JP2021042404A - Al−Si合金鋳物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】不純物として含まれるPを無害化及び/又は除去したAl−Si合金鋳物、及び有害な塩素ガスを使用することなくAl−Si合金鋳物中のPを無害化及び/又は除去する効率的かつ簡便なAl−Si合金鋳物の製造方法を提供する。【解決手段】0.0005〜0.0020質量%の炭素化合物を含有し、炭素化合物の表面にAlP化合物が付着していること、を特徴とするAl−Si合金鋳物。炭素化合物はAl4C3であることが好ましい。【選択図】なし
Description
本発明は、不純物であるPの影響が小さいAl−Si合金鋳物及び当該Al−Si合金鋳物の効率的な製造方法に関するものである。
P(リン)はアルミニウムに含まれる代表的な不可避不純物であり、特にAl−Si系合金に混入されることが多い。ここで、Al−Si系合金に不純物としてPが混入する主な原因としては、金属Siに起因する経路と、過共晶Al−Si系合金のスクラップに起因する経路が存在する。
具体的には、Pは金属Siに不可避不純物として混入している場合が多く、当該金属Siを原料とする場合、Siを含有するアルミニウム合金にはPが混入してしまう。また、Pは初晶Siを微細化する作用があるため、初晶Siが晶出しやすい過共晶Al−Si系合金等に添加されることが多いが、当該過共晶Al−Si系合金等のスクラップを原料とする場合もPが混入することになる。
溶湯中にPが存在する場合はAlP化合物が生成し、AlP化合物は初晶Siの有効な異質核として働くことから、初晶Siが微細化される。アルミニウム合金の組織微細化や延性及び靭性を確保する観点から、AlP化合物の粗大化を避けることが望まれるが、AlP化合物を微細化する適当な方法や無害化する適当な方法は提案されておらず、基本的にはPの含有量を低下させることでAl−Si系合金の強度及び信頼性を担保する方法が検討されている。
例えば、特許文献1(特開2002−80920号公報)では、溶湯温度650〜850℃でP及び/又はSbを含有するアルミニウム溶湯にMgを添加し、且つ塩素ガスを吹き込み、溶湯中のP及び/又はSbを除去することを特徴とするアルミニウム溶湯からの脱P及び/又は脱Sb方法、が提案されている。
上記特許文献1に開示されている脱P方法においては、アルミニウム溶湯にMgを添加することで、溶湯中のPとMgが反応してP化Mg化合物を形成し、且つ塩素ガスを吹き込むことで、溶湯中のMgが塩素ガスと反応してMgClを形成し、溶湯中のP化Mg化合物を吸収してドロスとなって除去されることから、溶湯中のP量を低下させることができる、としている。
しかしながら、塩素は極めて強い毒性を有し、毒物及び劇物取締法によって劇物に指定されていることに加えて、オゾン層ホールの原因物質としても指摘を受けている。そのため、塩素の取り扱いには十分な注意が必要となり、塩素を使用する場合は当該塩素を処理するための設備が別途必要となる。更に、塩素は高い腐食性を有しており、使用設備の腐食や塩素の漏出も深刻な問題となっている。
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、不純物として含まれるPを無害化及び/又は除去したAl−Si合金鋳物、及び有害な塩素ガスを使用することなくAl−Si合金鋳物中のPを無害化及び/又は除去する効率的かつ簡便なAl−Si合金鋳物の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、Al−Si合金鋳物中のPを無害化及び/又は除去する方法について鋭意研究を重ねた結果、適量の炭素化合物にPを付着させること等が極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、0.0005〜0.0020質量%の炭素化合物を含有し、前記炭素化合物の表面にAlP化合物が付着していること、を特徴とするAl−Si合金鋳物、を提供する。
本発明のAl−Si合金鋳物においては、不純物として含まれるPが炭素化合物の表面にAlP化合物として付着していることから、当該AlP化合物はAl−Si合金鋳物の強度及び信頼性に対して殆ど影響を及ぼさない。即ち、Al−Si合金鋳物中のPが無害化されている。ここで、炭素化合物を0.0005質量%以上とすることでAlP化合物の付着によるPの無害化効果を得ることができ、0.0020質量%以下とすることで炭素化合物によるAl−Si合金鋳物の機械的性質の低下を抑制することができる。
