JP7148949B2 - 熱硬化性導電接着剤及びその製法 - Google Patents
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Description
その請求項1~3から分かるように、この導電性接着剤は、熱硬化性樹脂の中に導電性粒子の主剤としてCNTを添加して構成され、補助的な導電剤である金属フィレットを添加しても良いことが記載されている。導電性粒子の主剤としてCNTを使用すれば、CNTの分量は大量にならざるを得ない。しかし、熱硬化性樹脂の中にCNTをどのような分量で且つ如何なる形態で添加するのか、またCNTの分量が増大すると熱硬化性樹脂が硬くなって混錬できなくなることも一切記載されておらず、示唆さえされていない。従って、特許文献1によっては有効な導電性接着剤を製造することは不可能である。これに対し、本願発明では、導電性粒子は金属粒子であり、CNTは熱収縮抑制剤として使用されるに過ぎないから、CNTの作用効果が全く異なる。
その請求項1には、CNTパウダーを混合した分散溶液に有機バインダーとナノサイズの金属粒子を添加したCNTペーストの製造方法が記載され、その請求項10には、上記CNTペーストを電極上に塗布しCNTペーストの表面を処理するCNTエミッタの製造方法が開示されている。このCNTエミッタとは電子放出用素子のことであり、その段落[0018]には、CNTパウダーと金属粒子が1:2(wt%)の重量比で添加されることが記載されている。
しかし、特許文献2には、CNTをどのような分量で且つ如何なる形態で添加するのか、またCNTの分量が増大すると樹脂である有機バインダーが硬くなって混錬できなくなることも一切記載されておらず、示唆さえされていない。しかも、このCNTペーストは接着剤として使用されるものではなく、CNTエミッタを製造するためのものであり、実際にはCNTが高濃度で添加されるものと推量される。CNTが高濃度添加された有機バインダーでは、有機バインダーの固化によりCNTの均一分散や単分散は不可能になる。
以上に対し、本願発明では、導電性粒子は金属粒子であり、CNTは熱収縮抑制剤として使用されるに過ぎないから、CNTの作用効果が全く異なる。
この異方性導電接着剤は、カチオン硬化性樹脂(一例として熱硬化性樹脂の一種であるエポキシ樹脂)と一種以上の導電性充填材(一例として金、銀、銅)と一種以上のナノサイズ充填剤を添加したもので、ナノサイズ充填剤の一例としてCNT(カーボンナノチューブ)が列挙されている。
しかし、その段落[0009]には、エポキシ樹脂などのカチオン硬化性樹脂が約5~98wt%、好ましくは約40~60wt%と高含量であり、その段落[0011]には、銀などの導電性充填剤は約1~60wt%、好ましくは約5~30wt%と少含量であることが記載されている。加熱後もカチオン硬化性樹脂はそのまま残るから、比較的に低導電率であることが分かる。特に、その[0013]には、CNTなどのナノサイズ充填剤は約10~60wt%、好ましくは約20~40wt%と超高含量であることが記載されている。
本願発明者の研究によれば、CNTは熱硬化性樹脂に対して10wt%を超えて混合されると、樹脂自体が硬くなって固化し、とてもCNTを均一分散させることは不可能であり、特に単分散化などは不可能である。しかも全重量に対してCNTを約20~40wt%も添加することなど現実には不可能である。従って、特許文献3において、CNTを上記組成比でナノサイズ充填剤として利用することは実現不能と云わざるを得ない。
この導電性接着剤は、金属粉末からなる導電性粒子と、合金粉末と、CNT(別名、カーボンナノチューブ)を含むナノ粉末と、熱硬化性樹脂を含む第1バインダーと、ロジン化合物を含む第2バインダーから構成される点に特徴を有している。
しかし、その請求項6から分かるように、ナノ粉末はこの導電性接着剤の全重量に対し3~13wt%も含有されている。仮に、ナノ粉末がCNTである場合に、全重量に対し最低量である3wt%も含有されておれば、CNTが単分散状態で含有されることは有り得ない。本願発明者の研究では、熱硬化性樹脂に単分散させる限界は熱硬化性樹脂の重量に対し10wt%以下であり、全重量に対しては約1.5wt%が単分散し得る限界である。
しかも、特許文献4には、CNTに関して上記記載のみで、CNTをどれくらいの重量比でどのように均一分散や単分散させるかについては、一切記載もされず示唆さえされていない。
このペーストは、CNTが溶媒に分散されており、全溶媒中90体積%以上99.9999体積%未満で沸点が150℃以上である溶媒(A)と、前記溶媒(A)の残余の体積%以下で前記溶媒(A)よりも沸点が低い溶媒(B)とを含むカーボンナノチューブ分散ペーストである。ここで溶媒とは溶剤、即ち液体であることは明らかである。しかも、その段落[0020]には、カーボンナノチューブ分散ペーストは、カーボンナノチューブ11重量部が溶媒1~100重量部に分散されていることが望ましい、と記載されている。
カーボンナノチューブは溶媒に溶解しないし、分散剤無くしては溶媒中に分散させることもできず、静置状態では沈殿してしまうから、溶媒中に固定状態で均一分散や単分散は不可能である。しかも、溶媒が液体であるから、沈殿するが分散すべきCNTの重量はいくらでも増大させることは容易である。
