本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
吸熱剤が配された吸熱層と、冷感剤が配され、前記吸熱層の厚さ方向の一方側の面又は他方側の面と対向するように設けられた冷感層と、を有することを特徴とするマスクである。
このようなマスクによれば、吸熱剤によってマスクの表面温度を下げることができるため、着用者は使い捨ておむつの冷感を実感することができる一方で、着用者の湿った息との接触による吸熱反応でマスクの表面温度が下がる前に、冷感剤によって冷感を感じやすくなるため、着用者は、マスクを着用したときからマスクによる冷感を実感しやすくなる。
かかるマスクであって、前記マスクの最も肌側の面が、前記吸熱層の前記一方側の面で形成されていることが望ましい。
このようなマスクによれば、吸熱剤は、着用者の湿った息との接触による吸熱反応でマスクの表面温度を下げるため、吸熱層の一方側の面をマスクの最も肌側面とすることで、着用者の息と接触させやすくなり、且つ、着用者は、吸熱剤によって下げられたマスクの表面温度を実感しやすくなる。
かかるマスクであって、マスク本体部と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部と、を有し、前記マスク本体部は、上下方向、左右方向、及び厚さ方向を有し、前記マスク本体部は、前記吸熱層及び前記冷感層を備え、前記マスク本体部の上端部及び下端部の少なくとも一方は、前記吸熱層又は前記冷感層が非肌面側に折り返された折返し部を有し、前記厚さ方向に前記折返し部と重なる前記マスク本体部の非折返し部において、前記吸熱層の肌側の面に前記吸熱剤が配されている、又は前記厚さ方向に前記折返し部と重なる前記マスク本体部の非折返し部において、前記冷感層の肌側の面に前記冷感剤が配されていることが望ましい。
このようなマスクによれば、マスク本体部の上下端部における吸熱層又は冷感層を着用者の肌に近い位置に設けることができるため、着用者は、吸熱剤又は冷感剤による冷感を実感しやすくなる。
かかるマスクであって、マスク本体部と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部と、を有し、前記マスク本体部は、上下方向、左右方向、及び厚さ方向を有し、前記マスク本体部は、前記吸熱層及び前記冷感層を備え、前記マスクの最も肌側の面が、前記吸熱層の前記一方側の面で形成されており、前記マスク本体部の上端部及び下端部の少なくとも一方は、前記吸熱層及び前記冷感層が非肌面側に折り返された折返し部を有し、前記厚さ方向に前記折返し部と重なる前記マスク本体部の非折返し部において、前記吸熱層の肌側の面に前記吸熱剤が配されていることが望ましい。
このようなマスクによれば、マスク本体部の上下端部は、着用者の鼻又は顎に当接する部分であるため、吸熱層及び冷感層を着用者の肌に近い位置に設けることができるため、着用者は、吸熱剤及び冷感剤による冷感を実感しやすくなる。
かかるマスクであって、前記折返し部において、前記冷感層の前記上下方向の長さが、前記吸熱層の前記上下方向の長さより短いことが望ましい。
このようなマスクによれば、冷感剤がマイクロカプセルに内包されていたり、冷感剤が揮発性物質であったとしても、折り返し部において、吸熱層が冷感層を非肌側から又は肌側から覆うことができるため、冷感剤の効果が失われてしまう恐れを軽減させることができる。
かかるマスクであって、マスク本体部と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部と、を有し、前記マスク本体部は、上下方向及び左右方向を有し、前記吸熱層及び前記冷感層を備え、前記上下方向の中央部において、前記吸熱層及び前記冷感層は、前記左右方向に沿う折り目によってプリーツ状に折り畳まれており、前記マスク本体部の前記左右方向の両側部では、前記吸熱層及び前記冷感層が前記プリーツ状に折り畳まれた状態で接合されており、前記冷感剤は、前記マスク本体部の前記冷感層の全域に配されており、前記上下方向の中央部は、前記上下方向の端部より、前記マスク本体部の前記冷感剤の坪量が高い部分を有することが望ましい。
このようなマスクによれば、マスク本体部の上下方向の中央部は着用者の鼻孔や口元に近いため、冷感剤による冷感効果を感じやすいため、その部分を冷感剤の坪量が高い部分とすることで、着用者は、冷感剤による冷感効果を得やすくなる。
かかるマスクであって、前記吸熱剤は、前記マスク本体部の前記吸熱層の全域に配されており、前記上下方向の中央部は、前記上下方向の端部より、前記マスク本体部の前記吸熱剤の坪量が高い部分を有することが望ましい。
このようなマスクによれば、マスクの上下方向の中央部は、冷感剤による冷感効果だけでなく、吸熱剤による冷感効果も得られるため、着用者はその効果を実感しやすくなる。
かかるマスクであって、マスク本体部と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部と、を有し、前記マスク本体部は、上下方向及び左右方向を有し、前記吸熱層及び前記冷感層を備え、前記上下方向の中央部において、前記吸熱層及び前記冷感層は、前記左右方向に沿う折り目によってプリーツ状に折り畳まれており、前記左右方向における前記マスク本体部の両側部では、前記吸熱層及び前記冷感層が前記プリーツ状に折り畳まれた状態で接合されており、前記上下方向の中央部は、前記上下方向の端部より、前記左右方向における前記マスク本体部の両側部では、前記マスク本体部の前記冷感剤の坪量が高い部分を有することが望ましい。
このようなマスクによれば、左右方向におけるマスク本体部の両側部は、着用者の頬に接触するため、その部分を冷感剤の坪量が高い部分とすることで、着用者は冷感をより実感しやすくなる。
かかるマスクであって、前記上下方向の中央部は、前記上下方向の端部より、前記左右方向における前記マスク本体部の両側部では、前記マスク本体部の前記吸熱剤の坪量が高い部分を有することが望ましい。
このようなマスクによれば、着用者の頬に接触する左右方向におけるマスク本体部の両端部におけるマスクの上下方向の中央部は、冷感剤による冷感効果だけでなく、吸熱剤による冷感効果も得られるため、着用者はその効果を実感しやすくなる。
かかるマスクであって、マスク本体部と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部と、を有し、前記マスク本体部は、上下方向、及び、左右方向を有し、着用者の右顔面及び左顔面をそれぞれ覆う一対のシート部と、前記一対のシート部を接合する接合部を有し、前記一対のシート部は、それぞれ前記吸熱層及び前記冷感層を備え、前記冷感剤は、前記一対のシート部の全域に配されており、前記マスク本体部の前記冷感層に配された前記冷感剤の坪量が、前記左右方向の端部より、前記左右方向の中央部の方が高いことが望ましい。
このようなマスクによれば、着用者の鼻孔や口元に近いマスク本体部の左右方向の中央部において、冷感剤による冷感効果をより実感することができる。
かかるマスクであって、前記吸熱剤は、前記一対のシート部の前記吸熱層の全域に配されており、前記マスク本体部の前記吸熱層に配された前記吸熱剤の坪量が、前記左右方向の両端部より、前記左右方向の中央部の方が高いことが望ましい。
このようなマスクによれば、マスクの左右方向の中央部は、冷感剤による冷感効果だけでなく、吸熱剤による冷感効果も得られるため、着用者はその効果を実感しやすくなる。
かかるマスクであって、前記吸熱層の通気抵抗値が、前記冷感層の通気抵抗値より高いことが望ましい。
このようなマスクによれば、より通気抵抗値が高い吸熱層に着用者の息(呼気)を保持しやすくなるため、吸熱剤と着用者の息とを反応させやすくなり、吸熱剤によるマスクの表面温度を下げやすくなる。
かかるマスクであって、フィルタ層を有し、前記冷感層が、前記フィルタ層と前記吸熱層との間に設けられていることが望ましい。
このようなマスクによれば、冷感剤がマイクロカプセルに内包されていたり、冷感剤が揮発性物質であったとしても、冷感層がフィルタ層と吸熱層に挟まれていることで、冷感剤の効果が失われてしまう恐れを軽減させることができる。
かかるマスクであって、前記冷感層は、前記冷感剤が内包されたマイクロカプセルを備え、前記マイクロカプセルの物理的な破損によって、内包された前記冷感剤が外部に露出されることが望ましい。
