JP7145847B2 - 銅合金板材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば車載部品用や電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材、リレー、スイッチ、ソケットなどに適用される銅合金板材およびその製造方法に関する。
銅合金板材は、例えば車載部品用や電気・電子機器用のリードフレーム、コネクタ、端子材、リレー、スイッチ、ソケットなどの用途に広く使用されている。このような用途に使用される銅合金板材に要求される特性項目としては、引張強度、耐力(降伏応力)、曲げ加工性、導電率、疲労特性などが挙げられる。
近年、電気・電子機器や車載部品の高機能化、高密度実装化に伴って、銅合金材料に対する要求特性もより一層厳しくなってきている。特に、端子用の銅合金板材は、材料の薄板化や狭幅化によって軽量化や材料使用量の低減が検討されている。このように薄板化された板材で構成された板バネ部において接圧を確保するには、材料強度を高めることが必要である。
また、電気・電子部品は、一般に板材にプレス加工や曲げ加工を施すことにより成形されることから、板材として、優れたプレス打ち抜き加工性を有していなければならない。特に、端子用の銅合金板材の場合、プレス打ち抜き加工性が劣ると、プレス打ち抜き加工を行った際の切断面の形状が不安定になる。それに伴って、連設形成される端子同士の配設間隔を一定に揃えることができずにばらつきが生じるとともに、端子ごとで寸法や形状にばらつきが生じやすくなるという問題がある。これは、車載部品や電気・電子部品を製造する上で望ましくないことから、銅合金板材としては、優れたプレス打ち抜き加工性を具備することも必要である。
さらに、大電流用途に使用される端子では、高導電率を有する銅合金材料で形成されていることが求められている。
近年における電子機器のバッテリー容量の大型化や、液晶ディスプレイの大型化に伴って、端末内の端子および充電端子に流れる電流値が高くなってきている。
電気・電子機器、自動車車載用の銅合金材としては、従来は、主に析出強化や加工硬化によって強化された高強度銅合金であるCu-Ni-Si系合金(コルソン系合金)が広く用いられてきた。
しかしながら、Cu-Ni-Si系合金は、導電率は最大でも50%IACS程度であり、大電流で通電すると抵抗発熱量が多くなり、熱によって接点部のばね性の低下や、端子を固定するモールドの劣化などにより、端子の機能が著しく低下するおそれがあることから、大電流用の端子材料として用いるには適さない。
このため、Cu-Ni-Si系合金に代わる端子材料を開発することが求められている。例えば特許文献1には、Cu-Ni-Si系合金に代えて、Cu-Co-Si系合金を用い、再結晶組織において等軸粒と双晶粒界の頻度を制御することで、板材の曲げ加工性と導電性を改善できることが開示されている。しかしながら、特許文献1では、プレス打ち抜き加工性については何ら検討がなされていない。
特許第5534610号公報
本発明の目的は、Cu-Co-Si系合金を用い、高強度および高導電率を具備しつつ、プレス打ち抜き加工性にも優れた銅合金板材を提供することにある。
本発明の銅合金板材は、全結晶粒界に対し、Σ7粒界とΣ9粒界を制御するとともに、圧延集合組織と再結晶集合組織を示すα-fiber(Φ1=0°~45°)を発達させることで、プレス加工時の材料と金型が接する面の荷重集中が抑制され、プレス打ち抜き加工により生じる切断面から特定したダレ(面)と剪断面との境界線の変動高さが小さくなる。この結果、本発明者らは、プレス打ち抜き加工性が格段に向上し、連設形成される端子同士の間隔ならびに端子の寸法および形状のばらつきが軽減されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)Coを0.3~1.9質量%およびSiを0.1~0.5質量%含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、EBSD法により測定した結果から得られた、全結晶粒界に占める特殊粒界Σ7粒界とΣ9粒界の合計量の割合が1.5%以上であり、Σ9/Σ7が1.0~5.0であり、α-fiber(Φ1=0°~45°)の方位密度が、3.0以上25.0以下の範囲内を満たすことを特徴とする銅合金板材。
(2)Coを0.3~1.9質量%およびSiを0.1~0.5質量%含有し、さらにCrを0.05~1.0質量%、Niを0.05~0.7質量%、Feを0.02~0.5質量%、Mgを0.01~0.3質量%、Mnを0.01~0.5質量%、Znを0.01~0.15質量%およびZrを0.01~0.15質量%からなる群から選ばれる少なくとも1成分を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、EBSD法により測定した結果から得られた、全結晶粒界に占める特殊粒界Σ7粒界とΣ9粒界の合計量の割合が1.5%以上であり、Σ9/Σ7が1.0~5.0であり、α-fiber(Φ1=0°~45°)の方位密度が、3.0以上25.0以下の範囲内を満たすことを特徴とする銅合金板材。