また、本発明のAl−Si合金鋳物においては、前記炭素化合物がAl4C3であること、が好ましい。Al4C3は炭素を含むAl−Si合金鋳物において一般的に形成される炭素化合物であり、必要に応じてAl−Si合金溶湯に微量の炭素を添加することで、容易に形成することができる。
また、本発明のAl−Si合金鋳物においては、前記炭素化合物が針状であること、が好ましい。針状の炭素化合物の表面にAlP化合物を付着させることで、例えば、粒状の炭素化合物の場合と比較して、AlP化合物が過度に偏在することを抑制できる。加えて、板状の炭化物の場合と比較して、機械的性質に及ぼす影響を小さくすることができる。なお、炭素化合物をAl4C3とすることで、容易に針状とすることができる。
また、本発明のAl−Si合金鋳物においては、初晶Si中に存在する前記AlP化合物の平均粒径が4μm以下となっていることが好ましい。AlP粒子はSiの異質核として作用し、AlP粒子が多い場合は過冷却せずに共晶凝固が生じることになる。当該一般的な凝固の場合は共晶Siが粗大になるが、本発明のアルミニウム合金鋳物ではAlP粒子が炭素化合物の表面に付着していることから、実質的に作用するAlP粒子が少なくなる。また、AlP粒子が溶解した後、あらためて晶出する際にAlP粒子が微細(好ましくは平均粒径が4μm以下)となり、過冷却によって共晶Siが微細化している。
また、本発明のAl−Si合金鋳物においては、共晶Siの平均粒径(円相当径)が20μm以下であることが好ましく、10μm以下となっていることがより好ましい。Si結晶は強い優先成長方位を持つ薄い板状を呈して成長し、当該形態の組織を有する鋳造品に応力が印加されるとSi結晶の先端に応力が集中してクラックが発生する。当該クラックはSi結晶の長手側面とα(Al)相との界面に沿って急速に伝播するため、鋳造品の強度及び靭性を低下させる原因となる。これに対し、Al−Si合金鋳物の共晶Siを微細化することで、応力集中が抑制され、Al−Si合金鋳物の機械的性質(特に靭性)を向上させることができる。
また、本発明のAl−Si合金鋳物においては、Siの含有量が5〜30質量%であること、が好ましい。Siの含有量を5質量%以上とすることで、Al−Si合金鋳物を製造する際のAl−Si合金溶湯の流動性及び鋳型充填性を担保することができると共に、Al−Si合金鋳物の強度及び耐摩耗性等を向上させることができる。一方で、Siの含有量を30質量%以下とすることで、Si添加の原料に起因するPの混入を低減することができる。なお、より好ましいSiの含有量は5〜15質量%である。
更に、本発明のAl−Si合金鋳物においては、Pの含有量が15ppm以下であること、が好ましい。上述のとおり、本発明のAl−Si合金鋳物ではPが無害化されているが、Pの含有量を15ppm以下とすることで、より確実にPを含むことの悪影響を排除すると共に、共晶Siの微細化をより促進することができる。
また、本発明は、Al−Si合金の溶湯に炭素又は炭素化合物を添加し、当該溶湯を1000℃以上に加熱した後に鋳造を行うこと、を特徴とするAl−Si合金鋳物の製造方法、も提供する。
Al−Si合金鋳物の製造方法では、炭素化合物の表面にAlP化合物を付着させることで、Pを無害化することができる。ここで、溶湯に炭素化合物を添加してもよく、炭素を添加して炭素化合物を形成させてもよい。また、炭素化合物へのPの付着状況に及ぼす溶湯温度の影響について鋭意研究を遂行した結果、溶湯の温度を1000℃以上とすることで、炭素化合物へのPの付着が促進することを見出した。また、溶湯温度を1250℃以下とすることで、溶湯処理に必要な消費エネルギーや高温に伴う設備の劣化を抑制することができる。
一般的に、アルミニウムを実操業として鋳造する場合、アルミニウムの溶湯を700〜800℃の温度域に保持し、脱ガス、滓取、成分調整等の炉内処理を行った後、所定形状の金型に注湯する。これに対し、本発明のAl−Si合金鋳物の製造方法においては、Al−Si合金溶湯を1000℃以上となる高温に加熱・保持することにより、溶解したAlP化合物が、再凝固する際に炭素化合物の表面に付着するものと考えられる。
