JP7140350B2 - 汚染物質拡散抑制方法 - Google Patents

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Description

本発明は、汚染物質拡散抑制方法に関する。
加温された注入液を注入井戸から汚染土壌に注入し、汚染土壌を加温することにより、汚染土壌の浄化効率を高める地下土壌浄化システムが知られている(例えば、特許文献1)。
また、ダイオキシン類で汚染された汚染土壌を加熱処理した後に急冷することにより、ダイオキシン類を無害化する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
特開2014-205086号公報 特開2007-301417号公報
ところで、汚染浄化された土壌(以下、「浄化後土壌」という)には、その周辺土壌から汚染物質が流入する可能性がある。この場合、汚染物質が浄化後土壌を介して他の周辺土壌へ拡散する可能性がある。
本発明は、上記の事実を考慮し、汚染物質が浄化後土壌を介して周辺土壌へ拡散することを抑制することを目的とする。
第1態様に係る汚染物質拡散抑制方法は、汚染浄化された土壌に冷却液を注入し、該土壌を冷却する。
第1態様に係る汚染物質拡散抑制方法によれば、汚染浄化された土壌(以下、「浄化後土壌」という)に冷却液を注入し、当該浄化後土壌を冷却する。
ここで、浄化後土壌の温度が低くなると、土壌中の土粒子に汚染物質が吸着し易くなる。そこで、本発明では、浄化後土壌に冷却液を注入し、浄化後土壌を冷却する。これにより、浄化後土壌において土粒子の汚染物質の吸着能力を高めることができる。
この結果、浄化後土壌に周辺土壌から汚染物質が流入したときに、汚染物質が浄化後土壌中の土粒子に吸着、捕捉され易くなる。したがって、汚染物質が浄化後土壌を介して周辺土壌に拡散することが抑制される。
第2態様に係る汚染物質拡散抑制方法は、加温液を土壌に注入し、前記土壌を加温しながら該土壌を浄化する加温浄化工程と、前記加温浄化工程の後に、加温液よりも温度が低い冷却液を前記土壌に注入し、該土壌を冷却する土壌冷却工程と、を備える。
第2態様に係る汚染物質拡散抑制方法によれば、加温浄化工程と、土壌冷却工程とを備える。加温浄化工程では、加温液を土壌に注入し、土壌を加温しながら当該土壌を浄化する。この加温浄化工程の後に、土壌冷却工程を行う。土壌冷却工程では、加温液よりも温度が低い冷却液を土壌に注入し、当該土壌を冷却する。
ここで、加温浄化工程において、加温液によって土壌を加温すると、土壌中の汚染物質を分解する微生物(以下、「分解微生物」という)が増殖、活性化されるとともに、土壌中の土粒子から汚染物質が剥離し易くなる。したがって、土壌の浄化効率が高められる。なお、以下では、加温浄化工程が行われた土壌を、浄化後土壌という。
一方、土壌の温度が低くなると、土壌中の土粒子に汚染物質が吸着し易くなる。そこで、本発明では、土壌冷却工程において、冷却液によって浄化後土壌を冷却する。これにより、浄化後土壌における土粒子の汚染物質の吸着能力を早期に回復させることができる。
この結果、浄化後土壌に周辺土壌から汚染物質が流入したときに、汚染物質が浄化後土壌中の土粒子に吸着、捕捉され易くなる。したがって、汚染物質が浄化後土壌を介して周辺土壌に拡散することが抑制される。
さらに、加温浄化工程において、汚染浄土中の土粒子から汚染物質を剥離させることにより、土壌冷却工程において、土粒子が吸着可能な汚染物質量が増加する。したがって、汚染物質が浄化後土壌を介して周辺土壌に拡散することをさらに抑制することができる。
第3態様に係る汚染物質拡散抑制方法は、第2態様に係る汚染物質拡散抑制方法において、前記土壌冷却工程において、前記土壌の温度が、前記加温浄化工程を行う前の温度以下になるまで前記土壌を冷却する。
第3態様に係る汚染物質拡散抑制方法によれば、土壌冷却工程では、土壌の温度が、加温浄化工程を行う前の温度以下になるまで土壌を冷却する。
これにより、浄化後土壌において、土粒子の汚染物質の吸着能力を、少なくとも加温浄化工程の前の状態に戻すことができる。したがって、汚染物質が浄化後土壌を介して周辺土壌に拡散することがさらに抑制される。
第4態様に係る汚染物質拡散抑制方法は、第2態様又は第3態様に係る汚染物質拡散抑制方法において、前記加温浄化工程において、前記土壌中の汚染物質を分解する分解微生物を活性化させる活性剤を前記加温液に添加する。
