以下、本発明の検眼装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
(実施例1)
実施例1の検眼装置10の構成を、図1~図4に基づいて説明する。
図1に示す検眼装置10は、被検者1(図2参照)に各種の視標を呈示し、呈示された視標を視認した被検者1の応答に基づいて行う自覚検査を実行するものである。
実施例1の検眼装置10は、図1に示すように、視標呈示ユニット20と、検眼ユニット30と、カメラ40(撮影装置)と、コントロールユニット50と、を備えている。ここで、視標呈示ユニット20は、床面11に設置される。一方、検眼ユニット30は、視標呈示ユニット20と被検眼2との間に配置された検眼テーブル12から起立する支柱13に、アーム14を介して支持されている。
アーム14は、コントロールユニット50から入力される駆動指令に基づいて駆動する駆動部14aを有している。アーム14は、この駆動部14aによって、支柱13を中心に回動すると共に、支柱13に沿って上下方向に移動する。すなわち、検眼ユニット30は、アーム14が回動することで、図1に示す退避位置から、視標呈示ユニット20に正対する検査位置まで移動する。また、検眼ユニット30の上下位置は、アーム14を上下方向に移動させることで変動する。なお、アーム14を回動又は上下動させるための駆動部14aは、モータやソレノイド等を用いた駆動源を有する。駆動部14aの機構としては、周知の構成が用いられる。さらに、アーム14の回動や上下動を手動によって行うようにしてもよい。
視標呈示ユニット20は、床面11から起立する中空の筐体21と、この筐体21に収納された視標呈示光学系22(図2参照)と、を備えている。筐体21の前面21a(被検者1に臨む面)には、透明なポリアクリルレート樹脂が嵌め込まれたウインドウ21bが設けられている。被検者1は、このウインドウ21bを介して検眼距離に投影された視標像Tを視認する。
視標呈示光学系22は、被検者1に視標像Tを呈示する光学系であり、図2に示すように、画像表示部23と、第1反射ミラー24と、レンズ系25と、第2反射ミラー26と、あおり機構27と、を有している。
画像表示部23は、ランドルト環等の視標を表示する表示器23aと、表示制御部23bと、を有する。ここで、表示器23aは、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の電子表示デバイスによって構成される。また、表示制御部23bは、コントロールユニット50のメイン制御部51から入力された選択指示に基づいて視標を選択し、選択した視標を表示器23aに表示させる指令を出力する。
第1反射ミラー24は、画像表示部23の表示器23aに表示された視標からの光束を、レンズ系25に向けて反射する。
第1反射ミラー24によって反射した光束はレンズ系25により視標の虚像を結像する。ここで、レンズ系25は、1枚のレンズ又は複数のレンズ等により構成され、第1反射ミラー24によって反射された表示器23aからの光束に対して必要に応じて挿脱される。なお、このレンズ系25におけるレンズの挿脱は、操作部52を介して入力された遠用検査と近用検査の切替指令等に基づき、図示しない駆動機構によって行われる。
第2反射ミラー26は、レンズ系25を透過した光束を反射、偏向して、被検眼2の角膜頂点3の前方の所定距離に視標の虚像を呈示する。この第2反射ミラー26は、筐体21の前面21aに設けられたウインドウ21bの背後に設けられている。そして、この第2反射ミラー26は、レンズ系25の光軸上に配置されている。また、この第2反射ミラー26は、あおり機構27によって上下方向に回動可能に保持され、被検者1の目高に合わせて光軸(視標像Tの呈示光軸102)の角度を変更することが可能となっている。
あおり機構27は、被検者1の目高に合わせて光軸(視標像Tの呈示光軸102)を調整する機構であり、筐体21内で第2反射ミラー26の上下方向の角度θを変更可能に保持する保持部27aと、保持部27aに角度指令を出力する角度制御部27bと、を有する。ここで、保持部27aによって保持可能な角度θの範囲は、反射した光束が床面11と平行になるように配置したゼロ°を中心として、反射光束が±30°の範囲とする。また、角度制御部27bは、コントロールユニット50のメイン制御部51から入力された角度θの指示に基づいて、保持部27aに対して角度指令を出力する。