本発明のAl−Si合金鋳物の製造方法においては、Al−Si合金溶湯に含まれるPの含有量に応じて炭素又は炭素化合物の添加量を調整すればよいが、Al−Si合金鋳物中の炭素化合物が0.0005〜0.0020質量%となるようにすることが好ましい。Al−Si合金鋳物中の炭素化合物を0.0005質量%以上とすることでPの無害化効果を得ることができ、0.0020質量%以下とすることで炭素化合物による機械的性質の低下を抑制することができる。
また、本発明のAl−Si合金鋳物の製造方法においては、AlP化合物が炭素化合物の表面に付着するだけではなく、共晶Siの凝固核として作用するAlP化合物が減少することから、共晶組織も微細化される。
本発明のAl−Si合金鋳物の製造方法においては、Al−Si合金溶湯を1000℃以上に5〜60分間保持することが好ましい。Al−Si合金溶湯を1000℃以上に5分以上保持することで、AlP化合物が十分に溶解し、より確実に炭素化合物の表面にAlP化合物を付着させることができる。一方で、当該保持時間を60分より長くしても炭素化合物表面へのAlP化合物の付着量が顕著に増加することはなく、当該保持時間を60分以下とすることで、エネルギー消費量の増加や溶解炉等の設備の劣化を抑制することができる。
更に、本発明のAl−Si合金鋳物の製造方法においては、前記溶湯を1000℃とした後に、前記溶湯の表面に浮上した滓を除去すること、が好ましい。炭素化合物の表面にAlP化合物を付着させることだけでもAl−Si合金鋳物に含まれるPを無害化することができるが、AlP化合物が付着した炭素化合物を含む滓を除去することによって、Al−Si合金鋳物に含まれるP(AlP化合物)の量を確実に低減することができる。また、当該滓の除去によって、Al−Si合金鋳物のPの含有量を15ppm以下とすることが可能である。
本発明によれば、不純物として含まれるPを無害化及び/又は除去したAl−Si合金鋳物、及び有害な塩素ガスを使用することなくAl−Si合金鋳物中のPを無害化及び/又は除去する効率的かつ簡便なAl−Si合金鋳物の製造方法を提供することができる。
以下、本発明のAl−Si合金鋳物及びその製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
1.Al−Si合金鋳物
本発明のAl−Si合金鋳物は、0.0005〜0.0020質量%の炭素化合物を含有し、炭素化合物の表面にAlP化合物が付着していること、を特徴とするAl−Si合金鋳物である。
本発明のAl−Si合金鋳物は、0.0005〜0.0020質量%の炭素化合物を含有し、炭素化合物の表面にAlP化合物が付着していること、を特徴とするAl−Si合金鋳物である。
炭素化合物の表面にAlP化合物が付着していることは、例えば、Al−Si合金鋳物を再溶解し、得られたAl−Si合金溶湯を平均77μmのフィルタでろ過し、AlP化合物を含む介在物を収集して、当該介在物をEPMA分析(元素マッピング)することによって確認することができる。
炭素化合物の表面にAlP化合物が付着していることで、Al−Si合金鋳物中のPが無害化されている。炭素化合物が0.0005質量%以上存在することで当該無害化効果を十分に得ることができ、炭素化合物が0.0020質量%以下に制限されることで、当該炭素化合物によるAl−Si合金鋳物の機械的性質の低下が抑制されている。なお、Al−Si合金鋳物中の炭素化合物の含有量は、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて測定することができる。また、光学顕微鏡や走査電子顕微鏡(SEM)等を用いて組織観察を行い、得られた観察像を解析することにより、簡易的に炭素化合物の割合を算出してもよい。
Al−Si合金鋳物に含まれる炭素化合物の種類、形状及びサイズは特に限定されないが、針状のAl4C3であることが好ましい。Al4C3はAl−Si合金溶湯中に炭素を含む場合に一般的に形成される炭素化合物であり、針状とすることでAl−Si合金鋳物の機械的性質に大きな影響を与えることなく、効率的にAlP化合物を付着させることができる。
また、炭素化合物の好適なサイズは当該炭素化合物の形状にも依存するが、炭素化合物が針状の場合、長手方向及び幅方向がそれぞれ10〜40μm及び1〜3μmであることが好ましい。
共晶Siの平均粒径(円相当径)は20μm以下であることが好ましく、10μm以下となっていることがより好ましい。ここで、円相当径とは、金属組織を顕微鏡観察した際に求まる共晶Siの占める面積を円相当の面積に換算したときの直径である。具体的には、顕微鏡写真を画像処理等して容易に求めることができる。共晶Siの領域とその他の領域とは顕微鏡写真上で明瞭にコントラストが異なるため、二値化処理したのち、各種画像計測処理を行う。また、平均粒径としては、例えば、一定視野内(測定面積:1.3mm2、測定視野数:3)の円相当径の平均値を用いることができる。