このようなマスクによれば、着用者は、着用するタイミングに応じて冷感剤の冷感効果を発揮させることができる。
かかるマスクであって、水分により溶解して香りを発生する香り発生体を具備しないことが望ましい。
このようなマスクによれば、香り発生体を具備しないマスクであっても、着用者は、マスクを着用したときからマスクによる冷感を実感しやすくなる。
かかるマスクであって、前記吸熱剤は、不揮発性であり、前記冷感剤は、揮発性であることが望ましい。
このようなマスクによれば、揮発性の冷感剤によって、着用者は、マスクを装着したときから冷感剤の冷感効果を感じることができる一方で、不揮発性の吸熱剤によって、マスクの使用前から吸熱剤が揮発して冷感機能を軽減させてしまうことを軽減させることで、着用者が冷感を実感する持続性を高めることができる。
かかるマスクであって、前記吸熱層は、第1不織布に前記吸熱剤が配された層であり、前記冷感層は、第2不織布に前記冷感剤が配された層であり、少なくとも前記第1不織布は、それぞれ親水性繊維を含むことが望ましい。
このようなマスクによれば、第1不織布の親水性繊維によって、第1不織布内に水分が保持されやすくなり、吸熱剤の吸熱反応が起こりやすくなるため、冷感効果が高まる。
===本実施形態===
以下、本発明のマスクとして、第1実施形態では、所謂プリーツタイプの使い捨てマスク1(以下、「マスク1」ともいう。)を例に挙げ、第2実施形態では、所謂カップタイプの使い捨てマスク2(以下、「マスク2」ともいう。)を例に挙げて説明する。マスク1、及びマスク2は、洗濯しながら繰り返し使用されるガーゼ等の綿繊維や合成繊維等の布で形成されたマスクやウレタン素材で形成されたマスクとは異なり、ウィルス飛沫や細菌飛沫を捕集するためのフィルタ層としてフィルタ部材11、41(後述)を備える。マスク1及びマスク2は、洗濯によってフィルタ部材11、41の捕集効果が軽減することを防止するために、使い捨て用として使用されることを想定したマスクである。ただし、本発明のマスクとしては、ガーゼ等の綿繊維や合成繊維等の布で形成されたマスクやウレタン素材で形成されたマスクであってもよい。また、フィルタ層を備えないマスクであってもよい。さらに、マスクが、耳掛け部を備えず、マスク本体部のみで構成され、粘着テープ等の任意の固定手段で着用者の顔にマスクを固定して着用するものであってもよい。
==第1実施形態==
図1は、第1実施形態の使い捨てマスク1の非肌側から見た平面図である。図2は、マスク1の肌側から見た平面図である。図3は、図1のI-I線におけるマスク本体部10の断面図である。なお、図3は、溶着部14を省略して示している。各図は、使用前のマスク1を示している。
(マスク1の基本構成)
マスク1は、少なくとも着用者の口元と鼻孔を覆うことができるマスク本体部10と、着用者の耳に掛けられる耳掛け部20を有する。マスク本体部10は、上下方向、左右方向、及び厚さ方向を有する。厚さ方向において、着用者の顔面と対向する内側を肌側又は肌面側とも呼び、その反対側である外側を非肌側又は非肌面側とも呼ぶ。
使用前のマスク本体部10は、厚さ方向から見た平面視(図1、図2)において、左右方向に長い矩形形状を成している。マスク本体部10は、フィルタ部材(フィルタ層)11と、フィルタ部材11の肌面側に設けられた肌側不織布(吸熱層)17と、フィルタ部材11と肌側不織布17との間に設けられた非肌側不織布(冷感層)18と、を有する。平面視において、フィルタ部材11と肌側不織布17と非肌側不織布18は、略同じ大きさで、略同じ形状を有している。
フィルタ部材11(「フィルタ層11」ともいう。)は、少なくともウィルス飛沫、細菌飛沫、又は花粉等のいずれかの微粒子を捕集するための部材である。マスク1のフィルタ部材11は、ウィルス飛沫や細菌飛沫や花粉等の微粒子の捕集効果が高い部材である。具体的には、フィルタ部材11は、BFE(バクテリアろ過効率試験:試験粒子約3μm)が95%以上であることと、VFE(ウィルスろ過効率試験:試験粒子約1.7μm)が95%以上であることと、の少なくとも一方を満たす部材であることが好ましい。
フィルタ部材11としては、ポリオレフィン系繊維からなる不織布が誘電分極された(エレクトレット処理された)シートを例示できる。エレクトレット処理によって、ポリオレフィン系繊維表面に所定量の正電荷或いは負電荷を与えて分極させた誘電状態が形成され、捕集機能が得られる。
また、フィルタ部材11の通気抵抗値は、0.45kPa・s/m以下であるとよく、好ましくは、0.3kPa・s/m以下であるとよい。フィルタ部材11の通気抵抗値が0.45kPa・s/mよりも高い場合、マスク1が後述の吸熱剤70や冷感剤80を有していても、着用者がマスク1内の蒸れを感じやすくなる恐れがある。そのため、吸熱剤70及び冷感剤80の冷感効果に加えて、フィルタ部材11の通気性を適度に保つことで、夏の暑い時期等にも、マスク1内の蒸れを改善できる。
フィルタ部材11の通気抵抗値の測定は、周知の方法で行うことができる。例えば、コールドスプレー等を用いてマスク1からフィルタ部材11を分離し、フィルタ部材11を所定の大きさ(例えば直径100mmの円形)に切り出してサンプルとする。そして、カトーテック社製通気性試験機(KES-F8)又はそれと同等の通気性試験機を用いて、標準通気速度を2cm/sに設定し、サンプルの通気抵抗値を測定する。かかる測定を複数回(例えば5回)行い、その平均値を、フィルタ部材11の通気抵抗値とすることができる。
具体的には、フィルタ部材11として、ポリオレフィン系繊維であるポリプロピレン繊維を含み、エレクトレット処理されたメルトブロー不織布と、ポリプロピレン繊維を含み、エレクトレット処理されたスパンボンド不織布とが、一体状に形成された、継ぎ目等のない1枚の不織布シートを例示できる。肌側に配されるメルトブロー不織布の平均繊維径が0.5~3μm、坪量が1.5~5g/m2であるとよい。非肌側に配されるスパンボンド不織布の平均繊維径が15~30μm、坪量が18~50g/m2であるとよい。また、上記不織布は、ポリプロピレン繊維のみによって構成されてもよいし、ポリプロピレン繊維に例えばポリエチレン繊維が付加されたものであってもよい。また、非肌側の不織布は、スパンボンド不織布に限らず、スパンレース不織布、エアスルー不織布、ニードルパンチ不織布であってもよい。ただし、上記に限定されず、フィルタ部材11はエレクトレット処理されていないものであってもよい。例えば、繊維間隙の小さい部材であり、繊維間隙にウィルス飛沫等を付着させて捕集する部材(ナノフィルタ等)をフィルタ部材11としてもよい。
肌側不織布17は、吸熱剤70が配された吸熱層17である。以下、肌側不織布17を「吸熱層17」ともいう。肌側不織布17は、吸熱剤70を配することが可能な不織布であればよい。好ましくは、肌触りの良い不織布であるとよく、ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布等を例示できる。
非肌側不織布18は、冷感剤80が配された冷感層18である。以下、非肌側不織布18を「冷感層18」ともいう。非肌側不織布18は、冷感剤80を配することが可能な不織布であればよい。好ましくは、肌触りの良い不織布であるとよく、ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布等を例示できる。
マスク1は、マスク本体部10の上下方向の中央部において、フィルタ部材11、肌側不織布17、及び非肌側不織布18が、左右方向に沿う折り目Fによってプリーツ状に折り畳まれて、襞が形成されたプリーツタイプである。図3に示すマスク本体部10は、非肌側から視認可能な4つの折り目F1~F4と、肌側から視認可能な4つの折り目F5~F8とを有する。折り目F1、F2、F7、F8は上側に凸となる山折り部であり、折り目F3、F4、F5、F6は下側に凸となる谷折り部である。ただし、折り目Fの数や向きは図3に例示する構成に限定されない。
使用前のマスク1は、図1等に示すように、プリーツ状の折り畳み形状が維持されており、マスク本体部10はほぼ平坦な状態である。プリーツ状の折り目F1~F8によって、マスク本体部10は上下方向に広がることが可能となり、また、非肌側にΩ形状に隆起可能となる。よって、図4に示すように、マスク1の着用者は、鼻から顎までの長さに応じてマスク本体部10を上下方向に広げ、マスク本体部10で口元と鼻孔を覆うことができる。図4は、マスク1の着用状態を示す図である。
