ゲノム配列」への「同一性」を包含することが理解されるべきである。したがって、saRNAは、好ましくは、標的遺伝子の転写開始部位周辺のゲノム配列に、高度の割合の同一性、例えば少なくとも75、80、85、90、95、98又は99%、好ましくは100%の同一性を有する。ゲノム配列がTSSから有することができる距離は、上述されている。ゲノム配列は、TSS最大500ヌクレオチド上流又は下流であることが好ましい。最も好ましくは、これは、標的遺伝子のプロモータに重複する。したがって、saRNAは、標的遺伝子のプロモータ領域に重複する配列に配列同一性を有する。
好ましくは、本発明の「短鎖」RNA分子は、長さが13ヌクレオチド~30ヌクレオチドであり、好ましくは15個又は17~30ヌクレオチドであり、より好ましくは長さが16~25ヌクレオチドであり、更により好ましくは長さが17~21ヌクレオチドであり、最も好ましくは長さが19、20、21又は22ヌクレオチドである。言い換えると、短鎖RNA分子は、上述の長さの第1の鎖を含むことができる。3’テールが存在する場合、この鎖はより長くてもよく、19のヌクレオチドに加えて3’テールであり、この3’テールはUU又はUUUであることが好ましい。
短鎖RNA分子は、一本鎖であってもよく、又は好ましくは二本鎖であってもよい。二本鎖分子は、第1の鎖と第2の鎖とを含む。二本鎖である場合、好ましくは二本鎖のそれぞれの鎖は、長さが少なくとも14個の、より好ましくは少なくとも18ヌクレオチド、例えば19、20、21又は22ヌクレオチドである。好ましくは、二本鎖は、少なくとも12個、より好ましくは少なくとも15、より好ましくは17、更により好ましくは少なくとも19ヌクレオチド長にわたってハイブリダイズされる。それぞれの鎖は、長さが正確に19ヌクレオチドである。3’テールが存在する場合、鎖はより長くなってもよく、好ましくは19のヌクレオチドに加えて3’テールであり、この3’テールはUU又はUUUであることが好ましい。
好ましくは、二本鎖長さは、30個未満のヌクレオチドであり、なぜならこの長さを超える二本鎖は、インターフェロン応答を惹起するリスクの増加を有する場合があるためである。dsRNA二本鎖を形成する鎖は、均等な長さ又は不均等な長さであってもよい。
最も好ましくは、短鎖RNA分子は、短鎖干渉RNA(siRNA)分子である。
必要に応じて、短鎖RNA分子は、3’オーバーハングを形成するそれぞれの鎖の3’末端において多数の不対ヌクレオチドと共に安定して塩基対を形成する2本の鎖からなるdsRNA分子である。それぞれの鎖の3’オーバーハングを形成する多数の不対ヌクレオチドは、好ましくは1~5ヌクレオチドの範囲であり、より好ましくは1~3ヌクレオチドの範囲であり、最も好ましくは2ヌクレオチドである。3’オーバーハングは、上述の3’テールから形成され得るために、3’テールは3’オーバーハングであってもよい。
本明細書で使用される配列相補性又は同一性については、特に明記されない限り、短鎖RNA分子の全長を指す。
短鎖RNAは、標的RNA転写物に相補的ではない非常に短い3’又は5’配列を含んでもよい。好ましくは、かかる配列は3’である。該配列は、長さが1~5ヌクレオチド、好ましくは2~3個の、例えば2又は3ヌクレオチドであってもよい。該配列は、好ましくはウラシルを含み又はこれからからなり、したがって最も好ましくは、これは2又は3個のウラシルの3’ストレッチである。この非相補的配列は、「テール」とも呼ばれる。したがって、短鎖RNAは、好ましくは(i)標的RNAの領域に少なくとも95%の相補性を有する配列と、(ii)ウラシル残基を含むか又はこれからなることが好ましい1~5ヌクレオチドの3’テールとからなる。したがって、短鎖RNAは、典型的には存在する場合3’テールを除けば、その全長にわたって標的RNA転写物の領域に相補性を有するであろう。上述したように、「標的RNA転写物に相補的」の代わりに、saRNAが、関連するゲノム配列のコード鎖に対する「同一性」を有するとして定義されてもよい。
本発明の好適なsaRNAの好ましい配列は、表1に提供されている。したがって、本明細書で提供されるものは、配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34及び36から選択される配列を含む又はこれらからなる第1の鎖を有する短鎖RNAsである。必要に応じて、短鎖RNAは、これら配列のいずれかの3’末端で3’テールを含んでもよい。
一本鎖短鎖RNA分子は、第1の鎖からなるに過ぎないが、一方二本鎖短鎖RNA分子はまた、第2の鎖を有する。したがって、短鎖RNAsは、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33及び35から選択される配列を含む又はこれらからなる第2の鎖を有することができる。
配列番号14の第1の鎖と配列番号13の第2の鎖を有する短鎖RNAは、癌を治療する上で特に有効であることが示され、したがって、これが特に好ましい。
表1は、好ましいペアリングを示し、各行は好ましいペアリングを表している。したがって、例えば、短鎖RNAは、必要に応じて3’テールを伴い、配列番号14の配列を含む又はこれからなる第1の鎖と、必要に応じて3’テールを伴い、配列番号13の配列を含む又はこれからなる第2の鎖とを有する。
本明細書に開示される短鎖RNA配列のいずれかは、必要に応じてかかる3’テールを含有してもよい。したがって、表1に開示される配列のいずれも、必要に応じてかかる3’テールを含む。
本明細書で使用するとき、用語「RNA」とは、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」とは、β-D-リボ-フラノース部分の2’位でヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離RNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え的に生成されたRNA、並びに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は変更による自然発生型RNAとは異なる改変RNAを包含する。かかる変更は、RNAの末端(複数可)に、又は例えばRNAの1つ以上のヌクレオチドの内部などで、非ヌクレオチド材料の付加を含むことができる。本発明のRNA分子のヌクレオチドはまた、非天然発生型ヌクレオチド又は化学的に合成されたヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドを含むこともできる。これら改変されたRNAsは、類縁体又は天然発生型RNAの類縁体とも呼ばれることができる。
本明細書で使用するとき、用語「二本鎖RNA」又は「dsRNA」とは、リボ核酸二本鎖を指す。
本明細書で使用するとき、用語「短鎖干渉RNA」又は「siRNA」とは、1つ以上の標的RNA転写物の配列特異的に媒介された切断を介しRNAiを通して遺伝子発現を調整することが可能な核酸分子を指す。典型的には、RNAiにおいて、RNA転写物はmRNAであるので、この標的の切断は、遺伝子発現をダウンレギュレーションさせる。しかしながら、本発明では、標的遺伝子のアップレギュレーション又はダウンレギュレーションは、対象とする標的遺伝子に対してそれぞれアンチセンス又はセンスであるRNA転写物を切断することによって行うことができる。
「相補性」及び「相補的」とは、例えばワトソン-クリック塩基対形成により、第1の核酸が第2の核酸と水素結合(複数可)を形成することができることを意味する。非ワトソン-クリック塩基対形成を通して別の核酸と水素結合(複数可)を形成することができる核酸もまた、相補性を有することの定義の範囲内にある。相補性率は、第2の核酸配列と水素結合を形成することができる(例えば、ワトソン-クリック塩基対形成)核酸分子内の残基のパーセンテージを示す(例えば、10つのうち5、6、7、8、9、10つの核酸配列と水素結合を形成することができる場合、それぞれ、50%、60%、70%、80%、90%、及び100%相補的となる)。
「同一性」、「同一」又は「配列同一性」とは、第1の核酸が第2の核酸配列と配列で同一であることを意味する。同一性率は、第2の核酸配列に同一である第1の核酸配列中の残基のパーセンテージを示す(例えば、10つのうち5、6、7、8、9,10つが同一である場合、それぞれ、50%、60%、70%、80%、90%、及び100%同一となる)。
配列アライメント及び同一性率又は相補性率の計算は、限定されないがLASARGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイートのMegalignプログラム(DNASTAR Inc.,Madison、WI)、アライメントのClustal V法(Higgins及びSharp著(1989年)CABIOS.5:151-153)及びプログラムのBLAST 2.0スイートが挙げられる当該技術分野で既知の任意の方法又はツールを使用して決定され得る。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、例えば、National Center for Biotechnology Informationを通して、公的に利用可能である。当業者であれば、当業者の所望の目的に適合するようこれらツールのパラメータを設定することができるであろう。
一方の配列がDNA配列であり、他方がRNA配列である第1及び第2の核酸配列の同一性又は相補性を評価する場合、RNA配列がウラシルを含み、一方DNA配列がその代わりにチミンを含む点には留意が必要である。したがって、これら例において、配列同一性を評価する場合、ウラシル残基はチミン残基と同一であると考えられ、相補性を評価する場合、ウラシル残基は、アデニン残基に相補的である/アデニン残基と水素結合を形成することが可能であると考えられる。
2つ又はそれ以上の配列の相補性の程度を判定は、当該技術分野で既知の任意の方法によって実施され得る。好ましくは、使用される方法は、Hossbachら(上記参照)で提示されたものである。この方法によると、http://www.mpibpc.mpg.de/groups/luehrmann/siRNAでアクセス可能なPerlスクリプトが使用される。
