この発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
実施の形態1.
図1から図10は、この発明の実施の形態1に係るものである。図1は冷蔵庫の正面図である。図2は冷蔵庫の縦断面図である。図3及び図4は冷蔵庫が備える切替室の周辺の拡大断面図である。図5は冷蔵庫が備える昇降機構の構成及び動作を示す拡大断面図である。図6は冷蔵庫が備える昇降機構の変位量を説明する図である。図7は冷蔵庫の制御系統の機能的な構成を示すブロック図である。図8は冷蔵庫の切替室の設定温度、切替室の庫内温度及び切替室に収納された食品の温度の経時変化と分割部の位置とを示す図である。図9は食品の温度と当該食品が破断する際の荷重との関係の一例を示した図である。そして、図10は冷蔵庫の動作の一例を示すフロー図である。
この実施の形態では、原則として、冷蔵庫1が使用可能な状態に設置されたときを基準として、各方向を定義する。また、図1及び図2によって示される冷蔵庫1を構成する各部材の寸法、位置関係及び形状等は、実際のものとは必ずしも完全に一致しない場合がある。冷蔵庫1の構成は、図1及び図2によって示されるものに限定されるものではない。
図1及び図2に示すように、この実施の形態の冷蔵庫1は、断熱箱体90を有している。断熱箱体90は、外箱、内箱及び断熱材によって構成される。外箱は、例えば、鋼鉄製である。内箱は、例えば、樹脂製である。内箱は、外箱の内側に配置される。断熱材は、例えば、発泡ウレタン、真空断熱材等である。断熱材は、外箱と内箱との間の空間に充填されている。
断熱箱体90の正面は、開口している。断熱箱体90の内部には、貯蔵空間が形成されている。貯蔵空間は、食品等の被貯蔵物が収納される空間である。断熱箱体90の内部に形成された貯蔵空間は、1つまたは複数の仕切り部材によって、食品を収納保存するための複数の貯蔵室に区画されている。一例として、冷蔵庫1は、図1及び図2に示すように、複数の貯蔵室として、冷蔵室100、切替室200、製氷室300、冷凍室400及び野菜室500を備えている。各貯蔵室は、断熱箱体90において、上下方向に4段構成となって配置されている。
冷蔵室100は、断熱箱体90の最上段に配置されている。図2に示すように、冷蔵室100の内部には、一例として、複数の棚板が設けられている。冷蔵室100の内部は、これらの棚板によって、上下方向に複数の空間に仕切られている。
切替室200は冷蔵室100の下方における左右の一側に配置されている。切替室200内の温度帯は、複数の温度帯のうちのいずれかに選択的に切り替えることが可能である。切替室200内の温度帯として選択可能な複数の温度帯は、例えば、冷凍温度帯、冷蔵温度帯、チルド温度帯、ソフト冷凍温度帯等である。冷凍温度帯は、例えば、-18℃程度の温度帯である。冷蔵温度帯は、例えば、3℃程度の温度帯である。チルド温度帯は、例えば、0℃程度の温度帯である。ソフト冷凍温度帯は、例えば、-7℃程度の温度帯である。
製氷室300は、切替室200の側方に隣接して配置される。製氷室300は、切替室200と並列に配置される。すなわち、製氷室300は、冷蔵室100の下方における左右の他側に配置されている。冷凍室400は、切替室200及び製氷室300の下方に配置されている。冷凍室400は、被貯蔵物を比較的長期にわたって冷凍保存する際に用いられる。また、野菜室500は、冷凍室400の下方に配置されている。野菜室500は、断熱箱体90の最下段に配置されている。野菜室500には、例えば、野菜及び容量の大きなペットボトル等が収納される。
冷蔵室100の正面部には、当該冷蔵室100を開閉するための冷蔵室扉7が設けられている。冷蔵室扉7は、例えば、両開き式の回転式の扉である。両開き式の冷蔵室扉7は、右扉7a及び左扉7bにより構成されている。冷蔵室扉7の外側表面には、操作パネル6が設けられている。操作パネル6は、例えば、左扉7bに設けられている。操作パネル6は、各貯蔵室の保冷温度等の設定及び各貯蔵室の温度等の各種情報の表示のためのものである。
切替室200、製氷室300、冷凍室400及び野菜室500は、一例として、それぞれ、引出し式の扉によって開閉される。これらの引出し式の扉は、各貯蔵室の左右の内壁面に水平に形成されたレールに沿って冷蔵庫1の奥行方向にスライドできるようになっている。この実施の形態の冷蔵庫1の使用者は、引出し式の扉をスライドさせることで、切替室200、製氷室300、冷凍室400及び野菜室500を開閉する。
