引用する全ての特許文献および非特許文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
別段の開示がなされていなければ、本明細書で使用される用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、1つ以上(すなわち少なくとも1つ)の参照されるものを包含するものとする。
存在する場合、他に特に記載されていない限り、全ての範囲は、包括的かつ結合可能である。例えば、「1~5」と記載されている場合、記載範囲は、「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2および4~5」、「1~3および5」等の範囲を含むと解釈されたい。
用語「α-グルカン」、「α-グルカンポリマー」等は、本明細書では互換可能に使用される。α-グルカンは、α-グリコシド結合により互いに連結されるグルコースモノマー単位を含むポリマーである。典型的な実施形態では、本明細書のα-グルカンは、少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のα-グリコシド結合を含む。本明細書のα-グルカンポリマーの例としては、α-1,3-グルカンおよびデキストランが挙げられる。
用語「ポリα-1,3-グルカン」、「α-1,3-グルカン」、「α-1,3-グルカンポリマー」などは、本明細書において互換的に使用される。α-1,3-グルカンは、グリコシド結合により互いに連結されるグルコースモノマー単位を含むポリマーであり、少なくとも約50%のグリコシド結合がα-1,3である。所定の実施形態におけるα-1,3-グルカンは、少なくとも90%または95%のα-1,3グリコシド結合を含む。本明細書のα-1,3-グルカンにおける他の結合のほとんどまたは全ては、通常、α-1,6であるが、一部の結合は、α-1,2および/またはα-1,4でもあり得る。
本明細書の用語「デキストラン」は、少なくとも50%(最大100%)のα-1,6グリコシド結合(最大49%のα-1,3グリコシド結合、その一部は、分岐点で起こり得る)を含む水溶性α-グルカンを指す。スクロースからデキストランを合成することができるグルコシルトランスフェラーゼは、任意選択的に、「デキストランスクラーゼ」(EC2.4.1.5)と記載される場合もある。
用語「グリコシド結合(glycosidic linkage)」、「グリコシド結合(glycosidic bond)」、「結合」などは、本明細書において互換可能に使用され、炭水化物(糖)分子を別の炭水化物などの別の基に連結する共有結合を指す。本明細書において使用される用語「α-1,3-グリコシド結合」は、隣接するα-D-グルコース環の1位および3位の炭素を介してα-D-グルコース分子を相互に連結する共有結合の種類を指す。本明細書において使用される用語「α-1,6-グリコシド結合」は、隣接するα-D-グルコース環の1位および6位の炭素を介してα-D-グルコース分子を相互に連結する共有結合を指す。本明細書におけるグルカンポリマーのグリコシド結合は、「グルコシド結合」とも呼ぶことができる。本明細書では、「α-D-グルコース」は、「グルコース」と呼ばれることになる。
本明細書のα-グルカンのグリコシド結合プロファイルは、当該技術分野で知られる任意の方法を使用して決定することができる。例えば、結合プロファイルは、核磁気共鳴(NMR)分光法を使用する方法(例えば、13C NMRまたは1H NMR)により決定することができる。使用することができるこれらの方法および他の方法は、例えば、Food Carbohydrates:Chemistry,Physical Properties,and Applications(S.W.Cui.Ed,Chapter 3,S.W.Cui,Structural Analysis of Polysaccharides,Taylor&Francis Group LLC,Boca Raton,FL,2005)に開示されており、この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書の大きいα-グルカンポリマーの「分子量」は、重量平均分子量(Mw)または数平均分子量(Mn)として表すことができ、その単位は、ダルトンまたはグラム/モルである。あるいは、大きいα-グルカンポリマーの分子量は、DPw(重量平均重合度)またはDPn(数平均重合度)として表すことができる。オリゴ糖などのより小さいα-グルカンの分子量は、通常、「DP」(重合度)として提供され得、これは、単に、α-グルカン内に含まれるグルコースの数を指す。これらの様々な分子量測定値を計算するために、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)またはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの様々な手段が当該技術分野で知られている。
本明細書の用語「スクロース」は、α-1,2-グリコシド結合によって連結されたα-D-グルコース分子およびβ-D-フルクトース分子から構成される非還元二糖を指す。スクロースは、一般には砂糖として知られている。
用語「ロイクロース」および「D-グルコピラノシル-α(1-5)-D-フルクトピラノース」は、本明細書では互換的に使用され、α-1,5グルコシル-フルクトース結合を含有する二糖を指す。
用語「グルコシルトランスフェラーゼ」、「グルコシルトランスフェラーゼ酵素」、「GTF」、「グルカンスクラーゼ」などは、本明細書では互換的に使用される。本明細書のグルコシルトランスフェラーゼの活性は、生成物であるα-グルカンおよびフルクトースを作製するための基質スクロースの反応を触媒する。GTF反応の他の生成物(副生成物)としては、グルコース、様々な可溶性グルコーオリゴ糖およびロイクロースを挙げることができる。グルコシルトランスフェラーゼ酵素の野生型形態は、一般に(N末端からC末端方向に)、シグナルペプチド(通常、切断プロセスにより除去される)、可変ドメイン、触媒ドメインおよびグルカン結合ドメインを含有する。本明細書のグルコシルトランスフェラーゼは、CAZy(Carbohydrate-Active EnZymes)データベース(Cantarel et al.,Nucleic Acids Res.37:D233-238,2009)によれば、グリコシドヒドロラーゼファミリー70(GH70)の下に分類される。
本明細書の用語「グルコシルトランスフェラーゼ触媒ドメイン」は、グルコシルトランスフェラーゼ酵素にα-グルカン合成活性を付与するグルコシルトランスフェラーゼ酵素のドメインを指す。グルコシルトランスフェラーゼ触媒ドメインは、好ましくは、この活性を有する任意の他のドメインの存在を必要としない。
「酵素反応」、「グルコシルトランスフェラーゼ反応」、「グルカン合成反応」、「反応組成物」、「反応配合物」などの用語は、本明細書では互換的に使用され、通常、水と、スクロースと、少なくとも1種の活性グルコシルトランスフェラーゼ酵素とを最初に含み、任意選択的に他の成分も最初に含む反応を意味する。通常、グルコシルトランスフェラーゼ反応が開始した後、グルコシルトランスフェラーゼ反応においてさらに存在する可能性のある成分としては、フルクトース、グルコース、ロイクロース、可溶性グルコーオリゴ糖(例えば、DP2~DP7)(そのようなものは、使用されるグルコシルトランスフェラーゼに依存する生成物または副生成物として見なされ得る)および/またはDP8以上(例えば、DP100以上)の不溶性α-グルカン生成物が挙げられる。少なくとも8または9の重合度(DP)を有するα-1,3-グルカンなどの所定のグルカン生成物は、水不溶性であるため、グルカン合成反応では溶解されず、むしろ溶液外に存在する(例えば、反応から沈殿したため)可能性があることが理解されるであろう。それは、水、スクロースおよびグルコシルトランスフェラーゼ酵素を接触させる工程が実施されるグルカン合成反応におけるものである。本明細書で使用する用語「好適な反応条件下」は、グルコシルトランスフェラーゼ酵素活性を介してスクロースからα-グルカン生成物への変換を補助する反応条件を意味する。
本明細書のいくつかの態様におけるグルコシルトランスフェラーゼ反応でのα-グルカン生成物の「収率」は、変換されたスクロースを基準とするモル収率を表す。α-グルカン生成物のモル収率は、変換されたスクロースのモルによって割られたα-グルカン生成物のモルに基づいて計算することができる。変換されたスクロースのモルは次のように計算することができる:(初期のスクロースの質量-最終のスクロースの質量)/スクロースの分子量[342g/mol]。このモル収率計算は、α-グルカンに対する反応の選択性の尺度であると見なすことができる。いくつかの態様では、グルコシルトランスフェラーゼ反応におけるα-グルカン生成物の「収率」は、反応のグルコシル成分を基準とすることができる。このような収率(グルコシルを基準とした収率)は、次の式を使用して評価することができる:
α-グルカン収率=((IS/2-(FS/2+LE/2+GL+SO))/(IS/2-FS/2))×100%。
グルコシルトランスフェラーゼ反応のフルクトース残余を評価して、該当する場合、HPLCデータが範囲外ではない(90%~110%は、許容されると見なされる)ことを保証し得る。フルクトース残余は、次の式を使用して評価することができる:
フルクトース残余=((180/342×(FS+LE)+FR)/(180/342×IS))×100%。
上の2つの式では、ISは、[初期のスクロース]であり、FSは、[最終のスクロース]であり、LEは、[ロイクロース]であり、GLは、[グルコース]であり、SOは、[可溶性オリゴマー](グルコ-オリゴ糖)であり、およびFRは、[フルクトース]である(全てグラム/L単位の濃度であり、例えばHPLCにより測定した際の濃度)。
「体積パーセント(percent by volume)」、「体積パーセント(volume percent)」、「vol%」、「v/v%」などの用語は、本明細書では互換的に使用される。溶液中の溶質の体積パーセントは、次式を用いて決定することができる:[(溶質の体積)/(溶液の体積)]×100%。
「重量パーセント(percent by weight)」、「重量パーセント(weight percentage)(wt%)」、「重量-重量パーセント(%w/w)」などの用語は、本明細書では互換的に使用される。重量パーセントとは、組成物、混合物または溶液中に含まれる質量を基準とした物質のパーセンテージを指す。
用語「水性条件」、「水性反応条件」、「水性環境」、「水性系」などは、本明細書では互換的に使用される。本明細書の水性条件は、溶媒が例えば少なくとも約60重量%水である溶液または混合物を指す。本明細書のグルコシルトランスフェラーゼ反応は、水性条件下で実施される。
本明細書で使用する用語「可溶性」、「水溶性(aqueous-soluble)」、「水溶性(water-soluble)」は、本明細書において水および/または水溶液中に溶解する能力を有するグルカンの特性を表す。本明細書の可溶性グルカンの例は、8未満のDPを有するα-1,3-グルカンなどの所定のオリゴ糖ならびに参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/183721号パンフレット、国際公開第2015/183724号パンフレット、国際公開第2015/183729号パンフレット、国際公開第2015/183722号パンフレット、国際公開第2015/183726号パンフレットおよび国際公開第2015/183714号パンフレットにおいて開示される所定のオリゴ糖である。対照的に、「不溶性」、「水不溶性(aqueous-insoluble)」、「水不溶性(water-insoluble)」(などの用語)であるグルカンは、本明細書において水および/または水溶液中に溶解しない(または認識できるほどに溶解しない)。任意選択的に、溶解度を決定するための条件としては、約1~85℃(例えば、20~25℃)の水/溶液温度範囲および/または約6~8の中性pH範囲が挙げられる。
用語「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「核酸分子」などは、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、ヌクレオチド配列などを包含する。ポリヌクレオチドは、任意選択的に、合成の、非天然の、または改変されたヌクレオチド塩基を含有する一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAのポリマーであり得る。ポリヌクレオチドは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAまたはこれらの混合物の1つ以上のセグメントから構成され得る。