また、マスク本体部10の上端部100X及び下端部100Yは、それぞれ肌側不織布17及び非肌側不織布18が非肌面側に折り返された折返し部101を有する。なお、以下の説明では、厚さ方向に折返し部101と重なるマスク本体部10の部位を非折返し部102と呼ぶ。折返し部101によって、マスク本体部10の上下端部の強度が高まる。また、肌側不織布17、非肌側不織布18及びフィルタ部材11の開きを抑制できる。
マスク本体部10は、重なり合うシート同士を接合一体化する溶着部14、例えば熱溶着や超音波溶着等による溶着部14を有する。図1等に示すように、マスク本体部10の横方向の両側部では、フィルタ部材11、肌側不織布17及び非肌側不織布18を接合する複数の溶着部14が上下方向に沿って設けられている。また、マスク本体部10の上下端部及び上下方向の中央部では、フィルタ部材11、肌側不織布17及び非肌側不織布18を接合する複数の溶着部14が左右方向に沿って設けられている。ただし、溶着部14のパターンは図1に例示するものに限定されない。また、重なり合う部材同士が接着剤等(例えばホットメルト接着剤)で接合されていてもよい。
また、図3に示すように、マスク本体部10の上端部では、折返し部101と非折返し部102において、折り返された非肌側不織布18同士の間に、形状保持部材15が配されている。形状保持部材15は、薄板矩形の部材であり、着用者が容易に曲げることができると共に、再び外力が掛からない限り、その形状が保持される部材である。形状保持部材15として、可撓性の熱可塑性樹脂や金属片で形成されたもの等を例示できる。マスク1の着用者は、鼻の形に合わせて形状保持部材15を変形させることができ、マスク本体部10の上端部と着用者の顔面との間に隙間が生じてしまうことを抑制できる。また、形状保持部材15の上下方向の両側に溶着部14が設けられ、形状保持部材15の位置ずれが抑制されている。
耳掛け部20は、着用時において、マスク本体部10の左右方向の両側部からそれぞれ延出したリング状の部材である。耳掛け部20は、伸縮性を有する部材であることが好ましく、例えば、ゴム紐、伸縮性不織布、伸縮性フィルム等を例示できる。具体的には、図2に示すように、マスク1の一対の耳掛け部20は、伸縮性不織布で形成されており、それぞれ左右方向及び上下方向における中央部に、耳に掛けるための開口部21が設けられている。また、使用前のマスク1を肌面側から見たときに、マスク本体部10の平面形状に収まるように、左右方向の両側にそれぞれ耳掛け部20が設けられている。耳掛け部20は、左右方向における両端部に位置する接合部16でマスク本体部10の肌側面に接合されている。接合部16は、上下方向に沿っており、伸縮不織布(20)をマスク本体部10に接合している。使用前において、一対の耳掛け部20は、マスク本体部10の肌面側の左右方向の中央部における連結部22で連続している。着用者は、着用の際に、連結部22を破断させることで、図4に示すように、各耳掛け部20を着用者の両耳に掛けてマスク1を着用することができる。なお、接合部16の接合としては、溶着や接着剤による接合を例示できる。
(吸熱層17及び冷感層18を有するマスク1について)
マスクの着用により、ウィルス飛沫等の微粒子の侵入を抑制できる一方で、着用者の湿った息でマスク内が蒸れやすいという問題が生じる。特に夏の暑い時期等には、マスク内の蒸れで熱中症が発生する恐れがある。
これに対し、本実施形態のマスク1には、吸熱剤70を備える吸熱層17(肌側不織布17)と、冷感剤80を備える冷感層18とが、厚さ方向に隣接しており、冷感層18が、吸熱層17の非肌面側と対向するように設けられている。吸熱剤70とは、水と反応して吸熱反応を起こす剤である。冷感剤80とは、着用者の肌に触れると着用者に冷感や清涼感を与える剤である。
吸熱層17は、肌側の不織布(肌側不織布17)に吸熱剤70が配された層であり、冷感層18は、非肌側の不織布(非肌側不織布18)に冷感剤80が配された層である。肌側不織布17は、親水性繊維を含むことが好ましい。より好ましくは、肌側不織布17に親水性繊維が50%以上含まれているとよい。そうすることで、肌側不織布17では、着用者の息に含まれる水分が保持されやすく、肌側不織布17の吸熱剤70が水分と接触しやすくなり、接触時間も長くなる。よって、吸熱剤70による吸熱反応が起こりやすくなる。
親水性繊維としては、例えば、レーヨン等の再生セルロース繊維、コットンや粉砕パルプ等の天然セルロース繊維、アセテート等の半合成セルロール繊維等が挙げられる。また、疎水性繊維(例えば、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維等)に、親水性処理を施して、親水性に変性させた繊維であってもよい。親水性繊維の判断は、例えば、繊維の接触角が90度未満であれば、親水性が高い繊維と判断できる。ただし上記に限定されず、必ずしも肌側不織布17が親水性繊維を含まなくてもよい。
マスク1は、吸熱層1を備えることで、着用者の湿った息が肌側不織布17の吸熱剤70に接触し、吸熱剤70が吸熱反応により、マスク1の表面温度が低下させることでため、マスク1内の蒸れを改善できる。
特に、マスク1は、フィルタ部材11を有しており、ウィルス飛沫等を捕集するためのフィルタ部材11は、肌側不織布17や非肌側不織布18に比べて通気性が低い(通気抵抗値が高い)。そのため、フィルタ部材11を有さないガーゼ等のマスクに比べて、マスク1は、着用中に、着用者の息がマスク1の外に排出され難く、マスク1内の空間の密閉度が高くなりやすい。つまり、着用者の吐いた息や吸熱剤70がフィルタ部材11を通過し難く、マスク1内に留まりやすい。これに対し、マスク1が吸熱剤70を備えることで、着用者の息と吸熱剤70との接触によって、マスク1の表面温度が低下させることができ、マスク1内の蒸れを改善して、着用者はマスク1内の冷感を実感しやすくなる。また、着用者の呼吸によって、吸熱剤70を含んだ息がフィルタ部材11の内側において循環しやすいため、冷感効果の持続性も高まる。
また、通常、マスクの外周端部は着用者の肌に密着しやすいが、マスクの中央部では着用者との間に空間が生じやすい。そのため、接触冷感を付与するマスクでは、着用者の息により蒸れやすいマスクの中央部(鼻孔や口元部分)において、着用者の肌は保湿剤と接触し難く、着用者は冷感を実感し難い。これに対し、吸熱剤70の吸熱反応を利用することで、外気温に影響され難く、夏の暑い時期にもマスク1の表面温度を下げることができ、マスク1内の蒸れを改善できる。また、本実施形態のマスク1では、マスク1の表面温度を下げるため、マスク1と着用者の肌が接触していない部分でも、着用者は冷感を実感できる。特に、着用者の息により蒸れやすいが、着用者の肌と空間が生じやすいマスク1の中央部(鼻孔や口元部分)においても、着用者は冷感を実感できる。
しかし、仮に、マスク1が、吸熱層17(吸熱剤70)のみを有し、冷感層18(冷感剤80)を有さない場合には、着用者の息の水分と吸熱剤70に接触し、吸熱剤70が吸熱反応を起こし、マスク1の表面温度を低下させるまでに所定の時間を要するため、着用者がマスク1を着用してから、吸熱反応でマスク1の表面温度を下げるまでの間、着用者がマスク1の着用による蒸れを感じてしまう恐れがある。
そこで、マスク1は、吸熱層17だけでなく、冷感層18も備える。冷感層18の冷感剤80は、着用者の肌に触れることで着用者に冷感を与えることができるため、マスク1を着用した際に、直接、マスク1の外周端部が着用者の肌に当接することで冷感剤80が着用者の肌に触れたり、冷感剤80が揮発性物質の場合には、揮発した冷感剤80と着用者の肌とが接触することで、着用者は、冷感剤80による冷感を実感することができる。マスク1は、図3に示すように、揮発した冷感剤80が、冷感層80より肌面側に設けられている吸熱層17を通過して、着用者の肌に到達することで、着用者は、冷感剤80の効果を感じることができる。