本願発明と決定的に相違する点は、本願ではCNTを樹脂に単分散させ、樹脂が固化しない範囲での樹脂に対するCNTの重量比の限界が10wt%であるという点である。それ以上では樹脂自体が固化してしまい、CNTを単分散させることが不可能になる。これに反して、特許文献5では、溶媒であるからCNTの重量比の限界がいくらでも増大できる。従って、特許文献5は本願とは全く異なる発明概念に属する。
その請求項1には、「0.1nm~約100ミクロンの範囲の特徴的寸法を有する少なくとも1つの粒子を包含する粒子集団を含む流体を適用すること・・作業組成物を成形することを含む、製品を生産する方法」と記載され、その請求項20には、「粒子の前記集団が前記流体内に実質的に分散する」と記載されている。また、その請求項42には、「1以上の粒子が導電性材料を含む」とあり、その請求項43には、「前記導電性材料がカーボンナノチューブ、金属・・を含む」とあり、請求項62には、「前記作業組成物に埋め込まれた粒子の前記集団が単分散として特徴付けられる・・方法」と記載されている。つまり、特許文献6では、カーボンナノチューブが金属と同様に導電性材料として添加され、粒子集団として単分散していると理解される。
カーボンナノチューブが導電性材料として添加される場合には、金属粒子と同様にカーボンナノチューブの添加量はかなり増大されなければならないが、特許文献6にはCNT(別名、カーボンナノチューブ)を導電性材料として使用した場合の組成比は一切記載も示唆もされておらず、どのような分量で単分散するのかさえ全く不明で予想すらできない。単に単分散という言葉を列記したに過ぎない。
本願発明者等の研究によれば、樹脂に対するCNTの添加量は10wt%以下でなければ単分散化できず、それ以上に添加すると樹脂が固化して単分散化は不可能になる。しかも作業組成物(別名、ペースト)のレベルでは、ペーストの全重量に対するCNTの重量比は約1.5wt%以下にしなければ、CNTの単分散性を保持できない。このようなことは特許文献6には記載も示唆もされていない。更に、本願発明はCNTを熱収縮抑制剤として使用するのであり、CNTは導電性が低いため導電剤としては使用せず、大量の金属粒子を導電剤として使用している。これら本願発明の内容は、特許文献6には全く記載も示唆もされていない。
特許文献2では、CNTをCNTエミッタ、即ち電子放出素子として使用するものであり本願発明と目的が異なる。CNT分量は大きいはずだが、ペースト中での重量比は明記されていない。CNTの分量が増大すると樹脂である有機バインダーが硬くなって混錬できなくなり、CNTの均一分散や単分散は不可能になる。
特許文献3では、異方性導電接着剤の中に、CNTを含むナノサイズ充填剤が約10~60wt%、好ましくは約20~40wt%と超高含量で含まれており、樹脂自体が硬くなって固化し、CNTを均一分散させることは不可能である。
特許文献1~3に共通して、CNTの導電性は記載されているが、CNTを熱硬化性樹脂の加熱収縮に対する抑制剤とする作用効果は一切記載されていない。
特許文献5のカーボンナノチューブ分散ペーストでは、溶媒中のCNTは、全溶媒中で10体積%以下と少ない。溶媒とは溶剤、即ち液体であるから、CNT含量は広範囲に増減自在に調整できる。しかし、本願発明がCNTを熱硬化性樹脂に単分散させる点では大きく異なり、樹脂が固化しない範囲での樹脂に対するCNTの重量比の限界が10wt%であることは示唆もされていない。
特許文献6では、カーボンナノチューブを導電性材料として添加するものであるが、組成比は不明で、単分散する分量も全く不明であり、単分散という言葉を単に列記したに過ぎない。
特許文献4~6に共通して、CNTの導電性は記載されているが、CNTを熱硬化性樹脂の加熱収縮に対する抑制剤とする作用効果は一切記載されていない。
また、本発明の他の目的は、接着剤である熱硬化性樹脂の中に前記熱硬化性樹脂の熱収縮抑制剤であるCNT(別名、カーボンナノチューブ)を混合する際に、前記熱硬化性樹脂の全重量に対し0.5wt%~10wt%のCNTを混合したCNT樹脂混合物を形成する混合工程と、前記CNT樹脂混合物を混練してCNTが熱硬化性樹脂の中に単分散状態で混合されたCNT樹脂単分散混合物を形成する単分散工程を少なくとも有することを特徴とする熱硬化性導電接着剤の製法を提供することである。
導電性金属粒子は粉体で添加され、その形状は球状、楕円状、鱗片状、その他任意の形状を有してもよく、粒径はnmサイズからμmサイズまで用途により適宜に選択される。本発明では、熱硬化性樹脂の熱硬化時に導電性金属粒子同士の接触により導電性が確保される。導電性金属粒子の重量は全重量に対し80wt%~95wt%と大量に含有され、導電性金属粒子同士の相互接触により接着層の導電性が発現し、電気抵抗値は金属接触により極めて小さな値となり、高導電性を確保することができる。
熱硬化性樹脂とは加熱により熱硬化する樹脂で、単独で硬化する場合もあれば硬化剤を添加して硬化する場合もあり、本発明では単独硬化及び硬化剤による硬化の両者を含む。硬化温度は樹脂毎に異なり、通常は100~200℃の範囲である。硬化温度の一種として圧縮成形温度を採れば、例えば、フェノール・ホルムアルデヒドでは132~193℃、尿素セルロース充填では135~177℃、メラミン・ホルムアルデヒドでは138~188℃、エポキシでは149~166℃、フランでは135~149℃、不飽和ポリエステルでは138~177℃、シリコンでは154~182℃、ジアリルフタレートでは132~166℃である。また、熱硬化性樹脂の重量が全重量に対し5wt%~20wt%含有されている。
