JP7143997B2 - 脱色伸縮性生地の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、脱色した伸縮性を有する生地の製造方法に関する。
衣服などに使用される生地としてポリウレタン繊維を含む伸縮性の生地が使用されることがある。特に、細身の衣服、スポーツ用の衣服、サポーターなどの装身具又は下着などにおいては、着心地や動きやすさを向上させる目的で、伸縮性を有する生地が使用されることがある。
一方で、使用されることによって経年変化した風合いを出したり、色合いを調節する目的で伸縮性の生地を次亜塩素酸を含有する液で脱色することも行われている。
例えば、特許文献1には、特定の分子構造を有するポリウレタンを含む弾性糸と、染色された綿糸とを有する伸縮性を有する綿の布帛が記載されている。この布帛を次亜塩素酸ソーダで処理することにより、脱色された伸縮性を有する綿の布帛をはじめて提供したとされている。
また、特許文献2には、ポリウレタンウレア重合体及びポリウレタン重合体から形成されたポリウレタン弾性繊維が記載されている。この繊維には、Mg、Zn、又はAlの酸化物等が配合される。この弾性繊維は、次亜塩素酸ナトリウムに対する耐性を備えているとされている。
また、特許文献3には、エチレン/アルファ‐オレフィンインターポリマーを含む伸縮性生地が記載されている。この生地は優れた塩素抵抗性を示すとされている。
特開平04-185737号公報 特開2002-339166号公報 特表2010-511801号公報
特許文献1ないし特許文献3の方法は、いずれも生地を構成する繊維自体を改良するものである。このため、ポリウレアや金属の酸化物等の特定の物質を含有していない一般的なポリウレタン繊維、又は所定のパラメーターを満たす原料以外の原料を使用して製造された一般的なポリウレタン繊維で構成された布地については、次亜塩素酸ナトリウムで脱色すると、伸縮性生地が備えていた弾性率が著しく損なわれるという問題があった。例えば、複数のメーカーから伸縮性生地の脱色加工を受託する場合などは、持ち込まれる伸縮性生地の構成がまちまちであり、対応に苦慮することがあった。
本発明は、脱色剤を改良することによって、伸縮性生地の伸縮率の低下を抑えつつ、伸縮性生地の色を脱色することが可能な脱色伸縮性生地の製造方法を提供することを目的とする。
染色されたポリウレタン繊維を含む伸縮性生地と、二酸化塩素を含有する液とを接触させる工程を含む脱色伸縮性生地の製造方法によって、上記の課題を解決する。
上記の製造方法において、染色された生地は、縫製された布製品であることが好ましい。また、脱色伸縮性生地の弾性率の保持率は、60%以上であることが好ましい。また、脱色伸縮性生地の引張強度の保持率は、60%以上であることが好ましい。また、脱色前の伸縮性生地と脱色後の伸縮性生地との色差(ΔE*ab)は、5以上であることが好ましい。
本発明によれば、伸縮性生地の伸縮率の低下を抑えつつ、伸縮性生地の色を脱色することが可能な脱色伸縮性生地の製造方法を提供することが可能である。
二酸化塩素水溶液又は次亜塩素酸ナトリウム水溶液(pH5)の濃度とΔE*abとの関係を示すグラフである。 二酸化塩素溶液、又は次亜塩素酸ナトリウム水溶液(pH5)で処理した場合における、色差ΔE*abと、弾性率Eとの関係を示すグラフである。 二酸化塩素溶液、又は次亜塩素酸ナトリウム水溶液(pH5)で処理した場合における、色差ΔE*abと、引張強度Tとの関係を示すグラフである。 二酸化塩素溶液、又は次亜塩素酸ナトリウム水溶液(pH5)で処理した場合における、色差ΔE*abと、破断伸び率Eとの関係を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は、染色されたポリウレタン繊維を含む伸縮性生地(以下、単に伸縮性生地と称する。)と、二酸化塩素を含有する液とを接触させる工程を含む脱色伸縮性生地の製造方法である。
ポリウレタン繊維を含む伸縮性生地と、二酸化塩素を含有する液とを接触させる方法は特に制限されない。例えば、二酸化塩素を含有する液を伸縮性生地に対して吹き付けて含浸させてもよいし、伸縮性生地を二酸化塩素を含有する液に浸漬してもよい。大量の伸縮性生地を脱色する場合は、浸漬することにより実施することが好ましい。また、後述するように、中古加工を行う場合などには、部分的な脱色を行うことがある。そのような場合は、吹き付けにより実施することが好ましい。
