実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態における浄化装置は、オゾンガスをガススパージング法のスパージングガスとして用い、VOCなどの汚染物質による地下水汚染を原位置で浄化する処理に適用される。ガススパージング法とは、地下水中にガスを吹き込むことにより、地下水中の汚染物質(例えば揮発性有機物質)を揮発させ、揮発した汚染物質(有機物質)とガスをともに回収する地下水の浄化方法をさす。よって、地下水中にガスを注入すると、揮発してガス化した汚染物質は注入したガスの気泡に取り込まれ、気泡となって地下水中を上昇し、地下水面に到達する。地下水面に到達した気泡は、吸引井戸を設置して吸引するか、あるいは、土壌の地表面に設置したカバーを用いて地表面からのガスを吸引して、ガスとして汚染物質(揮発性有機物質)とともに回収される。
そして、本発明の実施の形態においては、地下水にオゾンガスが溶解した溶存オゾンの自己分解を抑制する“持続化体”を土壌中の地下水に、上記に示したスパージングガスとして用いられるオゾンガスとともに、あるいは個別に供給するものである。持続化体とは、地下水にオゾンガスが溶解した溶存オゾンの自己分解を抑制し、地下水中の溶存オゾン濃度の半減期を延長させる物質である。溶存オゾン濃度の半減期とは、溶存オゾン濃度が半分に低減するために要する時間であり、溶存オゾン濃度の半減期が長いほど、地下水中の溶存オゾンが持続する。持続化体とは、後述にて詳細を示すが、例えば、無機炭酸、炭酸ガス、一価アルコール、酸溶液の少なくともいずれかひとつが含まれており、ふたつ以上が同時に用いられる場合もある。
図1は本発明の実施の形態1による浄化装置の構成を説明する図である。図において、汚染領域100は、土壌中において、汚染物質(VOCなど)によって地下水が汚染されている領域を示す。スパージング井戸1(以下、井戸1と称す)は、汚染領域100に挿入された井戸である。スパージング井戸1とは、土壌中に埋設した配管から構成され、配管中にも若干の土壌が存在する場合がある。土壌中に埋設された当該配管は、例えば耐オゾン性を有するステンレス、ポリ塩化ビニルあるいはフッ素樹脂の材質で構成され、下端側に地下水中にガスを注入する噴出部11を備える。さらにスパージング井戸1とともに、土壌中のガスを吸引する吸引井戸を地下水面上の土壌中に備える、あるいは土壌の地表面に設置したカバーを用いて地表面に到達したガスを吸引する構成としてもよい。
井戸1は、複数本が汚染領域100に設置される場合があるが、ここでは1本の井戸1を例に説明する。井戸1には、第一供給部2と、第二供給部3とが接続される。第一供給部2は、井戸1にオゾンガスを供給するためのものである。第一供給部2は、オゾンガスを供給するために、例えば、酸素ガスからオゾンガスを生成するためのオゾン発生器、オゾンガスを生成するための原料となる酸素ガスをオゾン発生器に供給する酸素ガス供給機構、オゾン発生器にて生成したオゾンガスの濃度を測定するためのオゾンガス濃度計、オゾンガスを酸素ガスに分解するためのオゾン分解触媒機構、および、オゾン発生器にて生成されたオゾンガスの流量を調整する流量調整機構にて構成される。オゾンガスの供給圧力は、オゾン発生器に酸素ガスを供給する酸素ガス供給機構、または、オゾン発生器に装備されている機構、または、オゾン発生器より後段に設置される機構により調整されて供給される。また、オゾン発生器にて生成されたオゾンガスを貯蔵するオゾンガス貯蔵機構を備える構成としてもよい。
第二供給部3は、井戸1に持続化体を供給するためのものである。第二供給部3は、持続化体として無機炭酸を用いる場合、例えば無機炭酸水溶液を貯蔵する貯蔵部と、貯蔵部から排出する無機炭酸水溶液の供給量を調整する調整機構とにて構成される。井戸1と第一供給部2とは、第一配管51にて接続される。井戸1と第二供給部3とは、第一配管51を介して第二配管52にて接続される。
制御部4は第一供給部2および第二供給部3を制御する。制御部4と第一供給部2とは第一信号線81を介して接続される。制御部4と第二供給部3とは第二信号線82を介して接続される。制御部4は、例えば、パーソナルコンピュータにて構成される。制御部4は、第一信号線81にて第一供給部2の例えば流量調整機構およびオゾン発生器に信号を送信して制御して、第一供給部2からのオゾンガスの供給を制御する。制御部4は、第二信号線82にて第二供給部3の例えば調整機構に信号を送信して制御し、第二供給部3からの持続化体の供給を制御する。
井戸1の下端側には、オゾンガスおよび持続化体を地下水に供給する噴出部11が形成される。噴出部11は、井戸1の配管に形成された孔またはスリットが1箇所以上にて形成される。井戸1は、各供給部2、3からの供給物としてのオゾンガスおよび持続化体が井戸1の上端から外気(大気)に漏れ出ないように、井戸1の上端に封止部材を備え、外気(大気)には漏れ出ない状態を維持できるように構成される。これにより、オゾンガスおよび持続化体が井戸1の上部から外気(大気)中に漏れることが防止される。
第一配管51および第二配管52は、図2に示すように、第一配管51および第二配管52とを接続せずに、それぞれを井戸1内に配置した構成としてもよい。井戸1に挿入された第一配管51および第二配管52の下端側は、噴出部11の近傍まで延長してもよい。このとき第二配管52の下端は、第一配管51よりも下側にあるように設置する。これは、第二配管52から供給される液体である持続化体が、気体を供給するための第一配管51に逆流することを防止するためである。また、第一配管51、第二配管52および井戸1の封止部材には、耐オゾン性の高い、フッ素樹脂、ステンレスおよびポリ塩化ビニルの材質が選択される。
次に上記のように構成された実施の形態1の浄化装置による浄化方法について、図16に示すフローチャートに基づいて説明する。制御部4は第一信号線81を介して第一供給部2の例えば流量調整機構およびオゾン発生器を制御し、所望のオゾンガスの供給条件を設定する(図16のステップST1)。次に、制御部4により制御された第一供給部2は、オゾンガスを、第一配管51を介して井戸1の下部の噴出部11から汚染領域100の地下水中に供給する(第一工程としての、図16のステップST2)。そして、地下水に供給されたオゾンガスは、地下水中に散気されて気泡となり、汚染領域100の土壌中を上昇する。そして、当該気泡と、地下水との気液界面との濃度勾配を駆動力として、気泡中から地下水中にオゾンが溶解する。