熱硬化性樹脂の熱収縮抑制剤としてCNT(別名、カーボンナノチューブ)が添加されている。一般に、熱硬化性樹脂は加熱硬化によって反応物質が放出されるため体積収縮が生起する。その収縮率として成形収縮率を採れば、熱硬化性樹脂毎に異なるが、通常では0.1%~1.5%であり、セルロース充填したキシレンでは5%~8%もあり、出来るだけ収縮率の小さい熱硬化性樹脂を使用することが望ましい。
そこで、本発明では、熱硬化性樹脂の熱収縮抑制剤としてCNT(別名、カーボンナノチューブ)が添加されている。本発明では、CNTは導電剤ではなく熱収縮抑制剤として添加されるから、その添加率は極めて小さく調整される。また、CNTの場合には、極めて小さな添加率で熱収縮抑性を高効率に発現することが、本発明者等の研究で分かった。しかも、CNTが単分散状態で熱硬化性樹脂の中に存在すれば、小添加率にも拘わらず大きな熱収縮抑性を発現できることが発見された。これは、加熱硬化により単分散したCNT同士が硬化した樹脂の中で広域にネットワークを形成し、樹脂の収縮をCNTネットワークで抑制するものである。単分散していない場合には、CNTが凝縮しているから、硬化後にCNTが効率的なネットワークを形成し難いと考えられる。一般的には、熱硬化性樹脂が熱収縮すると接着強度が低下する。そこで、CNTが無添加の場合の接着強度に対し、CNTを添加した場合の接着強度を測定すると、CNTの添加率に依存するが、2倍から10倍に接着強度が強化されることが分かった。
CNTの重量が熱硬化性樹脂に対する重量比で0.5wt%~10wt%含有されると、混練によりCNTを熱硬化性樹脂の中に単分散化することが可能であり、CNTを単分散状態で広域的に存在させることが可能であることが分かった。上限が10wt%を超えると、熱硬化性樹脂自体が固く固化し始め、CNTの単分散化が困難になることが分かった。また、下限が0.5wt%より小さくなると、CNTネットワークによる熱収縮抑制特性が低下することが分かった。
CNTが層数の少ない薄層CNTから構成されると、上記の樹脂が固化し始める重量比の上限は10wt%よりも低下し、層数の多い多層CNTから構成されると10wtを超え始める。従って、本発明では薄層CNTから多層CNTの全体に適用できる上限値を10wt%としたものである。
また、接着剤の全重量に対するCNTの重量比は、約1.5wt%以下に設定されることが望ましい。1.5wt%以下であれば、CNTを接着剤全体に対しも単分散化が可能である。
CNTを添加する場合に、熱硬化性樹脂が液体である場合には、溶剤を配合する必要はない。熱硬化性樹脂の粘度が増加するに従って、CNTの単分散化を容易にするために溶剤を添加することができ、熱硬化性樹脂が固体になると溶剤を多少配合してCNTの単分散化を容易にすることができる。
溶剤の添加が必要になる場合において、溶剤を熱硬化性樹脂に対する重量比で5wt%~15wt%に調整することによって、CNTの混練による単分散化が容易になる。
本発明で云う単分散とは、一本一本の全てのCNTが完全に独立状態で単分散する場合だけでなく、一部のCNTが凝集しているが大半は単分散状態にあるといった略単分散を包含する概念である。添加される前のCNTが、例えば直径が10nm~20nmの範囲に分布すると仮定する。このCNTを熱硬化性樹脂の中で混練すると、2本や3本が絡みついて一本に見えるといった場合が出現する。つまり、計測されたCNTの直径はかなり分布すると考えられる。計測されたCNTの直径が添加される前のCNTの直径の範囲に入っておれば、そのCNTは単分散状態にあると云える。そこで、計測された多数のCNTの直径の80%以上が熱硬化性樹脂に添加される前のCNTの直径の範囲に含まれておれば、単分散率が80%以上であり、本発明において、CNTが単分散状態にあると考える訳である。
上述したように、本発明におけるCNTによる熱硬化性樹脂の熱収縮抑制特性は、熱硬化したときに形成される多数のCNTのネットワークが、熱硬化性樹脂の熱収縮を阻止して抑制する効果である。そこで、CNTネットワークを広域化且つ強化するには、CNTの総本数を意図的に増加させることが重要になる。
CNTの中でも、層数の少ない薄層CNTの1本の重量は、層数の多い多層CNTの1本の重量よりもかなり軽量である。例えば、CNTの総重量を同じとした場合に、1本の多層CNTを同じ重量では5本の薄層CNTに置換することが可能になる。このようにすれば、CNTの総重量を一定にした状態で、CNTの総本数を飛躍的に増加させることができ、CNTネットワークを広域化且つ強化することが可能になる。
特に、薄層CNTの層数を多層CNTの1/2以下にして、薄層CNTの総本数を多層CNTだけからなる場合の2倍以上に激増させることによって、2倍以上のより効率的な熱収縮抑制特性を発現することができることが分かった。
本発明形態の熱硬化性導電接着剤では、総重量を一定にした状態下で、薄層CNTを積極的に使用することによって、CNTネットワークを広域化且つ強化して、CNTによる熱硬化性樹脂の熱収縮抑制特性を飛躍的に増大させることに成功したものである。