伸縮性生地の構成は、ポリウレタンによって、生地に伸縮性を持たせてあるものであればよい。例えば、経糸及び緯糸のうち少なくともいずれか一方にポリウレタン繊維を含有するスパン糸、ポリウレタン繊維を含有するマルチフィラメント糸、ポリウレタン繊維を含有するものモノフィラメント糸、又はポリウレタン繊維を含有するカバードヤーンを使用した織布が挙げられる。カバードヤーンはポリウレタン繊維を含有するものであればよく、芯糸又は巻回糸のいずれかにポリウレタン繊維が使用されていればよい。生地は、上記のようにポリウレタンを含有する織布であってもよいし、ポリウレタンを含有する編布であってもよい。
二酸化塩素を含有する液を接触させる対象となる伸縮性生地は、例えば、未縫製の生地、すなわち原反でもよいし、縫製された布製品であってもよい。布製品としては、例えば、上衣、下衣、スポーツ用の衣服、腰ベルトやリストバンドなどのサポーター、布を使用した鞄、布を使用した靴などが挙げられる。後述するように、デニムパンツ等の製品に中古加工を行う場合は、使用により摩擦に曝されやすい部分に脱色加工を施すことになる。このため、中古加工を行う場合には、生地の状態ではなく、縫製された製品の状態で脱色加工を施すことが好ましい。
二酸化塩素を含有する液を接触させる対象となる伸縮性生地としては、デニム地が特に好適である。例えば、デニムパンツなどのデニム地又はデニム製品の場合は、使用することによって、デニム地の色が退色し、独特の風合いが生まれる。この風合いを再現するために、新品のデニムパンツ、デニムジャケット、デニムシャツ等を故意に脱色する加工まである。本実施形態の方法によれば、伸縮性生地の強度や弾性を大きく損なうことなく、脱色の強度を小から大までの任意の強度で生地の染料を脱色することができる。このため、ポリウレタン繊維を含む伸縮性のデニム地やデニム製品において、弾性や強度を大きく損なうことなく、中古加工を実施することができる。
ポリウレタン繊維を構成するポリウレタンは、弾性を備えており、紡糸することができるものであればよい。例えば、衣料品用として市販されているポリウレタン繊維の分子は、ハードセグメントとソフトセグメントとを備えており、プラスチックとゴムとの中間的な性質を備えている。このため、溶融紡糸などによって紡糸することが可能であり、弾性も備える。ポリウレタン繊維の組成や分子構造によって、塩素に対する抵抗性が異なるが、抵抗性の高いものであっても利用可能であるし、抵抗性の低いものも利用可能である。
二酸化塩素を含有する液は、例えば、二酸化塩素のガスを水に通すことにより、得ることができる。また、例えば、亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHを調節することにより、得ることができる。亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用する場合は、その水溶液のpHは7以下であることが好ましく、6以下であることが好ましい。水溶液のpHの下限値は3以上であることが好ましく、4以上であることが好ましい。
伸縮性生地に色を付与する染料は、例えば、反応染料、直接染料、又は硫化染料、建染染料などの染料が挙げられる。
脱色液に含まれる二酸化塩素の濃度は、所望の脱色強度に応じて変更することができる。強度の脱色を希望する場合は、二酸化塩素の濃度を大きくすればよい。弱度の脱色を希望する場合は、二酸化塩素の濃度を小さくすればよい。過剰に二酸化塩素の濃度を上昇させると、脱色の効果が飽和する。このため、二酸化塩素の濃度は、1000mg/L以下とすることが好ましく、800mg/L以下とすることがより好ましく、500mg/L以下とすることがさらに好ましい。二酸化塩素の濃度の下限値は、0mg/Lより大きいことが好ましく、5mg/Lよりも大きいことがより好ましく、10mg/L以上であることがさらに好ましい。
