A.第1実施形態:
(A-1)二次電池システムの構成:
第1実施形態の二次電池システム11を示す図1および図2では、二次電池システム11の配置の方向に関して、互いに直行するX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向を示している。図2は、図1に示す-X方向に二次電池システム11を見た様子を示す。ただし、図2では、後述する制御部50、外気温センサ52、およびスタートスイッチ54については、記載を省略している。本実施形態において、Z軸方向は上下方向とも呼び、+Z方向は鉛直上方を示すと共に、-Z方向は鉛直下方を示す。また、X軸方向およびY軸方向は、水平方向を示す。本実施形態の二次電池システム11は、車両に搭載されている。本実施形態では、図1および図2のX軸方向は車両の左右方向を示し、Y軸方向は車両の前後方向を示す。図1および図2では、+Y方向を車両前方向としており、+X方向を車両右方向としているが、車両に二次電池システム11を搭載したときの二次電池システム11の各部の配置は、左右方向と前後方向の少なくとも一方を、図1および図2に対して逆転させてもよい。例えば、二次電池システム11は、車両の駆動エネルギ源として用いることができ、二次電池システム11のみを駆動エネルギ源とする電気自動車、内燃機関を駆動動力源としてさらに備えるハイブリッド車両、あるいは、燃料電池を駆動エネルギ源としてさらに備える燃料電池車両に搭載して用いることができる。本実施形態では、二次電池システム11は、二次電池システム11のみを駆動エネルギ源とする電気自動車に搭載されている。ただし、二次電池システム11は、駆動エネルギ源として車載する以外の用途に用いてもよい。
二次電池システム11は、二次電池18と、第1ヒータ22と、蓄熱タンク30と、冷媒ポンプ28と、上記二次電池18等の各部を経由して冷媒を導く複数の冷媒流路と、上記複数の冷媒流路における冷媒の流れを切り替える複数の切替弁と、制御部50と、を備える。
二次電池18は、複数の電池セル10aが積層されたセル積層体10を、複数備えている。図1では、一例として、二次電池18が8つのセル積層体10を備える様子を示している。電池セル10aは、例えば、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池、有機ラジカル電池とすることができる。各々のセル積層体10において、電池セル10aの積層方向(以下、単に積層方向とも呼ぶ)の両端には、エンドプレート10bが配置されている。また、各セル積層体10の側面には、積層方向に延びるようにサイドプレート10cが配置されている。セル積層体10は、両端のエンドプレート10bにサイドプレート10cが図示しないボルトで結合されて、積層方向に締結圧がかかった状態で保持される。
各電池セル10aは、正極端子および負極端子を備えており、これらの端子がバスバー等の導電部材によって電池セル10a間で接続される。その結果、セル積層体10内では、セル積層体10を構成する複数の電池セル10aが、直列または並列に接続されている。二次電池18内では、二次電池18を構成するセル積層体10が、直列または並列に接続されており、二次電池18には、二次電池18全体から電力を取り出すための図示しない出力端子が設けられている。
二次電池18は、さらに、熱交換器13を備える。熱交換器13は、各セル積層体10と熱交換するための部材である。熱交換器13は、板状に形成されており、一方の面上に全てのセル積層体10が載置されて、セル積層体10との間で伝熱により熱交換が行なわれる。熱交換器13内には、冷媒が流れる熱交換器内流路12が設けられている。本実施形態では、車両前方で折れ曲がり部を有するU字型の熱交換器内流路12が4つ設けられている。各熱交換器内流路12は、車両前後方向(Y軸方向)に配置された2つのセル積層体10と上下方向(Z軸方向)に重なって設けられている。U字型の各熱交換器内流路12の一方の端部には第1接続部14が設けられており、他方の端部には第2接続部16が設けられている。ただし、熱交換器13は、冷媒と各セル積層体10との間で熱交換可能であればよく、熱交換器13内で冷媒を引き回す熱交換器内流路12の形状は、上記した4つのU字型流路とは異なる形状であってもよい。二次電池18では、上記した各セル積層体10および熱交換器13が、ケース60内に収容されて、電池パックを構成している。
第1ヒータ22は、二次電池18内を流れる冷媒を加熱するための装置であり、二次電池18外で引き回される冷媒流路に設けられている。本実施形態では、第1ヒータ22は、後述する第1集合配管部41に設けられている。第1ヒータ22は、電力供給を受けて発熱する装置であればよく、例えば、電熱ヒータとすることができる。
蓄熱タンク30は、後述するように、二次電池18内を流れる冷媒を保温しつつ貯留するための装置である。蓄熱タンク30は、例えば、氷点下の低温環境下で冷媒を貯留するときに、内部に蓄える冷媒が放熱により温度低下することを抑制可能であればよい。蓄熱タンク30は、例えば、蓄熱タンク30の外殻が2重構造であるもの、当該2重構造の中が真空である真空断熱構造であるもの、もしくは、蓄熱タンク30の外表面あるいは内表面の少なくとも一部を覆うように断熱材を配置したもの、とすることができる。用いる断熱材の材質を適宜選択することにより、あるいは、断熱材の厚みを増加させることにより、あるいは、断熱材を配置する範囲を適宜設定することにより、冷媒の温度低下を抑える効果を高めることができる。蓄熱タンク30の容積は、二次電池18内の熱交換器内流路12の容積の合計以上とすることが好ましい。このようにすれば、二次電池システム11の停止時に、熱交換器内流路12内の温められた冷媒の全量を、蓄熱タンク30内に貯留することができる。