上記第4形態と同様に、本発明におけるCNTによる熱硬化性樹脂の熱収縮抑制特性は、熱硬化したときに形成される多数のCNTのネットワークが、熱硬化性樹脂の熱収縮を阻止して抑制する効果である。そこで、CNTネットワークを広域化且つ強化するには、CNTの総本数を意図的に増加させることが重要になる。
本形態では、一本一本が強靭な多層CNTを含有しながら、軽量な薄層CNTを共存させ、全体のCNT総重量を一定にしながら、CNTネットワークを広域化且つ強化して、CNTによる熱硬化性樹脂の熱収縮抑制特性を飛躍的に増大させることに成功したものである。
一本の多層CNTの軸方向耐力は、一本の薄層CNTの軸方向耐力よりもかなり大きい。本形態では、強靭な多層CNTに加えて、CNT総重量の一定条件下で、薄層CNTを使ってCNTの総本数を飛躍的に増加させ、CNTネットワークの広域化と強化を実現するものである。
特に、薄層CNTの層数を激増させて、薄層CNTと多層CNTの総本数を多層CNTだけからなる場合の2倍以上に増加させることによって、2倍以上のより効率的な熱収縮抑制特性を発現することができることが分かった。
CNTの全体を薄層CNTにする第4形態と、多層CNTと薄層CNTを共存使用する第5形態により、熱硬化性樹脂の熱収縮をCNTネットワークにより阻止して多様かつ広範囲に抑制する効果を実現することに成功した。
本形態発明により、第4形態及び第5形態に使用される薄層CNTの具体例が開示される。一般的には、CNTは単層CNTと多層CNTに区分されているが、本発明では層数の少ない薄層CNTなる概念が上述のように提示される。そこで、本形態発明では、薄層CNTとして、第1層だけのCNTから第5層まで有するCNTを使用し、それらの夫々を単層CNT~五層CNTとして定義する。これらの薄層CNTは特に軽量であり、CNTの総重量を一定にした条件下で、CNTの総本数の激増を実現でき、CNTネットワークの広域化と強化を実現したものである。
本発明では、接着剤として使用できる樹脂は熱硬化性樹脂であり、加熱により硬化する樹脂で、両層の間を硬化した導電性接着層を介して導電性接合したり、片層の上に接着層を形成して導電性接続を行ったりする。
ここに開示した熱硬化性樹脂が用途に応じて選択され、本発明に必要となる熱硬化性樹脂として使用される。
本発明に係る導電性金属粒子は、接着層の導電性を付与する物質であり、前述したように、本発明では全重量の80~95wt%の分量を占めている。接着層が熱硬化したときに、導電性金属粒子同士が強固に接触して導電性が保証される。導電性金属粒子としては、導電性を有する公知の金属粒子の全種類が使用できるが、単体金属でもよいし合金でもよいことは云うまでもない。ここでは特に単体金属として好適な金属が掲げられ、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)、Ru(ルテニウム)、Pd(パラジウム)、Rh(ロジウム)が選択的に使用できる。
この混合工程で使用される熱硬化性樹脂は加熱により熱硬化する樹脂で、単独で硬化する場合もあれば硬化剤を添加して硬化する場合もあり、本発明では単独硬化及び硬化剤による硬化の両者を含む。その硬化温度は樹脂毎に異なり、通常は100~200℃の範囲である。硬化温度の一種として圧縮成形温度を採れば、例えば、フェノール・ホルムアルデヒドでは132~193℃、尿素セルロース充填では135~177℃、メラミン・ホルムアルデヒドでは138~188℃、エポキシでは149~166℃、フランでは135~149℃、不飽和ポリエステルでは138~177℃、シリコンでは154~182℃、ジアリルフタレートでは132~166℃である。一般に、熱硬化性樹脂は加熱硬化によって反応物質が放出され、また化学結合により体積収縮が生起する。その収縮率として成形収縮率を採れば、熱硬化性樹脂毎に異なるが、通常では0.1%~1.5%であり、セルロース充填したキシレンでは5%~8%もある。出来るだけ収縮率の小さい熱硬化性樹脂を使用することが望ましい。
また、混合工程で使用されるCNT(別名、カーボンナノチューブ)は、熱硬化性樹脂の熱収縮抑制剤として添加される。本発明では、CNTは導電剤ではなく熱収縮抑制剤として添加されるから、その添加率は極めて小さく調整される。また、CNTの場合には、極めて小さな添加率で熱収縮抑性を高効率に発現することが、本発明者等の研究で分かった。
更に、混合工程では、CNTの重量が熱硬化性樹脂に対する重量比で0.5wt%~10wt%含有されると、混練によりCNTを熱硬化性樹脂の中に単分散化することが可能であり、CNTを単分散状態で広域的に存在させることが可能であることが分かった。上限が10wt%を超えると、熱硬化性樹脂自体が固く固化し始め、CNTの単分散化が困難になることが分かった。また、下限が0.5wt%より小さくなると、CNTネットワークによる熱収縮抑制特性が低下することが分かった。CNTが層数の少ない薄層CNTから構成されると、上記の樹脂が固化し始める重量比の上限は10wt%よりも低下し、層数の多い多層CNTから構成されると10wtを超え始める。従って、本発明では薄層CNTから多層CNTの全体に適用できる上限値を10wt%としたものである。
単分散工程では、CNT樹脂混合物を混練してCNTが熱硬化性樹脂の中に単分散状態で混合されたCNT樹脂単分散混合物が形成される。
