JP7167795B2 - AlP化合物の微細化方法及びアルミニウム合金鋳物 - Google Patents

AlP化合物の微細化方法及びアルミニウム合金鋳物 Download PDF

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Description

本発明は、アルミニウム中のAlP化合物を微細化する方法及びAlP化合物が微細化されたアルミニウム合金鋳物に関するものである。
P(リン)はアルミニウムに含まれる代表的な不可避不純物であり、特にAl-Si系合金に混入されることが多い。ここで、Al-Si系合金に不純物としてPが混入する主な原因としては、金属Siに起因する経路と、過共晶Al-Si系合金のスクラップに起因する経路が存在する。
具体的には、Pは金属Siに不可避不純物として混入している場合が多く、当該金属Siを原料とする場合、Siを含有するアルミニウム合金にはPが混入してしまう。また、Pは初晶Siを微細化する作用があるため、初晶Siが晶出しやすい過共晶Al-Si系合金等に添加されることが多いが、当該過共晶Al-Si系合金等のスクラップを原料とする場合もPが混入することになる。
溶湯中にPが存在する場合はAlP化合物が生成し、AlP化合物は初晶Siの有効な異質核として働くことから、初晶Siが微細化される。アルミニウム合金の組織微細化や延性及び靭性を確保する観点から、AlP化合物の粗大化を避けることが望まれるが、AlP化合物を微細化する適当な方法は提案されておらず、基本的にはPの含有量を低下させることでAl-Si系合金の強度及び信頼性を担保する方法が検討されている。
例えば、特許文献1(特開2002-80920号公報)では、溶湯温度650~850℃でP及び/又はSbを含有するアルミニウム溶湯にMgを添加し、且つ塩素ガスを吹き込み、溶湯中のP及び/又はSbを除去することを特徴とするアルミニウム溶湯からの脱P及び/又は脱Sb方法、が提案されている。
上記特許文献1に開示されている脱P方法においては、アルミニウム溶湯にMgを添加することで、溶湯中のPとMgが反応してP化Mg化合物を形成し、且つ塩素ガスを吹き込むことで、溶湯中のMgが塩素ガスと反応してMgClを形成し、溶湯中のP化Mg化合物を吸収してドロスとなって除去されることから、溶湯中のP量を低下させることができる、としている。
特開2002-80920号公報
しかしながら、塩素は極めて強い毒性を有し、毒物及び劇物取締法によって劇物に指定されていることに加えて、オゾン層ホールの原因物質としても指摘を受けている。そのため、塩素の取り扱いには十分な注意が必要となり、塩素を使用する場合は当該塩素を処理するための設備が別途必要となる。更に、塩素は高い腐食性を有しており、使用設備の腐食や塩素の漏出も深刻な問題となっている。
また、上述の通り、Pは初晶Siを微細化する作用を有しており、AlP化合物を十分に微細化することができれば、Pを除去することなくアルミニウム合金に良好な機械的性質を付与することができると考えられる。また、同時に共晶組織も微細化することができれば、更なる強度の向上が期待できる。
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、アルミニウム中のAlP化合物を微細化する簡便かつ効率的な方法、及びAlP化合物と共晶組織が共に微細化されたアルミニウム合金鋳物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、アルミニウム溶湯処理方法について鋭意研究を重ねた結果、酸素を含む雰囲気下においてアルミニウム溶湯を一定温度以上に加熱すること等が極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。なお、「アルミニウム」には、アルミニウム及び各種アルミニウム合金が含まれる。
即ち、本発明は、酸素を含む雰囲気でアルミニウムの溶湯温度をAlP化合物の晶出温度以上とすること、を特徴とするAlP化合物の微細化方法を提供する。不活性ガス雰囲気、減圧及び真空雰囲気でアルミニウムの溶湯温度をAlP化合物の晶出温度以上とするとPが除去されるが、本発明のAlP化合物の微細化方法ではアルミニウム溶湯の表面が酸化被膜で被覆されることから、Pは当該酸化被膜にトラップされ、気体となって溶湯から除去されずに溶湯内に留まることとなる。ここで、溶湯温度を1250℃以下とすることで、溶湯処理に必要な消費エネルギーや高温に伴う設備の劣化を抑制することができる。
