JP7173152B2 - チタン合金鋳塊の製造方法および製造装置 - Google Patents

チタン合金鋳塊の製造方法および製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、チタン合金鋳塊の製造方法および製造装置に関する。
チタンは、その溶融温度では激しく空気酸化される活性な金属であるため、鉄鋼材料の溶解時のように耐火物製るつぼを用いて大気雰囲気下で溶解することは難しい。このため、チタン合金鋳塊の製造では、水冷銅ハースを用い、真空もしくは不活性ガス雰囲気下で溶融と凝固を行う場合がある。この場合に用いられる技術として、高電圧加速した電子線を被溶解材の表面に照射することにより得られる衝撃熱を利用する電子ビーム溶解(EBM : Electron Beam Melting)技術や、非消耗電極としてプラズマトーチを用いた溶解法であるプラズマ溶解(PAM : Plasma Arc Melting)技術を挙げることができる。
電子ビーム溶解技術では、チタンの溶解が真空雰囲気下で行われ、またチタン合金の融点が高いことから、チタンの溶解温度が高く、かつ溶解時間も長い。プラズマ溶解技術においても、チタンの溶解がAr等の不活性ガス雰囲気下で行われる点以外は、電子ビーム溶解技術の場合と同様である。
特許文献1には、チタンまたはチタン合金の電子ビーム溶解に際し、溶解すべき原料を、複数個のフィーダーにより供給速度をそれぞれ独立に調整してハースに供給しながら、ハース内で溶解して鋳型に注入することにより、チタンまたはチタン合金の化学組成を調整する発明が開示されている。
特許文献2には、金属間化合物を用いるチタン-アルミニウム合金と工業用純チタンとを電子ビーム溶解することにより、化学組成の変動を抑制しながらチタン合金鋳塊を製造する発明が開示されている。
特許文献3には、チタン合金からなる熱間圧延用チタン鋳片において、圧延面となる表面に、α相安定化元素等を含有する層を形成することで、チタン鋳片の表面性状を向上させる発明が開示されている。
特許文献4,5には、チタンまたはチタン合金の鋳塊の製造に際して、原料をコールドハース内に投入し、このコールドハースを通過した溶湯を鋳型に供給する発明が開示されている。
特許文献6には、チタン合金を電子ビーム溶解する際に、ハース内の溶融プールの中央部の表面温度を、チタン合金の融点よりも50℃高い温度から2000℃までの範囲とする発明が開示されている。この発明では、予め設定したハース内の溶融プールの中央部の表面温度と合金成分の蒸発率との関係に基づいてチタン合金鋳塊の化学組成を制御する。
特許文献7には、チタン合金鋳塊を製造する発明が開示されている。具体的には、アルミニウムを含有するチタン合金スクラップに、目標アルミニウム含有量の10~100質量%に相当する過剰量のアルミニウムを、純アルミニウムとして加える発明が開示されている。また、特許文献7では、上記純アルミニウムを加える構成に代えて、予め上記のチタン合金スクラップのアルミニウム量を調整して溶解用電極材を作製し、この溶解用電極材を電子ビームコールドハースリメルティングにより溶解した後に鋳型に注入する発明も開示されている。
さらに、特許文献8には、溶製用金属原料と、溶解法で製造された添加材とから構成される、金属の電子ビーム溶解に用いる原料が開示されている。この原料は、添加材の純度:99.9質量%以上、かつ炭素、酸素、および窒素の合計濃度:100ppm以下、さらに、添加材の粒度:3~200mm以下である。添加元素を原料貯蔵容器に収容し、フィーダーを用いてハースに供給する際に、フィーダー内で撹拌状態にある添加元素が自己崩壊して偏在することになるが、特許文献8により開示された原料によれば、自己崩壊を抑制することができ、化学組成が均一な溶湯を製造できるとしている。
特開平02-66129号公報 特開2005-2356号公報 特許第6075387号明細書 特許第6234841号明細書 特開2015-48501号公報 特開平04-124229号公報 特開平04-158955号公報 特開2014-31551号公報
周知の通り、チタンの溶解温度は高い。このため、チタン合金の化学成分を構成する元素、例えば蒸気圧の高いアルミニウムおよびスズといった添加金属は、チタンの溶解中に激しく蒸発する。添加金属の蒸発は、製造されるチタン合金鋳塊の化学組成を変動させうるため、添加金属の蒸発量を抑制することが望ましい。
また、溶湯から蒸発した添加金属は、チャンバー内壁に付着する。チャンバーの内壁に付着した添加金属の厚さは溶解時間の経過とともに厚くなり、時として付着した添加金属の塊が内壁から脱落する。脱落した金属塊がハース内の溶湯に混入すると、溶湯の添加金属の濃度を変動させ、あるいは脱落した塊が元となって鋳塊における欠陥部分となりうる。この観点からも、添加金属の蒸発量を抑制することが望ましい。
このように、良好な品質を有するチタン合金鋳塊を製造するには、チタン溶解時にチタン合金における添加金属の濃度を一定に保つとともに、溶解時における添加金属の蒸発量を減らすことが重要である。
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、鋳型と、原料供給用フィーダーの原料投入部との距離が、何れの原料供給用フィーダーにおいても実質的に同じである。すなわち、鋳型からチタン投入部までの距離と、鋳型から添加材投入部までの距離と、が実質的に同じである。このため、添加材の溶融物である添加金属は、ハースにおいて鋳型に到達するまでに大量に蒸発してしまう。よって、鋳型で鋳造されたチタン合金鋳塊における添加金属の濃度が、規格範囲に収まらなくなってしまう。
特許文献2により開示された発明は、鋳造時間とともに溶湯中の添加金属が蒸発することを考慮していない。このため、チタン合金鋳塊の添加金属の濃度を一定に保つことは難しい。
特許文献3により開示された発明は、チタン鋳片の表面性状の改質を目的としており、チタン合金の鋳造中に添加金属が蒸発することに対する言及はされていない。
特許文献4,5により開示された発明は、チタン合金の溶湯がハースを流れているときに添加金属が蒸発することに対して、添加材をハースに添加する位置を工夫する構成は、何ら開示されていない。
特許文献6により開示された発明を実施して所望の化学成分を有するチタン合金鋳塊を製造するためには、溶湯の温度および各化学成分の蒸発率に加えて、ハース内における溶湯の滞留時間を把握する必要がある。しかし、特許文献6により開示された発明は、この滞留時間を考慮していないため、チタン合金鋳塊の化学組成を所望の値にすることは困難である。
特許文献7により開示された発明によりチタン合金鋳塊を製造する際には、溶湯からアルミニウムが蒸発して溶湯中のアルミニウム濃度が不可避的に変化する。このため、予めアルミニウムの濃度を予測してアルミニウムを添加することにより所望のアルミニウム濃度のインゴットを製造することは困難である。
さらに、特許文献8により開示された発明では、添加した金属粒の形状を有する元素の、鋳造時間に対する変化を考慮しておらず、単にハース内に添加すると記載されるだけでハース内の溶湯金属の流れを考慮していない。このため、均一な化学組成を有する溶湯を鋳型内に供給することは困難である。
本発明は、従来の技術が有する上記課題に鑑みてなされたものであり、化学組成がより正確かつ均一なチタン合金鋳塊の製造方法および製造装置を提供することを課題とする。
チタン合金鋳塊の化学組成のばらつきを抑制し、塊状のアルミニウムまたはスズ等の添加材に起因した割れなどの欠陥を抑制するためには、溶湯から蒸発する添加金属量を低減することが不可欠である。上述したように、チタン合金の溶解では、チタン合金の融点が高く、鋳造時間も長いことから、チタンの蒸気圧よりも高い蒸気圧を有する添加金属の蒸発が激しい。
