以下、本発明の実施形態の内容を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様を含み、以下に例示される実施形態の内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、それはあくまで一例であって、本発明の内容を限定するものではない。また、本明細書において、ある図面に記載されたある要素と、他の図面に記載されたある要素とが同一又は対応する関係にあるときは、同一の符号(又は符号として記載された数字の後にa、b等を付した符号)を付して、繰り返しの説明を適宜省略することがある。さらに各要素に対する「第1」、「第2」と付記された文字は、各要素を区別するために用いられる便宜的な標識であり、特段の説明がない限りそれ以上の意味を有さない。
第1の実施形態:
本実施形態は、免震装置の上部に設けられる基礎構造(以下、「免震上部基礎構造」という。)の構成を示す。以下、本実施形態に係る免震上部基礎構造の構成及びその製造方法、並びに免震上部基礎構造を用いたフーチング構造体について説明する。
(1)免震上部基礎構造
図1(A)は、本実施形態に係る免震上部基礎構造100aの平面図を示し、図1(B)は、その断面構造の模式図を示す。免震上部基礎構造100aは、ベースプレート102、ベース筋116、コンクリート部106、袋状ナット112、袋状ナット112の上部に付された定着板114、及び環状補強筋115を含む。
ベースプレート102は、複数の貫通孔104を有する。ベースプレート102における貫通孔104は、免震装置の上部フランジに形成されるアンカーボルトを挿通するための貫通孔に合わせて配置される。例えば、貫通孔104は、ベースプレート102の中心を円心として所定の半径を有する円周上の複数箇所に形成される。ベースプレート102は金属製であり、例えば、鋼鉄によって作製される。ベースプレート102の厚さは任意であるが、10mmから30mm、例えば20mmの厚さを有する。また、図1(A)は、ベースプレート102が矩形である場合を示すが、ベースプレート102の平面的な形状はこれに限定されず、他の多角形又は円形であってもよい。
袋状ナット112は、ベースプレート102上で貫通孔104の配置に合わせて複数個配置される。袋状ナット112の上部には、定着板114が設けられる。定着板114は平板状であり、先端が袋状ナット112の長手方向に対し交差する方向に突出するように設けられる。定着板114は、溶接により袋状ナット112の上部に固定されていることが好ましい。図1(B)に示すように、袋状ナット112は、ベースプレート102上に立設するように設けられる。袋状ナット112は、あらかじめ溶接によってベースプレート102に固定されていてもよい。袋状ナット112を溶接でベースプレート102上に固定しておくことにより、精度良く配置することができ、免震上部基礎構造100aを免震装置上で安定的に保持することができる。ベースプレート102上の袋状ナット112は、下側部分がコンクリート部106に埋設され、上側部分がコンクリート部106から露出するように設けられる。
図1(A)及び図1(B)に示すように、コンクリート部106は、ベースプレート102の上面側に設けられる。図1(B)は、ベースプレート102の上面とコンクリート部106の底面が接するように設けられた形態を示す。また、図2(A)に示すように、コンクリート部106は、ベースプレート102の上面及び側面を覆うように設けられていてもよい。別言すれば、ベースプレート102の底面とコンクリート部の底面の高さとが略一致するように設けられていてもよい。ベースプレート102の上面及び側面が、コンクリート部106に埋設されるようにすることで、免震上部基礎構造100の底面を平坦化することができ、ベースプレート102とコンクリート部106との間に働くせん断力に対する耐性を高めることができる。
図1(A)及び図1(B)に示すように、コンクリート部106は平板状であっても良いし、ベースプレート102と平行な平板部108と、平板部108から突出する立ち上がり部110を含んで構成されてもよい。立ち上がり部110は、コンクリート部106の周縁部に沿って平板部108の四方を囲むように設けられる。なお、平板部108と立ち上がり部110とは説明の都合上異なる部位として説明されるが、これらはコンクリート部106として一つの構造体を形成するように一体に形成されていてもよい。
ベース筋116は複数本がコンクリート部106の中に配筋される。コンクリート部106の表面からベース筋116までの厚さ(かぶり厚さ)は任意であるが、例えば、40mmから60mmの厚さを有する。複数のベース筋116は、コンクリート部106の中で袋状ナット112と干渉しないように、縦横に交差するように設けられる。複数のベース筋116は、交差部において適宜番線(「なまし線」、「なまし鉄線」とも言う。)で結束される。このように、免震上部基礎構造は、鉄筋コンクリートで形成される。
図1(B)に示すように、ベース筋116は、コンクリート部106の立ち上がり部110で上方に突出するように屈曲された形状を有する。別言すれば、複数のベース筋116のそれぞれは、平板部108で格子状に配筋されると共に、立ち上がり部110の上面から突出するように設けられることで、上方が開口した籠状の形状を有する。ベース筋116がコンクリート部106から突出する部分は、フーチング籠筋118とも呼ばれる。図1(B)に示すように、フーチング籠筋118の先端はU字状に折り曲げられていてもよい。
コンクリート部106は、ベース筋が上方へ突出するように屈曲していることで、立ち上がり部110の強度及び耐久性が高められている。図では示さないが、コンクリート部106は、立ち上がり部110に沿った枠状のベース筋が設けられていてもよい。なお、立ち上がり部110の高さは、後述されるように袋状ナット112及び定着板114、並びに環状補強筋115の高さより高くなるように設けられる。また、立ち上がり部110の厚さは適宜設定されるが、少なくともフーチング籠筋118のかぶり厚さを満たす程度の幅を有する。
袋状ナット112は、下側部分がコンクリート部106に埋設され、上側部分がコンクリート部106から露出するように設けられる。袋状ナット112の上部がコンクリート部106から露出することにより、定着板114も同様にコンクリート部106から露出する。
