図1乃至図4に示すように、第一実施形態に係る推力発生機構(推力発生装置)1は、地面や床等の平面G(図3および図4参照)上を移動可能であるとともに板状の板状第一磁石(第一磁石)9が取り付けられた移動部3と、平面G上に載置されているとともに移動部3の両側にそれぞれ位置する直線状第一磁石部(一方側磁石部)5および第二磁石部(他方側磁石部)7とを有している。なお、本実施形態の移動部3は一つであるが、図2においては、移動部3が後側から前側(図2で見て右側から左側)に移動していく状態を示すため、左右2つの移動部3を図示している。
移動部3は、永久磁石である板状第一磁石9(図2参照)と、この板状第一磁石9の周囲を覆う樹脂等からなる非磁性体のケース11(図1参照)と、このケース11の両側面の下部の前後にそれぞれ設けられて平面G上に載置される4つの車輪13(図4(a)参照)とを有しており、矢印Aで示す前方向(図1、図2および図4における左方向)に移動するようになっている。なお、図2では、説明の便宜上、移動部3におけるケース11および車輪13の図示を省略し(換言すれば、板状第一磁石9のみを図示)、図3および図4では、移動部3におけるケース11の図示を省略している(換言すれば、板状第一磁石9および車輪13のみを図示)。
図2(a)に示すように、板状第一磁石9における図2(a)で見て下側の左側面(一方の面)9aはN極の磁極を有し、板状第一磁石9における図2(a)で見て上側の右側面(他方の面)9bはS極の磁極を有している。移動部3が平面Gに載置された状態において、板状第一磁石9の左側面9aおよび右側面9bはそれぞれ、平面Gに対して垂直な垂直面となっている(図3参照)。
また、図4(b)に示すように、移動部3が平面Gに載置された状態において、矢印Aで示す前方向および板状第一磁石9の高さ方向(図4(b)における上下方向)に対して垂直な方向(図4(b)において紙面を貫通する方向であり、この方向を以後単に「垂直方向」という)から見て、板状第一磁石9における高さ方向の中心を通る第一中心線(移動側中心線)C1が、平面Gと平行となっている。
ここで、図2乃至図4に示す板状第一磁石9については、N極を白色部分とし、S極を黒色部分としている。これについては、後述する板状第二磁石15および板状第三磁石17についても、後述する図6についても同様である。なお、本実施形態では、白色部分をN極、黒色部分をS極としたが、白色部分をS極、黒色部分をN極としてもよいことは言うまでもない。
本実施形態の移動部3の移動方向は、それぞれの車輪13によって、矢印Aで示す前方向(第一方向)およびこの第一方向とは反対側の後方向のいずれかに規制されている。換言すれば、ケース11および前後左右の4つの車輪13によって移動部3の移動方向を前後方向に規制する移動方向規制部を構成しているともいえる。なお、この移動方向規制部については、ケース11および車輪13に限定されず、図示を省略するが、例えば、平面Gに形成された溝条のレール部と板状第一磁石9の底面に形成されているとともに溝条のレール部に挿入される凸部とで移動方向規制部を構成したり、あるいは平面Gに移動部3のケース11の底部を挿入可能な溝条を移動方向規制部としたりする等の態様を適宜採用可能である。また、移動方向規制部としては、前後方向のみならず、前方向のみに移動を規制するものであってもよく、要は、直線状第一磁石部5および直線状第二磁石部7からの磁力(斥力)によって移動する移動部3の移動方向を規制できるものであればよい。
図2(c)に示すように、直線状第一磁石部5は、板状の永久磁石である複数の板状第二磁石(第二磁石)15が前後方向に沿って並べられることによって構成され、これらの複数の板状第二磁石15は、互いに同一形状となっている。具体的には、直線状第一磁石部5は、前後に隣り合う板状第二磁石15において、前側の板状第二磁石15の後面の上半分に、後側の板状第二磁石15の前面の下半分が接着あるいは溶接等によって互いに連結するよう順次固定された後に、これらの板状第二磁石15の周囲を図示しない非磁性体のケースにて覆うことによって構成されている。なお、図2(c)においては、説明の便宜上、直線状第一磁石部5を構成するすべての板状第二磁石15のうちの一部を破断して示している。
それぞれの板状第二磁石15における図2(a)で見て下側の左側面15aはS極の磁極を有し、図2(a)で見て上側の右側面(他方の面)15bは、板状第一磁石9の左側面(一方の面)9aと同じN極の磁極を有している。すなわち、それぞれの板状第二磁石15の右側面(一方側対向面)15bは、図3に示すように、直線状第一磁石部5および直線状第二磁石部7との間を前方向に移動する移動部3の板状第一磁石9の左側面(一方の面)9aと対面可能であるとともに、この左側面9aと同一極性となっている。このため、板状第一磁石9の左側面9aと、板状第二磁石15の右側面15bとの間には斥力CLが働くようになっている。また、直線状第一磁石部5が平面Gに載置された状態において、それぞれの板状第二磁石15の左側面15aおよび右側面15bはそれぞれ、平面Gに対して垂直な垂直面となっている。
図4(b)および(c)に示すように、それぞれの板状第二磁石15における後端部の下端(例えば、図4(b)および(c)で見て右下の角部)は平面Gに接触している一方、それぞれの板状第二磁石15における先端部の下端(図4(b)および(c)で見て左下の角部)は平面Gから浮いた状態となっている。換言すれば、それぞれの板状第二磁石15は、この板状第二磁石15の底面と平面Gとのなす傾斜角度が所定角度(鋭角)となるように前上がりに傾斜している。また、それぞれの板状第二磁石15の傾斜角度は互いに同一となっている。したがって、それぞれの板状第二磁石15の高さ方向の中心を通る第二中心線(不動側第一中心線)C2は、直線状第一磁石部5が平面Gに載置された状態では、垂直方向から見て、板状第一磁石9の第一中心線C1と所定角度で交差している。