(3)前記Cr、Ni、Fe、Mg、Mn、ZnおよびZrからなる群から選ばれる少なくとも2成分を、合計で1.5質量%以下含有する上記(2)に記載の銅合金板材。
(4)圧延平行方向の引張強度が500MPa以上であり、導電率が50%IACS超えであり、かつ、プレス打ち抜き加工による切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより特定した剪断面および破断面は、板厚方向に測定した合計寸法の最大値tmaxと最小値tminの差Δtが、板厚Tの30%以下である上記(1)~(3)のいずれか1項に記載の銅合金板材。
(5)上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の銅合金板材を製造する方法であって、
前記合金組成からなる銅合金素材に、鋳造工程[工程1]、第1面削工程[工程2]、均質化熱処理工程[工程3]、熱間圧延工程[工程4]、水冷工程[工程5]、第2面削工程[工程6]、第1冷間圧延工程[工程7]、溶体化熱処理工程[工程8]、時効熱処理工程[工程9]、第2冷間圧延工程[工程10]および焼鈍工程[工程11]を順次行うことを特徴とする銅合金板材の製造方法。
(6)上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の銅合金板材を製造する方法であって、
前記合金組成からなる銅合金素材に、鋳造工程[工程1]、第1面削工程[工程2]、均質化熱処理工程[工程3]、熱間圧延工程[工程4]、水冷工程[工程5]、第2面削工程[工程6]、第1冷間圧延工程[工程7]、溶体化熱処理工程[工程8]、第2冷間圧延工程[工程10]、時効熱処理工程[工程9]、第3冷間圧延工程[工程12]および焼鈍工程[工程11]を順次行うことを特徴とする銅合金板材の製造方法。
(7)上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の銅合金板材を製造する方法であって、
前記合金組成からなる銅合金素材に、鋳造工程[工程1]、第1面削工程[工程2]、均質化熱処理工程[工程3]、熱間圧延工程[工程4]、水冷工程[工程5]、第2面削工程[工程6]、第1冷間圧延工程[工程7]、時効熱処理工程[工程9]および第2冷間圧延工程[工程10]を順次行うことを特徴とする銅合金板材の製造方法。
本発明によれば、Cu-Co-Si系合金を用い、高強度および高導電率を具備しつつ、プレス打ち抜き加工性にも優れた銅合金板材の提供が可能になった。
図1は、EBSDにより測定し、ODF(方位分布関数)解析から得られた、銅合金板材の代表的な結晶方位分布図である。図1では、圧延面内の2軸直交方向である、圧延方向と平行な方向RDおよび板幅方向TDと、圧延面の法線方向NDの3方向のオイラー角で示し、すなわち、RD軸の方位回転をΦ、ND軸の方位回転をΦ、TD軸の方位回転をΦとして示す。 図2は、本発明の実施形態の銅合金板材を示したものであって、プレス打ち抜き加工後の切断面が見える状態で模式的に示した部分斜視図である。
以下、本発明に係る銅合金板材の好ましい実施形態について、以下で詳細に説明する。
本発明に係る銅合金板材は、Coを0.3~1.9質量%およびSiを0.1~0.5質量%含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、EBSD法により測定した結果から得られた、全結晶粒界に対する特殊粒界Σ7粒界とΣ9粒界の合計が1.5%以上であり、Σ9/Σ7が1.0~5.0であり、α-fiber(Φ1=0°~45°)の方位密度が、3.0以上25.0以下の範囲内を満たすことを特徴とする。
ここで、「銅合金板材」は、(加工前であって所定の合金組成を有する)銅合金素材が板状に加工されたものであって、特定の厚みを有し形状的に安定しており面方向に広がりをもつものを意味し、広義には条材も含まれる。本発明において、板材の厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.05~1.0mm、さらに好ましくは0.06~0.8mmである。
[成分組成]
まず、本発明に係る銅合金板材の成分組成とその作用について説明する。
<必須含有成分>
本発明に係る銅合金板材は、CoおよびSiを必須の含有成分とする。
(Co:0.3~1.9質量%)
