図1及び図2に示すように、第一実施形態に係る推力発生機構1は、地面や床等の平面G上に載置されて固定された第一永久磁石3と、平面Gに沿って移動可能な非磁性体の移動体(移動部)5とを有している。本実施形態では、図1及び図2に示す第一永久磁石3においては、N極を白色部分とし、S極を黒色部分としている。これについては、図3以降の図面における第一永久磁石3及び他の永久磁石についても同様である。なお、本実施形態では、白色部分をN極、黒色部分をS極としたが、白色部分をS極、黒色部分をN極としてもよいことは言うまでもない。これについては、本実施形態以外の後述する第二実施形態等の他の実施形態においても同様である。
図1(a)及び図2に示すように、第一永久磁石3は、一直線に延びる四角柱状に形成されている。第一永久磁石3の図1(a)における左側の左部分3AはN極の磁極を有し、右側の右部分3BはS極の磁極を有している。換言すれば、第一永久磁石3の左側面(第一面)3aはN極であり、右側面(第二面)3bはS極となっている。第一永久磁石3が平面Gに載置された状態において(図1で示す状態において)、第一永久磁石3の左側面3a及び右側面3bはそれぞれ、平面Gに対して垂直な垂直面となっている(換言すれば、これらの左側面3a及び右側面3bは互いに平行となっている)。また、第一永久磁石3が平面Gに載置された状態において、第一永久磁石3の上面(図1で見て上側の面)3c及び第一永久磁石3の下面(図1見て、平面Gに接する下側の面)3dはそれぞれ、平面Gと平行な平行面となっている(換言すれば、これらの上面3c及び下面3dは互いに平行となっている)。
なお、本実施形態では、第一永久磁石3は自重により平面Gに固定された状態となっているが、これに変えて、例えば、第一永久磁石3を封入した非磁性体のケースを設け、このケースを平面Gにネジ等の固定具や接着等によって固定するようにしてもよい。また、図1において、平面Gと第一永久磁石3の下面3dとの間、平面Gと移動体5の下面(後述する左右のスライド部7、9のそれぞれの下面7d、9d)との間にはそれぞれ、間隙が形成されているが、これは図を見やすくするために形成したものであり、実際には、第一永久磁石3の下面3d及び移動体5の下面と、平面Gとは接触していることは言うまでもない。
移動体5は、図1(a)において、第一永久磁石3の左右にそれぞれ位置するとともに、平面Gに平行な非磁性体の左スライド部7及び右スライド部9と、これらのスライド部7、9のそれぞれの第一永久磁石3側の端部から平面Gに垂直な方向に起立する非磁性体の左起立部11、右起立部13と、これらの左右の起立部11、13の上端部間を接続するとともに、平面Gに平行な非磁性体の接続部15とを備えている。この移動体5においては、概して、左右の起立部11、13と接続部15とで形成される内部空間S1内に、第一永久磁石3が収まるように配置されることによって(移動体5を第一永久磁石3にセットしたセット状態にすることによって)、図2の矢印Aで示す第一方向に移動するようになっている(これについては後述する)。
左スライド部7及び右スライド部9は、板状に形成されている。左スライド部7の上面7aには、板状に形成された3つの第二永久磁石17、19、21(以後、これらを総括して「第二永久磁石17等」と称することもある。)が、接着剤等によって固定されており、右スライド部9の上面9aにも、板状に形成された3つの第三永久磁石23、25、27(以後、これらを総括して「第三永久磁石23等」と称することもある。)が接着剤等によって固定されている。また、左スライド部7の下面7d及び右スライド部9の下面9dは、平面Gに平行になっている。
左スライド部7の上面7aに対する第二永久磁石17等の固定、右スライド部9の上面9aに対する第三永久磁石23等の固定は、上述の接着剤等に限定されず、例えば、左スライド部7や右スライド部9の上面7a、9aに凹部を形成し、これらの凹部にそれぞれ、第二永久磁石17等や第三永久磁石23等の下部を篏合させるようにしてもよい。また、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等をそれぞれ封入した非磁性体のケースを設け、これらのケースをそれぞれ、左スライド部7及び右スライド部に、ネジ等の締結具や接着によって固定するようにしてもよい。要は、左スライド部7及び左スライド部9のぞれぞれの上面7a、9aに対して第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等が固定可能であれば、その固定方法については特に限定しない。
次に、第二永久磁石17等について説明するが、第二永久磁石17、19、21はいずれも同様な構成をなしているため、第二永久磁石17のみ説明し、第二永久磁石19、21については、例えば、第二永久磁石19及び21の符号19A及び21Aは、第二永久磁石17の符号17Aに相当するというように、第二永久磁石17の各部位と同様な符号を付することによってその説明を割愛する。
第二永久磁石17は、スライド部7に固定された状態において、その左側面17a及び右側面17bが互いに平行になっている。また、第二永久磁石17の上面17c及び下面17d(図1(a)参照)は、左側面17a及び右側面17bに対して垂直な垂直面であるとともに、これらの上面17c及び下面17dは互いに平行になっている(図1(a)参照)。また、第二永久磁石17の図2における左側の左部分17AはS極の磁性を有し、右側の右部分17BはN極の磁性を有しており、第二永久磁石17の左側面17aはS極であり、右側面(対向面)17bはN極となっている。すなわち、第二永久磁石17の右側面17bは、第一永久磁石3の左側面3aと対面(対向)している。また、第二永久磁石17の右側面17bと、第一永久磁石3の左側面3aとは、ともにN極となっており、これらの間に斥力が発生するようになっている。
図2に示すように、第二永久磁石17は、左スライド部7の上面7aに対して、平面視において(図2で見て)、左斜め下方に傾斜するように固定されている。換言すれば、第二永久磁石17は、この第二永久磁石17の右側面17bと第一永久磁石3の左側面3aとの距離が、矢印Aで示す第一方向に向かうにつれて次第に大きくなるように、左スライド部7の上面7aに固定されている。これにより、図3(b)に示すように、第二永久磁石17の右側面17bにおける第一方向の上流側(以後、単に「上流側」と称する)の端部と第一永久磁石3の左側面3aとの距離L1は、第二永久磁石17の右側面17aにおける第一方向の下流側(以後、単に「下流側」と称する)の端部と第一永久磁石3の左側面3aとの距離L2よりも小さくなっている(L1<L2)。
このため、図4に示すように、第二永久磁石17の右側面17bの上流側の端部と第一永久磁石3の左側面3aとの間の空間S2における斥力F1は、第二永久磁石17の右側面17bの下流側の端部と第一永久磁石3の左側面3aとの間の空間S3における斥力F2よりも大きくなる(F1>F2)。このように空間S2における斥力F1は、空間S3における斥力F2よりも大きいため、矢印Aで示す第一方向に働く分力である推力Pが発生する。