つまり、着用者は、マスク1を着用したときには、まず、冷感層18の冷感剤80による冷感や清涼感を感じることができる。そして、その後、吸熱剤70の吸熱反応によるマスク1の表面温度の低下を実感することができる。そのため、着用者は、マスク1を着用したときから冷感を実感することができ、マスク1の着用による蒸れを改善し、息苦しさを軽減でき、熱中症の発生を抑制も可能となる。また、着用者は、マスク1を着用した直後は、冷感剤80による冷感効果を実感することができ、所定の時間経過後には、吸熱剤70による冷感効果を実感することができるため、吸熱剤70のみを備えたマスク又は冷感剤80のみを備えたマスクよりも、マスク1の着用直後から長時間、冷感効果を得ることができる。
吸熱剤70(吸熱成分)としては、糖アルコール類、及び、糖類のうちの何れか1つを含むことが好ましい。糖アルコール類としては、キシリトール、エリスリトール、デキストロース、ソルビトール等を例示できる。糖類としては、トレハロース、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)等を例示できる。これらの吸熱剤70であれば、マスク1の着用者の口元に触れた際にも安全である。なお、吸熱剤70は、必要に応じて、冷感成分を溶解ないし分散させる溶媒成分を含んでいてもよい。
冷感剤80は、それ自体が吸熱せずに着用者の皮膚の冷感知覚受容器(温度感受性TRPチャネル)を刺激して、着用者に冷感を知覚させる冷感成分を含むものが好ましい。必要に応じて、冷感成分を溶解ないし分散させる溶媒成分を含んでいてもよい。冷感剤80(冷感成分)としては、例えば、メントール(例えば、l-メントール等);メントール誘導体(例えば、乳酸メンチル、メンチルグリセリルエーテル等);サリチル酸メチル;ミントやユーカリ等の植物由来の精油等が挙げられる。このような冷感知覚受容器を刺激する冷感剤80を用いることで、着用者に冷感を感じさせやすくなる。なお、冷感剤80としては、吸熱剤70の吸熱反応によるマスク1の表面温度を低下させるまでの時間よりも早く着用者に冷感剤80による冷感を知覚させることができる物質を用いることが好ましい。
また、前述したように、フィルタ部材11は、ポリオレフィン系繊維からなる不織布が誘電分極された(エレクトレット処理された)シートである。このように、電荷により捕集機能を有するフィルタ部材11は、アルコールの付着により捕集機能が軽減してしまう。そのため、上記のフィルタ部材11を採用する場合、吸熱剤70及び冷感剤80は、アルコールを含まないことが好ましい。そうすることで、フィルタ部材11の捕集効果が軽減してしまうことを防止できる。例えば、吸熱剤70及び冷感剤80に含まれる溶媒が、水系溶媒であることが好ましい。また、例えば、アルコール系溶媒に吸熱成分を溶解,分散した溶液を肌側不織布17、非肌側不織布18に塗布する場合、マスク1の製造ラインにおいて、アルコール系溶媒が気化した後に、肌側不織布17及び非肌側不織布18をフィルタ部材11に合流させるとよい。そうして、マスク1に配された状態の吸熱剤70及び冷感剤80にはアルコールが含まれないようにするとよい。
また、冷感剤80が揮発性の物質であり、吸熱剤70は不揮発性の物質であることが好ましい。揮発性の冷感剤80によって、マスク1を使用した直後から揮発した冷感剤80が着用者の肌に冷感や爽快感を付与しやすくなり、一方で、不揮発性の吸熱剤70によって、マスク1の使用前に吸熱剤70が揮発しないため、吸熱剤70の効果が低減してしまう恐れを軽減させることができる。また、冷感剤80が冷感効果を発揮する時間と、吸熱剤70が冷感効果を発揮する時間とをずらすことができるため、着用者は、マスク1の着用直後から長時間に亘って冷感効果をじっかんすることができる。なお、揮発性の冷感剤80とは、一般生活環境下で気体となり、沸点が100℃未満である物質とする。不揮発性の吸熱剤70とは、一般生活環境下で気体とならず、沸点が100℃以上である物質とする。
吸熱剤70は、液体状であっても、固体状(ジェル状、粉体状等も含む)であってもよい。マスク1の吸熱層17には、液体状の吸熱剤70が内包されたマイクロカプセルが配されている。このマイクロカプセルは、外部からの圧力(衝撃、摩擦)等の物理的な刺激により膜材が崩壊(破損)して、内部の吸熱剤70が露出したり、放出したりする。マスク1の吸熱剤70を内包するマイクロカプセルの膜材は、ウレタン樹脂である。閉じられたマイクロカプセルの膜材に吸熱剤70が内包された状態のマイクロカプセルを「吸熱剤70」ともいう。なお、吸熱剤70は、必ずしもマイクロカプセルに内包しなくてもよく、液体状又は固体状の吸熱剤70を直接、吸熱層17としての不織布(肌側不織布17)に塗布又は散布してもよい。
冷感剤80は、液体状であっても、固体状(ジェル状、粉体上等も含む)であってもよい。マスク1の冷感層18には、液体状の冷感剤80が内包されたマイクロカプセルが配されている。このマイクロカプセルは、吸熱剤70と同様に、外部からの圧力(衝撃、摩擦)等の物理的な刺激により膜材が崩壊(破損)して、内部の冷感剤80が露出したり、放出したりする。マスク1の冷感剤80を内包するマイクロカプセルの膜材は、吸熱剤70のマイクロカプセルと同様に、ウレタン樹脂である。閉じられたマイクロカプセルの膜材に冷感剤80が内包された状態のマイクロカプセルを「冷感剤80」ともいう。なお、冷感剤80は、必ずしもマイクロカプセルに内包しなくてもよく、液体状又は固体状の冷感剤80を直接、冷感層18としての不織布(非肌側不織布18)に塗布又は散布してもよい。
マスク1に用いる吸熱剤70及び冷感剤80は、それぞれウレタン樹脂を膜材とするマイクロカプセルに内包したが、これに限られない。外部からの圧力(物理的な刺激)によって崩壊(衝撃、摩擦)する所定の強度を有するものであればよい。例えば、ゼラチン、ゼラチン・アラビアゴム、メラミン樹脂、尿素・ホルマリン樹脂などであってもよい。これらの樹脂は単独で用いても、二種類以上の樹脂を併用してもよい。また、マイクロカプセルとしては、例えば、熱、光、液体等の物理的又は化学的な刺激により膜材を破損させて、吸熱剤70及び冷感剤80を放出させるものであってもよい。吸熱剤70及び冷感剤80をマイクロカプセルに内包することで、吸熱層17及び冷感層18の不織布の繊維間に留めやすくなる。
本実施形態のように、吸熱剤70と冷感剤80が、それぞれマイクロカプセルに内包されていることで、マスク1の着用前に、直接塗布された液体状又は固体状の吸熱剤70と冷感剤80がマスク1から滑落したり、冷感剤80のように揮発性の物質が揮発したりして、失われてしまう恐れを軽減させることができる。着用者は、マスク1を着用する際に、まず、マスク本体部10の全域に亘って軽く叩くことが好ましい。叩くことで、所定の物理的な刺激(圧力)が加えられて、吸熱層17と冷感層18のそれぞれのマイクロカプセルが破損(崩壊)して、内包されている吸熱剤70と冷感剤80がそれぞれ外部に露出される。吸熱剤70と冷感剤80が露出した状態のマスク1を着用した着用者は、吸熱剤70と冷感剤80の効果を得やすくなる。また、吸熱剤70と冷感座80が、それぞれ同じ素材のマイクロカプセルの膜材に内包されていることで、着用者が使用前にマスク1を叩くという1つの動作で、一度に吸熱剤70と冷感剤80とを露出させることができ、その効果を発揮しやすくなる。
また、吸熱層17の形成及び冷感層18は、同様の方法で形成することができる。例えば、冷感剤80は、非肌側不織布18を構成する繊維の少なくとも一部に練り込まれているとよい。つまり、非肌側不織布18を形成する前段階で冷感剤80が配されるように、例えば、非肌側不織布18を形成する前の繊維ウェブを冷感剤80(溶液)に含浸させたり、樹脂に冷感剤80を混ぜてから繊維を形成したりするとよい。また、冷感剤80が混ざったバインダーを繊維ウェブに塗布してもよい。そうすることで、非肌側不織布18から冷感剤80が脱落し難く、徐々に冷感剤80の機能が発揮され、冷感剤80による冷感効果の持続性が高まる。
しかし、上記に限定されず、非肌側不織布18を構成する繊維の表面に冷感剤80を配してもよい。例えば、噴霧法やローラーコート法、刷毛塗り法等の各種公知の塗布方法で、非肌側不織布18に冷感剤80を塗布したり、冷感剤80(溶液)に非肌側不織布18を浸漬したりしてもよい。