図2(b)に示すように、直線状第二磁石部7は、上述の直線状第一磁石部5と同様に、板状の永久磁石である複数の板状第三磁石17が前後に沿って並べられることによって構成され、これらの複数の板状第三磁石17は、互いに同一形状となっている。具体的には、直線状第二磁石部7は、前後に隣り合う板状第三磁石17において、前側の板状第三磁石17の後面の上半分に、後側の板状第三磁石17の前面の下半分が接着あるいは溶接等によって互いに連結するよう順次固定された後に、これらの第三磁石15の周囲を図示しない非磁性体のケースにて覆うことによって構成されている。なお、図2(b)においては、図2(c)と同様に、説明の便宜上、直線状第二磁石部7を構成するすべての板状第三磁石17のうちの一部を示している。
それぞれの板状第三磁石17における図2(a)で見て下側の左側面(他方側対向面)17aは、板状第一磁石9の右側面(他方の面)9bと同じS極の磁極を有し、図2(a)で見て上側の右側面17bは、N極の磁極を有している。すなわち、それぞれの板状第三磁石17の左側面(他方側対向面)17aは、図3に示すように、直線状第一磁石部5および直線状第二磁石部7との間を前方向に移動する移動部3の板状第一磁石9の右側面(他方の面)9bと対面可能であるとともに、この右側面9bと同一極性となっている。このため、板状第一磁石9の右側面9bと、板状第三磁石17の左側面17aとの間には斥力CRが働くようになっている。また、直線状第二磁石部7が平面Gに載置された状態において、それぞれの板状第三磁石17の左側面17aおよび右側面17bはそれぞれ、平面Gに対して垂直な垂直面となっている。
図4(b)および(c)に示すように、それぞれの板状第三磁石17における後端部の下端(例えば、図3(b)および(c)で見て右下の角部)は平面Gに接触している一方、それぞれの板状第三磁石17における先端部(図3(b)および(c)で見て左側の端部)は平面Gから浮いた状態となっている。換言すれば、それぞれの板状第三磁石17は、この板状第三磁石17の底面と平面Gとのなす傾斜角度が、板状第二磁石15と平面Gとのなす傾斜角度と同一の所定角度となるように前上がりに傾斜しているとともに、それぞれの板状第三磁石17の傾斜角度は互いにに同一となっている。したがって、それぞれの板状第三磁石17の高さ方向の中心を通る第三中心線(不動側第二中心線)C3は、直線状第二磁石部7が平面Gに載置された状態では、垂直方向から見て、第二中心線C2と平行であるとともに、板状第一磁石9の第一中心線C1と所定角度(鋭角)で交差している。
図1に示すように、直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7とは互いに同じ長さに形成されている。直線状第一磁石部5および直線状第二磁石部7は、平面G上において互いに平行にかつ対面するように所定の間隔をあけて配置されている。この状態で、直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7とは、垂直方向から見て、直線状第二磁石部7の先端が、直線状第一磁石部5の先端よりも、所定角度で傾斜している板状第三磁石17における前後方向の長さ(以後、単に「磁石の前後長さ」という)の半分だけ前方に位置するように配置されている。すなわち、直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7とは、それぞれの板状第二磁石15および板状第三磁石17が、垂直方向から見て、互いに磁石の前後長さの半分だけ前後にずれて位置している(図1参照)。
具体的には、図1において、直線状第一磁石部5を構成するそれぞれの(複数の)板状第二磁石15のうち、最も前側に位置する板状第二磁石15(図1において最も左側にある板状第二磁石15)と、直線状第二磁石部7を構成するそれぞれの板状第三磁石17のうち、最も前側に位置する板状第三磁石17(図1において最も左側にある板状第三磁石17)とを見てもわかるように、直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7とは、最も前側の板状第二磁石15の下側の先端が、最も前側の板状第三磁石17の中央部に位置するように配置されている。なお、直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7とは、それぞれの板状第二磁石15および板状第三磁石17が、垂直方向から見て、互いに前後にずれていればよく(換言すれば、垂直方向から見て、板状第二磁石15と板状第三磁石17とが一致するように重なっていなければよい)、どのくらいの割合でずらすのかは、仕様等に応じて適宜設定可能である。また、本実施形態では、直線状第二磁石部7の方が、直線状第一磁石部5よりも前方にずれているが、これに代えて、一方側磁石5の方が他方側磁石7よりも前方にずれるようにしてもよいことは言うまでもない。
本実施形態では、それぞれの板状第二磁石15およびそれぞれの第三磁石7とはいれずれも同一形状をなしているため、直線状第一磁石部5の板状第二磁石15、およびこの板状第二磁石15と対面する直線状第二磁石部7の板状第三磁石17は、次に述べる位置関係となる。
