JP7167815B2 - 生コークスの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の生コークスの製造方法は、キノリン不溶分が10重量%未満のピッチAと、キノリン不溶分が10~99重量%でトルエン不溶分が20~99重量%であるピッチBとの混合物を400~700℃で加熱して生コークス(以下、「本発明の生コークス」と称す場合がある。)を製造することを特徴とする。
即ち、従来の黒鉛製品では、一般に熱膨張係数と硬度に相関があり、硬度の高いものは熱膨張係数も大きく、熱膨張係数の小さいものは硬度が低い傾向があったが、本発明によれば、この熱膨張係数と硬度の相関関係を解消し、所定の熱膨張係数で様々な硬度を有する黒鉛製品、或いは所定の硬度で様々な熱膨張係数を有する黒鉛製品を提供することができる。従って、熱膨張係数を任意に制御してより高い硬度の黒鉛製品を得ることも可能となる。
かかる効果が得られる理由は次のように推定される。
即ち、キノリン不溶分とトルエン不溶分を一定の範囲に制御したピッチBとこのピッチBよりもキノリン不溶分が少なく、キノリン不溶分を殆ど含まないピッチAを混合して用いることで、ピッチコークスの結晶性を制御して熱膨張係数を任意に制御し、様々な熱膨張係数でより高い硬度を有するコークスを製造することができる。
ピッチBのキノリン不溶分が10重量%未満であるとピッチAと混合してもピッチA単独の場合と得られる黒鉛の硬度、熱膨張係数は変わらない。一方、製造上の容易さからピッチBのキノリン不溶分は99重量%以下に制限される。これらをより良好なものとする観点から、ピッチBのキノリン不溶分は30重量%以上が好ましく、40重量%以上がより好ましい。一方、ピッチBのキノリン不溶分は98重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましい。
コールタールピッチ乃至はコールタールを蒸留して得られるオイルを酸素含有ガス存在下で加熱して得られるピッチBをピッチAに混合することで、生コークス、ピッチコークスおよび黒鉛の結晶性を制御し、熱膨張係数を任意に制御し、より高い硬度を有するコークスを製造することができる。
本発明のピッチコークスの製造方法では、本発明の生コークスの製造方法により製造された本発明の生コークスを800~1700℃に加熱することにより、ピッチコークスを得る。800~1700℃での加熱は生コークス中に残留している揮発成分を揮発させ、ピッチコークスを得る工程である。この工程での加熱温度は好ましくは900~1400℃である。また、この加熱処理における雰囲気は特に制約はないが、酸素含有率が低い不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。加熱時間は、加熱温度によっても異なるが通常1~5時間程度である。
本発明の黒鉛の製造方法では、前述の製造方法により得られたピッチコークスを2000~3500℃に加熱することにより、黒鉛を得る。この際の加熱条件は、2000℃以上であることが原料由来の不純物を揮発させる観点で好ましく、この観点から加熱温度は好ましくは2200℃以上である。また、加熱温度が3500℃以下であると、黒鉛化の進行が停止した後での余剰なエネルギー消費を防ぐ観点で好ましく、この観点から加熱温度は好ましくは3000℃以下である。なお、黒鉛を製造する際には、ピッチコークスを上記温度範囲で焼成すればよいが、より好ましくは以下に説明するように、ピッチコークスと結着成分の混合物を成形したものを2000~3500℃で焼成することが好ましい。なお、この焼成は、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましく、焼成時間は通常0.5時間~60日程度とすることが好ましい。
通常の黒鉛材料製造では、主要材料であるピッチコークス自体は融着性を有しない場合があるため、バインダーピッチなどの結着成分(バインダーピッチ)を混合して成形を行うことが好ましい。この際、ピッチコークスとバインダーピッチを十分に馴染ませる目的で、通常バインダーピッチの軟化点以上で加温をしつつ、ピッチコークスとバインダーピッチを混合する。この工程は混練と呼ばれ、黒鉛成形体の密度、硬度、電気抵抗などの諸物性に大きく影響する。本発明においてもバインダーピッチを加え、混練操作を行った上で成形体とすることも可能である。なお、ここでいうバインダーピッチとしては、コールタールピッチ、即ち、前述のピッチAおよび、それを加熱改質したコールタールピッチを用いることができる。
ピッチコークスとバインダーピッチの混合比は後述の通りである。