一般的に、アルミニウムを実操業として鋳造する場合、アルミニウムの溶湯を700~800℃の温度域に保持し、脱ガス、滓取、成分調整等の炉内処理を行った後、所定形状の金型に注湯する。これに対し、本発明のAlP化合物の微細化方法においては、アルミニウム溶湯をAlP化合物の晶出温度以上となる高温に加熱・保持することにより、溶解したAlP化合物が、再凝固する際に溶解前と比較して小さくなるものと考えられる。
また、本発明のAlP化合物の微細化方法においては、AlP化合物が微細化されるだけではなく、微細化したAlP化合物は共晶Siの凝固核としての作用が減少することから、共晶組織も微細化される。
ここで、本発明のAlP化合物の微細化方法の効果は、当該処理の後に溶湯が高温に長時間保持されても持続し、例えば、750℃に60分間保持しても、最終的に得られるアルミニウム合金鋳物のAlP化合物は微細化される。
本発明のAlP化合物の微細化方法においては、AlP化合物の晶出温度以上に5~60分間保持すること、が好ましい。アルミニウム溶湯をAlP化合物の晶出温度以上の高温に保持する時間を5分以上とすることで、AlP化合物が十分に溶解し、確実に微細化することができる。一方で、当該保持時間が60分以下であれば、AlP化合物の微細化効果が失われることがないことに加え、エネルギー消費量の増加や溶解炉等の設備の劣化を抑制することができる。
更に、本発明のAlP化合物の微細化方法においては、前記アルミニウムがAl-Si系合金であること、が好ましい。Al-Si系合金ではPの含有量が多い過共晶Al-Si系合金等のスクラップが原料となる場合があるが、原料のP含有量が多い場合であっても、本発明のAlP化合物の微細化方法を用いることで、アルミニウム合金に良好な強度と信頼性を付与することができる。
また、本発明は、
初晶α(Al)相が晶出し、
Pの含有量が15ppm以下であり、
AlP粒子の平均粒径が4μm以下であること、
を特徴とするアルミニウム合金鋳物、も提供する。
本発明のアルミニウム合金鋳物ではPの含有量が15ppm以下となっており、Pの含有量が極めて少ないことに加えてAlP粒子(AlP化合物)が微細化されており、共晶Siの微細化が促進されている。共晶Siの平均粒径(円相当径)は10μm以下となっていることが好ましい。ここで、AlP粒子はSiの異質核として作用し、AlP粒子が多い場合は過冷却せずに共晶凝固が生じることになる。当該一般的な凝固の場合は共晶Siが粗大になるが、本発明のアルミニウム合金鋳物ではPの含有量が低減されていることから、AlP粒子が少なくなると共に、AlP粒子が溶解することから、あらためて晶出する際にAlP粒子が微細(平均粒径が4μm以下)となり、過冷却によって共晶Siが微細化している。
また、本発明のアルミニウム合金鋳物においては、Siの含有量が5~30質量%であること、が好ましい。Siの含有量を5質量%以上とすることで、アルミニウム合金鋳物を製造する際のアルミニウム合金溶湯の流動性及び鋳型充填性を担保することができると共に、アルミニウム合金鋳物の強度及び耐摩耗性等を向上させることができる。一方で、Siの含有量を30質量%以下とすることで、Si添加の原料に起因するPの混入を低減することができる。なお、より好ましいSiの含有量は5~15質量%である。
また、本発明のアルミニウム合金鋳物においては、再溶解・凝固熱処理の後においても前記AlP粒子の平均粒径が4μm以上とならないこと、が好ましい。「溶解したAlP粒子が凝固時に微細に晶出し、これによって共晶Si粗大化の原因となる低過冷度で異質核として作用するサイズのAlP粒子が減少する。」という機構であれば、再溶解・鋳造を複数回繰り返すことによってAlP粒子が粗大化する懸念が存在するが、本発明のアルミニウム合金鋳物においては、再溶解・凝固熱処理の後においてもAlP粒子の粗大化が抑制される。ここで、本発明のアルミニウム合金鋳物においては、再溶解・凝固熱処理を2回以上繰り返した後においてもAlP粒子の平均粒径が4μm以上とならないこと、が好ましい。
更に、本発明のアルミニウム合金鋳物においては、前記共晶Siの層間隔が7μm以下であること、が好ましい。共晶Siの層間隔を7μm以下とすることで、アルミニウム合金鋳物に高い強度を付与することができる。ここで、前記再溶解・凝固熱処理の後においても共晶Siの層間隔が7μm以下であることが好ましく、前記再溶解・凝固熱処理を2回以上繰り返した後においても共晶Siの層間隔が7μm以下となることがより好ましい。