すなわち、直線状第一磁石部5の最も前側の板状第二磁石15を例にとると、当該板状第二磁石15は、その前半分の部分(図1において左半分の部分)が、直線状第二磁石部7の最も前側の板状第三磁石17の後半分の部分(図1において右半分の部分)と対面し、当該板状第二磁石15の後半分の部分が、最も前側の板状第三磁石17の後ろに位置する板状第三磁石17(図1において、左から二番目の板状第三磁石17)における前半分の部分に対面した状態となる。換言すれば、板状第二磁石15は、互いに隣り合う2つの板状第三磁石17と対面した状態(垂直方向から見て重なりの位置関係の状態)となり、板状第三磁石17も互いに隣り合う2つの板状第二磁石15と対面した状態となる。
また、本実施形態では、図4(b)および(c)に示すように移動部3が平面G上において直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7との間に載置された際、移動部3の板状第一磁石9の第一中心線C1は、直線状第一磁石部5のそれぞれの板状第二磁石15の第二中心線C2以下(図4(c)において中心線C2の右端以下)で、かつ、直線状第二磁石部7のそれぞれの第三磁石7の第三中心線C3以下(図4(b)において中心線C3の右端以下)となるようになっている。この場合、図3に示すように、板状第一磁石9と板状第二磁石15との間には矢印Dで示す方向(図3において右斜め下)に斥力が働き、第二磁石9と板状第三磁石17との間には矢印Eで示す方向(図3において左斜め下)に斥力が働く。この結果、移動部3は、矢印Bで示すように、平面Gに押し付けられた状態となって、移動部3が平面Gから浮き上がらなくなるため、移動部3は平面G上に安定して水平に載置された状態となる。
次に、上述した構成に基づき、本実施形態の作用を説明する。まず、図5に示すように、平面G上における直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7との間の適宜の第一位置、例えば、垂直方向で見て、前後の板状第三磁石17とこれらの間に位置する板状第二磁石15との間の位置(図5における右側の移動部3の位置)に、移動部3を載置(配置)する。このとき、上述のように移動部3は平面G上に安定して載置された状態であり、この移動部3の板状第一磁石9も平面Gに対して垂直な状態にある(図3参照)。
この板状第一磁石9に対して、板状第二磁石15および板状第三磁石17は前上がりに傾斜しているとともに互いに前後方向にずれた位置関係にある。このため、板状第一磁石9の右側面9bに対して板状第三磁石17の左側面17aが対面する範囲(図4(b)参照)は、板状第一磁石9の左側面9aに対して板状第二磁石15の右側面15bが対面する範囲(図4(c)参照)よりも小さい(換言すれば、板状第一磁石9の右側面9bにおいて板状第三磁石17と重なっていない露出範囲(露出面積)が、板状第一磁石9の左側面9aにおいて板状第二磁石15と重なっていない露出範囲よりも大きい)。これによって、板状第一磁石9と板状第二磁石15との間の斥力CLは、第二磁石9と板状第三磁石17との間の斥力CRよりも大きくなる(CL>CR)。
また、板状第一磁石9に対して、板状第二磁石15および板状第三磁石17は前上がりに傾斜していることに起因して、図4(c)に示すように、板状第一磁石9の左側面9aにおいて、板状第二磁石15の右側面15bに対面する範囲(垂直方向で見て、板状第二磁石15が板状第一磁石9の左側面9aを覆っている面積)が、板状第一磁石9の前側よりも後側の方が大きくなる(換言すれば、板状第一磁石9の左側面9aの露出範囲が、板状第一磁石9の後側よりも前側の方が大きくなる)。同様に、図4(b)に示すように、板状第一磁石9の右側面9bにおいても、板状第三磁石17の左側面17aに対面する範囲(垂直方向から見て、板状第三磁石17が板状第一磁石9の右側面9bを覆っている面積)が、板状第一磁石9の前側よりも後側の方が大きくなる(換言すれば、板状第一磁石9の右側面9bの露出範囲が、板状第一磁石9の後側よりも前側の方が大きくなる)。この結果、板状第一磁石9と板状第二磁石15との間の斥力CLおよび板状第一磁石9と板状第三磁石17との間の斥力CRはともに、板状第一磁石9の前側の部分よりも、後側の部分の方が強くなるため、板状第一磁石9が取り付けられた移動部3が、矢印Aで示す前方向に移動する。
その後、移動部3が、垂直方向で見て、前後の板状第二磁石15とこれらの間に位置する板状第三磁石17との間の第二位置(図5における中央の移動部3の位置)に到達した場合も、第一位置と同様に、移動部3は平面G上に安定して載置された状態であり、この移動部3の板状第一磁石9も平面Gに対して垂直な状態にある。この第二位置では、第一位置とは逆に、板状第一磁石9の左側面9aに対して板状第二磁石15の右側面15bが対面する範囲が、板状第一磁石9の右側面9bに対して板状第三磁石17の左側面17aが対面する範囲よりも小さく(換言すれば、板状第一磁石9の左側面9a露出範囲が、板状第一磁石9の右側面9bの露出範囲よりも大きくなる)。これによって、板状第一磁石9と板状第三磁石17との間の斥力CRが、板状第一磁石9と板状第二磁石15との間の斥力CLよりも大きくなる(CR>CL)。