検眼ユニット30は、視標呈示ユニット20と被検眼2との間に配置され、屈折力の異なる複数の光学素子32を被検眼2の眼前に選択的に配置することで、被検眼2の視機能の矯正が可能である。この検眼ユニット30は、被検者1の左右方向に並んで一対配置され、それぞれ図3に示すように、中空のハウジング31と、ハウジング31に収納された複数の光学素子32と、を有している。なお、図3には、一方(被検者1から見て左側)の検眼ユニット30を示す。
ハウジング31は、視標呈示ユニット20に臨む第1側面31aを貫通する第1検眼窓33aと、被検者1に臨む第2側面31bを貫通する第2検眼窓33bが設けられている。第1、第2検眼窓33a、33bは正対し、被検者1が第2検眼窓33bを覗くと、第1検眼窓33aを介して視標呈示ユニット20を視認することが可能である。
複数の光学素子32は、球面レンズ、円柱レンズ、プリズム等である。この複数の光学素子32は、ハウジング31内に回転可能に設けられた円盤状のレンズディスク32aに取り付けられ、レンズディスク32aの周方向に沿って並んでいる。そして、複数の光学素子32は、レンズディスク32aが駆動部32bによって回転することで、周方向に並んだうちの一つが第1、第2検眼窓33a、33bの間に位置する。これにより、検眼ユニット30では、複数の光学素子32が被検眼2の眼前に選択的に配置され、視標呈示ユニット20を視認する際の被検眼2の視機能の矯正が可能になる。なお、レンズディスク32aを回転させる駆動部32bは、モータやソレノイド等を用いた駆動源を有し、この駆動源は、操作部52を介して入力したプリズム度数や球面度数等を設定するための設定指令に基づいて駆動する。また、駆動部32bの機構としては、周知の構成が用いられる。
カメラ40は、視標呈示ユニット20によって呈示された視標像Tをウインドウ21b越しに撮影可能な撮影装置である。カメラ40は、被検者1の左右方向に並んだ一対の検眼ユニット30のハウジング31の前面側である第1側面31aに固定され、視標呈示ユニット20の前方を撮影可能としている。カメラ40は、第1検眼窓33aと同じ高さに配置されることが望ましいが、この限りではない。そして、カメラ40は、例えばデジタルカメラであり、撮像光学系41と、撮像素子42と、を有している。
撮像光学系41は、レンズで構成され、視標等の被写体像を撮像素子42上に結像する。撮像素子42は、撮像光学系41が形成する被写体像を画像データ(電気信号)に変換して出力する。撮像素子42としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。
撮像素子42の駆動制御、つまりカメラ40における撮影開始や撮影終了の制御は、操作部52を介して入力された撮影指示に基づいて行われる。また、撮像素子42から出力された画像データは、コントロールユニット50のメイン制御部51に入力される。
なお、カメラ40は、検眼ユニット30のハウジング31に対して、着脱可能に取り付けられてもよい。この場合、カメラ40の取り付け手段としては、吸盤や粘着シート、面ファスナー等が用いられる。
コントロールユニット50は、検者(不図示)による操作を受け付け、この操作に応じた指令(制御信号)を視標呈示ユニット20や検眼ユニット30、カメラ40へ適宜出力することで、検眼装置10を操作する。ここで、コントロールユニット50と視標呈示ユニット20、検眼ユニット30、カメラ40とは、それぞれ一般的な通信インターフェースによって、通信可能に接続されている。コントロールユニット50は、この通信インターフェースを介して、各種の指令を視標呈示ユニット20等へ出力する。なお、一般的な通信インターフェースは、有線であってもよいし、無線LAN、ブルートゥース(登録商標)等の無線であってもよい。
コントロールユニット50は、図4に示すように、検眼装置10の全体の動作を統括的に制御するメイン制御部51と、検者によって操作される操作部52と、メイン制御部51から出力された各種の情報を表示するモニタ53(表示装置)と、を備えている。ここで、コントロールユニット50は、操作部52やモニタ53を備えたノート型パーソナルコンピュータによって構成され、検眼テーブル12に載置される。なお、コントロールユニット50は、ノート型パーソナルコンピュータに限定されるものではなく、タブレット型端末、スマートフォン等の携帯端末(情報処理装置)で構成することもできるし、検眼専用のコントローラであってもよい。