切替室200の内部及び冷凍室400の内部には、食品等を内部に収納できる切替室収納ケース201及び冷凍室収納ケース401が、それぞれ引き出し自在に格納されている。同様に、野菜室500内には、食品等を内部に収納できる野菜室収納ケース501が、引き出し自在に格納されている。
切替室収納ケース201は、切替室200を開閉する扉に設けられたフレームによって支持される。切替室収納ケース201は、切替室200を開閉する扉に連動して引き出される。冷凍室収納ケース401は、冷凍室400を開閉する扉に設けられたフレームによって支持される。冷凍室収納ケース401は、冷凍室400を開閉する扉に連動して引き出される。同様に、野菜室収納ケース501は、野菜室500を開閉する扉に設けられたフレームによって支持される。野菜室収納ケース501は、野菜室500を開閉する扉に連動して引き出される。
なお、冷蔵庫1に備えられた貯蔵室の数、貯蔵室の配置、貯蔵室を開閉するための扉の構成等は、以上で説明した例に限定されるものではない。例えば、冷蔵室100を開閉するための扉は、スライド式であってもよい。また、切替室200、製氷室300、冷凍室400及び野菜室500を開閉するための扉は、回転式であってもよい。切替室収納ケース201、冷凍室収納ケース401及び野菜室収納ケース501は、それぞれ、2つ以上設けられてもよい。
冷蔵庫1は、各貯蔵室へ供給する空気を冷却するための冷凍機構として、圧縮機2、冷却器3、送風ファン4及び風路5等を備える。圧縮機2及び冷却器3は、図示を省略している凝縮器及び絞り装置等とともに冷凍サイクル回路を構成している。圧縮機2は、冷凍サイクル回路内の冷媒を、圧縮して吐出する。凝縮器は、圧縮機2から吐出された冷媒を凝縮させる。絞り装置は、凝縮器から流出した冷媒を膨張させる。冷却器3は、絞り装置で膨張した冷媒によって、各貯蔵室へ供給する空気を冷却する。圧縮機2は、例えば、図2に示すように、冷蔵庫1の背面側の下部に配置される。
風路5は、冷凍サイクル回路によって冷却された空気を各貯蔵室へ供給するためのものである。風路5は、断熱箱体90の内部に形成されている。風路5は、例えば、冷蔵庫1の背面側に配置されている。冷凍サイクル回路を構成している冷却器3は、この風路5内に設置される。また、風路5内には、冷却器3で冷却された空気を各貯蔵室へ送るための送風ファン4も設置されている。
送風ファン4が動作すると、冷却器3で冷却された空気すなわち冷気が、風路5を通って、冷凍室400、切替室200、製氷室300及び冷蔵室100へ送られる。これにより、各貯蔵室内が冷却される。また、野菜室500には、冷蔵室100から戻った冷気が図示しない風路を介して導入される。これにより、野菜室500内が冷却される。野菜室500を通過した空気は、冷却器3が設置されている風路5内へと戻される。風路5内へと戻された空気は、再び冷却器3によって冷却され、冷蔵庫1内を循環する。
また、風路5からそれぞれの貯蔵室へと通じる中途の箇所には、ダンパが設けられている。このダンパは、図1及び図2においては図示を省略する。各ダンパの開閉状態が変化することで、各貯蔵室へと供給される冷気の風量が調節される。貯蔵室へと供給される冷気の風量は、送風ファン4の運転が制御されることによっても調節される。また、各貯蔵室へと供給される空気の温度は、圧縮機2の運転が制御されることで調節される。
各貯蔵室には、内部の温度を検知するサーミスタが設置される。このサーミスタは、図1及び図2においては図示を省略する。前述したダンパ、送風ファン4及び圧縮機2は、サーミスタの検知結果に基づいて制御される。ダンパ、送風ファン4及び圧縮機2は、各貯蔵室内の温度が予め設定された設定温度になるように制御される。この実施の形態において、以上のように設けられた圧縮機2と冷却器3とを含む冷凍サイクル回路、送風ファン4、風路5及びダンパは、貯蔵室の内部を冷却することで食品が収納される空間の温度を調節する冷却手段の一例である。
また、この実施の形態の冷蔵庫1は、制御装置8を備える。制御装置8は、例えば、図2に示すように、冷蔵庫1の背面側の上部に設けられる。制御装置8には、冷蔵庫1の動作を制御するための制御回路等が備えられている。制御装置8の各機能は、この制御回路によって実現される。制御装置8は、冷却手段を制御する制御手段の一例である。