蓄熱タンク30には、蓄熱タンク30内の冷媒量を検出する冷媒量センサとして、液位センサ32が設けられている。液位センサ32は、静電容量式、超音波式、フロート式等、種々の方式の液位センサを採用可能である。
冷媒ポンプ28は、二次電池18外の冷媒流路に設けられて、冷媒流路内を流れる冷媒を加圧する。本実施形態では、冷媒ポンプ28は、後述する第5流路45に設けられている。
二次電池システム11は、冷媒流路として、第1流路40、第2流路42、第3流路44、第4流路48、第5流路45を備える。また、二次電池システム11は、冷媒流路の連通状態を切り替える複数の切替弁を備える。具体的には、本実施形態では、切替弁として、第1三方弁20と多方弁部24とを備える。多方弁部24は、第2三方弁25および第3三方弁26を備える。
第1流路40は、各々の熱交換器内流路12の一方の端部と、第1三方弁20と、多方弁部24と、に接続される流路であり、第1分岐配管部15と第1集合配管部41とを備える。第1分岐配管部15は、各々の熱交換器内流路12の第1接続部14に接続されている。第1集合配管部41は、三方に分岐しており、第1分岐配管部15に接続されて、全ての熱交換器内流路12と連通すると共に、さらに、第1三方弁20および多方弁部24の第2三方弁25に接続される。第1集合配管部41には、第1ヒータ22が設けられており、第1ヒータ22に通電すると、第1集合配管部41内を流れる冷媒が加熱される。また、第1集合配管部41において、第1分岐配管部15との接続部の近傍には、第1集合配管部41内を流れる冷媒の温度を検出するための温度センサ19が設けられている。
第2流路42は、各々の熱交換器内流路12の他方の端部と、第1三方弁20と、多方弁部24と、に接続される流路であり、第2分岐配管部17と第2集合配管部43とを備える。第2分岐配管部17は、各々の熱交換器内流路12の第2接続部16に接続されている。第2集合配管部43は、三方に分岐しており、第2分岐配管部17に接続されて、全ての熱交換器内流路12と連通すると共に、さらに、第1三方弁20および多方弁部24の第3三方弁26に接続される。
第3流路44は、蓄熱タンク30に一方の端部が接続されると共に、他方の端部が第1三方弁20に接続される。第4流路48は、蓄熱タンク30と多方弁部24とに接続される。具体的には、第4流路48は分岐して、多方弁部24の第2三方弁25と第3三方弁26との双方に接続される。上記のように、第3流路44と第4流路48とが接続される蓄熱タンク30においては、第3流路44との接続箇所は、第4流路48との接続箇所よりも、鉛直上方に配置されている(図2参照)。第5流路45は、多方弁部24に両端部が接続されると共に、冷媒ポンプ28が設けられている。具体的には、第5流路45は、多方弁部24の第2三方弁25と第3三方弁26とのそれぞれに接続されている。
制御部50は、CPUと、ROMと、RAMと、入出力ポートと、を有する。制御部50は、二次電池システム11を搭載する車両に設けた外気温を検出するための外気温センサ52、二次電池システム11の始動および停止の指示入力を受け付けるスタートスイッチ54、あるいは、蓄熱タンク30に設けた液位センサ32等から信号を取得する。また、制御部50は、既述した切替弁や第1ヒータ22や冷媒ポンプ28等に駆動信号を出力して、冷媒流れに係る制御を実行する。二次電池システム11を搭載する車両は、さらに、図示しない制御部として、二次電池18からの出力を制御する制御部や、車両の走行に係る制御部を備える。制御部50を含むこれら複数の制御部は、単一の制御部として構成してもよく、別体の制御部として構成して、これら複数の制御部間で、必要な情報をやり取りすることとしてもよい。
既述した第1三方弁20および多方弁部24を備える本実施形態の切替弁は、熱交換器内流路12内の冷媒が冷媒ポンプ28を経由して蓄熱タンク30に導かれる第1状態と、蓄熱タンク30内の冷媒が冷媒ポンプ28を経由して熱交換器内流路12に導かれる第2状態と、の間で、冷媒流路の連通状態を切り替える。熱交換器内流路12と蓄熱タンク30との間で冷媒を移送するための複数の切替弁および冷媒ポンプ28は、「冷媒移送部」とも呼ぶ。
図3では、上記した第1状態および第2状態に加えて、さらに第3状態の様子を示している。図3に示すように、第1状態は、低温環境下における二次電池システム11の停止時であって、熱交換器内流路12内の冷媒を抜いて蓄熱タンク30に移送する第1動作を実行する際に、採用される。第2状態は、第1動作を実行して二次電池システム11を停止した後における二次電池システム11の始動時であって、蓄熱タンク30内の冷媒を熱交換器内流路12に移送する第2動作を実行する際に、採用される。第3状態は、第2動作を実行した後などに、第1ヒータ22を用いて冷媒を加熱して二次電池18を暖機運転する際に、採用される。既述した図1は、第1状態を表わす。図1、図3、および、後述する図6、図9では、各切替弁における白い三角は、流路が連通していることを示し、黒い三角は、流路が閉塞していることを示す。以下では、二次電池システム11で実行されて、冷媒流路の連通状態として第1状態から第3状態の各々が採用される際の二次電池システム11の動作を説明する。
(A-2)システム停止時の動作:
図4に示す停止時制御処理ルーチンは、二次電池システム11の始動を指示するスタートスイッチ54がオンにされて、二次電池18が車両の駆動モータ等の負荷に電力供給する状態になったときに、制御部50で実行される。
図4の停止時制御処理ルーチンが起動されると、制御部50のCPUは、スタートスイッチ54がオフになったか否かを判断する(ステップS100)。制御部50のCPUは、スタートスイッチがオフになったと判断するまで、ステップS100を繰り返し実行する。