また、この第二位置でも、板状第一磁石9の左側面9aにおいて、板状第二磁石15の右側面15bに対面する範囲が、板状第一磁石9の前側よりも後側の方が大きくなり、板状第一磁石9の右側面9bにおいても、板状第三磁石17の左側面17aに対面する範囲が、板状第一磁石9の前側よりも後側の方が大きくなる。この結果、板状第一磁石9と板状第二磁石15との間の斥力CLおよび第二磁石9と板状第三磁石17との間の斥力CRはともに、板状第一磁石9の前側の部分よりも、板状第一磁石9の後側の部分の方が強くなるため、板状第一磁石9が取り付けられた移動部3が、矢印Aで示す前方向に移動する。
このように、移動部3は、図5に示すように、最初の第一位置(図5における左側の移動部3の位置)から、この最初の第一位置よりも前方に位置する最初の第二位置(図5における中央の移動部3の位置)に移動した後、この第二位置よりも前方に位置する二回目の第一位置(図5における左側の移動部3の位置)と、この二回目の第一位置の前方に位置する二回目の第二位置(図示せず)に移動するということを繰り返すことで、前方に移動する。
ここで、移動部3が移動するのは、移動部3の板状第一磁石9から発生する磁力、直線状第一磁石部5のそれぞれの板状第二磁石15から発生する磁力、直線状第二磁石部7のそれぞれの板状第三磁石17がそれぞれから発生する磁力が常に働いていることに起因している。このため、これらの磁石9、15、17の少なくとも1つが、例えば、何らかの要因でキュリー点を超えた温度で加熱されたり、外部からの強い衝撃が長く続いたり、あるいは自己減磁といった要因で、その磁力を失った場合(消磁した場合)には、移動部3を移動させる要因(エネルギー)がなくなるため、移動部3の移動ができなくなる。したがって、本実施形態の推力発生機構1については、いわゆる永久機関に該当するものではないことを付言しておく。
以上説明したように、直線状第一磁石部5のそれぞれの板状第二磁石15および直線状第二磁石部7のそれぞれの板状第三磁石17を傾斜させているため、板状第一磁石9と板状第二磁石15との間の斥力CLおよび第二磁石9と板状第三磁石17との間の斥力CRはともに、板状第一磁石9の前側の部分よりも、板状第一磁石9の後側の部分の方が強くなるので、移動部3において前方向への推力を発生させることができ、移動部3を前方向に充分に進めることができる。
また、それぞれの板状第二磁石15および板状第三磁石17を傾斜させるだけの簡単な構成で、移動部3の移動をすることができる。また、それぞれの板状第二磁石15および板状第三磁石17の傾斜角度を調整することで、移動部3の移動の勢い等を調整することができる。
さらに、直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7とは、互いに前後にずれて位置している(直線状第一磁石部5を構成するそれぞれの板状第二磁石15と、直線状第二磁石部7を構成するそれぞれの板状第三磁石17とが前後にずれて位置している)ため、これらの磁石部5,7の間に介在して前方向に移動する移動部3の両側に作用する斥力CL、CRが釣り合うことを防止することができる。この結果、磁力の釣り合いによって移動部3が静止することを防止することができ(磁力の釣り合いが移動部3のブレーキとなることを防止することができ)、移動部3の円滑な移動を図ることができる。
また、それぞれの板状第二磁石15および板状第三磁石17は同一形状に形成されかつそれぞれが同じ所定角度で傾斜しているとともに、直線状第一磁石部5と直線状第二磁石部7とは、それぞれの板状第二磁石15および板状第三磁石17が、互いに磁石の水平長さの半分だけ前後にずれて位置しているため、最初の第一位置から最初の第二位置との間(以後、単に「第一周期」という)の距離と、最初の第二位置から二回目の第一位置との間(以後、単に「第二周期」という)の距離と、二回目の第一位置から二回目の第二位置との間(以後、単に「第三周期」という)の距離とを同じ距離とすることができる。また、それぞれの第一周期乃至第三周期における移動部3に作用する斥力CL、CRの変化度合いを同一とすることができるので、移動部3を一定の速度で移動させることができる。
次に、図6に基づいて第二実施形態を説明するが、その説明にあたり、上述の第一実施形態と同様な構成要素には、同一の符号を付することによって、その説明を省略または簡略化するものとする。また、第二実施形態の説明にあたっては、第一実施形態との相違点を中心に説明するものとする。なお、図6は、第二実施形態に係る推力発生機構30を模式的に示す図である。
図6(a)および(b)に示すように、第二実施形態に係る推力発生機構(推力発生装置)30は、平面G上に載置されているとともに互いに同心の円環状をなす円環状第一磁石部(一方側磁石部)31、円環状第二磁石部(他方側磁石部または一方側磁石部)33、円環状第三磁石部(他方側磁石部)35と、円環状第一磁石部31と円環状第二磁石部33との間に位置する移動部41、42および円環状第二磁石部33と円環状第三磁石部35との間に位置する移動部43、44と、これらの移動部41、42、43、44(以後、これらをまとめて「移動部41等」ということもある。)の移動方向を規制する移動方向規制部51とを有している。
方向規制部51は、図6(b)に示すように、平面Gに設けられた軸受け(図示せず)に回転自在に軸支された回転軸53と、この回転軸53の上端から平面Gに平行に延びた棒状の支持部55とを有している。この支持部55の中央部は回転軸53に取り付けられ、支持部55の両端はそれぞれ、円環状第二磁石部33および円環状第三磁石部35との間に位置している。また、支持部55の両端にはそれぞれ、これらの両端から下方に垂下した垂下部63、64が設けられ、支持部53における円環状第一磁石部31および円環状第二磁石部33の間に相当する箇所にもそれぞれ、これらの個所から下方に垂下した垂下部61、62が設けられている。これらの垂下部61、62、63、64の下端部にはそれぞれ、第一実施形態で説明した板状第一磁石9が平面Gに対して所定の間隙を有するように(平面Gに対して浮くように)固定されている。