上記単分散とは、一本一本の全てのCNTが完全に独立状態で単分散する場合だけでなく、一部のCNTが凝集しているが大半は単分散状態にあるといった略単分散を包含する概念である。添加される前のCNTが、例えば直径が10nm~20nmの範囲に分布すると仮定する。このCNTを熱硬化性樹脂の中で混練すると、2本や3本が絡みついて一本に見えるといった場合が出現する。従って、CNT樹脂単分散混合物の中から多数のCNTを計測し、計測されたCNTの直径はかなり分布すると考えられる。計測されたCNTの直径が添加される前のCNTの直径の範囲に入っておれば、そのCNTは単分散状態にあると云える。そこで、計測された多数のCNTの直径の80%以上が熱硬化性樹脂に添加される前のCNTの直径の範囲に含まれておれば、単分散率が80%以上であり、本発明において、CNTが単分散状態にあると考える。
単分散工程では各種の単分散処理方法が採用できる、例えば、前記CNT樹脂混合物を粉砕ボールであるジルコニア製ボールと一緒にポットに入れ、遊星ボールミルを回転駆動させ、粉砕ボールとCNT樹脂混合物を分離し、続いてCNT樹脂混合物を超音波ホモジナイザーで分散処理して、単分散された目的物であるCNT樹脂単分散混合物が得られる。
まず、配置工程では、第10形態で得られたCNT樹脂単分散混合物を最終目的物である熱硬化性導電接着剤の全重量に対し5wt%~20wt%の分量で用意する。
次に、添加工程では、前記CNT樹脂単分散混合物の中に熱硬化性導電接着剤の全重量に対し80wt%~95wt%の導電性金属粒子を添加して金属粒子CNT樹脂混合物を形成する。
ここで、導電性金属粒子は粉体で添加され、その形状は球状、楕円状、鱗片状、その他任意の形状を有してもよく、粒径はnmサイズからμmサイズまで用途により適宜に選択される。本発明では、熱硬化性樹脂の熱硬化時に導電性金属粒子同士の接触により導電性が確保される。導電性金属粒子の重量は全重量に対し80wt%~95wt%と大量に含有され、導電性金属粒子同士の相互接触により接着層の導電性が発現し、電気抵抗値は金属接触により極めて小さな値となり、高導電性を確保することができる。
最後に、混練工程では、前記金属粒子CNT樹脂混合物を混錬して少なくともCNTが単分散状態を保持した熱硬化性導電接着剤を形成する。ここで、熱硬化性導電接着剤の全重量に対するCNTの重量比は、約1.5wt%以下に設定されることが望ましい。1.5wt%以下であれば、CNTを接着剤全体に対しも単分散化することができる。
CNTが単分散状態で熱硬化性導電接着剤の中に存在すれば、小添加率にも拘わらず大きな熱収縮抑性を発現できることを本発明者等は発見した。これは、加熱硬化により単分散したCNT同士が硬化樹脂の中で広域にネットワークを形成し、樹脂の収縮をCNTネットワークで抑制するものである。単分散していない場合には、CNTが凝縮しているから、硬化後にCNTが効果的なネットワークを形成し難いと考えられる。一般的には、熱硬化性樹脂が熱収縮すると接着強度が低下する。そこで、CNTが無添加の場合の接着強度に対し、CNTを添加した場合の接着強度を測定すると、CNTの添加率に依存するが、2倍から10倍に接着強度が強化されることが分かった。
CNTを添加する場合に、熱硬化性樹脂が液体である場合には、溶剤を配合する必要はない。熱硬化性樹脂の粘度が増加するに従って、CNTの単分散化を容易にするために溶剤を添加することができ、熱硬化性樹脂が固体になると溶剤を多少配合してCNTの単分散化を容易にすることができる。
溶剤の添加が必要になる場合において、溶剤を熱硬化性樹脂に対する重量比で5wt%~15wt%に調整することによって、CNTの混練による単分散化が容易になる。
CNTとしてCnano社製の直径分布が15~17nmの範囲のFT9000を使用し、熱硬化性樹脂として住友ベークライト社製の液状のエポキシ樹脂であるECR-9240Kを使用した。
エポキシ樹脂100重量部に、CNTを1重量部だけ添加したCNT濃度1wt%のCNT樹脂混合物を作成し、またCNTを5重量部だけ添加したCNT濃度5wt%のCNT樹脂混合物を調整した。これら2種類のCNT樹脂混合物の夫々を粉砕用のジルコニア製ボールと一緒にポットに入れて遊星ボールミルで混練し、ジルコニア製ボールとCNT樹脂混合物を分離した後、CNT樹脂混合物を超音波ホモジナイザーで分散処理して、CNTがエポキシ樹脂中に単分散状態にあるCNT樹脂単分散混合物を作成した。また、比較例としてCNTが無添加(即ち、CNT濃度0wt%)の液状エポキシ樹脂だけからなる樹脂材料を用意した。
実施例1で作成されたCNT濃度1wt%のCNT樹脂単分散混合物とCNT濃度5wt%のCNT樹脂単分散混合物の夫々について、走査型電子顕微鏡でCNT樹脂単分散混合物の表面を観察してSEM像を得た。
図1は、本発明に係る熱硬化性導電接着剤において、エポキシ樹脂にCNTが単分散したCNT単分散写真図である。特に、図1にはCNT濃度5wt%のCNT樹脂単分散混合物のSEM像が写真図として示されている。左側が2万倍のSEM像であり、右側が5万倍のSEM像である。SEM像の中に凝集したCNTは観察されないから、CNTはエポキシ樹脂中で単分散状態にあると判断できる。同様に、CNT濃度1wt%のCNT樹脂単分散混合物のSEM像も写真撮影されたが、SEM像の中に凝集したCNTは観察されなかったから、CNT濃度1wt%でもCNTはエポキシ樹脂中で単分散状態にあると判断できる。