これに加えて、短鎖RNA分子の設計及び分析のための様々なツールが周知であり、これらは、標的RNA転写物の有効かつ特異的なダウンレギュレーションを達成し得るこれらRNA分子を当業者が決定することを可能にする。確立された方法としては、例えば、GPboost及びReynoldsアルゴリズム(PMIDs:15201190、14758366)が挙げられる。これに加えて、有効なダウンレギュレーションを引き起こす短鎖RNAの能力は、細胞内のRNA又はタンパク質のレベルを測定するための標準的技術を使用して評価され得る。例えば、本発明の短鎖RNAが培養細胞に送達され得、標的RNAのレベルが、ノーザンブロット法又はドットブロット法が挙げられるがこれらに限定されない技術により、若しくは定量的RT-PCRにより測定され得る。
好ましくは、短鎖RNAは、モチーフaaaa、cccc、gggg、又はuuuuのいずれも有さない。好ましくは、短鎖RNAは、少なくとも20%かつ75%以下の、すなわち、20%と75%との間の、好ましくは20%と55%との間のGC率を有する。上記方法の短鎖RNAは、理想的には熱力学的に安定な二本鎖であり、この場合、それぞれの鎖のGC率は、少なくとも25%かつ75%以下、すなわち、25%と75%との間、好ましくは20%と55%との間である。
RNAsがモチーフaaaa、cccc、gggg、又はuuuuを有するかどうかを決定するため並びに分子/鎖のGC含有率を決定するためのツール及びアルゴリズムは、当業者には周知である。かかるツールとしては、Saetrom及びSnove著、(2004年)、Biochem Biophys Res Commun 321:247-253並びにVertら著、(2006年)、BMC Bioinformatics
7:520(17頁)で記載され参照されるものを含む。
短鎖RNAは、RISCタンパク質複合体中に組み込まれる、限られた数の短鎖RNA鎖に対するミスマッチを有する非標的転写物のダウンレギュレーションを惹起することができる。このことは、短鎖RNA分子の有効性を低下させるので、望ましくない。結果的に、不測のオフターゲット効果を防止するために、短鎖RNA分子は、目的の標的以外の転写物に対して制限された相補性を有するべきである。切断に基づくオフターゲット効果を有する短鎖RNA候補物質の発生確率は、非標的RNA配列に対するその相補性の関数であり、これは当該技術分野で任意の既知の方法によって決定され得る。必要に応じて、短鎖RNAの潜在的オフターゲット転写物を同定するために、ギャップ無しSmith-Waterman法(TS Smith及びMS Waterman著、(1981年)、Journal of molecular biology 147:195-197)が、Ensembl(Flicek,Pら著、(2008年)、Ensembl 2008.Nucleic Acids Res 36:D707-714)ヒトトランスクリプトームデータベース(Snove,O.,Jrら著、(2004年)、Biopchem BiophysRes Commun 325:769-773)に対する候補短鎖RNAをスクリーニングするよう使用され得る。あるいは、選択されたRNA配列の集団、例えば、Ensemblヒトトランスクリプトームデータベース全体を包含しないGenBank配列の選択に対して、短鎖RNAがスクリーニングされ得る。あるいは、ハミング距離測定が使用され得る。
好ましくは、短鎖RNA分子は、同定されたオフターゲット転写物に対して2つを超えるミスマッチを有する。別の観点では、短鎖RNA分子は、全ての潜在的オフターゲット転写物に対して2以上のハミング距離を有することが好ましい。短鎖RNAが二本鎖である場合、このとき、双方の鎖はこの要件を満たす。
必要に応じて、短鎖RNA分子は、既知の非常に有効な標準的siRNAsと同じような特徴を有する。好ましくは、短鎖RNA、又は二本鎖の場合、短鎖RNAの一方又は両方の鎖は、0.1を超えるGPboostスコアを有する。GPboostは、siRNAの有効性の既知の遺伝的プログラミングベースの予測システムであり、siRNA鎖のGPboostスコアを決定するために使用される方法は、「Predicting the efficacy of short oligonucleotides in
antisense and RNAi experiments with boosted genetic programming」、Pal Saetrom著、(2004年)、Bioinformatics 20(17):3055-3063に開示され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。あるいは又はこれに加えて、短鎖RNA分子は、高度に有効なsiRNAsに関連する特異的配列特徴を有する。Reynoldsにより記載されたアルゴリズム[Reynoldsら著、(2004年)、Nature biotechnology 22(3):326-330](これは参照により本明細書に組み込まれる)は、短鎖RNAsがこのタイプの十分な特徴を有するかどうかの判定を可能にする。当業者であれば、彼の特定の目的にために、閾値を定義しかつ改良することができるであろう。
必要に応じて、短鎖RNA分子は、高度に有効なsiRNAsに関連する位置特異的配列モチーフを含有する。siRNA有効性予測アルゴリズムは、当該技術分野で周知であり、高度に有効なsiRNAsに関連するモチーフは、Saetrom及びSnove、(2004年)、Biochem Biophys Res Commun321:247-253で説明され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
好ましくは、短鎖RNA分子は、細胞のRNAi可動部に直接的に入ることが可能であるか、又は細胞のRNAi機構に入る前に、ダイサー(Dicer)によって処理されることが可能である。短鎖RNA分子が、細胞のRNAi機構に入る前にダイサーによって処理されることが可能かどうかを判定する方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Tiemannら著、(2010年)、RNA 16(6):1275-1284及びRoseら著、(2005年)、Nucleic Acid Research 33(13):4140-4156で開示されるものなどのインビトロダイサーアッセイ)。
短鎖RNA分子が二本鎖である場合、並びに分子内の1本の鎖だけが標的RNA転写物を有効かつ特異的にダウンレギュレーションすることが可能である場合、このとき、この鎖が優先してRISCにロードされることが好ましい。その中で1本の鎖が優先してRISCにロードされる二本鎖RNA分子の設計は、当業者の受容能力の範囲内にある。例えば、標的RNA転写物を標的化する短鎖RNA分子の鎖の5’末端は、もう一方の鎖の5’末端よりも熱力学的に安定ではないよう生成又は選択され得る。標的RNA転写物を標的化する短鎖RNA分子の鎖の5’末端が、もう一方の鎖の5’末端よりも熱力学的に安定でないように、二本鎖熱力学的末端安定性において大きな差があることが好ましい。二本鎖熱力学的末端安定性における差の絶対値(ΔΔG)は、当該技術分野において標準の任意な方法により計算され得る。必要に応じて、二本鎖熱力学的末端安定性における差の絶対値は、二本鎖の末端における5つの終わりのヌクレオチドを考慮することによって、RNAfold(Hofackerら著、(2003年)、Nucleic Acids
Research 第31巻、第13番、3429-3431頁)によって計算され得る。好ましくは、RNAfoldによって計算されるような二本鎖熱力学的末端安定性における差の絶対値は、0kcal/モルを超え、より好ましくは1kcal/モルを超え、より好ましくは3kcal/モルを超える。
上述されるものなどの短鎖RNA設計のための多くの標準ツールは、分子のこの特徴を評価するための手段を提供する。例えば、二本鎖分子は、これらが一方の鎖の他方を越えてのRNAi機構への組み込みを好む熱力学的特性を有する場合、選択され得る。あるいは、一方の鎖の優先的ロードは、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は変更によって天然発生型RNAとは異なるdsRNAsを使用することで達成され得る。
細胞内に存在する標的RNA転写物を決定する方法は、当該技術分野で周知である。例えば、対象の遺伝子の座位周辺のゲノム領域が、スプライス発現配列タグに関して探索され得る。発現配列タグ又はESTは、転写されたcDNA配列の短いサブ配列である。ESTsは、通常、遺伝子転写物を同定するために使用される。ESTsの公的データベースは当該技術分野で既知であり、例えばGenBankデータベースである。あるいは、RNAを同定するための周知のツールである逆転写酵素PCR(RT-PCR)が、潜在的標的RNA転写物を同定するよう使用され得る。あるいは、ハイスループット配列決定法又は他のかかる方法が、総RNAs、サイズ分画RNAs、又はRNAsの他の好適なサブセットを配列決定するよう使用され得、かかる配列決定ライブラリを、対象の領域に由来するRNA転写物を同定するために使用する。あるいは、既知のRNA転写物の集団が、好適な転写物を同定するよう探索され得る。当該技術分野で既知であるRNA転写物の任意のデータベース、例えば、カリフォルニア大学サンタクルス校(UCSC)のスプライスESTトラックが使用されることができる。あるいは、本発明を使用する当業者が所有する集団から、彼自身の特定の目的のために、集団が準備されてもよい。例えば、標的遺伝子が特定の細胞型において発現されることが既知である場合、このとき、転写物のデータベースは、この細胞型において存在することが決定されたものであってもよい。当業者であれば、彼の特定の所望の目的のために使用するよう集団を決定することができるであろう。