吸熱剤70は、肌側不織布17の全域に配されていてもよいし、肌側不織布17の平面の一部に配されていてもよい。また、吸熱剤70は、肌側不織布17に一定の坪量(単位面積当たりの量:g/m2)で配されていてもよいし、肌側不織布17の領域に応じて異なる坪量で配されていてもよい。
冷感剤80は、非肌側不織布18の全域に配されていてもよいし、非肌側不織布18の平面の一部に配されていてもよい。また、冷感剤80は、非肌側不織布18に一定の坪量(単位面積当たりの量:g/m2)で配されていてもよいし、肌側不織布17の領域に応じて異なる坪量で配されていてもよい。
また、吸熱剤70が配された吸熱層17が、マスク1における最も肌側の面を形成していることが好ましい。具体的には、図3に示すマスク1のマスク本体部10のように、最も肌側の面に吸熱層17が配置され、最も非肌側の面にフィルタ層11が配置され、吸熱層17とフィルタ層11との間に、冷感層18が設けられていることが好ましい。
上述のとおり、吸熱剤70は、着用者の湿った息との接触によって吸熱反応が起き、マスクの表面温度を下げる。そのため、吸熱剤70が配された肌側不織布17をマスク本体部10の最も肌側に設けることで、吸熱剤70は着用者の息と接触しやすくなり、冷感効果が高まる。また、着用者の肌に近い位置で吸熱反応が起こすことができるため、マスク1の表面温度が下がると、着用者は冷感を実感しやすくなる。
また、冷感層18が、フィルタ層11と吸熱層17との間に設けられていることで、冷感層18がフィルタ層11と吸熱層17で挟まれた構成となる。そのため、冷感剤80がマイクロカプセルに内包された状態で、非肌側不織布18に配されている場合でも、マイクロカプセルが冷感層18から脱落しづらくなり、冷感剤80の効果が低減する恐れを軽減させることができる。また、冷感剤80がマイクロカプセルに内包されておらず、冷感剤80そのものが液体で非肌側不織布18に塗布されている場合であっても、冷感層18の両面をフィルタ層11と吸熱層17で覆うことで、冷感剤80の揮発を低減させて、冷感剤80の効果が低減する恐れを軽減させることができる。
さらに、フィルタ層11の非肌側面が、マスク本体部10(マスク1)の非肌側面の少なくとも一部を形成しており、吸熱層17の肌側面が、マスク本体部10(マスク1)の肌側面の少なくとも一部を形成し、フィルタ層11と吸熱層17の間に冷感層18が設けられていることが好ましい。そうすることで、フィルタ層11を備えるようなマスク1であっても、マスク本体部10において厚さ方向に積層されるシートの数を少なくすることができ、マスク1内の空間を蒸れ難くすることができる。
ただし、マスク本体部10の構成は上記に限定されず、例えば、フィルタ層11よりも非肌側や、吸熱層17よりも肌側、フィルタ層11と吸熱層17の間に、別のシートが配されていてもよい。また、フィルタ層11、吸熱層17及び冷感層18について、積層させる順番を異ならせてもよい。
吸熱層17の通気抵抗値が、冷感層18の通気抵抗値より高いことが好ましい(吸熱層17の通気抵抗値>冷感層18の通気抵抗値)。これによって、着用中における着用者の息(呼気)を、通気抵抗値の高い吸熱層17内により多く保持しやすくなるため、吸熱剤70と着用者の息との吸熱反応をさせやすくなり、マスク1の表面温度を下げやすくなる。なお、吸熱層17の通気抵抗値及び冷感層18の通気抵抗値の測定は、それぞれ周知の方法で行うことができる。例えば、上述のフィルタ部材11の通気抵抗値の測定方法を用いることができる。
さらに、フィルタ層11の通気抵抗値が、吸熱層17の通気抵抗値よりも高いことが好ましい。つまり、フィルタ層11の通気抵抗値が、吸熱層17の通気抵抗値よりも高く、吸熱層17の通気抵抗値が、冷感層18の通気抵抗値より高いことがより好ましい(フィルタ層11の通気抵抗値>吸熱層17の通気抵抗値>冷感層18の通気抵抗値)。そうすることで、フィルタ層11におけるウィルス飛沫や細菌飛沫や花粉等の微粒子の捕集効果を維持しつつ、吸熱層17に適度に留めた着用者の息と吸熱剤70との吸熱反応を促しやすくなるため、吸熱効果及びその持続性を高めることができる。また、冷感剤80がフィルタ層11を通して外部に流出(揮発)する恐れを軽減させることができるため、冷感効果及びその持続性を高めることができる。
より好ましくは、吸熱剤70は、肌側不織布17の肌側面に塗布されているとよい。吸熱剤70を着用者の肌に近い位置に配することで、吸熱剤70は着用者の息とより接触しやすくなり、吸熱反応が促され、冷感効果が高まる。また、着用者の肌に近い位置にて吸熱反応が起こるため、着用者は、マスク1の表面温度が下がったことを実感しやすくなる。同様に、冷感剤80は、非肌側不織布18の肌側面に塗布されているとよい。冷感剤80を着用者の肌に近い側に配することで、冷感剤80が着用者の肌に触れやすくなり、着用者は、冷感剤80による冷感効果を実感しやすくなる。ただし、上記に限定されず、肌側不織布17の非肌側面又は両面に吸熱剤70が塗布されていてもよく、非肌側不織布18の非肌側面又は両面に冷感剤80が塗布されていてもよい。
また、マスク1は、マスク本体部10の上下方向の中央部において、フィルタ部材11、肌側不織布17及び非肌側不織布18がプリーツ状に折り畳まれている。マスク1の着用時において、マスク本体部10の左右方向の中央部ではプリーツ部分が上下方向に広げられる。しかし、マスク本体部10の左右方向の両側部では、フィルタ部材11、肌側不織布17及び非肌側不織布18がプリーツ状に折り畳まれた状態で溶着部14により接合されていることになる。また、マスク本体部10の左右方向における全域に亘って、上端部100X及び下端部100Yにおいて、フィルタ部材11、肌側不織布17及び非肌側不織布18が折り返された状態で溶着部14により接合されている。
つまり、マスク本体部10の左右方向の両側部では、マスク1の着用時にも、図3に示す断面の状態が維持される。具体的には、マスク1の上下端部100X、100Yでは、折返し部101によって、吸熱層17が厚さ方向に2層に重なっており、冷感層18が厚さ方向に2層に重なっている。上下方向の中央部は、プリーツによって、吸熱層17及び冷感層18がそれぞれ厚さ方向に3層に重なっている部分を有する。
なお、マスク1のように、上側及び下側の折返し部101を有する場合におけるマスク本体部10の「上端部100X」は、上側の折返し部101であり、「下端部100Y」は、下側の折返し部101であり、「中央部100Z」は、折返し部101を有さない部分であって、上下方向における上端部100Xと下端部100Yとの間の部分である。マスク1のような折返し部101を有さないマスクの場合は、マスク本体部10の上下方向の上半分の長さを4等分したときの、最も上側の部分(上半分の上側の1/4の長さの部分)が「上端部」であり、マスク本体部10の上下方向の下半分の長さを4等分したときの、最も下側の部分(下半分の下側の1/4の長さの部分)が「下端部」であり、上下方向における上端部と下端部との間が「中央部」である。また、マスク本体部10の左右方向について、マスク本体部10の左右方向の一方側(左側)の長さを4等分したときの、最も一方側の部分(左半分の左側の1/4の長さの部分)が一方側の「側部」であり、マスク本体部10の左右方向の他方側(右側)の長さを4等分したときの、最も他方側の部分(右半分の右側の1/4の長さの部分)が他方側の「側部」であり、両側部の間の部分を「中央部」という。
このようなプリーツ状の折り目Fを有するマスク1において、マスク本体部10の形成時に、非肌側不織布18の全域に一定に冷感剤80が配された後に折り目Fが形成されることで、非肌側不織布18が2層に重なる上下端部100X、100Yに比べて、非肌側不織布18が3層に重なる上下方向の中央部100Zにおいて、冷感剤80の坪量(g/m2)が高い部分を設けることができる。具体的には、図3に示すように、使用前のマスク本体部10の非肌側不織布18が3層に重なる部分Hは、上下端部100X、100Yより、冷感剤80の坪量が高い部分となる。
これによって、マスク本体部10全体の上下方向において、上下端部100X、100Yよりも中央部100Zの冷感効果を高めることができる。マスク1の着用時において、マスク本体部10の左右方向の中央部ではプリーツ部分が上下方向に広げられるが、完全に広げられることはなく、一部では非肌側不織布18が3層に重なり、冷感剤80の坪量が高い部分Hが維持される。また、着用時において、マスク本体部10の上下方向における中央部100Zは、着用者の鼻孔や口元に近いため、冷感剤80による冷感効果を感じやすい。そのため、その部分に配する冷感剤80の坪量を高くすることで、着用者は、冷感剤80による冷感効果をより得やすくなる。