第4態様に係る汚染物質拡散抑制方法によれば、加温浄化工程において、土壌中の汚染物質を分解する分解微生物を活性化させる活性剤を加温液に添加する。これにより、分解微生物が増殖、活性化され、汚染物質の分解が促進される。したがって、土壌の浄化効率が高められる。
以上説明したように、本発明に係る汚染物質拡散抑制方法によれば、汚染物質が浄化後土壌を介して周辺土壌へ拡散することを抑制することができる。
一実施形態に係る地下土壌浄化システムが適用された地盤を示す縦断面図である。 図1に示される地下土壌浄化システムによって汚染浄化された浄化後土壌を示す図1に相当する縦断面図である。 地下水の温度と、分解微生物による汚染物質の分解速度との関係を示すグラフである。 地下水の温度と、土粒子(土壌)の汚染物質の吸着量との関係を示すグラフである。
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る汚染物質拡散抑制方法について説明する。
(地下土壌浄化システム)
先ず、地下土壌浄化システムの構成について説明する。
図1には、本実施形態に係る地下土壌浄化システム10が適用された地盤12の一例が示されている。地盤12は、難透水層12Aと、難透水層12Aの上に堆積された帯水層12Bとを有している。なお、図1に示される符号Sは、帯水層12Bの地下水位を示している。また、図1に示される矢印Vは、地下水の流れを示している。
帯水層12Bは、難透水層12Aよりも通水性が高く、地下水が流動し易くなっている。この帯水層12Bは、VOC(揮発性有機化合物)等の汚染物質を含む汚染土壌12B1を有している。
汚染物質としては、例えば、有機化合物(塗料、印刷インキ、接着剤、洗浄剤、ガソリン、シンナーなどに含まれるトルエン、キシレンや、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、クロロエチレン(塩化ビニルモノマー)などの揮発性有機化合物)、重金属化合物、無機化合物、油類等が挙げられる。
なお、本実施形態に係る地下土壌浄化システム10は、上記の地盤12に限らず、例えば、難透水層12Aが存在しない地盤12等の種々の地盤に適用可能である。
地下土壌浄化システム10には、バイオ方法(バイオスティミュレーション)が採用されている。バイオ方法は、例えば、水素徐放剤や酵母抽出物質等の活性剤(栄養剤)が添加された注入液を注入井戸16から地盤12に注入し、汚染土壌12B1中の汚染物質を分解する微生物(以下、「分解微生物」という)を増殖、活性化させて分解微生物による汚染物質の浄化を促進させる方法である。
また、地下土壌浄化システム10では、注入液を加温し、加温液を生成する。この加温液は、帯水層12B中の地下水(常温地下水)よりも高温に加温され、帯水層12Bに注入される。これにより、汚染土壌12B1に存在する分解微生物を増殖、活性化させるとともに、汚染土壌12B1から汚染物質が剥離し易い状態にし、汚染土壌12B1の浄化効率を高めている。以下、地下土壌浄化システム10の各構成要素の構成について説明する。
地下土壌浄化システム10は、遮水壁14と、注入井戸16と、揚水井戸18と、観測井戸20と、温度検出部22と、水処理装置30と、加温活性剤生成装置40とを備えている。
(遮水壁)
遮水壁14は、例えば、コンクリートや地盤改良等によって、帯水層12Bに形成されている。また、遮水壁14は、汚染土壌12B1を囲むように平面視にて枠状に形成されている。この遮水壁14は帯水層12Bを貫通し、その下端部が難透水層12Aに根入れされている。これにより、汚染土壌12B1で汚染された地下水等の拡散が抑制されている。なお、遮水壁14は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
(注入井戸及び揚水井戸)
注入井戸16は、遮水壁14によって区画された領域(土壌)の一端側に配置されている。一方、揚水井戸18は、遮水壁14によって区画された領域(土壌)の他端側に配置されている。これらの注入井戸16及び揚水井戸18は、地盤12を掘削することにより形成されている。
注入井戸16及び揚水井戸18は、地盤12の帯水層12Bを貫通し、難透水層12Aに達している。この注入井戸16から地盤12に供給された加温液は、矢印Vで示されるように、汚染土壌12B1を通過し、揚水井戸18から揚水される。