しかしながら、本発明の目的のために、標的遺伝子にアンチセンスである任意のRNA転写物の積極的同定は、実際に必要ではない。したがって、該非コードRNA転写物(すなわち、ダウンレギュレートされる標的転写物)の存在は、決定される必要はない。本発明者は、遺伝子の転写開始部位周辺の領域における遺伝子のコード鎖のヌクレオチド配列が取得される、すなわち、配列決定によって決定されるか又はデータベース上で見出され、この領域に対する逆相補的RNA配列が決定される場合、後者の配列に対して相補的である短鎖RNA分子が、標的遺伝子をアップレギュレートするよう使用され得る。相補性必要条件は、本明細書の別の箇所で説明される。遺伝子の転写開始部位周辺の領域は、転写部位の100、200、300、400、500、800、1000又は2000ヌクレオチド上流と下流との間に位置する領域である。
したがって、saRNA分子は、上述された原理に基づいて設計され得る。一部の実施形態では、以下に記載されるアプローチが行われ得る。
例えば、図4は、方法400のブロック図を示す。方法400において、選択ブロック410は、1つ以上の短鎖活性化RNA分子を設計する目的で、遺伝子の遺伝子配列を選択することを含む。好ましい遺伝子は、本明細書の別の箇所で説明される。供給ブロック420においては、方法400は、標的ゲノム位置、ゲノム配向及び転写構造についての情報(例えば、データベースからの)などの情報を供給することを含む。同定ブロック430では、1つ以上のアンチセンス転写物の同定が生じる(例えば、標的遺伝子に対してアンチセンスであり、標的遺伝子の近辺にある転写物に関するデータを検索すること)が、非コードRNA転写物の存在を実際には決定する必要はない。供給ブロック440において、方法400は、転写開始部位(TSS)周辺の囲まれた領域を提供することを含む。例えば、TSSの一方側の多くのユニット及びもう一方側の多くのユニットが、囲まれた領域として提供され得る。設計プロセス開始ブロック450では、方法400は、1つ以上のsaRNAsを設計することを容易にするよう動作するコンピュータ援用プロセスを開始することができる。かかるプロセスは、例えば、統計的技術、遺伝的プログラミング(GP)技術、ブースト技術、神経回路網技術、隠れマルコフモデル(HMM)技術、ベクトルマシン(SVM)技術等から選択される1つ以上の技術に依存する場合もある。一般的に、かかる技術は、入力として囲まれたTSS領域が提供される場合、1つ以上のsaRNAを設計するために提供する。
図4の例では、方法400はまた、出力ブロック460を含み、出力ブロックは、1つ以上の設計されたsaRNAsを出力することができ、必要に応じて1つ以上のsaRNAsを構築するための1つ以上の工程を要求し又は積極的に行うことができる。出力することに関しては、ブロック460は、情報を、ディスプレイ、プリンター、メモリ、インターフェース等に出力する。例えば、ブロック460は、ネットワークインターフェースを介してネットワークに情報を出力してもよく、分子等を組み立てるための化学的処理用に構成された機械に情報を出力してもよい。
図4に更に示すものは、様々なデバイス412、422、432、442、452及び462であり、これらは、関連するブロック410、420、430、440、450及び460の1つ以上の動作を実行するための命令を記憶するよう構成された記憶メディアであり得る。例えば、ブロック412、422、432、442、452及び462は、プロセッサ又はコンピュータ実行可能な命令などの情報を含む1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体であってもよい。個々に示されているが、単一の記憶媒体は、ブロック412、422、432、442、452及び462のうちの複数に関する命令を含むことができる。記憶媒体は、ハードドライブ、光ディスク、メモリ(例えば、メモリカード)等であってもよい。
本明細書に記載されるように、アンチセンス転写物を同定するために(例えば、ブロック430の場合のように)、転写開始部位についての囲まれた領域を同定するために(例えば、ブロック440の場合のように)、並びにsaRNA設計プロセスの開始を要求するために(例えば、ブロック450の場合のように)、1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体は、計算システムが情報を受け取るように命令する(例えば、ブロック420の場合のように)コンピュータ実行可能な命令を含む。かかる1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体は、必要に応じて、計算システムが1つ以上のsaRNAsを設計するよう指示するための命令を含んでもよい。更に、1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体は、計算システムに1つ以上の設計されたsaRNAsを書き込ませ又は転送させる命令を含んでもよい。例えば、1つ以上のsaRNAsについての情報は、記憶媒体に書き込まれ、インターフェース(例えば、ネットワークインターフェース)等を介して転送されてもよい。結果的に、1つ以上のsaRNAsを構築するよう構成された機械がかかる情報を受信することができ、その後かかる1つ以上のsaRNAsを構築する(例えば、ブロック460の場合のように)。別の例として、1つ以上のsaRNAsが1つ以上の供給源から入手可能な場合のシナリオを考えられたい。本明細書に記載されるように、1つ以上の供給源の検索は、1つ以上の利用可能なsaRNAsを特定するよう生じる場合がある(例えば、カタログ、saRMAバンク等を検討する)。
本明細書で記載されるように、様々な試験において、ヒトアルブミンに関する遺伝子配列が選択された(例えば、ブロック410を参照)。かかる遺伝子配列は、短鎖活性化RNA分子の特異的活性化に関して、短鎖活性化RNA分子を設計するために選択され、ここでは4つのパラメータが使用され、これらは、1)UCSC RefSeqデータベースからの標的化遺伝子アノテーション、2)アンチセンスRNAからの標的化配列、3)アンチセンス配列のプロモータ選択、並びに4)候補短鎖活性化RNAsの同定である。次に、1つ以上の利用可能なデータベース(例えば、UCSCにおけるRefSeq)から標的のゲノム位置、配向、及び転写構造に関して生じた情報のダウンロードが行われる(例えば、ブロック420を参照)。
次に、UCSC スプライスESTトラックなどの既知の読み取り方向を有するRNA転写物のデータベースを考えると、標的遺伝子に対してアンチセンスであり、かつ標的遺伝子の近辺にある転写物に関して生じたデータベースを検索する(例えば、ブロック430を参照)。より具体的には、プロセスは、(a)標的のプロモータ及び標的mRNAの5’末端と重複する、(b)標的mRNAと重複する、(c)標的の転写開始部位(TSS)の最高でも20~100kb上流である、又は(d)標的のポリ-アデニル化部位の最高でも20~100kb下流であるアンチセンス転写物を同定することを含んだ。プロセスは、これら4つの基準を階層的フィルタとして使用することで、例えば基準(a)を満たすアンチセンス転写物をこれが見出す場合、プロセスは、3つの他の基準を考慮する必要は必ずしもない。
次に、標的の転写物開始部位(TSS)に基づいて、プロセスは、例えば、TSSの上流又は下流の固定サイズ領域からアンチセンスゲノム配列をダウンロードすることを含むことができる。様々な試験では、使用された典型的領域サイズは、TSSの500nts上流及び下流であったが、より大きなサイズ又はより小さなサイズで適切に実現することができる(例えば、ブロック440を参照)。
ダウンロード後に、プロセスは、アンチセンス標的配列の有効かつ特異的なダウンレギュレーションを提供する1つ以上のsiRNAsを設計することを含むことができる(例えば、ブロック450を参照)。例えば、プロセスは(a)GPboostなどのsiRNA設計アルゴリズムを使用して、候補の有効なsiRNAsを同定し、(b)aaaa、cccc、gggg、又はuuuuモチーフを有し、GC含量20%未満又は55%を超える全ての候補siRNAを除去し、(c)ハミング距離2未満を有する全ての候補物を全ての潜在的オフターゲット転写物へ移し、並びに(d)これらの予測されたsiRNAノックダウン有効性によって分類された、所定の数の残存する非重複siRNAsを戻してもよい。かかる例では、プロセスは、所定のアンチセンス標的配列に関するいくつかの(例えば、2つの最高得点の)saRNAsを戻すことができる。その後、本明細書に記載されるように、1つ以上のsaRNAの出力及び構築を行う(例えば、ブロック460を参照)。
本発明のsaRNAsは、任意の好適な方法によって、例えば合成的に又は当業者に周知である標準的分子生物学技術を使用する細胞中での発現によって産生され得る。例えば、saRNAsは、当該技術分野で既知の方法を使用して、化学的に合成され又は組換え法により産生され得る。
上述したように、saRNAs及び/又は細胞は、治療的に使用され得る。saRNAs又は細胞は、注射、例えば静脈内、皮下、筋肉内又は標的器官への注射を介して投与され得る。したがって、注射は全身的若しくは標的部位、例えば標的器官、好ましくは肝臓において又は肝臓への注射であるが、前立腺又は膵臓への注射もまた企図される。あるいは、投与は、経口又はpr(経直腸)であってもよい。肝臓への細胞の注射も好ましい。
本発明の短鎖RNAs及び/又は細胞は、例えばナノ粒子、カチオン性脂質、コレステロール又はα-トコフェロールなどの脂質、リポソーム、例えば正電荷のカチオン性リポソーム、ポリエチレンイミンなどのポリマー、デンドリマー、アプタマーを介して、又は抗体抱合体として、当該技術分野で既知の任意の手段又は送達用ビヒクルにより、それを必要とする患者に投与され得る。短鎖RNAsはまた、ウイルスベクターが発現したshRNAs又はmiRNA模倣物として投与されてもよい。