図3は、実施の形態1の冷蔵庫1が備える切替室200の周辺の拡大断面図である。この切替室200を開閉する扉を、図3及び以下の説明においては、符号を付して切替室扉9と称する。この実施の形態の冷蔵庫1は、図3に示すように、切替室扉9の開閉状態を検知するための扉開閉検知スイッチ10を備えている。扉開閉検知スイッチ10は、切替室扉9の開閉を検知する開閉検知手段の一例である。
また、切替室200内には、切替室サーミスタ11が設けられる。切替室サーミスタ11は、切替室200の温度を検知する温度検知手段の一例である。また、この実施の形態の冷蔵庫1は、図3に示すように、切替室ダンパ12を備えている。制御手段の一例である制御装置8は、切替室サーミスタ11の検知結果に基づいて切替室ダンパ12を制御する。これにより、切替室200内の温度が調節される。
この実施の形態において、切替室200には、例えば、炊飯された米飯、ひき肉、カットされた野菜等の食品が収納される。炊飯された米飯、ひき肉、カットされた野菜は、常温において人間の手で分割可能な食品の例である。ここでいう「常温」とは、各食品の凍結温度よりも高い温度を意味している。換言すると、炊飯された米飯、ひき肉、カットされた野菜は、凍結温度よりも高い温度において人間の手で分割可能な食品の例である。凍結温度よりも高い温度において人間の手で分割可能な食品には、複数の小片によって一群を形成する野菜及び茸類、また調理後の食品等も該当する。
切替室200の内部には、分割部13及び昇降機構14が設けられている。分割部13及び昇降機構14は、切替室200内に収納された食品を分割可能な分割手段の一例である。分割部13は、昇降機構14を介して切替室200の上側の内壁に取り付けられている。分割部13は、下方に向けて突出した複数の突起部13aを備えている。
分割部13は、図3に示す上昇位置と図4に示す降下位置との間で移動可能である。分割部13が上昇位置にあるとき、分割部13の突起部13aは食品に接触しない。分割部13が降下位置にあるとき、分割部13の突起部13aが食品に接触して、当該食品を切断、分割する。この構成例において、上昇位置は、分割部13が食品を分割しない第1位置である。また、降下位置は、分割部13が食品を分割する第2位置である。
昇降機構14は、分割部13を前述の第1位置(上昇位置)と前述の第2位置(降下位置)とに変位させる変位部である。この昇降機構14の構成について、図5を参照しながら説明する。同図に示すように、昇降機構14は、バイアスバネ14a、形状記憶合金バネ14b及び筒状部14cを備えている。
筒状部14cは、中空な例えば円筒状を呈する伸縮可能な部材である。筒状部14cは、例えば径が少しずつ異なる複数の筒からなるテレスコピック構造を備えている。このテレスコピック構造により、筒状部14cは上下方向に伸縮可能である。なお、筒状部14cは、伸縮可能であればテレスコピック構造に限られない。他に例えば、筒状部14cは蛇腹構造を備えていてもよい。筒状部14cの上端は、切替室200の上側の内壁に固定されている。筒状部14cの下端は、分割部13に接続されている。
筒状部14cの内部には、バイアスバネ14a及び形状記憶合金バネ14bが配置されている。形状記憶合金バネ14bは、形状記憶合金からなる押しバネである。形状記憶合金バネ14bを構成する形状記憶合金は、変態温度θcを境界として、その形状が変化する。すなわち、形状記憶合金バネ14bは、周囲温度が予め設定された基準温度以上か未満かに応じて変形する部材である。この際の基準温度は、形状記憶合金の変態温度θcに等しい。
バイアスバネ14aは、通常の金属等からなる押しバネである。バイアスバネ14a及び形状記憶合金バネ14bは、筒状部14cの内部において互いに押し合うようにして直列に配置されている。
以上のように構成された昇降機構14の動作について、さらに図6も参照しながら説明する。図6は、バイアスバネ14a及び形状記憶合金バネ14bにかかる荷重と、これらのバネの変形量との関係を示すものである。同図の縦軸は、各バネにかかる荷重を表している。同図の横軸は、各バネの変形量を表している。前述したように各バネは押しバネであるから、同図の横軸が表す変形量は各バネの圧縮量である。なお、横軸に関して、バイアスバネ14aの変形量は図に向かって右端が0であり、左にいくに従って大きくなる。逆に、形状記憶合金バネ14bの変形量は図に向かって左端が0であり、右にいくに従って大きくなる。