すなわち、垂下部61と板状第一磁石9とで移動部41を構成し、垂下部62と板状第一磁石9とで移動部42を構成し、垂下部63と板状第一磁石9とで移動部43を構成し、垂下部64と板状第一磁石9とで移動部44を構成している。そして、これらの移動部41等の移動は、回転軸53と支持部55とからなる移動方向規制部51によって、回転軸53を中心とした円周方向(回転方向)に規制されている。これらの移動部41等は、後述するように、図6(a)で見て矢印Fで示す第一方向である時計回り方向(右回り方向)に移動するようになっている。
図6(a)に示すように、円環状第一磁石部31は、円弧状に湾曲された複数の円弧状第二磁石65を円環状に連結することによって、回転軸53を中心とした円環状に形成されている。すなわち、円弧状第二磁石65は、板状の磁石全体を、円環状第一磁石部31に沿った円弧状に湾曲させた形状をなしており、それぞれの円弧状第二磁石65が、円環状磁石部31の円環の一部を構成している。また、本実施形態では、それぞれの円弧状第二磁石65は互いに同一形状となっている。
具体的には、図6(c)に示すように、円環状第一磁石部31は、互いに隣り合う円弧状第二磁石65、65において、移動部41等の移動方向の上流側(図6(c)で見て右側)の円弧状第二磁石65の前面の上半分に、移動部41等の回転方向の下流側(図6(c)で見て左側)の円弧状第二磁石65の後面の下半分が接着あるいは溶接等によって互いに連結するよう順次固定された後に、これらの円弧状第二磁石65の周囲を図示しない非磁性体のケースにて覆うことによって構成されている。なお、図6(c)においては、説明の便宜上、円環状第一磁石部31を構成するすべての円弧状第二磁石65のうちの一対を示している。
それぞれの円弧状第二磁石65における図6(a)で見て外側の外側面(一方側対向面)65aは、移動部41の板状第一磁石9の内側面(第一実施形態における左側面)9aおよび移動部42の板状第一磁石9の内側面(第一実施形態における左側面)9aと同じN極の磁極を有し、図6(a)で見て内側の内側面65bは、S極の磁極を有している。すなわち、それぞれの円弧状第二磁石65の外側面65aは、図6(b)に示すように、円環状第一磁石部31および円環状第二磁石部33との間を矢印F方向に移動する移動部41の板状第一磁石9の内側面(一方の面)9aおよび移動部42の板状第一磁石9の内側面(一方の面)9aと対面可能であるとともに、これらの内側面9a、9aと同一極性となっている。このため、移動部41の板状第一磁石9の内側面9aおよび移動部42の板状第一磁石9の内側面9aと、円弧状第二磁石65の外側面65aとの間には斥力が働くようになっている。また、円環状第一磁石部31が平面Gに載置された状態において、それぞれの円弧状第二磁石65の外側面65aおよび内側面65bはそれぞれ、平面Gに対して垂直な垂直面となっている。
図6(c)に示すように、それぞれの円弧状第二磁石65における後端部の下端(図6(c)で見て右下の角部)は平面Gに接触している一方、それぞれの円弧状第二磁石65における先端部の下端(図6(c)で見て左下の角部)は平面Gから浮いた状態となっている。換言すれば、それぞれの円弧状第二磁石65は、これらの円弧状第二磁石65の底面と平面Gとのなす傾斜角度が所定角度(鋭角)となるように前上がりに傾斜している。また、それぞれの円弧状第二磁石65の傾斜角度は互いに同一となっている。したがって、それぞれの円弧状第二磁石65の高さ方向の中心を通る第四中心線(不動側第一中心線)C4は、円環状第一磁石部31が平面Gに載置された状態では、垂直方向から見て、板状第一磁石9の第一中心線C1と所定角度で交差するように傾斜している。換言すれば、第四中心線C4は平面Gに対して所定角度で傾斜している(第四中心線C4は、第一中心線C1に対して平行とはならない)。
図6(a)に示すように、円環状第二磁石部33は、円環状第一磁石部31よりも大きい。この円環状第二磁石部33は、円弧状に湾曲された複数の円弧状第三磁石66を円環状に連結することによって、回転軸53を中心とした円環状に形成されている。すなわち、円弧状第三磁石66は、円弧状の磁石全体を、円環状第二磁石部33に沿った円弧状に湾曲させた形状をなしており、それぞれの円弧状第三磁石66が、円環状第二磁石部33の円環の一部を構成している。また、本実施形態では、それぞれの円弧状第三磁石66は、円弧状第二磁石65に対して高さは同じである一方、円弧状第二磁石65よりも長くなっている。また、これらの円弧状第三磁石66は、互いに同一形状となっている。
具体的には、図6(c)に示すように、円環状第二磁石部33は、互いに隣り合う円弧状第三磁石66、66において、移動部41等の移動方向の上流側(図6(c)で見て右側)の円弧状第三磁石66の前面の上半分に、移動部41等の回転方向の下流側(図6(c)で見て左側)の円弧状第三磁石66の後面の下半分が接着あるいは溶接等によって互いに連結するよう順次固定された後に、これらの円弧状第三磁石66の周囲を図示しない非磁性体のケースにて覆うことによって構成されている。なお、図6(c)においては、説明の便宜上、円環状第二磁石部33を構成するすべての円弧状第三磁石66のうちの一対を示している。
