JP7172100B2 - 無方向性電磁鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は,無方向性電磁鋼板に関するものである。
近年、電気機器(特に、無方向性電磁鋼板がその鉄心材料として使用される回転機、中小型変圧器、電装品等)の分野においては、世界的な電力・エネルギー節減、CO削減等に代表される地球環境保全の動きがある。その中で、高効率化、及び小型化の要請はますます強まりつつある。このような社会環境下において、当然、無方向性電磁鋼板に対しても、その性能向上は、喫緊の課題である。
周知のように、無方向性電磁鋼板においては、その性能向上に対して数多の手段がとられてきた。鉄損はヒステリシス損と渦電流損との2つに大別される。一般的に、鉄損低減は、固有抵抗増大による渦電流損低減の観点から、Si、Al等の含有量を高める方法がとられてきた。しかし、この方法では、渦電流損が低減できる反面、磁束密度の低下は避け得ないという問題点があった。
一方、Al含有量増加はSiの場合と比較して、同程度固有抵抗を増加させ、渦電流損を低減させる含有量での飽和磁束密度低下代が大きいという課題がある。また、Alは一定量以上含有するとヒステリシス損を増加させることも知られており、Al含有量を0.01質量%以下(以下成分に関して、単に%と記述する場合は、質量%を指す)にすることでヒステリシス損を低下させ、鉄損を低下させることが知られている(Alトレース) 。しかし、この方法はより磁束密度が低下するという課題がある。
磁束密度を向上させる手法の一つとして、特許文献1に記載されているように、Pを添加し、粒界に偏析させる手法が知られている。また、特許文献2に記載されているように、急速加熱を用いる方法が知られている。
また、磁束密度を向上させる手段として、特許文献3に記載されているように、急冷凝固を用いる方法が知られている。しかし、急冷凝固を工業的に実施すると、仕上げ焼鈍時に微細な析出物が粒成長を阻害するという課題がある。この課題に対しては、特許文献4に記載されているように、REM、及びCaの1種又は2種を含有させることで解決する方法も知られている。
特許第5995002号公報 特許第5825494号公報 特開昭62-240714号公報 特許第4648910号公報
しかし、特許文献1~2の方法では、必ずしも高い磁束密度が得られるものではなかった。特許文献3の方法では、仕上焼鈍時の粒成長が阻害され、高い磁束密度を得られるが、低鉄損という点で満足できるものではなかった。特許文献4の方法では、特許文献3の粒成長阻害の課題は解決したが、Al含有によるヒステリシス損劣化の課題がある。
高周波鉄損の低減には、板厚薄手化、高合金化による高固有抵抗化で渦電流損を低減することが有効であるが、一方で、飽和磁束密度低下、集合組織悪化により磁束密度が劣化する課題がある。
このように、鉄損が低くかつ磁束密度が高い無方向性電磁鋼板を得るには、改善の余地があるのが現状である。
そこで、本発明の課題は、上記問題を鑑み、鉄損が低くかつ磁束密度が高い無方向性電磁鋼板を提供することである。
上記課題は、以下の手段により解決される。なお、各方位(±10°以内)のことを各方位(裕度20°以内)と記す。
<1>
質量%で
C:0.0030%以下、
Si:2.50%~5.00%、
sol.Al:0.0040%以下、
Mn:3.0%超~5.0%、
P:0.005%~0.200%、
S:0.0010%~0.0100%、
Ti:0.0005%~0.0100%、
Ca:0.0005%~0.0100%、
Mg、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上:総計0.0005%~0.0200%、並びに、
残部:Fe及び不純物を含む化学組成を有し
インバースポールフィギュアの{100}面強度が2.4以上であり、
電子線後方散乱回折(EBSD)で測定した際の{100}方位(裕度20°以内)の結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率が18%以上であり、
平均結晶粒径が55μm~200μmであり、
板厚が0.15mm~0.30mmであり、
前記Siの含有量(質量%)を[Si]、前記Mnの含有量(質量%)を[Mn]としたときに下記式1で表されるQが、2.00以上である、
無方向性電磁鋼板。
Q=[Si]-0.5×[Mn] (式1)
<2>
前記Siの含有量(質量%)を[Si]、前記Mnの含有量(質量%)を[Mn]としたときに下記式2で表されるRが64以上である<1>に記載の無方向性電磁鋼板。
R=9.9+12.4×[Si]+6.6×[Mn] (式2)
<3>
電子線後方散乱回折(EBSD)で測定した際の{411}方位(裕度20°以内)の結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率が70%以上である<1>又は<2>に記載の無方向性電磁鋼板。
<4>
電子線後方散乱回折(EBSD)で測定した際の{111}方位(裕度20°以内)の結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率が25%以下である<1>~<3>のいずれか1つに記載の無方向性電磁鋼板。
本発明によれば、低鉄損かつ高磁束密度な無方向性電磁鋼板が提供できる。
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
なお、本明細書中において、化学組成の各元素の含有量の「%」表示は、「質量%」を意味する。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