製造される脱色伸縮性生地は、脱色前と脱色後における色差ΔE*abは、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。色差ΔE*abの上限は特に限定されないが、100以下であることが好ましい。また、製造される脱色伸縮性生地の脱色前と脱色後における弾性率の保持率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。弾性率の保持率の上限は得意限定されないが、100%未満であることが好ましい。製造される脱色伸縮性生地の引張強度の保持率も上記の範囲と同様であることが好ましい。
以下、本発明の実施例について説明する。以下の実施例は一例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
以下の方法で、各濃度の二酸化塩素水溶液を調製し、インジゴ染料で染色されたデニム生地を模した試験布を脱色し、脱色の程度を評価した。
[二酸化塩素水溶液の調製]
4%ペルオキソ二硫酸カリウム水溶液(K2S2O8)35mLと16%亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)水溶液13mLとの混合液に窒素ガスを流して、二酸化塩素ガス(ClO2)を発生させた。発生した二酸化塩素ガスを蒸留水、続いて飽和亜塩素酸ナトリウム水溶液(NaClO2)をくぐらせた後、冷却した蒸留水に溶解させて二酸化塩素水溶液を作製した。
作製した二酸化塩素水溶液の二酸化塩素濃度を株式会社タクミナ製デジタル残留塩素テスター(DCT-05)を用いて測定し、蒸留水で希釈して50mg/L、100mg/L、200mg/L、又は400mg/Lに調製した。
[次亜塩素酸ナトリウム水溶液の調製]
市販の次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液の有効塩素濃度を株式会社タクミナ製デジタル残留塩素テスター(DCT-05)を用いて測定し、pH5の0.2Mリン酸緩衝液で希釈して、有効塩素濃度500mg/L、1000mg/L、1500mg/L、又は2000mg/Lに調製した。同様にpH12の0.2 Mリン酸緩衝液で希釈した有効塩素濃度500mg/L、1000mg/L、1500mg/L、又は2000mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製した。なお、次亜塩素酸の解離定数pKaを7.5として、有効塩素濃度とpHから次亜塩素酸(HClO)濃度を算出した。
[デニム生地を模した試験布]
インジゴ染料で染色された綿100%の平織組織の織布を30mm×30mmに裁断して複数枚の試験布を作製した。上記で作成した各濃度の二酸化塩素水溶液50mL又は各pH及び各濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液が入った容器の中に一枚ずつ試験布を入れて、23℃で2時間、遮光下で静置した。浸漬後、各試験布をハイポ(チオ硫酸ナトリウム)に浸して二酸化塩素を抜いて、流水で充分にすすぎ、風乾した。
[脱色による色相]
上記の各濃度の二酸化塩素水溶液、pH5に設定した各濃度の次亜塩素酸ナトリウムで脱色した試験布、及び脱色処理を施す前の各試験布について、画像分光測色機(クラボウ株式会社製COLOR/7s)を用いて、色相をL*a*b表色系で測定し、脱色を行う前と脱色を行った後の色差ΔE*abを次式により算出した。二酸化塩素水溶液又は次亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度とΔE*abとの関係を図1に示す。図1において、実線で二酸化塩素水溶液を用いた場合の値を示し、破線で次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いた場合の値を示す(以下の、図2ないし図4においても同じ。)。
[式1]
ΔE*ab={(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)1/2
ただし、ΔL*=L2-L1、Δa*=a2-a1、Δb*=b2-b1であり、L2、a2、又はb2は、脱色後の値であり、L1、a1、又はb1は、脱色前の値である。