それぞれの円弧状第三磁石66における図6(a)で見て外側の外側面(一方側対向面)66aは、移動部43の板状第一磁石9の内側面9aおよび移動部44の板状第一磁石9の内側面9aと同じN極の磁極を有し、図6(a)で見て内側の内側面(他方側対向面)66bは、移動部41の板状第一磁石9の外側面(第一実施形態における右側面)9bおよび移動部42の板状第一磁石9の外側面(第一実施形態における右側面)9bと同じS極の磁極を有している。すなわち、それぞれの円弧状第三磁石66の外側面66aは、図6(b)に示すように、円環状第二磁石部33および円環状第三磁石部35との間を矢印F方向に移動する移動部43の板状第一磁石9の内側面(一方の面)9aおよび移動部44の板状第一磁石9の内側面(一方の面)9aと対面可能であるとともに、これらの内側面9a、9aと同一極性となっている。また、それぞれの円弧状第三磁石66の内側面66bは、円環状第一磁石部31および円環状第二磁石部33との間を矢印F方向に移動する移動部41の板状第一磁石9の外側面(他方の面)9bおよび移動部42の板状第一磁石9の外側面(他方の面)9bと対面可能であるとともに、これらの外側面9b、9bと同一極性となっている。このため、移動部43の板状第一磁石9の内側面9aおよび移動部44の板状第一磁石9の内側面9aと円弧状第三磁石66の外側面66aとの間、および移動部41の板状第一磁石9の外側面9bおよび移動部42の板状第一磁石9の外側面9bと円弧状第三磁石66の内側面66bとの間にはそれぞれ斥力が働くようになっている。また、円環状第二磁石部33が平面Gに載置された状態において、それぞれの円弧状第三磁石66の外側面66aおよび内側面66bはそれぞれ、平面Gに対して垂直な垂直面となっている。
図6(c)に示すように、それぞれの円弧状第三磁石66における後端部の下端(図6(c)で見て右下の角部)は平面Gに接触している一方、それぞれの円弧状第三磁石66における先端部の下端(図6(c)で見て左下の角部)は平面Gから浮いた状態となっている。換言すれば、それぞれの円弧状第三磁石66は、これらの円弧状第三磁石66の底面と平面Gとのなす傾斜角度が所定角度(鋭角)となるように前上がりに傾斜している。また、それぞれの円弧状第三磁石66の傾斜角度は互いに同一となっている。したがって、それぞれの円弧状第三磁石66の高さ方向の中心を通る第五中心線(不動側第一中心線または不動側第二中心線)C5は、円環状第二磁石部33が平面Gに載置された状態では、垂直方向から見て、板状第一磁石9の第一中心線C1と所定角度で交差するように傾斜している。換言すれば、第四中心線C4は平面Gに対して所定角度で傾斜している(第四中心線C4は、第一中心線C1に対して平行とはならない)。なお、本実施形態では、円弧状第三磁石66の傾斜角度は、上述の円弧状第二磁石65と同一となっている。
図6(a)に示すように、円環状第三磁石部35は、円環状第二磁石部33よりも大きい。この円環状第三磁石部35は、円弧状に湾曲された複数の円弧状第四磁石67を円環状に連結することによって、回転軸53を中心とした円環状に形成されている。すなわち、円弧状第四磁石67は、円弧状の磁石全体を、円環状第三磁石部35に沿った円弧状に湾曲させた形状をなしており、それぞれの円弧状第四磁石67が、円環状第三磁石部35の円環の一部を構成している。また、本実施形態では、それぞれの円弧状第四磁石67は、円弧状第三磁石66に対して高さは同じである一方、円弧状第三磁石66よりも長くなっている。また、これらの円弧状第四磁石67は、互いに同一形状となっている。
具体的には、図6(c)に示すように、円環状第三磁石部35は、互いに隣り合う円弧状第四磁石67、67において、移動部41等の移動方向の上流側(図6(c)で見て右側)の円弧状第四磁石67の後面の上半分に、移動部41等の回転方向の下流側(図6(c)で見て左側)の円弧状第四磁石67の前面の下半分が接着あるいは溶接等によって互いに連結するよう順次固定された後に、これらの円弧状第四磁石67の周囲を図示しない非磁性体のケースにて覆うことによって構成されている。なお、図6(c)においては、説明の便宜上、円環状第三磁石部35を構成するすべての円弧状第四磁石67のうちの一対を示している。また、図6(c)においては、円弧状第二磁石65と円弧状第三磁石66と円弧状第四磁石67とは、上述のように互いの長さが異なるのみであるため、説明の便宜上、これらの磁石65、66、67を同じ図として図示している。
それぞれの円弧状第四磁石67における図6(a)で見て外側の外側面(一方側対向面)67aは、N極の磁極を有し、図6(a)で見て内側の内側面(他方側対向面)67bは、移動部43の板状第一磁石9の外側面9bおよび移動部44の板状第一磁石9の外側面9bと同じS極の磁極を有している。すなわち、それぞれの円弧状第四磁石67の内側面67bは、円環状第二磁石部33および円環状第三磁石部35との間を矢印F方向に移動する移動部43の板状第一磁石9の外側面9bおよび移動部44の板状第一磁石9の外側面9bと対面可能であるとともに、これらの外側面9b、9bと同一極性となっている。このため、移動部43の板状第一磁石9の外側面9bおよび移動部44の板状第一磁石9の外側面9bと円弧状第四磁石67の内側面67bとの間にはそれぞれ斥力が働くようになっている。また、円環状第三磁石部35が平面Gに載置された状態において、それぞれの円弧状第四磁石67の外側面67aおよび内側面67bはそれぞれ、平面Gに対して垂直な垂直面となっている。