Coは、Cuの母相(マトリクス)中に、単体またはSiとの化合物からなる第二相粒子の析出物として、例えば50~500nm程度の大きさで微細析出する。この析出物が転位移動を抑制することにより析出硬化させ、さらに、粒成長が抑制されて結晶粒の微細化によって材料強度を上昇させるとともに、曲げ加工性をも向上させる作用を有する重要な成分である。かかる作用を発揮するには、Co含有量を0.3質量%以上とすることが必要である。また、CoはNiに比べて固溶した際の導電率の低下割合が小さいが、Co含有量が1.9質量%を超えると、導電率の低下が顕著になって、50%IACS超えの導電率が得られなくなることから、Co含有量は1.9質量%以下にする必要がある。例えば、一般的なCu-Ni-Si系合金(Cu-2.3質量%Ni-0.65質量%Si)の場合、導電率は38%IACS程度であるが、Co含有量を0.3~1.9質量%の範囲とする本発明の銅合金板材は、導電率が60%IACS以上と高い数値が得られる。また、本発明の銅合金板材の引張強度は、製造条件にもよるが、特定の製造条件を採用することによって、時効析出後に600MPa程度が得られ、Cu-Ni-Si系合金からなる銅合金板材と同等レベルの高強度が得られる。なお、引張強度と導電率の両特性をバランスよく満足させるには、Co含有量は、0.8~1.6質量%の範囲であることが好ましい。
(Si:0.1~0.5質量%)
Siは、Cuの母相(マトリクス)中に、CoやCrなどとともに化合物からなる第二相粒子の析出物として微細析出する。この析出物が転位移動を抑制することにより析出硬化させ、さらに、粒成長が抑制されて結晶粒の微細化によって材料強度を上昇させる作用を有する重要な成分である。かかる作用を発揮するには、Si含有量を0.1質量%以上とすることが必要である。また、Si含有量が0.5質量%を超えると、導電率の低下が顕著になって、50%IACS超えの導電率が得られなくなることから、Si含有量は0.5質量%以下にする必要がある。なお、引張強度と導電率の両特性をバランスよく満足させるには、Si含有量は、0.2~0.5質量%の範囲であることが好ましい。
<任意添加成分>
本発明の銅合金板材は、上記CoおよびSiの必須の含有成分に加えて、さらに、任意含有成分として、Crを0.05~1.0質量%、Niを0.05~0.7質量%、Feを0.02~0.5質量%、Mgを0.01~0.3質量%、Mnを0.01~0.5質量%、Znを0.01~0.15質量%およびZrを0.01~0.15質量%からなる群から選ばれる少なくとも1成分を含有してもよい。
(Cr:0.05~1.0質量%)
Crは、Cuの母相(マトリクス)中に、化合物や単体として、例えば50~500nm程度の大きさの析出物の形で微細析出する。この析出物が転位移動を抑制することにより析出硬化させ、さらに、粒成長が抑制されて結晶粒の微細化によって材料強度を上昇させるとともに、曲げ加工性をも向上させる作用を有する成分である。この作用を発揮するには、Cr含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。また、Cr含有量が1.0質量%以下であれば、導電率の低下が顕著でなくなり、50%IACS超えの導電率が得られなくなる傾向がない。このため、Cr含有量は、0.05~1.0質量%とする。
(Ni:0.05~0.7質量%)
Niは、Cuの母相(マトリクス)中に、化合物や単体として、例えば50~500nm程度の大きさの析出物の形で微細析出する。この析出物が転位移動を抑制することにより析出硬化させ、さらに、粒成長が抑制されて結晶粒の微細化によって材料強度を上昇させるとともに、曲げ加工性をも向上させる作用を有する成分である。この作用を発揮するには、Ni含有量を0.05質量%以上とすることが好ましい。また、Ni含有量が0.7質量%以下であれば、導電率の低下が顕著でなく、50%IACS超えの導電率が得られなくなる傾向がない。このため、Ni含有量は、0.05~0.7質量%とする。
(Fe:0.02~0.5質量%)
Feは、導電率、強度、応力緩和特性、めっき性等の製品特性を改善する作用を有する成分である。かかる作用を発揮させる場合には、Fe含有量を0.02質量%以上とすることが好ましい。また、Feを0.5質量%以下であれば、導電率が低下する傾向がない。このため、Fe含有量は、0.02~0.5質量%とする。
(Mg:0.01~0.3質量%)
Mgは、耐応力緩和特性を向上させる作用を有する成分である。かかる作用を発揮させる場合には、Mg含有量を0.01質量%以上とすることが好ましい。また、Mg含有量が0.3質量%以下であれば、導電性が低下する傾向がないこのため、Mg含有量は、0.01~0.3質量%とする。
(Mn:0.01~0.5質量%)