本明細書で使用される「遺伝子」という用語は、コード領域からRNA(RNAは、DNAポリヌクレオチド配列から転写される)を発現するDNAポリヌクレオチド配列を指し、このRNAは、メッセンジャーRNA(タンパク質をコードする)または非タンパク質コードRNAであり得る。遺伝子は、コード領域のみを指し得、またはコード領域の上流および/もしくは下流に調節配列(例えば、プロモーター、5’非翻訳領域、3’転写ターミネーター領域)を含み得る。タンパク質をコードするコード領域は、代わりに、本明細書中で「オープンリーディングフレーム」(ORF)と呼ぶことができる。「天然の」または「内在性の」遺伝子は、それ自体の調節配列とともに天然に見出されたままの遺伝子を指し、そのような遺伝子は、宿主細胞のゲノムの本来の場所に位置する。「キメラ」遺伝子は、天然には一緒に見出されることがない(すなわち、調節領域およびコード領域は、互いに非相同である)調節配列およびコード配列を含む、天然遺伝子でない遺伝子を指す。したがって、キメラ遺伝子は、異なる起源に由来する調節配列およびコード配列、または同一起源に由来するが、天然に見出されるものと異なる方法で配列された調節配列およびコード配列を含む可能性がある。「外来」または「異種」遺伝子は、遺伝子導入によって宿主生物内に導入される遺伝子を意味し得る。外来/異種遺伝子は、非天然生物に挿入された天然遺伝子、天然宿主の新規な場所に導入された天然遺伝子またはキメラ遺伝子を含む可能性がある。本明細書に開示される所定の実施形態におけるポリヌクレオチド配列は、異種である。「導入遺伝子」は、遺伝子導入手順(例えば、形質転換)によりゲノムに導入された遺伝子である。「コドン最適化」オープンリーディングフレームは、宿主細胞の好ましいコドン使用頻度を模倣するよう設計されたコドン使用頻度を有する。
本明細書で使用する場合、用語「ポリペプチド」は、定義された配列を通常有するアミノ酸残基の鎖と定義される。本明細書で使用する場合、ポリペプチドという用語は、用語「ペプチド」および「タンパク質」と互換可能である。本明細書のポリペプチドに含有される典型的なアミノ酸としては(括弧書きで示されるそれぞれの3文字および1文字コード)、アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン酸(Glu、E)、グルタミン(Gln、Q)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、バリン(Val、V)が挙げられる。
用語「異種」は、天然には対象位置に見出されないことを意味する。例えば、異種遺伝子は、天然には宿主生物内に見出されないが、遺伝子移入によって宿主生物中に導入される遺伝子であり得る。別の例として、キメラ遺伝子中に存在する核酸分子は、そのような核酸分子がキメラ遺伝子の他のセグメントと自然には関連しないため、異種として特徴付けることができる(例えば、プロモーターは、コード配列に対して異種であり得る)。
本明細書中の細胞または生物に含まれる「非天然」のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、そのような細胞または生物の天然の(自然の)対応物に存在しない。このようなアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、細胞または生物に対して異種であると言うこともできる。
本明細書で使用する「調節配列」は、遺伝子の転写開始部位の上流に位置するヌクレオチド配列(例えば、プロモーター)、5’非翻訳領域、イントロンおよび3’非コード領域を指し、遺伝子から転写されるRNAの転写、プロセシングもしくは安定性および/または翻訳に影響を及ぼす可能性がある。本明細書の調節配列は、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、5’非翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、ステムループ構造および遺伝子発現の調節に関連する他の要素を含む可能性がある。本明細書の1つ以上の調節エレメントは、本明細書のコード領域に対して異種であり得る。
本明細書中で使用する「プロモーター」は、遺伝子からのRNAの転写を制御することができるDNA配列を指す。一般に、プロモーター配列は、遺伝子の転写開始部位の上流にある。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来し得、自然界で見出される様々なプロモーターに由来する様々な要素から構成され得、または合成DNAセグメントをさらに含み得る。あらゆる状況下のほとんどの時点で遺伝子が細胞内で発現することを誘発するプロモーターは、一般に「構成的プロモーター」と呼ばれる。プロモーターは、誘導可能でもあり得る。本明細書の1つ以上のプロモーターは、本明細書のコード領域にとって異種であり得る。
本明細書で使用する「強力なプロモーター」は、単位時間当たり相当に多数の生成開始を指示できるプロモーターおよび/または細胞内の遺伝子の平均転写レベルよりも高いレベルの遺伝子転写を駆動するプロモーターである。
本明細書中で使用される用語「3’非コーディング配列」、「転写ターミネーター」、「ターミネーター」などは、コード配列の下流に位置するDNA配列を指す。これは、ポリアデニル化認識配列およびmRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼすことができる調節シグナルをコードする他の配列を含む。
本明細書で使用するように、第1核酸配列は、第1核酸配列の一本鎖形が好適なアニーリング条件(例えば、温度、溶液イオン強度)下で第2核酸配列にアニーリングできる場合、第2核酸配列に「ハイブリダイズする」ことができる。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は、よく知られており、Sambrook J,Fritsch EF and Maniatis T,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989)で例証されており、この文献、特に11章および表11.1は、参照により本明細書に組み込まれる。
用語「DNA操作技術」は、DNAポリヌクレオチド配列の配列が改変される任意の技術を指す。改変されているDNAポリヌクレオチド配列は、改変のための基質自体として使用できるが、DNAポリヌクレオチド配列は、所定の技術のために物理的に所有されている必要はない(例えば、コンピューター内に保存された配列を操作技術のための基礎として使用することができる)。DNA操作技術は、より長い配列内で1つ以上のDNA配列を欠失および/または変異させるために使用することができる。DNA操作技術の例としては、組換えDNA技術(制限およびライゲーション、分子クローニング)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および合成DNA法(例えば、オリゴヌクレオチド合成およびライゲーション)が挙げられる。合成DNA技術に関して、DNA操作技術は、インシリコでDNAポリヌクレオチドを観察する工程、DNAポリヌクレオチドの所望の改変(例えば、1つ以上の欠失)を決定する工程および所望の改変を含有するDNAポリヌクレオチドを合成する工程を必要とする可能性がある。
本明細書の用語「インシリコ」は、例えば、コンピューターなどの情報記憶および/またはプロセシング装置内および上において、コンピューターソフトウェアまたはシミュレーションを使用して実施または生成されること、すなわちバーチャルリアリティを意味する。
ポリヌクレオチドに関して本明細書で使用する用語「上流」および「下流」は、それぞれ「5’」および「3’」を意味する。
本明細書で使用する用語「発現」は、(i)コード領域からのRNA(例えば、mRNAもしくは非タンパク質コードRNA)の転写および/または(ii)mRNAからのポリペプチドの転写を指す。ポリヌクレオチド配列のコード領域の発現は、所定の実施形態において上方制御または下方制御することができる。
本明細書で使用する用語「作動可能に連結された」は、一方の機能が他方によって影響されるような2つ以上の核酸配列の結合を意味する。例えば、プロモーターは、コード配列の発現に影響を及ぼすことができる場合、そのコード配列と作動可能に連結されている。すなわち、コード配列は、プロモーターの転写制御下にある。コード配列は、例えば、1つ(例えば、プロモーター)または複数(例えば、プロモーターおよびターミネーター)調節配列に作動可能に連結することができる。
「組換え」という用語は、プラスミド、ベクターまたはコンストラクトなどのDNA配列を特徴付けるために本明細書で使用されるとき、そうしなければ配列の2つの別々のセグメントであったものを、例えば化学合成により、および/または核酸の分離したセグメントを遺伝子工学技術で操作することにより人工的に組み合わせることを指す。
本明細書で使用する用語「形質転換」は、任意の方法によって核酸分子を宿主生物または宿主細胞に移すことを指す。生物/細胞中に形質転換された核酸分子は、生物/細胞中で自律的に複製するか、または生物/細胞のゲノム中に組み込まれるか、または複製もしくは組み込みなしに細胞中に一過的に存在するものであり得る。例えば、プラスミドおよび直鎖状DNA分子など、形質転換のために好適な核酸分子の非限定的な例は、本明細書に開示されている。形質転換核酸配列を含有する本明細書に記載の宿主生物/細胞は、例えば、「トランスジェニック」、「組換え」、「形質転換された」、「遺伝子操作された」、「形質転換体」および/または「外因性遺伝子発現のために改変された」と称することができる。
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関して本明細書で使用する用語「配列同一性」、「同一性」などは、特定の比較ウィンドウにわたって最高一致のために整列させたときに同一である、2つの配列内の核酸残基またはアミノ酸残基に関する。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」、「同一性率(%)」などは、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較することによって決定される数値を意味するが、このとき、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、2つの配列の最適整列のための参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(すなわちギャップ)を含む可能性がある。パーセンテージは、両方の配列内で同じ核酸塩基またはアミノ酸残基が発生する位置の数を決定して、マッチした位置の数を得、そのマッチした位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除し、その結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって算出される。DNA配列とRNA配列との間の配列相同性を計算するとき、DNA配列のT残基は、RNA配列のU残基と合致し、したがってRNA配列のU残基と「同一である」と見なし得ることが理解されるであろう。第1および第2ポリヌクレオチドの「相補率」を決定するために、例えば、(i)第1ポリヌクレオチドと第2ポリヌクレオチドの相補配列(またはその逆)との同一性率、および/または(ii)標準的なワトソン・クリック塩基対を作り出すであろう第1および第2ポリヌクレオチド間の塩基のパーセンテージを決定することによってそれを得ることができる。
同一性率は、全てが参照により本明細書に組み込まれる1)Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.,Ed.)Oxford University:NY(1988);2)Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.,Ed.)Academic:NY(1993);3)Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,およびGriffin,H.G.,Eds.)Humana:NJ(1994);4)Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.,Ed.)Academic(1987);ならびに5)Sequence Analysis Primer(Gribskov,M.およびDevereux,J.,Eds.)Stockton:NY(1991)に記載されるものを含むが、これらに限定されない任意の既知の方法によって容易に決定することができる。