なお、注入井戸16及び揚水井戸18の数や配置、長さは、浄化対象となる汚染土壌12B1の範囲に応じて適宜変更可能である。また、注入井戸16及び揚水井戸18は、必ずしも難透水層12Aに達する必要はない。
(観測井戸)
観測井戸20は、地盤12を掘削することにより形成されている。この観測井戸20は、遮水壁14によって区画された領域内に設けられている。また、観測井戸20は、汚染土壌12B1に設けられている。この観測井戸20は、地下水中の汚染物質の濃度や活性剤の濃度等を観測(検出)するための井戸である。
観測井戸20の内部には、例えば、図示しない揚水管が設けられており、この揚水管に設けられたポンプを作動することより、汚染土壌12B1の地下水が汲み上げられる。汲み上げられた地下水中の活性剤等の濃度は、例えば、濃度測定装置等によって測定される。
なお、観測井戸20の内部に設けられた濃度測定装置等によって、地下水中の活性剤等の濃度を測定することも可能である。また、活性剤液に蛍光染料等の指標材を添加し、この指標材の濃度を測定することにより、活性剤の濃度を推定することも可能である。
(温度検出部)
温度検出部22は、例えば、温度センサ等によって実現される。この温度検出部22は、汚染土壌12B1に埋設され、当該汚染土壌12B1中の地下水の温度を検出する。また、温度検出部22には、後述する加温活性剤生成装置40が電気的に接続されている。
なお、温度検出部22は、汚染土壌12B1に限らず、例えば、遮水壁14で囲まれた領域内に設けることができる。また、温度検出部22は、例えば、観測井戸20内に設けることができる。さらに、温度検出部22は、観測井戸20から揚水された地下水の温度を検出しても良い。
(水処理装置)
水処理装置30は、例えば、揚水井戸18から揚水された地下水をろ過するろ過装置等を含んで構成されている。この水処理装置30には、配管26を介して揚水井戸18が接続されている。配管26には、図示しない揚水ポンプが設けられており、この揚水ポンプが作動することにより、揚水井戸18から揚水された地下水が水処理装置30に供給される。
水処理装置30に供給された地下水は、当該水処理装置30によって水処理され、汚濁物質等が除去される。この水処理装置30には、配管32を介して加温活性剤生成装置40が接続されている。
(加温活性剤生成装置)
加温活性剤生成装置40は、例えば、地下水を注入液として貯留する貯留槽と、貯留槽に活性剤を添加する添加装置と、貯留槽に貯留された注入液を加温する加温装置42とを有している。
加温活性剤生成装置40は、汚染土壌12B1の活性剤の濃度(地下水中の活性剤の濃度)が所定値になるように、添加装置の動作を制御する。具体的には、加温活性剤生成装置40は、観測井戸20で観測された地下水中の活性剤の濃度が所定値未満の場合に、添加装置を作動し、貯留槽に活性剤を添加させる。一方、加温活性剤生成装置40は、観測井戸20で観測された地下水中の活性剤の濃度が所定値以上の場合に、添加装置を停止する。これにより、添加剤の濃度が、所定値(所定範囲)の注入液が生成される。
加温装置42には、ヒートポンプ46が接続されている。また、ヒートポンプ46には、例えば、図示しない構造物に設置された空調機48が接続されている。これにより、加温装置42には、ヒートポンプ46を介して空調機48の排熱(温排熱)が供給される。この排熱を熱源として、加温装置42が注入液を加温し、加温液を生成する。
なお、ヒートポンプ46には、空調機48以外の装置(例えば、ガス給湯器等)が接続されても良い。また、加温装置42は、例えば、地盤12上に立てられる構造物に設置されるコージェネレーションシステムの排熱を熱源としても良い。この場合、コージェネレーションシステムの排熱によって注入液が加温される。また、加温装置42には、例えば、ヒータ等を用いることも可能である。
ここで、加温活性剤生成装置40は、汚染土壌12B1における地下水の温度が所定値になるように、加温装置42の動作を制御する。具体的には、加温活性剤生成装置40には、前述した温度検出部22が電気的に接続されている。
加温活性剤生成装置40は、温度検出部22によって検出された汚染土壌12B1の地下水の温度が所定値未満の場合に、加温装置42を作動し、加温槽内の注入液を加温する。一方、加温活性剤生成装置40は、温度検出部22によって検出された汚染土壌12B1の地下水の温度が所定値以上の場合に、加温装置42を停止する。これにより、注入液の温度が、所定値(所定範囲)に加温された加温液が生成される。