操作部52は、例えばキーボードやマウス、各種のスイッチやボタン、ダイアル、トラックボール等を有する操作パネル等から構成される。検者によって操作部52が操作されることで、視標呈示ユニット20にて呈示する視標の選択指令や、遠用検眼又は近用検眼の切替指令、検眼ユニット30におけるプリズム度数、球面度数、円柱度数、軸角度、瞳孔間距離等を設定するための設定指令、カメラ40での撮影を開始又は停止させる撮影指令、撮像素子42から出力された画像データの表示指令等が、メイン制御部51に入力される。
モニタ53は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の電子表示デバイス等により構成され、検者から視認可能となっている。このモニタ53には、撮像素子42から入力された画像データに加え、検眼パラメータや、視標の指令画像(表示器23aに表示させる視標のイメージ画像)、検査情報、検査結果等の情報が表示される。また、モニタ53がタッチパネルの機能を有する場合は、操作部52の機能がモニタ53に含まれていてもよい。
メイン制御部51は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶部51aと、を有して構成される。このメイン制御部51には、操作部52を介して各種の指令が入力されると共に、カメラ40によって撮影した画像データが入力される。そして、このメイン制御部51は、操作部52を介して入力された各種の指令に基づいて、検眼装置10の各部の動作を統括的に制御する。なお、記憶部51aには、検眼装置10の各部の制御を行うためのコンピュータプログラムを予め記憶する。また、記憶部51aには、コンピュータプログラムのほかに、検眼のための各種検眼パラメータ、検眼結果等が記憶される。
すなわち、メイン制御部51は、アーム14を駆動する駆動部14aに駆動指令を出力し、検眼ユニット30を視標呈示ユニット20の前方に移動し、被検者1の姿勢に合わせて検眼ユニット30の高さを調整する。更に被検者1の眼幅(瞳孔間距離)に合わせて左右の検眼ユニット30の間隔を調整する。また、メイン制御部51は、検眼ユニット30のレンズディスク32aを回転制御する駆動部32bに設定指令を出力し、レンズディスク32aの回転角度を制御する。これにより、第1、第2検眼窓33a、33bの間に配置される光学素子32が切り替えられ、被検眼視機能の矯正が可能となる。
さらに、メイン制御部51は、撮像素子42に撮影指令を出力し、カメラ40の撮像素子42の駆動制御を行う。これにより、カメラ40による撮影の開始や、撮影の終了が制御される。また、メイン制御部51では、モニタ53に表示指令を出力し、撮像素子42から入力された画像データをモニタ53に表示させる。なお、このメイン制御部51は、カメラ40の撮像光学系41を制御して、カメラ40での撮影時にフォーカシングやズームなどを行うこともできる。
さらに、メイン制御部51では、操作部52を介して検者によって指示された任意の視標の選択指令を表示制御部23bに出力する。これにより、表示器23aは、表示制御部23bからの指令に基づいて選択された視標を表示する。また、メイン制御部51では、指示された角度θに基づいて角度制御部27bに角度指令を出力する。これにより、保持部27aは、角度制御部27bからの指令に基づいて第2反射ミラー26の角度θを制御する。
以下、実施例1の検眼装置10の作用効果を、「視標確認作用」と、「視標の呈示位置調節作用」と、「検眼ユニットの瞳孔間距離調節作用」に分けて説明する。
[視標確認作用]
実施例1の検眼装置10において被検眼2の自覚検査を行う際、まず、検者はコントロールユニット50の操作部52を操作し、視標呈示ユニット20にて呈示する視標を指示する。
これにより、視標呈示ユニット20の表示制御部23bは、指示された視標を選択し、表示器23aに表示させる。そして、表示器23aによって表示された視標からの光束は、第1反射ミラー24によって反射してレンズ系25で屈折し、第2反射ミラー26によって反射して被検眼2の角膜頂点3の前方に視標の虚像を呈示する。この結果、図5に示すように、視標呈示ユニット20のウインドウ21b内に視標像Tが呈示される。