「~」の前後に記載される数値に「超」または「未満」が付されている場合の数値範囲は、これら数値を下限値または上限値として含まない範囲を意味する。
「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
連続鋳造と熱間圧延との工程を経て得られる無方向性電磁鋼板は「CC材」とも称する。
Al含有量を低減することを、「Alトレース」とも称する。
「インバースポールフィギュアの{100}面強度」を単に「{100}面強度」と称することがある。
「電子線後方散乱回折(EBSD)で測定した際の、「{100}方位(裕度20°以内)の結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率」、「{411}方位(裕度20°以内)の結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率」、「{111}方位(裕度20°以内)の結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率」を、各々、単に、「{100}方位粒の面積率」、「{411}方位粒の面積率」、「{111}方位粒の面積率」とも称する。
<無方向性電磁鋼板>
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、所定の化学組成を有し、次の(1)~(5)の特性を満たす。
(1)インバースポールフィギュアの{100}面強度が2.4以上である。
(2)電子線後方散乱回折(EBSD)で測定した際の{100}方位(裕度20°以内)の結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率が18%以上であり、
(3)平均結晶粒径が55μm~200μmであり、
(4)板厚が0.15mm~0.30mmであり、
(5)前記Siの含有量(質量%)を[Si]、前記Mnの含有量(質量%)を[Mn]としたときに下記式1で表されるQが、2.00以上である。
Q=[Si]-0.5×[Mn] (式1)
本実施形態に係る電磁鋼板は、上記構成により、低鉄損かつ高磁束密度な無方向性電磁鋼板となる。そして、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、次に示す知見により見出された。
Si、AlおよびMnは含有量を増加させることで鋼板固有抵抗を上げて渦電流損を低減する。一方で、Si、AlおよびMnは鋼板の飽和磁束密度を低下させる。同程度の固有抵抗を上昇させる含有量で比較すると、SiとMnの飽和磁束密度低下代はほぼ同等であるが、Alは飽和磁束密度低下代がSiおよびMnより大きい。さらにAlは含有量を増加させるとヒステリシス損が劣化するため、ヒステリシス損の割合の大きい周波数では固有抵抗ほど鉄損が下がらない場合がある。SiおよびMnはヒステリシス損への影響はAlより小さく、Si量6.5%近傍ではヒステリシス損が大きく低減することが知られている。
一方で、SiはAlおよびMnに比べて鋼板を脆化させ易く、過度に含有させると製造時の脆性破断の懸念が増大する。MnはSiおよびAlに比べて鋼板を脆化させにくいが、過度に含有すると、高温でγ相が生成し高温での仕上げ焼鈍による結晶粒の粗大化が難しくなる。そのため、式1([Si]-0.5×[Mn]≧2.00)を満たすようにSi量に対しMn量を制限する必要がある。それにより、平均結晶粒径が増大可能となり、低鉄損が得られる。
一方、Si量およびMn量を増加させると、通常、飽和磁束密度は低下する。しかし、集合組織を改善することで、高磁束密度が得られる。磁束密度向上に寄与する集合組織としては、{100}近傍の結晶方位が重要である。
{100}面強度及び{100}方位粒の存在確率を高めることで、Si量およびMn量を増加しても、磁束密度が向上し、低鉄損かつ高磁束密度が実現できる。
そして、無方向性電磁鋼板の板厚を0.15mm~0.30mmにすると、鉄損の1種である渦電流損が低下するため、ヒステリシス損と渦電流損の両方が低い鋼板を得ることができる。
以上の知見により、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、鉄損が低くかつ磁束密度が高い無方向性電磁鋼板となることが見出された。
本施形態に係る無方向性電磁鋼板の化学組成について説明する。なお、鋼板の成分組成について、「%」は「質量%」である。
無方向性電磁鋼板の化学組成は、
C:0.0030%以下、
Si:2.50%~5.00%、
sol.Al:0.0040%以下、
Mn:3.0%超~5.0%、
P:0.005%~0.200%、
S:0.0010%~0.0100%、
Ti:0.0005%~0.0100%、
Ca:0.0005%~0.0100%、
Mg、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群(以下「特定元素群」とも称する)から選択された一種以上:総計0.0005%~0.0200%、並びに、
残部:Fe及び不純物を含む
なお、無方向性電磁鋼板は、C、Si、sol.Al、Mn、P、S、Ti、Ca、及び特定元素群から選択された一種以上の元素を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学成分を有する無方向性電磁鋼板であってもよい。
[C:0%超~0.0030%以下]