スタートスイッチがオフになったと判断すると(ステップS100:YES)、制御部50のCPUは、外気温センサ52から外気温Toutを取得する(ステップS110)。外気温センサ52は「温度センサ」とも呼び、外気温Toutは、「環境温度」とも呼ぶ。そして制御部50のCPUは、取得した外気温Toutと、予め定めた第1基準温度Tmin1とを比較する(ステップS120)。ステップS120では、二次電池システム11が、予め定めた低温環境下にあるか否かを判断している。第1基準温度Tmin1は、用いる二次電池18の出力性能の温度依存性に応じて、二次電池18の出力性能が低下する低温環境下であるか否かを判断できるように定めればよい。第1基準温度Tmin1は、例えば、0℃~5℃の温度範囲に設定することができる。外気温Toutが第1基準温度Tmin1未満であるときには(ステップS120:YES)、制御部50のCPUは、冷媒抜き制御処理ルーチンを実行する(ステップS130)。冷媒抜き制御処理ルーチンとは、既述した第1動作を実行するための処理であり、詳しい内容は後述する。ステップS130の冷媒抜き制御処理ルーチンを実行すると、制御部50のCPUは、第1動作を実行したことを示す冷媒抜き実行フラグをオンにして(ステップS140)、本ルーチンを終了する。
ステップS120において、外気温Toutが第1基準温度Tmin1以上であるときには(ステップS120:NO)、制御部50のCPUは、本ルーチンを終了する。
図5に示すように、図4のステップS130である冷媒抜き制御処理ルーチンが起動されると、制御部50のCPUは、切替弁を、図3に示す第1状態にする(ステップS200)。ステップS200を実行する前、すなわち、スタートスイッチ54がオフにされるときには、切替弁は、例えば、図3に示す第3状態となっており、この場合には、ステップS200では、第3状態から第1状態への切り換えが行なわれる。
その後、制御部50のCPUは、冷媒ポンプ28をオンにして、冷媒流路内において冷媒の循環を開始させる(ステップS210)。ステップS210を実行する時点で、既に冷媒ポンプ28が駆動されているときには、ステップS210では、冷媒ポンプ28を駆動する状態を維持すればよい。また、ステップS210を実行する時点における冷媒ポンプ28の駆動量が、ステップS210で採用すべき冷媒ポンプ28の駆動量とは異なるときには、ステップS210では、冷媒ポンプ28の駆動量を適切に変更すればよい。切替弁を第1状態にしてステップS210を実行することにより、図1に示すように、熱交換器内流路12内の冷媒を抜いて蓄熱タンク30に移送する第1動作が開始される。すなわち、各熱交換器内流路12内の冷媒は、第1接続部14から第1分岐配管部15を経由して第1集合配管部41に流出し、第1ヒータ22および多方弁部24の第2三方弁25を経由して、第5流路45を流れる。そして、さらに多方弁部24の第3三方弁26および第4流路48を経由して、蓄熱タンク30に移送される。このとき、蓄熱タンク30内の空気は、第3流路44および第1三方弁20を経由して、第2集合配管部43および第2分岐配管部17を流れ、第2接続部16から各熱交換器内流路12内に流入する。これにより、各熱交換器内流路12内の冷媒は蓄熱タンク30内に蓄えられ、各熱交換器内流路12内は空気で満たされる。
ステップS210の後に、制御部50のCPUは、液位センサ32から、蓄熱タンク30内の液位Hを取得する(ステップS220)。そして、制御部50のCPUは、取得した液位Hと、予め定めた第1基準液位H1とを比較する(ステップS230)。第1基準液位H1とは、各熱交換器内流路12から冷媒を抜く動作が完了したことを判断するための値である。第1基準液位H1は、例えば、各熱交換器内流路12内から蓄熱タンク30に移送し得る冷媒の全量が移送されたときの、蓄熱タンク30内の液位とすることができる。ただし、第1基準液位H1として、各熱交換器内流路12から蓄熱タンク30に移送し得る冷媒の全量が移送されたときの蓄熱タンク30内の液位よりも低い液位を設定してもよい。制御部50のCPUは、ステップS230において液位Hが第1基準液位H1以上であると判断するまで、ステップS220およびステップS230の動作を繰り返す。ステップS230を実行するとき、制御部50は、蓄熱タンク30への冷媒の流入が完了したか否かを判定する「判定部」として機能する。
液位Hが第1基準液位H1以上であると判断すると(ステップS230:YES)、制御部50のCPUは、冷媒ポンプ28をオフにして(ステップS240)、本ルーチンを終了する。
図4および図5に示す処理を実行することで、二次電池18の出力性能が低下する可能性のある低温環境下で二次電池システム11を停止するときには、熱交換器内流路12内の冷媒を蓄熱タンク30に移送する第1動作が実行される。二次電池18は一般に、放電時に発熱するため、二次電池システム11の停止時には、二次電池18および二次電池18を経由して流れる冷媒は、二次電池システム11が用いられる環境温度よりも高温となる。そのため、ステップS120で外気温Toutが第1基準温度Tmin1よりも低い低温環境下であると判断されて、上記した第1動作が実行することにより、システム停止時には、環境温度よりも高温の冷媒が、蓄熱タンク30内に蓄えられて保温される。
(A-3)システム始動時の動作:
既述した第1動作を行なってシステム停止した後にシステムを始動するときには、二次電池システム11は、蓄熱タンク30内の冷媒を熱交換器内流路12に移送する第2動作を実行する。第2動作を実行するときの二次電池システム11の様子を、図1と同様にして図6に示している。図6に示すように、第2動作を実行する際には、第1三方弁20および多方弁部24を備える切替弁は、図3の第2状態となる。