地下水に溶解したオゾンは、汚染物質(VOCなど)および地下水中の被酸化物質との反応、あるいはオゾン自己分解に消費される。それらの反応に消費されなかったオゾンが溶存オゾンとして地下水中に検出される。地下水中に検出される溶存オゾンは、地下水とともに土壌中に浸透して汚染物質分解に寄与する。次に、所定時間オゾンガスを供給すると、制御部4は第一信号線81を介して第一供給部2を制御し、オゾンガスの供給を停止する(図16のステップST3)。
また、制御部4は第二信号線82を介して第二供給部3の例えば調整機構を制御し、所望の持続化体の供給条件を設定する(図16のステップST4)。次に、制御部4により制御された第二供給部3は、持続化体を、第二配管52を介して井戸1の下部の噴出部11から汚染領域100の地下水中に供給する(第二工程としての、図16のステップST5)。次に、所定時間持続化体を供給すると、制御部4は第二信号線82を介して第二供給部3を制御し、持続化体の供給を停止する(図16のステップST6)。
本実施の形態1においては、図16に示したように、地下水にオゾンガスを供給する工程(第一工程)と、地下水に持続化体を供給する工程(第二工程)とを備えていればよく、第一工程と第二工程との組み合わせ、およびタイミングについては様々な例が考えられる。以下、第一工程と第二工程との組み合わせおよびタイミングの例について、図3および図4を用いて説明する。
次に、上記に示した実施の形態1の浄化方法における、オゾンガスと持続化体との供給および停止のタイミングについて、図3および図4のタイミングチャートの例に基づいて説明する。まず、図3および図4は、本発明の実施の形態1の浄化方法の一連の動作を1サイクルとして示す。具体的には、1サイクルを任意の数の工程Tに分割する。ここでは1サイクルを2分割した場合、それぞれT1工程およびT2工程とし、各工程の動作においてオゾンガスおよび持続化体の供給および停止の設定をそれぞれ示す図である。
図3における浄化方法は、T1工程にて、地下水に持続化体を供給し(第二工程)、オゾンガスは供給しない(停止)。次に、T2工程にて、地下水にオゾンガスと持続化体とを同時に供給する(第一工程および第二工程の同時工程)。このようにオゾンガスと持続化体との2種類以上の流体を同時に地下水に供給する場合、第一供給部2の第一配管51および第二供給部3の第二配管52の噴出圧は同等に制御することが望ましい。2種類の噴出圧が異なると、噴出圧の低い流体の配管を噴出圧の高い流体が逆流可能性があり、2種類の噴出圧を同等にすると当該逆流を防止できる。
また、図4における浄化方法は、T1工程にて、地下水に持続化体を供給し(第二工程)、オゾンガスは供給しない(停止)。T2工程にて、地下水にオゾンガスを供給し(第一工程)、持続化体を供給しない(停止)。T1工程では、オゾンガスを地下水に供給しないため、第一供給部2の例えばオゾン発生器にて生成されているオゾンガスをオゾンガス貯蔵機構で貯蔵してもよい。そして、T2工程にて、オゾンガス貯蔵機構にて貯蔵されたオゾンガスと、オゾン発生器にて生成されたオゾンガスとを地下水に同時供給することにより、第一供給部2のオゾン発生器にて生成させたオゾンガスの濃度よりも高い濃度のオゾンガスを地下水に供給できる。
次に上記図3および図4において示した1サイクルの時間について説明する。汚染領域100の地下水量V(L)、汚染領域100を通過する地下水流速Q(L/hr)とする場合、1サイクルの時間は汚染領域100の地下水の滞留時間であるV/Q(hr)の0.01倍から8倍の時間とする。あるいは汚染領域100に供給するガス流量G(L/hr)とする場合、1サイクルの時間は汚染領域100のガスの滞留時間のV/G(hr)の0.01倍から8倍の時間とする。
1サイクルの時間は、地下水の滞留時間(V/Q)と、ガスの滞留時間(V/G)とのいずれかの短いほうから選択される。汚染領域100の地下水の滞留時間あるいはガスの滞留時間の0.01倍以下では、地下水に供給するオゾン量が不足する。また、汚染領域100の地下水の滞留時間あるいはガスの滞留時間の8倍以上では、1サイクルの時間が長くなり、地下水に必要以上の過剰のオゾンが供給され、高コストとなる可能がある。浄化方法としては、1サイクルが終了後、次の1サイクルを繰り返し実施してもよい。
汚染領域100の地下水の水質測定は、浄化方法の1サイクルの終了後に実施してもよく、あるいは所定時間毎に実施してもよい。汚染領域100の地下水の水質を定期的に測定することにより、オゾンガスの供給条件および持続化体の供給条件をそれぞれ変更できる。
次に、まず、上記のようにして供給されるオゾンガスについて説明する。まず、第一供給部2により供給されるオゾンの発生濃度は、0.1g/Nm3から1000g/Nm3、さらに望ましくは10g/Nm3から500g/Nm3とする。但し、オゾンの発生濃度を400g/Nm3以上とするためには、オゾンを一旦、貯蔵して濃縮させる必要がある。オゾンの発生濃度が0.1g/Nm3未満では、地下水に供給するオゾン量が不足し、地下水中の汚染物質を効率的に分解できない。また、オゾンの発生濃度が1000g/Nm3以上では、オゾンの発生効率が低下し消費電力が大きくなり、高コストとなる。
次に、第一供給部2のオゾン発生器により調整されるオゾンガスの圧力は、噴出部11位置において、絶対圧として0.1MPaから1MPa、さらに望ましくは0.15MPaから0.8MPaとする。ガス圧が0.1MPa未満では、大気圧より低くなり地下水にオゾンガスを効率よく供給できない。また、ガス圧が1MPa以上では、オゾンの発生効率が低下し消費電力が大きくなり高コストとなる。次に、汚染領域100の土壌1m3あたりの地下水に供給するオゾンガスの流量は、0.01L/minから6000L/min、望ましくは0.1L/minから100L/minとする。オゾンガスの流量が0.01L/min未満では、地下水に供給するオゾン量が不足し、地下水中の汚染物質を効率的に分解できない。また、オゾンガスの流量が6000L/min以上では、オゾンの発生に用いる原料ガス量が大きくなり、ランニングコストが高くなり高コストとなる。
高濃度のオゾンガスを用いれば、少ないオゾンガスの流量で高いオゾン供給率(単位処理水量あたりのオゾン量)を達成できる。また、図1に示す汚染領域100が地下深くに進行し、地下水圧が高い場合、あるいはガスが通過しにくい土壌の場合、オゾンガスを地下水に供給するためには、供給ガス圧を高く設定する必要がある。このようにオゾンガスを高圧供給する場合、低ガス流量でオゾンガスを地下水に供給することにより、原料ガスの使用量を抑制できるとともに地上に排出されるガス量を抑制できる。