図1(A)は、平面視において、環状補強筋115が、円環状に配置された複数の袋状ナット112の外側を囲むように配置された一例を示す。断面視においては、図1(B)に示すように、環状補強筋115は、袋状ナット112の上側部分と接するように配置される。すなわち、環状補強筋115は、コンクリート部106から露出し、袋状ナット112がコンクリート部106から露出する部分で接するように設けられる。
図1(A)及び図1(B)に示すように、環状補強筋115は、環状に配置された複数の袋状ナット112のうち、少なくとも2つ以上と接するように配置される。例えば、環状補強筋115は、円環状に配置された複数の袋状ナット112のそれぞれと接するように設けられる。環状補強筋115と少なくとも2つ以上の袋状ナット112とが接するように設けられることで、コンクリート部106において複数の袋状ナット112を安定的に保持することができる。なお、図1では示さないが、次に述べるように、環状補強筋115は袋状ナット112と番線で結束されていることが好ましい。なお、環状補強筋115は、図1(B)に示すように1段設けられればよいが、図2(B)に示すように、環状補強筋115が複数段重ねて設けられていてもよい。
図3(A)は、袋状ナット112に対する環状補強筋115の取り付け構造の詳細を示す。環状補強筋115は、少なくとも2つ以上の袋状ナット112と接するように設けられる。図3(A)は、環状補強筋115が袋状ナット112と接する部分において番線117により結束される態様を示す。環状補強筋115と袋状ナット112とが接する部分において、番線117で結びつけることで、環状補強筋115は袋状ナット112と連結される。環状補強筋115は複数本が設けられてもよい。例えば、図3(B)に示すように、上下2段に重ねて環状補強筋115を設けてもよい。複数段の環状補強筋115は、番線117によって袋状ナット112に結束される。
袋状ナット112は、下側部分がベースプレート102に固定され、上側部分で環状補強筋115によって連結されることで、コンクリート部106に安定した状態で配置することができる。また、環状補強筋115が2つ以上の袋状ナット112と結束又は接合されることで、環状補強筋115と複数の袋状ナット112とが相互作用して、安定性を高めることができる。このような作用により、複数の袋状ナット112をコンクリート部106に安定した状態でもうけることができる。
図3(A)に示すように、定着板114は、袋状ナット112から突出するように設けられる。定着板114は、袋状ナット112の外径よりも幅広の形状に設けられる。例えば、定着板114が円形板の場合、その直径は袋状ナット112の外径よりも大きくなるように設けられる。定着板114が袋状ナット112から突出する長さD1は、環状補強筋115と干渉する大きさを有することが好ましい。別言すれば、定着板114が突出する長さD1は、環状補強筋115が、袋状ナット112の長手方向に移動して、抜け出るのを阻害する大きさであることが好ましい。例えば、環状補強筋115の筋の太さが13mmである場合、D1の大きさはその太さと同程度、又は0.8倍から2倍程度の大きさを有することが好ましい。このような寸法関係によれば、定着板114の作用により、環状補強筋115が袋状ナット112から抜け出ることを防止することができる。定着板114は、環状補強筋115に対し上記のような作用を発現するために、袋状ナット112に確実に固定されていることが好ましい。例えば、定着板114は、袋状ナット112に溶接によって固定されていることが好ましい。この場合、環状補強筋115は、定着板114に近接させ(あるいは定着板114と接触させ)、溶接部111と接するように配置されることが好ましい。環状補強筋115を、定着板114と袋状ナット112との付け根部分である溶接部111と接するように設けることで、環状補強筋115が定着板114のみと接する場合と比べ、定着板114が袋状ナット112から外れてしまうことが防止され、外力に対する耐性を高めることができる。また、環状補強筋115は、番線117を用いて袋ナット112に密着するように設置する。
図4は、本発明の一実施形態に係る免震上部基礎構造100aにおける、立ち上がり部110、袋状ナット112、定着板114、及び環状補強筋115の詳細を示す。図4に示すように、袋状ナット112は下側部分がコンクリート部106に埋設され、上側部分がコンクリート部106から露出する。環状補強筋115は、袋状ナット112がコンクリート部106から露出する部分に配筋される。袋状ナット112及び定着板114、並びに環状補強筋115は、立ち上がり部110に囲まれるように配置される。定着板114が袋状ナット112の上側部分に設けられる。環状補強筋115は定着板114より低い位置であって、定着板114と袋状ナット112との溶接部111と接するように配筋される。別言すれば、環状補強筋115は、その高さh1(平板部108から環状補強筋115の上端までの高さ)が、定着板114の高さh2(平板部108から定着板114の上端までの高さ)より低くなるように配筋される。また、環状補強筋115の高さh1及び定着板114の高さh2は、立ち上がり部110の高さ(h1)より低くなるように設けられる。すなわち、立ち上がり部110の高さh3、定着板114の高さh2、環状補強筋115の高さh1の関係は、h3>h2>h1の関係が成立するように設けられる。
図4において点線で示すように、免震上部基礎構造100aの上にはフーチング131及び基礎梁132が設けられる。基礎梁132が鉄筋コンクリートで作製される場合、コンクリート部106の上に鉄筋が配筋される。この場合、コンクリートのかぶり厚さを確保するため、梁主筋134を支持するスペーサ143が立ち上がり部110の上面に配置される。
本実施形態に係る免震上部基礎構造100aは、袋状ナット112及び定着板114、並びに環状補強筋115が、立ち上がり部110より突出しないように設けられることで、梁主筋134を配筋するときに袋状ナット112及び定着板114、並びに環状補強筋115が干渉しないようにすることができる。別言すれば、免震上部基礎構造100aは、立ち上がり部110を有することで、袋状ナット112及び定着板114、並びに環状補強筋115をコンクリート部106の表面(平板部108の上面)から突出して設けることができる。
図5は、環状補強筋115が、円環状に配置された複数の袋状ナット112の円環の内側から接するように配筋された態様を示す。環状補強筋115は、2つ以上の袋状ナット112と接するように設けられる。環状補強筋115は、複数の袋状ナット112のそれぞれと接するように設けられる。環状補強筋115は、定着板114と袋状ナット112との溶接部分に接するように番線で結束されることが好ましい。このような配筋の場合においても、環状補強筋115が2つ以上の袋状ナット112と結束又は接合されることで、強固に連結される。それにより、コンクリート部106に設けられた複数の袋状ナット112の安定性を高め、袋状ナット112がコンクリート部106から抜けないようにすることができる。