好ましくは、saRNA又は細胞は、例えばsaRNA又は細胞を標的とする部分に複合体化され、結合され、又はその部分内に含まれて、特異的組織又は細胞型、例えば肝臓細胞、例えば肝細胞に結合される。該部分は、上述の手段/送達用ビヒクルの1つであってもよい。しかしながら、薬剤及び特にsaRNAsは、全身的投与後に自然に肝臓に送達されるために、標的化送達は、実際には必要ない場合もある。
アプタマーは、高い選択性、親和性及び安定性を備えたオリゴヌクレオチド又はペプチドである。これらは、特異的かつ安定な三次元形状であると考えられ、これによって、標的分子に高度に特異的な強い結合を提供する。任意の特異的分子標的については、核酸アプタマーは、例えば、試験管内進化法(SELEX)によって、核酸のコンビナトリアルライブラリーから同定され得る」(例えば、Tuerk C及びGold著、「Systematic evolution of ligands by exponential enrichment:RNA ligands to bacteriophage T4 DNA polymerase」、Science 1990年、249:505-510を参照)。ペプチドアプタマーは、例えばイーストツーハイブリッドシステムを使用して同定されてもよい。それ故、当業者であれば、本発明のsaRNAs又は細胞を肝細胞などの標的細胞に送達するために適切なアプタマーを設計することができる。DNAアプタマー、RNAアプタマー及びペプチドアプタマーが企図される。肝臓特異的アプタマーを使用する本発明の短鎖RNAsの肝臓への投与は、特に好ましい。
更に提供されるものは、アプタマーと本発明の短鎖RNAとの抱合体である。抱合体は、直接的化学結合形成、ストレプトアビジンなどのリンカーを介する連結等の2つの部分を結合するための任意の既知の方法を使用して形成され得る。
標的細胞表面受容体に対する抗体を生成する方法は、周知である。本発明のsaRNA分子は、例えばRNAキャリアタンパク質を使用して、かかる抗体に結合し得る。生じた複合体は、その後被験者に投与され、受容体仲介エンドサイト―シスを介して標的細胞により取り込まれる。本発明の細胞は、既知の手段を使用して、かかる抗体に結合され得る。
saRNA又は細胞は、当該技術分野で既知の方法を使用して、リポソーム内に封入され得る。リポソームは、必要に応じて、抗体又はペプチドなどの標的細胞特異的部分と結合されてもよい。
上述したように、本発明の分子は、標的遺伝子の配列分析に基づいて生成され、これら短鎖核酸分子の送達に関連する方法及び産物は、本発明の更なる態様である。したがって、本発明はまた、コンピュータ読み取り可能な記憶メディア及びデータ構造を含める方法及び産物も提供し、これらは図4~9において模式的に記載され、図4~9を参照して以下に説明される。特に明記されない限り、本発明の方法及び産物に関連する上述の定義、説明及び好ましい実施形態は、以下に説明される態様に準用する。
以下の実施例は、本発明の説明的なもの並びに当業者が本発明を作成しかつ使用するよう教示するためのものである。これら実施例は、本発明を制限する意図は決してない。本発明は、ここで以下の実施例、並びに表及び図面において更に説明される。
[本発明1001]
過剰増殖性障害及び/又は低アルブミン血症を特徴とする障害の治療又は予防における使用のためのアルブミン産生をアップレギュレートする短鎖活性化RNA。
[本発明1002]
前記過剰増殖性障害が、肝臓癌である、本発明1001の使用のための本発明1001の短鎖活性化RNA。
[本発明1003]
前記低アルブミン血症を特徴とする障害が、肝硬変、肝炎又は浮腫である、本発明1001の使用のための本発明1001の短鎖活性化RNA。
[本発明1004]
前記短鎖活性化RNAが、アルブミン、CEBPA及びHNF4aからなる群から選択される標的遺伝子を活性化することによりアルブミン産生をアップレギュレートする、本発明1001~1003のいずれかの使用のための本発明1001~1003のいずれかの短鎖活性化RNA。
[本発明1005]
前記短鎖活性化RNAが、標的RNA転写物を特異的にダウンレギュレートし、
(i)前記標的RNA転写物が、前記標的遺伝子の前記転写開始部位の500ヌクレオチド上流と500ヌクレオチド下流との間の前記標的遺伝子の前記コード鎖上に位置する配列に相補的であることと、
(ii)前記短鎖活性化RNAが、前記標的転写物の領域に少なくとも95%の相補性を有する少なくとも18ヌクレオチドの配列を含むことと、を特徴とする、本発明1004の使用のための本発明1004の短鎖活性化RNA。
[本発明1006]
前記短鎖活性化RNA分子が、最大30ヌクレオチド長の一本鎖又は二本鎖RNA分子である、本発明1001~1005のいずれかの使用のための本発明1001~1005のいずれかの短鎖活性化RNA。
[本発明1007]
前記短鎖活性化RNAが、配列番号14、16、8、6、10、12、18、20、22、24、26、28、30、32、34及び36から選択される配列を有する第1鎖を含む、本発明1001~1006のいずれかの使用のための本発明1001~1006のいずれかの短鎖活性化RNA。
[本発明1008]
前記短鎖活性化RNAが、配列番号13の配列を有する第2鎖と塩基対を形成する配列番号14の配列を有する第1鎖を含む、本発明1007の使用のための本発明1007の短鎖活性化RNA。
[本発明1009]
アルブミン産生をアップレギュレートすることで、細胞増殖を阻害することが可能な短鎖活性化RNA。
[本発明1010]
前記短鎖活性化RNAが、配列番号14、16、8、6、10、12、18、20、22、24、26、28、30、32、34及び36から選択される配列を有する第1鎖を含む、本発明1009の短鎖活性化RNA。
[本発明1011]
前記短鎖活性化RNAが、配列番号13、15、7、5、9、11、17、19、21、23、25、27、29、31、33及び35から選択される配列を有する第2鎖を含む、本発明1010の短鎖活性化RNA。
[本発明1012]
前記短鎖活性化RNAが、配列番号14の配列を有する第1鎖と配列番号13を有する第2鎖とを有する、本発明1009の短鎖活性化RNA。
[本発明1013]
細胞中のアルブミン発現をアップレギュレートする方法であって、前記方法が、前記細胞を本発明1009~1012のいずれかの短鎖活性化RNAでトランスフェクトすることを含む、方法。
[本発明1014]
前記細胞が、幹細胞である、本発明1013の方法。
[本発明1015]
本発明1009~1012のいずれかの短鎖活性化RNAを含む、又は本発明1013又は1014の方法により得ることが可能であるエクスビボ又はインビトロ細胞であって、短鎖活性化RNAを有しない同等の細胞よりも多くのアルブミンを発現する、細胞。
[本発明1016]
過剰増殖性障害及び/又は低アルブミン血症を特徴とする障害を治療する又は予防する方法であって、前記方法が、これを必要とする被験者に、アルブミン産生をアップレギュレートする短鎖活性化RNAを投与することを含む、方法。
[本発明1017]
方法であって、
ある型の細胞の過剰増殖を特徴とする状態を有する患者を診断することと、
前記ある型の細胞によるアルブミンの産生をアップレギュレートする短鎖活性化RNAを設計することと、を含む方法であり、前記アルブミンの前記アップレギュレートされた産生が前記ある型の細胞の増殖能に悪影響を与える、方法。
[本発明1018]
前記短鎖活性化RNAを製造することと、好ましくは前記設計された短鎖活性化RNAを前記患者に投与することとを更に含む、本発明1017の方法。
[本発明1019]
前記診断することが、肝臓癌を診断する、本発明1017又は1018の方法。
[本発明1020]
前記設計することが、アルブミンに関するコード領域を有する遺伝子の転写開始部位を提供することに応答して、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された1つ以上の命令を実行することを含む、本発明1017~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
コンピュータ実行可能な命令を含む1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体読み取り可能媒体であって、前記コンピュータ実行可能な命令が、計算システムに、
アルブミンに関するコード領域を有する遺伝子のための転写開始部位を受信することと、
前記転写開始部位の周辺の囲まれた領域を選択することと、
アルブミンの産生をアップレグレートするための短鎖活性化RNA候補物質に関してユニットのストリングを特性化することと、
1つ以上の特性化されたユニットのストリングを、肝臓癌を治療するためのヒト被験者への投与用の短鎖活性化RNAの製造のための好ましい候補物質として出力することと、を指示する、1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体。
本明細書に記載される様々な方法、装置、アセンブリ、システム、配置等、並びにその等価物のより完全な理解は、添付の図面で示される例と併せて使用する場合、以下の詳細な説明を参照することによりなされ得る。
表1は、アルブミン発現をアップレギュレートするために設計された短鎖RNA分子を示す。
表2は、アルブミン発現をアップレギュレートするために設計された短鎖RNA分子を示す。
より具体的には、図2は、アルブミンのアップレギュレーションを裏付けるためのsaRNAでトランスフェクトされたHepG2細胞に関するデータのプロットを示す。図2において、(A)は、24ウェルプレート内に2.5×105細胞/ウェルの細胞密度で播種したHepG2細胞からの結果のプロットを表す。アルブミン遺伝子のプロモータ領域(PR1、PR2、PR3及びPR4)に向けられたsaRNAの4つのクローンを使用した。24ウェルプレート内の播種の後、0、12及び24時間で、150ngのsaRNAで細胞をトランスフェクトし、続いて総RNAの抽出物を採取した。mRNAレベルのRT-PCRプロファイルは、saRNAsでトランスフェクトされた細胞のみでアルブミンレベルの増加を示した。図2において、(B)は、2つの独立した試験からの半定量的分析からの結果のプロットを表し、PR3 saRNAが、アルブミンmRNAレベルの最も顕著な増加を有したことを示す(158%+/5.7%)。図3に関しては、WST-1増殖アッセイからの結果が、saRNAトランスフェクション後のHepG2細胞において示される。HepG2細胞は、24ウェルプレート内に1.5×105細胞/ウェルの細胞密度で播種し、0、12及び24時間での3回のトランスフェクションが続いた。次いで、WST-1試薬を、Amax×450nmでのマルチプレートリーダにおける分析前30分間にわたって加えた。図3において、(A)は、代謝的に活性な細胞及び増殖性細胞を示すホルマザン染料の量を示すプロットであり、ホルマザン染料の量は、アルブミンに対するsaRNAでトランスフェクトされた細胞だけで大幅に減少した。図3において、(B)は、非トランスフェクト細胞に対する細胞生存率を示すプロットであり、PR3 saRNAでトランスフェクトされた細胞が、細胞増殖において最も顕著な減少を有したことを裏付ける。