被検者1は検眼ユニット30の第2検眼窓33b、光学素子32及び第1検眼窓33aを介して視標像Tを視認する。
一方、検者は、視標呈示ユニット20によって視標像Tを呈示すると、操作部52を操作してメイン制御部51から撮影指令を出力し、カメラ40による撮影を開始する。ここで、カメラ40は、検眼ユニット30のハウジング31のうち、視標呈示ユニット20に臨んだ第1側面31aに設けられ、視標呈示ユニット20の前面21aに向いている。そのため、カメラ40によって視標呈示ユニット20の前面21aに設けられたウインドウ21bが撮影され、このウインドウ21b内に呈示される視標像Tを撮影することができる。そして、このカメラ40によって撮影された画像データは、コントロールユニット50のメイン制御部51に出力される。そして、検者が操作部52を操作することでメイン制御部51から表示指令が出力され、図6に示すようにモニタ53に画像データが表示される。
このように、実施例1の検眼装置10では、視標呈示ユニット20によって呈示した視標像Tを、検眼ユニット30を介して被検者1に視認させる一方、この呈示された視標像Tを検眼ユニット30に設けられたカメラ40によって撮影し、その画像データをモニタ53に表示することができる。そのため、検者は、モニタ53に表示された画像データを確認することで、視標呈示ユニット20によって呈示された視標像Tの状態を被検者1と同時に観察することができる。
これにより、検者は、自身が指示した視標が確実に呈示されているか否かを確認しながら被検眼2の検査を実施することができる。特に、視標呈示ユニット20の視標呈示光学系22では、画像表示部23にて表示された視標を光学系を用いて遠方に呈示することで、検眼ユニット30を視標呈示ユニット20に近接して配置することができ、省スペース化が可能となる。一方、視標呈示ユニット20と検眼ユニット30との間に生じる隙間は狭くなる。そのため、被検者1越しに視標呈示ユニット20によって呈示されている視標像Tを検者が覗き見ることは難しい。しかしながら、検眼ユニット30に取り付けたカメラ40によって視標像Tを撮影することで、視標像Tを検者が直接確認することが難しい状況であっても、呈示されている視標像Tの状態を確実に観察することができる。
[視標の呈示位置調節作用]
実施例1の検眼装置10では、視標呈示ユニット20の高さ位置は固定であり、第2反射ミラー26の高さは変更できない。一方、被検者1は体格の違いによって被検眼2の高さ位置が異なる。そのため、被検眼2の高さによっては視標呈示ユニット20を見下ろす又は見上げるようになる。
本来、図7(e)に示すように第2反射ミラー26と被検眼2の高さが一致し、被検眼2の視線101が第2反射ミラー26によって反射した視標像Tの呈示光軸102と一致することが望ましい。この場合には、被検眼2の正面に視標像Tが呈示され、図7(f)に示すように、被検者1からはウインドウ21bのほぼ中央に視標像Tが呈示されたように見える。
しかし、図7(a)に示すように、例えば座高が高い被検者1の場合、被検眼2は視標呈示ユニット20を見下ろすことになり、呈示光軸102に対して視線101が下向きになる。このため、図7(b)に示すように、被検者1からはウインドウ21bの上方に視標像Tが呈示されたように見え、更に座高が高い場合には視標像Tがけられてしまい視認できなくなることがある。また、図7(c)に示すように、座高が低い被検者1の場合、被検眼2は視標呈示ユニット20を見上げることになり、呈示光軸102に対して視線101が上向きになる。このため、図7(d)に示すように、被検者1からはウインドウ21bの下方に視標像Tが呈示されたように見え、同様に更に座高が低い場合には視標像Tがけられることがある。
これに対し、検眼ユニット30の高さは、アーム14の上下方向の位置を動かすことで被検眼2の高さに合わせることが可能である。また、実施例1の検眼装置10では、カメラ40によって視標像Tを撮影するが、このカメラ40は検眼ユニット30のハウジング31に設けられている。そのため、被検眼2と同じ高さからカメラ40で撮影することが可能となる。さらに、カメラ40は、第2反射ミラー26にて反射した視標像Tと視標呈示ユニット20の筐体21の一部とを同時に観察可能に構成されている。