図7に示す始動時制御処理ルーチンは、二次電池システム11の始動を指示するスタートスイッチ54がオフにされて、二次電池システム11を停止するための処理が終了したときに、制御部50で実行される。なお、始動時制御処理ルーチンの実行時に制御部50が消費する電力は、二次電池18から得てもよく、二次電池18以外の補助的な電源から得てもよい。あるいは、車両の待機電力を使用することなく、既述した冷媒抜き実行フラグを不揮発性メモリに記憶させておき、スタートスイッチ54がオンにされた後に、制御部50のCPUが上記冷媒抜き実行フラグを取得して、後述するステップS310以降の処理を実行することとしてもよい。
図7の始動時制御処理ルーチンが起動されると、制御部50のCPUは、スタートスイッチ54がオンになったか否かを判断する(ステップS300)。制御部50のCPUは、スタートスイッチがオンになったと判断するまで、ステップS300を繰り返し実行する。
スタートスイッチがオンになったと判断すると(ステップS300:YES)、制御部50のCPUは、冷媒抜き実行フラグを取得して(ステップS310)、冷媒抜き実行フラグがオンであるか否かを判断する(ステップS320)。前回、二次電池システム11を停止したときに、第1動作が実行されて、冷媒抜き実行フラグがオンになっている場合には(ステップS320:YES)、制御部50のCPUは、再投入制御処理ルーチンを実行する(ステップS330)。再投入制御処理ルーチンとは、既述した第2動作を実行するための処理であり、詳しい内容は後述する。ステップS330の再投入制御処理ルーチンを実行すると、制御部50のCPUは、冷媒抜き実行フラグをオフにして(ステップS340)、本ルーチンを終了する。
前回、二次電池システム11を停止したときに、第1動作が実行されておらず、冷媒抜き実行フラグがオフになっている場合には(ステップS320:NO)、制御部50のCPUは、本ルーチンを終了する。
図8に示すように、図7のステップS330である再投入制御処理ルーチンが起動されると、制御部50のCPUは、切替弁を、図3に示す第2状態にする(ステップS400)。ステップ4200を実行する前、すなわち、システム停止時に第1動作が実行されて、その後、スタートスイッチ54がオンにされたときには、切替弁は、例えば、図3に示す第1状態となっている。この場合には、ステップS400では、第1状態から第2状態への切り換えが行なわれる。
その後、制御部50のCPUは、冷媒ポンプ28をオンにして、冷媒流路内において冷媒の循環を開始させる(ステップS410)。切替弁を第2状態にしてステップS410を実行することにより、図6に示すように、蓄熱タンク30内の冷媒を熱交換器内流路12に移送する第2動作が開始される。すなわち、蓄熱タンク30内の冷媒は、第4流路48に流出し、多方弁部24の第2三方弁25、第5流路45、多方弁部24の第3三方弁26を経由して、第2集合配管部43を流れる。そして、さらに第2分岐配管部17を経由して、第2接続部16から各熱交換器内流路12内に流入する。このとき、各熱交換器内流路12を満たしていた空気は、第1接続部14から第1分岐配管部15を経由して第1集合配管部41に流出し、第1三方弁20および第3流路44を経由して、蓄熱タンク30内に流入する。これにより、蓄熱タンク30内の冷媒は各熱交換器内流路12に移送され、熱交換器内流路12を満たしていた空気は、蓄熱タンク30に蓄えられる。
ステップS410の後に、制御部50のCPUは、液位センサ32から、蓄熱タンク30内の液位Hを取得する(ステップS420)。そして、制御部50のCPUは、取得した液位Hと、予め定めた第2基準液位H2とを比較する(ステップS430)。第2基準液位H2とは、蓄熱タンク30から熱交換器内流路12に冷媒を移送する動作が完了したことを判断するための値である。第2基準液位H2は、例えば、各熱交換器内流路12を含む蓄熱タンク30内以外の冷媒の流路が冷媒で満たされたときの、蓄熱タンク30内の液位とすることができる。ただし、第2基準液位H2として、各熱交換器内流路12を含む上記冷媒の流路が完全に冷媒で満たされたときの蓄熱タンク30内の液位よりも高い液位を設定してもよい。制御部50のCPUは、ステップS430において液位Hが第2基準液位H2以下であると判断するまで、ステップS420およびステップS430の動作を繰り返す。ステップS430を実行するとき、制御部50は、蓄熱タンク30からの冷媒の流出が完了したか否かを判定する「判定部」として機能する。
液位Hが第2基準液位H2以下であると判断すると(ステップS430:YES)、制御部50のCPUは、切替弁を第3状態にすると共に(ステップS440)、冷媒ポンプ28をオフにして(ステップS450)、本ルーチンを終了する。
図7および図8に示す処理を実行することで、二次電池18の出力性能が低下する可能性のある低温環境下で二次電池システム11を停止した後にシステムを始動するときには、蓄熱タンク30内の冷媒を熱交換器内流路12に移送する第2動作が実行される。既述したように、蓄熱タンク30内には、比較的温度が高い冷媒が蓄えられて保温されているため、二次電池システム11の始動時に第2動作を実行することにより、比較的温度が高い冷媒により、二次電池18が温められる。
(A-4)暖機運転時の動作:
本実施形態の二次電池システム11では、低温始動時に、蓄熱タンク30内で保温した冷媒を熱交換器内流路12に移送する第2動作を行なった後に、さらに、第1ヒータ22を用いて冷媒を加熱して二次電池18を昇温させる暖機運転が行なわれる。暖機運転を行なうときの二次電池システム11の様子を、図1と同様にして図9に示している。図9に示すように、暖機運転時には、第1三方弁20および多方弁部24を備える切替弁は、図3の第3状態となる。
図10に示す暖機制御処理ルーチンは、二次電池システム11の始動時において、既述した再投入制御処理ルーチンが開始されたときに、制御部50で実行される。