さらに、ハースを用いて高真空下で行われるチタン合金の電子ビーム溶解、または、ハースを用いて不活性ガス雰囲気下で行われるプラズマ溶解では、チャンバー内で溶解と鋳造が行われるため、蒸気圧の高い上記添加金属の蒸発はさらに激しくなる。
本発明者らは、チャンバー内に置かれたハース、特に複数のハースの内の1つのハースで、電子ビームまたはプラズマを用いてチタン含有原料を溶解して得られた溶湯を、鋳型で鋳造する構成に着目した。この構成において、チタンを主成分とする原料をハースで溶解した後、ハース内のうちハース出口寄りに到達した溶湯、または、鋳型のキャビティ内の溶湯に添加材を添加することを想到した。これにより、溶湯から蒸発する添加金属量を低減でき、その結果、化学組成がより正確かつ均一なチタン合金鋳塊を製造できるとの結論に至った。
本発明は、これらの新規な知見に基づいてなされたものであり、以下に列記の通りである。
(1)チタン含有原料の溶融物を含む溶湯が排出される溶湯出口、を含み、前記溶湯が前記溶湯出口へ向かう所定の主流れ方向に沿って流れるように構成されたハースにおける、前記主流れ方向の上流側領域に設定された原料供給位置へ、前記チタン含有原料を供給するチタン含有原料供給工程と、
前記溶湯が前記原料供給位置から前記溶湯出口まで進行する過程で、前記溶湯を精錬する精錬工程と、
前記精錬された溶湯を、前記溶湯出口から排出して鋳型に充填する充填工程と、
前記ハースおける前記溶湯、および、前記鋳型における前記溶湯の少なくとも一方に、アルミニウム、および、スズの少なくとも一方を含む添加材を供給する添加材供給工程と、
前記添加材供給工程により前記添加材が供給された、前記鋳型における前記溶湯を冷却し、チタン合金鋳塊とする鋳造工程と、
を含み、
前記添加材供給工程において、前記ハースにおける前記溶湯への添加材供給位置が、前記主流れ方向において前記上流側領域よりも下流の領域としての、前記ハースの下流側領域に設定され、この下流側領域は、前記主流れ方向に関して、前記ハースにおける前記溶湯の経路の上流側端部を始点とし前記溶湯出口を終点としたとき、前記始点から前記ハースにおける前記溶湯の経路長の50%離隔した位置から前記終点までの間の領域である、
チタン合金鋳塊の製造方法。
(2)前記(1)に記載のチタン合金鋳塊の製造方法であって、
前記ハースは、
前記チタン含有原料が投入される第1ハースと、
前記溶湯出口を含み、前記第1ハースから流入した前記溶湯の一部を凝固させることでスカルを形成し、前記溶湯の残部を前記溶湯出口へ流す第2ハースと、
を含み、
前記添加材供給位置は、前記第2ハースに設定されている。
(3)前記(1)または(2)に記載のチタン合金鋳塊の製造方法であって、
前記添加材供給工程では、前記添加材供給位置の前記溶湯へ前記添加材のワイヤーを送り出す。
(4)前記(3)に記載のチタン合金鋳塊の製造方法であって、
前記添加材供給工程では、前記溶湯の上面から前記ワイヤーを添加することにより、前記溶湯に、前記添加材供給位置から前記溶湯の深層に向かう成分を含む対流を形成する。
(5)前記(1)~(4)の何れか1項に記載のチタン合金鋳塊の製造方法であって、
前記精錬工程では、前記ハースにおける前記溶湯のうち前記添加材供給位置を避けた位置へ温度調整用の電子ビームまたはプラズマを照射する。
(6)前記(1)~(5)の何れか1項に記載のチタン合金鋳塊の製造方法であって、
前記添加材供給工程では、前記添加材へ電子ビームまたはプラズマを照射することで前記添加材を溶融状態で前記溶湯へ向けて落下させる。
(7)前記(1)~(6)の何れか1項に記載のチタン合金鋳塊の製造方法であって、
前記添加材供給工程では、前記ハースから前記鋳型への前記溶湯の供給速度に応じた添加速度で前記添加材を添加する。
(8)前記(1)~(7)の何れか1項に記載のチタン合金鋳塊の製造方法であって、
前記添加材供給工程では、前記鋳型における前記溶湯に前記添加材を供給し、
前記鋳造工程では、前記鋳型に供給された前記溶湯を電磁的に攪拌する。
(9)チタン含有原料を供給するチタン含有原料供給部と、
前記チタン含有原料供給部から供給された前記チタン含有原料の溶融物を含む溶湯が排出される溶湯出口を含み、前記溶湯が前記溶湯出口へ向かう所定の主流れ方向に沿って流れるように構成され、前記主流れ方向の上流側領域に設定された原料供給位置から前記チタン含有原料供給部によって前記チタン含有原料を供給されるように構成され、且つ、前記溶湯が前記溶湯出口まで進行する過程で前記溶湯を精錬するハースと、
前記精錬された溶湯が充填される鋳型と、
前記ハースにおける前記溶湯、および、前記鋳型における前記溶湯の少なくとも一方に、アルミニウム、および、スズの少なくとも一方を含む添加材を供給する添加材供給部と、
を備え、
前記ハースにおける前記溶湯への添加材供給位置が、前記主流れ方向において前記上流側領域よりも下流の領域としての、前記ハースの下流側領域に設定され、この下流側領域は、前記主流れ方向に関して、前記ハースにおける前記溶湯の経路の上流側端部を始点とし前記溶湯出口を終点としたとき、前記始点から前記ハースにおける前記溶湯の経路長の50%離隔した位置から前記終点までの間の領域である、チタン合金鋳塊の製造装置。
(10)前記(9)に記載のチタン合金鋳塊の製造装置であって、
前記添加材供給部は、前記添加材供給位置の前記溶湯へ前記添加材のワイヤーを送り出す。
(11)前記(10)に記載のチタン合金鋳塊の製造装置であって、
前記添加材供給部は、前記溶湯の上面から前記ワイヤーを添加することにより、前記溶湯に、前記添加材供給位置から前記溶湯の深層に向かう成分を含む対流を形成する。
(12)前記(9)~(11)の何れか1項に記載のチタン合金鋳塊の製造装置であって、
前記ハースにおける前記溶湯のうち前記添加材供給位置を避けた位置へ温度調整用の電子ビームまたはプラズマを照射する溶湯温度調整部をさらに備える。
(13)前記(9)~(12)の何れか1項に記載のチタン合金鋳塊の製造装置であって、
前記添加材供給部は、前記ハースから前記鋳型への前記溶湯の供給速度に応じた添加速度で前記添加材を添加する。
本発明により、化学組成がより正確かつ均一なチタン合金鋳塊を製造することができる。
図1は、本発明に係るチタン合金鋳塊の製造装置を模式的に示す説明図である。 図2(A)は、図1の第2ハースにおける添加材付近の一部断面図である。図2(B)は、図1の鋳型における添加材付近の一部断面図である。 図3は、本発明の一実施形態に係るチタン合金鋳塊の製造方法の一例を示すフローチャートである。 図4(A)は、図1の第2ハースにおける添加材付近の変形例の一部断面図である。図4(B)は、図1の鋳型における添加材付近の変形例の一部断面図である。
図1を参照しながら、本発明を説明する。以降の説明では、化学組成に関する「%」は特に断りがない限り「質量%」を意味する。
1.本発明に係る製造装置
図1は、本発明に係るチタン合金鋳塊52の製造装置1を模式的に示す説明図である。図2(A)は、図1の第2ハース6における添加材54付近の一部断面図である。図2(B)は、図1の鋳型8における添加材54付近の一部断面図である。
図1、図2(A)および図2(B)を参照して説明する。製造装置1は、原料供給部2と、電子ビームまたはプラズマ照射部(以下、単に「照射部」という)3,9,10と、第1ハース4、湯道5および第2ハース6を有するハース7と、鋳型8と、添加材供給部11,12と、を有している。
照射部3,9,10が電子ビームを照射する構成の場合、製造装置1の各部2~12は、真空雰囲気下に置かれ、これらの照射部3,9,10は、電子ビームガン等の公知の電子ビーム発生装置を有している。また、照射部3,9,10がプラズマを照射する構成の場合、製造装置1の各部2~12は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下に置かれ、これらの照射部3,9,10は、公知のプラズマ発生装置を有している。