また、第一永久磁石3の左側面3aと第二永久磁石17の右側面17bとがなす角度θ1は、10度以上でかつ27度以下(10度≦θ1≦27度)の範囲内になるようにするのが好ましい。これは、この角度θ1が10度未満である場合には、上述の距離L1及びL2との差が小さいため、移動体5を移動するのに必要な推力Pが働かないためである。また、角度θ1が27度を超えると、第二永久磁石17のN極の左側面17aと第一永久磁石3のS極の左側面3aとの引力が強く働き、この引力が推力Pを阻害することによって、移動体5を移動するのに必要な推力Pが働かなくなるためである。なお、角度θ1は、22度以上でかつ24度以下(22度≦θ1≦24度)であることがより好ましい。
ここで、図3(b)は、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等と第一永久磁石3との位置関係を模式的に示す図であり、(a)は、図(b)を矢印a方向から見た正面図であり、(c)は、図(b)を矢印b方向から見た正面図である。この図3においては、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等と第一永久磁石3との位置関係の説明の便宜上、図2における第一永久磁石3、第二永久磁石17等、第三永久磁石23等とは大きさを異ならせている。なお、第二永久磁石21の左部分21A及び右部分21B、第三永久磁石27の左部分27A及び27Bについては、実際には、図3(c)のように見えるのであるが、図1(a)における第二永久磁石21の左部分21A及び右部分21B、第三永久磁石27の左部分27A及び右部分27Bについては、説明の便宜上、簡略化して描画(左部分27Aと右部分27Bとの左右方向の幅が均等になるように描画)していることは言うまでもない。
本実施形態では、図2に示すように、第二永久磁石17、19、21は、図2で見て、上下に並ぶように配置されている。また、第二永久磁石17、19、21は、スライド部7の上面7aにおいて、第二永久磁石17、19、21の最も左端をそれぞれ結ぶ線分X1と、第二永久磁石17、19、21の最も右端を結ぶ線分X2とが、第一永久磁石3の左側面3aに平行となっている。
また、第二永久磁石17の下流側の端及び第二永久磁石19の上流側の端は、平面視において互いに隣接する位置関係にあり、第二永久磁石19の下流側の端及び第二永久磁石21の上流側の端も、平面視において互いに隣接する位置関係にある。なお、このような隣接する位置関係に限定されず、例えば、第二永久磁石19の下流側の端及び第二永久磁石21の上流側の端が若干重なる重なりの位置関係であってもよく、要は、十分な推力Pが得られれば、隣接した位置関係であっても重なりの位置関係であってもよい。これについては、後述する第三永久磁石23等についても同様である。
次に、第三永久磁石23等について説明するが、第三永久磁石23、25、27はいずれも同様な構成をなしているため、第三永久磁石23のみ説明し、第三永久磁石25、27については、例えば、第三永久磁石25及び27の符号25A及び27Aは、第三永久磁石23の符号23Aに相当するというように、第三永久磁石23の各部位と同様な符号を付することによってその説明を割愛する。また、第三永久磁石23は、主に、傾斜方向以外は、第二永久磁石17と同様な構成であるため、第二永久磁石17にて既に説明した内容については、第二永久磁石17と同様な符号を付することによって、その説明を省略又は簡略化するものとする。
図2に示すように、第三永久磁石23の左側面(対向面)23aと、これに対面する第一永久磁石3の右側面3bとはそれぞれS極となっており、これらの間に斥力が発生するようになっている。また、第三永久磁石23は、右スライド部9の上面9aに対して、平面視において(図2で見て)、右斜め下方に傾斜するように固定されている。換言すれば、第三永久磁石23は、この第三永久磁石23の左側面23aと第一永久磁石3の右側面3bとの距離が、矢印Aで示す第一方向に向かうにつれて次第に大きくなるように、右スライド部9の上面9aに固定されている。この第三永久磁石23の左側面23aと第一永久磁石3の右側面3bとがなす角度θ2は、上述のθ1と同一となっている。また、第三永久磁石23、25、27は、スライド部9の上面9aにおいて、第二永久磁石23、25、27の最も左端をそれぞれ結ぶ線分X3と、第二永久磁石23、25、27の最も右端を結ぶ線分X4とが、第一永久磁石3の右側面3bに平行となっている。
これにより、図3(b)に示すように、第三永久磁石23の左側面23aの上流側の端部と第一永久磁石3の右側面3bとの距離L3(なお、この距離L3は、距離L1と同じである。)は、第三永久磁石23の左側面23aの下流側の端部と第一永久磁石3の右側面3bとの距離L4(なお、この距離L4は、距離L2と同じである。)よりも小さくなっている(L3<L4)。したがって、上述の図4でも説明したように、第三永久磁石23の左側面23aの上流側の端部と第一永久磁石3の右側面3bとの間の空間S3における斥力は、第三永久磁石23の左側面23aの下流側の端部と第一永久磁石3の右側面3bとの間の空間S4における斥力よりも大きくなる。このように空間S3における斥力(図4で示す斥力1に相当)は、空間S4における斥力(図4で示す斥力F2に相当)よりも大きいため、矢印Aで示す第一方向に働く分力である推力Pが発生する。このため、第二永久磁石17と同様に、第三永久磁石23と第一永久磁石3とによって、矢印Aで示す第一方向に働く推力である分力Pが発生する。すなわち、本実施形態では、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等と第一永久磁石3との間の斥力によって働く分力である推力Pによって、移動体5が矢印A方向に移動するようになっている。
なお、本実施形態では、3つの第二永久磁石を設けたが、第二永久磁石は単数であっても、3つ以外の複数であっても良い。これについては、第三永久磁石についても同様である。また、第二永久磁石及び第三永久磁石の個数については、同数であることが好ましいが、第二永久磁石による推力Pと、第三永久磁石による推力Pとが同じ強さになるのであれば、これらの個数が異なっていてもよい。例えば、第二永久磁石よりも第三永久磁石の方が磁力の強い磁石を用いることによって、第三永久磁石の数を、第二永久磁石よりも少なくすることが挙げられる。
図1(a)及び(b)に模式的に示すように、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等の高さ方向の中心を第一方向に沿って通る中心線CL1(第二永久磁石側中心線)、CL3(第三永久磁石側中心線)と、第一永久磁石3の高さ方向の中心を第一方向に沿って通る中心線CL2(第一永久磁石側中心線)とは同一の中心線CLを構成している。すなわち、図1(a)に示すように、第二永久磁石17等は、その中心線CL1が、第一永久磁石3の中心線CL2と一致するように、左スライド部7に固定されている。同様に、第三永久磁石23等も、その中心線CL3が、第一永久磁石3の中心線CL3と一致するように、右スライド部9に固定されている。換言すれば、左スライド部7及び右スライド部9の厚み(図1における高さ方向の幅)は、第二永久磁石17等の中心線CL1及び第三永久磁石23等の中心線CL2が、第一永久磁石3の中心線CL2と一致する厚みとなっている。