本発明によれば、アルミニウム中のAlP化合物を微細化する簡便かつ効率的な方法、及びAlP化合物と共晶組織が共に微細化されたアルミニウム合金鋳物を提供することができる。
実施アルミニウム合金鋳物1のミクロ組織写真である。 実施アルミニウム合金鋳物2のミクロ組織写真である。 実施アルミニウム合金鋳物3のミクロ組織写真である。 比較アルミニウム合金鋳物1のミクロ組織写真である。 比較アルミニウム合金鋳物2のミクロ組織写真である。 比較アルミニウム合金鋳物3のミクロ組織写真である。 AlP化合物の粒径分布を示すグラフである。 実施アルミニウム合金鋳物4(保持時間10分)のミクロ組織写真である。 実施アルミニウム合金鋳物4(保持時間30分)のミクロ組織写真である。 実施アルミニウム合金鋳物4(保持時間60分)のミクロ組織写真である。 実施例4において、AlP化合物の微細化処理を施さない場合のミクロ組織写真である。 実施アルミニウム合金鋳物5(保持時間20分)のミクロ組織写真である。 実施アルミニウム合金鋳物5(保持時間60分)のミクロ組織写真である。 実施アルミニウム合金鋳物5(保持時間120分)のミクロ組織写真である。 実施アルミニウム合金鋳物5(保持時間180分)のミクロ組織写真である。 実施アルミニウム合金鋳物5(保持時間なし)のミクロ組織写真である。 実施例6において、AlP化合物の微細化処理を施さない場合(条件1)のミクロ組織写真である。 実施アルミニウム合金鋳物6(条件2)のミクロ組織写真である。 実施アルミニウム合金鋳物6(条件3)のミクロ組織写真である。 実施アルミニウム合金鋳物6(条件4)のミクロ組織写真である。 実施アルミニウム合金鋳物6(条件5)のミクロ組織写真である。 アルミニウム合金鋳物の共晶組織の層間隔を示すグラフである。
以下、本発明のAlP化合物の微細化方法及びアルミニウム合金鋳物について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
1.AlP化合物の微細化方法
本発明のAlP化合物の微細化方法は、酸素を含む雰囲気でアルミニウムの溶湯温度をAlP化合物の晶出温度以上とすることを特徴とする、極めて簡便かつ効率的なAlP化合物の微細化方法である。溶湯表面に酸化被膜を形成することでPが系外に放出されることを抑制すると共に、再凝固過程において、溶解したAlP化合物を溶解前と比較して小さくすることができる。
溶湯の表面に適当な酸化被膜が形成される限りにおいて、酸素を含む雰囲気は特に限定されず、例えば、大気中で処理を施してもよく、酸素と不活性ガスとの混合ガス雰囲気等としてもよい。また、アルミニウム溶湯の加熱手段も本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の加熱方法を用いることができる。
また、AlP化合物の晶出温度以上とした溶湯温度での保持時間は、5~60分間とすることが好ましい。保持時間を5分以上とすることで、AlP化合物を十分に微細化することができる。一方で、当該保持時間が60分以下であれば、AlP化合物の微細化効果が失われることがないことに加え、エネルギー消費や溶解炉の損傷を抑制することができる。
また、本発明のAlP化合物の微細化方法は、AlP化合物を微細化するだけでなく、鋳造を経て最終的に得られるアルミニウム合金鋳物の共晶Siを微細化する効果も有している。共晶Siの異質核として作用するAlP化合物は、ある程度以上のサイズのものであるが、本発明ではAlP化合物が微細化されるため、AlP化合物が存在していたとしても共晶Siの異質核として作用せず、過冷却する。これが共晶Siを粗大化させないことの原因であると考えられる。
また、アルミニウムはAl-Si系合金であること、が好ましい。Al-Si系合金ではPの含有量が多い過共晶Al-Si系合金等のスクラップが原料となる場合があるが、原料のP含有量が多い場合であっても本発明のAlP化合物の微細化方法を用いることで、アルミニウム合金鋳物に良好な強度と信頼性を付与することができる。
Al-Si系合金の種類は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々のAl-Si系合金を用いることができるが、Siの含有量を5~30質量%とすることが好ましい。Siの含有量を5質量%以上とすることで、Al-Si系合金鋳物を製造する際のAl-Si系合金溶湯の流動性及び鋳型充填性を担保することができると共に、Al-Si系合金鋳物の強度及び耐摩耗性等を向上させることができる。一方で、Siの含有量を30質量%以下とすることで、Si添加の原料に起因する過剰なPの混入を低減することができる。