ハース7は、原料50の溶湯51が排出される溶湯出口7aを有している。ハース7は、この溶湯出口7aへ向けて溶湯51を流すように構成されている。ハース7は、溶湯51が溶湯出口7aまで進行する過程で溶湯51を精錬する。溶湯51は、図2(A)および図2(B)において、ドットハッチングで示されている。
原料供給部2は、チタン源である原料50(チタン含有原料)を供給する。原料供給部2は、原料50が載せ置かれる台座2aと、この台座2aから原料50を第1ハース4へ投入する投入装置2bと、を有している。この投入装置2bは、原料50を押し出すこと等により、原料50を第1ハース4に投入する。原料50を、照射部3による原料50の溶解速度に応じた供給速度で供給することが好ましい。
原料50はチタンブリケットであることが望ましいが、チタンのスクラップ等を混在させてもよい。なお、チタンブリケットとは、スポンジチタン等のチタン原料をプレス加工して、特定の形状に成型したものである。
原料供給部2および照射部3は、原料50を第1ハース4の上方から第1ハース4に連続的に供給しながら電子ビームまたはプラズマで連続的に溶解し、第1ハース4へ、チタン含有原料の溶融物を含む溶湯51を供給することが好ましい。これにより、第1ハース4における溶湯51の温度をチタン合金鋳塊52の製造時に安定させることができる。その結果、第2ハース6に供給される溶湯51の温度もチタン合金鋳塊52の製造時に安定させることができる。なお、原料供給部2は、原料50を間欠的に第1ハース4へ供給してもよい。また、照射部3は、原料50に電子ビームまたはプラズマを間欠的に照射してもよい。原料50は、照射部3によって溶解されずに溶湯51へ投入されてもよい。原料50の化学成分は、必ずしも工業用純チタンである必要はなく、アルミニウムやアルミニウム以外の合金元素を含んでいてもよい。
原料供給部2は、原料50を、照射部3による原料50の溶解速度に応じた供給速度で、供給することが望ましい。原料供給部2から第1ハース4への原料供給位置A1の詳細は、後述する。
照射部3は、前述したように、第1ハース4へ供給された原料50に電子ビームまたはプラズマを照射することにより原料50を溶解する。照射部3に加えて、照射部9が設けられていることが好ましい。照射部9は、第1ハース4、および、第2ハース6を流れる溶湯51の上面51aに、溶湯51の温度調整用の電子ビームまたはプラズマを走査しながら照射するために設けられる。本実施形態では、第1ハース4に向けて電子ビームまたはプラズマを照射する照射部9が1基配置されている。また、第2ハース6に向けて電子ビームまたはプラズマを照射する照射部9が、2基配置されている。
照射部9により電子ビームまたはプラズマを照射された原料50が溶解されることで形成された溶湯51は、第1ハース4に収容される。この溶湯51が一定量以上第1ハース4に満たされると、溶湯51は湯道5を介して第2ハース6に注がれる。第2ハース6は、第1ハース4から流入する溶湯51の一部を冷却し、この第2ハース6の底部35にスカル53を形成しながら、残部の溶湯51を鋳型8へ流す。
このように、溶湯51は、第1ハース4、湯道5、第2ハース6の順に流れ、第2ハース6の溶湯出口7aから鋳型8へ流入する。
第1ハース4は、平面視で細長い矩形状に形成されており、当該第1ハース4における溶湯51の主流れ方向Dの一種である第1主流れ方向D1を長手方向として細長く延びている。第1ハース4は、原料50が投入され原料50を溶解する溶解ハースとして設けられている。
第1ハース4は、上流壁21と、下流壁22と、一対の第1側壁23,24と、底部25と、を有している。
上流壁21は、ハース7における溶湯51の主流れ方向Dの上流側端部に配置された、鉛直方向に延びる壁である。下流壁22は、上流壁21と間隔をあけて平行に延び且つ鉛直方向に延びる壁であり、第1ハース4における第1主流れ方向D1の下流型端部に配置されている。
一対の第1側壁23,24は、第1主流れ方向D1に沿って互いに平行に延びており、且つ、鉛直方向に延びる壁である。各第1側壁23,24は、上流壁21および下流壁22に接続されている。他方の第1側壁24のうち、下流壁22に隣接する箇所は、上端側の一部が切り欠かれた形状を有しており、この切り欠かれた部分が、湯道5を形成している。
底部25は、水平に延びる壁であり、上流壁21、下流壁22、および、一対の第1側壁23,24の下端部に接続されており、これら上流壁21、下流壁22、および、一対の第1側壁23,24と協働して、溶湯51が溜められる第1溶湯プールを形成している。
湯道5は、溶湯51を第1ハース4から第2ハース6へ送るために設けられている。本実施形態では、湯道5は、他方の第1側壁24の切り欠き部分における一側面24bおよび下面24cと、この一側面24bに対向する箇所における下流壁22の内側面22aと、によって形成されている。湯道5の出口における溶湯51の主流れ方向Dは、他方の第1側壁24の内側面24bと、下面24cと、下流壁32の内側面22aと、によって規定されている。この主流れ方向Dは、本願実施形態では、内側面22a,24bが延びる方向と平行な方向であり、主流れ方向Dの一種としての第2主流れ方向D2である。
第2ハース6は、第1ハース4から流入した溶湯51の一部を冷却凝固させることで溶湯51の下方にスカル53(溶湯51が急冷されて直ちに凝固した薄い凝固層)を形成し、溶湯51の残部を溶湯出口7aへ流す精錬ハースとして設けられている。第2ハース6は、第1ハース4からの流入した溶湯51を鋳型8に供給する機能を有する。
第2ハース6は、平面視で細長い矩形状に形成されており、当該第2ハース6における溶湯51の主流れ方向Dの一種である第3主流れ方向D3を長手方向として細長く延びている。本実施形態では、第1ハース4の長手方向(第1主流れ方向D1)と第2ハース6の長手方向(第3主流れ方向D3)とは、平行である。
第2ハース6は、上流壁31と、下流壁32と、一対の第2側壁33,34と、底部35と、溶湯出口7aと、を有している。
上流壁31は、第2ハース6における溶湯51の主流れ方向Dの上流側端部に配置され、第2主流れ方向D2と平行な方向および鉛直方向に延びる壁である。上流壁31の内側面31aは、本実施形態では、湯道5の内側面24bと同一平面上に配置されている。下流壁32は、上流壁31と間隔をあけて平行に延び且つ鉛直方向に延びる壁であり、第2ハース6における主流れ方向D(第3主流れ方向D3)の下流型端部に配置されている。
一対の第2側壁33,34は、第3主流れ方向D3に沿って互いに平行に延びており、且つ、鉛直方向に延びる壁である。一方の第2側壁33は、上流壁31および下流壁32に接続されている。この一方の第2側壁33のうち、主流れ方向Dの上流側端部は、下流壁22の一部であるとともに他方の第1側壁24の一部でもあり、湯道5に接続されている。また、一方の第2側壁33のうち、第3主流れ方向Dの下流側端部に溶湯出口7aが設けられている。他方の第2側壁34は、上流壁31および下流壁32に接続されている。
溶湯出口7aは、本実施形態では、一方の第2側壁33と下流壁32との接続部付近に形成されている。この溶湯出口7aは、例えば、一方の第2側壁33の上端部の一部を切り欠くようにして形成されている。溶湯出口7aは、一方の第2側壁33の切り欠き部分の一側面33bと、切り欠き部分の上面33cと、下流壁32の内側面32aと、によって形成されている。溶湯51は、溶湯出口7aから、第2方向D2とは平行で且つ第2方向D2とは反対の第4方向D4に向けて流れることで、鋳型8のキャビティに導入される。
底部35は、概ね水平に延びる壁であり、上流壁31、下流壁32、および、一対の第2側壁33,34のそれぞれの下端部に接続されている。底部35は、これら上流壁31、下流壁32、および、一対の第2側壁33,34と協働して、溶湯51が溜められる第2溶湯プールを形成している。