C(炭素)は、不可避的に含有される(すなわち、含有量が0%超となる)元素であるとともに、鉄損劣化を引き起こす元素である。Cの含有量が0.0030%を超える場合には、無方向性電磁鋼板において鉄損劣化が生じ、良好な磁気特性が得られ難くなる。よって、Cの含有量を、0.0030%以下とする。Cの含有量は、好ましくは、0.0020%以下であり、更に好ましくは、0.0015%以下である。
一方、Cの含有量の下限は、好ましくは0%超であり、精錬コストの観点から、より好ましくは0.0005%以上である。
[Si:2.50%~5.00%]
Si(ケイ素)は、鋼の固有抵抗を上昇させて渦電流損を低減させ、鉄損を改善する元素である。また、Siは、固溶強化能が大きいため、無方向性電磁鋼板の高強度化にも有効な元素である。高強度化は、モータの高速回転時の変形抑制及び疲労破壊抑制といった観点から重要である。かかる効果を十分に発揮させるためには、2.50%以上のSiを含有させることが必要である。よって、Siの含有量は2.50%以上とする。
一方、Siの含有量が5.00%を超える場合には、加工性が劣化する傾向がある。よって、Siの含有量は、5.00%以下とする。
Siの含有量は、好ましくは、2.80%~3.90%であり、更に好ましくは、3.00%~3.80%である。
[Sol.Al:0.0040%以下]
Al(アルミニウム)は、鋼中に固溶されると、無方向性電磁鋼板の固有抵抗を上昇させることで渦電流損を低減し、高周波鉄損を改善する元素である。一方で、Alは、Siに比べ、飽和磁束密度の低下、透磁率の低下、ヒステリシス損の増加が大きい。また、Alの含有量が0.0040%を超えると、鋼中に微細な窒化物が析出して熱延板焼鈍工程又は仕上焼鈍工程での結晶粒成長を阻害し、磁気特性を劣化させる傾向がある。よって、Alの含有量は、0.0040%以下とする。
一方、Alの含有量の下限は、好ましくは0%超であり、精錬コストの観点から、より好ましくは0.0001%%以上である。
Alの含有量は、好ましくは、0.0001%~0.0025%であり、更に好ましくは、0.0003%~0.0020%である。
[Mn:3.0%超~5.0%]
Mnは、固有抵抗を増大させて渦電流損を低減する効果を有する。さらに、Mnは、結晶粒成長に有害なMnS等の微細硫化物の析出を抑制する効果を有する。かかる効果を発揮するためには、Mn含有量は一定量以上必要だが、3.0%以下では十分な渦電流損低減効果が得られない。そのため、Mnの含有量は、3.0%超とする。
一方、Mnの含有量が5.0%を超える場合には、焼鈍時の結晶粒成長性そのものが低下し、鉄損が増大する。そのため、Mn含有量は5.0%以下とする。
Mn含有量は、好ましくは3.5%以上4.5%以下、より好ましくは3.8%以上4.2%以下である。
[P:0.005%~0.200%]
P(リン)は、焼鈍時に粒界からの再結晶を抑制し、磁気特性に劣位な{111}方位粒等の成長を抑制する効果を有する元素である。かかる効果を発揮させるためには、0.005%以上のPを含有させることが必要である。従って、Pの含有量は、0.005%以上とする。
一方、Pの含有量が0.200%を超える場合には、鋼板が脆化する。よって、Pの含有量は、0.200%以下とする。
Pの含有量は、好ましくは、0.06%以上0.15%以下であり、更に好ましくは、0.08%以上0.12%以下である。
[S:0.0010%~0.0100%]
S(硫黄)は、MnS等の微細硫化物を形成することで鉄損を増加させ、磁気特性を劣化させる元素である。また、MnS等の微細硫化物は、仕上げ焼鈍時等における再結晶および結晶粒成長を阻害する。
よって、Sは、精錬コストを考慮し、0.0010%~0.0100%とする。
Sの含有量は、好ましくは、0.0080%以下であり、更に好ましくは0.0060%以下である。
[Ti:0.0005%~0.0100%]
Ti(チタン)は、地鉄中のC、N、Oなどと結合してTiN、TiC、Ti酸化物などの微小析出物を形成し、焼鈍中の結晶粒の成長を阻害して磁気特性を劣化させる元素である。
よって、Tiは、精錬コストを考慮し、0.0005%~0.0100%とする。
Tiの含有量は、好ましくは、0.0008%以上0.0080%以下であり、より好ましくは、0.0010%以上0.0060%以下である。
[Ca:0.0005%~0.0100%]
Caは、硫化物または酸硫化物としてSを固定し、MnS等の微細析出を回避し、磁壁の移動をスムーズにし、鉄損を低下させる効果を有する元素である。かかる効果を発揮するためには、0.0005%以上のCaを含有させる必要がある。よって、Caの含有量は、0.0005%以上とする。
一方、Caの含有量が0.0100%を超える場合には、硫化物または酸硫化物自体が過剰となり、鉄損が悪化する傾向にある。よって、Caの含有量は、0.0100%以下とする。
Caの含有量は、好ましくは、0.0010%以上0.0080%以下であり、更に好ましくは、0.0015%以上0.0060%以下である。
[Mg、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上:総計0.0005%~0.0200%]
Mg、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdは、硫化物または酸硫化物としてSを固定し、MnS等の微細析出を回避し、磁壁の移動をスムーズにし、鉄損を低下させる効果を有する。そのため、これら特定元素から選択される1種以上を含有する必要がある。かかる効果を発揮するには、特定元素群から選択される1種以上の含有量を総計で、0.0005%以上とする。
一方、特定元素群から選択される少なくとも1種の含有量が総計で0.0200%を超える場合には、硫化物または酸硫化物自体が過剰となり、鉄損が悪化する。そのため、特定元素群から選択される少なくとも1種の含有量は、総計で0.0100%以下とすることする。