図6(A)及び図6(B)は、円環状に配置された複数の袋状ナット112の円環の外側から接するように第1環状補強筋115aが配筋され、内側から接するように第2環状補強筋115bが配筋された一例を示す。第1環状補強筋115aと第2環状補強筋115bとは略同じ高さに配筋されていることが好ましい。複数の袋状ナット112は、円環の外側に配置された第1環状補強筋115aと番線で結束され、さらに円環の内側に配置された第2環状補強筋115bと番線で結束されることにより、より強固に連結される。このような態様により円環状に配置された複数の袋状ナット112は、コンクリート部106に安定した状態で設けられ、袋状ナット112がコンクリート部106から抜けないようにすることができる。
また、図7(A)及び図7(B)に示すように、第1環状補強筋115aと第2環状補強筋115bとに、番線117を巻き付けて結束してもよい。袋状ナット112を、第1環状補強筋115a及び第2環状補強筋115bの2つの補強筋で、両側から挟み込み固定することで、コンクリート部106に設けられる袋状ナット112の安定性を高めることができる。
なお、図1(A)は、平面視において、複数の袋状ナット112が円環状に配置される態様を示すが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、図8(A)に示すように、複数の袋状ナット112は、免震装置のフランジの仕様に合わせて矩形状に配置されていてもよい。矩形状に配置された複数の袋状ナット112に対しても、図8(A)及び図8(B)に示すように、上記と同様に環状補強筋115を配筋することができる。図8(A)及び図8(B)では、第1環状補強筋115a及び第2環状補強筋115bを示す。
なお、本実施形態において、コンクリート部106は、免震装置の上で直接的にコンクリートが打設されて形成されたものではなく、プレキャスト製のものであることが好ましい。免震上部基礎構造100aがプレキャストされたコンクリートで形成されることで、建造物の基礎を形成する作業現場において、型枠を配置したり、作業現場を養生したりする手間が省略し、作業効率を向上させることが可能となる。
(2)免震上部基礎構造の製造方法
図9(A)及び図9(B)、並びに図11(A)乃至図11(C)を参照して、図1(A)及び図1(B)に示す免震上部基礎構造100aの作製方法を説明する。本実施形態に係る免震上部基礎構造100aは、プレキャストコンクリート(PCa)工法で作製されるものである。以下においては、プレキャストコンクリート(PCa)工法に基づく作製方法について説明する。
図9(A)及び図9(B)は、ベース筋116が配筋され、免震装置のフランジ形状に合わせて袋状ナット112が円環状に立設して設けられた段階を示す。袋状ナット112の上面には定着板114が設けられている。袋状ナット112は、貫通孔104が形成されたベースプレート102の上面に配置されていてもよい。さらに、図9(A)及び図9(B)は、ベース筋116、定着板114が設けられた袋状ナット112を囲むように型枠138(外側型枠138a、内側型枠138b)が設置される段階を示す。なお、図9(A)はこの段階での平面図を示し、図9(B)はこの段階での断面模式図を示す。
ベースプレート102は、土台136の上に支持されていてもよい。袋状ナット112は、貫通孔104の位置に合わせて配置する。袋状ナット112は、ベースプレート102の下面から貫通孔104に挿通される取り付け用のボルトによって仮止めされてもよいし、溶接によってベースプレート102に固定されてもよい。
図9(B)はベースプレート102が直接土台136の上に配置される態様を示すが、これに代えて図10に示すように、ベースプレート102を、底面と、底面に対して立設される側壁を有する外側型枠138c上に設置し、ベースプレート102の周辺に木材などの間隙充填材141を敷設し、ベースプレート102及び外側型枠138cにはボルトが挿通される貫通孔139を有する構造であってもよい。底面を有する外側型枠138cを用いることで、ベースプレート102をより安定的に支持することができる。外側型枠138cの側壁とベースプレート102との間に間隙充填材141を配置することで、外側型枠138cの中でベースプレート102の位置がずれないようにすることができる。
図9(B)及び図10に示すように、ベースプレート102を囲む外側型枠138aと、外側型枠138aの内側に所定の間隔をもって内側型枠138bとが配置される。外側型枠138aは、ベースプレート102の上面部と高さが略一致する下部型枠部分を含んでいてもよい。内側型枠138bは立ち上がり部110を形成するために、ベースプレート102から浮いた状態で支持される。内側型枠138bの下端の高さは、袋状ナット112、定着板114の高さより低くなるように配置される。外側型枠138aは土台136によって支持され、内側型枠138bは内側型枠固定用締結具140によって支持される。なお、外側型枠138aは、図示されない型枠用サポートによって位置が安定するように支持されていてもよい。外側型枠138a及び内側型枠138bは金属製又は木製であり、内側型枠固定用締結具140としては、例えば、ボルト及びナットが用いられる。
図11(A)は、内側型枠138bの下端又はその近傍までコンクリートを打設して平板部108を形成する段階を示す。コンクリートは、ベース筋116、袋状ナット112の下側部分を埋設し、袋状ナット112の上側部分、定着板114が露出するように打設される。この段階で打設されたコンクリートが硬化することにより、ベースプレート102上で、ベース筋116、袋状ナット112が固定される。
図11(B)は、外側型枠138aと内側型枠138bとの間にコンクリートを打設する段階を示す。外側型枠138aと内側型枠138bとの間にコンクリートを流し込む作業は、平板部108を形成するコンクリートが安定化し、ある程度硬化した状態で行われることが好ましい。外側型枠138aと内側型枠138bとの間に打設されたコンクリートにより、立ち上がり部110が形成される。立ち上がり部110の高さは、外側型枠138aと内側型枠138bとの間に流し込むコンクリートの量によって調整することができる。この場合において、外側型枠138aと内側型枠138bとの間に流し込まれるコンクリートの量は、少なくとも平板部108から突出する袋状ナット112の上側部分、定着板114、及び環状補強筋115の高さより高くなるのに十分な量であることが望ましい。