図6(c)に示すように、それぞれの円弧状第四磁石67における後端部の下端(図6(c)で見て右下の角部)は平面Gに接触している一方、それぞれの円弧状第四磁石67における先端部の下端(図6(c)で見て左下の角部)は平面Gから浮いた状態となっている。換言すれば、それぞれの円弧状第四磁石67は、これらの円弧状第四磁石67の底面と平面Gとのなす傾斜角度が所定角度(鋭角)となるように前上がりに傾斜している。また、それぞれの円弧状第四磁石67の傾斜角度は互いに同一となっている。したがって、それぞれの円弧状第四磁石67の高さ方向の中心を通る第六中心線(不動側第二中心線)C6は、円環状第三磁石部35が平面Gに載置された状態では、垂直方向から見て、板状第一磁石9の第一中心線C1と所定角度で交差するように傾斜している。換言すれば、第四中心線C4は平面Gに対して所定角度で傾斜している(第四中心線C4は、第一中心線C1に対して平行とはならない)。なお、本実施形態では、円弧状第四磁石67の傾斜角度は、上述の円弧状第二磁石65および円弧状第三磁石66と同一となっている。
次に、円環状第一磁石部31のそれぞれの円弧状第二磁石65、円環状第二磁石部33のそれぞれの円弧状第三磁石66、および円環状第三磁石部35のそれぞれの円弧状第四磁石67の相互の位置関係を説明するが、その説明の便宜上、図6(a)において、或る円弧状第二磁石65を符号X1とし、この円弧状第二磁石Xにおいて矢印Fにおける下流側(以後、単に「下流側」といい、併せて、矢印Fにおける上流側を単に「上流側」という。)に隣り合う円弧状第二磁石65をX2とする。また、円環状第二磁石部33のそれぞれの円弧状第三磁石66のうち、垂直方向で見て、上記円弧状第二磁石X1、X2の少なくとも一部と重なり合うとともに互いに隣り合う円弧状第三磁石66をそれぞれ符号Y1、Y2、Y3とし、円環状第三磁石部35のそれぞれの円弧状第四磁石67のうち、垂直方向で見て、上記円弧状第三磁石Y1,Y2、Y3の少なくとも一部と重なり合うとともに互いに隣り合う円弧状第四磁石67をそれぞれ符号Z1、Z2、Z3、Z4として説明することとする。
図6(a)に示すように、互いに同心の円環状第一磁石部31と円環状第二磁石部33とは、平面G上において互いに平行に対面するように所定の間隔をあけて配置されている。また、互いに同心の円環状第二磁石部33と円環状第三磁石部35とも、平面G上において互いに平行に対面するように上記同じ所定の間隔をあけて配置されている。
この状態で、円環状第一磁石部33の円弧状第二磁石X1は、垂直方向で見て、この円弧状第二磁石X1の左端aが、円環状第二磁石部35の円弧状第三磁石Y1の左端eおよび右端fの間(左右端e、f間の略中央)に位置するとともに、円弧状第二磁石X1の右端bが、円弧状第三磁石Y1の下流側にて隣り合う円弧状第三磁石Y2の左端gおよび右端hの間(左右端g、hの略中央)に位置するように配置されている。また、この円弧状第二磁石X1の下流側にて隣り合う円弧状第二磁石X2は、垂直方向で見て、この円弧状第二磁石X2の左端cが、円弧状第三磁石Y1の下流側にて隣り合う円弧状第三磁石Y2の左端gおよび右端hの間(左右端g、hの略中央)に位置するとともに、円弧状第二磁石X2の右端dが、円弧状第三磁石Y2の下流側にて隣り合う円弧状第三磁石Y3の左端iおよび右端jとの間(左右端i、jの略中央)に位置するように配置されている。
また、円環状第二磁石部35の円弧状第三磁石Y1は、垂直方向で見て、この円弧状第三磁石Y1の左端eが、円環状第三磁石部37の円弧状第四磁石Z1の左端kおよび右端lの間(左右端k、l間の略中央)に位置するとともに、円弧状第三磁石Y1の右端fが、円弧状第四磁石Z1の下流側にて隣り合う円弧状第四磁石Z2の左端mおよび右端nとの間(左右端m、nの略中央)に位置するように配置されている。また、この円弧状第三磁石Y1の下流側にて隣り合う円弧状第三磁石Y2は、垂直方向で見て、この円弧状第三磁石Y2の左端gが、円弧状第四磁石Z1の下流側にて隣り合う円弧状第四磁石Z2の左端mおよび右端nの間(左右端m、nの略中央)に位置するとともに、円弧状第三磁石Y2の右端hが、円弧状第四磁石Z2の下流側にて隣り合う円弧状第四磁石Z3の左端oおよび右端pとの間(左右端o、pの略中央)に位置するように配置されている。さらに、この円弧状第三磁石Y2の下流側にて隣り合う円弧状第三磁石Y3は、垂直方向で見て、この円弧状第三磁石Y3の左端iが、円弧状第四磁石Z3の左端oおよび右端pの間(左右端o、pの略中央)に位置するとともに、円弧状第三磁石Y3の右端jが、円弧状第四磁石Z3の下流側にて隣り合う円弧状第四磁石Z4の左端qおよび右端rとの間(左右端q、rの略中央)に位置するように配置されている。
このように、例えば、円弧状第二磁石X1は、垂直方向で見て、円弧状第三磁石Y1およびY2との間に跨るように配置され、円弧状第二磁石X1の上流側部分(図6(a)において左半分の部分)が、円弧状第三磁石Y1の矢印Fの下流側部分(図6(a)において右半分の部分)と対面し、円弧状第二磁石X1の下流側部分が、円弧状第三磁石Y2の上流側部分と対面した状態となる。また、例えば、円弧状第三磁石Y1は、垂直方向で見て、円環状第四磁石Z1およびZ2との間に跨るように配置され、円弧状第三磁石Y1の上流側部分が、円弧状第四磁石Z1の下流側部分と対面し、円弧状第三磁石Y1の下流側部分が、円弧状第四磁石Z2の上流側部分と対面した状態となる。