本発明の製造方法は、特に、前記か焼後、黒鉛化する前にピッチコークスを粉砕し、バインダーピッチと混合し、加圧成形を行うことが好ましい。成形に使用するピッチコークスの粒径は特に制限されないが、成形体硬度向上の観点から、200μm以下が好ましく、より好ましくは150μm以下である。また、製造上の容易さからピッチコークスの粒径は10μm以上が好ましく、より好ましくは20μm以上である。ここで、ピッチコークスの粒径とは篩分けの際の篩の目の粗さの値である。
加圧成形の方法としては金型成形、押出成形、冷間静水等方圧加圧成形等が挙げられる。
成形体のか焼によって生成した空隙にさらにバインダーピッチを含浸させる工程をピッチ含浸という。その後、再度か焼により結着成分を焼結させるが、この含浸・再か焼を繰り返すことでより高密度化された黒鉛を得ることができる。この工程は成形体のか焼後及び黒鉛化後に行うことができるが、含浸ピッチの浸透のし易さから成形体のか焼後に行うことが望ましい。
(ピッチBの製造)
コールタールを蒸留して得られるオイル蒸留物100gを空気流通下、260℃で23時間加熱して改質し、キノリン不溶分が75重量%で、トルエン不溶分が76重量%のピッチBを得た。
上記ピッチBの製造で得たピッチB6.25gと、ピッチAとしてコールタールピッチ(キノリン不溶分:1重量%未満)18.75gを混合し、得られた混合物を、窒素雰囲気下に480℃で10時間加熱して生コークスを得た。
得られた生コークスを窒素雰囲気下に1300℃で2時間加熱してピッチコークスを得た。
金型成形により加圧成形を行った。粒径53~100μmに粉砕したピッチコークス粉1.3gとバインダーピッチ(コールタールピッチ(キノリン不溶分:15重量%未満))0.39gを混合し、その混合物1.6gをφ20mmのコイン状の金型に封入・加圧して、φ20mm×厚み約4mmのコイン型成形体を得た。得られた成形体を不活性雰囲気下、30MPa、1300℃で2時間か焼した後2800℃で0.5時間焼成して黒鉛化した。得られた黒鉛化成形体を直方体に切り出して物性評価を行った。
熱膨張係数測定はRigaku社製の熱機械分析装置(Thermo plus EVO2/TMA)にて、200℃~1000℃間の成形体の長さ方向の寸法変化から線熱膨張係数を算出した。
ショア硬度測定には今井精機社製の硬さ試験機(ショア式D型)を用いて、直方体サンプルの2面(成形時圧力をかけた面と断面)を3カ所ずつ測定し、計6カ所の平均値をサンプルのショア硬度として採用した。
実施例1のピッチBとピッチAとの混合量を、ピッチBを8.75g、ピッチAを16.25gとした以外は実施例1と同様に実施した。得られた黒鉛について実施例1と同様の評価を行った。
実施例1のピッチBとピッチAとの混合量を、ピッチBを12.5g、ピッチAを12.5gとした以外は実施例1と同様に実施した。得られた黒鉛について実施例1と同様の評価を行った。
実施例1のピッチBとピッチAの混合物の代わりに、キノリン不溶分が5重量%でトルエン不溶分が13重量%であるコールタールピッチを480℃に加熱して生コークスを得た以外は実施例1と同様に実施した。得られた黒鉛について実施例1と同様の評価を行った。
コールタールを蒸留して得られるオイル100gを空気流通下、260℃で9時間加熱して、キノリン不溶分が0.9重量%でトルエン不溶分が18重量%のピッチを得た。得られたピッチ6.25gとコールタールピッチ(キノリン不溶分:1重量%未満)18.75gを混合し、480℃に加熱して生コークスを得た以外は実施例1と同様に実施した。得られた黒鉛について実施例1と同様の評価を行った。
実施例1~3より、本発明によれば、高い硬度領域で様々な熱膨張係数を示す黒鉛製品を得られることが分かる。
Claims (4)
- キノリン不溶分が10重量%未満のピッチAと、キノリン不溶分が40重量%以上95重量%以下でトルエン不溶分が50重量%以上95重量%以下であるピッチBとの混合物を400~700℃で加熱する生コークスの製造方法であって、前記混合物は、前記ピッチAと前記ピッチBとの合計量に対し、前記ピッチBを15~60重量%含む、生コークスの製造方法。
- 前記ピッチBを、コールタールピッチ及び/又はコールタールの蒸留物を、酸素存在下で加熱して得る、請求項1に記載の生コークスの製造方法。
- 請求項1又は2に記載の生コークスの製造方法により得られた生コークスを、800~1700℃に加熱する、ピッチコークスの製造方法。
- 請求項3に記載のピッチコークスの製造方法により得られたピッチコークスを、2000~3500℃に加熱する、黒鉛の製造方法。
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