本明細書に記載される様々な試験の詳細に関して、特に細胞培養に関しては、HepG2細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション)は、10%のウシ胎児血清(FCS)(Invitrogen、米国)、100単位/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、2ミリモル/Lのグルタミン(Sigma、米国)で補充されたRPMI-140培地(Sigma、米国)中で、加湿した5%のCO2大気中、37℃で培養した。
様々な試験についての化学的処理に関しては、90℃における変性工程後に、対合したsaRNAオリゴヌクレオチドを50mMのTris-HCl(pH8.0)、100mMのNaCl及び5mMのEDTAを使用してアニールし、その後室温への段階的アニールを行った。
半定量的rtPCRのための総RNAの単離のプロセスは、様々な動作を含むことができる。例えば、全ての総RNA抽出は、RNAqueous-Microキット(Ambion、英国)を使用して(例えば、製造業者の説明者に従って)、実行され得る。様々な試験に関しては、細胞を穏やかに遠心分離し、その後溶解緩衝液(Ambion、英国)中、出力3での3パルスの超音波処理を行った。次いで細胞溶解物を、RNA結合カラムを通して処理し、その後複数回の洗浄及び溶出を行った。単離された総RNAを、Nanodrop 2000分光光度計により定量化した。500ngの総RNAを、One
Step RT-PCR(Qiagen ドイツ)を使用して(例えば、製造業者の使用説明書に従って)、逆転写した。アルブミンに関する発現及び負荷対照、ハウスキーピング遺伝子アクチンに関する発現は、これらの対応のプライマー対:アルブミン-F:TCC AGC ACT GCC TGC GGT GA;R:TCC GTC ACG CAC TGG GAG GA;以下の37サイクル:95℃―45秒;55℃-45秒;61℃-45秒、アクチン-F:GAG AAA ATC TGG CAC CAC ACC:R:ATA CCC CTC GTA GAT GGG CAC、以下の37サイクル95℃-5分;60℃-30秒;70℃-45秒;37サイクルで72℃-10分。産生物を、UVP VisonWorks LS(バージョン6.2)を使用して半定量的に3回にわたって分析した。
本明細書に記載される試験については、テラゾリウム塩、4-[3-(4-ヨードフェニル)2-(4ニトロフェニル)2H-5-テトラゾリオ]1,3-ベンゼンジスルホネート(WST-1)増殖アッセイを使用した。具体的には、HepG2(1.5×105細胞/ウェル)を96ウェルプレート内に播種し、10%のウシ胎児血清(FCS)(Invitrogen、米国)、100単位/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、2ミリモル/Lのグルタミン(Sigma、米国)を補充した100ulのRPMI-140培地(Sigma、米国)中で培養し、これを、ナノフェクチンを使用してトランスフェクトした(ナノフェクタミン(PAA、英国)を使用して、MafAを標的化したアニールされたsaRNA、150ngのトランスフェクション)(例えば、製造業者の説明書に従い)。前述のプロセスを播種から0時間、12時間及び24時間で3回繰り返した。細胞増殖試薬WST-1(Roche Applied Science、英国)を加えた(例えば、製造業者の説明書に従い)。次いで比色アッセイを30分間インキュベートし、生存細胞中のミトコンドリアのスクシネート-テトラゾリウムレダクターゼによるホルマザン染料へのテトラゾリウム塩WST-1の切断を可能にした。代謝的に活性な細胞増殖の数に直接関連するホルマザン染料の量をマルチウェルプレートリーダーにおいてAmax450nmで測定した。試験については、合計で3つの個々の実験をアッセイした。
もう一度、図2及び3に示すように、saRNAでトランスフェクトされたHepG2細胞は、アルブミンのアップレギュレーションを裏付け、saRNAトランスフェクション後のHepG2細胞におけるWST-1増殖アッセイ結果は、低減された増殖を裏付けた。
図5は、様々な構成部品を含むシステム500(例えば、計算システム)を示す。図5の例では、システム500は、入力情報510を含むことができ、入力情報は、例えばネットワークインターフェース540又は他のインターフェースを介して、プロセッサ(複数可)520及びメモリ530に提供され得る。示すように、CRMブロック534は、1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体を含んでもよい。かかる媒体又はメディアは、図4に示すものの1つ以上であり得る(例えば、412、422、432、442、452及び462を参照)。図5に更に示すものは、ディスプレイ装置550、記憶装置570及び製造装置590である。
本明細書に記載されるように、製造装置590は、1つ以上の化学物質(例えば、1つ以上のプローブ、必要に応じて酵素等の1つ以上の他の化学物質)並びに必要に応じて、1つ以上の化学物質を保持するための容器、ウェル等を含んでもよい。
図5の例において、システム500は、メモリ530に動作可能に結合する1つ以上のプロセッサ520を含むことができ、メモリは1つ以上のコンピュータ読み取り可能な(又はプロセッサ読み取り可能な)メディア534からの命令読み取りを記憶するよう構成され得る。本明細書に記載されるように、CRM 534は、1つ以上のプロセッサによる実行時に、システム500が図4の方法400の少なくとも一部を実行するよう指示する命令を記憶することができる。
図5の例で更に示すものは、ネットワークインターフェース540であり、これはシステム500への又はシステム500からの情報の通信を可能にする。例えば、命令は、システム500に通信され得る(例えば、動作を開始し、動作を終止するため、品質管理のため、ソフトウェア命令を更新するためなど)。プロセッサ(複数可)540の出力は、ネットワークインターフェース540を介してシステム500から通信され得る(例えば、医療サービス提供者へ、科学者へ、データベースへ、医薬品の製造業者へ等)。
図6は、方法600のブロック図を示す。述べたように、saRNAは、原発性肝臓癌などの癌を治療し又は予防するために有用であり得る。例えば、肝臓癌に関しては、治療及び予防は、saRNAを肝硬変(例えば、ウイルス性肝炎又はエタノール中毒に起因する)を有する患者に投与することによって生じる。方法600は、患者の状態を診断するための診断ブロック610、saRNAを提供するための供給ブロック620、及び提供されたsaRNAを患者に投与するための投与ブロック630を含む。本明細書に記載されるように、かかる動作は、必要に応じて、1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体(例えば、CRM 612、622及び632を参照)に記憶された命令などの命令に基づいて動作して、機械又は機械(複数)を介して、全体的に又は部分的に起こってもよい。
図6の方法600は、図4の方法400の1つ以上のブロックと併せて実行されてもよい。例えば、供給ブロック620は、図4の方法のブロック450について記載されるように設計することを含んでもよい。
診断ブロック610に関しては、これは、癌性細胞を診断する611、前癌性細胞を診断する613、他のリスクを診断する615又はこれらのいずれかの組み合わせを提供することができる。述べたように、特定の状態が、癌のリスクをもたらす。例えば、患者の感染、患者の習慣、患者の中毒等は、癌のリスクをもたらす可能性がある。本明細書に記載されるとおりに、方法は、情報を入力すること、少なくとも一部は情報に基づいてリスクを評価すること、及びRNAを患者又は同様な状況の患者(複数)に投与するかどうかを決定することを含むことができる。かかる投与(例えば、又は投与(複数))は、例えば、癌の予防又は癌の治療のためのものであり得る。
図7は、方法700のブロック図を示す。供給ブロック710では、saRNAが、必要に応じてキャリアと共に提供される。例えば、設計されたsaRNAは、必要に応じて、リポソーム若しくはアプタマー又はRNAアプトマーと共に、肝臓の外側に転移した肝臓癌などの肝臓癌に配送され得る。投与ブロック720において、saRNA(及び必要に応じてキャリア)が患者(例えば、ヒト被験者)に投与される。例として、肝臓腫瘍については、設計されたsaRNAは、全身的注射により又は経皮直接注射により局所的に患者の肝臓に到達するよう投与されてもよい。肝臓腫瘍であるか又は他のタイプの腫瘍であるかにかかわらず、投与はブロック毎のガイダンス技術によって誘導され得る。ガイダンス技術は、超音波、蛍光透視法、MR、CT、開腹術又は血管内配送の腹腔鏡等が挙げられる。本明細書に記載されるように、投与は、経口送達を介するものであってもよい。