バイアスバネ14aにかかる荷重と変形量との関係は同図中に一点鎖線で示される。変態温度θc未満の形状記憶合金バネ14bにかかる荷重と変形量との関係は同図中に実線で示される。そして、変態温度θc以上の形状記憶合金バネ14bにかかる荷重と変形量との関係は同図中に破線で示される。このように、形状記憶合金バネ14bは、変態温度θc以上か未満かに応じて、形状が変化するとともにバネ定数も変化する。ここで説明する構成例では、変態温度θc未満のときよりも変態温度θc以上のときの方が形状記憶合金バネ14bのバネ定数が大きくなる。
バイアスバネ14aと形状記憶合金バネ14bの変形量は、これらのバネにかかる荷重が釣り合うようにして定まる。変態温度θc未満のときには、図6中の(A)点が、バイアスバネ14aと形状記憶合金バネ14bとが釣り合う平衡点になる。変態温度θc以上のときには、図6中の(B)点が、バイアスバネ14aと形状記憶合金バネ14bとが釣り合う平衡点になる。
したがって、周囲の温度を変態温度θc未満から変態温度θc以上に上昇させると、平衡点が(A)から(B)へと移動する。逆に、周囲の温度を変態温度θc以上から変態温度θc未満に低下させると、平衡点が(B)から(A)へと移動する。このように、変態温度θc未満のときと変態温度θc以上のときとで、バイアスバネ14a及び形状記憶合金バネ14bのそれぞれの変形量(圧縮量)が変化する。
これにより、図5に示すように、変態温度θc以上か未満かに応じて、バイアスバネ14aと形状記憶合金バネ14bとを合わせた長さが変化し、筒状部14cが伸縮する。この構成例においては、変態温度θc未満のときには、図5(A)に示すように筒状部14cが縮退する。これは、図6中の(A)点に対応する。そして、変態温度θc以上のときに、図5(B)に示すように筒状部14cが伸長する。これは、図6中の(B)点に対応する。
このように、昇降機構14は、周囲温度が予め設定された基準温度(変態温度θc)以上か未満かに応じて変形する部材である形状記憶合金バネ14bを含んでいる。そして、昇降機構14は、形状記憶合金バネ14bの変形により分割部13を前述の第1位置(図3)と前述の第2位置(図4)とに変位させる。
次に、図7を参照しながら、この実施の形態の冷蔵庫1の制御系統の構成を説明する。同図に示すように、制御装置8の制御回路には、例えば、プロセッサ8a及びメモリ8bが備えられている。制御装置8は、メモリ8bに記憶されたプログラムをプロセッサ8aが実行することによって予め設定された処理を実行し、冷蔵庫1を制御する。
プロセッサ8aは、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータあるいはDSPともいう。メモリ8bには、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM及びEEPROM等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、又は磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク及びDVD等が該当する。
なお、制御装置8の制御回路は、例えば、専用のハードウェアとして形成されてもよい。制御装置8の制御回路の一部が専用のハードウェアとして形成され、且つ、当該制御回路にプロセッサ8a及びメモリ8bが備えられていてもよい。一部が専用のハードウェアとして形成される制御回路には、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが該当する。
制御装置8には、各貯蔵室の内部の温度を検知するサーミスタから信号が入力される。この実施の形態では、制御装置8には、切替室サーミスタ11から切替室200の温度情報を含む信号が入力される。制御装置8は、切替室サーミスタ11から入力された信号に基づいて、切替室200内の温度が設定温度に維持されるように、圧縮機2、送風ファン4及び切替室ダンパ12等を制御する。
次に、図8を参照しながら、この実施の形態における冷凍保存した食品を自動的に分割する際の冷蔵庫1の動作について説明する。同図において、切替室200の設定温度、切替室200の庫内温度及び切替室200に収納された食品の温度は、それぞれ、破線、細実線及び太実線で示される。