図1から明らかなように、ΔE*abは、ClO2又はHClO濃度の増大とともに大きくなった。ClO2は、HClOに比べてより低濃度で脱色効果を示した。
次に、二酸化塩素水溶液で処理したポリウレタン繊維と、次亜塩素酸水溶液で処理したポリウレタン繊維の物性を評価した。物性評価の項目は、弾性率、引張強度、及び破断伸び率である。
[弾性率の評価]
耐塩素グレードではない市販のレギュラースパンデックス糸を使用して、弾性率の評価を行った。使用したスパンデックス糸は、モノフィラメント糸であり、その繊度は70デニールである。このスパンデックス糸を外径10mmの円筒状のシリコンチューブに重ならないように巻き付けた。シリコンチューブは、糸が試験中に絡み合うことを防止するための冶具として使用した。
スパンデックス糸を巻回したシリコンチューブを、上記の方法で作製した濃度50mg/L、100mg/L、200mg/L、若しくは400mg/Lの二酸化塩素水溶液50ml;又は上記の方法で作製したpH5かつ有効塩素濃度500mg/L若しくはpH12かつ有効塩素濃度500mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液50mlに浸漬した。浸漬条件は、23℃、2時間、かつ遮光状態とした。浸漬後にスパンデックス糸を巻回したシリコンチューブをハイポ(チオ硫酸ナトリウム)に浸した。その後、流水でスパンデックス糸を巻回したシリコンチューブを流水で十分にすすぎ、風乾した。
風乾した各スパンデックス糸は、巻縮した状態で長さが約50mmであった。各スパンデックス糸の一端を固定し、他端に錘を固定して吊り下げることにより、荷重Fを加えた。荷重Fは、1mN、2mN、3mN、4mN、5mNとなるように錘の重さを変えた。1~5mNの荷重を加えた際における各スパンデックス糸の長さLを測定し、荷重Fとスパンデックス糸の長さとの関係をグラフにプロットした。そして、荷重Fと長さLとの関係を直線近似した。グラフを基にして、荷重Fがゼロの際のスパンデックス糸の長さL0を外挿した。
次いで、各荷重値における伸長比εを、ε=(L-L0)/L0で求めた。そして、伸長比εに対する荷重Fの傾きをスパンデックス糸の繊度(tex)で除して、スパンデックス糸の弾性率E=(dF/dε)/tex(単位:mN/tex)を求めた。各濃度の二酸化塩素水溶液で処理したスパンデックス糸、各pHにおける次亜塩素酸ナトリウム水溶液で処理したスパンデックス糸、又は二酸化塩素水溶液にも次亜塩素酸ナトリウム水溶液にも浸漬していない未処理のスパンデックス糸(ブランク)について、弾性率Eと弾性率の保持率とを以下の表1に示した。保持率は、次式で求めた。
[式2]
保持率(%)=各濃度の二酸化塩素水溶液又は各濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬したスパンデックス糸の弾性率E÷ブランクのスパンデックス糸の弾性率E×100
Figure 0007143997000001
[引張強度及び破断伸び率の評価]
上記の各濃度の二酸化塩素水溶液で処理したスパンデックス糸、各pHにおける次亜塩素酸ナトリウム水溶液で処理したスパンデックス糸、又は二酸化塩素水溶液にも次亜塩素酸ナトリウム水溶液にも浸漬していない未処理のスパンデックス糸(ブランク)に対して1mNの荷重を加えて伸長し、糸の長さが50mmになるように型紙に固定した。万能材料試験機(株式会社島津製作所製AG-100kNXplus)のエアチャックで各スパンデックス糸の両端部を固定した後、型紙を切断した。型紙は、糸の長さを一定に保つための冶具として使用した。
各スパンデックス糸に対して引張速度500mm/分の条件で荷重をかけて引張試験を行った。各濃度の二酸化塩素水溶液、各pHにおける次亜塩素酸ナトリウム水溶液、又は水に浸漬した際における引張強度T(単位:mN/tex)と引張強度の保持率(単位:%)を以下の表2に示した。引張強度T及びその保持率は以下の式によって求めた。さらに、各濃度の二酸化塩素水溶液、各pHにおける次亜塩素酸ナトリウム水溶液、又は水に浸漬した際における破断伸び率E(単位:%)と破断伸び率の保持率(単位:%)を以下の表3に示した。破断伸び率E及び保持率は次式によって求めた。