図7の例において、決定ブロックク730によって示されるように、追加療法が提供されてもよい。追加療法は、必要に応じて、以下の療法、RFアブレーション、マイクロ波アブレーション、選択的放射線療法、不可逆的電気穿孔法、高集束超音波法、経動脈的化学塞栓等の1つ以上から選択されてもよい。示すように、決定ブロック730が、1つ以上の追加療法を供給することを決定する場合、このとき、方法700は、追加療法ブロック740に入る。決定ブロック730が追加療法を供給することを決定しない場合、方法700は、任意の待機ブロック735に入り、次いで状況に応じて、投与ブロック720において継続する。例えば、saRNAを患者に投与する療法(ゼロオーダー方式以外で)に関しては、用量は、効果を数日間にわたって減少させる場合がある。したがって、待機ブロック735では、その後の用量投与前の待機時間を提供することができる。例として、用量が投与される場合、用量は、患者に週に数回与えられてもよい(例えば、予防又は治療のために週につき2~3用量)。本明細書に記載されるように、1つ以上の追加療法は、saRNAの連続的投与の間で待機時間を決定し又は変更する因子を提示する場合もある。
図7に更に示すものは、様々な装置712、722、727、732、737及び742であり、これらは、関連するブロックの1つ以上の動作を実行するための命令を記憶するよう構成された記憶メディアであってもよい。例えば、これらは、プロセッサ又はコンピュータ実行可能な命令などの情報を包含する1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体であってもよい。個々に示してはいるが、単一の記憶媒体は、ブロックの1つ以上に関する命令を含むことができる。記憶媒体は、ハードドライブ、光ディスク、メモリ(例えば、メモリカード)等であってもよい。
図7はまた、治療計画作成モジュール770も示す。図7の例では、モジュール770は、RNAに関する動態ブロック772、化学療法に関する動態ブロック774、放射線療法に関する動態ブロック776、患者情報ブロック778、決定ブロック780及び出力ブロック782を含む。本明細書に記載されるように、投与されるようなRNAは、特定の動態を有することができ、並びに1つ以上の他の療法も特定の動態を有することができる。本明細書に記載されるように、RNA療法(例えば、saRNA)と1つ以上の他の療法との間で相乗性のための機会が存在する。図7の治療計画作成モジュール770は、患者又は患者(複数)のための治療の自動計画作成又は対話型計画作成を可能にする計算システムの部品であってもよい(例えば、コンピュータ実行可能な命令の形態で)。
図8は、図7の治療計画作成モジュールを示し、モジュールは、グラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI)811として画像的に表示される(例えば、描画される)治療計画810の例に加えて、複数のサブモジュールで作られる場合がある。したがって、サブモジュール782は、計画作成モジュール770と対話するためにユーザによる入力を提供するGUIを形成する命令を含むことができる。例えば、ユーザは、患者にとって治療計画を最適化するために、用量及び療法のタイプを選択又は調整することが可能であってもよい(例えば、化学療法用量の間で与えられるsaRNA用量を参照)。作用の動態、排泄等も計画作成中に考慮に入れられてもよい(例えば、動態サブモジュールによって提供されるような)。
図8はまた、RNA用量812を示し、これはsaRNA813又はmRNA815であってもよい。mRNA用量815に関しては、これは、例えば、ポリペプチド(例えば、アルブミン又は他のポリペプチド)のアップレギュレーションを引き起こすために、アプタマー816又は遺伝子療法817を備えることができる。図8はまた、例として化学療法用量822を示し、これは低増殖細胞823に適した化学療法又は高増殖細胞825に適した化学療法であり得る。細胞周期時間、S-相持続時間等の因子は、化学療法の有効性に重要であるとして報告されている。より具体的には、細胞増殖動態は、化学療法全体の有効性に関する因子であり得る。
本明細書に記載されるように、化学療法の投与後、投与前又は投与前後に、増殖を低減する機構として、RNA(例えば、saRNA)の用量又は用量(複数)が、患者に(例えば、腫瘍細胞等に)投与され得る。化学療法は拡大された用量で供給される場合があるために(例えば、患者への毒性リスクのために)、化学療法用量の間の期間におけるsaRNAの投与は、患者の治療全体を最適化するよう作用することができる。
本明細書に記載されるように、saRNAを投与することを含むことができる方法は、細胞が癌性又は前癌性に方向転換する前に、細胞によるポリペプチドの産生(例えば、「自然分泌型」)をアップレギュレートするよう細胞を生起させる。例えば、アルブミンは様々な細胞によって自然に分泌される(例えば、かかる細胞が癌性又は前癌性に方向転換する前に)ポリペプチドである。本明細書に記載されるように、saRNAを投与することを含むことができる方法は、未分化細胞を分化細胞に復帰させる(例えば、細胞の細胞挙動を分化細胞のより特徴的な挙動に向かってシフトするために)。
図9は、分子産生の速度及び細胞増殖の速度の例示のプロットと共に、正常細胞、前癌性細胞及び癌性細胞に送達されるsaRNAの図を示す。示すように、saRNAは、1つ以上の型の細胞に送達されることができ、これが分子の産生の速度を増加させ、細胞増殖の速度を低下させる。
本明細書に記載されるように、短鎖活性化RNAは、哺乳類細胞のポリペプチドのアップレギュレーションを引き起こすためのユニットの配列を含むことができ、ここでは哺乳類細胞によるポリペプチドの産生が哺乳類細胞の増殖能に悪影響を与える。本明細書に記載されるように、ポリペプチド(saRNAに関連するような)は、その自然状態における哺乳類細胞の自然分泌型ポリペプチドであり得る。本明細書に記載されるように、ポリペプチド(saRNAに関連するような)は、アルブミンであり得る。
本明細書に記載されるように、saRNAは、肝細胞のために提供され又は設計され、若しくは提供されかつ設計される。より一般的には、saRNAは正常細胞、前癌性細胞、癌性細胞のために提供され又は設計され、若しくは提供されかつ設計され、かかる細胞は哺乳類細胞であり得る。
本明細書に記載されるように、方法は、ある型の細胞の過剰増殖を特徴とする状態を有する患者を診断することと、短鎖活性化RNAをある型の細胞によるポリペプチドの産生をアップレギュレートするよう設計することとを含み、ポリペプチドのアップレギュレートされた産生が、ある型の細胞の増殖能に悪影響を及ぼす。かかる方法は、短鎖活性化RNAを製造することを更に含むことができる。かかる方法は、設計された短鎖活性化RNAを患者に投与することを更に含むことができる。述べたように、方法は、saRNA療法に関連するある型の細胞を標的化する追加療法(例えば、非saRNA療法)を施すことを含むことができる。かかる追加療法は、化学療法、放射線療法、RFアブレーション療法、マイクロ波アブレーション療法又は他の療法であってもよい。
本明細書に記載されるように、方法は、ポリペプチドに関するコード領域を有する遺伝子に転写開始部位を提供するよう応答する、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶された1つ以上の命令を実行することにより、saRNAを設計することを含むことができる。
本明細書に記載されるように、1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体は、アルブミン関するコード領域を有する遺伝子の転写開始部位を受信し、転写開始部位の周辺の囲まれた領域を選択し、アルブミンの産生をアップレギュレートするためのsaRNA候補物質としてのユニットのストリングを特性化し、並びに1つ以上の特性化されたユニットのストリングを、肝臓癌を治療するための被験者への投与用のsaRNA分子の製造に好ましい候補物質として出力するように、計算システムに指示するためのコンピュータ実行可能な命令を含むことができる。
本発明の更なる実施形態を以下に提示する。
1.短鎖活性化RNAであって、
哺乳類細胞のポリペプチドのアップレギュレーションを引き起こすためのユニットの配列を含み、哺乳類細胞によるポリペプチドの産生が、哺乳類細胞の増殖能に悪影響を与える、短鎖活性化RNA。
2.該ポリペプチドが、哺乳類細胞の自然状態における哺乳類細胞の自然分泌型ポリペプチドを含む、実施形態1に記載の短鎖活性化RNA。
3.該ポリペプチドがアルブミンを含む、実施形態1に記載の短鎖活性化RNA。
4.該哺乳類細胞が、肝細胞を含む、実施形態1に記載の短鎖活性化RNA。
5.該哺乳類細胞が、癌細胞を含む、実施形態1に記載の短鎖活性化RNA。
6.方法であって、ある型の細胞の過剰増殖に特徴がある状態を有する患者を診断することと、短鎖活性化RNAを、該ある型の細胞によるポリペプチドの産生をアップレギュレートするよう設計することと、を含む方法であり、該ポリペプチドの該アップレギュレートされた産生が、該ある型の細胞の増殖能に悪影響を与える、方法。
7.該短鎖活性化RNAを製造することを更に含む、実施形態6に記載の方法。
8.該設計された短鎖活性化RNAを該患者に投与することを更に含む、実施形態6に記載の方法。
9.該診断することが、肝癌を診断する、実施形態6に記載の方法。
10.該設計することが、該ポリペプチドに関するコード領域を有する遺伝子に転写開始部位を提供することに応答して、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された1つ以上の命令を実行することを含む、実施形態6に記載の方法。
11.該ある型の細胞を標的化する追加療法を施すことを更に含む、実施形態6に記載の方法。
12.該追加療法が、化学療法、放射線療法、RFアブレーション療法、及びマイクロ波アブレーション療法からなる群から選択される両方を含む、実施形態11に記載の方法。