上記の構成により、溶湯51は、湯道5から第2方向D1に沿って流動することで、第2ハース6に流入する。この溶湯51は、第2ハース6の他方の第2側壁34の内側面34aへ向かって流れ、この内側面34aに受けられる。これにより、溶湯51の主流れ方向Dは、第2ハース6の長手方向、すなわち、第2方向D2と直交(交差)する第3方向D3に変わる。第3方向D3へ向きを変えた溶湯51は、第3方向D3に沿って下流壁33に向けて進む。そして、下流壁33付近に到達した溶湯51は、第4方向D4へ向きを変えて流れ、溶湯出口7a、すなわち鋳型8への供給口に向かって流れる。
上記の構成により、ハース7には、溶湯領域13が形成されている。溶湯領域13とは、平面視においてハース7に溶湯51が存在している領域をいう。溶湯領域13は、本実施形態では、平面視においてハース7の内側面によって形成されており、より具体的には、第1ハース4の4つの側壁21~24の内側面21a~24aと、湯道5の一対の側面22a,24bと、第2ハース6の4つの側壁31~34の内側面31a~34aと、溶湯出口7aの一対の側面32a,33bと、によって形成されている。
なお、本実施形態では、溶湯領域13は、第1ハース4の上流壁22の内側面21aにまで形成されているけれども、この通りでなくてもよい。例えば、第1ハース4の底部25が、第1主流れ方向D1と反対方向に下流壁22から上流壁21側に進むに従い上方に向かうように(溶湯51の深さが浅くなるように)構成されていてもよい。この場合、溶湯51は、上流壁21まで到達せず、上流壁21の付近では底部25が平面視で溶湯51から露呈している場合がある。この場合、底部25が露呈している領域は、溶湯領域13ではない。
ハース7の溶湯領域13において、溶湯51は、溶湯出口7aへ向かう所定の主流れ方向Dに沿って、溶湯出口7aまで流れる。主流れ方向Dとは、溶湯51が溶湯出口7aへ向かうための流れ方向をいい、例えば、溶湯51が局所的に渦を巻いているときのこの渦の流れ方向は含まないことを意味している。
本実施形態では、主流れ方向Dは、前述した第1主流れ方向D1と、第2主流れ方向D2と、第3主流れ方向D3と、第4主流れ方向D4と、を含んでいる。
第1主流れ方向D1は、第1ハース4において、溶湯51が上流壁21から下流壁22へ流れるときの流れ方向をいう。第1主流れ方向D1は、一対の第1側壁23,24の内側面23a,24aと平行な方向である。
第2主流れ方向D2は、湯道5における溶湯51の流れ方向である。湯道5における溶湯51の流れ方向は、湯道5の一対の側壁22a,24bと平行な方向であり、この方向が、第2主流れ方向D2である。第2主流れ方向D2は、本実施形態では、第1ハース4の下流壁22の内側面22aと平行であるとともに、第2ハース6の上流壁31の内側面31aと平行である。溶湯51は、第1ハース4の下流壁22付近、および、第2ハース6の上流壁31付近のそれぞれにおいて、第2主流れ方向D2に沿って流れる。
第3主流れ方向D3は、第2ハース6において、溶湯51が上流壁31から下流壁32へ向かって流れるときの流れ方向をいう。第3主流れ方向D3は、一対の第2側壁33,34の内側面33a,34aと平行な方向である。
第4主流れ方向D4は、溶湯出口7aにおける溶湯51の流れ方向である。溶湯出口7aにおける溶湯51の流れ方向は、溶湯出口7aの一対の側壁22a,24bと平行な方向であり、この方向が、第4主流れ方向D4である。第4主流れ方向D4は、本実施形態では、第2ハース6の下流壁22の内側面22aと平行である。溶湯51は、第2ハース6の下流壁32付近、および、溶湯出口7aのそれぞれにおいて、第4主流れ方向D4に沿って流れる。
本実施形態では、溶湯領域13における溶湯51の経路長B(図示はせず)は、ハース7における代表的な経路C(中心経路)での溶湯51の移動量で定義される。具体的には、経路Cは、第1領域C1と、第2領域C2と、第3領域C3と、第4領域C4と、を有している。
第1領域C1は、第1ハース4において、第1主流れ方向D1に沿って溶湯51が流れる領域であり、且つ、第1側壁23,24の内側面23a,24a間の中央位置の領域である。本実施形態では、第1領域C1の一端(起点)は、上流壁21の内側面21aにおける中央位置(内側面23a,24aから等距離の位置)に配置されている。第1領域C1の下流端(終点)は、第2領域C2との接続点、すなわち、第2領域C2の上流端に配置されている。第2領域C2は、第2主流れ方向D2に沿って溶湯51が流れる領域であり、一対の内側面22a,24b間の溶湯51の中央位置の領域、および、当該領域から第2主流れ方向D2に延びた領域である。第2領域C2の一端(上流端)は、第1領域C1のうち第1主流れ方向D1の下流端に接続されている。また、第2領域C2の他端(下流端)は、第3領域C3のうち第3主流れ方向D3の上流端に接続されている。
第3領域C3は、第2ハース6において、第3主流れ方向D3に沿って溶湯51が流れる領域であり、且つ、第2側壁33,34の内側面33a,34a間の中央位置の領域である。第4領域C4は、第4主流れ方向D4に沿って溶湯51が流れる領域であり、溶湯出口7a付近における一対の側面32a,33b間の中央位置の領域、および、当該領域から第4主流れ方向D4に延びた領域である。第4領域C4の一端(上流端)は、第3領域C3のうち第3主流れ方向D3の下流端に接続されている。また、第4領域C4の他端(下流端)は、第4主流れ方向D4における溶湯出口7aの先端に位置している。
なお、ハース7における溶湯51の移動速度は、毎時数百mm程度の極めて小さな値である。ここでは、各領域C1,C2,C3,C4の互いの接続部は、図1に示すように直角であると仮定した。実際の溶湯51の流れは、直角ではなく緩やかなカーブとなるが、溶湯51の流速が遅いため、溶湯51の流れる方向は各部分において付近の側面と平行に近くなる。よって、領域C1から領域C4を経て終点に至る経路Cは、実際の溶湯51の流れとそれほど大きな乖離はないといえる。
上述の構成において、溶湯領域13では、主流れ方向Dの上流側領域14、および、下流側領域15が規定されている。
上流側領域14および下流側領域15は、主流れ方向Dに関して、ハース7における溶湯51の経路Cの上流側端部を始点Csとし経路Cの下流側端部(溶湯出口7a)を終点Ceとしたときの経路Cに沿った経路長Bを基準に設定されている。始点Csは、主流れ方向D(第1主流れ方向D1)における溶湯領域13の最も上流側端部の位置である。終点Ceは、主流れ方向D(第4主流れ方向D4)における溶湯領域13の最も下流側端部の位置である。経路長Bは、経路Cに沿って始点Csから終点Ceまで進んだときの距離であるともいえる。
上流側領域14は、主流れ方向Dに関して、始点Csから、ハース7における溶湯51の経路長Bの50%の位置までの間の領域である。図1に示した例においては、上流側領域14は、溶湯領域13のうちの第1ハース4内の領域にすべて含まれる。下流側領域15は、主流れ方向Dに関して、始点Csから経路長Bの50%離隔した位置から終点Ceまでの間の領域である。下流側領域15は、溶湯領域13のうち、第1ハース4のうち下流壁24a付近の領域と、湯道5の全領域と、第2ハース6の全領域と、を含んでいる。
本実施形態では、上流側領域14に、原料供給部2から原料50を供給される原料供給位置A1が設定されている。原料供給位置A1は、始点Csから経路Cに沿って経路長Bの例えば10%進んだ位置に設定されている。原料供給位置A1において、原料50は、原料供給部2から固体のままで、または、照射部3から電子ビームまたはプラズマ照射されて液状となって、溶湯領域13に供給される。通常は、原料供給位置A1は、第1ハース4内の経路長Bを長く確保するために始点Csに近い位置であることが望ましい。
製造装置1は、ハース7のうち、第2ハース6を流れる溶湯51、および、鋳型8に供給された溶湯51の少なくとも一方に、添加材54を添加する添加材供給部11,12を有している。