Mnは、母相に固溶して伸線加工性を向上させるとともに、粒界反応型析出の急激な発達を抑制し、粒界反応型析出によって生じる不連続性析出セル組織の制御を可能にする作用を有する成分である。かかる作用を発揮させる場合には、Mn含有量を0.01質量%以上とすることが好ましい。また、Mnの含有量が0.5質量%以下であれば、導電率の低下や曲げ加工性の劣化が生じるおそれがない。このため、Mn含有量は0.01~0.5質量%とする。
(Zn:0.01~0.15質量%)
Znは、曲げ加工性を改善するとともに、Snめっきやはんだめっきの密着性やマイグレーション特性を改善する作用を有する成分である。かかる作用を発揮させる場合には、Zn含有量を0.01質量%以上とすることが好ましい。また、Zn含有量が0.15質量%以下であれば、導電性が低下する傾向がない。このため、Zn含有量は、0.01~0.15質量%とする。
(Zr:0.01~0.15質量%)
Zrは、主に結晶粒を微細化させて、強度や曲げ加工性を向上させる作用を有する成分である。かかる作用を発揮させる場合には、Zr含有量を0.01質量以上とすることが好ましい。また、Zr含有量が0.15質量%以下であれば、化合物を形成し、導電率およびプレス打ち抜き加工性が著しく低下する傾向がない。このため、Zr含有量は、0.01~0.15質量%とする。
(任意添加成分を少なくとも2成分含有する場合の合計含有量)
上述したCr、Ni、Fe、Mg、Mn、ZnおよびZrからなる群から選ばれる任意添加成分を少なくとも2成分含有する場合には、合計含有量を1.5質量%以下とすることが好ましい。前記合計含有量が1.5質量%以下であれば、プレス打ち抜き加工性や導電率が大きく低下することはないからである。このため、前記合計含有量は、1.5質量%以下とする。
<残部>
上述した必須含有成分および任意添加成分以外は、残部がCuおよび不可避不純物からなる。なお、ここでいう「不可避不純物」とは、おおむね金属製品において、原料中に存在するものや、製造工程において不可避的に混入するもので、本来は不要なものであるが、微量であり、金属製品の特性に影響を及ぼさないため許容されている不純物である。
[圧延集合組織]
また、本発明では、EBSD法により測定した結果から得られた、全結晶粒界に占める特殊粒界Σ7粒界とΣ9粒界の合計量の割合が1.5%以上であり、Σ9/Σ7が1.0~5.0であり、α-fiber(Φ1=0°~45°)の方位密度が、3.0以上25.0以下の範囲内を満たすことを必須の発明特定事項とする。なお、ここでいう「方位密度」とは、結晶粒方位分布関数(ODF:crystal orientation distribution function)とも表され、ランダムな結晶方位分布の状態を1とし、それに対して何倍の集積となっているかを示すものであり、集合組織の結晶方位の存在比率および分散状態を定量的に解析する際に用いる。方位密度は、EBSDおよびX線回折測定結果より、(100)、(110)、(112)正極点図等3種類以上の正極点図測定データを基にして、級数展開法による結晶方位分布解析法により算出される。また特殊粒界Σ7粒界とΣ9粒界は、特殊粒界と呼ばれ、対応格子を形成する結晶粒界である。結晶粒間に単純な方位関係がない場合はΣが大きく、特別な性質を有しない粒界はランダム粒界と呼ばれる。α-fiberとは純銅を圧延加工および再結晶させた際に発達する結晶方位群がODFマップで示した際に繊維状のようにつながっていることを指している。圧延加工と再結晶の頻度によって、α―fiberの方位密度が変化する。
本発明者らは、銅合金板材のプレス打ち抜き加工性を向上させるために、圧延集合組織との関係について鋭意検討を行った。その結果、合金組成を上記範囲に限定し、全結晶粒界に占める特殊粒界Σ7粒界とΣ9粒界の合計量の割合を1.5%以上とし、かつΣ9/Σ7を1.0~5.0とし、さらにα-fiber(φ1=0°~45°の範囲)の方位密度を3.0以上25.0以下の範囲内に制御することで、プレス打ち抜き加工性が格段に向上することを見出した。
すなわち、特殊粒界のΣ7およびΣ9は、他の特殊粒界に比べて粒界エネルギーが相対的に低く、全結晶粒界に占める特殊粒界Σ7粒界とΣ9粒界の合計量の割合が1.5%以上であると、プレス加工などの局所的に高負荷のかかる加工の場合でも、外力に対して変形しやすく、優れたプレス打ち抜き加工性が安定して得られるからである。
また、Σ7粒界に対して、Σ9粒界の方がプレス打ち抜き加工性への寄与が大きい。一方、Σ7粒界はΣ9粒界に比べてプレス打ち抜き加工性への寄与は小さいものの、他の特殊粒界よりも優れている。なお、Σ7、Σ9粒界のいずれも、他の特殊粒界よりも粒界エネルギーが低く、加工時のプレス打ち抜き性に寄与するとみられる。このため、Σ9/Σ7を1.0~5.0に限定することで、優れたプレス打ち抜き性を発現することができる。
さらに、α-fiber(φ1=0°~45°の範囲)の方位密度を3.0以上25.0以下の範囲内に限定することにより、プレス打ち抜き性に加え、高い強度を得ることができ、後述する製造方法で製造することで、優れた強度が得られる。