特定元素群から選択される1種以上の含有量は、総計で、好ましくは、0.0010%以上0.0150%以下であり、更に好ましくは、0.0020%以上0.0100%以下である。
[残部]
無方向性電磁鋼板の残部は、Feおよび不純物である。ここで、不純物とは、原材料に含まれる成分、または、製造の過程で混入する成分であって、意図的に鋼板に含有させたものではない成分を指す。さらに、不純物は、意図的に含有させた成分であっても、鋼板の性能に影響を与えない範囲の量で含有する成分も含む。
[(式1)Q=[Si]-0.5×[Mn]:2.00%以上]
Siの含有量(質量%)を[Si]、Mnの含有量(質量%)を[Mn]としたときに下記式1で表されるQは、2.00以上である。
Q=[Si]-0.5×[Mn] (式1)
ここで、合金元素であるSiは、フェライト相促進元素(いわゆる、フェライトフォーマー元素)である一方で、合金元素であるMnは、オーステナイト相促進元素(いわゆる、オーステナイトフォーマー元素)である。したがって、Siに比べMnが過度に含有すると、変態点が下がり、仕上焼鈍時の高温下で、オーステナイト相が生成し、結晶粒の粗大化ができなくなる。そのため、平均結晶粒径を適度に大きくするには、Si及びMnのそれぞれの含有量は、所定の関係性を満たすことが求められる。
ここで、経験的に、Mnによるオーステナイト相促進能(換言すれば、フェライト相促進能を打ち消す効果)は、Siによるフェライト相促進能を1としたときに、0.5程度と考えることができる。そのため、フェライト相促進能の等量は、Siの含有量を基準として、Q=[Si]-0.5×[Mn]として表すことができる。
Q値(=Si-0.5×Mnの値)が2.0%未満である場合には、変態点が下がり、仕上焼鈍時の高温下で、オーステナイト相が生成し、結晶粒の粗大化ができなくなる。その結果、鉄損が悪化する。そのため、平均結晶粒径を適度に大きし、低鉄損を実現するには、Q値は、2.0%以上とする。
一方、Q値(=Si-0.5×Mnの値)の上限値は、特に規定するものではないが、無方向性電磁鋼板のSi含有量及びMn含有量の範囲から、Q値は、3.5%を超えることはない。よって、Si-0.5×Mnの上限値は、実質的には、3.5%となる。
Q値(=Si-0.5×Mnの値)は、好ましくは、2.0%以上3.4%以下であり、更に好ましくは、2.1%以上3.4%以下である。
[(式2)R(=9.9+12.4×[Si]+6.6×[Mn]:64以上]
Siの含有量(質量%)を[Si]、Mnの含有量(質量%)を[Mn]としたときに下記式2で表されるRは、64以上であることが好ましい。
R=9.9+12.4×[Si]+6.6×[Mn] (式2)
ここで、Si量およびMn量を増加させると、上述のように、固有抵抗が増加し、渦電流損が低下する。一方で、Siは、AlおよびMnに比べて、鋼板を脆化させ易いので、比較的脆化させにくいMn量を増加させて固有抵抗を高くすることが良い。
そのため、固有抵抗を増加させ、より低鉄損化する観点から、R値(=9.9+12.4×[Si]+6.6×[Mn])を、64以上とすることが好ましく、74以上とすることがより好ましい。
一方、Si量およびMn量が過度に増加すると、鋼板が脆化する傾向が高まる。そのため、R値は、95以下が好ましく、90以下がより好ましい。
(無方向性電磁鋼板の金属組織等)
次に、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の金属組織について説明する。
[{100}面強度:2.4以上]
{100}面強度(インバースポールフィギュアの{100}面強度)は、2.4以上である。
ここで、{100}近傍の結晶方位は、磁束密度向上に寄与する集合組織である。上述のように、Si量およびMn量を増加すると、飽和磁束密度が低下するが、{100}面強度を高めると、磁束密度B50(励磁磁化力5000A/mで鋼板を磁化した時に鋼板に発生する磁束密度)が向上する。かかる高磁束密度化を実現するためには、2.4以上の{100}面強度が必要である。よって、インバースポールフィギュアの{100}面強度は、2.4以上とする。
{100}面強度は強いほど磁気特性が良好であり、上限は規定する必要がない。
高磁束密度化の観点から、インバースポールフィギュアの{100}面強度は、3.5以上が好ましく、3.8以上がより好ましい。
[{100}方位粒の面積率:18%以上]
{100}方位粒の面積率(電子線後方散乱回折(EBSD)で測定した際の{100}方位(裕度20°以内)の結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率)は、18%以上である。
ここで、上記同様に、{100}近傍の結晶方位は、磁束密度向上に寄与する集合組織である。上述のように、Si量およびMn量を増加すると、飽和磁束密度が低下するが、{100}方位粒の面積率の存在確率を高めると、磁束密度B50が向上する。かかる高磁束密度化を実現するためには、{100}方位粒の面積率で18%必要である。よって、{100}方位粒の面積率は、18%以上とする。
{100}単結晶の{100}面積率は100%であり、{100}面積率は高いほど磁気特性が良好であり、上限は規定する必要がない。
高磁束密度化の観点から、{100}方位粒の面積率は、20%以上が好ましく、22%以上がより好ましい。
[板厚]
板厚は、0.15mm~0.30mmである。板厚が薄すぎると、冷間圧延が難しくなり、工業生産ができなくなる。一方、板厚が厚すぎると、渦電流損が多くなり、鉄損が劣化する。そのため、板厚は、0.15mm~0.30mmとする。板厚は、好ましくは0.20mm~0.27mmである。