また、アルミニウム溶湯中のPの含有量は15ppm以下とすることが好ましい。Pの含有量を15ppm以下とすることで、共晶Siを十分に微細化することができ、アルミニウム合金に高い強度を付与することができる。ここで、アルミニウム溶湯中のより好ましいPの含有量は8ppm以下であり、最も好ましいPの含有量は5ppm以下である。Pの含有量をより低減することで、アルミニウム合金鋳物の共晶Siをより顕著に微細化することができる。
2.アルミニウム合金鋳物
本発明のアルミニウム合金鋳物は、初晶α(Al)相が晶出し、Pの含有量が15ppm以下であり、AlP粒子の平均粒径が4μm以下であること、を特徴とするアルミニウム合金鋳物である。共晶Siの平均粒径(円相当径)は10μm以下であることが好ましい。
ここで、円相当径とは、金属組織を顕微鏡観察した際に求まる共晶Siの占める面積を円相当の面積に換算したときの直径である。具体的には、顕微鏡写真を画像処理等して容易に求めることができる。共晶Siの領域とその他の領域とは顕微鏡写真上で明瞭にコントラストが異なるため、二値化処理したのち、各種画像計測処理を行う。また、平均粒径としては、例えば、一定視野内(測定面積:1.3mm、測定視野数:3)の円相当径の平均値を用いることができる。
AlとPの化合物であるAlPの格子定数は、Siの格子定数と約0.4%しか違わず、多面体Siの核生成物質であるとされている。当該特性を利用して、Pは過共晶Al-Si合金の初晶微細化剤として工業的に使用される場合があるが、一方で、共晶Siの微細化を阻害することが知られている。
これに対し、本発明のアルミニウム合金鋳物ではPの含有量が15ppm以下に抑えられており、共晶Siの平均粒径(円相当径)が10μm以下となっている。ここで、共晶Siを微細化する観点から、Pの含有量は8ppm以下とすることが好ましく、5ppm以下とすることがより好ましい。
また、AlP粒子は、再溶解・凝固熱処理の後においても平均粒径が4μm以上とならないことが好ましく、再溶解・凝固熱処理を2回以上繰り返した後においても4μm以上とならないことがより好ましい。再溶解・凝固熱処理によってAlP粒子が粗大化しないことで、工業的に安定して用いることができる。
AlP粒子の直径の測定方法は特に限定されず、従来公知の種々の方法によって測定することができるが、例えば、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いた元素マッピングの結果でAlP粒子の領域を特定することで、好適にAlP粒子の直径を測定することができる。なお、EPMAでは波長分散型分光器を用いるため、エネルギー分散型分光器を使用する場合と比較して、より高い精度での分析が可能である。
また、本発明のアルミニウム合金鋳物においては、Siの含有量が5~30質量%であること、が好ましい。Siの含有量を5質量%以上とすることで、アルミニウム合金鋳物を製造する際のアルミニウム合金溶湯の流動性及び鋳型充填性を担保することができると共に、アルミニウム合金鋳物の強度及び耐摩耗性等を向上させることができる。一方で、Siの含有量を30質量%以下とすることで、Si添加の原料に起因するPの混入を低減することができる。
一般的に、Al-Si系合金が亜共晶組成を有する場合はAl-Si系合金鋳物は初晶α(Al)と共晶からなる組織を有し、Al-Si系合金が共晶組成を有する場合は共晶組織、Al-Si系合金が過共晶組成を有する場合は初晶Siと共晶からなる組織となる。しかしながら、本発明のAl-Si系合金鋳物においては、亜共晶組成を有さない場合であっても、初晶α(Al)と共晶からなる組織を有することが好ましい。
本発明のアルミニウム合金鋳物では共晶温度が低下しており、例えば、Al-Si系合金が略共晶組成を有している場合であっても、カップルドゾーン(協調成長領域)の存在によって、初晶α(Al)と共晶からなる組織が形成されることになる。
本発明のアルミニウム合金鋳物においては、共晶Siの層間隔が7μm以下であることが好ましく、再溶解・凝固熱処理を2回以上繰り返した後においても共晶Siの層間隔が7μm以下となることがより好ましい。再溶解・凝固熱処理によって共晶Siの層間隔が粗大化しないことで、工業的に安定して用いることができる。
共晶Siの層間隔の測定方法は特に限定されず、従来公知の種々の方法によって測定することができるが、例えば、「軽金属学会鋳造・凝固部会:軽金属,38(1988)54-60」に記載されているデンドライトアームスペーシング測定手順の交点法を用いて測定することができる。