この実施の形態において、前述した冷却手段は、冷凍保存した食品を自動的に分割する際、第1工程、第2工程及び第3工程を実行する。第1工程、第2工程及び第3工程は、同図に示すように、順に実行される。制御装置8は、第1工程の終了とともに第2工程が開始され、第2工程の終了とともに第3工程が開始されるように、前述した冷却手段の圧縮機2、送風ファン4及び切替室ダンパ12を制御する。この実施の形態において、第1工程における切替室200の設定温度、第2工程における切替室200の設定温度及び第3工程における切替室200の設定温度は、それぞれ別に設定される。
第1工程における切替室200の設定温度は、第1温度θLに設定される。第1温度θLは、食品が凍結する温度である凍結温度θfよりも低く、かつ、形状記憶合金バネ14bの変態温度θcよりも低い温度に設定される。凍結温度θf、変態温度θc及び第1温度θLは、例えば、0℃以下又は0℃未満の温度帯に含まれる。第1温度θLは、例えば-20℃である。切替室200の切替室収納ケース201内に収納された分割前の食品20aは、この第1工程で凍結される。
この第1工程においては、切替室200内の空間の温度が変態温度θc未満である。このため、昇降機構14は縮退し、分割部13は図3に示す上昇位置(第1位置)にある。図3に示すように、この状態では、分割部13の突起部13aは分割前の食品20aに接触していない。
第2工程における切替室200の設定温度は、第2温度θSに設定される。第2温度θSは、第1温度θLよりも高く、かつ、形状記憶合金バネ14bの変態温度θcよりも高い温度に設定される。また、第2温度θSは、例えば0℃以下の温度帯に含まれる。第2温度θSは、例えば-2℃である。
この第2工程においては、切替室200内の空間の温度が変態温度θc以上である。このため、昇降機構14は伸長し、分割部13は図3に示す上昇位置(第1位置)から図4に示す降下位置(第2位置)へと移動する。分割部13が第2位置まで降下する過程で、分割部13の複数の突起部13aが分割前の食品20aに押し付けられる。そして、複数の突起部13aにより、食品は複数に切断、分割されて図4に示す分割後の食品20bとなる。
第3工程における切替室200の設定温度は、第3温度θFに設定される。第3温度θFは、第2温度θSよりも低く、かつ、形状記憶合金バネ14bの変態温度θcよりも低い温度に設定される。第3温度θFは、例えば-7℃である。
この第3工程においては、切替室200内の空間の温度が変態温度θc未満である。このため、昇降機構14は縮退し、分割部13は図4に示す降下位置(第2位置)から上昇位置(第1位置)へと移動する。こうして、分割部13の突起部13aは分割後の食品20bから上方へと離れる。そして、分割後の食品20bが冷凍状態で保存される。
形状記憶合金バネ14bの変態温度θcは、第1温度θLよりも高く、第2温度θS以下で、かつ、第3温度θFよりも高くなるように、形状記憶合金バネ14bの材料が選定される。具体的に例えば、ニッケルチタン合金にコバルトを含んだ三元合金を形状記憶合金バネ14bの材料とする。
第1工程は、図8に示すように、第1時間ΔTLだけ行われる。第1時間ΔTLは、例えば、120分である。第1工程においては、切替室200の設定温度は、第1温度θLに設定される。前述した冷却手段は、切替室200の庫内温度が第1温度θLで維持されるように動作する。すなわち、前述した冷却手段は、第1時点において切替室200内の温度を前述した基準温度である変態温度θc未満にする。第1時点とは、第1工程中の任意の時点である。
第1工程が開始してから第1時間ΔTLが経過した時刻TLになると、第1工程が終了して第2工程が開始する。第2工程が開始すると、切替室200の設定温度は、第1温度θLから第2温度θSへ切り替えられる。前述した冷却手段は、切替室200の庫内温度が第2温度θSで維持されるように動作する。
第2工程において、時刻Tc1になると、庫内温度が変態温度θcに到達する。すなわち、前述した冷却手段は、第2時点において切替室200内の温度を前述した基準温度である変態温度θc以上にする。第2時点とは、第2工程中における時刻Tc1以降の任意の時点である。第2時点は前述した第1時点より後の時点である。庫内温度が変態温度θcに到達すると、昇降機構14もほぼ同じ温度になり、分割部13は、上昇位置(A)から降下位置(B)に降下する。降下した分割部13により、分割前の食品20aは複数に分割されて分割後の食品20bとなる。第2工程は、第2時間ΔTSだけ行われる。第2時間ΔTSは、例えば、1時間である。