[式3]
=破断時の強さ(mN)÷繊度(tex)
[式4]
=(破断時のスパンデックス糸の長さ-スパンデックス糸の初期長さ)÷スパンデックス糸の初期長さ×100
引張強度の保持率及び破断伸び率の保持率は、次式によって求める。
[式5]
引張強度保持率(%)=各濃度の二酸化塩素水溶液又は各濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬したスパンデックス糸の引張強度T÷ブランクのスパンデックス糸の引張強度T×100
[式6]
破断伸び率保持率(%)=各濃度の二酸化塩素水溶液又は各濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬したスパンデックス糸の破断伸び率E÷ブランクのスパンデックス糸の破断伸び率E×100
Figure 0007143997000002
Figure 0007143997000003
上記で求めた各濃度における二酸化塩素溶液で処理した各スパンデックス糸及び上記で求めた500mg/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液(pH5)で処理したスパンデックス糸について、色差ΔE*abと、弾性率Eとの関係を図2にグラフとして示す。さらに、前記各スパンデックス糸について、色差ΔE*abと、引張強度Tとの関係を図3にグラフとして示す。さらに、前記各スパンデックス糸について、色差ΔE*abと、破断伸び率Eとの関係を図4にグラフとして示す。
図2ないし図4から明らかなように、pH5の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用して処理した場合は、インジゴ染料の脱色が大きくなる条件では、スパンデックス糸の力学特性が著しく低下するため、限られた色差の範囲内でしか脱色することができないことがわかった。一方で、二酸化塩素水溶液の場合は、脱色が大きくなる条件でも力学特性の低下が緩やかであり、スパンデックス糸の引張強度及び伸縮性を大きく損なうことなく、インジゴ染料を脱色することができることがわかった。
[他の染料]
次に、インジゴ染料以外の染料で染色された生地に対して、脱色能が認められるか否かを脱色処理前と脱色処理後の生地の色差ΔE*abをもとめることにより評価した。
生地としては、以下の3種類の生地を準備した。
[生地1]
反応染料で染色された綿100%の綾織布である。反応染料としては、ケムテックス株式会社製のSumifix(登録商標)HF Yellow 3R(0.3%O.W.F)と、HF Scarlet 2G(0.3%O.W.F)と、HF Blue BG(0.4%O.W.F)とを混合した染液を使用した。
[生地2]
直接染料で染色された綿100%の平織織布である。直接染料としては、日本化薬株式会社製のKayarus(登録商標) Yellow RL(0.3%O.W.F)と、Red BWS(0.3%O.W.F)と、Blue CGL(0.4%O.W.F)とを混合した染液を使用した。
[生地3]
硫化染料で染色された綿100%の平織織布である。硫化染料としては、旭化学工業株式会社製のAsathiosol(登録商標) Dark Blue S-2R(0.4%O.W.F)と、Brilliant Green S-GO(1.6%O.W.F)とを混合した染液を使用した。
[生地4]
インジゴ染料でロープ染色された綿98%、ポリウレタン2%の綾織の織布である。経糸は、インジゴ染料で染色された綿糸であり、緯糸はポリウレタン糸の周りに綿糸を巻回させたカバードヤーンである。
上記の生地1ないし生地4を上述の方法で得た40mg/Lの二酸化塩素水溶液に20分間にわたって浸漬し、浸漬前と浸漬後の色差ΔE*abをもとめることにより評価した。色差ΔE*abは、上記と同様の方法で求めた。
その結果、生地1については、ΔE*abは、29.23であった。生地2については、ΔE*abは、29.29であった。生地3については、ΔE*abは、15.91であった。生地4については、ΔE*abは、15.99であった。
このことから明らかなように、二酸化塩素は種々の染料に対して、脱色効果を示すことが確かめられた。