次に、上記のように供給される持続化体について説明する。持続化体としては、無機炭酸、炭酸ガス、1価アルコール、あるいは酸溶液が考えられる。まず、持続化体として、無機炭酸を用いる場合、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムあるいはこれらを混合して調整した無機炭酸水溶液を用いる。これにより、重炭酸イオン(HCO3 −)あるいは炭酸イオン(CO3 2−)が地下水に供給される。また、無機炭酸水溶液に代えて、炭酸ガスを地下水に供給しても同様である。
汚染領域100の地下水に無機炭酸または炭酸ガスを供給すれば、無機炭酸が溶存オゾンの自己分解に関わるラジカルと反応する。これにより、地下水中の溶存オゾンの自己分解が抑制されて、地下水中の溶存オゾン濃度を持続できる。地下水中の溶存オゾンが持続することにより、オゾンガスの気泡が通過した位置から離れた位置にオゾンがオゾン水として到達できる。図5は、本発明の実施の形態1に関する無機炭酸濃度と、溶存オゾン濃度の半減期との関係を示す。溶存オゾン濃度の半減期は、上記に示したように、溶存オゾン濃度が半分に低減するために要する時間である。すなわち溶存オゾン濃度の半減期が長いほど、地下水中において溶存オゾンが持続する。
図5に示すとおり、pH7、水温20℃、無機炭酸濃度0mg/Lの水中においては、溶存オゾン濃度の半減期は7分である。そして、無機炭酸濃度の増大にともない溶存オゾン濃度の半減期が長くなる。無機炭酸濃度50mg/Lにおいて、溶存オゾン濃度の半減期は、41分に延長した。そして、無機炭酸濃度150mg/L以上では、溶存オゾン濃度の半減期の変化は小さくなった。これより、汚染領域100の地下水の無機炭酸濃度を測定し、汚染領域100の地下水中の無機炭酸濃度が10mg/Lから150mg/L、さらに望ましくは20mg/Lから80mg/Lとなるよう無機炭酸または炭酸ガスを地下水に供給する。
無機炭酸を供給することで、地下水のpHが増大してアルカリ側となる場合、無機炭酸と同時に酸溶液を供給し、地下水のpHの変動を+0.5から−0.5に抑えてもよい。酸溶液は、硫酸、塩酸およびクエン酸から選択し、持続化体として無機炭酸と酸のふたつを合わせて用いることができる。これにより、地下水のpHが増大して溶存オゾンの自己分解が促進されることを防止できる。また、無機炭酸を供給しているため、酸溶液の過剰供給により地下水のpHが低下し過ぎるのが防止できる。
汚染領域100の地下水の無機炭酸濃度がZ(mg/L)、汚染領域100の地下水量V(L)において、汚染領域100の地下水の無機炭酸濃度を50mg/Lに調整する場合、1サイクルで汚染領域100の地下水に供給する無機炭酸量X(1サイクル)は(50(mg/L)−Z(mg/L))×Vから求められる。無機炭酸量Xは、1サイクルに1回で地下水に全量供給する、また、1サイクルに2回以上に分けて供給してもよい。また、無機炭酸量Xは、2回以上に分けて供給する場合、1回あたりの供給量を均等にしてもよい、また、1サイクルの1回目の供給量を大きくして、2回目以降の供給量を少なくしてもよい。
このように、無機炭酸量Xを2回以上に分割して地下水に供給する場合、1回で全量供給する場合と比べて1回あたりの無機炭酸溶液の供給量が少なくなる。地下水に供給された無機炭酸は、地下水に供給されたオゾンガスの気泡が汚染領域100の土壌中を上昇する流れにより、汚染領域100の地下水中に拡散される。先に示したように、1回あたりの無機炭酸の供給量を小さくすることで、汚染領域100において無機炭酸濃度の局所的な上昇を抑制しながら、無機炭酸を汚染領域100の地下水中に拡散できる。これにより、汚染領域100での地下水のpHが局所的にアルカリ性に傾くことが抑制できる。
汚染領域100の地下水中の無機炭酸濃度Z(mg/L)は、1サイクルの開始前に測定し、汚染領域100に供給する無機炭酸量Xを設定する。オゾンガスと持続化体とを交互に供給する場合、オゾンガス供給を停止して持続化体を地下水に供給する。ここで、持続化体として無機炭酸を用いた場合であって、先の図4にて示したサイクルにおける具体例を説明する。図4に示す、地下水に無機炭酸(持続化体)を供給する工程(T1)の時間は、1分から205分とし、好ましくは7分から164分とする。
無機炭酸(持続化体)の供給時間が1分未満では、無機炭酸(持続化体)を地下水に供給する時間を十分確保できない。また、無機炭酸(持続化体)の供給時間が205分以上では、オゾンガスの供給を停止する時間が長くなり、地下水中の溶存オゾン濃度が低下する。その結果、汚染領域100の汚染物質を含む地下水浄化に要する時間が長くなる。また、図4に示す、地下水にオゾンガスを供給する工程(T2)の時間は、1分から7200分、望ましくは30分から4320分とする。
オゾンガスの供給時間が1分未満ではオゾン供給率が低く、地下水中に検出される溶存オゾン濃度が低くなる。オゾンガスの供給時間が7200分以上では、スパージングにより地下水中の無機炭酸(持続化体)の濃度が低下し、溶存オゾンが持続する効果が低減する。尚、図3および図4に示したようなサイクルで行う場合であっても、例えば、汚染領域100の地下水の無機炭酸濃度が20mg/L以上の場合であれば、図3および図4に示すT1の工程を実施しないことも考えられる。この場合であっても、2回目以降のサイクルにおいては、T1の工程から開始する。
これは、スパージングにより地下水中の無機炭酸(持続化体)濃度が低減するため、所定時間毎に無機炭酸(持続化体)を地下水に補充することで、地下水中の溶存オゾンを持続化するためである。図3に示す無機炭酸(持続化体)を連続的に供給する場合、図4に示す無機炭酸(持続化体)を断続的に供給する場合と比べて、単位時間あたりに供給する無機炭酸(持続化体)の量を少なく設定する。よって、無機炭酸(持続化体)を図3のように連続的あるいは図4のように断続的に供給する場合のいずれにおいても、所定時間内に供給する無機炭酸(持続化体)の供給量は同等となる。尚、持続化体として無機炭酸を用いた場合の図3および図4のサイクルに関する点は、以下に示す無機炭酸以外の持続化体の場合であっても同様であるため、その説明は適宜省略する。
次に、第二供給部3の持続化体として、1価アルコールを用いる場合について説明する。1価アルコールとしては、メタノール、エタノールあるいはブタノールのいずれかが用いられる。汚染領域100の地下水の溶存性有機体炭素(Dissolved Organic. Carbon、以下、「DOC」と称す)濃度が0.1mg/Lから5mg/Lの範囲、さらに望ましくは0.5mg/Lから2mg/Lの範囲となるよう1価アルコールを地下水に供給する。1価アルコールと溶存オゾンの自己分解に関わるOHラジカルとの反応速度定数は、108M−1・s−1から109M−1・s−1と大きい。このため、溶存オゾンの自己分解が抑制されて溶存オゾン濃度が持続できる。