また、加温活性剤生成装置40は、例えば、汚染土壌12B1中の分解微生物が増殖、活性化し易い温度(例えば、25℃~60℃、より好ましくは25℃~30℃)になるように、汚染土壌12B1中の地下水の温度を調整する。
加温活性剤生成装置40には、配管44を介して注入井戸16が接続されている。また、配管44には、図示しない注入ポンプが設けられている。この注入ポンプが作動すると、加温活性剤生成装置40によって活性剤が添加されるとともに、所定温度の加温された加温液が注入井戸16から地盤(土壌)12に注入される。なお、注入ポンプは、例えば、加温活性剤生成装置40によって制御される。
(土壌冷却装置)
次に、土壌冷却装置について説明する。
図2には、前述した地下土壌浄化システム10によって汚染浄化された汚染浄化後の土壌(以下、「浄化後土壌」)12B2が示されている。この浄化後土壌12B2は、土壌冷却装置50によって冷却される。
具体的には、土壌冷却装置50には、配管32を介して水処理装置30が接続されている。この土壌冷却装置50には、水処理装置30によって水処理された地下水が供給される。
また、土壌冷却装置50には、ヒートポンプ46を介して前述した空調機48が接続されている。この土壌冷却装置50には、ヒートポンプ46を介して空調機48の排熱(冷排熱)が供給される。この排熱を熱源として、土壌冷却装置50が注入液を冷却し、冷却液を生成する。
土壌冷却装置50は、浄化後土壌12B2中の地下水の温度が所定値になるように、水処理装置30から供給された地下水を冷却し、冷却液を生成する。具体的には、土壌冷却装置50には、前述した温度検出部22が電気的に接続されている。
土壌冷却装置50は、温度検出部22によって検出された浄化後土壌12B2の地下水の温度が所定値未満の場合に、水処理装置30から供給された地下水を冷却する。一方、土壌冷却装置50は、温度検出部22によって検出された浄化後土壌12B2の地下水の温度が所定値以上の場合に、水処理装置30から供給された地下水の冷却を停止する。これにより、温度が所定値(所定範囲)の冷却液が生成される。
土壌冷却装置50には、配管44を介して注入井戸16が接続されている。この配管44に設けられた図示しない注入ポンプが作動すると、土壌冷却装置50によって所定温度に冷却された冷却液が注入井戸16から地盤(土壌)12に注入される。これにより、浄化後土壌12B2中の地下水の温度が所定値(所定範囲)に冷却される。なお、注入ポンプは、例えば、土壌冷却装置50によって制御される。
ここで、土壌冷却装置50は、浄化後土壌(浄化後地盤)12B2の地下水の温度が、加温浄化工程前の温度以下になるように、注入井戸16から浄化後土壌12B2に冷却液を注入する。なお、加温浄化工程前の地下水の温度は、地下水の常温であり、例えば、16℃~18℃とされる。
(汚染物質拡散抑制方法)
次に、本実施形態に係る汚染物質拡散抑制方法の一例について説明する。
(加温浄化工程)
先ず、加温浄化工程について説明する。加温浄化工程では、地下土壌浄化システム10によって汚染土壌12B1を加温しながら汚染浄化する。
具体的には、加温活性剤生成装置40は、汚染土壌12B1の活性剤の濃度が所定値になるように、貯留槽内の注入液に活性剤を添加する。また、加温活性剤生成装置40は、汚染土壌12B1の地下水の温度が所定値になるように、貯留槽内の注入液を加温する。そして、活性剤が添加されるとともに加温された加温液は、配管44を介して注入井戸16に供給され、注入井戸16から地盤(土壌)12に注入される。
地盤12に注入された加温液は、矢印Vで示されるように、汚染土壌12B1を供給される。これにより、加温液中の活性剤によって、汚染土壌12B1中の分解微生物が増殖、活性化される。また、加温液によって汚染土壌12B1を加温することにより、汚染土壌12B1中の分解微生物がさらに増殖、活性化されるとともに、汚染土壌12B1から汚染物質が剥離し易くなる。したがって、汚染土壌12B1の浄化効率が高められる。
汚染土壌12B1を通過した注入液は、揚水井戸18から地下水として揚水される。揚水井戸18から揚水された地下水は、配管26を介して水処理装置30に供給され、水処理装置30によって水処理される。水処理装置30によって水処理された地下水は、配管32を介して加温活性剤生成装置40に供給され、加温活性剤生成装置40の貯留槽に注入液として貯留される。