さらに、肌側不織布17の全域に一定に吸熱剤70を配し、プリーツ状の折り部Fを形成することで、肌側不織布17が2層に重なる上下端部100X、100Yに比べて、肌側不織布17が3層に重なる上下方向の中央部100Zにおいて、吸熱剤70の坪量(g/m2)が高い部分を設けることができる。図3に示すように、使用前のマスク本体部10の肌側不織布17が3層に重なる部分Hは、上下端部100X、100Yより、吸熱剤70の坪量が高い部分となる。また、マスク1の着用時でも、マスク本体部10の左右方向の中央部ではプリーツ部分が上下方向に広げられるが、完全に広げられることはなく、一部では肌側不織布17が3層に重なり、吸熱剤70の坪量が高い部分Hが維持される。
冷感剤80だけでなく、中央部100Zに配する吸熱剤70の坪量を、上下端部100X、100Yに配する吸熱剤70の坪量より高くすることで、中央部100Zの冷感効果をより高めることができる。着用者は、鼻孔や口元に近い中央部100Zにおいて、着用者の息とより多くの吸熱剤70とが接触しやすくなるため、吸熱剤70の効果を感じやすくなり、マスク1の冷感効果を実感しやすくなる。
また、上述のとおり、プリーツ状の折り目Fを有するマスク1の左右方向におけるマスク本体部10の両側部は、マスク1の着用時にも、溶着部14によって、マスク1の上下端部100X、100Yは、折返し部101によって、冷感層18が厚さ方向に2層に重なり、上下方向の中央部100Zは、プリーツによって、冷感層18が厚さ方向に3層に重なる部分を有する(図3)。そのため、冷感剤80が非肌側不織布18の全域に一定に配された後に折り目Fが形成されることで、非肌側不織布18が2層に重なる上下端部100X、100Yより、非肌側不織布18が3層に重なる上下方向の中央部100Zの冷感剤80の坪量(g/m2)を高くすることができる。マスク本体部10の両側部も同様に、使用前のマスク本体部10の非肌側不織布18が3層に重なる部分Hは、上下端部100X、100Yより、冷感剤80の坪量が高い部分となる(図3)。
着用中のマスク本体部10のうち左右方向における両側部は、着用者の頬と接触、又は近接する部分である。その着用者の頬と接触する部分、又は近接する部分において、着用者の鼻孔や口元に近い中央部100Zの冷感剤80の坪量を上下端部100X、100Yの冷感剤80の坪量より高くすることで、着用者は、頬の着用者の鼻孔や口元に近い中央部100Zでマスクの冷感を実感しやすくなる。特に、マスク本体部10の左右方向の両側部には、耳掛け部20が接合されている。そのため、マスク本体部10の左右方向の両側部は、耳掛け部20の伸長力により着用者の肌(頬)に密着しやすく、着用者は冷感剤80の冷感効果を実感しやすい。
さらに、肌側不織布17の全域に一定に吸熱剤70を配し、プリーツ状の折り部Fを形成することで、プリーツ状の折り目Fを有するマスク1の左右方向におけるマスク本体部10の両側部では、肌側不織布17が2層に重なる上下端部100X、100Yに比べて、肌側不織布17が3層に重なる上下方向の中央部100Zにおいて、吸熱剤70の坪量(g/m2)を高くすることができる。吸熱剤70も同様に、使用前のマスク本体部10の肌側不織布17が3層に重なる部分Hは、上下端部100X、100Yより、吸熱剤70の坪量が高い部分となる(図3)。
左右方向におけるマスク本体部10の両側部において、冷感剤80だけでなく、中央部100Zに配する吸熱剤70の坪量を、上下端部100X、100Yに配する吸熱剤70の坪量より高くすることで、着用者の頬と接触する部分、又は近接する部分の、鼻孔や口元に近い中央部100Zにおいて、着用者の息とより多くの吸熱剤70とが接触しやすくなる。そのため、冷感剤80だけでなく、吸熱剤70による冷感効果も得やすくなり、マスク1の冷感効果を実感しやすくなる。
なお、肌側不織布17及び非肌側不織布18にそれぞれ吸熱剤70及び冷感剤80が配されていることの確認は周知の方法で行うことができる。まず、マスク1から測定対象の肌側不織布17及び非肌側不織布18を取り出し、所定の大きさのサンプルを形成するそのサンプルを、例えばガスクロマトグラフィー装置(Agilent社製の7890B又はそれと同等の装置)を用いて成分解析することで、肌側不織布17及び非肌側不織布18のサンプルがそれぞれ吸熱剤70及び冷感剤80を含むか否かを確認できる。吸熱剤70及び冷感剤80がマイクロカプセルに収容されている場合には、肌側不織布17及び非肌側不織布18のサンプルを電子顕微鏡で観察することで、マイクロカプセル(吸熱剤70及び冷感剤80)の有無を確認できる。
また、非肌側不織布18における上下端部100X、100Yと中央部100Zとの冷感剤80の坪量(g/m2)の比較、及び肌側不織布17における上下端部100X、100Yと中央部100Zとの吸熱剤70の坪量(g/m2)の比較も、上記ガスクロマトグラフィー装置を用いて行うことができる。
(1)まず、マスク1から測定対象の非肌側不織布18を取り出し、上端部100X、下端部100Y、中央部100Zに分離する。分離した上端部100X、下端部100Y、中央部100Zを、さらに所定のサイズ(例えば上下方向×左右方向=20mm×40mm等)の細かいサンプルにカットする。
(2)次に、細かくカットしたサンプルを特定の溶媒に浸漬する等してマイクロカプセルを溶かして、サンプルから、冷感剤80(冷感効果のある成分)と、その他の成分(溶媒等)の混合物を抽出する。
(3)サンプル毎に抽出した混合物を、ガスクロマトグラフィー装置を用いて成分解析する。そして、サンプル毎に、冷感剤(冷感効果のある成分)のピーク値と、その他の成分(溶媒等)のピーク値とを取得し、その他の成分のピーク値に対する冷感剤のピーク値の割合(冷感剤のピーク値/その他の成分のピーク値)を算出する。その割合が、サンプルに設けられていた冷感剤の量に相当するものとする。
(4)最後に、上端部100X、下端部100Y、中央部100Zを構成するそれぞれの複数のサンプルの冷感剤の割合(冷感剤のピーク値/その他の成分のピーク値≒冷感剤80の量)の平均値を算出することで、上端部100X、下端部100Y、中央部100Zにおける冷感剤80の坪量に相当するものとして、比較することができる。
また、冷感剤80がマイクロカプセルに内包されている場合、又は内包されていない場合において、非肌側不織布18のうち、比較対象となる部分からそれぞれ所定の大きさのサンプルを切り出し、切り出したサンプルから冷感剤80を取り除いて、冷感剤80を取り除く前後の重さの差を算出し、その差を比較することで、各サンプルの冷感剤80の坪量の差として比較することができる。例えば、冷感剤80がマイクロカプセルに内包されている場合には、非肌側不織布18の比較対象となる部分からそれぞれ所定の大きさのサンプルを切り出し、各サンプルについて、乾燥状態で重さを測定した後、流体(水流や風流)でマイクロカプセルを落下させ、再度、乾燥状態とした状態の各サンプルの重さを測定し、マイクロカプセルを落下させる前と後の重さの差を算出し、その差を比較することで、各サンプルの冷感剤80の坪量として比較することができる。
なお、肌側不織布17における上下端部100X、100Y、中央部100Zの吸熱剤70の坪量(g/m2)の比較も同様である。
また、図3に示すように、マスク本体部10の上端部100X及び下端部100Yにおける折返し部101と厚さ方向に重なる非折返し部102の肌側面102Aに、すなわち、肌側不織布17の肌側の面に、吸熱剤70が配されていることが好ましい。
マスク本体部10の上下端部100X、100Yがそれぞれ非肌面側に折り返されることで、吸熱層17がマスク本体部10の上端部100X及び下端部100Yを、肌面側から非肌面側に亘って覆うことができる。つまり、マスク本体部10の上下端部100X、100Yにおいて、吸熱剤70が配された肌側不織布17を肌側に設けることができる。マスク本体部10の上端部100X(上部)、下端部100Y(下部)は、着用時に着用者の鼻、頬、顎に当接する部分である。よって、着用者の肌に近い位置にて吸熱剤70の吸熱反応が起こしやすくなり、着用者は冷感を実感しやすい。