13.コンピュータ実行可能な命令を含む1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体であって、該コンピュータ実行可能な命令が、計算システムに、アルブミンに関するコード領域を有する遺伝子のための転写開始部位を受信し、該転写開始部位の周辺で囲まれた領域を選択し、アルブミンの産生をアップレギュレートするためのsaRNA候補物質に関して、ユニットのストリングを特性化し、並びに1つ以上の特性化されたユニットのストリングを、肝臓癌を治療するためのヒト被験者への投与用のsaRNA分子の製造に好ましい候補物質として出力するように指示する、1つ以上のコンピュータ読み取り可能媒体。
14.哺乳類細胞のポリペプチドのアップレギュレーションを引き起こすためのユニットの配列を含む短鎖活性化RNAであって、ここでは、該哺乳類細胞による該ポリペプチドの産生が、該哺乳類細胞の増殖能に悪影響を与える、短鎖活性化RNA。
技術、技法、装置、アセンブリ、システム、方法等の様々な他の例もまた開示される。
方法、装置、システム、配置等のいくつかの例が、添付の図面において例示され、前述の発明を実施するための形態において説明されてきたが、開示される例示的実施形態は限定的ではなく、以下の特許請求の範囲によって記載されかつ定義された精神から逸脱することなく、多数の再編成、変更及び置き換えが可能であることを理解されたい。
いくつかの参考文献が、参照により本明細書に組み込まれる。
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実施例1-アルブミン発現をアップレギュレートするための短鎖RNAsの設計
アルブミン産生に関与する遺伝子の遺伝子配列を、短鎖活性化RNA分子をその特異的な活性化に関して設計するために選択した。特に好適なものはアルブミン遺伝子、CEBPA遺伝子及び/又はHNF4アルファ遺伝子である。
1)UCSC RefSeqデータベースからの標的化遺伝子アノテーション、2)アンチセンスRNAからの標的化配列、3)アンチセンス配列のプロモータ選択、並びに4)候補短鎖活性化RNAsの同定の4つのパラメータを使用した。
まず、本方法は、標的のゲノム位置、配向、及び転写構造についての情報を、利用可能なデータベース(UCSCにおけるRefSeq)からダウンロードする。次に、UCSC Spliced ESTトラックなどの既知の読み取り方向を有するRNA転写物のデータベースで考えると、我々の方法は、アンチセンスでありかつ標的遺伝子の付近にある転写物に関するデータベースを検索する。より具体的には、この方法は、(a)標的のプロモータ領域及び標的mRNAの5’末端に重複するアンチセンス転写物、(b)標的mRNAに重複するアンチセンス転写物、(c)標的の転写開始部位の最大でも20~100kb上流にあるアンチセンス転写物、又は(d)標的のポリアデニル化部位の最大で20~100kb下流にあるアンチセンス転写物を同定する。この方法は、これら4つの基準を階層的フィルタとして使用することで、これが、例えば基準(a)を満たすアンチセンス転写物を見出す場合、方法は3つの他の基準を考慮しない。第3に、標的のTSSに基づいて、方法はアンチセンスゲノム配列を、TSSの上流及び下流の固定サイズ領域からダウンロードする。方法により使用される典型的領域サイズは、TSSの500nts上流及び下流であるが、より大きな又はより小さなサイズもまた使用され得る。第4に、方法は、アンチセンス標的配列の有効かつ特異的ダウンレギュレーションを提供するsiRNAを設計する。方法は、(a)候補の有効siRNAsを同定するために、GPboost(Seatrom P、2004)などのsiRNA設計アルゴリズムを使用し、(b)aaaa、cccc、gggg、又はuuuuモチーフを有し、20%未満又は55%を超えるGC含量を有する全ての候補siRNAを除去し、(c)全ての潜在的オフターゲット転写物に、ハミング距離2未満を有する全ての候補物を移し、並びに(d)これらの予測されたsiRNAノックダウン有効性によって分類された、所定の数の残存する非重複siRNAsを戻す。この方法は、所定のアンチセンス標的配列に関する2つの最高得点のsaRNAを戻す。
90℃での変性工程後に、対合したsaRNAオリゴヌクレオチドを、50mMのTris-HCl(pH8.0)、100mMのNaCl及び5mMのEDTAを使用してアニールした。
実施例2-アルブミンsaRNAによるトランスフェクションを通してのアルブミン発現のアップレギュレーション
材料及び方法
実施例1に記載のように設計された25nMのアニールしたアルブミンsaRNAを、製造業者の使用説明書に従って、ナノフェクタミン(PAA、英国)を使用して細胞の単層上にトランスフェクトした。このプロセスは、3回繰り返した。この試験に使用されたsaRNAの配列は、表1に示すような、ヒトアルブミンPR1(配列番号5及び配列番号6)、ヒトアルブミンPR2(配列番号7及び配列番号8)、ヒトアルブミンPR3(配列番号9及び配列番号10)及びヒトアルブミンPR4(配列番号11及び配列番号12)であった。無作為の、スクランブルされたRNA分子を対照として使用した。
トランスフェクション後に、RNAqueous-Microキット(Ambion、英国)を使用して、製造業者の使用説明書に従って、総RNAの単離を実施した。簡単に言うと、細胞を穏やかに遠心分離し、その後細胞溶解緩衝液(Ambion、英国)中での出力3における3パルスの超音波処理を行った。次いで細胞溶解物を、RNA結合カラムを通して処理し、その後複数回の洗浄及び溶出を行った。単離された総RNAを、Nanodrop 2000分光光度計によって定量化した。500ngの抽出RNAの総量を、ゲノムDNAの除去のために処理し、その後、QiagenからのQuantiTect(登録商標) Reverse Transcriptionキットを使用して、逆転写を行った。
単離されたRNA抽出物を、定量的逆転写酵素(qRT-PCR)を使用して分析した。簡単に言うと、抽出物を、First鎖cDNA合成キット(Qiagen)を使用して、逆転写した。次いでcDNAを、QiagenからのQuantiFast(登録商標) SYBR(登録商標) Green PCRキットを使用して、定量的分析のために増幅した。増幅は、Applied Biosystems 7900HT FAST-Real-Time Systemを使用して、試料当たり25μlの総量で、95℃で15秒間及び60℃で45秒間の40サイクル条件において、増幅を実施した。次いで増幅産物を、Applied Biosystems RQ Manager 1.2.1を使用して分析した。5つの独立した実験を、定量分析のために3通りで増幅した。スチューデントのt検定採点法を、99%の信頼区間で実施した。
アルブミン産生を、アルブミンELISAの使用を通して、細胞内で決定した。簡単に言うと、細胞を、チャコールストリップトFCSの存在下でフェノールレッド無しのRPMI培地中で増殖させた。8時間、16時間及び24時間でのsaRNAトランスフェクションの3セット後に、総アルブミンELISA(Assay Max、Albumin
ELISA、Assay Pro USA)用に、製造業者の使用説明書に従って、培養基を回収した。
結果
アルブミンsaRNAオリゴヌクレオチドによるトランスフェクションがアルブミン産生に及ぼす効果を図2に図示する。mRNAレベルのRT-PCRプロファイルは、saRNAsでトランスフェクトされた細胞でのみ、アルブミンレベルにおける増加を示した。
図10は、アルブミンmRNAにおける著しい増加が、対照と比較するとき、トランスフェクトされたHepG2細胞系(図10B)及びラット肝臓上皮細胞(図10c)において検出され、これが今度はトランスフェクトされた細胞系におけるアルブミン産生の著しい増加に導くことを示す(図10Aでは、HepG2についてのデータのみが示される)。
実施例3-アルブミンsaRNAによるトランスフェクションを通しての細胞の増殖の阻害
HepG2細胞及びラット肝臓上皮細胞を、実施例2で記載される通りにアルブミンsaRNAでトランスフェクトした(すなわち、本実施例では、実施例2と同一のsaRNAを使用した)。ラット肝臓上皮細胞及びHepG2細胞内のそれぞれの細胞増殖を、WSR-1増殖アッセイを使用して測定した。簡単に言うと、細胞増殖試薬のテトラゾリウム塩、4-[3-(4-ヨードフェニル)2-(4ニトロフェニル)2H-5-テトラゾリオ]1,3-ベンゼンジスルホネート(Roche Applied Science、英国)を加えた(例えば、製造業者の使用説明書に従って)。次いで比色アッセイを30分間インキュベートし、生存細胞中のミトコンドリアスクシネート-テトラゾリウムレダクターゼによるテトラゾリウム塩WST-1のホルマザン染料への切断を可能にした。増殖する代謝的に活性な細胞の数に直接関連するホルマザン染料の量を、マルチウェルプレートリーダーにおいてAmax450nmで測定した。
細胞増殖及び生存率は、saRNAsのそれぞれによって著しく阻害された。HepG2細胞系で得られた結果を図3に示す。
実施例4-インビトロでのCEBPA saRNAによるトランスフェクションによるアルブミンのアップレギュレーション及び細胞増殖の阻害
以下のCEBPAを標的としたsaRNA二本鎖(センス/アンチセンス)を、この試験で使用した。
AW1センス鎖:CGGUCAUUGUCACUGGUCA(配列番号13)
AW1アンチセンス鎖:UGACCAGUGACAAUGACCG(配列番号14)
AW2センス鎖:AGCUGAAAGGAUUCAUCCU(配列番号15)
AW2アンチセンス鎖:AGGAUGAAUCCUUUCAGCU(配列番号16)
CEBPAの3’UTRプロモータ領域を標的とする合成saRNA二本鎖(上記)を、リポソーム法(ナノフェクチン)を使用して、細胞系又は一次CD34+細胞(Omnicytes)のいずれかにトランスフェクトした。CEBPA及びアルブミンの転写物レベルの変化を、qPCRにより定量的に測定した。細胞増殖における更なる変化を、テトラゾリウム塩、4-[3-(4-ヨードフェニル)2-(4ニトロフェニル)2H-5-テトラゾリオ]1,3-ベンゼンジスルホネート(WST-1)アッセイを使用して測定した。