[平均結晶粒径]
平均結晶粒径は、55μm~200μmである。結晶粒が粗大化せず、平均結晶粒径が小さすぎると、鉄損が悪化する。一方、結晶粒が過度に粗大化し、平均結晶粒径が大きすぎると、加工性が悪化するだけではなく、渦電流損が悪化する。そのため、平均結晶粒径は、55μm~200μmとする。平均結晶粒径は、好ましくは60μm~150μmである。
[{411}方位粒の面積率:70%以上]
{411}方位粒の面積率(電子線後方散乱回折(EBSD)で測定した際の{411}方位(裕度20°以内)の結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率)は、70%以上であることが好ましい。
さらに、無方向性電磁鋼板の磁気特性を向上させ、低鉄損および高磁束密度を実現するには、磁気特性に優位な{411}方位粒の存在確率を高めることが良い。そのため、{411}方位粒の面積率は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。なお、{411}方位粒の面積率は高い程好ましいが、製造上の観点から、{411}方位粒の面積率の上限は、例えば95%以下である。
[{111}方位粒の面積率:25%以下]
{111}方位粒の面積率(電子線後方散乱回折(EBSD)で測定した際の{111}}方位(裕度20°以内)の結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率)は、25%以下であることが好ましい。
さらに、無方向性電磁鋼板の磁気特性を向上させ、低鉄損および高磁束密度を実現するには、磁気特性に劣位な{111}方位粒の存在確率を低減することが良い。そのため、{111}方位粒の面積率は、25%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。なお、{111}方位粒の面積率は0%が最も好ましいが、製造上の観点から、{111}方位粒の面積率の下限は、例えば5%以上である。
[その他]
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、片面又は両面に絶縁被膜を有していても良い。
無方向性電磁鋼板の磁気特性を向上させるためには、鉄損を低減することが重要である。鉄損は、渦電流損とヒステリシス損とから構成されている。無方向性電磁鋼板の表面に絶縁被膜を設けることで、鉄心として積層された無方向性電磁鋼板間の導通を抑制して鉄心の渦電流損を低減することが可能となり、無方向性電磁鋼板の実用的な磁気特性を更に向上させることが可能となる。
ここで、絶縁被膜は、無方向性電磁鋼板の絶縁被膜として用いられるものであれば、特に限定されるものではなく、公知の絶縁被膜を用いることが可能である。このような絶縁被膜として、例えば、無機物を主体とし、更に有機物を含んだ複合絶縁被膜を挙げることができる。ここで、複合絶縁被膜とは、例えば、クロム酸金属塩、リン酸金属塩又はコロイダルシリカ、Zr化合物、Ti化合物等の無機物の少なくとも何れかを主体とし、微細な有機樹脂の粒子が分散している絶縁被膜である。特に、近年ニーズの高まっている製造時の環境負荷低減の観点からは、リン酸金属塩やZrあるいはTiのカップリング剤、又は、これらの炭酸塩やアンモニウム塩を出発物質として用いた絶縁被膜が好ましく用いられる。
絶縁被膜の付着量は、特に限定するものではないが、例えば、片面あたり0.1g/m以上2.0g/m以下程度とすることが好ましく、片面あたり0.2g/m以上1.8g/m以下とすることが更に好ましい。かかる付着量となるように絶縁被膜を形成することで、優れた均一性を保持することが可能となる。なお、かかる絶縁被膜の付着量を、事後的に測定する場合には、公知の各種測定法を利用することが可能である。
なお、絶縁被膜の付着量は、例えば、絶縁被膜13を形成した無方向性電磁鋼板を熱アルカリ溶液に浸漬することで絶縁被膜13のみを除去し、絶縁被膜13の除去前後の質量差から算出することが可能である。
次に、各種測定方法について説明する。
[{100}面強度]
{100}面強度は、次の通り測定する。
例えば、通常のX線回折プロファイルから、各結晶面の回折の積分強度をランダム方位材料における理想強度比と比較することにより、面配向性を求めることができる。測定は、例えばリガク製試料水平型強力X線回折装置RINT-TTR3や粉末X線回折装置RINT-2000を用いて行うことができるが、測定結果は本質的には測定機器に依存するものではない。
[各方位粒の面積率]
各方位粒の面積率({100}方位粒、{411}方位粒、{111}方位粒)は、次の通り測定する。
OIMアナリシス(TSL社製)を用いて、下記測定条件で観察した走査型電子顕微鏡による観察視野の中から、目的とする各方位粒の面積率を抽出(トレランスは20°に設定)する。その抽出した面積を、観察視野の面積で割り、百分率を求める。この百分率を各方位粒の面積率とする。
なお、各方位粒の面積率を求める測定条件の詳細は、次の通りである。
・測定装置:電子線後方散乱回折装置付き走査型電子顕微鏡(SEM-EBSD)「SEMの型番JSM-6400(JEOL社製)EBSD検出器は型番「HIKARI」(TSL社製)を使用」
・ステップ間隔:2μm
・倍率:100倍
・測定対象:鋼板のZ面(板厚方向に鋼板を切断した切断面)の中心層(板厚1/2部)
・測定領域:8000μm×2400μmの領域
・測定結晶粒数:約1000個
[平均結晶粒径]
平均結晶粒径を測定する場合には、JIS G0551(2013)の鋼のフェライト結晶粒度試験方法に記載された比較法や切断法で結晶粒の平均断面積を求め、求めた面積と等価な円の直径を、平均結晶粒径とすれば良い。