更に、CNT濃度1wt%とCNT濃度5wt%のSEM像を観察し、夫々100本のCNTを選んで、電子顕微鏡により前記100本のCNTの直径を測定した。その結果、添加する前のCNTの直径の範囲、即ち15~17nmの範囲に属するCNTの本数は、CNT濃度1wt%で82本、CNT濃度5wt%で91本であることが分かった。従って、CNT濃度1wt%では82%の単分散状態にあり、CNT濃度5wt%では91%の単分散状態にあることが確定した。つまり、両者ともに80%を超えているから、CNT濃度1wt%とCNT濃度5wt%ではCNTが単分散状態にあると結論できる。
実施例1で作成されたCNT濃度0wt%(無添加)の樹脂材料とCNT濃度1wt%のCNT樹脂単分散混合物とCNT濃度5wt%のCNT樹脂単分散混合物の夫々を、ガラス板に接着剤層厚が2mmで、1cm×1cmの面積になるように接着剤層を塗着した。そして、加熱炉の中で150℃の温度で20分間加熱して、接着剤層を加熱硬化して接着硬化層を形成した。これら3種類の接着硬化層の剥離試験を行って、接着強度を測定した。
接着強度測定図において、縦軸は任意単位の接着強度であり、横軸はCNT濃度を表している。CNT濃度0wt%(無添加)では接着強度が8であるのに対し、CNT濃度1wt%では接着強度は16、CNT濃度5wt%の接着強度は56である。CNT濃度0wt%(無添加)と比較して、CNT濃度1wt%では2倍、CNT濃度5wt%では7倍に接着強度が増大していることが分かる。明らかに、単分散状態にあるCNTが接着強度の劇的な増大化を生起していることが実証された。
しかし、加熱硬化によりCNTネットワークが生成され、このCNTネットワークが接着剤層のガラス面方向への収縮を阻止し、CNTが熱収縮抑制効果を発揮して、接着剤層はガラス面方向への収縮を阻止されながら硬化し、接触面積が余り減少することなく接着硬化層に変化する、と考えられる。このガラス面方向への収縮抑制により、CNT濃度0wt%(無添加)の場合よりも接着強度が増大すると考えられる。CNT濃度が増大するに応じて、CNTネットワークが強大になり、一層の接着強度の増大化が実現できる。
導電性金属粒子としてAgを使用し、CNT5wt%をエポキシ樹脂に単分散させたCNT樹脂単分散混合物と、CNT3wt%をエポキシ樹脂に単分散させたCNT樹脂単分散混合物と、CNT1wt%をエポキシ樹脂に単分散させたCNT樹脂単分散混合物を調製する。
次に、Ag100重量部をCNT5wt%のCNT樹脂単分散混合物20重量部に混練した熱硬化性導電接着剤Xと、Ag100重量部をCNT3wt%のCNT樹脂単分散混合物20重量部に混練した熱硬化性導電接着剤Yと、Ag100重量部をCNT1wt%のCNT樹脂単分散混合物20重量部に混練した熱硬化性導電接着剤Zを調製する。また比較例として、Ag100重量をCNTを含まない液状エポキシ樹脂20重量部と混練した比較用接着剤Wを調製した。
Xの中のCNTは1.0重量部であり、Yの中のCNTは0.6重量部であり、Zの中のCNTは0.2重量部であるが、Wの中にはCNTは存在しない。従って、全重量を100wt%としたとき、Xの中でCNTは0.83wt%、Yの中でCNTは0.50wt%、Zの中でCNTは0.17wt%。Wの中ではCNTは0wt%である。
これら3種類の熱硬化性導電接着剤X、Y、Zと比較用接着剤Wをガラス板に塗着し、ガラス板に接着剤層厚が2mmで、1cm×1cmの面積になるように接着剤層を形成した。そして、加熱炉の中で150℃の温度で20分間加熱して、接着剤層を加熱硬化して接着硬化層を形成した。上述と同様に、これら4種類の接着硬化層の剥離試験を行って、接着強度を測定した。
その結果、Wでは接着強度が4であるのに対し、Xの接着強度は28、Yの接着強度は20、Zの接着強度は8となった。明らかに、単分散状態にあるCNTが接着強度の増大化を生起していることが実証された。
しかし、CNTが添加されていると、加熱硬化によりCNTネットワークが生成され、このCNTネットワークが接着剤層のガラス面方向への収縮を阻止し、CNTが熱収縮抑制効果を発揮して、接着剤層はガラス面方向への収縮を阻止されながら硬化し、接触面積が余り減少することなく接着硬化層に変化する、と考えられる。このガラス面方向への収縮抑制により、CNT濃度0wt%(無添加)の場合よりも接着強度が増大すると考えられる。CNT濃度が増大するに応じて、CNTネットワークが強大になり、一層の接着強度の増大化が実現できることは明白である。
本実施例では、熱硬化性樹脂として固形のエポキシ樹脂粉体を使用する。エポキシ樹脂粉体100重量部に、溶剤として酢酸ブチルカルビトールを7重量部添加して粘状化し、このエポキシ樹脂粘状剤100重量部にCNTを実施例1と同様に添加し、1wt%、3wt%、5wt%のCNT樹脂混合物を作成した。そして、これら3種類のCNT樹脂混合物をジルコニア製ボールと一緒に遊星ボールミルで混練し、ジルコニア製ボールとCNT樹脂混合物を分離した後、CNT樹脂混合物を超音波ホモジナイザーで分散処理して、CNTがエポキシ樹脂中に単分散状態にあるCNT樹脂単分散混合物を作成した。他方、比較例としてCNT0wt%のエポキシ樹脂粘状剤を用意した。
上記3種類のCNT樹脂単分散混合物の夫々とエポキシ樹脂粘状剤を、ガラス板に接着剤層厚が2mmで、1cm×1cmの面積になるように接着剤層を塗着した。そして、加熱炉の中で150℃の温度で20分間加熱して、接着剤層を加熱硬化して接着硬化層を形成した。これら3種類の接着硬化層の剥離試験を行って、接着強度を測定した。