添加材54は、チタンに添加されチタン合金鋳塊52の一部を構成する金属元素を含む。添加材54は主として、チタンの蒸気圧よりも高い蒸気圧を有する金属元素を含んでいる。具体的には、添加材54は、アルミニウム、および、スズの少なくとも一方を含んでいる。添加材54がアルミニウムを含む場合、チタン合金鋳塊52として、Ti-6Al-4Vのチタン合金鋳塊を例示できる。添加材54がアルミニウム、および、スズの双方を含んでいる場合、チタン合金鋳塊52として、Ti-6Al-4V-2Snのチタン合金鋳塊を例示できる。また、添加材54がスズを含む場合、チタン合金鋳塊52として、Ti-11.5Mo-6Zr-4.5Snのチタン合金鋳塊を例示できる。本実施形態では、断面多角形形状または断面円形状のワイヤーに形成された添加材54が、溶湯51に添加される。添加材54が溶湯51に添加されて溶解されることで、添加材54は、添加金属となる。
本実施形態では、チタン合金鋳塊52における添加金属元素の割合は、数%程度と比較的大きく、鉄(Fe)の精錬におけるアルミニウム等の添加量(数~数百ppm程度)と比べて極めて大きい。よって、本製造装置1における添加材54の添加の態様は、鉄の精錬における添加材の添加の態様とは大きく異なる。
添加材供給部11は、溶湯領域13の下流側領域15に設定された添加材供給位置B1に添加材54を送り出す。添加材供給部12は、鋳型8のキャビティ8aに設定された添加材供給位置B2に添加材54を送り出す。
添加材供給部11は、下流側領域15内に設定された添加材供給位置B1に、添加材54を供給する。添加材供給部11は、溶湯51へ、添加材54を連続的に添加することが好ましい。
添加材供給位置B1が上流側領域14であると、添加材54が投下されてから溶湯が鋳型8に流入するまでの時間が長く、添加金属の蒸発量が増加してしまう。より具体的には、ハース7における溶湯51の温度は、約1700度と極めて高温であり、大気圧でのチタンの融点に近い温度である。一方、大気圧でのアルミニウムの融点は約660度、大気圧でのスズの融点は約232度と、添加材54の融点は相対的に低い値である。そして、ハース7における溶湯51の温度は、チタンの融点より僅かに高い程度のためチタンの蒸気圧は比較的低く、チタンはあまり蒸発しない。一方、ハース7における溶湯51の温度は、アルミニウムおよびスズのそれぞれの融点から大きく離れた温度であるので、添加金属がアルミニウムおよびスズの場合、添加金属の蒸気圧が高く、添加金属が蒸発し易い。特に真空雰囲気下では添加金属の蒸発が進む。よって、溶湯51の上流側領域14で添加材54を添加すると、ハース7における溶湯51からの添加金属の蒸発量が多くなってしまう。本実施形態では、ハース7への添加材供給位置B1を下流側領域15に設定することにより、添加材54が添加されてからの溶湯51の流路を短くすることで、添加金属の蒸発量を抑制している。
本実施形態においては、添加材54の代表的な例として、工業用純アルミニウム等を用いる。工業用純アルミニウムとして、JIS(日本工業規格) H 4000(2014)およびJIS H 4040(2015)では純度99.0%以上のものが工業用純アルミニウムとして規定されている。本発明を実施するうえでは、添加材54の純度が高いほうが望ましいが、純度が高い添加材54は価格も高く、コスト増につながりうる。一般的には、添加目的である金属元素を85%以上含むものであれば、本実施形態の添加材54として利用することができる。これは、アルミニウムを添加する場合のみならず、スズを添加する場合にもあてはまる。
例えば、原料50に添加金属が含まれていてもよい。この場合であっても、添加材供給部11,12からの添加材54の供給量を調整することで、チタン合金鋳塊52における添加金属の割合を所望の値にすることができる。
本実施形態では、ハース7への添加材供給位置B1は、第2ハース6に設定されている。添加材供給位置B1は、主流れ方向Dが第2主流れ方向D2から第3主流れ方向D3へ移行を完了した位置に設置されていることが好ましい。すなわち、第2ハース6のうち、溶湯51の主流れ方向Dが第2主流れ方向D2から第3主流れ方向D3へ変化する流れ方向変化領域を避けた位置に添加材供給位置B1を設定することが、好ましい。これにより、第3領域C3の周囲の溶湯51について、一方の第2側壁33側の部分および他方の第2側壁34側の部分のそれぞれにおける添加金属の拡散の度合いを、より均等にできる。
また、本実施形態では、鋳型8への添加材供給位置B2は、鋳型8のキャビティのうち、平面視で略中央の位置に設定されている。これにより、鋳型8のキャビティ内の溶湯51のうち、最も熱量の高い箇所に添加金属を供給することができる。よって、添加金属を、鋳型8内の溶湯51の各部へより均等に拡散できる。
なお、本実施形態では製造装置1は添加材供給部11および12の両方を備えるが、本発明はこれに限られない。添加材供給部11のみを備え、ハース7にのみ添加材54を供給する製造装置、および、添加材供給部12のみを備え、鋳型8にのみ添加材54を供給する製造装置、のいずれも本発明に含まれる。さらに、添加材供給部11,12は、添加材54を同時に、対応するハース7および鋳型8へ供給してもよい。
添加材供給部11は、例えば、ワイヤー状の添加材54を巻き付けたリール11aと、リール回転用のモーター11bと、リール11aの回転速度を測定する速度計(図示せず)と、を有している。また、添加材供給部12は、例えば、添加材54を巻き付けたリール12aと、リール回転用のモーター12bと、リール12bの回転速度を測定する速度計(図示せず)と、を有している。このように、添加材供給部11,12は、添加材供給位置B1,B2の溶湯51へ添加材54をワイヤーとして送り出すワイヤー送出部である。
なお、本実施形態では、ワイヤーの添加材54を用いる形態を例に説明するけれども、この通りでなくてもよい。添加材54の形状として、塊状、板状、片状、箔状、棒状、および、管状を例示できる。
リール11a,12aは、それぞれ、例えば、水平な軸線回りを回転可能にブラケット(図示せず)等によって回転可能に支持されており、上記軸線回りの一方向に回転することで、添加材54を溶湯51へ向けて送り出す。モーター11b,12bは、電動モーターまたは油圧モーター等のモーターであり、リール11a,12aを上記軸線回りに回転駆動する。上記の速度計は、例えば、レゾルバ等のモーター回転位置検出素子を含んでいる。モーター11b,12bおよび速度計は、CPU等の演算装置を含む図示しない制御部に接続されている。リール11a、12bからの添加材54の添加速度(供給速度)は、鋳型8への溶湯51の単位時間当たりの供給速度に合わせた値となるよう、制御部(図示せず)の制御などによって設定される。この添加速度は、鋳型8における溶湯51の添加金属濃度が所定の値を維持されるように、決定される。このように、添加材供給部11,12は、ハース7から鋳型8への溶湯51の供給速度に応じた添加速度で添加材54を溶湯51へ添加する。
なお、リール11a,12aからの添加材54の添加速度は、制御部によってリアルタイムで制御されてもよいし、シーケンス回路によって事前に設定されていてもよい。
前述したように、照射部9は、第2ハース6を流れている溶湯51に電子ビームまたはプラズマを照射する。この照射部9は、本発明の「溶融温度調整部」の一例であり、ハース7における溶湯51のうち、添加材供給位置B1を避けた位置へ、温度調整用の電子ビームまたはプラズマを照射することが好ましい。すなわち、本実施形態では、照射部9は、添加材54へは電子ビームまたはプラズマを照射しないように構成されている。