図11(C)は、環状補強筋115を配筋する段階を示す。環状補強筋115はコンクリートが打設された後に配筋される。環状補強筋115は、コンクリート部106に固定された袋状ナット112の複数と接するように配筋され、番線によって結束される。環状補強筋115は、袋状ナット112の上側部分、定着板114に近接又は接する高さに配筋される。
図12(A)は、環状補強筋を形成するのに用いる鉄筋109の一例を示す。図12(A)に示す鉄筋109は、一部が開放した輪形状を有している。図12(B)は、一部が開放した輪形状の鉄筋109を、複数の袋状ナット112の配置に合わせて曲げ回され、それらを囲むように宛てがい、両端部を重ねるように配筋する状態を示す。図12(C)は、一部が開放した輪形状の鉄筋109の一端側と他端側とが重なる部位を番線117で結束して環状補強筋115とする段階を示す。このように、一部が開放した輪形状の鉄筋109を用いることで、袋状ナット112の配置に合わせて適宜調整しながら環状補強筋115の配筋をすることができる。
図13(A)は、一部が開放した輪形状の鉄筋109において、開放端が逆向きに曲げられてフック107が形成された態様を示す。図13(B)は、一部が開放された輪形状の鉄筋109を、複数の袋状ナット112の配置に合わせて曲げ回され、それらを囲むように宛てがい、フック107の部分をすれ違うようにして両端部を重ね合わせた状態を示す。図13(C)は、一部が開放した輪形状の鉄筋109の一端側と他端側とが重なる部位を番線117で結束して環状補強筋115が形成された段階を示す。環状補強筋115は、フック107が設けられていることで、鉄筋109が重ね合わされた部分から番線117が抜けてしまうことを防止するように作用する。その作用により、環状補強筋115は、鉄筋109を重ね合わせる部分を短くすることができる。
図14(A)は、湾曲した2つの鉄筋109a、109bを示す。図14(B)は、湾曲した2つの鉄筋109a、109bを、複数の袋状ナット112を囲むように宛てがい、各々の端を重ねるように配筋する状態を示す。図14(C)は、湾曲した2つの鉄筋109の、重なり会う端の部分を番線117で結束して環状補強筋115とする段階を示す。このように、2つの鉄筋109を用いても環状補強筋115の配筋をすることができる。
図15(A)は、湾曲した2つの鉄筋109a、109bのそれぞれの先端が逆向きに曲げられてフック107が形成された態様を示す。図15(B)は、湾曲した2つの鉄筋109a、109bを、複数の袋状ナット112を囲むように宛てがい、各々の端を、フック107の部分をすれ違うようにして重ね会わせた状態を示す。図15(C)は、湾曲した2つの鉄筋109a、109bの、重なり会う端の部分を番線117で結束して環状補強筋115とする段階を示す。この場合も、図15(C)と同様に、鉄筋109a、109bに設けられたフック107は、鉄筋109が重ね合わされた部分から番線117が抜けてしまうことを防止するように作用する。その作用により、環状補強筋115は、鉄筋109a、109bを重ね合わせる部分を短くすることができる。
コンクリートが硬化した後、外側型枠138a及び内側型枠138bが除去される。このようなプレキャストコンクリート(PCa)工法によって、図1(A)及び図1(B)に示すような免震上部基礎構造100aが作製される。本実施形態で示すように、プレキャストコンクリートを2段階に分けて打設することにより、立ち上がり部110を有すると共に、袋状ナット112の上側部分、定着板114、環状補強筋115が露出する免震上部基礎構造100aを作製することができる。なお、本実施形態では、図11(A)及び図11(B)に示すように、コンクリートを2段階で打設する態様を示すが、これに限定されず、コンクリートの1回の打設により平板部108と立ち上がり部110を形成してもよい。
本実施形態に係る作製方法によれば、免震上部基礎構造を作製するために作業現場でコンクリートを打設する必要がないので、型枠及び型枠用サポートの設置作業をする必要がなく、煩雑な作業を削減することができる。また、免震上部基礎構造用の鉄筋と、基礎梁用の鉄筋とが混在することを防ぐことができるので、配筋の作業を簡略化することができる。また、本実施形態においては、環状補強筋を用いることで、補強筋の配筋作業を簡略化することができる。
さらに、本実施形態に係る免震上部基礎構造は、免震装置の直上で作製するのではなく、工場や作業所内で個別に生産することができるため、コンクリートの品質管理が容易であり、品質のばらつきを小さくすることができるという利点を有する。また、免震上部基礎構造100aを工場で作製する場合は、天候等の影響を受けず計画的に生産することができるため、工期を短縮することができる。さらに、現場でコンクリートを打設する工法に比べ、型枠及び型枠サポートの使用量を削減することができ、現場において煩雑な作業を省略することができ、建設コストを削減することができる。
(3)フーチング構造体
図16は、本発明の一実施形態に係るフーチング構造体200の態様を示す。フーチング構造体200は、免震上部基礎構造100aと、その上に設けられた鉄筋コンクリート製のフーチング131を含む。図16は、フーチング構造体200が免震装置122の上に設置された状態を示す断面図である。
免震上部基礎構造100aは、アンカーボルト130によって免震装置122に固定される。免震装置122は、免震ゴム部124と上部フランジ126及び下部フランジ128を含む。アンカーボルト130は、免震装置122の上部フランジ126からベースプレート102の貫通孔104に挿通され、袋状ナット112に螺合される。免震上部基礎構造100aは、アンカーボルト130によって複数箇所が締結されることで、免震装置122の上に安定的に保持される。なお、免震装置122は、免震下部基礎構造120の上に、下部フランジ128を挿通するアンカーボルト130によって固定される。
免震上部基礎構造100aの上にはフーチング131及び基礎梁132が設けられる。フーチング131及び基礎梁132は、梁主筋(図16では図示せず)を埋設するようにコンクリートを打設することで作製される。フーチング131及び基礎梁132を形成するコンクリートは、免震上部基礎構造100aの上面部と密接するように設けられる。すなわち、フーチング131及び基礎梁132を形成するコンクリートは、免震上部基礎構造100aの立ち上がり部110及び平板部108の上面と密接するように設けられる。これにより、コンクリート部106の平板部108と立ち上がり部110とで形成される凹状の領域に、フーチング131及び基礎梁132を形成するコンクリートが充填される。立ち上がり部110から突出するフーチング籠筋118は、フーチング131の中に伸びることで、免震上部基礎構造100aとフーチング131及び基礎梁132との接合強度を高めている。
