JP7137147B2 - β-リン酸硫酸ジルコニウム粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、リン酸ジルコニウム系の化合物は負のCTEを有する物質として知られているおり、これをフィラーとして利用することが考えられる。
例えば、非特許文献1にはZrOCl2・8H2O、NH4H2PO4、H2SO4を蒸留水に溶解した溶液を90分撹拌した後、テフロン(登録商標)製の容器を用いて110~180℃、12~96時間の条件で水熱処理し、得られた沈殿を400~900℃、4時間の条件で焼成してα-Zr2SP2O12粉末が得られることが開示されている。
非特許文献2にはZrOCl2・8H2O、NH4H2PO4、H2SO4を蒸留水に溶解した溶液を90分撹拌した後、テフロン(登録商標)製の容器を用いて180℃、12時間の条件で水熱処理し、得られた沈殿を500~900℃、4時間の条件で焼成してα-Zr2SP2O12粉末が得られることが開示されている。さらに得られた粉末をエポキシ樹脂液に混合し、硬化させて、Zr2SP2O12粉/エポキシ複合材を作製できることが開示されている。
また、これらリン酸硫酸ジルコニウム中の硫酸根が、粒子中に残存すると酸性度が高くなり、樹脂配合した際に樹脂を劣化させる懸念があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、非塩化物の水溶性原料を用い、生産性に優れた製造方法により、S原子含有量が少なく、コンポジットレジンのCTEを効率的に低減させるのに有利なβ-Zr2SP2O12相を高純度に有するβ-リン酸硫酸ジルコニウム粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。
第3観点として、平均粒径(D50)が0.1~100μmであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の低熱膨張性粒子に関する。
第4観点として、水溶性ジルコニウム塩、水溶性硫酸塩及び水溶性リン酸塩の混合水溶液を調製する第1工程と、前記混合水溶液を乾燥する第2工程と、750℃以上1000℃以下の温度で焼成する第3工程とを含み、前記第3工程では、前記混合物中のジルコニウム原子:硫黄原子:リン原子のモル比(Zr:S:P)が2:x:y(x≧0.25、1.5≦y≦2.5)にある中で前記焼成すること、を特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の低熱膨張性粒子の製造方法に関する。
本発明のβ-リン酸硫酸ジルコニウム粒子を主成分として含む低熱膨張性粒子は、ジルコニウム原子、硫黄原子、リン原子のモル比(Zr:S:P)が以下の範囲で含有することができる。
ジルコニウム原子2モルに対するリン原子の含有は、1.2~2.0、又は1.2~1.6の範囲で含むことができる。リン原子の含有量が1.2モルより低いとβ-リン酸硫酸ジルコニウムの構造を保つことが難しくなる。また、リン原子の含有量が2.0モルより高いとβ-リン酸硫酸ジルコニウム粒子中にリン酸根が残存して酸性度が高くなり、樹脂に配合した場合に樹脂を劣化させる原因となる。
Zr2P2O9相の(011)面に帰属するX線回折ピーク強度Iαと、β-リン酸硫酸ジルコニウム相の(022)面に帰属するX線回折ピーク強度Iβと、の比[Iβ/Iα + Iβ]が0.1以上では、該粒子を樹脂に配合したコンポジットレジンのCTEを低減させる効果が不十分になるおそれがある。
比Iα/Iα + Iβは、その値が小さいほどβ-リン酸硫酸ジルコニウム相の割合が高いことを示す指標となるものである。なお、比Iβ/Iα + Iβを算出するための装置や手法の一例は、実施例の通りである。
水溶性ジルコニウム塩としては、例えば、25℃の水に1質量%以上溶解するジルコニウム塩であり、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸ジルコニル、及び硝酸ジルコニルが挙げられる。これらは、単独で用いることができるし、相溶性に問題がない範囲で2種以上を混合して用いることもできる。ただ、混合水溶液の安定性の観点からは、アンモニウム塩(炭酸ジルコニウムアンモニウム)を単独で用いることが好ましい。アンモニウム塩であれば、他の強酸塩と比べ、混合水溶液への溶解性も確保される。塩化ジルコニルを用いた場合、焼成後にも塩化物の残存の原因になるので好ましくない。
言い換えれば、水溶性ジルコニウム塩、水溶性硫酸塩及び水溶性リン酸塩を混合した該混合時のモル比の如何に関わらず、焼成前の時点で、上記のモル比が実現されるようにする。