官能評価]
次に、二酸化塩素を接触させたことによるデニム生地の物性の変化について以下の方法で官能評価を行った。経糸がインジゴ染料で染色された綿糸であり、緯糸がスパンデックス糸の周りに綿糸を巻回した未染色のカバードヤーンである綾織のデニム生地(ポリウレタン繊維5質量%)を、二酸化塩素の濃度が400mg/Lとなるように調整した液に、20℃で90分間浸漬した。その後、ソーピング、すすぎ、及び熱風乾燥を行った。このデニム生地を手で引っ張ることにより、弾性や強度が損なわれていないか官能評価によって確かめてみたところ、弾性及び強度共に健全な状態を保っており、処理前の生地と遜色がない状態であった。
[二酸化塩素の供給源]
次に、二酸化塩素の供給源について、検討した。
亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)試薬をpH5の0.3Mリン酸緩衝液に溶解させ、5mM、10mM、及び100mMのNaClO2水溶液を調製した。株式会社タクミナ製デジタル残留塩素テスター(DCT-05)を用いて測定した亜塩素酸濃度及び二酸化塩素濃度は、5mMのNaClO2水溶液で230mg/L及び0.1mg/Lであり、10mMのNaClO2水溶液で390mg/L及び0.1mg/Lであり、100mMのNaClO2水溶液で4700mg/L及び3.1mg/Lであった。
亜塩素酸ナトリウム(NaClO2)試薬を蒸留水に溶解させ、100mMの亜塩素酸水溶液を調製した。上記のテスターで測定した亜塩素酸濃度と二酸化塩素濃度は、それぞれ4400mg/Lと0.2mg/Lであった。pHは11であった。
上述と同様のインジゴ染料で染色された30mm×30mmの試験布を、亜塩素酸水溶液50mLが入った容器の中に入れ、23℃で2時間、遮光下で静置した。浸せき後、綿布をハイポ(チオ硫酸ナトリウム)に浸し、流水で充分にすすぎ、風乾した。各試験布について、脱色処理前と脱色処理後の色差ΔE*abを求めた。5mM、10mM、100mM(pH5)、及び100mM(pH11)の亜塩素酸水溶液に浸した綿布の色差ΔE*abは、それぞれ1.3、1.2、35.7、1.4であった。このことから、亜塩素酸ナトリウムを二酸化塩素の供給源として使用する場合は、水溶液のpHを7以下にすることが望ましいことがわかった。

Claims (4)

  1. 染色されたポリウレタン繊維を含む伸縮性生地と、二酸化塩素を含有する液とを接触させる工程を含み、
    脱色前の伸縮性生地と脱色後の伸縮性生地との色差(ΔE*ab)は、5以上である脱色伸縮性生地の製造方法。
  2. 染色された生地は、縫製された布製品である請求項1に記載の脱色伸縮性生地の製造方法。
  3. 以下の方法により求めた脱色伸縮性生地を構成するスパンデックス糸の弾性率の保持率は、60%以上である請求項1又は2に記載の脱色伸縮性生地の製造方法
    弾性率の保持率(%)=脱色伸縮性生地を構成するスパンデックス糸の弾性率E÷脱色前の伸縮性生地を構成するスパンデックス糸の弾性率E×100;
    弾性率E(mN/tex)は、スパンデックス糸の一端に荷重Fを掛けて、荷重Fを加えた際におけるスパンデックス糸の長さLと、荷重Fとの関係を直線近似し、グラフを基にして、荷重がゼロの際のスパンデックス糸の長さL0を外挿し、
    伸縮比ε=(L-L0)/L0を求め、伸縮比εに対する荷重Fの傾きをスパンデックス糸の繊度(tex)で除して、前記弾性率Eとする。
  4. 以下の方法により求めた脱色伸縮性生地を構成するスパンデックス糸の引張強度の保持率は、60%以上である請求項1ないし3のいずれかに記載の脱色伸縮性生地の製造方法
    引張強度保持率(%)=脱色伸縮性生地を構成するスパンデックス糸の引張強度T ÷脱色前の伸縮性生地を構成するスパンデックス糸の引張強度T ×100;
    引張強度T (mN/tex)は、長さが50mmとなるようにしたスパンデックス糸に対して引張速度500mm/分の条件で荷重をかけて引張試験を行い、スパンデックス糸の破断時の強さ(mN)÷繊度(tex)により求める。
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