免震上部基礎構造100a及び基礎梁132はコンクリートで形成される。さらに、フーチング籠筋118がフーチング131へ突出するように設けられる。免震上部基礎構造100aの立ち上がり部110は、基礎梁132に横方向の力が作用したとき反作用を生じる部位となり、基礎梁132の横方向の滑りに対して抵抗を生じさせる。これにより、免震上部基礎構造100aは、地震の横揺れに対する建造物の耐性を高めることができる。
免震上部基礎構造100aにおいて、平板部108から突出する袋状ナット112及び定着板114、並びに環状補強筋115は、フーチング131の中に埋設される。定着板114は袋状ナット112の本体から突出するように設けられているので、フーチング131及び基礎梁132に作用する縦方向の力に対して抵抗力を生じさせる部位となる。また、環状補強筋115は、複数の袋状ナット112のうち、少なくとも2つ以上と接して設けられる。環状補強筋115は複数の袋状ナット112と接する部位で番線により結束されることが好ましい。袋状ナット112は、環状補強筋115によって他の袋状ナット112と連結されることで、コンクリート部106に対する実質的な接触面籍が増加する。これにより、フーチング131に作用する垂直方向の力に対する耐性を高めることができる。
本実施形態に係るフーチング構造体200によれば、環状補強筋115によって複数の袋状ナット112が連結されることで、アンカーに引張応力が作用した際のコーン状破壊耐性を高めることができ、免震基礎構造の耐震性を高めることができる。
(4)免震基礎の施工方法
図17乃至図19を参照して、本発明の一実施形態に係る免震上部基礎構造100aを用いた免震基礎の施工方法について説明する。
プレキャストコンクリート(PCa)工法で作製された免震上部基礎構造100aは、基礎工事が行われる建設現場の設置場所に搬送される。図17に示すように、免震装置122は、免震下部基礎構造120の上に設置された状態にある。免震上部基礎構造100aは、免震装置122の上部フランジ126の上に設置され、アンカーボルト130によって固定される。
その後、図18に示すように、免震上部基礎構造100aの上に、基礎梁を形成するための梁主筋等を配筋する作業が行われる。梁主筋134a、134bは、それぞれ基礎梁の長手方向に配筋される。このとき、免震上部基礎構造100aの立ち上がり部110は、梁主筋134bを支持する部位として利用される。さらに梁主筋134a、134bの周囲には、せん断補強筋(フープ筋ともいう)142が適宜配筋される。梁主筋134a、134bとせん断補強筋142とは番線で適宜結束される。
図19は、コンクリートを打設してフーチング131及び基礎梁132を作製する段階を示す。梁主筋134a、134bはスペーサ143によって免震上部基礎構造100aの立ち上がり部110の上面から浮いた状態で支持される。梁主筋134a、134b及びせん断補強筋142を囲むように、図示されない型枠及び型枠用サポートを設置し、コンクリートを打設する。コンクリートは、免震上部基礎構造100aの上面側にも打設される。コンクリートは、免震上部基礎構造100aの立ち上がり部110と平板部108とで形成される凹状の領域にも充填される。その結果、袋状ナット112の上側部分、定着板114、環状補強筋115がコンクリートに埋設される。また、基礎梁132と免震上部基礎構造100aが交差する部分では、立ち上がり部110が基礎梁132のコンクリートの下端に位置するように形成される。基礎梁用のコンクリートを養生させた後、図示されない型枠を除去することで、フーチング構造体200及び基礎梁132が形成される。
図21(A)は、免震上部基礎構造100aが免震装置122に取り付けられ、フーチング131及び鉄筋コンクリートで形成された基礎梁132が形成された状態を斜視図で示す。免震装置122の上に形成されたフーチング構造体200は、隣接するフーチング構造体同士を連結するように基礎梁132が水平方向に延設される。なお図21(A)では図示されないが、フーチング131の上に柱脚が垂直方向に設けられる。
図20は、基礎梁132が鉄骨材で形成された態様を示す断面図である。基礎梁132に用いることのできる鉄骨材としては各種の形鋼を用いることができる。図20は基礎梁132にH形鋼が用いられた態様を示す。この場合、免震上部基礎構造100aの立ち上がり部110の上面に基礎梁132として用いられる鉄骨材が直接配設される。免震上部基礎構造100aは、立ち上がり部110を有することにより、袋状ナット112、定着板114、及び環状補強筋115と干渉しないように配置することができる。免震上部基礎構造100aの上にはコンクリートが打設され、フーチング131が形成される。
図21(B)は、免震上部基礎構造100aが免震装置122に取り付けられ、さらにフーチング131及び鉄骨材で形成された基礎梁132が形成された状態を示す斜視図である。免震装置122の上に形成されたフーチング構造体200は、隣接するフーチング構造体同士を連結するように基礎梁132が水平方向に延設される。なお図21(B)では図示されないが、フーチング131の上には柱脚が垂直方向に設けられる。
本実施形態に係る免震基礎の施工方法によれば、プレキャストコンクリート(PCa)で作製された免震上部基礎構造100aの上にフーチング131及び基礎梁132を密接して形成することが可能となる。また、平板部108から露出する袋状ナット112及び定着板114、並びに環状補強筋115は、フーチング131のコンクリートに埋設されることで、縦方向の振動に対して高い耐性を発揮することができる。本実施形態に係る免震基礎の施工方法によれば、耐震性の高い基礎構造を形成することができる。
なお、本実施形態は、免震上部基礎構造100aを、プレキャストコンクリート(PCa)工法で作製する一例を示すが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
第2の実施形態:
本実施形態は、第1の実施形態における免震上部基礎構造100aと比較して、補強筋の構成が異なる一例を示す。図22(A)は、本実施形態に係る免震上部基礎構造100bの平面図を示し、図22(B)は断面構造の模式図を示す。以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
