以下、図面を参照して、本発明に係る車両用のグリルとカバー部材との接続構造の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のグリルとカバー部材との接続構造(以下、単に接続構造1と称する)を用いてラジエータグリル2(グリル)とカバー部材3とが接続された車両の前部拡大斜視図である。
ラジエータグリル2は、車両の前面の中央部に設けられており、エンジンルームの内部に設けられたラジエータの前方に配置されている。ラジエータグリル2は、例えば樹脂の基体の表面にめっき処理が施された部材であり、不図示の車体フレームに対して固定されている。また、ラジエータグリル2は、エンジンルームの開閉を行うフードHの前縁の下方に配置されており、フードHが閉じられた状態にて外部から視認可能な意匠部2aと、フードHが閉じられた状態で外部から視認されない部分とを有している。本実施形態において、ラジエータグリル2は、フードHが閉じられた状態で外部から視認されない部分として、意匠部2aの裏面から車両後方に向けて延出すると共にフードHが閉じられた状態で外部から視認されない部分のうち最も上部に配置された上壁部2bを有している。
上壁部2bは、車幅方向に延びて設けられており、カバー部材3が接続される部位である。図2(a)は、上壁部2bとカバー部材3との接続部分を拡大した平面図である。また、図2(b)は、図2(a)のA-A断面図である。これらの図に示すように、上壁部2bは、車幅方向に交互に配列された排水部2cとカバー締結部2dとを有している。
排水部2cは、下方に窪んだ排水溝2eが設けられた部位である。この排水溝2eは、上壁部2bの意匠部2a側の端部から車両後方の端部(先端部2b1)に至るまで設けられており、車両前方から車両後方に向けて雨水等の液体Xを流す流路を形成している。なお、上壁部2bの先端部2b1は、車両の後方に向けられており、下方に対して液体Xが落下しても、下方の機材等に影響を与えない位置に配置されている。つまり、排水溝2eから排出された液体Xは、車両の他の機材に対して影響を与えない位置に落水される。
また、図3は、図2(a)のB-B断面図である。図3に示すように、排水溝2eの底面2e1は、上壁部2bの車両前方の端部から先端部2b1に向かうに連れて下降するように傾斜されている。なお、本実施形態においては、後述するようにカバー部材3の縁部が上壁部2bに重ねて配置されており、平面視にてカバー部材3の先端部3bが平面視にて上壁部2bの先端部2b1よりも車両の前方側(意匠部2a側)に配置されている。したがって、排水溝2eの底面2e1は、カバー部材3の先端部3bから上壁部2bの先端部2b1に向かうに連れて下降するように傾斜されている。このため、排水溝2eに流れ込んだ液体Xは、重力によって底面2e1の傾斜に沿って排水溝2eの排出端(上壁部2bの先端部2b1)に向けて案内される。
図4は、図2(a)のC-C断面図である。カバー締結部2dは、排水溝2eの上端と同一高さの上面を有しており、図4に示すように、この上面がカバー部材3の下面に当接させる部位である。このカバー締結部2dには、上下に貫通するねじ孔2d1が形成されている。このねじ孔2d1にねじ4が螺合されることによって、カバー締結部2d(すなわちラジエータグリル2)がカバー部材3と締結される。
なお、カバー締結部2dは、ラジエータグリル2とカバー部材3とが当接された領域である。また、排水溝2eは、平面視にてラジエータグリル2とカバー部材3とが重ねられた領域(重畳領域)にて、カバー締結部2dを避けて形成されている。つまり、本実施形態においては、重畳領域のうちラジエータグリル2とカバー部材3とが当接された領域を避けて排水溝2eが設けられている。
また、カバー締結部2dの下方には、上方に向かって窪んで設けられた下面凹部2fが設けられている。つまり、本実施形態においては、図2(b)に示すように、下面凹部2fと排水溝2eとが車幅方向に並んで配置されている。このような下面凹部2fと排水溝2eとが車幅方向に交互に複数設けられることによって、ラジエータグリル2の上壁部2bは、車両の前後方向から見て波型形状とされている。このような上壁部2bは、車両の前後方向から見て、厚さ寸法が排水部2cとカバー締結部2dとで同一あるいは略同一とされている。
カバー部材3は、エンジンルームの前方側の領域を覆うように配置されており、フードHが閉鎖された状態でフードHによって上方から覆われる部材である。このカバー部材3は、車両の前方側の縁部がラジエータグリル2の上壁部2bと接続されている。カバー部材3は、ラジエータグリル2の上壁部2bのカバー締結部2dの位置に合わせて上下に貫通するねじ挿通孔3aが設けられている。このねじ挿通孔3aは、平面視にて、カバー締結部2dに設けられたねじ孔2d1に重なる位置に設けられている。図4に示すように、上壁部2bの上方にカバー部材3が重ねられ、ねじ4がねじ挿通孔3aを挿通した状態でねじ孔2d1に螺合されることによって、上壁部2b(すなわちラジエータグリル2)とカバー部材3とが締結されている。
また、カバー部材3の車両前方側の端部(先端部3b)は、ラジエータグリル2の意匠部2aと離間されており、カバー部材3とラジエータグリル2の意匠部2aとの間に車両前後方向に空く隙間が設けられている。このため、図2(a)等に示されているように、排水溝2eの意匠部2a側の領域(一部領域)は、カバー部材3によって覆われていない。このようなカバー部材3の縁部は、本実施形態において、上面及び下面が凹凸のない滑らかな平面状とされている。