次に、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法としては、次の(1)ストリップキャスティング法、(2)薄スラブ連続鋳造法、(3)潤滑熱延法、(4)高温熱延板焼鈍+冷延強圧下法、(5)複数回冷延法などが挙げられる。
(1)ストリップキャスティング法
ストリップキャスティング法は、次の通り、無方向性電磁鋼板を製造する。
まず、製鋼工程で、ストリップキャスティングにより直接1~3mm厚さの熱延コイルを製造する。
ストリップキャスティングでは、溶鋼を水冷した1対のロール間で急速に冷却することで、直接熱延コイル相当厚さの鋼板を得ることができる。その際、水冷ロールに接触している鋼板最表面と溶鋼との温度差を十分に高めてやることで、表面で凝固した結晶粒が鋼板垂直方向に成長し、柱状晶を形成する。
BCC構造を持つ鋼では、柱状晶は{100}面が鋼板面に平行になるように成長する。{100}面強度が増加し、{100}方位粒の存在確率が高まる。そして、変態、加工又は再結晶で、{100}面からなるべく変化させないことが重要である。具体的には、フェライト促進元素であるSiを含有させ、オーステナイト促進元素であるMnの含有量を制限することで、高温でのオーステナイト相生成を経ずに、凝固直後から室温までをフェライト単相とすることが重要である。
オーステナイト-フェライト変態が生じても一部{100}面は維持されるが、SiおよびMnの含有量を上記範囲に調整して、オーステナイト-フェライト変態の生じない成分系とする。
次に、ストリップキャスティングにより得られた熱延コイルの鋼板を熱間圧延し、その後、得られた熱延板を焼鈍(熱延板焼鈍)する。
なお、熱間圧延は実施せず、そのまま後工程を実施してもよい。
また、熱延板焼鈍も実施せずに、そのまま後工程を実施してもよい。ここで、熱間圧延で鋼板に30%以上の歪みを導入した場合、550℃以上の温度で熱延板焼鈍を実施すると歪み導入部から再結晶が生じ、結晶方位が変化することがある。そのため、熱間圧延で30%以上の歪みを導入した場合、熱延板焼鈍は、実施しないか、再結晶しない温度で実施する。
次に、鋼板に対して、冷間圧延前の酸洗を実施する。
酸洗は、鋼板表面のスケールを除去するために必要な工程である。スケール除去の状況に応じて、酸洗条件を選択する。なお、酸洗の代わりに、グラインダでスケールを除去してもよい。
次に、鋼板に対して、冷間圧延を実施する。
冷間圧延は、所望の製品厚を得るために必須な工程である。ただし、冷間圧延の圧下率が過大になると、製品において望ましい結晶方位が得られなくなる。そのため、冷間圧延の圧下率は、好ましくは90%以下とし、より好ましくは85%以下とし、さらに好ましくは80%以下とする。冷間圧延の圧下率の下限は、特に設ける必要はないが、冷間圧延前の鋼板の板厚と所望の製品厚とから圧下率の下限を決める。また、積層鋼板として求められる表面性状および平坦度が得られていない場合も、冷間圧延が必要になるため、その目的での最小の冷間圧延が必要となる。
冷間圧延は、リバースミルで実施してもよいし、タンデムミルで実施しても良い。
なお、冷間圧延の代わりに、脆性破断回避の観点から、材料の延性/脆性遷移温度以上の温度で、温間圧延を実施しても良い。
次に、鋼板に対して、仕上焼鈍を実施する。
仕上焼鈍は、所望の磁気特性が得られる結晶粒径を得るために条件を決める必要があるが、通常の無方向性電磁鋼板の仕上焼鈍条件の範囲であれば良い。
仕上焼鈍は、連続焼鈍でも、バッチ焼鈍でもよい。コストの観点から、仕上焼鈍は連続焼鈍で実施するのが好ましい。連続焼鈍を実施するには、高温短時間で結晶粒成長させる必要があり、SiおよびMnの含有量に上記範囲に調整して、高温でフェライト-オーステナイト変態を起こさない成分にする。
以上の工程を経て、(1)ストリップキャスティング法では、目的とする無方向性電磁鋼板が得られる。
(2)薄スラブ連続鋳造法
薄スラブ連続鋳造法では、次の通り、無方向性電磁鋼板を製造する。
薄スラブ連続鋳造法では、製鋼工程で30~60mm厚さのスラブを製造し、熱間圧延工程の粗圧延を省略する。薄スラブで十分に柱状晶を発達させ、熱間圧延で柱状晶を加工して得られる{100}<011>方位を熱延板に残すことが望ましい。この過程で、{100}面が鋼板面に平行になるように柱状晶が成長する。この目的のためには連続鋳造での電磁撹拌を実施しない方が望ましい。また、凝固核生成を促進させる溶鋼中の微細介在物は極力低減することが望ましい。
そして、薄スラブを再加熱炉で加熱した後、熱間圧延工程で連続的に仕上げ圧延し、約2mm厚さの熱延コイルを得る。
その後、熱延コイルの鋼板に対して、(1)ストリップキャスティング法と同様にして、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上焼鈍を実施する。
以上の工程を経て、(2)薄スラブ連続鋳造法では、目的とする無方向性電磁鋼板が得られる。
(3)潤滑熱延法
潤滑熱延法では、次の通り、無方向性電磁鋼板を製造する。
まず、製鋼工程でスラブを製造する。スラブを再加熱炉で加熱した後、熱間圧延工程で連続的に粗圧延および仕上げ圧延し、熱延コイルを得る。
ここで、熱間圧延は、通常無潤滑で実施するが、適切な潤滑条件で熱間圧延する。適切な潤滑条件で熱間圧延を実施すると、鋼板表層近傍に導入される剪断変形が低減する。それにより、通常鋼板中央で発達するαファイバと呼ばれるRD//<011>方位を持つ加工組織を鋼板表層近傍まで発達させることができる。例えば、特開平10-36912号に記載のように、熱間圧延時に潤滑剤として熱延ロール冷却水に0.5~20%の油脂を混入し、仕上熱延ロールと鋼板との平均摩擦係数を0.25以下にすることで、αファイバを発達させることができる。