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
≪実施例1≫
純度99.9質量%のアルミニウム地金、Al-25%Si合金地金及びロッドタイプのAl-19質量%Cu-1.4質量%P合金を配合し、黒鉛坩堝に挿入して740℃で大気溶解した後、740℃で回転式脱ガス装置による脱ガス処理を施した。次に、740℃の溶湯を重力鋳造法により舟型形状(JIS H 5202)に鋳造した。なお、鋳型温度は150℃とした。得られた非微細化処理金型鋳物の組成及び当該組成におけるAlP化合物の晶出温度を表1に示す。なお、組成は質量%で示している。
Figure 0007167795000001
次に、大気中で残湯を1000℃まで昇温して10分間保持(AlP化合物の微細化処理)した後に、1000℃の溶湯を150℃の舟型に鋳込んだ。次に、得られた金型鋳物を再溶解し、740℃の溶湯を150℃の舟型に鋳込んで実施アルミニウム合金鋳物1を得た。
得られた実施アルミニウム合金鋳物1の底面から13mmの位置を中心として、1cm角の立方体を切り出し、断面にバフ研磨を施して組織観察用試料とした。光学顕微鏡で観察されたミクロ組織を図1に示す。
≪実施例2≫
非微細化処理金型鋳物の組成を表1の実施例2として記載の値としたこと以外は実施例1と同様にして、実施アルミニウム合金鋳物2を得た。実施例1と同様にして観察された実施アルミニウム合金鋳物2のミクロ組織写真を図2に示す。
≪実施例3≫
非微細化処理金型鋳物の組成を表1の実施例3として記載の値としたこと以外は実施例1と同様にして、実施アルミニウム合金鋳物3を得た。実施例1と同様にして観察された実施アルミニウム合金鋳物3のミクロ組織写真を図3に示す。
≪比較例1≫
非微細化処理金型鋳物の組成を表1の比較例1として記載の値とし、AlP化合物の微細化処理(大気中で残湯を1000℃まで昇温して10分間保持)を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較アルミニウム合金鋳物1を得た。実施例1と同様にして観察された比較アルミニウム合金鋳物1のミクロ組織写真を図4に示す。
≪比較例2≫
非微細化処理金型鋳物の組成を表1の比較例2として記載の値とし、AlP化合物の微細化処理(大気中で残湯を1000℃まで昇温して10分間保持)を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較アルミニウム合金鋳物2を得た。実施例1と同様にして観察された比較アルミニウム合金鋳物2のミクロ組織写真を図5に示す。
≪比較例3≫
非微細化処理金型鋳物の組成を表1の比較例3として記載の値とし、AlP化合物の微細化処理(大気中で残湯を1000℃まで昇温して10分間保持)を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較アルミニウム合金鋳物3を得た。実施例1と同様にして観察された比較アルミニウム合金鋳物3のミクロ組織写真を図6に示す。
実施例1~3及び比較例1~3のアルミニウム合金の組成に関して、実施例1及び比較例1は亜共晶組成、実施例2及び比較例2は共晶組成、実施例3及び比較例3は過共晶組成となっている。ここで、図1~図6に示す組織を比較すると、実施例で得られたアルミニウム合金鋳物では組成に依らず粗大なAlP化合物は認められず、共晶組織が明瞭に微細化されていることが確認できる。
AlP化合物の粒径分布を確認するために、実施アルミニウム合金鋳物1~3の組織観察用試料について、EPMA(株式会社島津製作所EPMA-1610を用いて加速電圧15kV,照射電流100mA,ビーム径φ1μm)を用いてPの元素マッピングを施し、Pの分布からAlP化合物の領域を特定して当該AlP化合物の粒径を測定した。実施アルミニウム合金鋳物1~3のAlP化合物を累積した結果を図7に示す。また、比較として、比較アルミニウム合金鋳物1~3のAlP化合物を累積した結果も図7に示す。
AlP化合物の微細化処理を施していない比較アルミニウム合金鋳物1~3では粒径が5~6μmのAlP化合物が多数存在しているのに対し、AlP化合物の微細化処理を施した実施アルミニウム合金鋳物1~3では4μm以上の粒径を有するAlP化合物が存在しないことが分かる。なお、比較アルミニウム合金鋳物1のAlP化合物の平均粒径は6μm、実施アルミニウム合金鋳物1のAlP化合物の平均粒径は大きくても4μm以下であった。