ここで、上述した移動体5についてまとめると以下の通りである。上述のように、移動体5の左スライド部7及び右スライド部9には、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等が、図2で見て左下及び右下に傾斜するように固定されている。これにより、図1(a)で示すセット状態において、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等が、第一永久磁石3に対して角度θ1及びθ2にて傾斜する傾斜位置関係を保持するようになっている。また、移動体5の左スライド部7及び右スライド部9には、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等が、これらの中心線CL1、CL3と第一永久磁石3の中心線CL2とが一致するように固定されている。これにより、図1(a)で示すセット状態において、図1(b)に示すように、それぞれの中心線CL1、CL2、CL3が一致して、一つの中心線CL1を構成する中心線一致状態を保持するようになっている。すなわち、移動体5の左スライド部7及び右スライド部9は、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等を固定する固定機能(取付機能)を有しているとともに、上記傾斜位置関係及び上記中心線一致状態を維持する(保持する)ための維持機能を有していることとなる。
また、移動体5の左右の起立部11、13及び接続部15は、図1(a)に示すセット状態において、第二永久磁石17等と第一永久磁石3との間の距離、第三永久磁石23等と第一永久磁石3との間の距離をそれぞれ一定に保持するようになっている。したがって、これらの左右の起立部11、13及び接続部15は、移動体5の移動方向を矢印Aで示す第一方向に規制する規制機能を有していることとなる。
次に、上述した構成に基づき、本実施形態の作用を説明する。まず、図1(a)及び図5(a)に示すように、第一永久磁石3の中央部付近の上方から移動体5を下ろして、移動体5の内部空間S1内に第一永久磁石3が収まるように、第一永久磁石3に対して移動体5を配置する(セット状態にする)。このとき、図1(b)に示すように、第一永久磁石3の中心線CL2と、第二永久磁石17等の中心線CL1及び第三永久磁石23等の中心線CL3とが一致するため、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等と第一永久磁石との間に発生する斥力のうち、図1(a)で見て、上下方向(第一方向に対して上下に垂直な方向)及び左右方向(第一方向に対して左右に垂直な方向)の斥力がそれぞれつりあう。一方、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等と第一永久磁石3との間に発生する斥力のうち、図2及び図5で見て、上下方向(矢印Aで示す第一方向に沿う方向)においては、上述のように、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等と第一永久磁石3との間において、その下流側よりも上流側の斥力の方が大きい(強い)ため、矢印Aで示す第一方向に推力Pが働く(図4参照)。この推力Pによって移動体5が矢印Aで示す第一方向に移動する。この移動体5は、第一永久磁石3が、移動体5の内部空間S内に介在している限り、その移動を継続する。
このように、移動体5の左右のスライド部7、9が、上記固定機能及び上記維持機能を有しているとともに、移動体5の左右の起立部11、13及び接続部15が上記規制機能を有しているので、第一永久磁石3が移動体5の内部空間Sに介在している限り推力Pが発生して、移動体5の移動を継続することができる。
その後、図5(b)で示すように、第一方向に移動を継続している移動体5に固定されている第二永久磁石21及び第三永久磁石27が、第一永久磁石3の一端部(図5で見て上端部)を抜けた状態では、第二永久磁石17、19及び第三永久磁石21、23と第一永久磁石3との間の斥力は働いている一方、第二永久磁石21及び第三永久磁石27の間においては、第一永久磁石3に対する斥力が働かなくなる(斥力が弱くなる)。これにより、移動体5の第一方向への移動に対する抵抗がなくなるため(抵抗が低減するため)、この図5(b)に状態おいては、移動体5が急加速する。換言すれば、推力発生機構1にて発生する推力は、図5(a)で示す状態よりも、図5(b)で示す状態の方が強いといえる。
なお、図5(c)に示すように、移動体5に固定された第二永久磁石17及び第三永久磁石23が、第一永久磁石3の他端部(図5で見て下端部)を抜けた状態になる位置まで、移動体5を手で移動させて手を離した場合には、第二永久磁石19、21及び第三永久磁石23、25と第一永久磁石3との間の斥力は働いている一方、第二永久磁石17及び第三永久磁石23の間においては、第一永久磁石3に対する斥力が働かなくなるため、矢印Aで示す第一方向とは反対方向の矢印Bで示す第二方向に移動することとなる。この図5(c)の状態においても、図5(a)の状態に比して、推力が強いといえる。
また、本実施形態では、第一永久磁石3を固定し、移動体5を移動可能としていたが、これに代えて、第一永久磁石3を固定せずに移動可能とし、移動体5を平面Gに固定された固定部としてもよく、この固定部となった移動体5に対して、第一永久磁石3が移動するようにしてもよい。この場合、固定部となった移動体5の左右のスライド部7、9が、上記維持機能を有しているとともに、固定部となった移動体5の左右の起立部11、13及び接続部15が、第一永久磁石3の移動方向を第一方向に規制する規制機能を有することとなる。なお、これについては、以降に述べる他の実施形態についても同様である。
以後、他の実施形態を順次説明するが、上述と同様な構成要素には同一の符号を付することにより、その説明を省略又は簡略化するものとする。
図6は、第二実施形態に係る推力発生機構を模式的に示す図である。なお、図6においては、第二永久磁石17等及び第二永久磁石23は図1等で示す移動体5に固定されているが、この図6においては、移動体5については省略し、第一固定磁石3と第二永久磁石17等及び第二永久磁石23のみ図示している。これについては、後述の図9乃至11等についても同様である。
この図6に示すように、この第二実施形態においては、複数の第一永久磁石3が、矢印Aで示す第一方向に沿って、互いに空隙部Kを形成するように(互いに間隔をあけて)複数個並べることによって、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等と第一永久磁石3との間の距離を大きくする(換言すれば、例えば、第二永久磁石17の右側面17bと第一永久磁石3の左側面3aとの間の距離を大きくするともいえる。)ようにしている点が、第一実施形態と異なる。この空隙部Kの図6で見て上下方向の間隔は、第二永久磁石17の上流側端部と下流側端部との間の距離よりも短くなっている。なお、図6においては、複数の空隙部Kのうち、一つの空隙部Kのみ図示し、他の空隙部Kについては省略している。なお、この空隙部Kに、上下の第一永久磁石3を連結する非磁性体の連結部(図示せず)を設けるようにして、上下の第一永久磁石3の位置関係を安定させるようにしてもよい。