添加材供給部11,12は、溶湯51の上面51aからワイヤーの添加材54を添加する。これにより、添加材54は、リール11a,12aの回転速度に応じた速度で溶湯51内に進入する。その結果、溶湯51に、添加材供給位置B1,B2から溶湯51の深層に向かう成分E1を含む対流Eが形成される。この対流Eは、溶湯51の底部側から上面51a側に向かう成分E2も含んでいる。これにより、添加材供給位置B1,B2の周囲において、溶湯51内を上下に循環する対流Eが形成される。この対流Eは、添加材54が固体または略固体の状態で溶湯51に投入されることで溶湯51を機械的に撹拌できることで生じ、また、溶湯51の温度と比べて低温の添加材54が溶湯51に投入されることによる溶湯51内での温度差によっても生じる。
また、添加材54が固体または略固体の状態で溶湯51に投入されることで、溶湯51内へ蒸発することなく投入される添加材54の割合をより多くできる。これにより、チタン合金鋳塊52の成分調整をより正確にできる。
上述の説明では、第2ハース6を流れる溶湯51への添加材54の添加位置は、1箇所である構成を説明したけれども、この通りでなくてもよい。例えば、添加材供給部11を複数設け、添加材供給位置B1を複数箇所としてもよい。また、添加材供給部12を複数設け、鋳型8のキャビティ内の溶湯51への添加材供給位置B2を複数箇所としてもよい。これにより、溶湯51へ添加金属をより均等に拡散することができる。
照射部10は、前述した、鋳型8のキャビティ8a内における溶湯51へ電子ビームまたはプラズマを照射する。この照射部10は、電子ビーム10aを照射するとともに、電子ビーム10aを鋳型8のキャビティ8a内における溶湯51の上面51aで走査することが好ましい。このとき、電子ビーム10aは、鋳型8内の溶湯51の上面51a上で所定の軌跡を描くように走査される。これにより、鋳型8に供給された溶湯51に対流が生じ、この対流によって溶湯51が撹拌される。なお、鋳型8のキャビティ8aに、添加材供給部12により添加材54を添加する場合には、溶湯51の成分の均質化のために電磁撹拌が望ましい。本実施形態においては、製造装置1が添加材供給部12を備える場合には、製造装置1は、電磁撹拌部16も併せて備える。
鋳型8は、第2ハース6から供給される溶湯を冷却して例えば円柱状のチタン合金鋳塊52(インゴット)とする。
2.チタン合金鋳塊製造方法
図3は、本発明の一実施形態に係るチタン合金鋳塊52の製造方法の一例を示すフローチャートである。図1~図3を参照して、チタン合金鋳塊52の製造方法は、以下の工程を有する。
第1の工程は、チタン含有原料50を供給するチタン含有原料供給工程(ステップS1)である。この工程では、ハース7における、上流側領域14に設定された原料供給位置A1へ、原料供給部2が原料50を供給する。原料供給部2は、原料50を、照射部3による原料50の溶解速度に応じた供給速度で供給することが好ましい。チタン含有原料供給工程では、照射部3は、供給された原料50に電子ビームまたはプラズマを照射することにより原料50を溶解する。例えば、チタン含有原料供給工程で原料50を連続して供給し、第2の工程(精錬工程)で原料50を連続して溶解する構成が例示される。
第2の工程は、精錬工程(ステップS2)である。この精錬工程では、溶湯51は、原料供給位置A1から溶湯出口7aまで進行する過程で精錬される。精錬工程では、第2ハース6は、第1ハース4から流入する溶湯51の一部を冷却凝固し、第2ハース6の底部35にスカル53を形成しながら、残部の溶湯51を流す。この精錬工程において、照射部9は、ハース7における溶湯51のうち添加材供給位置B1を避けた位置へ温度調整用の電子ビームまたはプラズマを照射することにより、溶湯51の温度を調整する。
製造装置1が添加材供給部11を備える場合、精錬工程の中で、添加材供給工程A(ステップS4A)が行われる。なお、本実施形態では、添加材54を供給する工程については、フローチャートでの位置にかかわらず、ステップS4(S4A,S4B)として説明する。添加材供給工程Aでは、第2ハース6での溶湯の流速に応じた添加速度で添加材54が添加されることが好ましい。この添加材供給工程Aでは、ハース7おける溶湯51に、添加材供給部11から、添加材供給位置B1へ、ワイヤーの添加材54が供給される。添加材供給工程Aでは、溶湯51の上面51aから溶湯51内へ添加材54を添加する。これにより、溶湯51に、添加材供給位置B1から溶湯51の深層に向かう成分E1を含む対流Eが形成される。なお、後述するステップS4Bが行われる場合、ステップS4Aは、省略されてもよい。
この精錬工程の後、精錬された溶湯51が、溶湯出口7aから排出されて鋳型8に充填される。すなわち、充填工程(ステップS3)が行われる。
製造装置1が添加材供給部12を備える場合、充填工程に続いて、添加材供給工程B(ステップS4B)が行われる。添加材供給工程Bでは、第2ハース6から鋳型8への溶湯51の供給速度に応じた添加速度で添加材54が添加されることが好ましい。この添加材供給工程Bでは、鋳型8における溶湯51に、添加材供給部12から、添加材供給位置B2へ、ワイヤーの添加材54が供給される。添加材供給工程Bでは、溶湯51の上面51aから溶湯51内へ添加材54を添加する。これにより、溶湯51に、添加材供給位置B2から溶湯51の深層に向かう成分E1を含む対流Eが形成される。さらに添加材供給工程Bでは、鋳型8に併設された電磁撹拌部16により、溶湯51を電磁的に撹拌する。なお、ステップS4Aが行われる場合、ステップS4Bは、省略されてもよい。
充填工程(ステップS3)および添加材供給工程B(ステップS4)に続いて、鋳造工程(ステップS5)が行われる。鋳造工程では、添加材54が供給されたことで添加金属を含む、鋳型8における溶湯51を冷却し、チタン合金鋳塊52(インゴット)を形成する。
以上説明した、ハース7を用いたチタン合金鋳塊52の製造にあたっては、チタン材料(原料50)が溶解してから鋳型8で固化するまで、例えば10時間以上の長時間を要するため、添加金属の蒸発量が多くなりやすい。さらに、原料50の溶解から固化までの時間が一定でないために、チタン原料50へ添加材54を混入する手法の場合、添加金属の蒸発量を織り込んで添加材54の添加量を調整したとしても、チタン合金鋳塊52の組成の適正化および均質化は難しい。しかしながら、本実施形態では、添加金属の蒸発量を抑制するだけでなく、製造工程の進捗に合わせた添加量の調整を可能とすることで、チタン合金鋳塊52における化学組成の適正化および均質化を実現できる。
また、本実施形態によると、ハース7の下流側領域15における溶湯51、および、鋳型8における溶湯51の少なくとも一方に、添加材54が供給される。このような構成によると、チタンと比べて溶湯51内において蒸発し易い材料としての添加材54を、溶湯51から大量に蒸発する前に、チタン合金鋳塊52に含ませることができる。これにより、溶湯51から蒸発する添加金属量を低減でき、その結果、化学組成がより正確かつ均一なチタン合金鋳塊52を製造できる。
また、本実施形態によると、ハース7における添加材供給位置B1は、第2ハース6に設定されている。この構成によると、精錬工程にある溶湯51に、添加材54を添加できる。精錬工程では、第2ハース6の底部35に形成されるスカル53が、WC等の高比重介在物(HDI(High Density Inclusion))をトラップする。また、TiN等の低比重介在物(LDI(Low Density Inclusion))を、スカル53のうち溶湯51の上面51aの近傍部分がトラップする。さらに精錬工程では、溶湯上面51aに照射される電子ビームがLDIを溶解する。添加材54の添加された後の溶湯51をさらに精錬することにより、HDIおよびLDI等の介在物がより少なく、且つ、添加金属の濃度のばらつきの少ないチタン合金鋳塊52を得ることができる。
また、本実施形態によると、添加材54は、ワイヤーの状態で溶湯51へ向けて供給される。この構成によると、添加材54を溶解させ易い態様で、溶湯51へ供給できる。