その結果、実施例3と同様に、CNT濃度0wt%(無添加)と比較して、CNT濃度1wt%、3wt%、5wt%では、2倍、4倍、6倍に接着強度が増大していることが分かる。したがって、溶剤を使用した熱硬化性樹脂においても、単分散状態にあるCNTが接着強度の劇的な増大化を生起していることが実証された。
前記溶剤として酢酸ブチルカルビトールに替えて、酢酸エチルカルビトール、アセトン、トルエン、酢酸エチル、2-ブタノン、ジクロロメタン、ベンゼン、ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ブチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブを用いて、実施例6と同様の試験を行った結果、実施例6とほぼ同様の結果を得た。従って、溶剤として、本発明の第9形態に示した各種溶剤が使用できることが分かった。
導電性金属粒子としてAgに替えて、Au、Ag、Cu、Ni、Zn、Ti、Ru、Pd又はRhを用いた場合において、実施例4と同様に熱硬化性導電接着剤を調製した。そして、それらの熱硬化性導電接着剤に対し、実施例5と同様の接着試験を行った。
その結果、導電性金属粒子がAg以外でも、実施例5と同様に、CNTによる熱収縮抑制が効率よく作用し、その結果CNT添加による接着強度が飛躍的に増大することが実証された。
実施例1~実施例5において、エポキシ樹脂に替えて他の熱硬化性樹脂を使用した場合において、熱硬化性導電接着剤の製造とその接着試験を行った。
具体的には、熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂、ABS樹脂、エチルセルロース、メラミン樹脂、尿素樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド、シリコン、ポリウレタン、アリル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、フェノール-メラミン縮重合樹脂、又は尿素-メラミン縮重合樹脂の夫々を用いて、実施例1~実施例3と同様に、液状の熱硬化性樹脂100重量部に、CNTを実施例1と同様に添加し、1wt%、3wt%、5wt%のCNT樹脂混合物を作成した。そして、これら3種類のCNT樹脂混合物をジルコニア製ボールと一緒に遊星ボールミルで混練し、ジルコニア製ボールとCNT樹脂混合物を分離した後、CNT樹脂混合物を超音波ホモジナイザーで分散処理して、CNTが樹脂中に単分散状態にあるCNT樹脂単分散混合物を作成した。他方、比較例としてCNT0wt%の樹脂材料を用意した。
上記3種類のCNT樹脂単分散混合物の夫々と樹脂材料を、ガラス板に接着剤層厚が2mmで、1cm×1cmの面積になるように接着剤層を塗着した。そして、加熱炉の中で180℃の温度で20分間加熱して、接着剤層を加熱硬化して接着硬化層を形成した。これら3種類の接着硬化層の剥離試験を行って、接着強度を測定した。
その結果、実施例3と同様に、CNT濃度0wt%(無添加)と比較して、CNT濃度1wt%、3wt%、5wt%と増大するに従って接着強度が増大していることが分かった。従って、熱硬化性樹脂をエポキシ樹脂から替えても、単分散状態にあるCNTが接着強度の劇的な増大化を生起していることが各種樹脂で実証された。
実施例9の各種樹脂によるCNT樹脂単分散混合物を用い、導電性金属粒子としてAgを使用し、実施例4と同様に熱硬化性導電接着剤を調製した。そして、それらの熱硬化性導電接着剤に対し、実施例5と同様の接着試験を行った。
その結果、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂においても、実施例5と同様に、CNTによる熱収縮抑制が効率よく作用し、その結果CNT添加による接着強度が飛躍的に増大することが証明された。
Claims (8)
- 導電性金属粒子の重量が全重量に対し80wt%~95wt%含有され、熱硬化性樹脂の重量が全重量に対し5wt%~20wt%含有され、前記熱硬化性樹脂の熱収縮抑制剤であるCNT(別名、カーボンナノチューブ)の重量が全重量に対し1.5wt%以下であり且つ熱硬化性樹脂に対する重量比で0.5wt%~10wt%含有され、前記CNTは前記熱硬化性樹脂の中に単分散状態で存在し、
前記単分散状態とは、前記熱硬化性樹脂の中に単独で存在する多数のCNTの直径を計測したとき、計測されたCNTの直径の80%以上が熱硬化性樹脂に添加される前のCNTの直径の範囲に含まれていることであり、
加熱により前記熱硬化性樹脂を硬化させて使用され、その硬化温度は100~200℃の範囲であり、導電性金属粒子の重量は全重量に対し80wt%~95wt%と大量に含有されるから、熱硬化性樹脂の熱硬化時に導電性金属粒子同士の相互接触により接着層の導電性が発現し、電気抵抗値は金属接触により極めて小さな値となり、高導電性を確保することができ、