ここで、前述の通り、視標呈示ユニット20の高さ位置は固定であるため、カメラ40によって撮影した画像データ中の視標呈示ユニット20の筐体21の一部の像の高さから、検眼ユニット30の高さを求めることができる。また、検眼ユニット30と視標呈示ユニット20の距離は、これらを設置したときに既知である。そのため、カメラ40から得られた画像データに基づいて求めた検眼ユニット30の高さから、第2反射ミラー26の最適な角度θを求めることができる。なお、カメラ40で撮影される筐体21の部分には高さを明確に検知可能なマーク、例えば水平ラインなどが施されていてもよい。
すなわち、メイン制御部51は、カメラ40によって撮影した画像データに基づいて、第2反射ミラー26の最適な角度θを演算し、角度制御部27bを制御して第2反射ミラー26を最適な角度θに駆動する。これにより、従来はリモコンなどによる投光部を被検者1の目高位置に配置して、視標呈示ユニット20内に配置したセンサにより、目高を検知して第2反射ミラー26の角度θを制御していたが、投光部を目高位置に配置しなくても、目高位置の検出が可能となる。
さらに、実施例1の検眼装置10では、一対の検眼ユニット30の各ハウジング31のそれぞれにカメラ40が取り付けられ、視標像Tを二つのカメラ40によって撮影する。ここで、各カメラ40は、いずれも第1検眼窓33aの側方に固定されており、水平方向に並んでいる。つまり、この検眼装置10では、水平方向に並んだ二つのカメラ40によって、異なる方向から視標呈示ユニット20に呈示された同一の視標像T(同一箇所)を撮影することができる。
そのため、各カメラ40によって異なる方向から撮影された二以上の画像による視差情報に基づいて、カメラ40が固定された検眼ユニット30のハウジング31から、視標位置Oまでの距離L(図8参照)を求めることができる。
ここで、遠用検査のときには、視標の虚像が呈示される視標位置Oを被検眼2の角膜頂点3から4~6m程度に設定する。そのため、多少の誤差が生じていても検査結果への影響は少ない。しかしながら、近用検査では、視標位置Oを角膜頂点3から30~40cm程度に設定する。そのため、視標位置Oがずれていると、検査の結果に影響を与え、正確な検査を実施できなくなることがある。
これに対し、実施例1の検眼装置10は、水平方向に並んだ二つのカメラ40によって撮影された二つの画像データから、検眼ユニット30のハウジング31から視標位置Oまでの距離Lを求めることができ、被写体までの距離が確認可能である。そのため、検者は、被写体である視標の虚像が呈示される視標位置Oを客観的に確認することができる。このため、視標像Tの位置を適切に調節することが可能となる。しかもこのとき、被写体を近用検眼用の視標とすることで、近用検査において正確な検査を実施することができる。
[検眼ユニットの瞳孔間距離調節作用]
実施例1の検眼装置10では、視標呈示ユニット20の視標呈示光学系22が、第1反射ミラー24及び第2反射ミラー26を介して画像表示部23によって表示した視標の視標像Tを呈示する。ここで、第2反射ミラー26は、反射面の角度θを可変とするあおり機構27を備えている。そのため、このあおり機構27によって反射面を検眼ユニット30にほぼ正対させることで、カメラ40は第2反射ミラー26に映った検眼ユニット30を撮影することができる。
そのため、例えば、カメラ40は、第2検眼窓33dを覗く被検眼2と、検眼ユニット30の第1検眼窓33aとを同時に撮影することができる。
これにより、この被検眼2及び第1検眼窓33aを撮影した画像データをコントロールユニット50のモニタ53に表示することで、検者はモニタ53を視認すれば、被検眼2と第1検眼窓33aとの位置関係を客観的に確認することができる。そして、検者は、この画像データを用いて、左右の被検眼2に対する一対の検眼ユニット30の水平方向の位置を調節することができる。そして、左右の被検眼2の瞳孔と、各々の第1検眼窓33aが一致するように、一対の検眼ユニット30の左右間隔を調節することができる。これにより、検眼ユニット30と視標呈示ユニット20の間隔が狭く検眼ユニット30の正面から被検眼2の様子を観察できない省スペース検眼装置であっても、検眼ユニット30の位置調整が可能となる。
(実施例2)