エポキシ樹脂は、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、シロキサン系エポキシ樹脂などが挙げられる。また、エポキシ等量は粘度調整の観点から、80~250g/eqであることが好ましい。市販品として、DIC製ビスフェノールF型エポキシ樹脂(品名:EXA-830LVP、EXA-830CRP)、三菱化学製ビスフェノールF型エポキシ樹脂(グレード:jER-806)、新日鐵化学製ビスフェノールF型エポキシ樹脂(品名:YDF-8170C、YDF-870GS)、三菱化学製アミノフェノール型エポキシ樹脂(グレード:jER-630、jER-630LSD)、DIC製ナフタレン型エポキシ樹脂(品名:HP-4032D)、モメンティブ・パフォーマンス製シロキサン系エポキシ樹脂(品名:TSL-9906)、新日鐵化学株式会社製1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(品名:ZX-1658GS)等が挙げられる。なお、これらは単独で用いても2種以上を併用して良い。
酸無水物系硬化剤の具体例としては、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、ドデセニル無水コハク酸、脂肪族二塩基酸ポリ無水物、クロレンド酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロフタル酸無水物、アルキル化テトラヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、グルタル酸無水物等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂組成物の全成分の合計100質量部に対して、β-リン酸硫酸ジルコニウムを主成分として含む低熱膨張性粒子の含有量30~90質量部、又は40~70質量部である。低熱膨張性粒子の含有量が30質量部未満の場合、エポキシ樹脂組成物の線熱膨張係数を低減することができず、ボンディングの破壊を引き起こす可能性がある。また、β-リン酸硫酸ジルコニウムの含有量が90質量部より大きい場合、エポキシ樹脂組成物の粘度が増加し、ハンドリング性が悪化する。
上記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、エチレングリコール等のグリコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及びN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
マルバーン社製のレーザー回折式粒度分布測定装置マスターサイザー2000を用いて、分散粒子径d50(レーザー回折法による分散粒子径d50)を測定した。測定にあたり、β-リン酸硫酸ジルコニウム乾燥粉末を水散媒に添加し、装置内で循環させながら超音波を1分間照射した。屈折率を1.70、吸収係数(虚数部)を0として算出される平均粒子径を採用した。
(X線回折分析)
リガク社製X線回折装置MiniFlex600を用いて、X線源;Cu、電圧;40kV、電流;15mAで、ステップ幅;0.02°、スキャン速度;10°/分、発散角スリット(DS);0.625°、散乱スリット(SS);8.0mm、受光スリット(RS);OPEN、入射ソーラースリット;2.5°、受光ソーラースリット;2.5°の条件で測定し、X線回折データを得た。
各試料のX線回折データを、解析ソフトPDXL-2を用いて、自動設定によるバックグラウンド処理を実施し、X線回折強度を測定した。2θ=28.4°近傍に出現するβ-Zr2SP2O12相の第二最強線(022)面の回折ピークの強度(単位はcounts)を採用した。
また、Zr2SP2O12相とZr2P2O9相との混相の場合、2θ=16.1°付近に出現するZr2P2O9相の(011)面の回折ピーク強度Iαと、2θ=28.4°付近に出現するβ-Zr2SP2O12相の最強線(022)面の回折ピーク強度Iβと、の比Iβ/Iα + Iβを算出した。
各試料のX線回折データを、解析ソフトPDXL-2を用いて、自動設定によるバックグラウンド処理を実施し、シェラーの式に基づいて結晶子径を算出した。(022)面に垂直方向の結晶子径を採用した。
リガク社製蛍光X線分析装置Supermini200を用いて、FP法による粒子の組成分析を行った。各元素の含有量は酸化物(ZrO2、SO3、P2O5)に換算し合計が100質量%になるよう算出した。その後、ジルコニウム原子、硫黄原子、リン原子のモル比に換算した。
アントンパール社のレオメーター「MCR302」を使用し、熱硬化前のエポキシ樹脂組成物の粘度を測定した。測定治具としてコーンプレート型のCP25-2を使用し、温度25℃、せん断速度100s-1における粘度を採用した。
TAインスツルメント社の熱機械分析装置「TMA Q400」を使用した。エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させ、5mm角×厚み3mmの直方体に成形した硬化物について、室温から毎分5℃で昇温し、厚み方向の試料長変化(硬化物の長さ変化)から線熱膨張係数を算出した。なお、30~70℃における線熱膨張係数の平均値をCTE1とし、170~200℃における線熱膨張係数の平均値をCTE2とした。