1価アルコールを供給する場合、無機炭酸を供給する場合と同様に、1サイクル毎、あるいは所定時間毎に汚染領域100のDOC濃度を測定し、1価アルコールの供給量XA(L)を設定する。汚染領域100の浄化処理開始前の地下水平均DOC濃度S(mg/L)と比べて、浄化方法の期間中に地下水の平均DOC濃度が2mg/L以上増大した場合、第二供給部3の1価アルコールの供給を中断し、オゾンガスの供給のみ実施する。これにより、1価アルコールが汚染領域100に過剰供給を防止できる。
次に、第二供給部3の持続化体として、酸溶液を用いる場合について説明する。酸溶液としては、硫酸、塩酸あるいはクエン酸から選択された酸溶液を地下水に供給することで、地下水のpHをpH3からpH6の範囲に低減する。地下水のpHがpH3以下では、酸溶液の供給率が高くなり高コストとなる。また、地下水のpHがpH6以上では、溶存オゾンの自己分解速度が大きく、溶存オゾンを地下水中で持続できない。汚染領域100の地下水がpH7、水温20℃の場合、地下水のpHをpH3からpH6の範囲に低減することで、溶存オゾン自己分解速度定数が1/5程度に小さくなる。これにより、地下水に溶解した溶存オゾンの自己分解が抑制されて持続する。
酸溶液を供給する場合、上記に示した無機炭酸を供給する場合と同様に、浄化方法の1サイクル毎、あるいは所定時間毎に汚染領域100の地下水のpHを測定し、汚染領域100の地下水のpHがpH3からpH6になるよう酸溶液を地下水に供給する。尚、上記に示した炭酸ガスを地下水に供給しても、地下水のpHが低減できるため、同様の効果を奏する。
本実施の形態1においては、ガス体としてオゾンガスを地下水に供給する方法を例として示しているが、例えば、オゾンを水に溶解させた状態のオゾン水として地下水に注入してもよい。あるいは、持続体とオゾンとを混合した水溶液として地下水に注入してもよい。尚、これらのことは以下の実施の形態においても同様であるためその説明は適宜省略する。
上記のように構成された実施の形態1の浄化装置および浄化方法によれば、オゾンガスを地下水に供給するとともに、地下水中の溶存オゾンを持続させる持続化体を供給する。これにより地下水中での溶存オゾンの自己分解を抑制できる。よって、土壌中のオゾンガスが通過した位置から離れた位置にオゾン水として到達できる。その結果、汚染領域の汚染物質分解除去が進行する。
尚、上記実施の形態1では、第一配管51に機能を備えることは明示していないが、第一供給部2に接続されている第一配管51に、オゾンガスの逆流を防止する手段を備えてもよい。また、第一配管51の流路を遮断する遮断手段を設けてもよい。このように遮断手段を設ける場合、制御部4と当該遮断手段とを接続して、オゾンガスの供給を制御してもよい。また、このことは他の各配管、また、以下の実施の形態における各配管においても同様に可能であり、同様に機能を備え、同様に行うことができる。
実施の形態2.
本発明の実施の形態2においては、オゾンガスおよび持続化体に加えて、オゾンガスと異なる気体を土壌中の地下水に供給するものである。オゾンガスと異なる気体とは、当然のことながらオゾンの自己分解を促進しない気体であり、空気を用いることが考えられる。
図6は本発明の実施の形態2による浄化装置の構成を示す図である。図において、上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。井戸1には、第三供給部6が接続される。第三供給部6は、ブロワあるいはコンプレッサにて構成される。よって、第三供給部6は、ブロワあるいはコンプレッサの出力を調整すれば空気の供給量を調整できる。井戸1と第三供給部6とは、第三配管53にて接続される。第三供給部6は、井戸1にオゾンガスと異なる気体としての空気を供給する。制御部4は第三信号線83を介して第三供給部6としてのブロワあるいはコンプレッサの出力を調整して、空気の供給を制御する。
第三供給部6の噴出圧の絶対圧として、0.2MPa未満でよい場合には、ブロワあるいはコンプレッサが用いられる。また、0.2MPa以上が必要な場合には、コンプレッサが用いられる。第三供給部6としてコンプレッサが用いられる場合には、オイルフリータイプのコンプレッサ、あるいはコンプレッサの噴出箇所にオイル除去フィルタを設置する。これにより、第三供給部6の空気の供給においてオイルが除去され、地下水へのオイルの混入が防止できる。尚、本実施の形態2においては、気体として空気を用いる例を示したが、これに限られることはなく、オゾンガスと異なる気体であれば同様に行うことができる。
次に上記のように構成された実施の形態2の浄化装置による浄化方法について、図17に示すフローチャートに基づいて説明する。尚、オゾンガス、および持続化体の供給方法は、上記実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。制御部4は第三信号線83を介して第三供給部6としての例えばブロワまたはコンプレッサの出力を制御し、所望の空気の供給条件を設定する(図17のステップST7)。次に、制御部4により制御された第三供給部6は、空気を、第三配管53を介して井戸1の下部の噴出部11から汚染領域100の地下水中に供給する(第三工程としての、図17のステップST8)。次に、所定時間空気を供給すると、制御部4は第三信号線83を介して第三供給部6を制御し、空気の供給を停止する(図17のステップST9)。
本実施の形態2においては、図17に示したように、地下水にオゾンガスを供給する工程(第一工程)と、地下水に持続化体を供給する工程(第二工程)と、地下水に空気を供給する工程(第三工程)とを備えていればよく、第一工程と第二工程と第三工程の組み合わせ、およびタイミングについては様々な例が考えられる。以下、第一工程と第二工程と第三工程の組み合わせおよびタイミングの例について、図7および図8を用いて説明する。
次に、上記に示した実施の形態2の空気を用いる場合の浄化方法における、オゾンガス、持続化体、および空気の供給および停止のタイミングについて、図7および図8のタイミングチャートの例に基づいて説明する。まず、図7および図8は、本発明の実施の形態2の浄化方法の一連の動作を1サイクルとして示す。