このような本実施形態の接続構造1によれば、例えばフードHの前端から落下した液体Xは、図2に示すように、カバー部材3の先端部3bと意匠部2aとの隙間から排水溝2eに流れ込み、排水溝2eに案内されてカバー部材3の下方を流れて上壁部2bの先端部2b1から排水される。つまり、本実施形態においては、液体Xは、ラジエータグリル2の上壁部2bとカバー部材3との上下方向における境界部分から排水される。
以上のような本実施形態の接続構造1においては、平面視にてラジエータグリル2の上壁部2bの一部にカバー部材3の縁部が上方から重ねて配置され、平面視におけるラジエータグリル2の上壁部2bとカバー部材3の縁部との重畳領域の一部にてラジエータグリル2とカバー部材3とが当接状態で締結され、重畳領域のうちラジエータグリル2とカバー部材3とが当接された領域を避けて上壁部2bの上面に平面視にてカバー部材3の先端部3bから上壁部2bの先端部2b1に至る排水溝2eが設けられている。
このような本実施形態の接続構造1によれば、ラジエータグリル2の上壁部2bに対して上方からカバー部材3の縁部が重ねて配置され、上壁部2bの上面に平面視にてカバー部材3の先端部3bから上壁部2bの先端部2b1に至る排水溝2eが設けられている。このため、ラジエータグリル2の上壁部2bとカバー部材3との境界部分から排水が可能となり、カバー部材3に排水のための貫通孔を設けることなく液体Xをカバー部材3の下方に案内することができる。
また、本実施形態の接続構造1においては、ラジエータグリル2の上壁部2bに下方に窪んで排水溝2eが設けられている。このような本実施形態の接続構造1によれば、ラジエータグリル2の上壁部2bに溝を形成することで排水が可能であるため、カバー部材3に対して排水のための溝を形成する必要がない。このため、カバー部材3を異様な厚さ寸法としようとした場合に、カバー部材3の上面に凹凸を設ける必要がない。よって、本実施形態の接続構造1によれば、厚さ寸法が一様で上面が平面状のカバー部材3とすることができる。このように上面が平面状のカバー部材3とすることで、フードHを開放した場合に視認されるカバー部材3の外観印象が向上すると共に、カバー部材3上の清掃等のメンテナンス作業が容易となる。
また、本実施形態の接続構造1においては、上壁部2bが、カバー部材3と当接される領域の下方に上方に窪んで設けられる下面凹部2fを有している。このため、本実施形態の接続構造1によれば、ラジエータグリル2の上壁部2bが、車両の前後方向から見て波型形状となり、厚さ寸法が排水部2cとカバー締結部2dとで同一あるいは略同一とされている。このため、カバー部材3を射出成形で形成した場合に、冷却時のヒケ等によって意図せずにカバー部材3が変形することを抑止することができる。
また、本実施形態の接続構造1においては、排水溝2eの底面2e1がカバー部材3の先端部3bから上壁部2bの先端部2b1に向かうに連れて下降するように傾斜されている。このため、本実施形態の接続構造1によれば、排水溝2eに流れ込んだ液体Xを確実に排水溝2eから排出することが可能となる。また、排水溝2eに流れ込んだ液体Xが逆流することを防止することが可能となる。
また、本実施形態の接続構造1においては、平面視にて、ラジエータグリル2とカバー部材3とが当接された領域と排水溝2eとが交互に複数設けられている。つまり、本実施形態の接続構造1によれば、複数の排水溝2eが車幅方向に配列されて設けられている。このため、円滑に液体Xの排水を行うことが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、ラジエータグリル2の上壁部2bに排水溝2eを形成する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、カバー部材3の下面に排水溝を設ける構成を採用することも可能である。または、ラジエータグリル2の上壁部2bと、カバー部材3との両方に排水溝2eを設ける構成を採用することも可能である。
また、上記実施形態においては、上壁部2bが下面凹部2fを有することによって、上壁部2bが波型形状とされた構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、下面凹部2fを設けない構成を採用することも可能である。
また、上記実施形態においては、排水溝2eの底面2e1が傾斜した構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、底面2e1が水平面とされた構成を採用することも可能である。
図5は、上記実施形態の接続構造1の変形例の模式的な断面図である。この図に示すように、排水溝2eの底面2e1に、排水溝2eよりも幅寸法が小さい小幅流路2gを設けるようにしても良い。なお、小幅流路2gは、平面視にて少なくともカバー部材3の先端部3bから上壁部2bの先端部2b1に至る範囲に設けられている。このような小幅流路2gを設けることによって、仮に排水溝2eが落ち葉等の異物で閉塞したとしても、小幅流路2gを介して、排水を行うことができる。