同一性率を決定するための方法は、試験される配列間で最大の一致を得るように設計されていることが好ましい。同一性および類似性を決定する方法は、例えば、公開されているコンピュータープログラムに体系化されている。配列アラインメントおよび同一性率計算は、例えば、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイートのMEGALIGNプログラム(DNASTAR Inc.,Madison,WI)を用いて実施することができる。配列のマルチプルアラインメントは、例えば、Clustal Vアラインメント法(Higgins and Sharp,CABIOS.5:151-153(1989);Higgins,D.G.et al.,Comput.Appl.Appl.Biosci.8:189-191(1992)によって記載される)およびLASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(DNASTAR Inc.)のMEGALIGN v8.0プログラムに見出されるClustal Vアラインメント法を含む、数種類のアルゴリズムを包含するClustalアラインメント法を用いて実施することができる。マルチプルアラインメントについて、デフォルト値は、GAP PENALTY=10およびGAP LENGTH PENALTY=10に対応し得る。Clustal法を使用したタンパク質配列のペアワイズアラインメントおよび同一性率の計算のためのデフォルトパラメーターは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5およびDIAGONALS SAVED=5であり得る。核酸の場合、これらのパラメーターは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4およびDIAGONALS SAVED=4であり得る。加えて、Clustal Wアラインメント法が使用され得(Higgins and Sharp,CABIOS.5:151-153(1989);Higgins,D.G.et al.,Comput.Appl.Biosci.8:189-191(1992);Thompson,J.D.et al,Nucleic Acids Research,22(22):4673-4680,1994によって記載される)、これは、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイート(DNASTAR Inc.)のMEGALIGN v8.0プログラムに見出され得る。マルチプルアラインメントのためのデフォルトパラメーター(タンパク質/核酸)は、GAP PENALTY=10/15、GAP LENGTH PENALTY=0.2/6.66、Delay Divergen Seqs(%)=30/30、DNA Transition Weight=0.5、Protein Weight Matrix=Gonnet Series、DNA Weight Matrix=IUBであり得る。
本明細書では、様々なポリペプチドアミノ酸配列およびポリヌクレオチド配列は、所定の実施形態の特徴として開示されている。本明細書に開示される配列と少なくとも約70~85%、85~90%または90%~95%同一であるこれらの配列のバリアントを使用または参照できる。あるいは、バリアントアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、本明細書で開示される配列に対して少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有することができる。バリアントアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、開示した配列と同じ機能/活性または開示した配列の少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の機能/活性を有する。メチオニンで始まらない、本明細書に開示される任意のポリペプチドアミノ酸配列は、典型的には、アミノ酸配列のN末端で少なくとも1つの開始メチオニンをさらに含む可能性がある。対照的に、メチオニンで始まる本明細書に開示される任意のポリペプチドアミノ酸配列は、任意選択的に、そのようなメチオニン残基を欠く可能性がある。
用語「~と整列する」、「~に対応する」などは、本明細書において互換的に使用することができる。本明細書のいくつかの実施形態は、配列番号62の少なくとも1つの特定のアミノ酸残基に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を含むグルコシルトランスフェラーゼに関する。(1)クエリー配列が対象配列と整列し得る場合(例えば、この場合、アラインメントは、クエリー配列および対象配列[または対象配列の部分配列]が少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%同一であることを示す)ならびに(2)クエリーアミノ酸位置が(1)のアラインメントにおいて対象アミノ酸位置と一直線に整列する(一直線に一列に並ぶ)場合、グルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸位置またはその部分配列は、(例えば、触媒ドメインまたは触媒ドメインに加えてグルカン結合ドメイン)(このようなアミノ酸位置または配列を「クエリー」位置または配列と呼ぶことができる)、配列番号62の特定のアミノ酸残基(そのようなアミノ酸位置または配列を「対象」位置または配列と呼ぶことができる)に対応するように特徴付けることができる。一般に、開示された本明細書に記載される任意のアラインメントアルゴリズム、ツールおよび/またはソフトウェア(例えば、BLASTP、ClustalW、ClustalV、Clustal-Omega、EMBOSS)を用いて、対象配列(配列番号62または配列番号62の部分配列)とクエリーアミノ酸配列を整列させて、同一性率を決定することができる。まさにさらなる例として、European Molecular Biology Open Software Suite(EMBOSS[例えば、バージョン5.0.0以降],Rice et al.,Trends Genet.16:276-277,2000)のNeedleプログラムにおいて実行されるようなニードルマン-ヴンシュアルゴリズム(NeedlemanおよびWunsch,J.Mol.Biol.48:443-453,1970)を使用して、クエリー配列を本明細書の対象配列と整列させることができる。このようなEMBOSSアラインメントのパラメーターとしては、例えば、ギャップオープンペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ0.5、EBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスを含み得る。
本明細書の配列番号62の特定のアミノ酸残基のナンバリング(例えば、Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951)は、配列番号62の全長アミノ酸配列に関するものである。配列番号62の最初のアミノ酸(すなわち1位、Met-1)は、シグナルペプチドの開始点である。別段の開示がなされていなければ、本明細書の置換は、配列番号62の全長アミノ酸配列に関するものである。
本明細書の「非天然グルコシルトランスフェラーゼ」(あるいは、「変異体」、「バリアント」、「改変された」などの用語は、このようなグルコシルトランスフェラーゼを記載するためにそれに加えて用いられる)は、配列番号62の特定のアミノ酸残基(例えば、Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951)に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。ほとんどの場合、このような少なくとも1つのアミノ酸置換は、非天然グルコシルトランスフェラーゼの天然対応物(親)において同じ位置で一般に(自然に)存在するアミノ酸残基に代わるものである。天然対応物のグルコシルトランスフェラーゼにおいて関連した位置で一般に存在するアミノ酸は、アラインメントがなされる配列番号62の特定のアミノ酸残基(例えば、Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951)と同じである(または保存されている)ことが多い。非天然グルコシルトランスフェラーゼは、任意選択的に、その天然対応物配列に対して他のアミノ酸変化(変異、欠失および/または挿入)を有する場合がある。
本明細書の置換/アラインメントを説明することは、有益であり得る。配列番号69(GENBANK Acc No.BAC07265.1、GI No.22138845)は、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)の天然のグルコシルトランスフェラーゼである。配列番号69のPhe-886は、配列番号62のPhe-951に対応することに留意されたい(アラインメントは示さず)。例えば、配列番号69が886位で変異されて、Phe残基を異なる残基(例えば、Tyr)で置換する場合、配列番号69の886位で変異したバージョンは、配列番号62のPhe-951に対応する位置でアミノ酸置換を有する非天然グルコシルトランスフェラーゼに対応すると言うことができる。本明細書の置換/アラインメントを説明する別の例として、配列番号12のLeu-193は、配列番号62のLeu-373に対応することに留意されたい(アラインメントは示さず)。例えば、配列番号12が193位で変異されて、Leu残基を異なる残基(例えば、Gln)で置換する場合、配列番号12の193位で変異したバージョンは、配列番号62のLeu-373に対応する位置でアミノ酸置換を有する非天然グルコシルトランスフェラーゼに対応すると言うことができる。
用語「単離された」は、天然に存在しない形態または環境にある物質(またはプロセス)を意味する。単離された物質の非限定的例としては、(1)天然に存在しない任意の物質(例えば、本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼ)、(2)限定されないが、自然界では結合している天然に存在する成分の1つ以上または全部から少なくとも部分的に取り出される任意の宿主細胞、酵素、バリアント、核酸、タンパク質、ペプチド、補因子または炭水化物/糖などの任意の物質;(3)自然界で見出される物質に対して人の手により改変された任意の物質(例えば、本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼ);あるいは(4)その物質の量を、それが自然に結合している他の成分に対して増加させることによって修飾された任意の物質が挙げられる。本明細書に開示される実施形態(例えば、酵素および反応組成物)は、合成物/人工物であり、かつ/または天然に存在しない特性を有すると考えられる。
本明細書で使用される「増加した」という用語は、増加した量または活性が比較される量または活性より少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、50%、100%または200%多い量または活性を指すことができる。用語「増加した」、「上昇した」、「高められた」、「より多い」、「向上した」などの用語は、本明細書では互換的に使用される。これらの用語は、例えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドの「過剰発現」または「上方制御」を特徴付けるために使用することができる。
グルコシルトランスフェラーゼ酵素を用いたグルカンポリマーの生成において進展がなされてきた一方、このような酵素のグルカン収率の向上に対して関心がほとんど向けられていないように見える。この技術的空白を解決するために、本明細書では、これらの酵素に高められたグルカン生成特性を付与する改変アミノ酸配列を有するように遺伝子操作されたグルコシルトランスフェラーゼが開示される。
本開示の所定の実施形態は、配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼであって、1,3-結合および/または1,6-結合を含むα-グルカンを合成し、
(i)その置換位置でのみ非天然グルコシルトランスフェラーゼと異なる第2のグルコシルトランスフェラーゼのα-グルカン収率よりも高いα-グルカン収率、および/または
(ii)第2のグルコシルトランスフェラーゼのロイクロース収率よりも低いロイクロース収率
を有する非天然グルコシルトランスフェラーゼに関する。したがって、概して、より多量のα-グルカンを合成することができ、かつ/または主な目的がα-グルカン合成である場合に望ましくないと見なされることが多い副産物であるロイクロースの収率を低くすることができる、変異体グルコシルトランスフェラーゼ酵素が本明細書に開示される。
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、1,3-結合および/または1,6-結合を含むα-グルカンを合成する。いくつかの態様では、このようなα-グルカンのグリコシド結合の少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、69%、70%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%は、α-1,3結合であり得る。α-グルカンの結合プロファイルは、任意選択的に、これらの値のいずれか2つの間の範囲を有するものとして特徴付けることができる。例えば、1%~99%のα-1,3結合を有するこれらの態様のいずれかにおける他の結合は、α-1,6であり得、かつ/またはα-1,4もしくはα-1,2結合のいずれも含み得ない。さらに、他の態様では、α-グルカンのグリコシド結合の約100%がα-1,6結合であり得る。