図10の暖機制御処理ルーチンが起動されると、制御部50のCPUは、図8の再投入制御処理ルーチンが終了したか否かを判断する(ステップS500)。制御部50のCPUは、再投入制御処理ルーチンが終了するまで、すなわち、第2動作が終了するまで、ステップS500を繰り返し実行する。
再投入制御処理ルーチンが終了すると(ステップS500:YES)、制御部50のCPUは、冷媒ポンプ28をオンにすると共に、暖機運転時の冷媒流量として予め設定した冷媒流量が実現されるように、冷媒ポンプ28の駆動量を設定する(ステップS510)。そして、制御部50のCPUは、第1ヒータ22をオンにする(ステップS520)。これにより、第1ヒータ22による冷媒の加熱と、加熱された冷媒を用いた二次電池18の暖機が開始される。このとき、第1ヒータ22への電力の供給源としては、二次電池18を用いてもよく、二次電池システム11を搭載する車両が備える二次電池18以外の補助的な電源を用いてもよい。あるいは、二次電池システム11を搭載する車両の外部に設けられた外部電源を用いてもよい。
再投入制御処理ルーチンが終了して暖機制御処理ルーチンが開始されるときには、既述したように、切替弁は、図3に示す第3状態になっており、二次電池18の熱交換器内流路12を含む冷媒の流路は、冷媒で満たされている。このような状態で第1ヒータ22および冷媒ポンプ28を駆動すると、図9に示すように、各熱交換器内流路12内の冷媒は、第1接続部14から第1分岐配管部15を経由して第1集合配管部41に流出し、第1ヒータ22で加熱される。そして、多方弁部24の第2三方弁25、第5流路45、多方弁部24の第3三方弁26を経由して、第2集合配管部43を流れる。その後、さらに第2分岐配管部17を経由して、第2接続部16から各熱交換器内流路12内に流入する。このように、熱交換器内流路12と第1ヒータ22との間を冷媒が循環することにより、二次電池18の暖機が行なわれる。
ステップS520で二次電池18の暖機を開始すると、制御部50のCPUは、温度センサ19が検出する冷媒温度Tcを取得する(ステップS530)。温度センサ19は、各熱交換器内流路12から冷媒が流出する出口近傍である、第1集合配管部41と第1分岐配管部15との接続部の近傍に配置されている。そのため、温度センサ19が検出する冷媒温度Tcから、二次電池18の温度を判断することができる。ステップS530で取得する温度は、二次電池18の温度を反映する温度であればよい。暖機運転時に冷媒が流れる流路の異なる位置に温度センサ19を設けてもよく、あるいは、二次電池18の温度を直接検出する温度センサを二次電池18に設けて、当該温度センサの検出値を取得してもよい。
ステップS530の後、制御部50のCPUは、取得した冷媒温度Tcと、予め定めた第2基準温度Tmin2とを比較する(ステップS540)。ステップS540では、二次電池18の暖機運転が終了したか否かを判断している。第2基準温度Tmin2は、用いる二次電池18の出力性能の温度依存性に応じて、二次電池18の出力性能が十分に高くなるように二次電池18が昇温したか否かを判断できるように定めればよい。制御部50のCPUは、冷媒温度Tcが第2基準温度Tmin2以上になるまで、ステップS530およびステップS540の動作を繰り返す。
冷媒温度Tcが第2基準温度Tmin2以上になると(ステップS540:YES)、制御部50のCPUは、第1ヒータ22をオフにする(ステップS550)。これにより、第1ヒータ22による冷媒の加熱が停止される。そして、制御部50のCPUは、冷媒ポンプ28の制御状態を、二次電池システム11の通常使用時における制御状態に変更して(ステップS560)、本ルーチンを終了する。暖機運転の終了により、二次電池システム11を搭載する車両は、負荷要求に応じた走行が可能になる。
既述したように、ステップS510では、暖機運転時の冷媒流量として予め設定した冷媒流量が実現されるように、冷媒ポンプ28の駆動量が設定されている。暖機運転が終了したステップS560では、二次電池18から負荷要求に応じた電力が供給される通常使用時の冷却量として定められた冷却量が実現されるように、冷媒ポンプ28の駆動量が設定される。例えば、通常使用時に、車両の走行風を用いて二次電池18の冷却を行ない、冷媒の循環を行なわない場合には、ステップS560では冷媒ポンプ28をオフにすればよい。また、通常使用時に、二次電池18の温度に応じて冷媒循環のオンオフの切り替えを行なう場合、あるいは、二次電池18の温度に応じて冷媒流量を変更する場合には、温度センサ19の検出値を用いてこれらの制御を実行すればよい。
二次電池システム11の冷媒流路において、第1ヒータ22に加えて、さらに、冷媒を冷却する冷却装置を設けてもよい。この場合には、冷却装置を適宜用いることにより、二次電池18の温度(冷媒の温度)が、予め設定した上限値以上に昇温することを抑えることができる。あるいは、冷却装置を設ける場合には、急速充電時のように二次電池18の温度上昇の程度が比較的大きくなるときに、冷却装置を用いて二次電池18の過度の昇温を抑えることができる。
以上のように構成された本実施形態の二次電池システム11によれば、低温環境下で二次電池システム11を停止する際に、熱交換器13内の冷媒を抜いて蓄熱タンク30に移送し、次回のシステム始動時には、蓄熱タンク30内の冷媒を熱交換器13に移送する。そのため、低温始動時には、蓄熱タンク30内で保温した冷媒を用いて二次電池18を温めることにより、二次電池18の昇温を促進することができ、二次電池18の出力電力を速やかに確保することが可能になる。上記のように、低温始動時には、まず、蓄熱タンク30内で保温した冷媒を用いて二次電池18を温めるため、始動時に第1ヒータ22を用いて冷媒を加熱して二次電池18を暖機運転する際に、停止時に二次電池18内で冷媒を保持して降温させる場合に比べて、始動時における二次電池18の昇温速度を速くすることができる。