この第二実施形態では、図6(a)の状態では、図5(a)に示す状態と同様に、移動体5が矢印Aで示す第一方向への移動を維持する。この状態で、移動体5が図6(b)の位置にまで移動、すなわち、移動体5に固定された第二永久磁石21及び第三永久磁石27が、空隙部Kに臨む位置に到達すると、図5(b)で説明したように、図6(a)の状態よりも強い推力が発生することで、移動体5が急加速して、図6(c)に示す位置に向け移動する。その後図6(c)の状態では、図6(a)と同様に、移動体5が矢印Aで示す第一方向への移動を維持する。この空隙部Kは、第一永久磁石3において複数設けられているため、上述の図6(a)〜図6(c)の動作を繰り返す。
このように、空隙部Kを設けたことにより、移動体5の第一方向下流側が空隙部Kに臨む位置に到達すると、強い推力Pが発生して移動体5を急加速させることができる。この結果、移動している移動体5の勢いが、何らかの要因で弱まったとしても、空隙部Kによって強い推力Pが発生して、移動体5の移動を補助することができ、移動体5の移動をより維持することができる。なお、空隙部Kに代えて、上述した上下の第一永久磁石3を連結する非磁性体の連結部を設けた場合についても同様である。
この空隙部Kとしては、上述の図6のものに限定されず、種々の形態を採用することができる。例えば、図7(a)に示すように、第一永久磁石3において、移動方向に向かうにつれて徐々に径が細くなる細径部を設けることで形成された空隙を、空隙部Kとしてもよい。この場合、図7(a)に示すように、第二永久磁石21及び第二永久磁石27が空隙部Kに臨む位置に到達すると、第二永久磁石21及び第二永久磁石27と第一永久磁石3との距離が大きくなり、第二永久磁石21及び第二永久磁石27と第一永久磁石3との間の斥力が弱くなって、移動体5の移動方向への抵抗が低減するので、強い推力Pが発生することとなる。この結果、図6で示す第二実施形態と同様な作用効果を奏する。また、図7(b)に示すように、第一永久磁石3において、複数のスリットを形成することによって形成された空隙を、空隙部Kとしてもよく、この場合においても、図6で示す第二実施形態と同様な作用効果を奏する。
ここで、空隙部Kを設けるのは、上述のように、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等と第一永久磁石3との間の斥力を低減させて、強い推力Pを発生させるためである。この第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等と第一永久磁石3との間の斥力を低減する方法としては、上述のように、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等と第一永久磁石3との間の距離を大きくする方法の他、例えば、第二永久磁石17の右側面17bの一部が、第一永久磁石3の左側面3aとは反対磁極になるように設けるようにすることで、これらの間の斥力を低減するようにしてもよい。
具体的には、図8(a)に示すように、第二永久磁石17の右側面17bの下流側端部に、第四永久磁石31を接着などによって設ける。この第四永久磁石31の右側面31bは、N極である第一永久磁石3の左側面3aとは、反対磁極であるS極となっている。これにより、第二永久磁石17の右側面17bの下流側端部と、これに対向する第一永久磁石3の左側面3aとの間の斥力を低減することができる。
この図8(a)に示す他、図8(b)に示すように、第二永久磁石として、複数の円盤状の小永久磁石32を連結したものを用いてもよく、連結された小永久磁石の1つを反対極性(この小磁石の裏表を、他の小永久磁石の裏表と逆にする)にした小永久磁石34としたものであってもよい。この反対極性とした小永久磁石34の数は、1つに限定されず、複数設けられているものであってもよく、例えば、図8(b)で示す符号32の小永久磁石と符号34の小永久磁石とが互いに交互に配置されるようになっていてもよい。また、第二永久磁石の形状としては、図8(c)乃至図8(e)に示すものであってもよい。さらに、図7(b)の空隙部Kに反対極性の磁石を挿入して固定するようにしてもよい。この場合、図7(b)の空隙部Kであった白色部分は、黒色のS極に対するN極となる。
ここで、上述のように、第一永久磁石3の径を小さくすることで空隙部Kを形成すると、第二永久磁石17及び第二永久磁石23と第一永久磁石3との距離が大きくなって斥力が弱まり、第一永久磁石3の径を大きくすることで延設部を形成すると、第二永久磁石17及び第二永久磁石23と第一永久磁石3との距離が小さくなって斥力が強まることとなる。このように、第一永久磁石3の径を調整することによって、第二永久磁石17及び第二永久磁石23と第一永久磁石3との斥力の調整が可能となる。第一永久磁石3の径を大きく延設部の一例としては、図7(c)に示すように、複数の第一永久磁石の側面同士を接合させることが挙げられる。この図7(c)に示す例は、図2に示す第一永久磁石3の長手方向の途中の個所において、その径を大きくしたい場合等に適用可能である。なお、上述の空隙部K、延設部については、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等に設けられていてもよい。また、図8に示す例では、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等の一部を反対極性としたが、これを第一永久磁石3に適用するようにしてもよい。要は、第一永久磁石3と第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等との少なくとも一方に、空隙部K、延設部、反対極性の少なくとも一つを設けることで、互いの間に発生する斥力を調整可能にすればよい。
図9は、第三実施形態に係る推力発生装置を模式的に示す図である。この第三実施形態では、第一永久磁石3においては、上部分3BがS極であり、下部分3AがN極となっている。また、第二永久磁石17においても、上部分17BがS極であり下部分17AがN極である点で第一実施形態と異なる。換言すれば、この第三実施形態に係る推力発生装置においては、図2で示す第一実施形態の第一永久磁石3を左に90度回転させ、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等もそれぞれ、左に90度回転させた状態と同様といえる。