いくつかの態様におけるα-グルカンは、例えば、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満のα-1,2またはα-1,4グリコシド結合を有し得る。別の実施形態では、α-グルカンは、α-1,3および/またはα-1,6結合のみを有する。
いくつかの態様におけるα-グルカンは、直鎖/非分岐鎖であり得る。あるいは、本明細書のα-グルカンでは、分岐が存在し得る。例えば、α-グルカンは、ポリマー中の結合のパーセントとして約30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満の分岐点を有し得る。
所定の実施形態では、α-グルカンは、少なくとも約100のDPwまたはDPnでの分子量を有し得る。例えば、DPwまたはDPnは、少なくとも約100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100または1200であり得る。α-グルカンの分子量は、任意選択的に、これらの値のいずれか2つの間の範囲として表すこともできる。これらの分子量は、特に、例えば本明細書のα-1,3-グルカンに適用される。
さらに、いくつかの態様では、α-グルカンは、少なくとも約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、100、150、200または250のDPを有し得る。α-グルカンのDPは、任意選択的に、これらの値のいずれか2つの間の範囲として表すこともできる。このようなα-グルカンの特定の例としては、(i)8または9未満のDPを有し、かつ大部分(例えば、>80~90%)または全てがα-1,3結合を有するもの、および(ii)大部分(例えば、>80~90%)または全てがα-1,6結合を有するものが挙げられる。
さらにまた、いくつかの態様では、α-グルカンは、少なくとも約1、5、10、15、20、25、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190または200百万ダルトンのMwを有し得る。α-グルカンのMwは、任意選択的に、これらの値のいずれか2つの間の範囲として表すこともできる。このようなα-グルカンの特定の例としては、少なくとも約85%または90%のα-1,6結合を有するデキストランが挙げられる。
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼによって生成されるα-グルカンは、水不溶性または水溶性であり得る。本明細書のα-1,3-グルカンは、通常、大部分の水性環境において不溶性であるのに対して、デキストランは、通常、大部分の水性環境において可溶性である。一般に、本明細書の水性系中のグルカンポリマーの溶解度は、その結合型、分子量および/または分岐度に関連する。α-1,3-グルカンは、一般に、8または9のDPwおよび上記中性(例えば、pH6~8)水性条件で不溶性である。
前述の結合プロファイル、分子量プロファイルおよび/または溶解度プロファイルのいずれかを、例えば本明細書において組み合わせて、本開示の非天然グルコシルトランスフェラーゼのα-グルカン生成物を適切に特徴付けることができる。いくつかの態様では、本明細書のα-グルカン生成物の結合、分子量および/または溶解度プロファイルは、全てが参照により本明細書に組み込まれる以下の刊行物のいずれかにおいて開示され得る:米国特許第7000000号明細書および同第8871474号明細書;米国特許出願公開第2015/0232819号明細書および同第2016/0122445号明細書;ならびに国際公開第2015/183721号パンフレット、国際公開第2015/183724号パンフレット、国際公開第2015/183729号パンフレット、国際公開第2015/183722号パンフレット、国際公開第2015/183726号パンフレットおよび国際公開第2015/183714号パンフレット。
非天然グルコシルトランスフェラーゼは、例えば、非天然グルコシルトランスフェラーゼが、配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を有するという点を除いて、本開示のようにα-グルカンを生成することができる、以下の刊行物に開示される任意のグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列を含み得る:米国特許第7000000号明細書および同第8871474号明細書;米国特許出願公開第2015/0232819号明細書および同第2016/0122445号明細書;ならびに国際公開第2015/183721号パンフレット、国際公開第2015/183724号パンフレット、国際公開第2015/183729号パンフレット、国際公開第2015/183722号パンフレット、国際公開第2015/183726および国際公開第2015/183714号パンフレット(これらの全てが参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの態様では、このような非天然グルコシルトランスフェラーゼは、(i)前述の置換の少なくとも1つを有し、かつ(ii)少なくとも1つの置換を有しないそれぞれの対応物/親グルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%同一であるアミノ酸配列を含む。
いくつかの態様では、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、(i)配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、かつ(ii)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、59、68(もしくはその37~1338位)、69(もしくはその37~1554位もしくは170~1554位)または70と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%同一であるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。これらのアミノ酸配列のいくつかを有する数種のグルコシルトランスフェラーゼのα-グルカン生成物に関する所定の情報が表2において提供される。
いくつかの態様では、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、(i)配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、かつ(ii)配列番号65のアミノ酸残基54~957、配列番号30の残基55~960、配列番号4の残基55~960、配列番号28の残基55~960または配列番号20の残基55~960と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%同一であるグルコシルトランスフェラーゼ触媒ドメインを含むか、またはそれからなる。このような非天然グルコシルトランスフェラーゼは、例えば、水不溶性であるα-グルカンを生成することができ、かつ少なくとも約50%(例えば、≧90%または95%)のα-1,3結合を含み、また任意選択的に、少なくとも100のDPwをさらに有すると考えられる。例えば、配列番号65のアミノ酸54~957位を有するグルコシルトランスフェラーゼは、100%のα-1,3結合および少なくとも400のDPwを有するα-1,3-グルカンを生成できる(データは示さず、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第62/180,779号明細書または米国特許出願公開第2017/0002335号明細書の表6を参照されたい)ことに留意されたい。配列番号65(GTF7527)、30(GTF2678)、4(GTF6855)、28(GTF2919)および20(GTF2765)は、それぞれの野生型対応物と比較して、シグナルペプチドドメインおよび可変ドメインの全部分または大部分を欠くグルコシルトランスフェラーゼを表すことにさらに留意されたい。したがって、これらのグルコシルトランスフェラーゼ酵素のそれぞれは、後にグルカン結合ドメインが続く触媒ドメインを有する。これらの酵素中の触媒ドメイン配列のおよその位置は次のとおりである:7527(配列番号65の残基54~957)、2678(配列番号30の残基55~960)、6855(配列番号4の残基55~960)、2919(配列番号28の残基55~960)、2765(配列番号20の残基55~960)。GTF2678、6855、2919および2765の(およその)触媒ドメインのアミノ酸配列は、GTF7527のおよその触媒ドメイン配列(すなわち配列番号65のアミノ酸54~957)とのそれぞれ約94.9%、99.0%、95.5%および96.4%の同一性を有する。これらの特定のグルコシルトランスフェラーゼの各々(GTF2678、6855、2919および2765)は、100%のα-1,3結合および少なくとも400のDPwを有するα-1,3-グルカンを生成できる(データは示さず、米国特許出願62/180,779号明細書または米国特許出願公開第2017/0002335号明細書の表4を参照されたい)。この活性および前述の触媒ドメインの関連性(高い同一性率)に基づいて、前述のアミノ酸置換の少なくとも1つをさらに有する前述の触媒ドメインの1つを有する本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、少なくとも約50%(例えば、≧90%または95%)のα-1,3結合および少なくとも100のDPwを含むα-グルカンを生成することができと考えられる。
いくつかの態様では、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、(i)配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を有し、かつ(ii)配列番号62または配列番号4(その開始メチオニンを有しない)もしくは配列番号4の55~960位(およその触媒ドメイン)などのその部分配列と少なくとも約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、69%、70%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%同一であるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
所定の態様における非天然グルコシルトランスフェラーゼは、本明細書の少なくとも1つのアミノ酸置換を有する触媒ドメイン配列のみを有する必要があると考えられているが、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、より広範なアミノ酸配列内に含まれ得る。例えば、触媒ドメインは、そのC末端でグルカン結合ドメインに連結され得、かつ/またはそのN末端で可変ドメインおよび/もしくはシグナルペプチドに連結され得る。
非天然グルコシルトランスフェラーゼにおけるアミノ酸置換は、配列番号62における対応する位置に関して本明細書で一般に開示されるが、このような置換は、代わりに、便宜的に、単に非天然グルコシルトランスフェラーゼ自体の配列におけるその位置番号に関して記載され得る。
非天然グルコシルトランスフェラーゼのさらにまた別の例は、本明細書に開示されるもの、ならびにN末端および/またはC末端に1~300(もしくはその間の任意の整数[例えば、10、15、20、25、30、35、40、45もしくは50])個の残基を含むもののいずれでもあり得る。そのような追加の残基は、例えば、グルコシルトランスフェラーゼ酵素が由来する対応する野生型配列由来であるか、または(N末端もしくはC末端のいずれかにおける)エピトープタグまたは(N末端における)異種シグナルペプチドなどの異種配列であり得る。本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、通常、N末端シグナルペプチドを欠き、このような酵素は、任意選択的に、そのシグナルペプチドが分泌プロセス中に除去された場合、成熟したものとして特徴付けることができる。