第2工程が開始してから第2時間ΔTSが経過した時刻TSになると、第2工程が終了して第3工程が開始する。第3工程が開始すると、切替室200の設定温度は、第2温度θSから第3温度θFへ切り替えられる。前述した冷却手段は、切替室200の庫内温度が第3温度θFで維持されるように動作する。第3工程において、時刻Tc2になると、庫内温度が変態温度θcに達する。すなわち、前述した冷却手段は、第3時点において切替室200内の温度を前述した基準温度である変態温度θc未満にする。第3時点とは、第3工程中における時刻Tc2以降の任意の時点である。第3時点は前述した第2時点より後の時点である。庫内温度が変態温度θcに到達すると、昇降機構14もほぼ同じ温度になり、分割部13は、降下位置(B)から上昇位置(A)に上昇する。
以上のように構成された冷蔵庫1においては、前述した変位部である昇降機構14は、周囲温度が前述の基準温度(変態温度θc)未満のときに分割部13を前述の第1位置(上昇位置)にする。また、昇降機構14は、周囲温度が前述の基準温度以上のときに分割部13を前述の第2位置(降下位置)にする。そして、前述した冷却手段は、前述の第1時点において切替室200内の温度を前述の基準温度未満にする。また、前述した冷却手段は、前述の第2時点において切替室200内の温度を前述の基準温度以上にする。そして、前述した冷却手段は、前述の第3時点において切替室200内の温度を再び前述の基準温度未満にする。
このため、この実施の形態の冷蔵庫1によれば、使用者が食品を凍結させる前に予め分割しなくとも、前述の分割手段により食品を自動で分割することができる。このため、使用者が食品を手で分割する手間を省くことができる。また、切替室200内の温度を変化させることで、分割部13を上下に移動させて切替室200内の食品を分割できる。したがって、分割部13を移動させるためにモーター等の電気的な駆動源を必要とすることなく庫内の温度制御だけで食品を分割できる。すなわち、より簡易な構造の機器によって、冷凍保存された食品を人の手に依らずに分割できる。
なお、前述した変位部である昇降機構14の周囲温度と分割部13の位置との関係は、以上で説明した構成例と反対であってもよい。すなわち、昇降機構14は、周囲温度が前述の基準温度(変態温度θc)以上のときに分割部13を前述の第1位置(上昇位置)にし、周囲温度が基準温度未満のときに分割部13を前述の第2位置(下降位置)にするように構成してもよい。
この場合、前述した冷却手段は、前述の第1時点において切替室200内の温度を前述の基準温度(変態温度θc)以上にし、前述の第2時点において切替室200内の温度を基準温度未満にする。そして、前述した冷却手段は、必要に応じて、前述の第3時点において切替室200内の温度を基準温度以上にする。
したがって、以上をまとめると、前述した冷却手段は、第1時点で切替室200内の温度が前述の基準温度(変態温度θc)以上及び基準温度未満の一方となるようにする。そして、冷却手段は、前述の第1時点より後の第2時点で切替室200内の温度が基準温度以上及び基準温度未満の他方となるように変化させる。
図9は、分割前の食品20aの温度と当該分割前の食品20aが破断する際の荷重との関係の一例を示した図である。図9に示す例は、炊飯した米飯を分割前の食品20aとした場合の結果である。凍結した状態の米飯を実際に人間の手で分割することができた場合において、凍結した状態の米飯の破断荷重は、15kgf程度であることが、実験結果から確認された。また、凍結した状態の米飯の破断荷重が15kg以下となる場合において、凍結した状態の米飯の温度は、温度-4℃以上であることが実験結果から確認された。
炊飯された米飯を分割可能な状態で冷凍保存する場合、第2温度θSは、-4℃から0℃の温度帯に含まれるように設定されるとよい。すなわち、前述した冷却手段は、前述の第2時点において、切替室200内の温度を、前述の基準温度(変態温度θc)以上で、かつ、食品が凍結された状態のまま人間の手で道具を使わずに分割可能な温度とするとよい。これにより、切替室200へ収納された米飯の温度は、第2工程において、-4℃から0℃の温度帯に含まれる。