すなわち、円環状第一磁石部31と円環状状第二磁石部33とは、垂直方向で見て、円環状第一磁石部31のそれぞれの円弧状第二磁石65の両端に対し、円環状第二磁石部33のぞれぞれの円弧状第三磁石66の両端が円周方向にずれるような位置関係になるように配置されている。また、円環状第二磁石部33と円環状状第三磁石部35とは、垂直方向で見て、円環状第二磁石部33のそれぞれの円弧状第三磁石66の両端に対し、円環状第三磁石部35のぞれぞれの円弧状第四磁石67の両端が円周方向にずれるような位置関係になるように配置されている。なお、上述の第一実施形態と同様に、円環状第一磁石部31、円環状第二磁石部33および円環状第三磁石部35は、それぞれの円弧状第二磁石65,円弧状第三磁石66,円弧状第四磁石67が、垂直方向から見て、互いに円周方向にずれていればよく、(換言すれば、垂直方向から見て、互いに対面する円弧状第二磁石65の両端の少なくとも一方と円弧状第二磁石66の両端の少なくとも一方とが一致するように重なっていないとともに、互いに対面する円弧状第三磁石66の両端の少なくとも一方と円弧状第四磁石67の両端の少なくも一方とが一致するように重なっていなければよい)、どのくらいの割合でずらすのかは、仕様等に応じて適宜設定可能である。
また、図6(c)に示すように、本実施形態では、上述のように平面Gに対して間隙を有するように位置する移動部41等の板状第一磁石9の第一中心線C1はそれぞれ、第一実施形態と同様に、垂直方向で見て、円環状第一磁石部31のそれぞれの円弧状第二磁石65の第四中心線C4以下となり、円環状第二磁石部33のそれぞれの円弧状第三磁石66の第五中心線C5以下となり、円環状第三磁石部35のそれぞれの円弧状第四磁石67の第六中心線C6以下となるように配置されている。このため、第一実施形態に係る図3で説明した通り、円環状第一磁石部31と円環状第二磁石部33との間の移動部41、42は、平面Gに向けて押し付けられる方向(矢印B参照)に斥力が働き、円環状第二磁石部33と円環状第三磁石部35との間の移動部43、44も、平面Gに向けて押し付けられる方向に斥力が働く。この結果、移動部41等が平面Gから浮き上がらなくなった安定した状態を保つこととなる。
このような構成の本実施形態においては、上述の第一実施形態と同様に、移動部41等のそれぞれの板状第一磁石9に対して、円弧状第二磁石65、円弧状第三磁石66、円弧状第四磁石67がそれぞれ前上がりに傾斜しているとともに、互いに円周方向にずれた位置関係にあることに起因して、図6(a)に示す矢印F方向に移動(回転軸53を中心に回転)するというように、第一実施形態と同様な作用効果を奏する。また、第二実施形態では、回転軸53が磁力(斥力)のみによって回転するようになっているため、回転軸53の回転から電気エネルギーを取り出せるように(回転によるエネルギーを電気的なエネルギーに変換可能なように)することで、回転軸53が磁力によって回転し続ける限り発電を行うことも可能である。なお、本実施形態においても、上述の第一実施形態と同様に、板状第一磁石9、円弧状第二磁石65、円弧状第三磁石66、円弧状第四磁石67の少なくとも1つが、何らかの要因で磁力を失うと、移動部41等の移動ができなくなるため、本実施形態に係る推力発生機構30もいわゆる永久機関に該当するものではないことを付言しておく。
本発明は、上述の各実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内において、適宜の変更が可能である。
例えば、第一実施形態では、複数の板状第二磁石15からなる直線状第一磁石部5、および複数の板状第三磁石17からなる直線状第二磁石部7とによって、移動部3を移動させていたが、これに代えて、単一の板状第二磁石15と、この板状第二磁石15に対して、前後方向のいずれかにずれて配置された単一の板状第三磁石17と、移動部3とで推力発生機構1を構成するようにしてもよく、この場合であっても、移動部3の移動は可能である。また、この場合においては、板状第二磁石15および板状第三磁石17における磁石の前後長さは、移動部3の板状第一磁石9における磁石の前後長さの倍以上であることが望ましい。これについては、第二実施形態においても同様のことがいえる。
また、上述の第一実施形態では、それぞれの板状第二磁石15および板状第三磁石17は同一形状に形成されかつそれぞれが同じ所定角度で傾斜しているように構成したが、これに代えて、一部の第二磁石(あるいは、一部の第三磁石)の形状を、他の第二磁石(あるいは、他の第三磁石)とは異なる形状や大きさとしたり、あるいは、一部の第二磁石(あるいは第三磁石)の傾斜角度を他の傾斜角度とは異ならせたりすることで、移動部3の移動速度を移動中に変化させることも可能である。すなわち、一部の第二磁石あるいは第三磁石の形状、大きさ、傾斜角度を異ならせることによって、移動部3の移動に関する挙動を調整するようにしてもよい。これについては、第二実施形態においても同様のことがいえる。
また、上述の第二実施形態においては、板状に形成された板状第一磁石9を用いたが、これに代えて、板状第一磁石9全体を円環状第一磁石部31に沿った円弧状に湾曲させた形状とした円弧状第一磁石を用いるようにしてもよい。この場合、この円弧状第一磁石が、円環状第一磁石部31と円環状第二磁石部33との間(円環状第二磁石部33と円環状第三磁石部35との間)のどこに位置していても、円弧状第一磁石9と円環状第一磁石部31の円弧状第二磁石65との間の距離(円弧状第一磁石と円環状第二磁石部33の円弧状第三磁石66との間の距離)、円弧状第一磁石9と円環状第二磁石部33の円弧状第二磁石66との間の距離(円弧状第一磁石と円環状第三磁石部35の円弧状第四磁石67との間の距離)が常に同一となるため、移動部41等の移動をより円滑にすることができる。