具体的には、1サイクルは任意の数の工程Tに分割する。ここでは1サイクルを3分割した場合、それぞれT1工程、T2工程およびT3工程とし、各工程の動作においてオゾンガス、持続化体および空気の供給の有無を設定する。尚、1サイクルの分割は3個以上の任意の数に設定してよい。図7における浄化方法は、T1工程にて、地下水に持続化体を供給し(第二工程)、オゾンガスおよび空気は供給しない(停止)。次に、T2工程にて、地下水にオゾンガスと持続化体とを同時に供給し(第一工程および第二工程の同時工程)、空気は供給しない(停止)。
次に、T3工程にて、地下水にオゾンガス、持続化体および空気を同時に供給する(第一工程、第二工程、および第三工程の同時工程)。T2工程とT3工程とにおいて、第一供給部2の運転条件を一定とする場合、T3工程では、オゾンガスと空気とが混合されるためガス流量が増大する。よって、地下水に供給するオゾンガス濃度は低減する。このため、空気の混合によりガス流量が高くなる場合は、高濃度のオゾンガス、例えば濃度200g/Nm3のオゾンガスを地下水に供給することにより、地下水中の溶存オゾン濃度が持続する。また、単位時間あたりに地下水に供給するガス量が増大するため、汚染領域100の土壌圧力が大きくなる。
土壌圧力の増大にともない、スパージングしたガスの気泡が通過しにくい土壌粒子間にある地下水が土壌粒子間から排出される。排出された地下水とともに汚染物質が溶出し、これらの土壌周辺の地下水中に溶存オゾンと溶出した汚染物質とが接触することで、汚染領域100の汚染物質分解がさらに進行する。また、T3工程終了後、土壌圧力が低下することにより、気泡が通過し難い土壌、あるいは地下水が浸透しにくい土壌の粒子間に地下水が引き込まれる。土壌粒子間に引き込まれた地下水には溶存オゾンが存在しており、これらの土壌に含まれる汚染物質が、オゾンガスと接触して分解される。したがって、1サイクルを繰り返す浄化方法を行う場合、1サイクル終了後に気体あるいは液体を注入しない期間を設けてもよい。あるいは、T3工程では、空気の供給量を一定に供給してもよいし、また、所定時間毎に供給量を切り替えて運転してもよい。
このように供給量を切り替えた場合、T3工程で汚染領域100の土壌圧力の変化が大きくなり、汚染領域100のオゾンガスの気泡が通過しにくい土壌にオゾンをオゾン水として到達できる。さらに、当該T3工程終了後に、T3工程を繰り返してもよい。T3工程を繰り返す場合、2回目の空気の流量は、1回目のT3工程の空気の流量と比べて大きくしても、または、小さくしてもよい。これにより、汚染領域100の土壌圧力が変化する時間が長くなり、汚染領域100の地下水全体に溶存オゾンを到達できる。
また、図8における浄化方法は、T1工程にて、地下水に持続化体および空気を供給し(第二工程および第三工程の同時工程)、オゾンガスは供給しない(停止)。次に、T2工程にて、地下水にオゾンガスを供給し(第一工程)、持続化体および空気は供給しない(停止)。次に、T3工程にて、地下水にオゾンガスおよび空気を同時に供給し(第一工程および第三工程の同時工程)、持続化体を供給しない(停止)。T1工程では、空気と持続化体とを同時に供給する。これにより、空気の気泡の流れを用いて、持続化体を汚染領域100の地下水中に拡散できる。T2工程では、オゾンガスを地下水に供給する。T3工程では、オゾンガスと空気とを同時供給することによりガス流量が大きくなり、汚染領域100の地下水中に溶存オゾンが行き渡りやすくなる。T3工程では、上記図7にて示した場合と同様に、空気の供給量を一定に供給してもよいし、また、所定時間毎に供給量を切り替えて運転してもよい。
図7および図8に示す空気の供給工程の時間は、オゾンガスの供給工程の時間と同等とする。すなわち、空気の供給時間は、1分から7200分、望ましくは30分から4320分とする。空気の供給時間が1分未満では、汚染領域100の土壌圧力が増大する時間が短く、気泡が通過しにくい土壌にオゾンをオゾン水として到達させることできない。空気の供給時間が7200分以上では、地下水中の溶存オゾンが低い濃度で維持される時間が長くなる。その結果、地下水浄化処理の時間が長くなってしまう。
次に、図7および図8に示すT3工程において、空気の供給量を所定時間毎に切り替える場合について説明する。T3工程では、空気の供給量を0%より大きく100%までを一定速度で増大させる。あるいは、T3工程の期間中に所定時間毎に空気の流量をオゾンガスの流量に対して1.1倍から10倍、望ましくは1.5倍から5倍に変化させる。1.1倍以下では、汚染領域100の土壌圧力の変化が小さく、汚染領域100の気泡が通過し難い土壌にオゾン水を到達させることができない。
10倍以上では、ガス流量の変化が大きくなるため、耐圧仕様にする装置費用が高コストになる。T3工程において空気の流量を切り替える場合、少なくとも1回以上は、空気の流量を大きくした後、空気の流量を小さくする、あるいは空気の流量を小さくした後、空気の流量を大きくする。これにより、汚染領域100の土壌圧力が変動する期間を1サイクルに中に少なくとも1回以上設けることができる。
次に、上記のように供給される空気について説明する。まず、第三供給部6の空気の流量は、1L/minから1000L/min、望ましくは10L/minから200L/minとする。当該空気は、汚染領域100中に溶存オゾンを拡散させるために供給するものである。よって、空気の流量が1L/min未満では、空気の流量が不足して汚染領域100の地下水全体に溶存オゾンを行き渡らせることをアシストできない。空気の流量が1000L/min以上では、第三供給部6の消費エネルギーが大きくなり、高コストになる。
次に、第三供給部6の空気の噴出圧は、絶対圧として0.1MPaから1.5MPa、望ましくは0.15MPaから1MPaとする。空気圧が0.1MPa未満では、大気圧より低くなり地下水に効率よく供給できない。また、空気圧が1.5MPa以上では、消費電力が大きくなり、さらに装置が大型化し、高コストになる。空気をオゾンガスと混合して混合ガスとして地下水に供給する場合、空気の流量はオゾンガスの流量と比べて大きくする。例えば、濃度200g/Nm3のオゾンガスを地下水に供給する場合、空気と混合することによりオゾンガス濃度は低下するものの、所定時間に地下水に供給されるオゾン量は変化させなければ、地下水中の溶存オゾンを持続できる。
上記のように構成された実施の形態2の浄化装置および浄化方法によれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、空気を供給する第三供給部を備えることにより、土壌中の汚染領域の圧力の変動幅が大きくなる。これにより土壌中の汚染領域への地下水の溶存オゾンの浸透および汚染物質の排出が促進されて汚染物質分解率が向上する。
また、第三供給部として空気を用いるため、低コストとなる。
実施の形態3.