加温活性剤生成装置40は、前述したように、汚染土壌12B1の活性剤の濃度が所定値になるように、貯留槽内の注入液に活性剤を添加する。また、加温活性剤生成装置40は、汚染土壌12B1の地下水の温度が所定値になるように、貯留槽内の注入液を加温する。この注入液は、配管44を介して注入井戸16に供給され、注入井戸16から汚染土壌12B1に再び注入される。
このように本実施形態に係る地下土壌浄化システム10では、汚染土壌12B1、水処理装置30、及び加温活性剤生成装置40との間で地下水(注入液)を循環させながら、汚染土壌12B1を浄化する。そして、例えば、汚染土壌12B1中の汚染物質の濃度が所定値未満になった場合に加温浄化工程を終了する。
(土壌冷却工程)
次に、土壌冷却工程について説明する。土壌冷却工程では、加温浄化工程の後に、加温液よりも温度が低い冷却液を汚染土壌12B1に注入し、当該汚染土壌12B1を冷却する。
具体的には、土壌冷却装置50は、温度検出部22によって検出された浄化後土壌12B2の地下水の温度が所定値未満の場合に、冷却液を注入井戸16に供給する。これにより、注入井戸16から浄化後土壌12B2に冷却液が注入される。
一方、土壌冷却装置50は、温度検出部22によって検出された浄化後土壌12B2の地下水の温度が所定値以上の場合に、注入井戸16に対する冷却液の供給を停止する。これにより、注入井戸16から浄化後土壌12B2への冷却液の注入が停止される。この結果、浄化後土壌12B2中の地下水の温度が、所定値(所定範囲)に冷却される。
なお、本実施形態の土壌冷却装置50は、浄化後土壌12B2の地下水の温度が、加温浄化工程前の温度(常温であり、例えば、15℃~17℃)以下になるように、注入井戸16から浄化後土壌12B2に冷却液を注入する。
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
本実施形態に係る汚染物質拡散抑制方法では、先ず、加温浄化工程において、汚染土壌12B1を加温しながら汚染浄化する。
ここで、図3には、地下水の温度と、分解微生物による汚染物質の分解速度との関係が示されている。なお、図3中の汚染物質は、テトラクロロエチレン(PCE)、トリクロロエチレン(TCE)、ジクロロエチレン(cDCE)、及びビニルクロライド(VC)である。
加温浄化工程前の汚染土壌12B1の地下水の温度(常温)は、例えば、16℃~18℃である。一方、加温浄化工程では、汚染土壌12B1の地下水が、例えば、25℃~30℃に加温される。この場合、図3に示されるように、汚染物質(PCE,TCE,cDCE,VC)の分解速度が速くなる。したがって、汚染土壌12B1の浄化効率を高めることができる。
また、図4には、地下水の温度と、土粒子(土壌)の汚染物質(PCE,TCE,cDCE,VC)の吸着量との関係が示されている。図4から分かるように、地下水の温度が、16℃~18℃から25℃~30℃に上がると、土粒子の汚染物質の吸着量が減少する。換言すると、土粒子から汚染物質が剥離し易くなる。したがって、汚染土壌12B1の浄化効率を高めることができる。
ところで、加温浄化工程後の浄化後土壌12B2では、地下水の温度が高い状態(例えば、25℃~30℃)に維持され、その温度が元の温度(加温浄化工程前の温度)に下がるまでに時間を要する。このように地下水の温度が高い状態では、図3で前述したように、土粒子の汚染物質の吸着量が減少する。そのため、周辺土壌から浄化後土壌12B2に汚染物質が流入したときに、汚染物質が浄化後土壌12B2を介して他の周辺土壌に拡散する可能性がある。特に、加温浄化工程後に遮水壁14を撤去した場合には、浄化後土壌12B2を介して汚染物質が拡散し易くなる。
ここで、図3から分かるように、地下水の温度が低くなると、土壌中の土粒子に汚染物質が吸着し易くなる。そこで、本実施形態では、土壌冷却工程において、冷却液によって浄化後土壌12B2を冷却する。これにより、浄化後土壌12B2における土粒子の汚染物質の吸着能力を早期に回復させることができる。
この結果、浄化後土壌12B2に周辺土壌から汚染物質が流入したときに、汚染物質が浄化後土壌12B2中の土粒子に吸着、捕捉され易くなる。したがって、汚染物質が浄化後土壌12B2を介して周辺土壌に拡散することが抑制される。