この第三実施形態においても、第一永久磁石3の高さ方向の中心を第一方向に沿って通る中心線と、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等の高さ方向の中心を第一方向に沿って通る中心線とは一致して、一本の中心線CLを構成するようになっている。この第三実施形態においては、図9(b)及び(c)に示すように、第一永久磁石3の中心線は、第一永久磁石3の磁極の境目(N極とS極との間)を通る中心線となっており、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等の中心線は、これらの第二永久磁石17等及び第三永久磁石等23のそれぞれの磁極の中心を通る中心線となっている。また、この第三実施形態において、第一永久磁石3の左側面3aと第二永久磁石17の右側面17bとがなす角度θ1は、10度以上でかつ45度以下(10度≦θ1≦45度)の範囲内になるようにするのが好ましい。これは、この角度θ1が10度未満である場合には、上述の距離L1及びL2との差が小さいため、移動体5を移動するのに必要な推力Pが働かないためである。また、角度θ1が45度を超えると、移動体5を移動するのに必要な分力を得にくくなるためである(仮に、角度θ1が90度の場合、矢印A方向の分力が働かなくなる)。なお、角度θ1は、25度以上でかつ35度以下(25度≦θ1≦35度)であることがより好ましい。また、第一永久磁石3の右側面3bと第三永久磁石23の左側面23aとがなす角度θ2は、角度θ1と同じである。このように構成しても、第一実施の形態と同様な作用効果を奏する。
図10は、第四実施形態に係る推力発生装置を模式的に示す図である。この第四実施形態では、以下の点で第一実施形態と異なる。すなわち、図10(c)に示すように、移動部5として、中空の四角柱状態の本体部5Dを設け、これらの本体部5Dの上面及び下面にそれぞれ、第一実施形態の第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等を図2に示す第一実施形態と同様に固定し、本体部5Dの左側面及び右側面にそれぞれ、第三実施形態の第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等を図9に示す第三実施形態と同様に固定している。また、本体部5Dの左右の側面にはそれぞれ、移動体5を移動させるための車輪5E、5Fが設けられている。本実施形態では、これらの車輪5E、5Fの直径或いはこれらの車輪5E、5Fの軸の高さを調整することによって、中心線CLが一直線状になるようにしている。また、本体部5Dにおいて、その上面と左側面との隅部は、第一方向に沿うとともに本体部5Dの長手方向に亘って形成されたスリット部5Sとされている。また、第四実施形態では、第一永久磁石3として、図9に示す第三実施形態の第一永久磁石3を採用しており、この第一永久磁石3の上部分3Bの上面には、構造体Yに固定されているとともに、本体部5Dのスリット部5Sを介して本体部5D内に挿入された板状の支持部材36の先端部の下面に固定されている。
この第四実施形態は、要は、第一実施形態と第三実施形態とを組み合わせたものであり、図10(a)及び(b)に示すように、第一永久磁石3の上下左右方向にそれぞれ、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等が配置された例を示している。このようにしても、第一実施形態と同様な作用効果を奏する。なお、本実施形態の車輪5E、5Fを、例えば、第一実施形態の移動体5における左右のスライド部7、9にそれぞれ設けるようにしてもよい。
なお、この第四実施形態においても、上述の第一実施形態と同様に、支持部材36を構造体Yに形成したレール等によって矢印A方向に移動可能にすることで、第一永久磁石3を移動部として移動可能とし、移動体5の車輪5E、5Fをロックしたりあるいは固定具等によって平面Gに固定したりして移動体5を固定部としてもよい。この場合、固定部となった移動体5に対して、第一永久磁石3が移動することとなる。
図11は、第五実施形態に係る推力発生装置を示す正面図である。この第五実施形態では、平面Gに第一方向に延びる凹溝状の溝条であるレール部RLを形成し、第一実施形態の右スライド部9を設けずに、右起立部13の下端部を下方に延出させて、レール部RL内に挿入している点が第一実施形態と異なる。すなわち、第五実施形態では、第三永久磁石23等を設けずに、第二永久磁石17等と第一永久磁石3との間に発生する斥力にて、移動体5を移動させるようにしている。この第五実施形態の場合、左右の起立部11、13、接続部15に加えて、レール部RLが移動方向規制部を構成することとなる。このように構成しても、第一実施形態と同様な作用効果を奏する。
図12は、第六実施形態に係る推力発生装置を模式的に示す図である。この第六実施形態では、第一永久磁石3として図7(a)に示すものを採用するとともに、この第一永久磁石3を円環状に形成している。また、第一実施形態の移動部5(図12においては図示せず)全体を、平面視において、円環状の第一永久磁石3に沿った円弧状に湾曲させている点が、第一実施形態と異なる。
この第六実施形態では、円環状の第一永久磁石3の外周面3a側においては、第二永久磁石17等が第一永久磁石3の外周面3aに沿うように位置しているとともに、第二永久磁石17等の上流側端部と第一永久磁石3の外周面3aとの距離よりも、第二永久磁石17等の下流側端部と第一永久磁石3の外周面3aとの距離の方が短くなっている。第一永久磁石3の内周面3b側においても、第三永久磁石23等が第一永久磁石3の内周面3bに沿うように位置しているとともに、第三永久磁石23等の上流側端部と第一永久磁石3の内周面3bとの距離よりも、第三永久磁石23等の下流側端部と第一永久磁石3の内周面3bとの距離の方が短くなっている。これにより、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等と第一永久磁石3との間の斥力によって、矢印Cで示す第一方向への分力である推力Pが発生し、移動体5は矢印Cで示す第一方向への移動を維持可能となる。この第六実施形態においても、第一実施形態と同様な作用効果を奏する。
なお、第六実施形態の第一永久磁石3においては、図7(a)に示す第一永久磁石3を採用したが、これに変えて、例えば、図6に示す空隙部Kを有する第一永久磁石3を採用するようにしてもよく、上述した各実施形態の第一永久磁石、第二永久磁石、第三永久磁石を適宜採用することができる。また、この第六実施形態においても、上述の第一実施形態と同様に、第一永久磁石3を移動部として移動可能とし、移動体5を固定部とするようにしてもよく、この場合、移動部となった第一永久磁石3が回転することとなる(このため、固定部となった移動体5の第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等においては、第一永久磁石3が回転可能な程度に強い磁力を有する永久磁石を用いるのが好ましい)。
図13及び図14は、第七実施形態に係る推力発生装置を模式的に示す図である。図14に示すように、平面G上には、円環状に形成された第一永久磁石3が固定されている。また、第七実施形態の移動体5は、図示しない軸受け等に回転可能に軸支された回転軸Rと、この回転軸Rの下端に固定されているとともに水平方向に延びる支持部SJ1及びこの支持体SJ1の先端から下方に垂下した垂下部SJ2からなる支持部材SJと、この支持部材SJの垂下部SJ2に固定された円環状の固定部材KTとを有しており、この固定部材KTの下面には、図1等に示す第一実施形態の第三永久磁石23と同様な複数の外周側第三永久磁石23(以後、これらを総括して「外周側第三永久磁石23等」と称する)が、第一永久磁石3の外周面3aに沿って円環状になるように配置されている。この第七実施形態では、回転軸Rと支持部材SJと固定部材KTとで移動方向規制部を構成している。また、支持体SJ1の長さを調整することで、第一永久磁石3と第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等との距離を調整可能となっている。また、垂下部SJ2の長さを調整することで、中心線CLが一直線状になるようにしている。