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、例えば、細菌または真菌などの任意の微生物源に由来し得る。細菌グルコシルトランスフェラーゼの例は、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種またはラクトバチルス(Lactobacillus)種に由来するものである。ストレプトコッカス(Streptococcus)種の例としては、S.サルバリウス(S.salivarius)、S.ソブリナス(S.sobrinus)、S.デンチロウセッティ(S.dentirousetti)、S.ダウネイ(S.downei)、S.ミュータンス(S.mutans)、S.オラリス(S.oralis)、S.ガロリティカス(S.gallolyticus)およびS.サングイニス(S.sanguinis)が挙げられる。ロイコノストック(Leuconostoc)種の例としては、L.メセンテロイデス(L.mesenteroides)、L.アメリビオスム(L.amelibiosum)、L.アルゲンチナム(L.argentinum)、L.カルノスム(L.carnosum)、L.シトレウム(L.citreum)、L.クレモリス(L.cremoris)、L.デキストラニカム(L.dextranicum)およびL.フルクトサム(L.fructosum)が挙げられる。ラクトバチルス(Lactobacillus)種の例としては、L.アシドフィルス(L.acidophilus)、L.デルブリュキイ(L.delbrueckii)、L.ヘルベチクス(L.helveticus)、L.サリバリウス(L.salivarius)、L.カゼイ(L.casei)、L.クルバツス(L.curvatus)、L.プランタルム(L.plantarum)、L.サケイ(L.sakei)、L.ブレビス(L.brevis)、L.ブフネリ(L.buchneri)、L.フェルメンタム(L.fermentum)およびL.ロイテリ(L.reuteri)が挙げられる。
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、例えば、適切に遺伝子操作された微生物株の発酵によって製造することができる。大腸菌(E.coli)、バチルス属(Bacillus)株(例えば、B.サブティリス(B.subtilis))、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)ならびにアスペルギルス(Aspergillus)属(例えば、A.アワモリ(A.awamori))およびトリコデルマ(Trichoderma)属(例えば、T.レーセイ(T.reesei))(例えば、AdrioおよびDemain,Biomolecules 4:117-139,2014を参照されたい(この文献は、参照により本明細書に組み込まれる))などの微生物種を用いる発酵による組換え酵素の製造は、当該技術分野でよく知られている。非天然グルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、典型的には、酵素のための発現カセットを形成するために異種プロモーター配列と連結され、かつ/またはそれに合うようにコドン最適化される。そのような発現カセットは、当該技術分野でよく知られる方法を使用して、適切なプラスミドに組み込まれるかまたは微生物宿主染色体中に組み込まれ得る。発現カセットは、アミノ酸をコードする配列に続いて転写ターミネーターヌクレオチド配列を含み得る。発現カセットは、プロモーター配列とグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸をコードする配列との間に、グルコシルトランスフェラーゼ酵素の直接的な分泌のために設計されたシグナルペプチド(例えば、異種シグナルペプチド)をコードするヌクレオチド配列も含み得る。発酵の終わりに、細胞を適宜破壊し得(通常、分泌のためのシグナルペプチドが採用されない場合)、グルコシルトランスフェラーゼ酵素は、沈殿、濾過および/または濃縮などの方法を使用して単離することができる。あるいは、グルコシルトランスフェラーゼを含む溶解物または抽出物をさらに単離することなしに使用することができる。グルコシルトランスフェラーゼが分泌される(すなわち、それが発酵ブロス中に存在する)場合、それは、発酵ブロスから単離されたものとして、または発酵ブロスに含まれるものとして任意選択的に使用され得る。グルコシルトランスフェラーゼ酵素の活性は、スクロースのグルカンポリマーへのその変換率を測定するなどの生化学的分析によって確認することができる。
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を含み得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Asn-613に対応する位置でのアミノ酸置換は、Val、Ile、Thr、Gly、MetまたはLeu残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Phe-951に対応する位置でのアミノ酸置換は、Tyr残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Ala-510に対応する位置でのアミノ酸置換は、Glu、Ile、ValまたはAsp残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Phe-607に対応する位置でのアミノ酸置換は、Trp、TyrまたはAsn残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Gln-616に対応する位置でのアミノ酸置換は、Glu残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Leu-373に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gln、Ala、Val、Met、PheまたはLeu残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Ala-472に対応する位置でのアミノ酸置換は、SerまたはCys残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Gly-633に対応する位置でのアミノ酸置換は、Trp残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Leu-513に対応する位置でのアミノ酸置換は、Tyr、PheまたはTrp残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Thr-635に対応する位置でのアミノ酸置換は、Trp、HisまたはTyr残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Met-529に対応する位置でのアミノ酸置換は、LeuまたはAsn残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Phe-634に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ala残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Ser-631に対応する位置でのアミノ酸置換は、Thr、Asp、GluまたはArg残基によるものであり得る。いくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Leu-428に対応する位置でのアミノ酸置換は、Val残基によるものであり得る。本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、例えば、本開示の置換の1つ、2つ、3つ、4つまたはそれを超えるものを含み得る。いくつかの態様における非天然グルコシルトランスフェラーゼは、配列番号62のアミノ酸残基Val-552に対応する位置での少なくとも1つのアミノ酸置換(例えば、Gly残基による置換)を含み得る。
好適な置換部位およびこれらの部位での特定の置換の例としては、(i)ロイクロース産生の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の減少および/または(ii)グルカン収率の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%もしくは150%の増加に関する、実施例1における表3(下記)に列記されるものを挙げることができる。いくつかの態様では、好適な置換としては、グルコース産生の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%または80%の減少に関する、実施例1における表3(下記)に列記されるものが挙げられる。いくつかの態様では、好適な置換としては、グルコ-オリゴ糖(オリゴマー)産生の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%または65%の減少に関する、実施例1における表3(下記)に列記されるものが挙げられる。表3に列記されるような前述の置換は、配列番号62において列記される残基位置番号と一致するとおりのものである。いくつかの態様では、1つ以上の置換は、保存的置換または非保存的置換であり、このような保存(または非保存)は、例えば、非天然グルコシルトランスフェラーゼが由来する天然のグルコシルトランスフェラーゼにおいて存在するアミノ酸に関するものであり得る。
上に開示されるように、本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、種々のグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列のいずれか1つに基づき得る。簡潔に例示する目的として、少なくとも1つの本明細書で開示されるようなアミノ酸置換を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼの例は、(i)配列番号4の残基55~960と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列または配列番号4と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列(任意選択的に配列番号4の開始メチオニンを有しない)を含み、かつ(ii)少なくとも1つの本明細書に開示されるようなアミノ酸置換を有するグルコシルトランスフェラーゼを含む。例えば、配列番号66は、配列番号4の残基55~960を表すが、配列番号62のアミノ酸Ala-510に対応する位置でGlu残基を有する(すなわちAla対するGlu置換)(置換しているGluは、配列番号66の279位である)。したがって、いくつかの態様における非天然グルコシルトランスフェラーゼは、配列番号66または配列番号66と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは99.5%同一であるが、279位でGluを有するアミノ酸配列を含み得るか、またはそれからなり得る。他の態様では、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、配列番号71または配列番号71と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは99.5%同一であるが、279位でGluを有するアミノ酸配列を含み得るか、またはそれからなり得る。
本開示の非天然グルコシルトランスフェラーゼの例は、2つ以上(複数)のアミノ酸置換を含むことができ、このような2つ以上の置換の少なくとも1つは、配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置におけるものである。例えば、このような非天然グルコシルトランスフェラーゼは、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれを超えるアミノ酸置換を含むことができ、置換の少なくとも1つは、前述のリストからのものである。また、例えば、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、前述のリストからの2つまたは3つのアミノ酸置換および任意選択的に1つまたは2つの他のアミノ酸置換を含むことができる。
いくつかの態様では、複数のアミノ酸置換を有する非天然グルコシルトランスフェラーゼは、配列番号62のアミノ酸残基Ala-510またはPhe-607に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。例として、これらの位置の両方でアミノ酸置換を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼがある。複数の酸置換を有する本明細書に開示されるこれらおよび他の非天然グルコシルトランスフェラーゼにおいて、追加のアミノ酸置換(存在する場合)は、例えば、配列番号62のアミノ酸残基Arg-741、Asn-743、Leu-784、Asp-820、Phe-929、Asp-948および/またはArg-1172位置に対応するにおけるものであり得る。例えば、本明細書の複数の置換を有する非天然グルコシルトランスフェラーゼは、配列番号62のアミノ酸残基Arg-741および/またはAsn-743に対応する位置の一方または両方で置換を含むことができる。さらに、例えば、本明細書の複数の置換を有する非天然グルコシルトランスフェラーゼは、配列番号62のArg-741、Asp-948および/またはArg-1172の位置で置換を含むことができる。本明細書におけるさらなる例は、以下の(i~x)のとおりのアミノ酸置換の組み合わせを含む非天然グルコシルトランスフェラーゼを含み、各置換は、配列番号62のそれぞれのアミノ酸残基:
(i)Ala-510、Phe-607およびArg-741;
(ii)Ala-510、Phe-607およびAsn-743;
(iii)Ala-510、Phe-607およびAsp-948;
(iv)Ala-510、Arg-741およびAsp-948;
(v)Ala-510、Phe-607、Arg-741およびAsp-948;
(vi)Ala-510、Phe-607、Arg-741およびArg-1172;
(vii)Ala-510、Phe-607、Asp-820およびAsp-948;
(viii)Ala-510、Phe-607、Asp-948およびArg-1172;
(ix)Ala-510、Phe-607、Asn-743、Asp-948およびArg-1172;または
(x)Ala-510、Phe-607、Arg-741、Leu-784、Phe-929およびArg-1172
に対応する。
複数のアミノ酸置換(例えば、上記の実施形態i~x)を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼのいくつかの態様では、配列番号62のアミノ酸Ala-510に対応する位置でのアミノ酸置換は、Asp、Gluもしくは本明細書で開示されるような他の残基(例えば、IleまたはVal)によるものであり得;配列番号62のアミノ酸Phe-607に対応する位置でのアミノ酸置換は、Tyrもしくは本明細書で開示されるような他の残基(例えば、TrpまたはAsn)によるものであり得;配列番号62のアミノ酸Arg-741に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ser残基によるものであり得;配列番号62のアミノ酸Asn-743に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ser残基によるものであり得;配列番号62のアミノ酸Asp-948に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gly残基によるものであり得;配列番号62のアミノ酸Arg-1172に対応する位置でのアミノ酸置換は、Cys残基によるものであり得;配列番号62のアミノ酸Asp-820に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gly残基によるものであり得;配列番号62のアミノ酸Leu-784に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gln残基によるものであり得;かつ/または配列番号62のアミノ酸Phe-929に対応する位置でのアミノ酸置換は、Leu残基によるものであり得る。複数のアミノ酸置換を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼのいくつかの例としては、以下の置換(xi~xx)の組み合わせを含むものが挙げられ、各置換は、配列番号62のそれぞれのアミノ酸残基:(xi)A510D/F607Y/R741S、(xii)A510D/F607Y/N743S、(xiii)A510D/F607Y/D948G、(xiv)A510D/R741S/D948G、(xv)A510D/F607Y/R741S/D948G、(xvi)A510E/F607Y/R741S/R1172C、(xvii)A510D/F607Y/D820G/D948G、(xviii)A510D/F607Y/D948G/R1172C、(xix)A510D/F607Y/N743S/D948G/R1172Cまたは(xx)A510D/F607Y/R741S/L784Q/F929L/R1172Cに対応する。
いくつかの代替的態様では、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、配列番号62のアミノ酸残基Asn-743(例えば、N743S)またはArg-741(例えば、R741S)に対応する位置で(追加の置換を伴うかまたは伴わずに)少なくとも1つのアミノ酸置換を含み得る。
複数のアミノ酸置換を有する本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、例えば、本明細書に開示されるような種々のグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列のいずれかに基づき得る。簡潔に例示する目的として、このような非天然グルコシルトランスフェラーゼの例としては、上記のような複数の置換(例えば、実施形態i~xxのいずれか1つ)を有し、かつ配列番号65(任意選択的に配列番号65の開始メチオニンを有しない)、もしくは配列番号65の残基54~957、配列番号30(任意選択的に配列番号30の開始メチオニンを有しない)、もしくは配列番号30の残基55~960、配列番号4(任意選択的に配列番号4の開始メチオニンを有しない)、もしくは配列番号4の残基55~960、配列番号28(任意選択的に配列番号28の開始メチオニンを有しない)、もしくは配列番号28の残基55~960または配列番号20(任意選択的に配列番号20の開始メチオニンを有しない)もしくは配列番号20の残基55~960と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%同一であるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるものが挙げられる。
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、(i)その置換位置でのみ非天然グルコシルトランスフェラーゼと異なる第2のグルコシルトランスフェラーゼ(例えば、親グルコシルトランスフェラーゼ)のα-グルカン収率よりも高いα-グルカン収率、および/または(ii)第2のグルコシルトランスフェラーゼのロイクロース収率よりも低いロイクロース収率を有し得る。いくつかの実施形態では、非天然グルコシルトランスフェラーゼと比較される第2のグルコシルトランスフェラーゼは、その置換位置で天然のアミノ酸残基を有する。本明細書の第2のグルコシルトランスフェラーゼは、例えば、全てまたは大部分が天然のアミノ酸配列で構成され得る。したがって、本明細書の第2のグルコシルトランスフェラーゼは、いくつかの態様において天然のグルコシルトランスフェラーゼであり得るが、それは、他の態様において予め改変されたグルコシルトランスフェラーゼであり得る(例えば、本開示の置換と異なる1つ以上の他のアミノ酸置換を有するグルコシルトランスフェラーゼ)。いくつかの実施形態では、非天然グルコシルトランスフェラーゼと比較される第2のグルコシルトランスフェラーゼは、その置換位置で天然のアミノ酸残基を有する。アミノ酸残基が天然のものであるかどうかの決定は、第2のグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列を、第2のグルコシルトランスフェラーゼが由来する天然/野生型のグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列と比較することによってなされ得る。任意選択的に、いくつかの実施形態における非天然グルコシルトランスフェラーゼは、(副生成物の合成と比較して)α-グルカン合成に対してより高い選択性を有するものとして特徴付けることができる。
いくつかの態様では、本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、本明細書に開示されるような第2のグルコシルトランスフェラーゼのα-グルカン収率よりも少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、220%、240%、260%、280%、300%、320%または340%高いα-グルカン収率を有し得る。追加のまたは代替的ないくつかの実施形態では、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、第2のグルコシルトランスフェラーゼのロイクロース収率と比較して少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%減少したロイクロース収率を有し得る。これらの判断(α-グルカンおよび/またはロイクロースの収率)は、本明細書に開示されるような(例えば、初期スクロース濃度、温度、pHおよび/または反応時間を考慮する)任意のグルカン合成反応/プロセスに対して、任意の好適な測定技術(例えば、HPLCまたはNIR分光法)を用いてなされ得る。通常、本明細書における非天然グルコシルトランスフェラーゼと第2のグルコシルトランスフェラーゼとの比較は、同一または類似の反応条件下でなされ得る。いくつかの態様におけるグルコシルトランスフェラーゼ反応の収率は、反応のグルコシル成分を基準にして評価され得る。
特に、α-1,3-グルカンなどの不溶性α-グルカン生成物を生成する非天然グルコシルトランスフェラーゼに関するいくつかの実施形態では、グルコシルトランスフェラーゼは、可溶性グルコ-オリゴ糖の収率において、第2のグルコシルトランスフェラーゼの可溶性グルコ-オリゴ糖の収率と比較して少なくとも約5%、10%,15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%または75%の減少を示し得る。いくつかの態様における可溶性グルコ-オリゴ糖は、DP2~7またはDP2~8であり得、本明細書に開示される任意の結合プロファイルを有し得る。いくつかの態様では、DPは、7以上であり、最大で10、15、20または25であるが、溶解を許容する結合プロファイル(例えば、90%または95%を超えないα-1,3)を有する。
特に、α-1,3-グルカンなどの不溶性α-グルカン生成物を生成する非天然グルコシルトランスフェラーゼに関するいくつかの実施形態では、非天然グルコシルトランスフェラーゼは、グルコースの収率において、第2のグルコシルトランスフェラーゼのグルコースの収率と比較して少なくとも約5%、10%,15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%または80%の減少を示し得る。
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、本明細書に開示されるような非天然グルコシルトランスフェラーゼ(例えば、配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼ)をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドに関する。任意選択的に、1つ以上の調節配列は、ヌクレオチド配列と作動可能に連結され、好ましくは、プロモーター配列は、調節配列として含まれる。
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドは、例えば、細胞中にヌクレオチド配列を移入するのに有用なベクターまたはコンストラクトであり得る。好適なベクター/コンストラクトの例は、プラスミド、酵母人工染色体(YAC)、コスミド、ファージミド、細菌人工染色体(BAC)、ウイルスまたは線状DNA(例えば、線状PCR産物)から選択することができる。いくつかの態様におけるポリヌクレオチド配列は、細胞内に一過的(すなわちゲノムに組み込まれていない)または安定に(すなわちゲノムに組み込まれている)存在することができる。いくつかの態様におけるポリヌクレオチド配列は、1つ以上の好適なマーカー配列(例えば、選択または表現型マーカ―)を含み得、またはそれらを欠き得る。
所定の実施形態におけるポリヌクレオチド配列は、非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列と作動可能に連結された1つ以上の調節配列を含み得る。例えば、非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列は、プロモーター配列(例えば、異種プロモーター)と作動可能な連結状態であり得る。プロモーター配列は、例えば、細胞中(例えば、大腸菌(E.coli)もしくはバチルス(Bacillus)などの細菌細胞;真菌、酵母、昆虫もしくは哺乳動物細胞などの真核細胞)またはインビトロタンパク質発現系での発現に好適であり得る。他の好適な調節配列の例を本明細書に開示する(例えば、転写ターミネーター配列)。