熱硬化性樹脂は加熱硬化によって体積収縮が生起し、その成形収縮率は0.1%~1.5%であるが、熱硬化したときに形成される多数のCNTのネットワークが熱硬化性樹脂の熱収縮を阻止して抑制し、CNTが無添加の場合の接着強度に対し、CNTを添加した場合の接着強度を測定すると、CNTの添加率に依存するが、2倍から10倍に接着強度が強化され、且つガラス面への接着強度が増大することを特徴とする熱硬化性導電接着剤。 - 前記熱硬化性樹脂の粘度が増加するに従ってCNTの単分散化を容易にするために溶剤を添加し、また前記熱硬化性樹脂が固体になると溶剤を添加してCNTの前記単分散化を容易にし、
溶剤が配合されるときには、前記溶剤は前記熱硬化性樹脂に対する重量比で5wt%~15wt%含有されることによって、CNTの前記単分散化が容易になる請求項1に記載の熱硬化性導電接着剤。 - 前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂、エチルセルロース、メラミン樹脂、尿素樹脂、飽和又は不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド、シリコン、ポリウレタン、アリル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、フェノール-メラミン縮重合樹脂、尿素-メラミン縮重合樹脂よりなる群から選ばれた一つ以上の物質である請求項1又は2に記載の熱硬化性導電接着剤。
- 前記導電性金属粒子は、Au、Ag、Cu、Ni、Zn、Ti、Ru、Pd、Rhよりなる群から選ばれた一種以上の物質である請求項1~3のいずれか1項に記載の熱硬化性導電接着剤。
- 前記溶剤は、酢酸ブチルカルビトール、酢酸エチルカルビトール、アセトン、トルエン、酢酸エチル、2-ブタノン、ジクロロメタン、ベンゼン、ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ブチルカルビトールアセテート、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエチレン系もしくはプロピレン系のグリコールエーテル類、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチル等の2塩基酸のジエステル塩、テトラヒドロフラン、ヘキサン、エタノール、2-n-ブトキシエタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸2-n-ブトキシエチル、エチルカルビトール、カルビトールアセテート、テルピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、イソプロピルアルコール、1,2-ジクロロエタン、ジエトキシエタンよりなる群から選ばれた一種以上の物質である請求項2~4のいずれか1項に記載の熱硬化性導電接着剤。
- 接着剤である熱硬化性樹脂の中に前記熱硬化性樹脂の熱収縮抑制剤であるCNT(別名、カーボンナノチューブ)を混合する際に、CNTの重量は熱硬化性導電接着剤の全重量に対し1.5wt%以下であり且つ前記熱硬化性樹脂の全重量に対し0.5wt%~10wt%のCNTを混合したCNT樹脂混合物を形成する混合工程と、前記CNT樹脂混合物を遊星ボールミルで混練してその後に超音波ホモジナイザーで分散処理することにより、CNTが熱硬化性樹脂の中に単分散状態で混合されたCNT樹脂単分散混合物を形成する単分散工程を少なくとも有し、
前記単分散状態とは、前記熱硬化性樹脂の中に単独で存在する多数のCNTの直径を計測したとき、計測されたCNTの直径の80%以上が熱硬化性樹脂に添加される前のCNTの直径の範囲に含まれていることであり、
加熱により前記熱硬化性樹脂を硬化させて使用され、その硬化温度は100~200℃の範囲であり、前記熱硬化性樹脂は加熱硬化によって体積収縮が生起し、その成形収縮率は0.1%~1.5%であり、
熱硬化したときに形成される多数のCNTのネットワークが、熱硬化性樹脂の熱収縮を阻止して抑制し、CNTが無添加の場合の接着強度に対し、CNTを添加した場合の接着強度を測定すると、CNTの添加率に依存するが、2倍から10倍に接着強度が強化され、且つガラス面への接着強度が増大することを特徴とする熱硬化性導電接着剤の製法。 - 前記CNT樹脂単分散混合物を最終目的物である熱硬化性導電接着剤の全重量に対し5wt%~20wt%用意する配置工程と、前記CNT樹脂単分散混合物の中に熱硬化性導電接着剤の全重量に対し80wt%~95wt%の導電性金属粒子を添加して金属粒子CNT樹脂混合物を形成する添加工程と、前記金属粒子CNT樹脂混合物を混錬して少なくとも前記CNTが前記単分散状態を保持している熱硬化性導電接着剤を形成する混練工程から構成され、
前記CNTの重量が全重量に対し1.5wt%以下であり、導電性金属粒子の重量は全重量に対し80wt%~95wt%と大量に含有されるから、熱硬化性樹脂の熱硬化時に導
電性金属粒子同士の相互接触により接着層の導電性が発現し、電気抵抗値は金属接触により極めて小さな値となり、高導電性を確保することができる請求項6に記載の熱硬化性導電接着剤の製法。 - 前記熱硬化性樹脂の粘度が増加するに従ってCNTの単分散化を容易にするために溶剤を添加し、また前記熱硬化性樹脂が固体になると溶剤を添加してCNTの前記単分散化を容易にするように、前記熱硬化性樹脂の全重量に対して5wt%~15wt%の溶剤を添加する溶剤添加工程を付加した請求項6又は7に記載の熱硬化性導電接着剤の製法。
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