AlとPの化合物であるAlPの格子定数は、Siの格子定数と約0.4%しか違わず、多面体Siの核生成物質であるとされている。当該特性を利用して、Pは過共晶Al−Si合金の初晶微細化剤として工業的に使用される場合があるが、一方で、共晶Siの微細化を阻害することが知られている。
これに対し、本発明のAl−Si合金鋳物では共晶Siの微細化を阻害するPの含有量が低減されており、共晶Siの平均粒径(円相当径)が20μm以下となっている。ここで、共晶Siを微細化する観点からは、Pの含有量が15ppm以下となっていることが好ましい。また、炭素化合物に付着していないPの含有量が8ppm以下となっていることが好ましく、5ppm以下となっていることがより好ましい。
また、初晶Si中に存在する前記AlP化合物の平均粒径が4μm以下となっていることが好ましい。AlP粒子の直径の測定方法は特に限定されず、従来公知の種々の方法によって測定することができるが、例えば、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)を用いた元素マッピングの結果でAlP粒子の領域を特定することで、好適にAlP粒子の直径を測定することができる。なお、EPMAでは波長分散型分光器を用いるため、エネルギー分散型分光器を使用する場合と比較して、より高い精度での分析が可能である。
また、本発明のAl−Si合金鋳物においては、Siの含有量が5〜30質量%であることが好ましい。Siの含有量を5質量%以上とすることで、Al−Si合金鋳物を製造する際のAl−Si合金溶湯の流動性及び鋳型充填性を担保することができると共に、Al−Si合金鋳物の強度及び耐摩耗性等を向上させることができる。一方で、Siの含有量を30質量%以下とすることで、Si添加の原料に起因するPの混入を低減することができる。
2.Al−Si合金鋳物の製造方法
本発明のAl−Si合金鋳物の製造方法は、Al−Si合金の溶湯に炭素又は炭素化合物を添加し、当該溶湯を1000℃以上に加熱した後に鋳造を行うこと、を特徴としている。溶湯に添加した炭素化合物又は炭素を溶湯に添加することによって生成する炭素化合物の表面にAlP化合物が付着することによって、Al−Si合金中のPを無害化することができる。
本発明のAl−Si合金鋳物の製造方法は、Al−Si合金の溶湯に炭素又は炭素化合物を添加し、当該溶湯を1000℃以上に加熱した後に鋳造を行うこと、を特徴としている。溶湯に添加した炭素化合物又は炭素を溶湯に添加することによって生成する炭素化合物の表面にAlP化合物が付着することによって、Al−Si合金中のPを無害化することができる。
Al−Si系合金ではPの含有量が多い過共晶Al−Si系合金等のスクラップが原料となる場合があるが、原料のP含有量が多い場合であっても本発明のAl−Si合金鋳物の製造方法を用いることで、Al−Si合金鋳物に良好な強度と信頼性を付与することができる。
Al−Si系合金の種類は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々のAl−Si系合金を用いることができるが、Siの含有量を5〜30質量%とすることが好ましい。Siの含有量を5質量%以上とすることで、Al−Si合金鋳物を製造する際のAl−Si合金溶湯の流動性及び鋳型充填性を担保することができると共に、Al−Si合金鋳物の強度及び耐摩耗性等を向上させることができる。一方で、Siの含有量を30質量%以下とすることで、Si添加の原料に起因する過剰なPの混入を低減することができる。
Al−Si合金溶湯の温度を1000℃以上とする必要があるが、Al−Si合金溶湯の加熱手段や処理雰囲気は本発明の効果を損なわない限りにおいて特に限定されず、従来公知の種々の方法を用いることができる。また、溶湯温度を1250℃以下とすることで、溶湯処理に必要な消費エネルギーや高温に伴う設備の劣化を抑制することができる。
Al−Si合金溶湯を1000℃以上に保持する時間は、5〜60分間とすることが好ましい。Al−Si合金溶湯を1000℃以上に5分以上保持することで、AlP化合物が十分に溶解し、より確実に炭素化合物の表面にAlP化合物を付着させることができる。一方で、当該保持時間を60分より長くしても炭素化合物表面へのAlP化合物の付着量が顕著に増加することはなく、当該保持時間を60分以下とすることで、エネルギー消費量の増加や溶解炉等の設備の劣化を抑制することができる。