本発明の実施の形態3においては、オゾンガス、持続化体、および空気に加えて、加熱流体を土壌中の地下水に供給するものである。加熱流体としては、スチーム(水蒸気)を用いることが考えられる。
図9は本発明の実施の形態3による浄化装置の構成を示す図である。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。井戸1には、第四供給部7が接続される。井戸1と第四供給部7とは、第四配管54にて接続される。第四供給部7は、井戸1に加熱流体として水にて作成されたスチームを供給する。第四供給部7はスチーム発生器にて構成される。よって、第四供給部7は、スチーム発生器の出力を調整すればスチームの供給量を調整できる。制御部4は第四信号線84を介して第四供給部7のスチームの供給を制御する。尚、本実施の形態3においては、加熱流体としてスチームを用いる例を示したが、これに限られることはなく、加熱流体であれば他の物質であっても同様に行うことができる。
次に上記のように構成された実施の形態3の浄化装置による浄化方法について、図18に示すフローチャートに基づいて説明する。尚、オゾンガス、持続化体、および空気の供給方法は、上記実施の形態2と同様であるため、その説明を省略する。制御部4は第四信号線84を介して第四供給部7としての例えばスチーム発生器の出力を制御し、所望のスチームの供給条件を設定する(図18のステップST10)。次に、制御部4により制御された第四供給部7は、スチームを、第四配管54を介して井戸1の下部の噴出部11から汚染領域100の地下水中に供給する(第四工程としての、図18のステップST11)。次に、所定時間スチームを供給すると、制御部4は第四信号線84を介して第四供給部7を制御し、スチームの供給を停止する(図18のステップST12)。
本実施の形態3においては、図18に示したように、地下水にオゾンガスを供給する工程(第一工程)と、地下水に持続化体を供給する工程(第二工程)と、地下水に空気を供給する工程(第三工程)と、地下水にスチームを供給する工程(第四工程)とを備えていればよく、第一工程と第二工程と第三工程と第四工程との組み合わせ、およびタイミングについては様々な例が考えられる。但し、溶存オゾンは温度が高いほど自己分解が促進されるため、スチームの供給はオゾンガスの供給とは同時には行わない。以下、第一工程と第二工程と第三工程と第四工程の組み合わせおよびタイミングの例について、図10から図12を用いて説明する。
上記に示した実施の形態3のスチームを用いる場合の浄化方法における、オゾンガス、持続化体、空気、およびスチームの供給および停止のタイミングについて、図10から図12のタイミングチャートの例に基づいて説明する。まず、図10から図12は、本発明の実施の形態3の浄化方法の一連の動作を1サイクルとして示す。
具体的には、1サイクルは任意の数の工程Tに分割する。ここでは1サイクルを5分割または4分割した場合、それぞれT1工程、T2工程、T3工程、T4工程、およびT5工程とし、各工程の動作においてオゾンガス、持続化体、空気、およびスチームの供給の有無を設定する。図10における浄化方法は、T1工程にて、地下水に持続化体を供給し(第二工程)、オゾンガス、空気およびスチームは供給しない(停止)。次に、T2工程にて、地下水にオゾンガスと持続化体とを同時に供給し(第一工程および第二工程の同時工程)、空気およびスチームは供給しない(停止)。
次に、T3工程にて、地下水にオゾンガス、持続化体および空気を同時に供給し(第一工程、第二工程および第三工程の同時工程)、スチームは供給しない(停止)。次に、T4工程にて、地下水にオゾンガス、持続化体および空気を同時に供給し(第一工程、第二工程および第三工程の同時工程)、スチームは供給しない(停止)。尚、T3工程と、T4工程とは空気の流量が異なる。次に、T5工程にて、地下水にスチームを供給し(第四工程)、オゾンガス、持続化体および空気は供給しない(停止)。
また、図11における浄化方法は、T1工程にて、地下水に持続化体とスチームとを同時に供給し(第二工程および第四工程の同時工程)、オゾンガスおよび空気は供給しない(停止)。次に、T2工程にて、地下水にオゾンガスと持続化体とを同時に供給し(第一工程および第二工程の同時工程)、空気およびスチームは供給しない(停止)。次に、T3工程にて、地下水にオゾンガス、持続化体および空気を同時に供給し(第一工程、第二工程および第三工程の同時工程)、スチームは供給しない(停止)。次に、T4工程にて、地下水にオゾンガス、持続化体および空気を同時に供給し(第一工程、第二工程および第三工程の同時工程)、スチームは供給しない(停止)。尚、T3工程と、T4工程とは空気の流量が異なる。このように、T1工程にて、持続化体およびスチームを同時に供給すると、持続化体がスチームによって加熱されることにより、流体の粘度が下がり、汚染領域100の土壌中に浸透しやくなる。
また、図12における浄化方法は、T1工程にて、地下水に持続化体を供給し(第二工程)、オゾンガス、空気およびスチームは供給しない(停止)。次に、T2工程にて、地下水にオゾンガスと持続化体とを同時に供給し(第一工程および第二工程の同時工程)、空気およびスチームは供給しない(停止)。次に、T3工程にて、地下水にオゾンガス、持続化体および空気を同時に供給し(第一工程、第二工程および第三工程の同時工程)、スチームは供給しない(停止)。次に、T4工程にて、地下水にオゾンガス、持続化体および空気を同時に供給し(第一工程、第二工程および第三工程の同時工程)、スチームは供給しない(停止)。尚、T3工程と、T4工程とは空気の流量が異なる。
次に、T5工程にて、地下水に空気、持続化体およびスチームを同時に供給し(第二工程、第三工程および第四工程の同時工程)、オゾンガスは供給しない(停止)。このように、T5工程にて、空気、持続化体およびスチームを地下水に同時に供給すると、持続化体および空気がスチームによって加熱される。スチームで加熱された空気の気泡および持続化体が、汚染領域100の土壌中を上昇することで、より広い範囲の土壌を加熱および浸透できる。
図10から図12において、T3工程とT4工程との空気の流量はどちらが大きくてもよく、流量の小さい工程と比べて流量が大きい工程のガス流量が1.1倍から10倍、望ましくは1.5倍から5倍とする。流量比が1.1倍以下では、汚染領域100の土壌圧力の変化が小さく、汚染領域100の気泡が通過し難い土壌にオゾン水を到達させることができない。流量比が10倍以上では、変動幅が大きくなり過ぎてしまい、装置を耐圧仕様とする必要があり高コストとなる。
また、地下水中にスチーム、または、スチームと空気との混合した気体を供給することにより、汚染領域100の地下水の温度が上昇し、地下水の粘度が低下し、土壌中に地下水が浸透しやすくなる。また、汚染領域100の地下水が浸透しにくい土壌が加熱されることにより、これらの土壌に含まれる汚染物質が地下水中に溶出することで、地下水中の溶存オゾンと汚染物質とが接触する機会が向上する。よって、汚染領域100での汚染物質の分解率が向上する。
第四供給部7で供給するスチームと、第三供給部6から供給する空気と混合する場合、温度を20℃から150℃、望ましくは30℃から100℃とする。これらの温度が20℃以下では、一般的な地下水水温18℃と同等であるため、スチームを供給する効果が得られない。また、これらの温度が150℃以上では、配管部材の耐熱性を高くする必要があり、高コストとなる。
上記のように構成された実施の形態3の浄化装置および浄化方法によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、スチームを供給する第四供給部を備えることにより、汚染領域の地下水が浸透にしにくい土壌に含まれる汚染物質を地下水が浸透しやすい土壌に溶出できる。これにより、汚染領域の地下水が浸透にしにくい土壌中の地下水に含まれる汚染物質を分解除去できる。
また、オゾンガスの供給と、スチームの供給とを異なる時間帯に実施するため、オゾンガスの効果が低減することを防止する。
また、第四供給部としてスチームを用いるため、低コストとなる。
実施の形態4.