また、マスク本体部10の上端部100Xが非肌面側に折り返される場合、上端部の折返し部101の非肌側面(外側面)101A、すなわち肌側不織布17の非肌側面にも吸熱剤70が配されていることが好ましい。着用者の吐いた息は温かいため、マスク本体部10の外に排出された着用者の息は上昇しやすい。そのため、マスク本体部10の外に排出された息が、マスク本体部10の上端部の非肌側面101Aに配された吸熱剤70と接触ができる。よって、マスク本体部10の上端部付近の表面温度を下げることができ、着用者は冷感を実感しやすくなる。また、マスク本体部10の外に排出された息の温度も下がるため、着用者の眼鏡が曇り難くなる。
さらに、図3に示すように、折返し部101において、冷感層18の上下方向の長さ18X(18Y)が、吸熱層17の上下方向の長さ17X(17Y)より短いことが好ましい(18X<17X、18Y<17Y)。マスク1のように、冷感剤80がマイクロカプセルに内包されている場合には、折返し部101において、冷感層18を吸熱層17が非肌面側から覆い、吸熱層17が冷感層18を厚さ方向の両面側から覆っているため、マスク1の使用前に、冷感剤80が内包されたマイクロカプセルが落下したり、破損したりしてしまう恐れを軽減させることができる。また、揮発性の冷感剤80がマイクロカプセルに内包されておらず、非肌側不織布18に液体状又は固体状で配されている場合には、吸熱層17によって覆われていることで、非肌側不織布18の冷感剤80が揮発してしまう恐れを軽減させることができる。
ただし、上記の構成に限定されない。例えば、マスク本体部10の上端部及び下端部が肌面側に折り返されていてもよいし、マスク本体部10の上端部及び下端部のいずれか一方のみが非肌面側に折り返されていてもよい。また、上側の折返し部101の非肌側面に吸熱剤70が配されていなくてもよい。
また、上述の実施形態では、吸熱層17と冷感層18の上端部及び下端部を非肌側に折返して折返し部101を形成したが、これに限られない。吸熱層17又は冷感層18の少なくとも一方を非肌面側に折返してもよい。例えば、吸熱層17のみ非肌面側に折り返し、折返し部101と厚さ方向に重なる非折返し部102の肌側面102A(吸熱層17の肌側の面)に吸熱剤70を配し、冷感層18を非肌面側に折り返さない構成であってもよい。さらに、吸熱層17及び冷感層18に加えて、フィルタ部材11も折返しても良い。また、折返し部101は、肌面側から非肌面側に向かって折り返された部分に限らず、非肌面側から肌面側に向かって折り返された部分であってもよい。吸熱層17と冷感層18のいずれも非肌面側に向かって、又は肌面側に向かって折り返さない構成であってもよい。
図1等に示すように、マスク1は、形状保持部材15を有することが好ましい。形状保持部材15によって、マスク1と着用者(顔面)との間に隙間が生じ難く、マスク1内の空間の密閉度が高まる。そのため、吸熱剤70及び冷感剤80をマスク1の空間内に留めやすくなるため、吸熱剤70及び冷感剤80の冷感効果を高めることができ、また、着用者の息と吸熱剤70の接触時間や循環が増えて、冷感効果やその持続性を高めることができる。ただし上記に限らず、マスク1は形状保持部材15を有していなくてもよい。
また、マスク本体部10において、フィルタ部材11の外周端と、肌側不織布17及び非肌側不織布18の外周端とが一致していることが好ましい。本実施形態のマスク1では、図1等に示すように、フィルタ部材11の左端11cと肌側不織布17の左端17cと非肌側不織布18の左端18cとが一致し、フィルタ部材11の右端11dと肌側不織布17の右端17dと非肌側不織布18の右端18dとが一致している。また、図3に示すように、フィルタ部材11の上端11aと肌側不織布17の上端17a、非肌側不織布18の上端18aとが一致し、フィルタ部材11の下端11bと肌側不織布17の下端17bと非肌側不織布の下端18bとが一致している。なお、上下の折返し部101のシートの厚み分の位置ずれは含まないとする。これによって、マスク本体部10の平面の広範囲に亘って、吸熱剤70及び冷感剤80を配することができるため、マスク1の広範囲で、着用者は、マスク1の冷感を実感することができる。また、マスク本体部10の平面の広い範囲に亘り、フィルタ部材11を配することができ、捕集効果が得られる。ただし上記に限定されず、フィルタ部材11の外周端と肌側不織布17の外周端、非肌側不織布18の外周端とがずれていてもよい。
また、フィルタ部材11は、肌側不織布17に比べて、吸熱剤70及び冷感剤80の坪量が低いことが好ましく、より好ましくは、フィルタ部材11には吸熱剤70及び冷感剤80が配されていないとよい。フィルタ部材11に吸熱剤70及び冷感剤80が付着していることによりフィルタ部材11の捕集機能が軽減してしまうことを抑制できる。
本実施形態のマスク1は、フィルタ層11(フィルタ部材11)と吸熱層17(肌側不織布17)と冷感層18(非肌側不織布18)とを厚さ方向に接合したマスク本体部10を有したが、これに限られない。例えば、マスク本体部10が、吸熱層17と冷感層18のみを厚さ方向に重ねたマスクでもよく、フィルタ層11と吸熱層17と冷感層18と、これらとは別の部材を厚さ方向に重ねていてもよい。
また、フィルタ部材11と吸熱層17(肌側不織布17)と冷感層18(非肌側不織布18)とを備え、更に、マスク本体部10の左右方向の両側部を、肌側及び非肌側から挟むように設けたサイドシート(不図示)を備えていてもよい。このサイドシートに、更なる吸熱剤70又は冷感剤80を配して、冷感効果を向上させてもよい。サイドシートとしては、通気性や肌触りが良好なシートであることが好ましく、例えば、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、エアスルー不織布等を例示できる。
また、第1実施形態のマスク1の耳掛け部20を、伸縮不織布を肌側面に接合することで形成したが、これに限られない。例えば、耳掛け部20を伸縮不織布やゴム紐等を非肌側面に接合して形成したものであってもよい。耳掛け部20を非肌側面から接合することで、耳掛け部20がマスク本体部10を肌側から覆ってしまうことを防止できる。よって、マスク本体部10の左右方向の端部においても、着用者の肌に近い位置に吸熱剤70が配された吸熱層17及び冷感剤80が配された冷感層18を着用者の肌に近づけることができる(肌側に露出させることができる)ため、着用者は冷感を実感しやすくなる。特に、耳掛け部20を接合する接合部16に近接する部分は、耳掛け部20の伸長力により着用者の肌に密着しやすいので、着用者は冷感をより実感しやすくなる。
==第2実施形態==
図5Aは、第2実施形態の使い捨てマスク2(以下「マスク2」とも呼ぶ)の折り畳み状態を示す平面図であり、図5Bは、展開状態のマスク2の正面図である。図6は、着用状態のマスク2の正面図である。図7は、着用状態のマスク2を上から見た概略図である。以下、第2実施形態のマスク2のうち第1実施形態のマスク1と異なる部分について主に説明する。
第2実施形態のマスク2は、マスク本体部40と、耳掛け部50を有する。マスク本体部40は、マスク2の展開状態及びマスク2の着用状態において、上下方向、及び、左右方向を有し、着用者の対向する側を肌側(肌面側)とし、その反対側を非肌側(非肌面側)とする。また、マスク本体部40は、着用者の右顔面及び左顔面をそれぞれ覆う一対のシート部43,44と、一対のシート部43,44を互いに接合する接合部45と、形状保持部材46と、一対のシート部43,44に耳掛け部50を接合する接合部47を有する。接合部45,47は、溶着、圧搾、接着剤等の周知の方法で接合できる。
マスク本体部10の左右方向について、マスク本体部40の左右方向の長さのうち、最も短い部分について、一方側(左側)の長さを4等分したときの、最も一方側の部分(左半分の左側の1/4の長さの部分)が一方側の「端部」であり、マスク本体部10の左右方向の他方側(右側)の長さを4等分したときの、最も他方側の部分(右半分の右側の1/4の長さの部分)が他方側の「端部」であり、左右方向における両側端部の間を「中央部」という。