Al−Si合金溶湯に添加する炭素又は炭素化合物の量は、Al−Si合金溶湯に含まれるPの含有量に応じて炭素又は炭素化合物の添加量を調整すればよい。ここで、炭素化合物を添加する場合はAl−Si合金鋳物中の炭素化合物が0.0005〜0.0020質量%となるように添加量を決定することが好ましく、炭素を添加する場合は反応生成物である炭素化合物が0.0005〜0.0020質量%となるように添加量を決定することが好ましい。また、Al−Si合金の原料に不純物として混入する炭素を用いて、炭素化合物を形成することができる。
更に、本発明のAl−Si合金鋳物の製造方法においては、溶湯を1000℃以上とした後に、溶湯の表面に浮上した滓を除去することが好ましい。本発明の効果を損なわない限りにおいて滓の除去方法は特に限定されず、従来公知の種々の方法で除去すればよい。炭素化合物の表面にAlP化合物を付着させることで、Al−Si合金鋳物に含まれるPを無害化することができるが、AlP化合物が付着した炭素化合物を含む滓を除去することによって、Al−Si合金鋳物に含まれるP(AlP化合物)の量を低減することができる。
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
≪実施例1≫
純度99.9質量%のアルミニウム地金、Al−5質量%Fe合金地金、Al−25%Si合金地金及びロッドタイプのAl−19質量%Cu−1.4質量%P合金を配合し、黒鉛坩堝に挿入して740℃で大気溶解した後、740℃で回転式脱ガス装置による脱ガス処理を施した。次に、740℃の溶湯を重力鋳造法により舟型形状(JIS H 5202)に鋳造した。なお、鋳型温度は150℃とした。得られたAl−Si合金鋳物の組成は13%Si―0.001%P−0.8%Fe−Al(Bal.)であり、当該組成におけるAlP化合物の晶出温度965℃である。なお、組成は質量%で示している。ここで、本実施例においては、不純物として混入する炭素によって炭素化合物を形成させており、更なる炭素の添加は行っていない。
純度99.9質量%のアルミニウム地金、Al−5質量%Fe合金地金、Al−25%Si合金地金及びロッドタイプのAl−19質量%Cu−1.4質量%P合金を配合し、黒鉛坩堝に挿入して740℃で大気溶解した後、740℃で回転式脱ガス装置による脱ガス処理を施した。次に、740℃の溶湯を重力鋳造法により舟型形状(JIS H 5202)に鋳造した。なお、鋳型温度は150℃とした。得られたAl−Si合金鋳物の組成は13%Si―0.001%P−0.8%Fe−Al(Bal.)であり、当該組成におけるAlP化合物の晶出温度965℃である。なお、組成は質量%で示している。ここで、本実施例においては、不純物として混入する炭素によって炭素化合物を形成させており、更なる炭素の添加は行っていない。
次に、大気中で残湯を1000℃まで昇温して10分間保持した後に、1000℃の溶湯を150℃の舟型に鋳込んだ。次に、得られた金型鋳物を再溶解し、740℃で回転式脱ガス装置による脱ガス処理を施した溶湯を150℃の舟型5個に鋳込んで実施Al−Si合金鋳物を得た。
得られた実施Al−Si合金鋳物の底面から13mmの位置を中心として、1cm角の立方体を切り出し、断面にバフ研磨を施して組織観察用試料とした。光学顕微鏡及び走査電子顕微鏡で観察した結果、針状の介在物が形成されていることが確認された。また、得られた観察像から当該介在物の割合を算出したところ、0.0010質量%であった。
また、残りの実施Al−Si合金鋳物を再溶解し、Porous Disc Filtration Appratusを用いてAlP化合物を含む介在物の分析を行った。具体的には、再溶解して得られた溶湯を平均77μmのフィルタでろ過し、AlP化合物以外も含めた介在物をフィルタ表面に収集した。当該フィルタを切断して油性のダイヤモンド研磨剤で研磨後に白金蒸着を施し、EPMA(株式会社島津製作所EPMA−1610を用いて加速電圧15kV,照射電流100mA,ビーム径φ1μm)を用いた元素マッピングによって介在物を分析した。
EPMA分析に関し、反射電子像を図1に、Alのマッピングを図2に、Pのマッピングを図3に、Siのマッピングを図4にそれぞれ示す。また、高倍率の反射電子像を図5、高倍率のPのマッピングを図6に示す。