この第七実施形態においても、外周側第三永久磁石23等は、矢印Cで示す第一方向の上流側端部と第一永久磁石3の外周面3aとの距離よりも、外周側第三永久磁石23の下流側端部と第一永久磁石3の外周面3aとの距離の方が短くなっている。これにより、外周側第三永久磁石23等と第一永久磁石3との間の斥力によって、移動体5が矢印Cで示す第一方向への回転移動を行うこととなる。この第七実施形態においても、第一実施形態と同様な作用効果を奏する。なお、この第七実施形態においても、上述の第一実施形態と同様に、第一永久磁石3を移動部として回転可能とし(具体的には、第一永久磁石3を板状の固定部材に固定し、この固定部材を回転軸を中心に回転可能にすること等によって実現できる)、移動体5を固定部とするようにしてもよく、この場合、移動部となった第一永久磁石3が回転することとなる。
なお、第七実施形態では、第一永久磁石3の外周側に外周側第三永久磁石23等を設けたが、図15に示すように、第一永久磁石3の内周側にも、第二永久磁石17と同様な複数の内周側第二永久磁石17を配置するようにしてもよい。また、図15に示すように、外周側第三永久磁石23の数よりも、内周側第二永久磁石17の数の方が多くなるように配置している。この場合においても、移動体5(図15では図示せず)が、矢印Cで示す第一方向に回転移動する。なお、外周側第三永久磁石23の数と、内周側第二永久磁石17の数とを同じ数としてもよいし、外周側第三永久磁石23の数よりも、内周側第二永久磁石17の数の方が少なくなるようにしてもよいことは言うまでもなく、これらの外周側第三永久磁石23及び内周側第二永久磁石17の数を調整することによって、矢印C方向に働く推力を調整可能である。また、第一永久磁石3を回転可能とし、支持部材SJを固定部とすることで、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等に対して、第一永久磁石3が回転するようにしてもよい。
図16は、第八実施形態に係る推力発生装置を模式的に示す図である。この図16に示すように、第八実施形態では、第一永久磁石として、互いに直径の異なる円環状の複数の第一永久磁石3を設けている。また、第八実施形態の移動体5としては、回転軸Rと、この回転軸Rに対してラジアル状に延びるとともに互いに等間隔に設けられた回転棒RBを設け、これらの回転棒RBにはそれぞれ、円盤状の複数の小永久磁石32をV字状に連結してなるV字永久磁石(第二永久磁石又は第三永久磁石)41を、それぞれの第一永久磁石3の間に介在するように固定されている。また、V字永久磁石41の回転方向における先端部と第一永久磁石3の外周面3a及び内周面3bとの距離よりも、V字永久磁石41の回転方向における後端部と第一永久磁石3の外周面3a及び内周面3bとの距離の方が小さくなっている。さらに、V字永久磁石41と第一永久磁石3とは、側面視において、図9(c)に示す第二永久磁石17及び第三永久磁石23と第一永久磁石3との関係と同一となっている。これにより、回転棒RBにおいては、矢印Dに示す方向に回転軸Rを中心に回転移動する。
なお、第八実施形態におけるV字永久磁石41の形状は、図16に示すV字状に限定されず、図17(a)乃至(f)に示すようにしてもよい。図17(a)は、小永久磁石32を密集させて三角形状としたものであり、図17(b)は、小永久磁石32をV字状にしたものであるが、図16に示す第二永久磁石41よりも小永久磁石32の数が少ない例を示したものである。また、図17(c)は、V字状に連結された小永久磁石32において、図8(b)と同様に、左下に傾斜した小永久磁石32の1つの裏表と、右下に傾斜した小永久磁石の1つの裏表とを、他の小永久磁石32の裏表と逆にして反対極性とした小永久磁石34を配置したものである。図17(d)は、図17の第二永久磁石41のV字状の頂点の小永久磁石を除去して、左下に傾斜した左部分と右下に傾斜した右部分とで構成したものである。図17(e)は、小永久磁石を円弧状に連結したものである。図17(f)は、図17(d)に示すV字永久磁石と同様な形状ではあるが、図8(b)及び図17(c)と同様にして反対極性とした小永久磁石34を配置したものである。
図18は、第九実施形態に係る推力発生装置を模式的に示す図である。この第九実施形態の第一永久磁石3は、図9(a)に示す第一永久磁石3と同様であり、この第一永久磁石3が左右に互いに平行に3つ並んでいる。これらの第一永久磁石3は、平面G上に載置された固定板GTに固定されている。また、第九実施形態の移動体5は、図1で示す移動体5を3つ用意し、これら3つの移動体5を左右に連結するように一体化してなっている。それぞれの移動体5の左右のスライド部7、9にはそれぞれ、図9(c)で示す第二永久磁石17及び第三永久磁石23が固定されている。なお、本実施形態では、一番左のスライド部7及び一番右のスライド部9にはそれぞれ、図10(c)で示す車輪5E、5Fが設けられている(これらの図示は省略)。なお、車輪5E、5Fに代えて、一番左のスライド部7の左端及び一番右のスライド部9の右端からそれぞれ、下方に垂下する垂下部を設け、この垂下部を図11で示すレールRLに挿入するようにしてもよい。このようにしても、第一実施形態と同様な作用効果を奏する。
なお、本発明は、上述の各実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内において、適宜の変更が可能である。
図1及び図2に示すように、第一実施形態に係る推力発生機構1は、地面や床等の平面G上に載置されて固定された第一永久磁石3と、平面Gに沿って移動可能な非磁性体の移動体(移動部)5とを有している。本実施形態では、図1及び図2に示す第一永久磁石3においては、N極を白色部分とし、S極を黒色部分としている。これについては、図3以降の図面における第一永久磁石3及び他の永久磁石についても同様である。なお、本実施形態では、白色部分をN極、黒色部分をS極としたが、白色部分をS極、黒色部分をN極としてもよいことは言うまでもない。これについては、本実施形態以外の後述する第二実施形態等の他の実施形態においても同様である。
図1(a)及び図2に示すように、第一永久磁石3は、一直線に延びる四角柱状に形成されている。第一永久磁石3の図1(a)における左側の左部分3AはN極の磁極を有し、右側の右部分3BはS極の磁極を有している。換言すれば、第一永久磁石3の左側面(第一面)3aはN極であり、右側面(第二面)3bはS極となっている。第一永久磁石3が平面Gに載置された状態において(図1で示す状態において)、第一永久磁石3の左側面3a及び右側面3bはそれぞれ、平面Gに対して垂直な垂直面となっている(換言すれば、これらの左側面3a及び右側面3bは互いに平行となっている)。また、第一永久磁石3が平面Gに載置された状態において、第一永久磁石3の上面(図1で見て上側の面)3c及び第一永久磁石3の下面(図1見て、平面Gに接する下側の面)3dはそれぞれ、平面Gと平行な平行面となっている(換言すれば、これらの上面3c及び下面3dは互いに平行となっている)。