図22(A)及び図22(B)は、隣接する少なくとも2つの袋状ナット112に対して2つの線状補強筋113a、113bが配筋される態様を示す。隣接する第1袋状ナット112aと第2袋状ナット112bに対し、外側から第1線状補強筋113aが、内側から第2線状補強筋113bが、両者に掛け渡されるように配筋される。すなわち、第1線状補強筋113aと第2線状補強筋113bとにより、第1袋状ナット112aと第2袋状ナット112bを挟み込むように略平行で略同じ高さに配筋される。第1袋状ナット112a及び第2袋状ナット112bと第1線状補強筋113a、第2袋状ナット112bとは、それぞれ番線で結束されることが好ましい。
袋状ナット112、定着板114、及び線状補強筋113は、第1の実施形態と同様に、コンクリート部106の立ち上がり部110の高さより低い位置に配置される。また、線状補強筋113は定着板114よりも低い位置で配筋される。これにより、袋状ナット112の上方へ線状補強筋113がずれてしまうのを阻害することができる。
このように、線状番線113で複数の袋状ナット112を連結することで、複数の袋状ナット112が相互作用し、外力に対する耐性を高めることができる。すなわち、袋状ナット112がコンクリート部106から抜けてしまうことを防止することができる。なお、図22(A)及び図22(B)では、第1の線状補強筋113a及び第2の線状補強筋13bが配筋される態様を示すが、本実施形態はこの態様に限定されない。例えば、第1線状補強筋113a及び第2線状補強筋113bの一方のみが設けられた構成としてもよい。
本実施形態においても、免震上部基礎構造100bの上にフーチングを設け、フーチング構造体を形成することができる。また、基礎梁を設けて免震基礎構造を構成することができる。本実施形態に係る線状補強筋113は、第1の実施形態における環状補強筋115と同様の機能を有する。それにより、本実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、本実施形態では、免震上部基礎構造100bに線状補強筋113が設けられる態様を示すが、この態様に第1の実施形態で示す環状補強筋115を組み合わせることもできる。
第3の実施形態:
本実施形態は、第1の実施形態における免震上部基礎構造100aと比較して、コンクリート部の構成が異なる一例を示す。具体的には、コンクリート部に立ち上がり部が含まれない構成を示す。以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分を説明し、同一又は類似する要素については省略することがある。
(1)免震上部基礎構造
図23(A)は、本実施形態に係る免震上部基礎構造100cの平面図を示し、図23(B)は、その断面構造の模式図を示す。免震上部基礎構造100cは、第1の実施形態と同様に、ベースプレート102、ベース筋116、コンクリート部106、袋状ナット112、袋状ナット112の上部に付された定着板114、及び環状補強筋115を含む。
コンクリート部106は平板状であり、一方の面(下面)にベースプレート102が配置される。コンクリート部106の他方の面(上面)では、袋状ナット112の上側部分、及び環状補強筋115が露出する。本実施形態においてコンクリート部106には、第1の実施形態で示される立ち上がり部110が設けられていない。したがって、フーチング籠筋118もコンクリート部106の平板面108から上方へ突出するように設けられる。
本実施形態においても、環状補強筋115は、複数の袋状ナット112のうち、少なくとも2つ以上と接して設けられる。袋状ナット112と環状補強筋115とが接する部分は番線で結束されることが好ましい。袋状ナット112は、環状補強筋115によって他の袋状ナット112と連結されることで、コンクリート部106に対する実質的な接触面籍が増加する。これにより、フーチング131に作用する力に対する耐性を高めることができる。例えば、フーチング131のコーン状破壊に対する耐性を高めることができる。
コンクリート部106は、免震装置の上で直接的にコンクリートが打設されて形成されたものではなく、プレキャスト製のものであることが好ましい。コンクリート部106は平板状であるため、型枠の配置及びコンクリートを打設する場合においても、作業が容易なものとなる。
なお、ベースプレート102は、図23(A)に示すように、コンクリート部106から突出するように設けられていてもよいし、図2(A)を参照して説明したように、ベースプレート102の上面及び側面がコンクリート部106に覆われていてもよい。また、図23(A)は、環状補強筋115は、円環状に配置された複数の袋状ナット112を外側から囲むように配筋される態様を示すが、これに代えて図5(A)に示すように円環状に配置された複数の袋状ナット112の内側から接するように配筋されてもよいし、図6(A)に示すように、環状補強筋115が外側と内側の両側から接するように配筋してもよい。また、環状補強筋115に代えて、第2実施形態で示す線状補強筋113を用いてもよい。
(2)免震上部基礎構造の製造方法
図24(A)乃至図24(C)を参照して、図23(A)及び図23(B)に示す免震上部基礎構造100cの作製方法を説明する。本実施形態に係る免震上部基礎構造100cは、プレキャストコンクリート(PCa)工法で作製されるものである。以下においては、プレキャストコンクリート(PCa)工法に基づく作製方法について説明する。
図24(A)は、ベース筋116が配筋され、免震装置のフランジ形状に合わせて袋状ナット112が立設して設けられ、袋状ナット112が配置された段階を示す。袋状ナット112の上面には定着板114が設けられている。袋状ナット112は、貫通孔104が形成されたベースプレート102の上面に配置されていてもよい。さらに、図24(A)は、ベース筋116、定着板114が設けられた袋状ナット112を囲むように型枠138が設置される段階を示す。
図24(B)は、型枠138の中にコンクリートを打設する段階を示す。コンクリートは、ベース筋116、袋状ナット112の下側部分を埋設し、袋状ナット112の上側部分、定着板114が露出するように打設される。打設されたコンクリートが硬化することによりコンクリート部106が形成される。ベース筋116はコンクリート部106に埋設され、袋状ナット112はコンクリート部に固定される。