また、本実施形態では、熱交換器13と蓄熱タンク30との間で冷媒を移送する冷媒移送部を、複数の切替弁および冷媒ポンプ28を用いて構成している。そのため、切替弁の開閉制御および冷媒ポンプの駆動制御という簡便な動作により、熱交換器13から冷媒を抜く第1動作、および、熱交換器13に冷媒を戻す第2動作を、実行することができる。また、第1動作および第2動作に用いる冷媒ポンプ28として、内部を冷媒が循環する二次電池が本来有している冷媒ポンプを用いることにより、システム構成の複雑化を抑えることができる。
また、本実施形態では、蓄熱タンク30内に液位センサ32を設けており、低温環境下でシステム停止して第1動作を実行する際には、液位センサ32の検出結果を用いて、蓄熱タンク30への冷媒の流入が完了したことを判定して、第1動作を停止している。また、システム始動時に第2動作を実行する際には、液位センサ32の検出結果を用いて、蓄熱タンク30からの冷媒の流出が完了したことを判定して、第2動作を停止している。そのため、冷媒の移送の完了を速やかに判断して、第1動作および第2動作を速やかに終了することができると共に、冷媒ポンプ28が過剰に駆動されることを抑えてエネルギ効率を高めることができる。
また、本実施形態によれば、システム停止時の外気温Toutが第1基準温度Tmin1未満であるときに、熱交換器13から冷媒を抜いて蓄熱タンク30に移送する第1動作を行なっている。そのため、二次電池18の出力性能低下の可能性が低い比較的外気温が高い条件下で、冷媒を抜く第1動作を行なうことを抑え、第1動作、および、第1動作の後に実行される第2動作に起因する不要な電力消費を、抑制することができる。また、上記第1基準温度Tmin1を、用いる二次電池18の出力性能の温度依存性に応じて定めることにより、適切な温度条件下で、冷媒の移送に係る動作を行なうことができ、システム停止時に冷媒を保温することによる効果を高めることができる。
さらに、本実施形態では、第3流路44が蓄熱タンク30に接続される箇所は、第4流路48が蓄熱タンク30に接続される箇所よりも鉛直上方に配置されており、第1動作における冷媒の蓄熱タンク30への流入、および、第2動作における冷媒の蓄熱タンク30からの流出は、第4流路48を経由して行なわれる。すなわち、第1動作および第2動作が実行される際に、蓄熱タンク30において、液体である冷媒は、鉛直下方に配置された第4流路48との接続部から出入りし、気体である空気は、鉛直上方に配置された第3流路44との接続部から出入りする。そして、第1動作および第2動作が実行される際には、冷媒ポンプ28が設けられた第5流路45は、多方弁部24および第4流路48を介して蓄熱タンク30に連通する。そのため、冷媒ポンプ28が設けられた第5流路45に空気が入ることが抑えられ、冷媒ポンプ28内に空気が入るエア噛みの発生を抑えることができる。
B.第2実施形態:
図11に示すように、第2実施形態の二次電池システム111は、蓄熱タンク30において、さらに、蓄熱タンク30内の冷媒を加熱するための第2ヒータ33が設けられている点で、第1実施形態の二次電池システム11とは異なっている。図11では、二次電池システム111を、図2と同様にして-X方向に見た様子を示す。第2実施形態において、第1実施形態と共通する部分には同じ参照番号を付して、詳しい説明は省略する。
第2ヒータ33は、電力供給を受けて発熱する装置であればよく、例えば、電熱ヒータとすることができる。また、第2ヒータ33への電力の供給源としては、二次電池18を用いてもよく、二次電池システム11を搭載する車両が備える二次電池18以外の補助的な電源を用いてもよい。あるいは、二次電池システム11を搭載する車両の外部に設けられた外部電源を用いてもよい。第2ヒータ33は、「加熱部」とも呼ぶ。
第2ヒータ33による蓄熱タンク30内の冷媒の加熱は、例えば、低温環境下において第1動作を実施する際に、ステップS130の冷媒抜き制御処理の実行と共に開始して、次回のシステム始動時に第2動作を開始するまで、継続して行なえばよい。これにより、低温環境下において二次電池システム111を停止するときには、システムを停止している間中ずっと、蓄熱タンク30内の冷媒の温度低下を抑え、冷媒を保温することができる。具体的には、システムを停止している間、蓄熱タンク30内の冷媒温度を、第2ヒータ33による加熱の程度に応じて定まる温度以上に保つことができる。すなわち、システムを停止している時間の長さにかかわらず、次回のシステム始動時に、温度が高い冷媒を二次電池18の熱交換器13に供給して、二次電池18の昇温を促進する効果を高めることができる。
このようなシステム停止時における第2ヒータ33による加熱は、蓄熱タンク30内の冷媒を積極的に昇温させる必要は無く、システム停止時に蓄熱タンク30内に流入した比較的温度が高い冷媒の温度低下を抑えて保温できればよい。そのため、第2ヒータ33による消費電力の増加を抑え、第2ヒータ33に起因するエネルギ効率の低下を抑えることができる。
また、第2ヒータ33による蓄熱タンク30内の冷媒の加熱は、例えば、低温環境下におけるシステム停止時に第1動作を実行した後のシステム始動時に、第2動作の実施に先立って行なってもよい。すなわち、図7のステップS320において冷媒抜き実行フラグがオンであると判断した後、ステップS330の再投入制御処理ルーチンを実行する前に、第2ヒータ33による蓄熱タンク30内の加熱を行なってもよい。このような構成としても、蓄熱タンク30内の冷媒を、二次電池18の熱交換器13への移送に先立って昇温させることができるため、システム始動時に二次電池18の昇温速度を速める効果を高めることができる。
C.第3実施形態:
図12に示すように、第3実施形態の二次電池システム211は、第1集合配管部41に設けられた第1ヒータ22に代えて、二次電池18のケース60内において各セル積層体10を加熱する第3ヒータ34を備える点で、第1実施形態の二次電池システム11とは異なっている。図12では、二次電池システム211を、図2と同様にして-X方向に見た様子を示す。第3実施形態において、第1実施形態と共通する部分には同じ参照番号を付して、詳しい説明は省略する。
第3ヒータ34は、熱交換器13の背面(-Z方向の面)に接して設けられている。第3ヒータ34は、電力供給を受けて発熱する装置であればよく、例えば、電熱ヒータとすることができる。また、第3ヒータ34への電力の供給源としては、二次電池18を用いてもよく、二次電池システム11を搭載する車両が備える二次電池18以外の補助的な電源を用いてもよい。あるいは、二次電池システム11を搭載する車両の外部に設けられた外部電源を用いてもよい。なお、二次電池システム211は、蓄熱タンク30において、第2実施形態と同様に第2ヒータ33を備えているが、後述する第3実施形態の動作において、第2ヒータ33は必須ではない。
二次電池システム211では、低温環境下のシステム停止時において第1実施形態と同様に第1動作を実行すると共に、その後のシステム始動時において第1実施形態と同様に第2動作が実行される。二次電池システム211では、第2動作の後に、第1実施形態と同様に図1に示した暖機制御処理ルーチンを実行してもよいが、異なる暖機運転の動作を行なうこともできる。以下では、第3実施形態として、このような暖機運転の動作を説明する。
図13に示す暖機制御処理ルーチンは、二次電池システム211の始動時に、既述した再投入制御処理ルーチンが開始されたときに、制御部50で実行される。
図13の暖機制御処理ルーチンが起動されると、制御部50のCPUは、図8の再投入制御処理ルーチンが終了したか否かを判断する(ステップS600)。ステップS600は、図10のステップS500と同様の行程である。制御部50のCPUは、再投入制御処理ルーチンが終了するまで、すなわち、第2動作が終了するまで、ステップS600を繰り返し実行する。
再投入制御処理ルーチンが終了すると(ステップS600:YES)、制御部50のCPUは、冷媒ポンプ28がオフである状態を維持しつつ、第3ヒータ34をオンにする(ステップS610)。ステップS610を実行することにより、冷媒が循環することなく熱交換器内流路12を満たす状態の二次電池18(各セル積層体10)が、第3ヒータ34によって加熱される。
その後、制御部50のCPUは、再投入制御処理ルーチンを実行した後の経過時間Tp、すなわち、蓄熱タンク30から熱交換器13に冷媒を移送する第2動作を実行後の経過時間Tpを取得する(ステップS620)。そして、取得した経過時間Tpと、予め定めた基準時間T0とを比較する(ステップS630)。制御部50は、図示しないタイマを備えており、制御部50は、当該タイマを用いて上記経過時間Tpを計測している。システム始動時には、二次電池システム211は、第2動作を実行して蓄熱タンク30内で保温した冷媒を熱交換器13に移送することにより、二次電池18を昇温させている。しかしながら、熱交換器内流路12に冷媒が存在すると、熱交換器内流路12が空である場合に比べて、二次電池18の熱容量が大きくなり、第3ヒータ34による加熱を行なうときの昇温が緩やかとなる。基準時間T0は、蓄熱タンク30内で保温された冷媒を熱交換器13に移送することで二次電池18が昇温する効果が、上記した熱容量が大きくなることに起因して第3ヒータ34による昇温の程度が小さくなる影響によって打ち消されない時間として、予め設定されている。制御部50のCPUは、経過時間Tpが基準時間T0以上になるまで、ステップS620およびステップS630の動作を繰り返す。
経過時間Tpが基準時間T0以上になると(ステップS630:YES)、制御部50のCPUは、図5の冷媒抜き制御処理ルーチンを実行して、熱交換器13から冷媒を抜いて蓄熱タンク30に移送する第1動作を行なう(ステップS640)。その後、制御部50のCPUは、温度センサ19が検出する冷媒温度Tcを取得して(ステップS650)、予め定めた第3基準温度Tmin3と比較する(ステップS660)。ステップS650で取得する温度は、二次電池18の温度を判定可能であれば、温度センサ19以外の温度センサの検出温度を用いてもよい。第3基準温度Tmin3は、用いる二次電池18の出力性能の温度依存性に応じて、二次電池18の出力性能が十分に高くなるように二次電池18が昇温したか否かを判断できるように定めればよい。制御部50のCPUは、冷媒温度Tcが第3基準温度Tmin3以上になるまで、ステップS650およびステップS660の動作を繰り返す。
冷媒温度Tcが第3基準温度Tmin3以上になると(ステップS660:YES)、制御部50のCPUは、図8の再投入制御処理ルーチンを実行して、蓄熱タンク30内の冷媒を熱交換器13に移送する第2動作を行なう(ステップS670)。そして、制御部50のCPUは、第3ヒータ34をオフにすると共に(ステップS680)、冷媒ポンプ28の制御状態を、二次電池システム11の通常使用時における制御状態に変更して(ステップS690)、本ルーチンを終了する。ステップS690は、図10のステップS560と同様の行程である。
このような構成とすれば、システム始動時に第2動作を実行して、蓄熱タンク30内で保温した冷媒を二次電池18に移送して二次電池18を加温した後に、再び二次電池18から冷媒を抜いて、第3ヒータ34による二次電池18の暖機を行なっている。すなわち、保温した冷媒を用いて二次電池18を加温する効果が打ち消される前に、再び冷媒を抜くことによって二次電池18の熱容量を小さくしている。そのため、第3ヒータ34による暖機の効率を高めて、暖機時間を短縮することができる。