なお、本実施形態では、第一永久磁石3は自重により平面Gに固定された状態となっているが、これに変えて、例えば、第一永久磁石3を封入した非磁性体のケースを設け、このケースを平面Gにネジ等の固定具や接着等によって固定するようにしてもよい。また、図1において、平面Gと第一永久磁石3の下面3dとの間、平面Gと移動体5の下面(後述する左右のスライド部7、9のそれぞれの下面7d、9d)との間にはそれぞれ、間隙が形成されているが、これは図を見やすくするために形成したものであり、実際には、第一永久磁石3の下面3d及び移動体5の下面と、平面Gとは接触していることは言うまでもない。
移動体5は、図1(a)において、第一永久磁石3の左右にそれぞれ位置するとともに、平面Gに平行な非磁性体の左スライド部7及び右スライド部9と、これらのスライド部7、9のそれぞれの第一永久磁石3側の端部から平面Gに垂直な方向に起立する非磁性体の左起立部11、右起立部13と、これらの左右の起立部11、13の上端部間を接続するとともに、平面Gに平行な非磁性体の接続部15とを備えている。
左スライド部7及び右スライド部9は、板状に形成されている。左スライド部7の上面7aには、板状に形成された3つの第二永久磁石17、19、21(以後、これらを総括して「第二永久磁石17等」と称することもある。)が、接着剤等によって固定されており、右スライド部9の上面9aにも、板状に形成された3つの第三永久磁石23、25、27(以後、これらを総括して「第三永久磁石23等」と称することもある。)が接着剤等によって固定されている。また、左スライド部7の下面7d及び右スライド部9の下面9dは、平面Gに平行になっている。
左スライド部7の上面7aに対する第二永久磁石17等の固定、右スライド部9の上面9aに対する第三永久磁石23等の固定は、上述の接着剤等に限定されず、例えば、左スライド部7や右スライド部9の上面7a、9aに凹部を形成し、これらの凹部にそれぞれ、第二永久磁石17等や第三永久磁石23等の下部を篏合させるようにしてもよい。また、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等をそれぞれ封入した非磁性体のケースを設け、これらのケースをそれぞれ、左スライド部7及び右スライド部に、ネジ等の締結具や接着によって固定するようにしてもよい。要は、左スライド部7及び左スライド部9のぞれぞれの上面7a、9aに対して第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等が固定可能であれば、その固定方法については特に限定しない。
次に、第二永久磁石17等について説明するが、第二永久磁石17、19、21はいずれも同様な構成をなしているため、第二永久磁石17のみ説明し、第二永久磁石19、21については、例えば、第二永久磁石19及び21の符号19A及び21Aは、第二永久磁石17の符号17Aに相当するというように、第二永久磁石17の各部位と同様な符号を付することによってその説明を割愛する。
第二永久磁石17は、スライド部7に固定された状態において、その左側面17a及び右側面17bが互いに平行になっている。また、第二永久磁石17の上面17c及び下面17d(図1(a)参照)は、左側面17a及び右側面17bに対して垂直な垂直面であるとともに、これらの上面17c及び下面17dは互いに平行になっている(図1(a)参照)。また、第二永久磁石17の図2における左側の左部分17AはS極の磁性を有し、右側の右部分17BはN極の磁性を有しており、第二永久磁石17の左側面17aはS極であり、右側面(対向面)17bはN極となっている。すなわち、第二永久磁石17の右側面17bは、第一永久磁石3の左側面3aと対面(対向)している。また、第二永久磁石17の右側面17bと、第一永久磁石3の左側面3aとは、ともにN極となっており、これらの間に斥力が発生するようになっている。
図2に示すように、第二永久磁石17は、左スライド部7の上面7aに対して、平面視において(図2で見て)、左斜め下方に傾斜するように固定されている。換言すれば、第二永久磁石17は、この第二永久磁石17の右側面17bと第一永久磁石3の左側面3aとの距離が、矢印Aで示す第一方向に向かうにつれて次第に大きくなるように、左スライド部7の上面7aに固定されている。これにより、図3(b)に示すように、第二永久磁石17の右側面17bにおける第一方向の上流側(以後、単に「上流側」と称する)の端部と第一永久磁石3の左側面3aとの距離L1は、第二永久磁石17の右側面17aにおける第一方向の下流側(以後、単に「下流側」と称する)の端部と第一永久磁石3の左側面3aとの距離L2よりも小さくなっている(L1<L2)。
また、第一永久磁石3の左側面3aと第二永久磁石17の右側面17bとがなす角度θ1は、10度以上でかつ27度以下(10度≦θ1≦27度)の範囲内になるようにするのが好ましい。なお、角度θ1は、22度以上でかつ24度以下(22度≦θ1≦24度)であることがより好ましい。
ここで、図3(b)は、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等と第一永久磁石3との位置関係を模式的に示す図であり、(a)は、図(b)を矢印a方向から見た正面図であり、(c)は、図(b)を矢印b方向から見た正面図である。この図3においては、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等と第一永久磁石3との位置関係の説明の便宜上、図2における第一永久磁石3、第二永久磁石17等、第三永久磁石23等とは大きさを異ならせている。なお、第二永久磁石21の左部分21A及び右部分21B、第三永久磁石27の左部分27A及び27Bについては、実際には、図3(c)のように見えるのであるが、図1(a)における第二永久磁石21の左部分21A及び右部分21B、第三永久磁石27の左部分27A及び右部分27Bについては、説明の便宜上、簡略化して描画(左部分27Aと右部分27Bとの左右方向の幅が均等になるように描画)していることは言うまでもない。
本実施形態では、図2に示すように、第二永久磁石17、19、21は、図2で見て、上下に並ぶように配置されている。また、第二永久磁石17、19、21は、スライド部7の上面7aにおいて、第二永久磁石17、19、21の最も左端をそれぞれ結ぶ線分X1と、第二永久磁石17、19、21の最も右端を結ぶ線分X2とが、第一永久磁石3の左側面3aに平行となっている。
また、第二永久磁石17の下流側の端及び第二永久磁石19の上流側の端は、平面視において互いに隣接する位置関係にあり、第二永久磁石19の下流側の端及び第二永久磁石21の上流側の端も、平面視において互いに隣接する位置関係にある。なお、このような隣接する位置関係に限定されず、例えば、第二永久磁石19の下流側の端及び第二永久磁石21の上流側の端が若干重なる重なりの位置関係であってもよく、要は、十分な推力Pが得られれば、隣接した位置関係であっても重なりの位置関係であってもよい。これについては、後述する第三永久磁石23等についても同様である。