HepG2細胞におけるCEBPAの発現は、他の培養されたヒト肝細胞と比較する場合、低かったために、HepG2細胞を使用してAW1及びAW2をトランスフェクトする効果を検討した。48時間にわたる培養での3用量のトランスフェクション後、HepG2細胞を採取し、mRNA分析について分析した。CEBPAのmRNAレベルにおける著しい変化は、この培養期間中には観察されなかった(図11A)。CEBPAは、その培養の初期段階中に早期かつ高速の減衰を示すので、これは驚くべきことではない。これに対し、アルブミンのmRNA転写物レベルにおける増加が観察された(図11B)。mRNAにおけるアルブミン増加が、タンパク質へのその翻訳も反映するかどうかを確認するために、機能的酵素結合免疫吸着法(ELISA)を実施した。saRNAでトランスフェクトされた細胞を血清なし/チャコールストリップト培地中で培養し、外因性アルブミンのいかなる供給源も除去した。AW1又はAW2のいずれかの存在下での48時間の培養時間後に、細胞培養基を単離し、市販のキットを使用して、ヒトアルブミンの検出のために処理した。非トランスフェクト細胞と比較する場合、アルブミン発現の顕著な増加を、saRNAでトランスフェクトされた細胞において検出した(図11C)。トランスフェクトされたHepG2細胞でWST-1増殖アッセイを更に実施した。細胞増殖における低減を観察した(図11D)。
次に、AW1又はAW2が、非肝細胞中、すなわち前立腺癌上皮細胞系(DU145)(図12)及び健康な成人の造血CD34細胞系で、アルブミン転写物又は翻訳の積極的調節を成功裏に誘導したかを判定した。これら細胞系を、48時間にわたる3用量後に、上記のようにAW1及びAW2でトランスフェクトした。次いで細胞を採取し、CEBPA及びアルブミンの転写物レベルについて分析した。前立腺癌細胞系は、AW1と比較してAW2でトランスフェクトされる場合、CEBPA転写物レベルにおいて大幅な増加を示し(図12A)、両トランスフェクションは、アルブミン転写物レベルにおける顕著な増加を誘導した(図12B)。WST1アッセイもまた、実施した。DU145の増殖は、CEBPAでのトランスフェクション後に、顕著に低減した(図12C)。
AW1及びAW2はまた、CD34+幹細胞中でアルブミン産生をアップレギュレートしたが、CD34細胞の増殖は、AW1及びAW2のsaRNA構築物により影響を受けなかった(データを図示せず)。
本発明者は、CEBPAに特異的なsaRNA AW1及びAW2によるトランスフェクションが、ヒト肝細胞癌系及び前立腺癌上皮細胞系におけるアルブミン転写物レベル及びタンパク質発現をアップレギュレートする能力を有することを成功裏に確立した。更に、このアルブミンタンパク質発現における増加は、細胞増殖における低減に導く。これに対し、CEBPAに特異的なsaRNA AW1及びAW2による健康なCD34細胞のトランスフェクションは、細胞増殖に影響を与えず、このことは、細胞増殖に及ぼす影響は、癌細胞に特異的であることを示唆する。
実施例5-インビボのマウスの肝臓におけるアルブミンsaRNAによるトランスフェクションによるアルブミンのアップレギュレーション
10匹の雄C57BI6/J、8週齢マウスを実験に使用した(対照群N=5)。施設及び地域規制機関からの承認を得、全ての手順は常任の国家条例に従った。
アルブミンsaRNAオリゴヌクレオチドを、実施例1に記載のように発生させた。表2に示すようなマウスアルブミンPR2(配列番号39及び配列番号40)を、本試験のために選択した。オリゴヌクレオチドを、100μLのRNase/Dnase無しのH2Oで再構成し、50μLの複合体A及び50μLの複合体B(インビボフェクタミン、Invitrogen、カリフォルニア州、米国)を混合し、50℃で30分間インキュベートし、これを尾部静脈注射に使用した。対照動物は、等量のPBSで注射したが、陽性対照動物は、第7因子に対するsiRNAを受容し、合計で5匹の対照と5匹の実験動物に注射した。
投与後、総RNAを単離した。凍結組織部分を、Trizoを含有するシンチレーションバイアル中に配置し、30秒間ホモゲナイズした。次いでホモジェネートを、ファルコン管の中に移し、更に2分間ホモゲナイズした。次いでクロロホルムをこれに加え、渦流で混合し、その後4℃、12,000rpmで15分間遠心分離した。次いで水性上部相を新しいミクロフュージ管に移し、ここで5mg/mlの直鎖アクリルアミド(Ambion)及びイソプロパノールを使用して、RNAを-20℃で一晩沈降させた。4℃、12,000rpmで15分間の遠心分離によりRNAをペレット化し、氷冷70%エタノールで洗浄した。RNAを、4℃、7,500rpmで5分間の遠心分離で再度ペレット化した。Bionanalyserを使用するRNA整合性に関する直接分析用に、RNAをヌクレアーゼ無しの水中で溶解した。
単離されたRNAを、実施例2に記載のように、qRT-PCRを使用して分析した。アルブミン産生を、実施例2に記載のように、アルブミンELISAを使用して決定した。
図13Aは、マウスへのデンドリマー送達ビヒクルを使用するアルブミンsaRNAオリゴヌクレオチドの投与が、血液循環内のアルブミンにおける顕著な増加に導くことを示す。
アルブミンsaRNAの投与は、肝機能マーカーのγグルタミルトランスペプチダーゼ(図13B)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(図13C)、及びアスパルギン酸アミノトランスフェラーゼ(図13D)若しくはビリルビン(データを図示せず)により、肝機能全体に及ぼす有害な効果を有さなかった。更に、アルブミンsaRNAは、αフェトタンパク質をコードする遺伝子のmRNA発現をダウンレギュレーションすることができた(図16B)。これらタンパク質の双方は、肝細胞増殖に関係しているために、saRNAによるこれら遺伝子のダウンレギュレーションは、これらがインビボで増殖を阻害することが可能であることを示唆する。
マウス肝臓の免疫組織化学検査は、肝腺房の構造が保存され、著しい肝門部の炎症又は線維化がなく、胆管、中央細静脈及びシヌソイドは目立たず、卵形細胞増殖の病巣がなく、肝細胞の壊死炎症の活動の明確な病巣がなく、少なくとも形態により検出可能であるものではないKuppfer細胞の活性化はなく、血管又は内皮の変化はなく、可逆的細胞損傷の徴候、すなわち腫れ又は脂肪変性がなく、並びに増加した肝細胞増殖を示唆する所見、すなわち、有糸核分裂、厚化したプレート及び核の密集がなかった。要約すると、肝臓の形態は、アルブミンsaRNAオリゴヌクレオチドの投与では、大部分は、変化しないままであった。
実施例6-肝硬変を有するラットにおけるCEBPA saRNAによるトランスフェクションによる血清アルブミンのアップレギュレーション
CEBPA saRNA構築物のアルブミンを増加させる能力を、罹患動物、すなわち肝硬変を有するラットで評価した。
AW1(配列番号13及び配列番号14)並びにAW2(配列番号15及び配列番号16)のアルブミン産生に及ぼすインビボの効果を評価するために、肝硬変を有するラットに、AW1及びAW2構築物を投与し、実施例2に記載されるように、ELISAを使用した。
AW1構築物の投与は、血清アルブミンにおける有意な増加(p=0.0288)に導いた(図14)。AW1及びAW2データの共同のプーリングは、アルブミン産生における増加が更により有意であることを示す(p=0.0172)(図15、ここではプールされたAW1及びAW2は「CEBPA」と表示される)。このことは、CEBPA saRNA構築物がアルブミン産生に及ぼす効果が、インビボで罹患動物において認められ得ることを示す。
実施例7-ラット腫瘍モデルにおけるCEBPA saRNAsによるトランスフェクションによる腫瘍発生及び成長の阻害
20匹のラットを、四塩化炭素(CCl4)で処置して、肝硬変を惹起させた。ラットは、40mL/Lの濃度において、0.2mL/100g体重のCCl4で、週2回4週間にわたって処置した。
次いで、これらラットを2つの群に無作為化により割り付けた。対照群は、尾部静脈内に生理食塩水を注射した。実験群は、1、3及び5日目に、CEBPA:AW1(配列番号13及び配列番号14)又はAW2(配列番号15及び配列番号16)をアップレギュレートすることによりアルブミンをアップレギュレートするsaRNAの3回の注射を注射した。saRNA注射後2週間で、全ての動物を致死させた。
saRNAで処置したラットは、対照(生理食塩水で処置された)ラットと比較して、非常に少数の腫瘍を有し、かつ腫瘍がより小さかった。更に、腫瘍発生の開始は、saRNA処置群において遅かった。AW1は、腫瘍発生及び成長を阻害する上で特に有効であった。
実施例8-動物腫瘍モデルにおけるアルブミンをアップレギュレートするsaRNAsによるトランスフェクションによる腫瘍発生及び成長の阻害
実施例6又は7で記載された実験を、肝臓癌を有するよう化学的に惹起させたマウスで繰り返す。肝臓癌は、DEN、遺伝毒性のある発癌物質を使用して惹起させる。DENは、典型的には、単回腹腔内注射(15μg/g体重)により、12日齢と15日齢の間のマウスに投与する。このプロトコルを使用することにより、平均で、DENの腹腔内注射後44週に、B6C3F1雄マウスの100%がHCCsを発生する。次いで、表1に示すsaRNAsを投与し、アルブミン発現を、実施例6に記載されるようにアッセイする。
腫瘍直径を、ディジタル式ノギスで測定し、mm3での腫瘍体積を、式:体積=(幅)2×長さ/2により計算する。腫瘍発生及び成長を、対照マイスと比較して、処置マウスの腫瘍体積を決定することにより分析する。
実施例9-ヒト腫瘍異種移植片を有するマウスにおけるアルブミンをアップレギュレートするsaRNAによるトランスフェクションによる癌細胞増殖の阻害
ヒト肝臓腫瘍細胞をインビトロで培養し、洗浄し、ヌードマウス(4~6週齢)の下部脇腹部位に皮下注射する(3.0×106細胞)。表1に示すsaRNAを使用する療法を、腫瘍が~50-60mm3の平均体積に到達した1~3週間後に開始する。腫瘍直径をディジタル式ノギスで測定し、mm3での腫瘍体積を、式:体積=(幅)2×長さ/2により計算する。
saRNA投与及びアルブミン発現アッセイを、実施例6に記載のように実行する。腫瘍発生及び増殖を、対照マウスと比較して処置マウスの腫瘍体積を決定することにより分析する。