図1は、EBSDにより測定し、ODF(方位分布関数)解析から得られた、銅合金板材の代表的な結晶方位分布図であって、圧延面内の2軸直交方向である、圧延方向と平行な方向RDおよび板幅方向TDと、圧延面の法線方向NDの3方向のオイラー角で示し、すなわち、RD軸の方位回転をΦ、ND軸の方位回転をΦ、TD軸の方位回転をΦとして示す。ここで、α-fiberはφ1 =0°~45°の範囲に集積している。
本発明における上記圧延集合組織の解析にはEBSD法を用いた。EBSD法とは、Electron BackScatter Diffractionの略で、走査電子顕微鏡(SEM)内で試料に電子線を照射したときに生じる反射電子菊池線回折を利用した結晶方位解析技術のことである。本発明におけるEBSD測定では、結晶粒を200個以上含む、800μm×1600μmの試料面積に対し、0.1μmステップでスキャンし、測定した。前記測定面積およびスキャンステップは、試料の結晶粒の大きさに応じて決定すればよい。また方位差については、隣り合う測定点の方位差が10°以上のものを結晶粒界とみなす。測定後の結晶粒の解析には、TSLソリューションズ社製の解析ソフトOIM Analysis(商品名)を用いた。EBSDによる結晶粒の解析において得られる情報は、電子線が試料に侵入する数10nmの深さまでの情報を含んでいる。また、板厚方向の測定箇所は、試料表面から板厚の1/8倍~1/2倍の位置付近とすることが好ましい。
本明細書における結晶方位の表示方法は、Z軸に垂直な(圧延面(XY面)に平行な)結晶面の指数(h k l)と、X軸に垂直な(YZ面に平行な)結晶方向の指数[u v w]とを用いて、(h k l)[u v w]の形で表す。また、(1 3 2)[6 -4 3]や(2 3 1)[3 -4 6]などのように、銅合金の立方晶の対称性のもとで等価な方位については、ファミリー(総称)を表すカッコ記号を使用し、{h k l}<u v w>と表す。代表的な結晶方位として、Brass方位{011}<211>、S方位{123}<634>、Copper方位{112}<111>、Goss方位{110}<001>、RDW方位{012}<100>、BR方位{236}<385>などが挙げられる。ここで、α-fiberは、φ1=0°~45°の範囲であり、Goss方位~Brass方位で連続的に変化する合金型のファイバー集合組織として存在し、本発明の銅合金板材の合金成分は、合金型の集合組織であり、これは、添加元素であるCoおよびSiを規定の範囲内で制御することで得られる組織である。α-fiberが規定の範囲内で存在することによって、プレス打ち抜き加工性を格段に向上させることができる。
[引張強度]
本発明では、圧延平行方向の引張強度が500MPa以上であることが好ましい。圧延平行方向の引張強度が500MPa以上であれば、薄板化や狭幅化された板材で端子を形成した場合に、板材の強度が不足する傾向がなく、端子の板バネ部において十分な接圧を確保することができなくなるおそれがないからである。
[導電率]
本発明では、導電率が50%IACS超えとすることが好ましい。導電率が50%IACS超えであれば、大電流で通電しても抵抗発熱量が多くなく、熱によって接点部のばね性の低下や、端子を固定するモールドの劣化などにより、端子の機能が著しく低下するおそれがないからである。
[プレス打ち抜き加工による切断面の形状]
本発明では、プレス打ち抜き加工による切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより特定した剪断面および破断面は、板厚方向に測定した合計寸法の最大値tmaxと最小値tminの差Δtが、板厚Tの30%以下であることが好ましい。
図2は、代表的な実施形態の銅合金板材の部分斜視図である。図2に示す銅合金板材1は、図示しない下型(ダイ)上に固定された状態で上型(パンチ)を下降させて行うプレス打ち抜き加工を施した状態を示したものであって、切断面(切り口)2を有している。また、切断面2は、プレス加工された銅合金板材1の上面1a側から、ダレ3、剪断面4および破断面5の順で構成され、また、切断面4の下端縁には、通常、正規の断面形状から外へはみ出した薄いひれ状部分である、いわゆるバリ(かえり)6も形成されている。