次に、第三永久磁石23等について説明するが、第三永久磁石23、25、27はいずれも同様な構成をなしているため、第三永久磁石23のみ説明し、第三永久磁石25、27については、例えば、第三永久磁石25及び27の符号25A及び27Aは、第三永久磁石23の符号23Aに相当するというように、第三永久磁石23の各部位と同様な符号を付することによってその説明を割愛する。また、第三永久磁石23は、主に、傾斜方向以外は、第二永久磁石17と同様な構成であるため、第二永久磁石17にて既に説明した内容については、第二永久磁石17と同様な符号を付することによって、その説明を省略又は簡略化するものとする。
図2に示すように、第三永久磁石23の左側面(対向面)23aと、これに対面する第一永久磁石3の右側面3bとはそれぞれS極となっており、これらの間に斥力が発生するようになっている。また、第三永久磁石23は、右スライド部9の上面9aに対して、平面視において(図2で見て)、右斜め下方に傾斜するように固定されている。換言すれば、第三永久磁石23は、この第三永久磁石23の左側面23aと第一永久磁石3の右側面3bとの距離が、矢印Aで示す第一方向に向かうにつれて次第に大きくなるように、右スライド部9の上面9aに固定されている。この第三永久磁石23の左側面23aと第一永久磁石3の右側面3bとがなす角度θ2は、上述のθ1と同一となっている。また、第三永久磁石23、25、27は、スライド部9の上面9aにおいて、第二永久磁石23、25、27の最も左端をそれぞれ結ぶ線分X3と、第二永久磁石23、25、27の最も右端を結ぶ線分X4とが、第一永久磁石3の右側面3bに平行となっている。
これにより、図3(b)に示すように、第三永久磁石23の左側面23aの上流側の端部と第一永久磁石3の右側面3bとの距離L3(なお、この距離L3は、距離L1と同じである。)は、第三永久磁石23の左側面23aの下流側の端部と第一永久磁石3の右側面3bとの距離L4(なお、この距離L4は、距離L2と同じである。)よりも小さくなっている(L3<L4)。
なお、本実施形態では、3つの第二永久磁石を設けたが、第二永久磁石は単数であっても、3つ以外の複数であっても良い。これについては、第三永久磁石についても同様である。また、第二永久磁石及び第三永久磁石の個数については、同数であることが好ましいが、これらの個数が異なっていてもよい。
図1(a)及び(b)に模式的に示すように、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等の高さ方向の中心を第一方向に沿って通る中心線CL1(第二永久磁石側中心線)、CL3(第三永久磁石側中心線)と、第一永久磁石3の高さ方向の中心を第一方向に沿って通る中心線CL2(第一永久磁石側中心線)とは同一の中心線CLを構成している。すなわち、図1(a)に示すように、第二永久磁石17等は、その中心線CL1が、第一永久磁石3の中心線CL2と一致するように、左スライド部7に固定されている。同様に、第三永久磁石23等も、その中心線CL3が、第一永久磁石3の中心線CL3と一致するように、右スライド部9に固定されている。換言すれば、左スライド部7及び右スライド部9の厚み(図1における高さ方向の幅)は、第二永久磁石17等の中心線CL1及び第三永久磁石23等の中心線CL2が、第一永久磁石3の中心線CL2と一致する厚みとなっている。
ここで、上述した移動体5についてまとめると以下の通りである。上述のように、移動体5の左スライド部7及び右スライド部9には、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等が、図2で見て左下及び右下に傾斜するように固定されている。これにより、図1(a)で示すセット状態において、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等が、第一永久磁石3に対して角度θ1及びθ2にて傾斜する傾斜位置関係を保持するようになっている。また、移動体5の左スライド部7及び右スライド部9には、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等が、これらの中心線CL1、CL3と第一永久磁石3の中心線CL2とが一致するように固定されている。これにより、図1(a)で示すセット状態において、図1(b)に示すように、それぞれの中心線CL1、CL2、CL3が一致して、一つの中心線CL1を構成する中心線一致状態を保持するようになっている。すなわち、移動体5の左スライド部7及び右スライド部9は、第二永久磁石17等及び第三永久磁石23等を固定する固定機能(取付機能)を有しているとともに、上記傾斜位置関係及び上記中心線一致状態を維持する(保持する)ための維持機能を有していることとなる。
また、移動体5の左右の起立部11、13及び接続部15は、図1(a)に示すセット状態において、第二永久磁石17等と第一永久磁石3との間の距離、第三永久磁石23等と第一永久磁石3との間の距離をそれぞれ一定に保持するようになっている。したがって、これらの左右の起立部11、13及び接続部15は、移動体5の移動方向を矢印Aで示す第一方向に規制する規制機能を有していることとなる。
次に、上述した構成に基づき、本実施形態の作用を説明する。まず、図1(a)及び図4(a)に示すように、第一永久磁石3に対して移動体5を配置する(セット状態にする)。このとき、図1(b)に示すように、第一永久磁石3の中心線CL2と、第二永久磁石17等の中心線CL1及び第三永久磁石23等の中心線CL3とが一致し、この移動体5が矢印Aで示す第一方向に移動する。
このように、移動体5の左右のスライド部7、9が、上記固定機能及び上記維持機能を有しているとともに、移動体5の左右の起立部11、13及び接続部15が上記規制機能を有しているので、移動体5が移動することができる。
その後、図4(b)で示すように、第一方向に移動をしている移動体5に固定されている第二永久磁石21及び第三永久磁石27が、第一永久磁石3の一端部(図4で見て上端部)を抜けた状態では、移動体5が急加速する。
なお、図4(c)に示すように、移動体5に固定された第二永久磁石17及び第三永久磁石23が、第一永久磁石3の他端部(図4で見て下端部)を抜けた状態になる位置まで、移動体5を手で移動させて手を離した場合には、矢印Aで示す第一方向とは反対方向の矢印Bで示す第二方向に移動する。
本実施形態では、第一永久磁石3を固定し、移動体5を移動可能としていたが、これに代えて、第一永久磁石3を固定せずに移動可能とし、移動体5を平面Gに固定された固定部としてもよく、この固定部となった移動体5に対して、第一永久磁石3が移動するようにしてもよい。この場合、固定部となった移動体5の左右のスライド部7、9が、上記維持機能を有しているとともに、固定部となった移動体5の左右の起立部11、13及び接続部15が、第一永久磁石3の移動方向を第一方向に規制する規制機能を有することとなる。
なお、本発明は、上述の各実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内において、適宜の変更が可能である。