本発明の実施の形態4においては、オゾンガス、持続化体に加えて、吸引した土壌中のガスにおけるオゾンガス濃度を測定し、地下水へのオゾン注入率などを制御する機構を備えたものである。
図19は本発明の実施の形態4による浄化装置の構成を示す図である。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。汚染領域100の土壌中に挿入され、汚染領域100の土壌中のガスを吸引するための吸引部として吸引井戸8を備える。ここでは、汚染領域100の土壌中に形成される吸引井戸8を例に示したが、これに限られることは無く、汚染領域100の土壌中のガスを吸引するための吸引部として、例えば、汚染領域100上において井戸1周辺の地表面にカバーを設置し、吸引井戸8の代わりに汚染領域100の土壌中のガスを吸引するための吸引部としてもよい、また、これらの両方を設置する構成としてもよい。
吸引井戸8には、第五配管55が接続される。第五配管55には、気液分離部9、排ガス処理部10および吸引ブロア110が順に接続される。気液分離部9には、さらに第六配管56が接続される。第六配管56には、除湿部12、測定部としてのオゾンガスモニタ130、そして排ガス処理部10が順に接続される。オゾンガスモニタ130は第五信号線85を介して制御部4に接続され、制御部4に測定結果を送信する。吸引ブロア110は第六信号線86を介して制御部4に接続され、制御部4により制御される。具体的には、制御部4は、吸引ブロア110の吸引開始のタイミングおよび吸引ガス流量の動作を制御する。
気液分離部9は、吸引井戸8から吸引されたガスの気液を分離し、ガスのみを取り出す。除湿部12は、気液分離部9にて分離されたガスの一部、すなわち、オゾンガス濃度を測定するのに必要な量のガスを取得し、当該ガスの除湿を行う。オゾンガスモニタ130は、除湿部12にて除湿されたガス中のオゾンガス濃度を測定し、測定結果を制御部4に送信する。また、測定の終えたガスは、排ガス処理部10に排出する。
排ガス処理部10は、気液分離部9にて分離されたガスの一部、すなわち、オゾンガス濃度を測定するのに使用されなかったガス、および、測定を終えたガスを取得し、排ガス処理を行う。吸引ブロア110は、第五配管55を介して、吸引井戸8からガスを吸引させるための吸引部としてのブロアであり、さらに、排ガス処理部10にて排ガス処理されたガスを大気に放出する。制御部4は、オゾンガスモニタ130にて測定されたオゾンガス濃度に基づいて、第一供給部2、第二供給部3、第三供給部6、第四供給部7、または、吸引ブロア110の少なくともいずれか1つを制御する。
次に上記のように構成された本実施の形態4の浄化装置の浄化方法について説明する。尚、オゾンガス、持続化体、空気、およびスチームの供給方法は、上記各実施の形態と同様であるため、その説明は適宜省略する。汚染領域100の地下水に井戸1からオゾンガスが注入されると、土壌中の地下水にオゾンガスが散気される。土壌中に注入されたオゾンガスは、地下水中では気泡となって地下水中を移動し、土壌中の地下水表面に到達する。地下水表面から地上表面までの土壌中では、土壌中のガスは土壌粒子の間隙を移動する。そして、当該土壌中のガスは吸引ブロア110を用いて吸引井戸8から吸引され(吸引工程)、土壌中の地下水に注入されたガスは地上へと排出が促進される。そして、当該ガスは吸引井戸8および第五配管55を経て気液分離部9に導入される。
次に、吸引井戸8から回収された土壌中のガスには、地下水中に注入して溶解しなかったオゾンガス、および地下水中のVOCが気化して気泡内に取り込まれたVOCが含まれる。回収された土壌中のガスは、気液分離部9で地下水とガスとに分離され、地下水が除去される。次に、気液分離部9にて分離された土壌中のガスの内、オゾンガス濃度の測定に用いられないガスは、排ガス処理部10に導入される。そして、当該ガスは排ガス処理部10でオゾンおよびVOCなどが除去され、排ガス処理が行われる。そして、VOCおよびオゾンが除去され排ガス処理が行われた土壌中のガスは、吸引ブロア110を経て大気に開放される。
一方、オゾンガス濃度を測定するための土壌中のガスは、除湿部12に導入され、気液分離部9にて分離された土壌中のガスから水蒸気を除去する。次に、オゾンガスモニタ130にて除湿された土壌中のガスに含まれるオゾンガス濃度を測定する。水蒸気が除去されているためオゾンガスモニタ130での結露が防止でき、オゾンガス濃度を精度よく測定できる。オゾンガス濃度の測定では、吸引井戸8にて取得した土壌中のガスの全てを用いるのでは無く、吸引井戸8にて取得した土壌中のガスの一部のみを測定する。このようにすれば、土壌中から吸引されたガス全体を測定する場合と比べて、除湿対象となるガス量が少ないため、消費エネルギーを少なくできる。オゾンガスモニタ130にて測定されたオゾンガス濃度の結果は、第五信号線85を介して制御部4に送信される。
制御部4は、取得したオゾンガス濃度の測定結果に基づいて、オゾンガス濃度が浄化装置として予め求められている所定値となるように、第一供給部2、第二供給部3、第三供給部6、第四供給部7および吸引ブロア110のいずれかひとつ、あるいは全てに信号を送信して、土壌中の地下水に注入するオゾンガスの濃度、オゾンガスの流量、持続化体の注入量、各工程の切り替えのタイミングあるいは吸引井戸8において吸引するガス流量、すなわち吸引ブロア110を制御する。
制御部4での吸引ブロア110の具体的な制御方法について、その一例を説明する。制御部4に制御される吸引ブロア110の吸引ガス流量は、第一供給部2から供給されるオゾンガスの注入ガス流量の0.5倍〜10倍、望ましくは1倍〜5倍に設定される。吸引ガス流量を注入ガス流量と比べて大きく設定することにより、土壌中の地下水に注入したガスの地上への排出が促進される。その結果、汚染領域100でのVOC分解除去が促進される。
図20はオゾンガスモニタ130にて測定される、吸引された土壌中のガスに含まれるオゾンガス濃度の経時変化の例を模式的に示す模式図である。図に示したように、土壌中の地下水にオゾンガス注入を開始後、土壌中のガスに含まれるオゾンガス濃度は増大し、時間経過にともない安定化する。制御部4では、この土壌中のガスに含まれるオゾンガス濃度の変化に基づいて、土壌中の地下水に注入するオゾンガスの濃度、オゾンガスの流量、持続化体の注入量、各工程の切り替えのタイミングあるいは吸引井戸8において吸引するガス流量、すなわち吸引ブロア110を制御して、オゾンガスの濃度が所定値となるように制御する。
また、吸引ブロア110を制御して、吸引井戸8から吸引するガス流量を変動させることにより、吸引井戸8の周辺の土壌圧力を変動させてもよい。吸引井戸8の周辺の土壌圧力を変動させれば、オゾンガスあるいはオゾン水が浸透しにくい箇所のVOCとオゾンとの接触する機会を増大でき、VOC分解除去の可能性が増大する。
上記のように構成された実施の形態4の浄化装置および浄化方法によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、VOC分解に必要以上のオゾンが土壌中の地下水に注入されることを防止でき、ランニングコストを少なくできる。