≪実施例4≫
AlP化合物の微細化処理(大気中で残湯を1000℃まで昇温して10分間保持)から連続して溶湯の温度を750℃とし、溶湯温度が750℃の状態で10~60分間保持したこと以外は実施例1と同様にして、実施アルミニウム合金鋳物4を得た。750℃での保持時間が10分間、30分間及び60分間の場合の実施アルミニウム合金鋳物4のミクロ組織写真を図8、図9及び図10にそれぞれ示す。また、比較として、AlP化合物の微細化処理を施さず、740℃の溶湯を重力鋳造法により舟型形状(JIS H 5202)に鋳造して得られたアルミニウム合金鋳物のミクロ組織写真を図11に示す。
図8~図10と図11の比較から、保持温度が750℃の場合、60分間保持し続けても、当該保持がない場合に比べて初晶α(Al)相が多く晶出しており、共晶組織は微細となっている。当該結果から、再溶解後に溶湯を750℃程度に保っておけば、60分後に鋳込んでもAlP化合物の微細化処理の効果が持続することが分かる。
≪実施例5≫
AlP化合物の微細化処理(大気中で残湯を1000℃まで昇温して10分間保持)から連続して溶湯の温度を620℃とし、溶湯温度が620℃の状態で20~180分間保持したこと以外は実施例2と同様にして、実施アルミニウム合金鋳物5を得た。620℃での保持時間が20分間、60分間、120分間及び180分間の場合の実施アルミニウム合金鋳物5のミクロ組織写真を図12、図13、図14及び図15にそれぞれ示す。また、比較として、620℃での保持時間を設けず、溶湯を重力鋳造法により舟型形状(JIS H 5202)に鋳造して得られたアルミニウム合金鋳物のミクロ組織写真を図16に示す。
図12~図15と図16の比較から、保持温度が620℃の場合であっても、当該保持温度での保持時間に依らずAlP化合物の微細化処理の効果が持続することが分かる。
≪実施例6≫
再溶解・鋳造を繰り返すことによるAlP化合物のサイズ変化を確認するために、表1の実施例2として記載の組成を有する非微細化処理金型鋳物について検討を行った。具体的には、表2に示す熱履歴(条件1~条件5)を施したこと以外は実施例1と同様にして、実施アルミニウム合金鋳物6を得た。
Figure 0007167795000002
条件1~条件5の各条件で得られたアルミニウム合金鋳物のミクロ組織写真を図17~21にそれぞれ示す。なお、条件1はAlP化合物の微細化処理を施さない場合、条件2はAlP化合物の微細化処理を施した後に再溶融・凝固を1回施した場合、条件3はAlP化合物の微細化処理を施した後に再溶融・凝固を2回施した場合、条件4はAlP化合物の微細化処理を施した後に再溶融・凝固を3回施した場合、条件5はAlP化合物の微細化処理を施した後に再溶融・凝固を4回施した場合となる。また、各アルミニウム合金鋳物の共晶組織の層間隔を図22に示す。ここで、共晶組織の層間隔はデンドライトアームスペーシング測定手順の交点法と同様の方法で測定した。
AlP化合物の微細化処理を施さない場合(条件1)は、共晶組織の層間隔が12μm以上であるのに対し、AlP化合物の微細化処理を施すことで当該層間隔が半分程度になっている。また、再溶解・鋳造の回数を増加させても当該層間隔に変化は認められず、少なくとも4回の再溶解・鋳造においてはAlP化合物の微細化処理の効果が持続することが分かる。

Claims (6)

  1. 酸素を含む雰囲気でアルミニウムの溶湯温度をAlP化合物の晶出温度以上とすること、
    を特徴とするAlP化合物の微細化方法。
  2. 前記溶湯温度での保持時間を5~60分とすること、
    を特徴とする請求項1に記載のAlP化合物の微細化方法。
  3. 前記アルミニウムがAl-Si系合金であること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載のAlP化合物の微細化方法。
  4. 初晶α(Al)相が晶出し、
    Pの含有量が15ppm以下であり、
    AlP粒子の平均粒径が4μm以下であること、
    を特徴とするアルミニウム合金鋳物。
  5. Siの含有量が5~30質量%であること、
    を特徴とする請求項4に記載のアルミニウム合金鋳物。
  6. 晶Siの層間隔が7μm以下であること、
    を特徴とする請求項4又は5に記載のアルミニウム合金鋳物。
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