TAインスツルメント社の動的粘弾性測定装置「DMA Q800」を使用した。エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させ、幅10mm×長さ60mm×厚み3mmの直方体に成形した硬化物について、30℃における弾性率を測定した。
熱機械分析(TMA法)では、試料長変化の変曲点に相当する温度をガラス転移温度とした。
炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液(日本軽金属社製、製品名;ベイコート20、酸化ジルコニウム濃度19.6質量%相当)377.1g(Zrとして0.60mol)を純水815.1gで希釈した水溶液に、リン酸水素二アンモニウム79.23g(Pとして0.60mol)、硫酸アンモニウム39.6g(Sとして0.30mol)、純水1500gとを添加し、混合水溶液を調製した。調製した混合水溶液のpHは9.2、電気伝導度は44.2mS/cmであった。
炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液(日本軽金属社製、製品名;ベイコート20、酸化ジルコニウム濃度19.6質量%相当)377.1g(Zrとして0.60mol)を純水717.8gで希釈した水溶液に、リン酸水素二アンモニウム79.23g(Pとして0.60mol)、96%硫酸61.3g(Sとして0.60mol)、27%アンモニア水75.6g、純水1500gとを添加し、混合水溶液を調製した。調製した混合水溶液のpHは9.3、電気伝導度は53.7mS/cmであった。
本焼成を900℃、4時間に変更した以外は実施例1と同様に行った。得られた粉末をX線回折分析により同定したところ、生成相はβ-Zr2SP2O12(PDF No.01-084-1427)に帰属される単相からなり、2θ=28.4°付近に出現する(022)面の回折ピークの強度Iβは2541counts、算出される結晶子径は545Åであった。レーザー回折法による分散粒子径D50は5.32μmであった。また、蛍光X線による組成分析では、ジルコニウム原子、硫黄原子、リン原子のモル比(Zr:S:P)は2.0:0.16:1.5であった。
本焼成を900℃、4時間に変更した以外は実施例2と同様に行った。得られた粉末をX線回折分析により同定したところ、生成相はβ-Zr2SP2O12(PDF No.01-084-1427)に帰属される単相からなり、2θ=28.4°付近に出現する(022)面の回折ピークの強度Iβは1756counts、算出される結晶子径は418Åであった。レーザー回折法による分散粒子径D50は8.87μmであった。また、蛍光X線による組成分析では、ジルコニウム原子、硫黄原子、リン原子のモル比(Zr:S:P)は2.0:0.11:1.4であった。
炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液(日本軽金属社製、製品名;ベイコート20、酸化ジルコニウム濃度19.6質量%相当)377.1g(Zrとして0.60mol)を純水820.5gで希釈した水溶液に、リン酸水素二アンモニウム79.23g(Pとして0.60mol)、96%硫酸15.3g(Sとして0.15mol)、27%アンモニア水18.9g、純水1500gとを添加し、混合水溶液を調製した。調製した混合水溶液のpHは9.3、電気伝導度は53.7mS/cmであった。
炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液(日本軽金属社製、製品名;ベイコート20、酸化ジルコニウム濃度19.6質量%相当)377.1g(Zrとして0.60mol)を純水837.6gで希釈した水溶液に、リン酸水素二アンモニウム79.23g(Pとして0.60mol)、96%硫酸7.65g(Sとして0.075mol)、27%アンモニア水9.45g、純水1500gとを添加し、混合水溶液を調製した。調製した混合水溶液のpHは9.3、電気伝導度は53.7mS/cmであった。
炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液(日本軽金属社製、製品名;ベイコート20、酸化ジルコニウム濃度19.6質量%相当)377.1g(Zrとして0.60mol)を純水837.6gで希釈した水溶液に、リン酸水素二アンモニウム79.23g(Pとして0.60mol)、96%硫酸3.83g(Sとして0.0375mol)、27%アンモニア水4.72g、純水1500gとを添加し、混合水溶液を調製した。調製した混合水溶液のpHは9.3、電気伝導度は40.7mS/cmであった。