本発明者らは、特にダレ(面)3と剪断面4との境界線7の変動高さΔtに着目し、この変動高さΔt、すなわち銅合金板材1の板厚Tに対して所定の範囲内、より具体的には、プレス打ち抜き加工による切断面2を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、本発明者らは、特定した剪断面4および破断面5を板厚方向に測定した合計寸法の最大値tmaxと最小値tminの差Δtを、板厚Tの30%以下に制御することによって、プレス打ち抜き加工性を格段に向上することを見出した。そして、この変動高さΔtの制御は、上述したとおり、EBSD法により測定した結果から得られた、全結晶粒界に占める特殊粒界Σ7粒界とΣ9粒界の合計量の割合が1.5%以上であり、Σ9/Σ7が1.0~5.0であり、α-fiber(Φ1=0°~45°)の方位密度を3.0以上25.0以下の範囲内とすることによって実現することができる。変動高さΔtが板厚Tの30%超えだと、プレス打ち抜き加工性が劣り、連設形成される端子同士の間隔ならびに端子の寸法および形状のばらつきが大きくなる傾向がある。
なお、プレス打ち抜き加工により形成した切断面2は、バリ6の発生等があるため、銅合金板材1の板厚Tと、加工後の切断面2とでは、ダレ3やバリ6が発生しているため、銅合金板材1の板厚Tを正しく測定することができないことから、剪断面4および破断面5の合計寸法の測定は、加工していない銅合金板材1の下面1b位置を基準ラインとし行うこととする。
<銅合金板材の製造方法>
次に、本発明の銅合金板材の製造方法の具体例について、以下で説明する。
(製造方法A)
本発明の銅合金板材の製造方法は、銅合金素材を溶解する鋳造工程(工程1)で得た鋳塊の表面に形成した酸化膜を除去するために表裏の両面をそれぞれ0.5mm以上の厚さで削り取る第1面削工程(工程2)を行った後に、保持温度800~1200℃、保持時間0.1~10時間の均質化熱処理工程(工程3)を行い、次いで、圧延温度600~1100℃、圧延回数4回以上、合計加工率60%以上の条件下で熱間圧延工程(工程4)を行った後、水冷工程(工程5)による急冷を行った。その後、表面の酸化膜の除去のため、熱延材の表裏の両面をそれぞれ0.5mm以上の厚さで削り取る第2面削工程(工程6)を行う。その後、圧延回数2回以上、合計加工率50%以上の条件下で第1冷間圧延工程(工程7)を行った後、昇温速度1~150℃/秒、到達温度800~1000℃、保持時間1~300秒、冷却速度1~200℃/秒にて溶体化熱処理工程(工程8)を行い、次いで、到達温度300~650℃、保持時間0.2~15時間にて時効熱処理工程(工程9)を行う。次に、圧延回数2回以上、合計加工率5%以上の条件下で第2冷間圧延工程(工程10)を行った後、到達温度200~600℃、保持時間1~3600秒にて焼鈍工程(工程11)を行う。このようにして、本発明の銅合金板材を作製する。
(製造方法B)
また、銅合金板材の別の製造方法としては、工程1から工程8までを行った後に、第2冷間圧延工程(工程10)を行ってから時効熱処理工程(工程9)を行い、その後さらに、圧延回数2回以上、合計加工率10%以上の条件下で第3冷間圧延工程(工程12)を行い、その後、焼鈍工程(工程11)を行うようにしてもよく、かかる方法でも、本発明の銅合金板材を作製することが可能である。
(製造方法C)
さらに、銅合金材の他の製造方法としては、工程1から工程7まで行った後に、溶体化熱処理工程(工程8)を行わずに、時効熱処理工程(工程9)を行い、その後、第2冷間圧延工程(工程10)を行うようにしてもよく、かかる方法でも、本発明の銅合金板材を作製することが可能である。
銅合金素材は、Coを0.3~1.9質量%およびSiを0.1~0.5質量%含有し、さらに必要に応じてCrを0.05~1.0質量%、Niを0.05~0.7質量%、Feを0.02~0.5質量%、Mgを0.01~0.3質量%、Mnを0.01~0.5質量%、Znを0.01~0.15質量%およびZrを0.01~0.15質量%からなる群から選ばれる少なくとも1成分を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有するものである。
ここでいう「圧延加工率」とは、圧延前の断面積から圧延後の断面積を引いた値を圧延前の断面積で除して100を乗じ、パーセントで表した値である。すなわち、下記式で表される。
[圧延加工率]={([圧延前の断面積]-[圧延後の断面積])/[圧延前の断面積]}×100(%)
本発明では、上記製造方法A~Cを構成する構成の中で、特に共通の工程である、均質化熱処理工程(工程3)、熱間圧延工程(工程4)および時効熱処理工程(工程9)を制御することが重要である。すなわち、均質化熱処理工程における昇温速度を10~110℃/秒および保持温度を950~1250℃とし、熱間圧延工程(工程4)における冷却開始温度を680~850℃および冷却速度を20~130℃/秒とし、さらに時効熱処理工程(工程9)における到達温度を450~650℃および保持時間を500~20000秒とすることが必要である。また、圧延集合組織を十分に発達させ、α-fiberの方位密度を適正範囲内に制御するため、時効熱処理工程(工程9)は、上記の範囲で熱処理を施すことが必要である。