また、本実施形態によると、溶湯51の上面51aからワイヤーの添加材54を溶湯51へ添加することにより、溶湯51に、添加材供給位置B1,B2から溶湯51の深層に向かう成分E1を含む対流Eが形成される。この構成によると、添加材供給位置B1,B2の付近において、添加金属とチタンとの撹拌が促進され、溶湯51において添加金属をより均等に拡散できる。
また、本実施形態によると、照射部9は、ハース7における溶湯51のうち添加材供給位置B1を避けた位置へ温度調整用の電子ビームまたはプラズマを照射する。これにより、添加材54は、ワイヤーの状態のまま溶湯51へ進入することができる。このようにすることで、添加材54を溶解して液体で溶湯51に添加した場合に比べ、対流Eを強く形成することができ、添加金属の拡散を促進することができる。
また、本実施形態によると、ハース7から鋳型8への溶湯51の供給速度に応じた添加速度で、添加材54が溶湯51へ添加される。この構成によると、溶湯51中の添加金属の濃度変動を抑制できる。その結果、チタン合金鋳塊52における添加金属の濃度のばらつきをより確実に抑制できる。
また、本実施形態によると、鋳型8のキャビティ8a内へ添加材供給位置B2から添加材54が供給される場合、照射部10の電子ビーム10aによって、キャビティ8a内の溶湯51が電磁的に撹拌される。この構成によると、鋳型8のキャビティ8a内へ添加された添加金属を、ハース7における溶湯51の流動作用を利用することなく、溶湯51へより均等に拡散できる。
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は、上述の実施形態に限定されない。本発明は、請求の範囲に記載の範囲内において、種々の変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、照射部9,10が、添加材供給位置B1,B2を避けた位置へ温度調整用の電子ビームまたはプラズマを照射する形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、変形例の主要部を示す図4(A)および図4(B)を参照して、添加材供給工程A,B(ステップS4)において、添加材供給位置B1,B2の少なくとも一方において、添加材54へ電子ビームまたはプラズマを照射することで、添加材54を溶融させて添加金属の状態で溶湯51へ向けて落下させてもよい。
この場合、対応する照射部9,10からの電子ビームまたはプラズマは、添加材54のうち、対応するリール11a,12aから送り出された先の箇所B11,B21(溶湯51の上方の箇所B11,B21)へ照射される。これにより、添加材54が溶湯51に接触する直上で、添加材54を液滴状態(溶融した添加金属の状態)で溶湯51に向けて落下させることができる。溶湯51の上方の箇所B11,B21として、溶湯51の上面51aからの鉛直方向距離F1,F2が0~5mmの位置を例示できる。
この変形例によると、添加材54を液滴の状態で溶湯51に添加すると、添加金属が溶湯51へ迅速に拡散し、添加材54の添加に起因する溶湯51の温度低下を抑制できる。さらに、溶湯51へ添加された添加金属が溶湯51の上面51a(湯面)で薄皮状に存在すること(皮張り)を防止できる。このため、化学組成がより正確且つ均一なチタン合金鋳塊52をより確実に製造できる。
本発明の効果を確認するため、図1に示す製造装置1を用いて、以下に示す試験を実施して、その結果を評価した。
(1)溶解および鋳造条件
溶湯成分:Ti-6.4%Al-4.2%V
溶湯温度:1700℃(第2ハース6内の溶湯温度)
鋳型8の寸法:内径650mm
溶解量:10000kg
溶解速度:1000kg/時間
ハース:第1ハース4および第2ハース6の2種類
第1ハース4の寸法:幅500mm×長1500mm×深100mm
第2ハース6の寸法:幅500mm×長1000mm×深100mm
溶解原料50:スポンジチタン(工業用純チタン)またはチタン合金の直径100mm×長200mmのブリケット
溶解原料50の溶解方法:ブリケットを溶解速度に合わせて連続供給
照射部3:原料50の溶解用1基
照射部9:第1ハース4用1基、第2ハース6用2基、
照射部10:鋳型8用1基
照射部3,9,10の合計5基
添加材54:工業用純アルミニウムのワイヤー
アルミニウムの添加方法:
添加材54の添加に際しては、添加材供給部11,12を使用。チタン合金鋳塊52におけるアルミニウム濃度が6.4%になるように、添加材54の添加速度を変化させた。
添加材54の供給位置:
比較例1:添加材供給部11,12による添加材54の添加無し。原料50に、6.4%のアルミニウムを添加した。
比較例2:添加材供給部11により、第1ハース4のうち経路長Bの0%の位置(始点Cs)にて添加材54を添加。
比較例3:添加材供給部11により、主流れ方向Dにおける第1ハース4の略中央である経路長Bの25%の位置にて添加材54を添加。
実施例1:添加材供給部11により、主流れ方向Dにおける第1ハース4の下流側部分である経路長Bの50%の位置にて添加材54を添加。
実施例2:添加材供給部11により、主流れ方向Dにおける第2ハース6の上流側部分である経路長Bの70%の位置にて添加材54を添加。
実施例3:添加材供給部11により、主流れ方向Dにおける第2ハース6の略中央部分である経路長Bの80%の位置にて添加材54を添加。
実施例4:添加材供給部11により、主流れ方向Dにおける第2ハース6の下流側部分である経路長Bの90%の位置にて添加材54を添加。
実施例5:添加材供給部11により、主流れ方向Dにおける第2ハース6の略中央部分である経路長Bの80%の位置に添加材54を添加。さらに添加材供給部12により、鋳型8のキャビティ8aにて添加材54を添加。鋳型8内部では、電磁撹拌を行う。
実施例6:添加材供給部12により、鋳型8のキャビティ8aにて添加材54を添加。鋳型8内部では、電磁撹拌を行う。
実施例7:添加材供給部12により、鋳型8のキャビティ8aにて添加材54を添加。鋳型8内部での電磁撹拌を行わない。
実施例8:添加材供給部11により、主流れ方向Dにおける第2ハース6の略中央部分である経路長Bの80%の位置にて添加材54を添加。電子ビームは、添加材供給位置B1を避けておらず、添加材ワイヤーがビーム照射により添加直前に溶解されることがある。
(2)評価
チタン合金鋳塊52におけるアルミニウムの濃度を分析した。具体的には、約7000mm長のチタン合金鋳塊52の下端から100mm間隔でチタン合金鋳塊52の上端までのそれぞれの高さ位置において、鋳塊表面から30mm進んだ位置から切粉を採取した。これらの約70の分析結果におけるアルミニウム濃度について、平均値と、平均値からの差の最大値と、を求めた。
これらの値に対して、目標値6.4%に対する比を平均比、誤差比として算出した。なお、平均比は、添加歩留まりに相当し、平均比が1.00の場合、歩留まりが100%になる。誤差比が0.100の場合、平均値からもっとも離れたサンプルにおいて、アルミニウムの濃度は平均値の10%離れていることを示す。
表1に試験結果を示す。
Figure 0007173152000001
表1に示すように、比較例1~比較例3は、何れも、平均比が0.90未満であり、歩留まりが低く、正確な組成を実現できているとはいえない。さらに、誤差比(アルミニウム濃度のばらつき)が0.010を超えており大きく、部位毎の組成の変動が大きい。
一方、実施例1~8では、何れも平均比が0.95を超えており、歩留まりが極めて高く、正確な組成を実現できている。さらに、誤差比(アルミニウム濃度のばらつき)が0.010以下であり、極めて小さく、部位毎の組成の変動が小さい。比較例3と実施例1とを比較すると明らかなように、添加材供給位置B1が経路長Bの25%と50%のときとで、誤差比に明確な差が生じている。すなわち、添加材供給位置B1を経路長Bの50%以上の位置とする(下流側領域15とする)ことが、チタン合金鋳塊52における組成の正確さを高くできるとともに、アルミニウム濃度のばらつきを低減することに明確に有効であると実証された。なお、添加材54をスズとした場合についても、添加材54をアルミニウムとしたときと同様の傾向を示すことは、容易に想定できる。