反射電子像において写真上部中心から右下にかけて横断するように存在しているのはAl−Si−Fe化合物であり、炭素化合物ではない。ここで、高倍率の反射電子像及びPのマッピング結果から、針状の介在物(点線で囲んだ領域)にPが含まれていることが分かる。当該領域についてEPMAで点分析を行ったところ、Alが76質量%、Siが3質量%、Cが15質量%、Pが0.5質量%であり、主成分はAl、C、Pであった。当該結果より、針状の介在物はAl4C3の表面にAlP化合物が付着したものであると考えられる。なお、Siは針状介在物周辺の粒子から検出されたものである。
≪比較例≫
純度99.9質量%のアルミニウム地金、Al−5質量%Fe合金地金、Al−25%Si合金地金及びロッドタイプのAl−19質量%Cu−1.4質量%P合金を配合し、黒鉛坩堝に挿入して740℃で大気溶解した後、740℃で回転式脱ガス装置による脱ガス処理を施した。次に、740℃の溶湯を重力鋳造法により舟型形状(JIS H 5202)に鋳造して比較Al−Si合金鋳物を得た。なお、鋳型温度は150℃とした。得られた比較Al−Si合金鋳物の組成は13%Si―0.001%P−0.8%Fe−Al(Bal.)であり、当該組成におけるAlP化合物の晶出温度965℃である。なお、組成は質量%で示している。ここで、比較例においても、更なる炭素の添加は行っていない。
純度99.9質量%のアルミニウム地金、Al−5質量%Fe合金地金、Al−25%Si合金地金及びロッドタイプのAl−19質量%Cu−1.4質量%P合金を配合し、黒鉛坩堝に挿入して740℃で大気溶解した後、740℃で回転式脱ガス装置による脱ガス処理を施した。次に、740℃の溶湯を重力鋳造法により舟型形状(JIS H 5202)に鋳造して比較Al−Si合金鋳物を得た。なお、鋳型温度は150℃とした。得られた比較Al−Si合金鋳物の組成は13%Si―0.001%P−0.8%Fe−Al(Bal.)であり、当該組成におけるAlP化合物の晶出温度965℃である。なお、組成は質量%で示している。ここで、比較例においても、更なる炭素の添加は行っていない。
比較Al−Si合金鋳物についても実施例と同様にして組織観察及びEPMA分析を行ったところ、炭素化合物表面へのAlP化合物の付着は認められなかった。また、共晶Siのサイズは実施Al−Si合金鋳物の場合よりも大きくなっていた。
以上の結果より、Al−Si合金溶湯を1000℃で保持して得られた実施Al−Si合金鋳物では針状の炭素化合物の表面にAlP化合物が付着し、Pが無害化されているのに対し、比較Al−Si合金鋳物ではAlP化合物が炭素化合物表面に付着していないことが分かる。また、当該Pの状況の差異により、実施Al−Si合金鋳物では共晶Siが顕著に微細化されることが分かる。
Claims (8)
- 0.0005〜0.0020質量%の炭素化合物を含有し、
前記炭素化合物の表面にAlP化合物が付着していること、
を特徴とするAl−Si合金鋳物。 - 前記炭素化合物がAl4C3であること、
を特徴とする請求項1に記載のAl−Si合金鋳物。 - 前記炭素化合物が針状であること、
を特徴とする請求項1又は2に記載のAl−Si合金鋳物。 - 初晶Si中に存在する前記AlP化合物の平均粒径が4μm以下であること、
を特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかに記載のAl−Si合金鋳物。 - 共晶Siの平均粒径(円相当径)が20μm以下であること、
を特徴とする請求項1〜4のうちのいずれかに記載のAl−Si合金鋳物。 - Pの含有量が15ppm以下であること、
を特徴とする請求項1〜5のうちのいずれかに記載のAl−Si合金鋳物。 - Al−Si合金の溶湯に炭素又は炭素化合物を添加し、
当該溶湯を1000℃以上に加熱した後に鋳造を行うこと、
を特徴とするAl−Si合金鋳物の製造方法。 - 前記溶湯を1000℃とした後に、前記溶湯の表面に浮上した滓を除去すること、
を特徴とする請求項7に記載のAl−Si合金鋳物の製造方法。
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- 2019-09-06 JP JP2019162783A patent/JP2021042404A/ja active Pending
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