均質化熱処理工程(工程3)の昇温速度が10℃/秒以上もしくは110℃/秒以下、または保持温度が950℃以上だと、鋳造時に生じる晶出物の固溶が十分となり、製造された銅合金板材において、満足レベルの強度と導電率が得られる。一方、均質化熱処理工程(工程3)の保持温度が1250℃以下だと、結晶粒界近傍が部分的に液相化し、熱間圧延時の割れが発生しやすくなって、製造できない場合がないからである。また、熱間圧延工程(工程4)の冷却開始温度が680℃以上もしくは冷却速度が20℃/秒以上だと、冷却中に溶質元素の粗大析出が進み、製造された銅合金板材において、満足レベルの強度と導電率が得られなくなるおそれがないからである。一方、熱間圧延工程(工程4)の冷却開始温度が850℃以下もしくは冷却速度が130℃/秒以下だと、圧延組織の形成が十分となり、最終工程後のプレス打ち抜き性に悪影響を及ぼすことがない。さらに、時効熱処理工程(工程9)の到達温度が450℃以上もしくは保持時間が500秒以上の場合、時効析出量が不十分で強度、導電率が不足する傾向がない。一方、時効熱処理工程(工程9)の到達温度が650℃以下もしくは20000秒以下になると、析出物の粗大化で強度が不十分となる傾向がないからである。
よって、本発明では、均質化熱処理工程(工程3)、熱間圧延工程(工程4)および時効熱処理工程(工程9)の条件を適正に制御して製造することで、目標とする組織および特性が得られる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で改変することができる。
次に、本発明の効果をさらに明確にするために、以下で実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(本発明例1~16および比較例1~3、6~9
本発明例1~16および比較例1~3、6~9は、表1に示す組成となるように、それぞれCoおよびSi、ならびに必要に応じて添加する任意添加成分を含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金素材を高周波溶解炉により溶解し、これを鋳造(工程1)して鋳塊を得た。鋳塊の表面に形成した酸化膜を除去するために表裏の両面をそれぞれ0.5mmの厚さで削り取る第1面削工程(工程2)を行った後に、表2に示す昇温速度および保持温度の条件下で均質化熱処理工程(工程3)を行い、次いで、表2に示す冷却開始温度および冷却速度の条件下で熱間圧延工程(工程4)を行った後、水冷工程(工程5)による急冷を行った。その後、表面の酸化膜の除去のため、熱延材の表裏の両面をそれぞれ0.5mmの厚さで削り取る第2面削工程(工程6)を行う。その後、合計加工率50%以上となるよう第1冷間圧延工程(工程7)を行った後、表2に示す製造方法A~Cのいずれかの製造方法に従う各工程を順に行い、各銅合金板材を作製した。なお、時効熱処理工程(工程9)における到達温度および保持時間は表2に示す。作製した各銅合板材について、全結晶粒界に占める特殊粒界Σ7粒界とΣ9粒界の合計量の割合、Σ9/Σ7比、α-fiber(Φ1=0°~45°)の方位密度、および変動高さΔt/板厚Tの比についても表2に示す。
[評価方法]
作製した各銅合金板材について下記特性の評価を行った。
(EBSD測定による結晶方位の測定及び解析)
EBSD法により、測定面積64×10μm(800μm×800μm)、スキャンステップは0.1μmの条件で測定を行った。スキャンステップは微細な結晶粒を測定するため、0.1μmステップで行った。解析では、64×10μmのEBSD測定結果から、解析にて逆極点図 IPF(Inverse Pole Figure)を確認した。電子線は、走査電子顕微鏡のWフィラメントからの熱電子を発生源とした。なお、測定時のプローブ径は、約0.015μmである。EBSD法の測定装置には、TSLソリューションズ社製 OIM5.0(商品名)を用いた。Σ9/Σ7比は、EBSD測定の結果を、解析ソフト(OIM Analysis)にて測定面のCSL(Coincidence Site Lattice)の中から、Σ7粒界とΣ9粒界を算出した。α-fiber(Φ1=0°~45°)の方位密度は、EBSD測定の結果を、解析ソフト(OIM Analysis)にて、方位分布関数:ODF(Oriantation Distribution Functions)の中から、特定の方位密度を抽出した。また方位差については、隣り合う測定点の方位差が10°以上のものを結晶粒界とみなした。
(引張試験)
JIS Z 2241:2011に準じ、各銅合金板材から圧延平行方向に沿って切り出して3本の試験片を作製して測定し、その平均値(MPa)を表2に示す。なお、本実施例では、引張強度が500MPa以上である場合を合格レベルにあるとして評価した。
(導電率(EC))