その後、熱延コイルの鋼板に対して、(1)ストリップキャスティング法と同様にして、熱延板焼鈍、酸洗、冷間圧延、仕上焼鈍を実施する。熱延コイルの鋼板でαファイバを鋼板表層近傍まで発達させると、その後の熱延板焼鈍で{h11}<1/h 1 2>、特に{100}<012>~{411}<148>が再結晶する。この鋼板を酸洗後、冷間圧延し、仕上焼鈍を実施すると、{100}<012>~{411}<148>が再結晶する。それにより、{100}面強度が増加し、{100}方位粒の存在確率が高まる。
以上の工程を経て、(3)潤滑熱延法では、目的とする無方向性電磁鋼板が得られる。
(4)高温熱延板焼鈍+冷延強圧下法
高温熱延板焼鈍+冷延強圧下法では、次の通り、無方向性電磁鋼板を製造する。
まず、製鋼工程でスラブを製造する。スラブを再加熱炉で加熱した後、熱間圧延工程で連続的に粗圧延および仕上げ圧延し、熱延コイルを得る。
次に、熱延コイルの鋼板に対して、熱延板焼鈍を実施する。熱延板焼鈍により、再結晶させ、結晶粒を結晶粒径300~500μmまで粗大に成長させる。
熱延板焼鈍は、連続焼鈍でも、バッチ焼鈍でもよい。コストの観点から、熱延板焼鈍は連続焼鈍で実施するのが好ましい。連続焼鈍を実施するには、高温短時間で結晶粒成長させる必要があり、SiおよびMnの含有量を上記範囲に調整して、高温でフェライト-オーステナイト変態を起こさない成分にする。
次に、鋼板に対して、酸洗後、冷間圧延を実施する。
ここで、Si含有量の高い高級無方向性電磁鋼板では、結晶粒径を粗大にしすぎると鋼板が脆化し、冷間圧延での脆性破断懸念が生じる。そのため、冷間圧延前の鋼板の平均結晶粒径を、通常200μm以下に制限する。一方で、本発明では、冷間圧延前の平均結晶粒径を300~500μmとし、続く冷間圧延を圧下率80~95%で実施する。
なお、冷間圧延の代わりに、脆性破断回避の観点から、材料の延性/脆性遷移温度以上の温度で、温間圧延を実施しても良い。
その後、仕上焼鈍を実施すると、ND//<100>再結晶粒が成長する。それにより、{100}面強度が増加し、{100}方位粒の存在確率が高まる。
なお、酸洗、仕上焼鈍は、1)ストリップキャスティング法と同様にして実施する。
以上の工程を経て、(4)高温熱延板焼鈍+冷延強圧下法では、目的とする無方向性電磁鋼板が得られる。
(5)複数回冷延法
複数回冷延法では、次の通り、無方向性電磁鋼板を製造する。
まず、製鋼工程でスラブを製造する。スラブを再加熱炉で加熱した後、熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗を実施する。
次に、酸洗後の鋼板に対して、冷間圧延を実施する。
ここで、高級無方向性電磁鋼板では、通常熱間圧延、熱延板焼鈍、酸洗を行った後に、1回の冷間圧延で所望の製品厚を得る。製品厚が0.3mm以下に薄くなると、冷間圧延の圧下率は高くなり、磁気特性にとって好ましくないγファイバと呼ばれるND//<111>集合組織が発達する。
そのため、冷間圧延は、1回以上の焼鈍を挟んで2回以上実施し、最終冷延圧下率を55~75%にする。それにより、γファイバの発達を抑制でき、所望の製品特性を得ることができる。
さらに、冷間圧延は、2回以上の焼鈍を挟んで3回以上実施し、最終の冷間圧延と最終から2番目の冷間圧延の圧下率を55~75%にすることが良い。それにより、よりγファイバの発達を抑制でき、ND//<001>集合組織を発達させ、所望の製品特性を得ることができる。
冷間圧延は、リバースミルで実施してもよいし、タンデムミルで実施してもよい。
なお、冷間圧延の代わりに、脆性破断回避の観点から、材料の延性/脆性遷移温度以上の温度で、温間圧延を実施しても良い。
その後、冷延コイルの鋼板に対して、(1)ストリップキャスティング法と同様にして、仕上焼鈍を実施する。
以上の工程を経て、(5)複数回冷延法では、目的とする無方向性電磁鋼板が得られる。
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない
なお、実施例1における鋼種A1を使用した例、及び実施例2で使用した鋼種A2を使用した例は、参考例に該当する。
(実施例1)
表1に示す化学組成の鋼を溶製し、熱間圧延で2.1mm厚の熱延板を作製した。熱延板は1,050℃で30分焼鈍後、酸洗で表面スケールを除去した。その後、冷間圧延で0.25mm厚に仕上げ、1,050℃で1分仕上焼鈍した。なお、鋼D1と鋼I1は冷間圧延時に破断した。
以上の工程を経て、無方向性電磁鋼板を得た。
なお、表1中、「総計」は、Mg、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdの合計量を示す。
得られた各無方向性電磁鋼板について、次の測定を実施した。結果を表2に示す。
-{100}面強度、各方位粒の面積率-
既述の方法に従って、{100}面強度、各方位粒の面積率({100}方位粒、{411}方位粒、{111}方位粒)を測定した。
-鉄損、および磁束密度-
得られた無方向性電磁鋼板から、幅55mm、長さ55mmに切り出して測定試料を得た。
そして、測定試料の鉄損W15/50、鉄損W10/400、および磁束密度B50を測定した。各磁気特性は、圧延方向(L方向)と圧延直角方向(C方向)を単板磁気試験器で測定し、その平均値で評価した。
Figure 0007172100000001
Figure 0007172100000002
上記結果からわかるように、鋼C1、鋼G1、鋼Y1、および鋼Z1は、焼鈍後、変態を起こしたような組織が観察された。