実施例2の検眼装置は、被検眼2の角膜位置と、視標呈示ユニット20によって呈示された視標像Tを、同一のカメラ40を用いて確認するものである。以下、図9に基づいて、実施例2の検眼装置の検眼ユニット30Aの構成を説明する。なお、実施例1の検眼ユニット30と同様の構成については、実施例1と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
実施例2の検眼装置における検眼ユニット30Aは、被検者1の左右方向に並んで一対配置され、それぞれ中空のハウジング31Aと、ハウジング31Aに収納された複数の光学素子32と、角膜位置確認機構35と、を有している。なお、図9では、一方(被検者1から見て左側)の検眼ユニット30Aを示す。
ハウジング31Aは、視標呈示ユニット20に臨む第1側面31aを貫通する第1検眼窓33aと、被検者1に臨む第2側面31bを貫通する第2検眼窓33bが設けられている。
さらに、このハウジング31Aは、視標呈示ユニット20に臨む第1側面31aに第1観察窓35aが設けられている。第1観察窓35aは、後述する角膜位置確認機構35のハーフミラー35eの透過方向に位置し、第1側面31aを貫通している。また、この第1観察窓35aは、第1検眼窓33aの側方に設けられており、第1観察窓35aの中心高さと第1検眼窓33aの中心高さは一致しているのが望ましい。
一方、ハウジング31Aの被検者1に臨む第2側面31bには、被検眼2の側方に突出した突出面31cが形成されている。突出面31cには、被検眼2を観察する第2観察窓35bが設けられている。さらに、この突出面31cには、第2観察窓35bに隣接する位置に被検眼2の角膜頂点3を照明する光源35cが設けられている。光源35cは、LED(Light Emitting Diode)等で構成される。
角膜位置確認機構35は、検眼の際、被検眼2の角膜頂点3と検眼ユニット30の距離を確認するために用いる機構である。この角膜位置確認機構35は、照準目盛部35dと、ハーフミラー35e(光学部材)と、を有している。
照準目盛部35dは、刻印や印刷等によって目盛が付された透明な板材である。この照準目盛部35dは、第2観察窓35bを介してハウジング31A内の角膜位置観察系の光路上に配置されている。
ハーフミラー35eは、被検眼2からの光(特定波長の光)を反射し、その他の波長の光を透過するダイクロイックミラーである。このハーフミラー35eは、照準目盛部35dを介してハウジング31A内の角膜位置観察系の光路上に配置されている。ここで、ハーフミラー35eは、被検眼2からの光をハウジング31Aの第2側面31bに向けて反射する。例えば、光源35cを近赤外発光するLEDによって構成して、近赤外光で角膜を照明すると共に、ハーフミラー35eを赤外光を反射し、可視光を透過するダイクロイックミラーによって構成することで、赤外光で照明された角膜の像はハーフミラー35eで反射してカメラ40で撮影することができる。一方、視標像Tからの可視光は、ハーフミラー35eを透過してカメラ40で撮影することができ、光量のロスが軽減できる。
カメラ40は、ハウジング31Aの第2側面31bの内側面に取り付けられ、このハウジング31Aに収納されている。そして、カメラ40は、ハーフミラー35eの透過方向であって、第1観察窓35aに対向する位置に配置されている。これにより、このカメラ40は、ハーフミラー35eを透過すると共に第1観察窓35aを介して撮影が可能となっている。
これにより、実施例2の検眼装置では、光源35cを点灯した際、被検眼2からの光が第2観察窓35bを介してハウジング31A内に入射する。そして、この光は、ハーフミラー35eによって反射され、カメラ40で撮影が可能である。つまり、検者は、カメラ40によって撮影された画像データに基づいて、角膜頂点3の位置の確認をすることができる。
このため、視標呈示ユニット20と検眼ユニット30の間隔が狭い省スペース検眼装置のように、ハウジング31Aの第1側面31a側(検眼ユニット30Aの前方)から第1観察窓35aを覗けない場合であっても、画像から角膜頂点3の位置を確認できることで、被検眼2の角膜頂点3と検眼ユニット30の距離を容易に把握することができる。
一方、光源35cを消灯すれば被検眼2側からの光が減少し、カメラ40は、ハーフミラー35e及び第1観察窓35aを介して検眼ユニット30Aの前方を撮影可能である。ここで、検眼ユニット30Aの前方には、実施例1と同様の視標呈示ユニット(不図示)が設置されており、カメラ40は、この視標呈示ユニットによって呈示された視標像Tを撮影することができる。