本明細書のいくつかの態様は、本明細書に開示されるようなポリヌクレオチド配列を含む細胞に関し、このような細胞は、本明細書に開示される任意の型であり得る(例えば、大腸菌(E.coli)またはバチルス(Bacillus)などの細菌細胞;真菌、酵母、昆虫または哺乳動物細胞などの真核細胞)。細胞は、任意選択的に、そのポリヌクレオチド配列によりコードされる非天然グルコシルトランスフェラーゼを発現し得る。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド配列は、細胞内に一過的(すなわちゲノムに組み込まれていない)または安定に(すなわちゲノムに組み込まれている)存在する。
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、水、スクロースおよび1種以上の本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼ(例えば、配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼ)を含む反応組成物に関する。このような反応組成物は、少なくとも、開示されるように1,3-結合および/または1,6-結合を含むα-グルカンを生成する。
本明細書の反応組成物の温度は、必要に応じて制御される場合があり、例えば約5~50℃、20~40℃、20~30℃、20~25℃であり得る。
本明細書の反応組成物中のスクロースの初期濃度は、例えば、約20~400g/L、75~175g/Lまたは50~150g/Lであり得る。いくつかの態様では、スクロースの初期濃度は、少なくとも約50、75、100、150もしくは200g/Lであるか、または約50~600g/L、100~500g/L、50~100g/L、100~200g/L、150~450g/L、200~450g/Lもしくは250~600g/Lである。「スクロースの初期濃度」は、全ての反応成分(例えば、少なくとも水、スクロース、非天然グルコシルトランスフェラーゼ酵素)が加えられた/合わせられた直後の反応組成物におけるスクロース濃度を指す。
所定の実施形態における反応組成物のpHは、約4.0~8.0、5.0~8.0、5.5~7.5または5.5~6.5であり得る。いくつかの態様では、pHは、約4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5または8.0であり得る。pHは、好適な緩衝液、例えば、限定はされないが、リン酸塩、トリス、クエン酸塩またはそれらの組み合わせを添加または混入することによって調節または制御できる。本明細書の反応組成物における緩衝液濃度は、例えば、約0.1~300mM、0.1~100mM、10~100mM、10mM、20mMまたは50mMであり得る。
反応組成物は、本明細書に開示される反応条件の1つ以上を適用するために好適な任意の容器(例えば、不活性容器/コンテナ)内に含有することができる。いくつかの態様における不活性容器は、ステンレス鋼、プラスチックまたはガラス(またはこれらの成分の2つ以上を含む)であり得、かつ特定の反応を含有するのに好適な寸法であり得る。不活性容器は、任意選択的に撹拌装置を備えることができる。
本明細書の反応組成物は、1種、2種またはそれを超えるグルコシルトランスフェラーゼ酵素を、例えば、まさにその酵素の少なくとも1つが本明細書に開示される非天然グルコシルトランスフェラーゼである限り、含有することができる。いくつかの実施形態では、1種または2種のグルコシルトランスフェラーゼ酵素のみが反応組成物に含まれる。本明細書のグルコシルトランスフェラーゼ反応は、無細胞(例えば、細胞全体が存在しない)であり得、通常、無細胞(例えば、細胞全体が存在しない)である。
反応組成物に関して本明細書に開示される(例えば、前述および以下の実施例において)特徴のいずれも、本明細書のグルカン生成方法の適切な態様を特徴付けることができ、その逆も同様である。
本開示は、α-グルカンを生成するための方法であって、(a)少なくとも水、スクロースおよびα-グルカンを生成する本明細書に開示される少なくとも1種の非天然グルコシルトランスフェラーゼ酵素を接触させる工程であって、それにより、α-グルカンは、生成される、工程と;b)任意選択的に、工程(a)で生成されたα-グルカンを単離する工程とを含む方法にも関する。任意選択的に、グルカン合成法として特徴付けることができるこのような方法の実施は、典型的には、本明細書の反応組成物を実施する際にも実行される。
本明細書に開示されるようなグルカン合成法は、少なくとも水、スクロースおよびα-グルカンを生成する本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼを接触させる工程を含む。これらおよび任意選択的に他の試薬を一緒に添加し得、または下記で考察するような任意の順序で添加し得る。この工程は、水、スクロースおよびα-グルカンを合成する非天然グルコシルトランスフェラーゼ酵素を含む反応組成物を提供する工程として任意選択的に特徴付けることができる。本明細書の接触させる工程は、多くの方法において実施できる。例えば、所望の量のスクロースを最初に水に溶解させ(任意選択的に、他の成分、例えば緩衝液成分もこの調製段階で添加され得る)、その後、グルコシルトランスフェラーゼ酵素を添加することができる。溶液は、静止させたままであり得、または例えば撹拌もしくはオービタルシェイカーによる振盪によってかき混ぜられ得る。グルカン合成法は、バッチ、フェドバッチ、継続的な方法またはこれらの方法のいずれかの変形形態によって実施され得る。
所定の実施形態における反応の完了は、視覚的に(例えば、所定の実施形態では不溶性グルカンのさらなる蓄積がない)、かつ/または溶液中に残されたスクロース(残留スクロース)の量を測定することによって決定できるが、このとき、少なくとも約90%、95%または99%のスクロース消費率が反応完了を示し得る。開示されたプロセスの反応は、例えば、約1時間~約2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、36、48、60、72、96、120、144または168時間にわたって行われ得る。
本明細書のグルカン合成法のいくつかの態様において生成されるα-グルカンの収率は、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%または85%であり得る。いくつかの態様におけるこの収率は、反応のグルコシル成分を基準にして評価され得る。追加のまたは代替的ないくつかの実施形態では、ロイクロースの収率は、約18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満であり得る。いくつかの態様におけるα-グルカンおよび/またはロイクロースのそのような収率は、約16~24時間(例えば、約20時間)にわたって行われる反応において達成され、かつ/またはHPLCもしくはNIR分光法を用いて測定されるものである。
本明細書のグルカン合成法において生成されるα-グルカンは、任意選択的に単離され得る。所定の実施形態では、α-グルカン生成物を単離する工程は、遠心分離、濾過、分画、クロマトグラフィーによる分離、透析、蒸発または希釈の工程を少なくとも行うことを含む。簡単な例として、不溶性α-グルカンは、遠心分離または濾過によって分離され得る一方、可溶性α-グルカンは、クロマトグラフィーによる分離または透析によって分離され得る。単離は、任意選択的に、α-グルカン生成物を水または他の水性液体で1回、2回もしくはそれを超えて洗浄する工程および/またはα-グルカン生成物を乾燥させる工程をさらに含み得る。
前述または下記実施例において記載されるものなど、α-グルカンを合成するための開示された条件のいずれかを、本明細書に開示される反応組成物の実施に適用することができ(逆も同様である)、かつ/または非天然グルコシルトランスフェラーゼの特徴/活性を特徴付けるために適宜使用することができる。
本開示は、非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を作製する方法にも関する。本方法は、
(a)(i)配列番号4または配列番号4の55~960位と少なくとも約30%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ(ii)1,3-結合および/または1,6-結合を含むα-グルカンを合成する親グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を同定する工程と;
(b)工程(a)で同定されたポリヌクレオチド配列を改変して、(それによりコードされる親グルコシルトランスフェラーゼにおいて)配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸を置換し、それにより、
(i)親グルコシルトランスフェラーゼのα-グルカン収率よりも高いα-グルカン収率、および/または
(ii)親グルコシルトランスフェラーゼのロイクロース収率よりも低いロイクロース収率
を有する非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を提供する工程と
を含む。このような方法は、任意選択的に、そのポリヌクレオチドによってコードされる非天然グルコシルトランスフェラーゼを発現する方法において、このようにして作製されるポリヌクレオチドを使用する工程をさらに含み得る。このような発現方法は、例えば、当該技術分野で知られる任意の異種タンパク質発現法に従い得る。ポリヌクレオチドを作製する本方法は、任意選択的に、グルコシルトランスフェラーゼの生成物収率を増加させる方法として代替的に特徴付けることができる。
本明細書の同定工程(a)は、ある例において、親グルコシルトランスフェラーゼ酵素のアミノ酸配列を同定する工程を含み得る。ポリヌクレオチド配列は、親グルコシルトランスフェラーゼが同定された種において使用される遺伝暗号などの遺伝暗号(コドン)に従うこのアミノ酸配列から決定することができた。
本明細書の親グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチドを同定する工程は、例えば、(a)インシリコで、(b)核酸ハイブリダイゼーション工程を含む方法を用いて、(c)タンパク質シーケンシング工程を含む方法を用いて、および/または(d)タンパク質結合工程を含む方法を用いて実施することができる。
インシリコ検出に関して、例えば、コンピューターまたはデータベース(例えば、GENBANK、EMBL、REFSEQ、GENEPEPT、SWISS-PROT、PIR、PDBなどの公開データベース)に保存された候補となる親グルコシルトランスフェラーゼ酵素のアミノ酸配列(および/またはそのようなグルコシルトランスフェラーゼ酵素をコードするヌクレオチド配列)をインシリコで精査して、配列番号4(任意選択的にその開始メチオニンを有しない)または配列番号4の55~960位(およその触媒ドメイン)と少なくとも約30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、69%、70%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%同一であるアミノ酸配列を含むグルコシルトランスフェラーゼ酵素を同定することができる。そのような精査は、例えば、上述したようなアラインメントアルゴリズムまたはソフトウェア(例えば、BLASTN、BLASTP、ClustalW、ClustalV、Clustal-Omega、EMBOSS)の使用を介する、当該技術分野において知られる任意の手段の使用を含み得る。単に参照を目的として、開始メチオニンを有しない配列番号4が配列番号62の部分配列であることに留意されたい。
上に開示されるような親グルコシルトランスフェラーゼを同定する工程は、任意選択的に、核酸ハイブリダイゼーション工程を含む方法を介して実施することができる。そのような方法は、例えば、DNAハイブリダイゼーション(例えば、サザンブロット、ドットブロット)、RNAハイブリダイゼーション(例えば、ノーザンブロット)または核酸ハイブリダイゼーション工程(例えば、全てがオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを含み得るDNAシーケンシング、PCR、RT-PCR)を有する任意の他の方法の使用を含むことができる。配列番号4またはその部分配列(例えば、配列番号4の55~960の部分配列)をコードするポリヌクレオチド配列は、例えば、そのようなハイブリダイゼーションにおいてプローブとして使用することができる。ハイブリダイゼーション法を実施するための条件およびパラメーターは、一般によく知られており、例えばSambrook J,Fritsch EFおよびManiatis TのMolecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1989);Silhavy TJ,Bennan MLおよびEnquist LWのExperiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor,NY(1984);Greene Publishing Assoc.およびWiley-Interscienceにより出版されたAusubel FM et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Hoboken,NJ(1987);ならびにInnis MA、Gelfand DH、Sninsky JJおよびWhite TJ(Editors)のPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press,Inc.,San Diego,CA(1990)において開示される。