このようにすることで、第2工程における分割前の食品20aは、凍結された状態のまま人間の手で分割可能になる。したがって、前述した分割手段の分割部13は、人間の手で分割する程度の荷重で容易に分割前の食品20aを分割できる。このため、バイアスバネ14a及び形状記憶合金バネ14bに要求される弾性力を小さくできるため、これらのバネを小型化でき、ひいては昇降機構14を含む分割手段全体の小型化を図ることができる。また、分割部13の特に突起部13aの強度、形状(先端部の鋭利さ)等についても、選択の自由度を向上することが可能である。
ただし、第2温度θSは、この実施の形態で示した例である-4℃から0℃の温度帯に限られない。第2温度θSは、冷凍保存される食品の種類、状態及び使用環境等によって、任意に設定され得る。
なお、分割部13の突起部13aは、板状に形成されてもよいし、棒状に形成されてもよい。また、突起部13aは、格子状の板状の部材として、一体的に形成されてもよい。さらに、複数の突起部13aは、図3及び図4に示すように、それぞれの突起部13aの上下方向の長さが異なるようにしてもよい。特に、中央の突起部13aほど長く、周縁の突起部13aほど短くなるようにするとよい。
このようにすることで、複数の突起部13aは、上下方向の長さが長いものから順に分割前の食品20aに接触する。複数の突起部13aが同時ではなく時間的にずれて食品に接触することで、分割時の切断により変形した食品が逃げる余地を確保できる。これにより、突起部13a同士の間に食品が詰まってしまうことを抑制できる。したがって、突起部13a同士の間に詰まった食品により、分割部13の上下移動が阻害されることも抑制可能である。
次に、以上のように構成された冷蔵庫1の動作の一例を、図10のフロー図を参照しながら説明する。前述した第1工程は、例えば、操作パネル6の操作部6aが操作されることで開始される。すなわち、制御装置8は、操作部6aの操作に応じて、第1工程が開始されるように処理を実行する。また、この実施の形態の制御装置8は、時間を計測するタイマー機能を有する。制御装置8は、第1工程の開始時点で、タイマーt=0として、計時を行う(ステップS101)。
前述したように、第1工程において、切替室200の設定温度は、第1温度θLに設定される(ステップS102)。制御装置8は、第1工程が実行されている間、タイマーtが予め設定された第1時間ΔTLに達したか判定する(ステップS103)。制御装置8は、タイマーtが第1時間ΔTLに達するまでステップS103の判定を継続する。制御装置8は、タイマーtが第1時間ΔTLに達すると、すなわち、第1工程が第1時間ΔTLだけ行われると、第1工程が終了して第2工程が開始されるように処理を実行する。
制御装置8は、第2工程の開始時点で、タイマーtをリセットする。制御装置8は、第2工程の開始時点で、タイマーt=0として、計時を行う(ステップS104)。第2工程において、切替室200の設定温度は、第2温度θSに設定される(ステップS105)。制御装置8は、第2工程が実行されている間、タイマーtが予め設定された第2時間ΔTSに達したか判定する(ステップS106)。制御装置8は、タイマーtが第2時間ΔTSに達するまでステップS106の判定を継続する。制御装置8は、タイマーtが第2時間ΔTSに達すると、すなわち、第2工程が第2時間ΔTSだけ行われると、第2工程が終了して第3工程が開始されるように処理を実行する。この実施の形態において、第3工程は、第2工程が第2時間ΔTSだけ行われた後に自動的に開始する。第3工程が開始すると、切替室200の設定温度は、第3温度θFに設定されて維持される(ステップS107)。
なお、以上で説明した構成例においては、前述した分割手段である分割部13及び昇降機構14を、切替室200に設けている。しかしながら、食品を分割する分割手段を設ける貯蔵室は、切替室200に限られない。他に例えば、食品を分割する分割手段を冷凍室400に設けてもよい。また、冷蔵庫1は、冷蔵室100、切替室200、製氷室300、冷凍室400及び野菜室500の複数の貯蔵室を備えるのではなく、食品を分割する分割手段が設けられた冷凍室400のみを備えるようにしてもよい。すなわち、冷蔵庫1は、冷凍温度帯の貯蔵室のみを備えるものであってもよい。