図24(C)は、環状補強筋115を配筋する段階を示す。環状補強筋115は、コンクリートが打設されたあとに配筋される。環状補強筋115は、コンクリート部106に固定された袋状ナット112の複数と接するように配筋され、番線によって結束される。環状補強筋115は、第1の実施形態と同様に配筋される。
コンクリートが硬化した後、型枠138は除去される。このようなプレキャストコンクリート(PCa)工法によって、図23(A)及び図23(B)に示すような免震上部基礎構造100cが作製される。本実施形態で示すように、プレキャストコンクリート(PCa)工法によって、袋状ナット112の上側部分、定着板114、環状補強筋115が露出する免震上部基礎構造100cを作製することができる。
本実施形態に係る作製方法によれば、コンクリート部106に立ち上がり部110を形成しないこと以外は第1の実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏することができる。
(4)免震基礎の施工方法
図25乃至図27を参照して、本発明の一実施形態に係る免震上部基礎構造100cを用いた免震基礎の施工方法の一例について説明する。
プレキャストコンクリート(PCa)工法で作製された免震上部基礎構造100cは、基礎工事が行われる建設現場の設置場所に搬送される。図25は、免震下部基礎構造120の上に設置された免震装置122の上に、免震上部基礎構造100cがアンカーボルト130によって固定された状態を示す。図25は、さらに、フーチング及び基礎梁を形成するために、免震上部基礎構造100cの周りに型枠138dが配置された状態を示す。型枠138dは、支持体144によって所定の位置に適宜支持される。また、梁主筋を配筋するために、型枠138dの基礎梁の底面を形成する部分にはスペーサ143が配置される。
その後、図26に示すように、免震上部基礎構造100cの上に、フーチング131及び基礎梁132を形成するための梁主筋134等を配筋する作業が行われる。図26に示す梁主筋134a、134bは、それぞれ基礎梁132の長手方向に配筋される。梁主筋134a、134bの周囲には、せん断補強筋(フープ筋ともいう)142が適宜配筋される。梁主筋134a、134bとせん断補強筋142とは番線で適宜結束される。
図27は、コンクリートを打設してフーチング131及び基礎梁132を作製する段階を示す。梁主筋134a、134bはスペーサ143によって型枠138dの上面から浮いた状態で支持される。梁主筋134a、134b及びせん断補強筋142を囲むように、図示されない型枠及び型枠用支持体を設置し、コンクリートを打設する。コンクリートは、免震上部基礎構造100cの上面側にも打設される。その結果、袋状ナット112の上側部分、定着板114、及び環状補強筋115がコンクリートに埋設される。基礎梁用のコンクリートを養生させた後、型枠を除去することで、フーチング構造体200及び基礎梁132が形成される。なお、基礎梁は、図20で示すように鉄骨材で形成されてもよい。
本実施形態に係る免震基礎の施工方法によれば、プレキャストコンクリート(PCa)で作製された免震上部基礎構造100cの上に、フーチング構造体200及び基礎梁132を形成することができる。免震上部基礎構造100cのコンクリート部106の表面から露出する袋状ナット112及び定着板114、並びに環状補強筋115は、フーチング131のコンクリートに埋設されることで、縦方向の振動に対して高い耐性を発揮する。本実施形態に係る免震基礎の施工方法によれば、耐震性の高い基礎構造を形成することができる。なお、本実施形態は、免震上部基礎構造100cを、プレキャストコンクリート(PCa)工法で作製する一例を示すが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
第4の実施形態:
本実施形態は、第3の実施形態における免震上部基礎構造100cと比較して、ベースプレートが省略された免震上部基礎構造100dの一例を示す。以下の説明においては、第4の実施形態と相違する部分を中心に説明する。
(1)免震上部基礎構造
図28(A)は、本実施形態に係る免震上部基礎構造100dの平面図を示し、図28(B)は、その断面構造の模式図を示す。免震上部基礎構造100dは、ベース筋116、コンクリート部106、袋状ナット112、袋状ナット112の上部に付された定着板114、及び環状補強筋115を含む。
免震上部基礎構造100dは、コンクリート部106の下面にベースプレートが設けられない。そのため、袋状ナット112はコンクリート部106を形成するコンクリートによって保持される。免震上部基礎構造100dは、ベースプレートが設けられないものの、袋状ナット112、定着板114、ベース筋116、及び環状補強筋115の配置は、第3実施形態におけるものと同様である。円環状に配置された複数の袋状ナット112は、ベースプレートが省略された場合においても、環状補強筋115と連結されていることにより、コンクリート部106に安定して保持される。環状補強筋115は、袋状ナット112と定着板114の直下で接触していればよく、番線で結束されていることが好ましい。
本実施形態においても、免震上部基礎構造110dの上にフーチング構造体が形成された場合において、複数の袋状ナット112及び複数の袋状ナット112にそれぞれ設けられた定着板114、並びに環状補強筋115がフーチングの中に埋設されることで、コーン状破壊に対する耐性を高めることができ、フーチング構造体の耐震性を向上させることができる。また、コンクリート部106は、免震装置の上で直接的にコンクリートが打設されて形成されたものではなく、プレキャスト製のものであることが好ましい。免震上部基礎構造100dは、ベースプレートが設けられていないことで、薄型化、軽量化を図ることができる。それにより、免震上部基礎構造110dをプレキャストコンクリートで作製した後に、施工現場まで運搬する作業の労力を低減することができる。
(2)免震上部基礎構造の製造方法
図29(A)乃至図29(C)を参照して、図28(A)及び図28(B)に示す免震上部基礎構造100dの作製方法を説明する。本実施形態に係る免震上部基礎構造100dは、プレキャストコンクリート(PCa)工法で作製されるものである。以下においては、プレキャストコンクリート(PCa)工法に基づく作製方法について説明する。
図29(A)は、ベース筋116が配筋され、免震装置のフランジ形状に合わせて袋状ナット112が立設して設けられた段階を示す。袋状ナット112の上面には定着板114が設けられている。型枠138eは、コンクリート部の底面を形成する下側型枠138e_1と、側面部を形成する側面型枠138e_2とを含む。型枠138eは、下側型枠138e_1が土台136の上に設置される。