上記のように構成された実施の形態4の浄化装置および浄化方法によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、土壌中からガスを吸引する吸引部と、吸引部にて吸引されたガスからオゾン化酸素ガスのオゾンガス濃度を測定する測定部とを備え、制御部は、測定部にて測定されたオゾンガス濃度に基づいて、第一供給部、第二供給部、第三供給部、第四供給部、または吸引部の少なくともいずれか1つを制御するため、浄化においてオゾンガスの供給量が適切に制御できる。
尚、上記実施の形態4の浄化装置の構成は図19に示した場合以外であってもよく、例えば、第六配管56の一方と他方とは、気液分離部9から排ガス処理部10の間の第五配管55に分岐して設置してもよい。あるいは、除湿部12、オゾンガスモニタ130および第六配管56の一方および他方を、気液分離部9に接続し、気液分離部9内部のオゾンガス濃度を測定する構成としてもよい。その場合、第六配管56には、除湿部12にガスを取り込むための吸引ポンプを設置する。但し、オゾンガスモニタ130がガス自吸式の場合、吸引ポンプを設置しなくてもよい。
また、上記各実施の形態においては、1サイクルの浄化方法を中心に説明したが、1サイクルを繰り返して浄化方法を行う場合、1サイクルの終了後に、各工程の供給の全てを停止する時間帯を設定し、その時間の後に再び、1サイクルを実施して浄化方法を行ってもよい。また、上記各実施の形態においては、1サイクルの浄化方法中において、いずれかの工程が実施されている浄化方法を中心に説明したが、これに限られることは無く、1サイクル中において、各工程の供給の全てが停止する時間帯を設定し、その後に各工程を適宜行うことも可能である。
このように、土壌中への供給の全てを停止すれば、土壌圧力が小さくなる。よって、大きな土壌圧力により狭くなっていた土壌間隙が広くなる。これにともない、オゾンと接触した地下水と、オゾンと接触していない地下水とが混合され、ガスパージングしにくい箇所、あるいは、オゾン水が浸透しにくい箇所にあるVOCとオゾンとが接触でき、VOC分解除去の可能性が増大する。
尚、上記実施の形態1から実施の形態4において示した浄化装置は、1例でありこれら構成に限られることはなく、他の構成の浄化装置であっても、第一工程から第四工程、および吸引工程などを適宜行うことができる浄化装置であれば、同様な浄化方法を行うことができ、同様の効果を奏することができる。また、1つの制御部4にて、第一供給部2、第二供給部3、第三供給部6、第四供給部7および吸引ブロア110の全てを制御する例を示したが、これに限られることは無く、第一供給部2、第二供給部3、第三供給部6、第四供給部7および吸引ブロア110のそれぞれに制御部を備えても良い。但し、第一供給部2、第二供給部3、第三供給部6、第四供給部7および吸引ブロア110間の上記各実施の形態の浄化方法が可能なようにそれぞれ関連づけて制御される。
次に、上記実施の形態1から実施の形態4の浄化装置および浄化方法における持続化体および上記実施の形態2の空気の供給における発明の効果を検証する。図13に示すラボスケールの浄化装置を用いて、オゾンガス供給による汚染物質としてのVOC処理を行った実験結果に基づいて説明する。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付けて説明を省略する。汚染領域100として、実験で調整した模擬汚染地下水を含んだ砂16が封入されるラボスケールの反応槽13を用いる。
反応槽13の下部に供給孔14が形成され、各配管51、52、53を介して第一供給部2からオゾンガス、第二供給部3から持続化体、第三供給部6から空気が供給される。反応槽13の上部には排出孔15が形成され、排出管21を介して第一供給部2にオゾンガスが排出される。排出されたオゾンガスは、第一供給部2の排オゾンガス分解塔で酸素ガスに戻る。反応槽13には、異なる位置に複数の採水位置171、172、173、174、175を備える。
実施例1.
実施例1と比較例1との実験には、純水に濃度が10mg/Lになるよう汚染物質としてのVOCを添加した模擬汚染地下水を用いた。図14に図13に示すラボスケールの反応槽13を用いた実験の条件を示す。模擬汚染地下水に無機炭酸として炭酸水素ナトリウム(持続化体)を添加した場合を実施例1とし、添加しない場合を比較例1として示す。そして、処理時間終了後、反応槽13内の水を全て回収して、オゾンガス供給によるVOC除去効果を比較した。当該結果は、無機炭酸を添加した実施例1のVOC除去率は98%であった。これに対し、比較例1のVOC除去率は70%であった。無機炭酸を模擬汚染地下水に添加することにより、オゾンガスのみにて処理した場合より、無機炭酸を添加した場合のほうがVOC除去率の向上が確認された。尚、汚染物質としてVOCを用いた例を示したが、他の汚染物質でも同様の効果を奏することは推測できる。また、このことは以下の実施例でも同様である。
実施例2.
実施例2と比較例2との実験には、河川水に濃度が5mg/LになるようVOCを添加した模擬汚染地下水を用いた。図15に図13に示すラボスケールの反応槽13を用いた実験の条件を示す。実施例2ではオゾンガスと空気との混合ガスを、比較例2ではオゾンガスのみを模擬汚染地下水に供給し、模擬汚染地下水中の溶存オゾン濃度を測定した。反応槽13の採水位置171、172、173、174、175から模擬汚染地下水を採水した。当該結果は、図15の実施例2のように、反応槽13にオゾンガスに空気を混合させて60分間供給したときの処理水の溶存オゾン濃度は、採水位置174、175ではそれぞれ0.7mg/L、0.3mg/Lであった。
また比較例2のように、反応槽13にオゾンガスを60分間供給したときの処理水の溶存オゾン濃度は、採水位置174、175でそれぞれ1.1mg/L、0.0mg/Lであった。オゾンガスに空気を混合した空気を模擬汚染地下水に供給すると、供給孔14から離れた位置でも溶存オゾンが検出され、溶存オゾンの検出可能範囲が拡大した。
実施例3.
次に、上記実施の形態3の浄化装置および浄化方法におけるスチームの供給における発明の効果を検証する。実施例3および比較例3の実験には、150mLのガラス容器に砂50mLと純水70mLとを充填し、シリンジを用いてガラス容器内の砂底にVOCを2mg供給した。このガラス容器を比較例3として水温18℃、および、実施例3としてスチームを供給した状態に相当する80℃で、所定時間保管し、ガラス容器内の水のVOC濃度を測定した。当該結果は、比較例3の水温18℃、または、実施例3の水温80℃では、単位時間あたりのVOC溶出速度はそれぞれ0.5μg/hr、または、98μg/hrであり、地下水を加熱することで土壌周辺にある地下水にVOCが溶出した。
尚、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。