この混合水溶液をスプレードライヤー(パルビスミニスプレーGB210-A型、ヤマト科学社製)を使用して、入口温度180℃、噴霧圧0.15MPa、風量0.55m3/分、混合水溶液の送液速度400g/時の条件で乾燥させ、乾燥粉を得た。このときの出口温度は70±5℃であった。得られた乾燥粉高純度アルミナ製匣鉢に入れ、電気炉を使用して大気中において400℃で4時間の仮焼成した後、900℃で4時間の本焼成することにより焼成粉末を得た。
得られた粉末をX線回折分析により同定したところ、β-Zr2SP2O12(PDF No.01-084-1427)およびZr2P2O9(PDF No.01-076-4744)に帰属される回折が観測された。2θ=28.4°付近に出現するβ-Zr2SP2O12相の(022)面の回折ピークの強度Iβは1666counts、算出される結晶子径は518Åであった。また、2θ=16.1°付近に出現するZr2P2O9相の(011)面の回折ピークの強度Iαは253counts、算出される結晶子径は459Åであり、Iα/Iα+Iβは0.13であった。レーザー回折法による分散粒子径D50は3.99μmであった。また、蛍光X線による組成分析では、ジルコニウム原子、硫黄原子、リン原子のモル比(Zr:S:P)は2.0:0.03:1.5であった。
本焼成を1000℃、4時間に変更した以外は実施例1と同様に行った。得られた粉末をX線回折分析により同定したところ、β-Zr2SP2O12(PDF No.01-084-1427)およびZr2P2O9(PDF No.01-076-4744)に帰属される回折が観測された。2θ=28.4°付近に出現するβ-Zr2SP2O12相の(022)面の回折ピークの強度Iβは2180counts、算出される結晶子径は576Åであった。また、2θ=16.1°付近に出現するZr2P2O9相の(011)面の回折ピークの強度Iαは1202counts、算出される結晶子径は421Åであり、Iα/Iα+Iβは0.36であった。レーザー回折法による分散粒子径D50は8.50μmであった。また、蛍光X線による組成分析では、ジルコニウム原子、硫黄原子、リン原子のモル比(Zr:S:P)は2.0:0.12:1.5であった。
炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液(日本軽金属社製、製品名;ベイコート20、酸化ジルコニウム濃度19.6質量%相当)377.1g(Zrとして0.60mol)を純水854.7gで希釈した水溶液に、リン酸水素二アンモニウム79.23g(Pとして0.60mol)、純水1500gとを添加し、混合水溶液を調製した。調製した混合水溶液のpHは9.2、電気伝導度は44.2mS/cmであった。
この混合水溶液をスプレードライヤー(パルビスミニスプレーGB210-A型、ヤマト科学社製)を使用して、入口温度180℃、噴霧圧0.15MPa、風量0.55m3/分、混合水溶液の送液速度400g/時の条件で乾燥させ、乾燥粉を得た。このときの出口温度は70±5℃であった。得られた乾燥粉高純度アルミナ製匣鉢に入れ、電気炉を使用して大気中において400℃で4時間の仮焼成した後、900℃で4時間の本焼成することにより焼成粉末を得た。
本焼成を600℃、4時間に変更した以外は実施例1と同様に行った。得られた粉末をX線回折分析により同定したところ、非晶質であり、β-Zr2SP2O12(PDF No.01-084-1427)に帰属される回折は観測されなかった。レーザー回折法による分散粒子径D50は5.11μmであった。また、蛍光X線による組成分析では、ジルコニウム原子、硫黄原子、リン原子のモル比(Zr:S:P)は2.0:0.36:1.6であった。
本焼成を700℃、24時間に変更した以外は実施例1と同様に行った。得られた粉末をX線回折分析により同定したところ、生成相はβ-Zr2SP2O12(PDF No.01-084-1427)に帰属される単相からなり、2θ=28.4°付近に出現する(022)面の回折ピークの強度Iβは78countsであり、非常に結晶性が低かった。レーザー回折法による分散粒子径D50は4.78μmであった。また、蛍光X線による組成分析では、ジルコニウム原子、硫黄原子、リン原子のモル比(Zr:S:P)は2.0:0.192:1.5であった。
実施例1~8、比較例1~3の低熱膨張性粒子の製造における原料の仕込み組成、焼成条件、及び生成物の結晶相を表1に示す。なお、表中のβ-ZSPはβ-リン酸硫酸ジルコニウム相を表す。また、実施例1~8、比較例1~3にて得られた低熱膨張性粒子の回折ピーク強度比(Iα/Iα+Iβ)、分散粒子径(D50[μm])、原子モル比(Zr:S:P)を表2に示す。
表1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
仕込み組成
Zr[mol] S[mol] P[mol] 焼成条件 結晶相
実施例1 0.6 0.3 0.6 800℃4時間 β-ZSP