実施例7は、実施例6と同じ位置で同量の添加材54を投入したが、鋳型8内での電磁撹拌を行わなかった例である。実施例7での結果は、(比較例1~3に比べると良好な結果であるが)実施例6の結果に比べるとアルミニウム濃度の誤差比が大きい。この結果は、鋳型8内での添加材54の投入を行う場合には、電磁撹拌と組み合わせることでよりよい結果が得られることを示している。
実施例8は、実施例3と同じ位置で同量の添加材54を投入したが、電子ビームの照射エリアが添加材供給位置B1を避けるように設定されていなかった(すなわち、照射エリアが添加材供給位置B1を含む)例である。実施例8での結果は、実施例3に比べるとアルミニウム濃度の誤差比が大きい。これは、ハース7内の溶湯51への添加材54の投入を行う場合には、ハース7における溶湯51のうち添加材供給位置B1を避けた位置へ温度調整用の電子ビームまたはプラズマを照射することで、よりよい結果を得られることを示している。
1 製造装置
2 チタン含有原料供給部
4 第1ハース
6 第2ハース
7 ハース
7a 溶湯出口
8 鋳型
9 照射部(溶湯温度調整部)
11,12 添加材供給部
14 上流側領域
15 下流側領域
50 原料
51 溶湯
51a 溶湯の上面
52 チタン合金鋳塊
53 スカル
54 添加材
A1 原料供給位置
B1,B2 添加材供給位置
C 経路
Cs 始点
Ce 終点
D 主流れ方向
E 対流
E1 溶湯の深層に向かう成分

Claims (13)

  1. チタン含有原料の溶融物を含む溶湯が排出される溶湯出口、を含み、前記溶湯が前記溶湯出口へ向かう所定の主流れ方向に沿って流れるように構成されたハースにおける、前記主流れ方向の上流側領域に設定された原料供給位置へ、前記チタン含有原料を供給するチタン含有原料供給工程と、
    前記溶湯が前記原料供給位置から前記溶湯出口まで進行する過程で、前記溶湯を精錬する精錬工程と、
    前記精錬された溶湯を、前記溶湯出口から排出して鋳型に充填する充填工程と、
    前記ハースおける前記溶湯、および、前記鋳型における前記溶湯の少なくとも一方に、アルミニウム、および、スズの少なくとも一方を含む添加材を供給する添加材供給工程と、
    前記添加材供給工程により前記添加材が供給された、前記鋳型における前記溶湯を冷却し、チタン合金鋳塊とする鋳造工程と、
    を含み、
    前記添加材供給工程において、前記ハースにおける前記溶湯への添加材供給位置が、前記主流れ方向において前記上流側領域よりも下流の領域としての、前記ハースの下流側領域に設定され、この下流側領域は、前記主流れ方向に関して、前記ハースにおける前記溶湯の経路の上流側端部を始点とし前記溶湯出口を終点としたとき、前記始点から前記ハースにおける前記溶湯の経路長の50%離隔した位置から前記終点までの間の領域である、
    チタン合金鋳塊の製造方法。
  2. 請求項1に記載のチタン合金鋳塊の製造方法であって、
    前記ハースは、
    前記チタン含有原料が投入される第1ハースと、
    前記溶湯出口を含み、前記第1ハースから流入した前記溶湯の一部を凝固させることでスカルを形成し、前記溶湯の残部を前記溶湯出口へ流す第2ハースと、
    を含み、
    前記添加材供給位置は、前記第2ハースに設定されている、チタン合金鋳塊の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載のチタン合金鋳塊の製造方法であって、
    前記添加材供給工程では、前記添加材供給位置の前記溶湯へ前記添加材のワイヤーを送り出す、チタン合金鋳塊の製造方法。
  4. 請求項3に記載のチタン合金鋳塊の製造方法であって、
    前記添加材供給工程では、前記溶湯の上面から前記ワイヤーを添加することにより、前記溶湯に、前記添加材供給位置から前記溶湯の深層に向かう成分を含む対流を形成する、チタン合金鋳塊の製造方法。
  5. 請求項1~請求項4の何れか1項に記載のチタン合金鋳塊の製造方法であって、
    前記精錬工程では、前記ハースにおける前記溶湯のうち前記添加材供給位置を避けた位置へ温度調整用の電子ビームまたはプラズマを照射する、チタン合金鋳塊の製造方法。
  6. 請求項1~請求項5の何れか1項に記載のチタン合金鋳塊の製造方法であって、
    前記添加材供給工程では、前記添加材へ電子ビームまたはプラズマを照射することで前記添加材を溶融状態で前記溶湯へ向けて落下させる、チタン合金鋳塊の製造方法。
  7. 請求項1~請求項6の何れか1項に記載のチタン合金鋳塊の製造方法であって、
    前記添加材供給工程では、前記ハースから前記鋳型への前記溶湯の供給速度に応じた添加速度で前記添加材を添加する、チタン合金鋳塊の製造方法。
  8. 請求項1~請求項7の何れか1項に記載のチタン合金鋳塊の製造方法であって、
    前記添加材供給工程では、前記鋳型における前記溶湯に前記添加材を供給し、
    前記鋳造工程では、前記鋳型に供給された前記溶湯を電磁的に攪拌する、チタン合金鋳塊の製造方法。
  9. チタン含有原料を供給するチタン含有原料供給部と、
    前記チタン含有原料供給部から供給された前記チタン含有原料の溶融物を含む溶湯が排出される溶湯出口を含み、前記溶湯が前記溶湯出口へ向かう所定の主流れ方向に沿って流れるように構成され、前記主流れ方向の上流側領域に設定された原料供給位置から前記チタン含有原料供給部によって前記チタン含有原料を供給されるように構成され、且つ、前記溶湯が前記溶湯出口まで進行する過程で前記溶湯を精錬するハースと、
    前記精錬された溶湯が充填される鋳型と、
    前記ハースにおける前記溶湯、および、前記鋳型における前記溶湯の少なくとも一方に、アルミニウム、および、スズの少なくとも一方を含む添加材を供給する添加材供給部と、
    を備え、
    前記ハースにおける前記溶湯への添加材供給位置が、前記主流れ方向において前記上流側領域よりも下流の領域としての、前記ハースの下流側領域に設定され、この下流側領域は、前記主流れ方向に関して、前記ハースにおける前記溶湯の経路の上流側端部を始点とし前記溶湯出口を終点としたとき、前記始点から前記ハースにおける前記溶湯の経路長の50%離隔した位置から前記終点までの間の領域である、チタン合金鋳塊の製造装置。
  10. 請求項9に記載のチタン合金鋳塊の製造装置であって、
    前記添加材供給部は、前記添加材供給位置の前記溶湯へ前記添加材のワイヤーを送り出す、チタン合金鋳塊の製造装置。
  11. 請求項10に記載のチタン合金鋳塊の製造装置であって、
    前記添加材供給部は、前記溶湯の上面から前記ワイヤーを添加することにより、前記溶湯に、前記添加材供給位置から前記溶湯の深層に向かう成分を含む対流を形成する、チタン合金鋳塊の製造装置。
  12. 請求項9~請求項11の何れか1項に記載のチタン合金鋳塊の製造装置であって、
    前記ハースにおける前記溶湯のうち前記添加材供給位置を避けた位置へ温度調整用の電子ビームまたはプラズマを照射する溶湯温度調整部をさらに備える、チタン合金鋳塊の製造装置。
  13. 請求項9~請求項12の何れか1項に記載のチタン合金鋳塊の製造装置であって、
    前記添加材供給部は、前記ハースから前記鋳型への前記溶湯の供給速度に応じた添加速度で前記添加材を添加する、チタン合金鋳塊の製造装置。
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