図5Aに示すように、一対のシート部43,44は、互いの肌側面が対向するように重ね合わされた状態で、一対のシート部43,44の端縁43a,44aに沿った接合部45により接合されている。その端縁43a,44aは外側に向かって凸な曲線形状である。そのため、折り畳み状態(平面状)のマスク2を、一対のシート部43,44が離間するように展開すると(図5B)、マスク本体部40は、その肌側面が凹んだ立体形状(カップ形状)となる。
また、マスク2は、第1実施形態のマスク1と同様に、使い捨て用として使用されることを想定したマスクである。そして、マスク本体部40(一対のシート部43,44)は、図7に示すように、一対のシート部43、44は、ウィルス飛沫及び細菌飛沫の少なくとも一方を捕集するフィルタ層としてのフィルタ部材41と、フィルタ部材41の肌面側に設けられ、かつ、吸熱剤70が配された肌側不織布(吸熱層)42を有する。なお、マスク2のフィルタ部材41は、フィルタ層であり、且つ、冷感剤80が配された冷感層41でもある。図7に示すように、吸熱層42と冷感層41は、厚さ方向に隣接し、冷感層41は、吸熱層42の非肌面側と対向するように設けられている。吸熱剤70及び冷感剤80は、第1実施形態のマスク1と同様の物質を用いることができ、また、マスク2についても、吸熱剤70及び冷感剤80がマイクロカプセルに内包され、肌側不織布42及びフィルタ部材41に配されている。
マスク2が、吸熱層42と冷感層41を備えることで、着用者は、マスク2を着用したときに、まず、冷感層41の冷感剤80による冷感や清涼感を感じることができる。そして、その後、吸熱剤70の吸熱反応によるマスク2の表面温度の低下を実感することができる。そのため、着用者は、マスク2の着用時に冷感を実感することができ、マスク2の着用による蒸れを改善し、息苦しさを軽減でき、熱中症の発生を抑制も可能となる。また、着用者は、マスク2を着用した直後は、冷感剤80による冷感効果を実感することができ、所定の時間経過後には、吸熱剤70による冷感効果を実感することができるため、吸熱剤70のみを備えたマスクや冷感剤80のみを備えたマスクよりも、マスク2の着用直後からより長い時間の冷感効果を得ることができる。特に、マスク2は着用時に立体形状となり、マスク2と着用者との間に空間が生じやすい。そのため、揮発した冷感剤80が、マスク2内の空間に留まり、着用者の肌に触れやすく、吸熱剤70によりマスク2の表面温度を下げやすくなることで、マスク2内の蒸れを改善し、着用者は冷感を実感しやすくなる。
また、一対のシート部43,44は、それぞれの上端部であって、フィルタ部材41と肌側不織布42の間に形状保持部材46を有する。そのため、マスク2内の空間の密閉度が高まり、冷感効果やその持続性が高まる。ただし、マスク2は形状保持部材46を有していなくてもよい。
また、一対のシート部43,44は、平面上に重ね合わされた状態(図5A)で接合部45にて接合されている。そのため、図7に示すように、マスク2の着用状態において、接合部45からシート部43,44の端縁43a,44aまでの領域(すなわちシート部43,44のつなぎ目部分)において、肌側不織布42が2層に重ねられた状態が維持される。
そのため、フィルタ部材41の全域に一定に冷感剤80を配することで、接合部45からシート部43a、44aまでの領域を、それ以外の領域に比べて、冷感剤80の坪量が高くすることができる。つまり、左右方向の中央部は、左右方向の両端部に比べて、冷感剤80の坪量が高い部分を有している。図8は、図7中の部分Pを拡大した図である。図8に示すように、着用状態において、冷感層41(フィルタ部材41)のうち、接合部45と厚さ方向(着用者の前後方向)に重なる部分H80は、冷感剤80の坪量が、左右方向の両端部より高い部分である。なお、図5Bに示す展開状態においても、部分Hについて、ほぼ同様の構成となっている。マスク2における左右方向の中央部は、着用時には、着用者の鼻孔や口元に近い部分であるため、着用者の息により蒸れやすい部分であるが、より多く配置された冷感剤80によって、着用者は、冷感剤80による冷感効果を実感しやすくなる。
同様に、肌側不織布42に一定に吸熱剤70を配することで、接合部45からシート部43,44の端縁43a,44aまでの領域を、それ以外の領域に比べて、吸熱剤70の坪量が高くすることができる。つまり、左右方向の中央部は、左右方向の両端部に比べて、吸熱剤70の坪量が高い部分を有している。図8に示すように、着用状態において、吸熱層42(肌側不織布42)のうち、接合部45と厚さ方向(着用者の前後方向)に重なる部分H70は、吸熱剤70の坪量が、左右方向の端部より高い部分である。なお、図5Bに示す展開状態においても、部分Hについて、ほぼ同様の構成となっている。マスク2における左右方向の中央部は、着用時には、着用者の鼻孔や口元に近い部分であるため、着用者の息により蒸れやすいが中央部により多くの吸熱剤70を配することで、より多くの吸熱剤70を着用者の息と接触させやすくなり、吸熱反応を促しやすくなり、マスク2の表面温度を低下させやすくなる。なお、冷感剤80及び吸熱剤70の各坪量の比較方法は前述の比較方法と同様に行うことができる。
フィルタ部材41が2層に重ねられている中央部のうち、シート部43,44のつなぎ目部分には、マスク本体部40の上端40aから下端40bまで上下方向に連続して、冷感剤80が配されていることが好ましい。同様に、肌側不織布42が2層に重ねられている中央部は、マスク本体部40の上端40aから下端40bまで上下方向に連続して、吸熱剤70が配されている部分を有することが好ましい。
また、着用時に立体形状(カップ状)となるマスク2では、マスク本体部40の左右方向の中央部において、着用者との間に空間が生じやすい。マスク本体部40の左右方向の中央部におけるマスク2内の空間に、揮発した冷感剤80を留めやすくなるため、留められた冷感剤80と着用者の肌と接触して、着用者に冷感剤80による冷感効果を与えやすくなる。さらに、マスク2内の空間に溜まった着用者の息がより多くの吸熱剤70と接触できるため、吸熱反応を促しやすくなり、着用者に吸熱剤70による冷感効果を与えやすくなる。
また、マスク2の耳掛け部50は、耳に掛けるための開口部51が形成された伸縮性シートである。図7に示すように、耳掛け部50は、接合部47によって、マスク本体部40の肌側面に接合されている。耳掛け部50が、吸熱剤70が配された肌側不織布42の肌側面に接合されている場合であっても、耳掛け部50の伸長力によって、一対のシート部43、44の両側端部を着用者の肌に密着させやすいため、吸熱層42及び冷感層41をそれぞれ着用者の肌により近づけることができるため、着用者は冷感を実感できる。また、着用者の肌への密着度が高い部分において、吸熱剤70が着用者の肌に直接に触れないことで、着用者の肌への刺激も軽減できる。
なお、マスク2において、フィルタ部材41を、冷感剤80を備える冷感層41としたが、これに限られない。例えば、マスク2の一対のシート部43、44が、吸熱剤70を備える肌側不織布と、冷感剤80を備える非肌側不織布と、フィルタ部材を備えるフィルタ層を備え、これらを肌側から順に重ね合わせた構成であってもよい。また、一対のシート部43、44が、吸熱剤70が配されたフィルタ部材と、冷感剤80が配された肌側不織布を備える構成であってもよい。また、一対のシート部43、44が、フィルタ層を備えず、吸熱層と冷感層のみから構成されていてもよい。
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
上述の実施形態のマスク1及びマスク2では、吸熱層(17、42)と冷感層(18、41)が隣り合い、互いに接するように配置したが、これに限られない。吸熱層と冷感層とが離間していてもよく、吸熱層と冷感層との間に別のシート状の部材等を設けても良い。
また、本発明のマスクが、吸熱層の吸熱剤と冷感層の冷感剤に加えて、涼感を与えることができる香料を備えていてもよい。なお、涼感を与えることができる香料は、吸熱層又は冷感層に配してもよく、吸熱層や冷感層とは異なる部材に配してもよい。
さらに、本発明のマスクが、水分により溶解して香りを発生する香り発生体を具備しないものであってもよい。水分により溶解して香りを発生する香り発生体を具備しなくても、マスクが吸熱層及び冷感層を備えることで、着用者は、マスクによる冷感を実感することができる。