なお、角膜頂点3を撮影した画像と、視標像Tを撮影した画像とが重なり合わないように、図9に二点鎖線で示すように、ハーフミラー35eの前後に遮光のための第1、第2シャッターS1、S2を配置し、観察しない側からの光がカメラ40に入射しないようにしてもよい。この場合、角膜頂点3の位置を確認するときには、第1シャッターS1を閉じ、第2シャッターS2を開放する。また、視標像Tを観察(撮影)するときには、第1シャッターS1を開放し、第2シャッターS2を閉じる。ここで、第1、第2シャッターS1、S2は、いずれか一方のみであってもよい。
また、図9に二点鎖線で示すように、ハーフミラー35eを90°反転して配置することで、視標像Tからの光束104が第1観察窓35aを経てハーフミラー35eを透過し、カメラ40で撮影することができる。また、ハーフミラー35eを90°反転したことで、従来と同様に、被検眼2側からの光がハーフミラー35eで反射して、第1観察窓35aを介して検者が角膜頂点3の位置を直接観察することも可能である。この場合、ハーフミラー35eは可視光を一定の割合で反射、透過するミラーが用いられる。
さらに、ハーフミラー35eを、角膜位置観察系の光路中に挿脱可能なクイックリターンミラーによって構成した場合には、角膜頂点3の位置を確認するときに角膜位置観察系の光路中にハーフミラー35eを挿入し、カメラ40により視標像Tを観察(撮影)するときに角膜位置観察系の光路外へ脱する構造とすることができる。この場合、ハーフミラー35eを全反射鏡とすることができるため、光量のロスを防ぐことが可能となる。
しかも、このカメラ40は、第1観察窓35aに対向する位置に配置されているが、第1観察窓35aは、第1検眼窓33aの側方に設けられている。ここで、第1観察窓35aの中心高さと第1検眼窓33aの中心高さが一致していれば、カメラ40は、被検眼2とほぼ同じ高さ位置から視標像Tを撮影することができる。よって、検者は、カメラ40によって撮影された画像データをモニタ53上で視認することで、被検者1が見ている状態で視標像Tを確認することができる。
以上、本発明の検眼装置を実施例1及び実施例2に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、カメラ40は、被検者1の左右方向に並んだ一対の検眼ユニット30に対して一つずつ取り付けられているが、これに限らない。例えば、一対の検眼ユニット30の一方のみにカメラ40を取り付けてもよいし、一対の検眼ユニット30の中央位置に一つだけカメラ40を取り付けてもよい。また、第1検眼窓33aの周囲に複数のカメラ40を設けてもよい。さらに、カメラ40によって検眼ユニット30の方から視標像Tを撮影できればよいため、検眼ユニット30を支持するアーム14の先端等の任意の位置にカメラ40を設けてもよい。
実施例1では、画像データを視認した検者による操作指令に基づいて、第2反射ミラー26の角度θを調節する例を示したが、これに限らない。例えば、メイン制御部51によって画像データを解析し、被検眼2から視標像Tに向けられた視線101と、第2反射ミラー26の呈示光軸102とがなす視線角度103を演算する。そして、演算によって求めた視線角度103に基づいて角度θを算出し、この算出された角度θに応じた角度指令を出力することで、第2反射ミラー26の角度θを自動的に調節するようにしてもよい。
また、実施例1では、呈示光軸102をあおり機構27によって変更する例を示したが、これに限らない。例えば、視標呈示ユニット20の高さ自体を変更する機構を設け、この機構によって視標呈示ユニット20の高さを変更することで呈示光軸102を調整することも可能である。
さらに、瞳孔間距離の調節や、視標像Tの表示位置の調節についても、カメラ40によって撮影された画像データを解析して得られた情報に基づいて、メイン制御部51から自動的に必要な指令を出力し、必要な調節を自動で行ってもよい。
そして、実施例1及び実施例2では、検眼装置10が視標呈示ユニット20を備え、この視標呈示ユニット20によって呈示された視標像Tをカメラ40によって撮影する例を示した。しかしながら、これに限らない。例えば、近用検眼用の視標を呈示する場合では、視標を呈示するための光学系は不要とすることが可能であるため、検眼装置10は視標呈示ユニット20を備えていなくてもよい。