さらに、第3実施形態によれば、ステップS600において再投入制御処理ルーチンが終了した後には、冷媒ポンプ28をオフにして、第3ヒータ34を用いて二次電池18を加熱している。すなわち、冷媒を循環させることなく、二次電池18内に設けた第3ヒータ34によって二次電池18を加熱している。このように、冷媒を循環させないことにより、第3ヒータ34の加熱対象となる冷媒量が抑えられ、二次電池18を、より速やかに昇温させることができる。
D.第4実施形態:
図12に示した二次電池システム211において、暖機運転時に、第3実施形態とは異なる制御を行なってもよい。このような例を、第4実施形態として以下に説明する。
図14に示す暖機制御処理ルーチンは、二次電池システム211の始動時に、既述した再投入制御処理ルーチンが開始されたときに、図13の暖機制御処理ルーチンに代えて起動されて実行される。図14では、図13と共通する行程には共通するステップ番号が付されており、以下では、図13の暖機制御処理ルーチンと異なる点について説明する。
第4実施形態では、制御部50のCPUは、ステップS640において冷媒抜き制御処理ルーチンを実行し、熱交換器13から冷媒を抜いて蓄熱タンク30に移送する第1動作を行なった後、蓄熱タンク30に設けた第2ヒータ33をオンにする(ステップS645)。そして、ステップS660で冷媒温度Tcが第3基準温度Tmin3以上になると(ステップS660:YES)、ステップS670の再投入制御処理ルーチンに先立って、第2ヒータ33をオフにする(ステップS665)。
このような構成とすれば、熱交換器13から冷媒を抜いて二次電池18の熱容量を小さくして、二次電池18を加熱する暖機運転を行なう際に、熱交換器13から抜いた冷媒を、第3ヒータ34を用いて蓄熱タンク30内で加熱することができる。したがって、二次電池18が昇温した後に再投入制御処理ルーチンを実行して、熱交換器内流路12を冷媒で満たす際には、より温度が高い冷媒を熱交換器13に供給することができる。そのため、第3ヒータ34により加熱された二次電池18よりも温度が低い冷媒が二次電池18に供給されることを抑え、温度が低い冷媒が供給されることに起因して二次電池18が降温することを抑えることができる。
E.他の実施形態:
(E1)上記各実施形態では、二次電池18は、8つのセル積層体10を備えることとしたが、異なる構成としてもよい。二次電池18が備えるセル積層体の数は8以外の複数としてもよく、二次電池18は単一のセル積層体10を備えることとしてもよい。
(E2)上記各実施形態では、システム停止時に外気温Toutを取得して(ステップS110)、外気温Toutが第1基準温度Tmin1未満であるときに(ステップS120:YES)、冷媒抜き制御処理ルーチンを実行しているが(ステップS130)、異なる構成としてもよい。例えば、システム停止時に、低温環境下であるか否かの判断を行なうことなく、熱交換器13から冷媒を抜いて蓄熱タンク30に移送する第1動作を行なってもよい。
(E3)上記各実施形態では、第1動作の際には、蓄熱タンク30への冷媒の流入が完了したか否かを判定し、第2動作の際には、蓄熱タンク30からの冷媒の流出が完了したか否かを判定しているが、異なる構成としてもよい。第1動作および第2動作により移送した冷媒量に応じて、保温した冷媒を用いてシステム始動時に二次電池18を温める同様の効果が得られる。
(E4)上記各実施形態では、熱交換器13から冷媒を抜く動作が完了したことを判断する際、および、熱交換器13に冷媒を移送する動作が完了したことを判断する際に、蓄熱タンク30内の冷媒量を直接検出する液位センサ32の検出値を用いたが、異なる構成としてもよい。蓄熱タンク30内の冷媒の量を検出する冷媒量検出部であれば、液位センサ32と同様に用いることができる。液位センサ以外の冷媒量検出部は、例えば、蓄熱タンク30に接続する冷媒流路に設けた流量計を備えることとしてもよい。この場合には、冷媒が蓄熱タンク30に流入する際や、冷媒が蓄熱タンク30から流出する際の、冷媒流量を検出して積算することで、蓄熱タンク30内の冷媒量を求めればよい。
あるいは、蓄熱タンク30内の冷媒の量を検出する冷媒量検出部を用いることなく、蓄熱タンク30への冷媒の流入の完了や、蓄熱タンク30からの冷媒の流出の完了を判定してもよい。例えば、冷媒の移送時に設定されている冷媒ポンプ28の駆動量から、冷媒が移送される時間と移送される冷媒量との関係を予め求めることにより、冷媒の移送に要する時間を予め定めることができる。この場合には、冷媒が移送される時間を計測することにより、蓄熱タンク30への冷媒の流入の完了や、蓄熱タンク30からの冷媒の流出の完了を判定することができる。
(E5)上記各実施形態では、熱交換器13と蓄熱タンク30との間で冷媒を移送する冷媒移送部は、冷媒ポンプ28と複数の切替弁とを備えており、複数の切替弁は、第1三方弁20と多方弁部24とを備えることとしたが、異なる構成としてもよい。例えば、冷媒移送部が備えるバルブの形状、数、および配置箇所や、冷媒ポンプの配置箇所は、各実施形態とは異なっていてもよく、第1動作および第2動作を実現可能であればよい。
(E6)上記各実施形態では、熱交換器内流路12と蓄熱タンク30との間で冷媒を循環させる流路は密閉されており、上記した冷媒の流路内において特定量の冷媒と空気とが封入されていることとしたが、異なる構成としてもよい。例えば、第1動作として熱交換器13から冷媒を抜く際には、冷媒流路の外部から空気を取り込んで熱交換器内流路12に供給してもよく、また、第2動作として熱交換器13に冷媒を移送する際には、熱交換器内流路12から冷媒流路の外部に空気を排出させてもよい。
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、各実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。