実施例2 0.6 0.6 0.6 800℃4時間 β-ZSP
実施例3 0.6 0.3 0.6 900℃4時間 β-ZSP
実施例4 0.6 0.6 0.6 900℃4時間 β-ZSP
実施例5 0.6 0.15 0.6 900℃4時間 β-ZSP
実施例6 0.6 0.075 0.6 900℃4時間 β-ZSP
実施例7 0.6 0.0375 0.6 900℃4時間 β-ZSP、
Zr2P2O9
実施例8 0.6 0.3 0.6 1000℃4時間 β-ZSP、
Zr2P2O9
比較例1 0.6 0 0.6 900℃4時間 非晶質
比較例2 0.6 0.3 0.6 600℃4時間 非晶質
比較例3 0.6 0.3 0.6 700℃24時間 β-ZSP
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
表2
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Iα/Iα+Iβ D50[μm] 原子モル比(Zr:S:P)
実施例1 0.01未満 5.02 2.0:0.22:1.6
実施例2 0.01未満 9.05 2.0:0.13:1.3
実施例3 0.01未満 5.32 2.0:0.16:1.5
実施例4 0.01未満 8.87 2.0:0.11:1.4
実施例5 0.01未満 5.25 2.0:0.10:1.4
実施例6 0.01未満 3.42 2.0:0.06:1.4
実施例7 0.1 3.99 2.0:0.03:1.5
実施例8 0.36 7.51 2.0:0.12:1.5
比較例1 - - -
比較例2 - 5.11 2.0:0.36:1.6
比較例3 0.01未満 4.78 2.0:0.19:1.5
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(A)ビスフェノールF型エポキシ樹脂、品名:EXA-830CRP、DIC社製、エポキシ当量159
(B)ジエチルトルエンジアミン、品名:エタキュア100プラス、アルベマール日本株式会社製
また、評価例4で用いたβ-ユークリプタイト微粒子は(1)~(6)の手順で製造した。
(1):コロイダルシリカ(スノーテックス(登録商標)OXS、日産化学工業社製、シリカ濃度10.5質量%、透過型電子顕微鏡観察による一次粒子径5nm)572.2g(SiO2 1モル)に、シュウ酸アルミニウム水溶液1019.6g(Al2O3 0.5モル)及びシュウ酸リチウム水溶液924.1g(Li2O 0.5モル)を添加し、室温下で10分間撹拌して、混合液を得た。得られた混合液の比重は1.068、pHは2.0、電気伝導度は22.3mS/cmであった。
(2):得られた乾燥粉300gをアルミナ坩堝に入れ、卓上電気炉を使用して大気中で850℃の温度で5時間焼成することにより、白色粉末103gを得た。得られた白色粉末をX線回折分析により同定したところ、β-ユークリプタイト単相であり、2θ=25°近傍に出現する最強線(102)面の回折ピーク強度は28054、結晶子径は52nmであった。窒素吸着法による一次粒子径は2.72μm、レーザー回折法による分散粒子径D50は11.2μmであった。
(4):次いで、(3)で回収したスラリーをナスフラスコに入れて、ロータリーエバポレーターを用いて10Torrで揮発分がなくなるまで乾燥して乾燥粉を得た。この乾燥粉をX線回折分析により同定したところ、β-ユークリプタイト単相であり、2θ=25°近傍に出現する最強線(102)面の回折ピーク強度は15361、結晶子径は40nmであった。窒素吸着法による一次粒子径は0.20μmであり、レーザー回折法による分散粒子径D50は0.39μmであった。
(6):次に、上記の(5)で得られた焼成粉を、アイシンナノテクノロジーズ社のナノジェットマイザーNJ-50を用いて、乾式粉砕し、レーザー回折法による分散粒子径d50が0.5μmのβ-ユークリプタイト微粒子を得た。
EXA-830CRP 18.0g、エタキュア100プラス 5.04gを自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(V-mini300、EME社製)で6分間混合し、実施例1のβ-リン酸硫酸ジルコニウム粒子 23.04gを加えて三本ロールミル(EXAKT M-50I)を用いて混練し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサーで6分間混合を行い、液状エポキシ樹脂組成物を調製した。フィラーの配合量は液状エポキシ樹脂組成物中の約30体積%に相当する。得られた液状エポキシ樹脂組成物を、予め離型剤を塗布したガラス板で作製した型に注型し、120℃で2時間、165℃で5時間、185℃で2時間の加熱を行い、熱硬化させた。硬化物は適切なサイズに切出し、各種測定を行った。
[評価例2]