さらに、加温浄化工程において、汚染土壌12B1中の土粒子から汚染物質を剥離させることにより、浄化後土壌12B2の土粒子が吸着可能な汚染物質量が増加する。したがって、汚染物質が浄化後土壌12B2を介して周辺土壌に拡散することがさらに抑制される。
しかも、本実施形態では、土壌冷却工程において、浄化後土壌12B2の温度が、加温浄化工程を行う前の温度(例えば、16℃~18℃)以下になるまで、浄化後土壌12B2を冷却する。これにより、土粒子の汚染物質の吸着能力を、少なくとも加温浄化工程を行う前の状態に回復することができる。
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態の土壌冷却装置50は、土壌冷却工程において、浄化後土壌12B2の地下水の温度が加温浄化工程を行う前の温度以下になるように浄化後土壌12B2を冷却したが、上記実施形態はこれに限らない。土壌冷却装置50は、浄化後土壌12B2の地下水の温度を下げれば良く、その温度は、加温浄化工程を行う前の温度を超えていても良い。
また、浄化後土壌12B2を冷却する冷却液の温度は、例えば、加温活性剤生成装置40によって生成される加温液の温度よりも低温とされても良いし、浄化後土壌12B2中の地下水の温度よりも低温とされても良い。
また、上記実施形態では、土壌冷却装置50に水処理装置30が接続されるが、上記実施形態はこれに限らない。土壌冷却装置50には、例えば、浄化後土壌12B2の周辺地盤に設けられた揚水井戸や、水道水、河川、工業用水等の水源が接続されても良い。この場合、水処理装置30は、不要となる。
また、土壌冷却装置50を省略し、例えば、揚水井戸18から揚水された地下水を自然冷却することにより冷却液を生成しても良い。また、土壌冷却装置50を省略し、加温浄化工程における加温液よりも温度が低い、又は浄化後土壌12B2中の地下水よりも温度が低い水道水や工業用水等を冷却液として使用することも可能である。
また、上記実施形態では、加温浄化工程の後に土壌冷却工程を行ったが、上記実施形態はこれに限らない。土壌冷却工程は、加温されない状態で汚染浄化(浄化工程)された浄化後土壌にも適用可能である。浄化後土壌を冷却することで、土粒子の汚染物質の吸着量が増加し、上記実施形態と同様の効果を得ることができるためである。
なお、図3では、地下水の温度が15℃~40℃の範囲しか示されていないが、地下水の温度が15℃(約常温)よりも下がると、土粒子の汚染物質の吸着量はさらに増加する。したがって、例えば、浄化後土壌の地下水の温度を常温よりも下げることにより、土粒子の汚染物質の吸着量を増加させることができる。
また、上記実施形態では、バイオ方法として、バイオスティミュレーションを用いたが、これに限らない。例えば、外部で培養された微生物を活性剤等と共に、汚染土壌12B1に注入するバイオオーグメンテーションを用いても良い。また、バイオ方法は、必要に応じて用いれば良く、適宜省略可能である。
また、上記実施形態では、地盤12に遮水壁14及び揚水井戸18が設けられるが、上記実施形態はこれに限らない。遮水壁14及び揚水井戸18は、必要に応じて設ければ良く、適宜省略可能である。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
12 地盤(土壌)
12B1 汚染土壌(土壌)
12B2 浄化後土壌(汚染浄化された土壌)

Claims (3)

  1. 周辺土壌が汚染物質で汚染された土壌に加温液を注入し、前記土壌を加温しながら該土壌を浄化する加温浄化工程と、
    前記加温浄化工程によって前記土壌の汚染物質の濃度が所定値未満になった後に、加温液よりも温度が低い冷却液を前記土壌に注入して冷却し、該土壌における土粒子の汚染物質の吸着量を増加することで、前記周辺土壌の汚染物質が前記土壌を介して他の周辺土壌に拡散することを抑制する土壌冷却工程と、
    を備える汚染物質拡散抑制方法。
  2. 前記土壌冷却工程において、前記土壌の温度が、前記加温浄化工程を行う前の温度以下になるまで前記土壌を冷却する、
    請求項1に記載の汚染物質拡散抑制方法。
  3. 前記加温浄化工程において、前記土壌中の汚染物質を分解する分解微生物を活性化させる活性剤を前記加温液に添加する、
    請求項1又は請求項2に記載の汚染物質拡散抑制方法。
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