袋状ナット112は、下側型枠138e_1の上に配置され、位置が変動しないように仮留めされる。袋状ナット112を仮留めする方式に限定はなく、締結具を用いて固定してもよいし、袋状ナット112を直立させた状態で保持する治具が用いられてもよい。例えば、図29(A)に示すように、下側型枠138e_1に設けられた挿通孔146に挿通された仮留めボルト148によって、袋状ナット112が仮留めされてもよい。
図29(B)は、型枠138eの中にコンクリートを打設する段階を示す。コンクリートは、ベース筋116、袋状ナット112の下側部分を埋設し、袋状ナット112の上側部分、定着板114が露出するように打設される。打設されたコンクリートが硬化することによりコンクリート部106が形成される。ベース筋116はコンクリート部106に埋設され、袋状ナット112はコンクリート部に固定される。
図29(C)は、環状補強筋115を配筋する段階を示す。環状補強筋115は、コンクリートが打設されたあとに配筋される。環状補強筋115は、コンクリート部106に固定された袋状ナット112の複数と接するように配筋され、番線によって結束される。環状補強筋115は、第1の実施形態と同様に配筋される。
コンクリートが硬化した後、袋状ナット112の仮留めに用いた仮留めボルト148が取り除かれ、型枠138eが除去される。このようなプレキャストコンクリート(PCa)工法によって、図28(A)及び図28(B)に示すような免震上部基礎構造100dが作製される。本実施形態で示すように、プレキャストコンクリート(PCa)工法によって、袋状ナット112の上側部分、定着板114、及び環状補強筋115が露出する免震上部基礎構造100dを作製することができる。
本実施形態に係る免震上部基礎構造100dの作製方法は、ベースプレートを省略すること以外は、第3の実施形態と同様であり、同様の作用効果を得ることができる。さらに、本実施形態においてはベースプレートを用いないことで、袋状ナット112をベースプレートの上に配設した後、さらに内側の型枠を設置する必要がないため、工程数が削減され生産性を高めることができる。
(4)免震基礎の施工方法
図30乃至図32を参照して、本発明の一実施形態に係る免震上部基礎構造100dを用いた免震基礎の施工方法の一例について説明する。
プレキャストコンクリート(PCa)工法で作製された免震上部基礎構造100dは、基礎工事が行われる建設現場の設置場所に搬送される。図30は、免震下部基礎構造120の上に設置された免震装置122の上に、免震上部基礎構造100dがアンカーボルト130によって固定された状態を示す。免震上部基礎構造100dは、コンクリート部106が免震装置122の上部フランジ126の上に直接設置される。免震上部基礎構造100dは、袋状ナット112とアンカーボルト130とによって、コンクリート部106と金属製の上部フランジ126とが締結されることにより、安定的に保持される。
フーチング及び基礎梁を形成するために、第3の実施形態と同様に、免震上部基礎構造100dの周りに型枠138dが配置される。型枠138dの基礎梁の底面を形成する部分にはスペーサ143が配置される。
その後、図31に示すように、免震上部基礎構造100dの上に、基礎梁を形成するための梁主筋等を配筋する作業が行われる。梁主筋134a、134bは、それぞれ基礎梁の長手方向に配筋される。梁主筋134a、134bの周囲には、せん断補強筋142が適宜配筋され、番線で結束される。また、図31では示されないが、フーチング131を形成するための鉄筋の配筋も行われる。
梁主筋134、せん断補強筋142等の配筋が終わった後、免震上部基礎構造100d、及び型枠138dの上に、コンクリートが打設される。梁主筋134a、134b及びせん断補強筋142を囲むように、図示されない型枠及び型枠用支持体を設置し、コンクリートが打設される。
図32は、コンクリートが打設されてフーチング構造体200及び基礎梁132が形成された段階を示す。基礎梁用のコンクリートを養生させた後、型枠138dを除去することで、フーチング131及び基礎梁132が形成される。なお、基礎梁は、図20で示すように鉄骨材で形成されてもよい。
本実施形態に係る免震上部基礎構造100dを用いた免震基礎の施工方法は、ベースプレートを省略すること以外は、第3の実施形態と同様であり、同様の作用効果を得ることができる。袋状ナット112の上側部分及び環状補強筋115はフーチング131のコンクリートに埋設されるので、ベースプレートが省略された場合においても、同様にコーン状破壊耐性を高めることができる。なお、本実施形態は、免震上部基礎構造100dを、プレキャストコンクリート(PCa)工法で作製する一例を示すが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。
第5の実施形態:
本実施形態は、環状補強筋が配筋される一態様、及び環状補強筋と結束される袋状ナットの一態様について例示する。
図33(A)は、環状補強筋115が配筋される一態様を示す。環状補強筋115は、番線117を用いて袋状ナット112に結束される。環状補強筋115は、袋状ナット112において、定着板114の溶接111と接する高さに配筋されることが好ましい。この場合において、環状補強筋115の高さを所定の高さに保つためにスペーサ150が用いられてもよい。スペーサ150は、コンクリート部106の平板部108の上面に配置される。スペーサ150の高さは、環状補強筋115が配筋されたとき、定着板114の溶接部111と接する高さに調節される。このようにスペーサ150を用いることで、環状補強筋115の配筋作業が容易となり、環状補強筋115の高さを精密に制御することができる。
図33(B)は、袋状ナット112に鉄筋受152が設けられている態様を示す。図33(B)は、また、挿入図として袋状ナット112の上部の拡大図を示す。鉄筋受152は、袋状ナット112外周部に配置され、好ましくは当該外周部を一周囲むように設けられる。鉄筋受152は、定着板114の溶接部111よりも低い位置に配置される。袋状ナット112において、鉄筋受150は、環状補強筋115を溶接部111との間に挟むことのできる高さに配置される。このような鉄筋受152を設けることで、環状補強筋115の配筋作業が容易となり、環状補強筋115の高さを精密に制御することができる。
本実施形態で示す態様は、第1の実施形態乃至第4の実施形態と適宜組み合わせて実施することができる。