各銅合金板材の導電率は、20℃(±0.5℃)に保たれた恒温槽中で四端子法により計測した比抵抗の数値から算出した。なお、端子間距離は100mmとした。なお、本実施例では、板材の導電率が50%IACS超えである場合を合格、50%IACS以下の場合を不合格であるとして評価した。
(プレス打ち抜き加工性)
作製した各銅合金板材に、上型(パンチ)と下型(ダイ)のクリアランスが板厚Tの5.0%となるように調整し、打ち抜き加工を施し、長さ寸法: 3.0 mm、幅寸法: 1.0 mmのサイズで、かつ長さ寸法が圧延方向に対して垂直方向になるように打ち抜いてサンプルを作製し、各サンプルに形成された切断面のうち、長さ寸法と直交する切断面(幅寸法と平行な面)を観察する。プレス加工後のサンプルを固定し、SEMにて100~500倍で観察する。SEM観察には、日立製作所社製のSEMEDX TypeMを使用した。プレス打ち抜き加工による切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより特定した剪断面および破断面は、板厚方向に測定した合計寸法の最大値tmaxと最小値tminの差Δtを測定した。測定したΔtは、板厚Tの30%以下であるものを、プレス打ち抜き加工性が合格レベルにあるとして「○」、板厚Tの30%超えであるものを、プレス打ち抜き加工性が合格レベルにはなく不合格であるとして「×」として表2に示す。
Figure 0007145847000001
Figure 0007145847000002
表2に示す評価結果から、本発明例1~16はいずれも、合金組成、全結晶粒界に占める特殊粒界Σ7粒界とΣ9粒界の合計量の割合、Σ9/Σ7比おびα-fiber(Φ1=0°~45°)の方位密度の全てが本発明の適正範囲内であるため、引張強度、導電率およびプレス打ち抜き加工性に優れていた。一方、比較例1~3、6~9は、合金組成、全結晶粒界に占める特殊粒界Σ7粒界とΣ9粒界の合計量の割合、Σ9/Σ7比おびα-fiber(Φ1=0°~45°)の方位密度の少なくとも1つが本発明の適正範囲外であるため、いずれもプレス打ち抜き加工性が劣っていた。
本発明によれば、Cu-Co-Si系合金を用い、高強度および高導電率を具備しつつ、プレス打ち抜き加工性にも優れた銅合金板材の提供が可能になった。
1 銅合金板材
2 切断面
3 ダレ(面)
4 剪断面
5 破断面
6 バリ
7 ダレ(面)3と剪断面4との境界線
Δt 境界線7の変動高さ
tmax 剪断面4および破断面5を板厚方向に測定した合計寸法の最大値
tmin 剪断面4および破断面5を板厚方向に測定した合計寸法の最小値

Claims (4)

  1. Coを0.3~1.9質量%およびSiを0.1~0.5質量%含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、EBSD法により測定した結果から得られた、全結晶粒界に占める特殊粒界Σ7粒界とΣ9粒界の合計量の割合が1.5%以上であり、Σ9/Σ7が1.0~5.0であり、α-fiber(Φ1=0°~45°)の方位密度が、3.0以上25.0以下の範囲内を満たすことを特徴とする銅合金板材。
  2. Coを0.3~1.9質量%およびSiを0.1~0.5質量%含有し、さらにCrを0.05~1.0質量%、Niを0.05~0.14質量%、Feを0.02~0.5質量%、Mgを0.01~0.19質量%、Mnを0.01~0.5質量%、Znを0.01~0.15質量%およびZrを0.01~0.15質量%からなる群から選ばれる少なくとも1成分を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる合金組成を有し、EBSD法により測定した結果から得られた、全結晶粒界に占める特殊粒界Σ7粒界とΣ9粒界の合計量の割合が1.5%以上であり、Σ9/Σ7が1.0~5.0であり、α-fiber(Φ1=0°~45°)の方位密度が、3.0以上25.0以下の範囲内を満たすことを特徴とする銅合金板材。
  3. 前記Cr、Ni、Fe、Mg、Mn、ZnおよびZrからなる群から選ばれる少なくとも2成分を、合計で1.5質量%以下含有する請求項2に記載の銅合金板材。
  4. 圧延平行方向の引張強度が500MPa以上であり、導電率が50%IACS超えであり、かつ、プレス打ち抜き加工による切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより特定した剪断面および破断面は、板厚方向に測定した合計寸法の最大値tmaxと最小値tminの差Δtが、板厚Tの30%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の銅合金板材。
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