実施例2のβ-リン酸硫酸ジルコニウム粒子 23.04gを用いた以外は評価例1と同様に行った。
[評価例3]
実施例4のβ-リン酸硫酸ジルコニウム粒子 23.04gを用いた以外は評価例1と同様に行った。
EXA-830CRP 18.0g、エタキュア100プラス 5.04gを自公転式真空撹拌脱泡ミキサー(V-mini300、EME社製)で6分間混合し、参考例に従い作製したβ-ユークリプタイト 23.04gを加えて三本ロールミル(EXAKT M-50I)を用いて混練し、自公転式真空撹拌脱泡ミキサーで6分間混合を行い、液状エポキシ樹脂組成物を調製した。フィラーの配合量は液状エポキシ樹脂組成物中の約34体積%に相当する。得られた液状エポキシ樹脂組成物を、予め離型剤を塗布したガラス板で作製した型に注型し、120℃で2時間、165℃で5時間、185℃で2時間の加熱を行い、熱硬化させた。硬化物は適切なサイズに切出し、各種測定を行った。
表3
―――――――――――――――――――――――――――
使用フィラー 組成物物性
種類 添加量 粘度
[vol%] [Pa・s]
評価例1 実施例1 30 11.8
評価例2 実施例2 30 28.5
評価例3 実施例4 30 28.4
評価例4 β-LAS 34 76.7
――――――――――――――――――――――――――――
表4
――――――――――――――――――――――――――――――――
硬化物物性
弾性率 Tg CTE1 CTE2
[MPa] [℃] [ppm/K] [ppm/K]
評価例1 4882 155 40 122
評価例2 5020 149 40 125
評価例3 5113 152 39 121
評価例4 5615 154 40 127
―――――――――――――――――――――――――――――――――
Claims (12)
- ジルコニウム原子、硫黄原子、リン原子のモル比(Zr:S:P)が2:0.03~0.35:1.2~2.0であるβ-リン酸硫酸ジルコニウムを主成分として含むことを特徴とする低熱膨張性粒子。
- Zr2P2O9相の(011)面に帰属するX線回折ピーク強度Iαと、β-リン酸硫酸ジルコニウム相の(022)面に帰属するX線回折ピーク強度Iβと、の比[Iα/Iα + Iβ]が0.1未満であることを特徴とする請求項1に記載の低熱膨張性粒子。
- 平均粒径(D50)が0.1~100μmであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の低熱膨張性粒子。
- 水溶性ジルコニウム塩、水溶性硫酸塩及び水溶性リン酸塩の混合水溶液を調製する第1工程と、前記混合水溶液を乾燥する第2工程と、750℃以上1000℃以下の温度で焼成する第3工程とを含み、前記第3工程では、前記混合物中のジルコニウム原子:硫黄原子:リン原子のモル比(Zr:S:P)が2:x:y(x≧0.25、1.5≦y≦2.5)にある中で前記焼成すること、を特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の低熱膨張性粒子の製造方法。
- 前記水溶性ジルコニウム塩として、ジルコニウムのアンモニウム塩を用いることを特徴とする請求項4に記載の低熱膨張性粒子の製造方法。
- 前記水溶性硫酸塩として、硫酸のアンモニウム塩を用いることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の低熱膨張性粒子の製造方法。
- 前記水溶性リン酸塩として、リン酸のアンモニウム塩を用いることを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の低熱膨張性粒子の製造方法。
- 前記第2工程で、前記モル比(Zr:S:P)が2:x:y(x≧0.25、1.5≦y≦2.5)である水溶液を、50℃以上350℃未満で噴霧乾燥する第1手法、凍結乾燥する第2手法、350℃以上1000℃未満で噴霧熱分解する第3手法、を用いることを特徴とする請求項4~7のいずれか一項に記載の低熱膨張性粒子の製造方法。
- 前記第3工程後に、さらに粉砕する第4工程を行うことを特徴とする請求項4~8のいずれか一項に記載の低熱膨張性粒子の製造方法。
- 前記第4工程後に、さらに焼成する第5工程を行うことを特徴とする請求項9に記載の低熱膨張性粒子の製造方法。
- エポキシ樹脂と、硬化剤と、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の低熱膨張性粒子とを含むことを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- エポキシ樹脂組成物の全成分の合計100質量部に対して、前記低熱膨張性粒子が30~90質量部であることを特徴とする請求項11に記載のエポキシ樹脂組成物。
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