JP7167814B2 - 改質ピッチの製造方法 - Google Patents
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Description
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
本発明の改質ピッチの製造法は、コールタールを蒸留して得られる、燃焼法により測定された炭素、水素、窒素及び燃焼吸収イオンクロマト法により測定された硫黄の合計含有量が70~97重量%であるオイルを原料とし、これを酸素含有ガス存在下でトルエン不溶分が10重量%以上になるまで加熱することで改質ピッチ(以下、「本発明の改質ピッチ」と称す場合がある。)を製造することを特徴とする。
即ち、従来の黒鉛製品では、一般に熱膨張係数と硬度に相関があり、硬度の高いものは熱膨張係数も大きく、熱膨張係数の小さいものは硬度が低い傾向があったが、本発明によれば、この熱膨張係数と硬度の相関関係を解消し、所定の熱膨張係数で様々な硬度を有する黒鉛製品、或いは所定の硬度で様々な熱膨張係数を有する黒鉛製品を提供することができる。従って、熱膨張係数を任意に制御してより高い硬度の黒鉛製品を得ることも可能となる。
かかる効果が得られる理由は次のように推定される。
即ち、石炭を乾留する際に得られるコールタールを蒸留して得られるコールタール蒸留物であるオイルを空気もしくは酸素含有ガスの存在下で加熱することにより酸化脱水素反応による重質化反応が起き、改質ピッチが得られるが、この改質処理において、炭素、水素、窒素及び硫黄の合計含有量が一定の範囲のオイルを酸素ガス存在下で加熱し、トルエン不溶分を所定値以上とすることで、ピッチコークスの結晶性を制御し、一定の熱膨張係数が一定かつ、様々な硬度を有するか焼コークス及び黒鉛を製造することができる。
また、炭素、水素、窒素及び硫黄の合計含有量が上記範囲内の原料オイルを得るには、石炭を乾留する際に得られるコールタールを常法に従って蒸留する際に、150~220℃で蒸留すればよい。
なお、トルエン不溶分は、粉砕した改質ピッチを、溶剤トルエンと共に混合し、不溶分重量を測定するJIS K 2425の方法に基づいて求められる。
本発明の改質ピッチを400~700℃に加熱した後、800~1700℃に加熱することにより、か焼コークスを得ることができる。
本発明において、前述の製造方法により得られたか焼コークスを2000~3500℃に加熱することにより、黒鉛を得ることができる。この際の加熱条件は、2000℃以上であることが原料由来の不純物を揮発させる観点で好ましく、この観点から加熱温度は好ましくは2200℃以上である。また、加熱温度が3500℃以下であると、黒鉛化の進行が停止した後での余剰なエネルギー消費を防ぐ観点で好ましく、この観点から加熱温度は好ましくは3000℃以下である。なお、黒鉛を製造する際には、か焼コークスを上記温度範囲で焼成すればよいが、より好ましくは以下に説明するように、か焼コークスと結着成分の混合物を成形したものを2000~3500℃で焼成することが好ましい。なお、この焼成は、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましく、焼成時間は通常0.5時間~60日程度とすることが好ましい。
通常の黒鉛材料製造では、主要材料であるか焼コークス自体は融着性を有しない場合があるため、バインダーピッチなどの結着成分(バインダーピッチ)を混合して成形を行うことが好ましい。この際、か焼コークスとバインダーピッチを十分に馴染ませる目的で、通常バインダーピッチの軟化点以上で加温をしつつ、か焼コークスとバインダーピッチを混合する。この工程は混練と呼ばれ、黒鉛成形体の密度、硬度、電気抵抗などの諸物性に大きく影響する。本発明においてもバインダーピッチを加え、混練操作を行った上で成形体とすることも可能である。なお、ここでいうバインダーピッチとしては、コールタールピッチおよび、それを加熱改質したコールタールピッチを用いることができる。
か焼コークスとバインダーピッチの混合比は後述の通りである。
本発明の製造方法は、特に、前記か焼後、黒鉛化する前にか焼コークスを粉砕し、バインダーピッチと混合し、加圧成形を行うことが好ましい。成形に使用するか焼コークスの粒径は特に制限されないが、成形体硬度向上の観点から、200μm以下が好ましく、より好ましくは150μm以下である。また、製造上の容易さからか焼コークスの粒径は10μm以上が好ましく、より好ましくは20μm以上である。ここで、か焼コークスの粒径とは篩分けの際の篩の目の粗さの値である。