鋼C1、鋼E1、鋼G1、鋼Y1、鋼Z1は{100}面強度が2.4未満となり、磁束密度B50が劣化した。
鋼B1、鋼H1、鋼K1、鋼M1、鋼N1、鋼O1、鋼XX1は{100}面強度2.4以上であり、磁束密度B50は高かったが、仕上焼鈍後の平均結晶粒径が50μm以下で、粗大粒と微細粒とが混在する組織となり、鉄損W15/50、W10/400が劣化した。
それに対して、鋼A1、P1~X1は、鉄損W15/50、W10/400、および磁束密度B50が共に良化した。
(実施例2)
表3に示す化学成分の溶鋼を水冷した1対のロール間で急速に冷却して1mm厚の鋳片を作製した。鋳片は酸洗で表面スケールを除去した後、冷間圧延で0.20mm厚に仕上げ、1,050℃で1分仕上げ焼鈍した。なお、鋼D2と鋼I2は冷間圧延時に破断した。
以上の工程を経て、無方向性電磁鋼板を得た。そして、実施例1と同様に、得られた無方向性電磁鋼板に対して、各種測定を実施した。その結果を表4に示す。
なお、表3中、「総計」は、Mg、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdの合計量を示す。
Figure 0007172100000003
Figure 0007172100000004
上記結果からわかるように、鋼C2、鋼G2、鋼Y2、鋼Z2は焼鈍後、変態を起こしたような組織が観察された。
鋼C2、鋼E2、鋼G2、鋼Y2、鋼Z2は、{100}面強度が2.4未満となり、磁束密度B50が劣化した。
鋼B2、鋼H2、鋼K2、鋼M2、鋼N2、鋼O2、および鋼XX2は、{100}面強度2.4以上であり、磁束密度B50は高かったが、仕上焼鈍後の平均結晶粒径が50μm以下で、粗大粒と微細粒とが混在する組織となり、鉄損W15/50、W10/400が劣化した。
それに対して、鋼A2、P2~X2は、鉄損W15/50、W10/400、および磁束密度B50が共に良化した。
(実施例3)
表5に示す化学組成の鋼Aを溶製し、熱間圧延で2.1mm厚の熱延板と1.25mm厚の熱延板を作製した。
2.1mm厚の熱延板を、条件1)1,050℃で30分、条件2)1,050℃で5分焼鈍した後、又は条件3)1.25mm厚の熱延板は1,050℃で30分焼鈍した後、酸洗で表面スケールを除去した。
その後、冷間圧延で0.25mm厚に仕上げ、1,050℃で1分仕上焼鈍した。
以上の工程を経て、無方向性電磁鋼板を製造した。なお、条件1)、条件2)、条件3)で熱延板の総鈍を施した無方向性電磁鋼板Noを、各々、A-1、A-2、A-3とした。
そして、実施例1と同様に、得られた無方向性電磁鋼板に対して、各種測定を実施した。その結果を表6に示す。
なお、表5中、「総計」は、Mg、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdの合計量を示す。
Figure 0007172100000005
Figure 0007172100000006

上記結果からわかるように、鋼A-2は{100}面強度は2.4以上であったが、仕上焼鈍後平均結晶粒径小さく、{100}方位粒、{411}方位粒以外の結晶粒も少量ながら存在しており、鉄損W15/50、W10/400、磁束密度B50が劣化した。
鋼A-3は{100}面強度が2.4未満となり、磁束密度B50が劣化した。
それに対して、鋼A-1は、鉄損W15/50、W10/400、および磁束密度B50が共に良化した。

Claims (1)

  1. 質量%で
    C:0.0030%以下、
    Si:2.50%~5.00%、
    sol.Al:0.0040%以下、
    Mn:3.0%超~5.0%、
    P:0.005%~0.200%、
    S:0.0010%~0.0100%、
    Ti:0.0005%~0.0100%、
    Ca:0.0005%~0.0100%、
    Mg、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdからなる群から選択された一種以上:総計0.0005%~0.0200%、並びに、
    残部:Fe及び不純物からなる化学組成を有し
    インバースポールフィギュアの{100}面強度が2.4以上であり、
    電子線後方散乱回折(EBSD)で測定した際の{100}方位(±10°以内)の結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率が18%以上であり、
    平均結晶粒径が55μm~200μmであり、
    板厚が0.15mm~0.30mmであり、
    前記Siの含有量(質量%)を[Si]、前記Mnの含有量(質量%)を[Mn]としたときに下記式1で表されるQが、2.00以上であり、
    前記Siの含有量(質量%)を[Si]、前記Mnの含有量(質量%)を[Mn]としたときに下記式2で表されるRが64以上であり、
    電子線後方散乱回折(EBSD)で測定した際の{411}方位(±10°以内)の結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率が70%以上であり、
    電子線後方散乱回折(EBSD)で測定した際の{111}方位(±10°以内)の結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率が25%以下である、
    無方向性電磁鋼板。
    Q=[Si]-0.5×[Mn] (式1)
    R=9.9+12.4×[Si]+6.6×[Mn] (式2)
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