加圧成形の方法としては金型成形、押出成形、冷間静水等方圧加圧成形等が挙げられる。
成形体のか焼によって生成した空隙にさらにバインダーピッチを含浸させる工程をピッチ含浸という。その後、再度か焼により結着成分を焼結させるが、この含浸・再か焼を繰り返すことでより高密度化された黒鉛を得ることができる。この工程は成形体のか焼後及び黒鉛化後に行うことができるが、含浸ピッチの浸透のし易さから成形体のか焼後に行うことが望ましい。
(改質ピッチの製造)
炭素、水素、窒素及び硫黄の合計含有量が74重量%である、コールタールを蒸留して得られたオイル100gを、空気流通下、260℃で8時間(改質時間)加熱して改質し、トルエン不溶分が29重量%の改質ピッチを得た。
改質ピッチ20gを窒素ガス雰囲気下で、480℃にて10時間加熱して生コークスを得た。
得られた生コークスを窒素ガス雰囲気下、1300℃にて2時間加熱してか焼コークスを得た。
金型成形により加圧成形を行った。
粒径53~100μmに粉砕したか焼コークス粉1.3gとバインダーピッチ(コールタールピッチ)0.39gを混合し、その混合物1.6gをφ20mmのコイン状の金型に封入・加圧して、φ20mm×厚み約4mmのコイン型成形体を得た。得られた成形体を不活性雰囲気下、30MPa、1300℃で2時間か焼した後、2800℃で0.5時間焼成して黒鉛化した。
得られた黒鉛化成形体を直方体に切り出して物性評価を行った。
熱膨張係数測定はRigaku社製の熱機械分析装置(Thermo plus EVO2/TMA)にて、200℃~1000℃間の成形体の長さ方向の寸法変化から線熱膨張係数を算出した。
ショア硬度測定には今井精機社製の硬さ試験機(ショア式D型)を用いて、直方体サンプルの2面(成形時圧力をかけた面と断面)を3カ所ずつ測定し、計6カ所の平均値をサンプルのショア硬度として採用した。
実施例1の改質時間を23時間としてトルエン不溶分が76重量%の改質ピッチを得たこと以外は実施例1と同様に実施した。得られた黒鉛について実施例1と同様の評価を行った。
炭素、水素、窒素及び硫黄の合計含有量が74重量%である、コールタールを蒸留して得られたオイル100gを8体積%酸素/窒素混合ガス流通下、260℃で23時間加熱して改質し、トルエン不溶分が40重量%の改質ピッチを得たこと以外は実施例1と同様に実施した。得られた黒鉛について実施例1と同様の評価を行った。
実施例1の改質ピッチの代わりに、炭素、水素、窒素、及び硫黄の合計含有量が98重量%以上で、トルエン不溶分が13重量%のコールタールピッチを用いた以外は実施例1と同様に実施した。得られた黒鉛について実施例1と同様の評価を行った。
炭素、水素、窒素及び硫黄の合計含有量が74重量%である、コールタールを蒸留して得られるオイル100gを窒素ガス封入下、450℃で3時間加熱して改質し、トルエン不溶分59重量%の改質ピッチを得たこと以外は実施例1と同様に実施した。得られた黒鉛について実施例1と同様の評価を行った。
このように、本発明の改質ピッチを原料とした黒鉛は、コールタールピッチを原料とした黒鉛と比較して熱膨張係数は同程度でも高硬度の黒鉛となる。また、酸素が存在しない条件で改質した改質ピッチを原料とした黒鉛よりも高硬度かつ低熱膨張の黒鉛となる。
Claims (4)
- コールタールを蒸留して得られる、燃焼法により測定された炭素、水素、窒素及び燃焼吸収イオンクロマト法により測定された硫黄の合計含有量が70~90重量%であるオイルを原料とし、これを酸素含有ガス存在下でトルエン不溶分が10重量%以上になるまで加熱する、改質ピッチの製造方法。
- 前記加熱を150~350℃で5~40時間行う、請求項1に記載の改質ピッチの製造方法。
- 請求項1又は2に記載の改質ピッチの製造方法により得られた改質ピッチを400~700℃に加熱した後、800~1700℃に加熱する、か焼コークスの製造方法。
- 請求項3に記載のか焼コークスの製造方法により得られたか焼コークスを2000~3500℃に加熱する、黒鉛の製造方法。
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