上に開示されるような親グルコシルトランスフェラーゼを同定する工程は、任意選択的に、タンパク質シーケンシング工程を含む方法を介して実施することができる。そのようなタンパク質シーケンシング工程は、例えば、N末端アミノ酸分析、C末端アミノ酸分析、エドマン分解法または質量分析法などの1つ以上の手法を含むことができる。
上に開示されるような親グルコシルトランスフェラーゼを同定する工程は、任意選択的に、タンパク質結合工程を含む方法を介して実施することができる。そのようなタンパク質結合工程は、例えば、配列番号4内(例えば、配列番号4の55~960位内)のモチーフまたはエピトープに結合する抗体を用いて実施することができる。
工程(a)(すなわち工程[b]における改変前)で同定されたポリヌクレオチドは、いくつかの態様において、表1に開示される任意のグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列と同一であるか、または少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含むグルコシルトランスフェラーゼをコードすることができる。そのようなグルコシルトランスフェラーゼによって生成されるα-グルカンは、例えば、本明細書に開示されるものであり得る。
本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を作製する方法は、工程(a)で同定された(親グルコシルトランスフェラーゼをコードする)ポリヌクレオチド配列を改変する工程(b)を含む。そのような改変により、配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置で親グルコシルトランスフェラーゼの少なくとも1つのアミノ酸が置換される。そのような1つ以上の置換から生じる(改変ポリヌクレオチド配列によってコードされる)非天然グルコシルトランスフェラーゼは、任意選択的に、本明細書において「子グルコシルトランスフェラーゼ」として特徴付けることができる。
工程(b)におけるポリヌクレオチドの好適な改変は、当該技術分野で知られる任意のDNA操作技術に従って行うことができる。改変する工程(b)は、任意選択的に、インシリコで実施することができ、その後、非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列の合成が行われる。例えば、工程(a)で同定されたポリヌクレオチド配列は、好適な配列操作プログラム/ソフトウェア(例えば、VECTOR NTI、Life Technologies、Carlsbad、CA;DNAStrider;DNASTAR、Madison、WI)を用いてインシリコで操作され得る。そのような仮想的な操作後、改変ポリヌクレオチド配列を、任意の好適な技術(例えば、オリゴヌクレオチドのアニーリングに基づく連結またはHughes et al.,Methods Enzymol.498:277-309(この文献は、参照により本明細書に組み込まれる)において開示される任意の技術)によって人工的に合成することができる。前述の方法論が(親グルコシルトランスフェラーゼをコードする)既存のポリヌクレオチドを有していることに必ず依存するとは考えられないことが理解されるはずである。
改変する工程(b)は、任意選択的に、工程(a)で同定された親グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列の物理的なコピーを用いて実施することができる。例として、そのようなポリヌクレオチドは、増幅された産物が本明細書の非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするような方法で設計されたプライマーを用いる、増幅のための鋳型として役立ち得る(例えば、Innis et al.,ibid.を参照されたい)。
本方法におけるアミノ酸置換は、配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置での本明細書に開示されるようなそれらの置換のいずれかであり得る。本明細書に開示されるような2つ以上のアミノ酸置換は、いくつかの態様において適用され得る。基本的には、本明細書で開示されるような任意の非天然グルコシルトランスフェラーゼは、本方法によって作製されるようなポリヌクレオチドによってコードされ得、例えば、結果として、本明細書に開示されるより高いα-グルカン収率および/またはより低いロイクロース収率プロファイルを有し得る。
本明細書に開示される組成物および方法の非限定的例としては、以下が挙げられる:
1.配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Val-552、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼであって、1,3-結合および/または1,6-結合を含むα-グルカンを合成し、(i)その置換位置でのみ非天然グルコシルトランスフェラーゼと異なる第2のグルコシルトランスフェラーゼのα-グルカン収率よりも高いα-グルカン収率、および/または(ii)第2のグルコシルトランスフェラーゼのロイクロース収率よりも低いロイクロース収率を有する非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
2.(i)アミノ酸残基Leu-373に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gln、Ala、Val、Met、PheもしくはLeu残基によるものであるか;(ii)アミノ酸残基Leu-428に対応する位置でのアミノ酸置換は、Val残基によるものであるか;(iii)アミノ酸残基Ala-472に対応する位置でのアミノ酸置換は、SerもしくはCys残基によるものであるか;(iv)アミノ酸残基Ala-510に対応する位置でのアミノ酸置換は、Glu、Ile、ValもしくはAsp残基によるものであるか;(v)アミノ酸残基Leu-513に対応する位置でのアミノ酸置換は、Tyr、PheもしくはTrp残基によるものであるか;(vi)アミノ酸残基Met-529に対応する位置でのアミノ酸置換は、LeuもしくはAsn残基によるものであるか;アミノ酸残基Val-552に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gly残基によるものであるか;(vii)アミノ酸残基Phe-607に対応する位置でのアミノ酸置換は、Trp、TyrもしくはAsn残基によるものであるか;(viii)アミノ酸残基Asn-613に対応する位置でのアミノ酸置換は、Val、Ile、Thr、Gly、MetもしくはLeu残基によるものであるか;(ix)アミノ酸残基Gln-616に対応する位置でのアミノ酸置換は、Glu残基によるものであるか;(x)アミノ酸残基Ser-631に対応する位置でのアミノ酸置換は、Thr、Asp、GluもしくはArg残基によるものであるか;(xi)アミノ酸残基Gly-633に対応する位置でのアミノ酸置換は、Trp残基によるものであるか;(xii)アミノ酸残基Phe-634に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ala残基によるものであるか;(xiii)アミノ酸残基Thr-635に対応する位置でのアミノ酸置換は、Trp、HisもしくはTyr残基によるものであるか;または(xiv)アミノ酸残基Phe-951に対応する位置でのアミノ酸置換は、Tyr残基によるものである、実施形態1の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
3.2つ以上のアミノ酸置換を含み、置換の少なくとも1つは、配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置におけるものである、実施形態1または2の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
4.配列番号62のアミノ酸残基Ala-510またはPhe-607に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、実施形態3の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
5.配列番号62のアミノ酸残基Ala-510およびPhe-607に対応する位置でアミノ酸置換を含む、実施形態4の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
6.α-グルカンは、不溶性であり、かつ少なくとも約50%のα-1,3結合を含み、任意選択的に、α-グルカンは、少なくとも100の重量平均重合度(DPw)を有する、実施形態1、2、3、4または5の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
7.配列番号4の残基55~960、配列番号65の残基54~957、配列番号30の残基55~960、配列番号28の残基55~960または配列番号20の残基55~960と少なくとも約90%同一である触媒ドメインを含む、実施形態6の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
8.配列番号4、配列番号65、配列番号30、配列番号28または配列番号20と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態7の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
9.非天然グルコシルトランスフェラーゼは、少なくとも約90%(または少なくとも95%)のα-1,3-結合を有する不溶性α-1,3-グルカンを合成する、実施形態7または8の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
10.α-グルカンは、不溶性であり、かつ少なくとも約75%のα-1,6-結合を含む、実施形態1、2、3、4または5の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
11.配列番号68、配列番号68の37~1338位、配列番号69、配列番号69の37~1554位または配列番号69の170~1554位と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態10の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
12.α-グルカン収率は、第2のグルコシルトランスフェラーゼのα-グルカン収率よりも少なくとも約10%高い、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
13.任意選択的に、1つ以上の調節配列は、ヌクレオチド配列に作動可能に連結され、好ましくは、1つ以上の調節配列は、プロモーター配列を含む、実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
14.水、スクロースおよび実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼを含む反応組成物。
15.α-グルカンを生成する方法であって、(a)少なくとも水、スクロースおよび実施形態1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ酵素を接触させる工程であって、それにより、α-グルカンは、生成される、工程と;(b)任意選択的に、工程(a)で生成されたα-グルカンを単離する工程とを含む方法。
16.非天然グルコシルトランスフェラーゼ(例えば、実施形態1~12のいずれか1つの)をコードするポリヌクレオチド配列を作製する方法であって、(a)(i)配列番号4または配列番号4の55~960位と少なくとも約30%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ(ii)1,3-結合および/または1,6-結合を含むα-グルカンを合成する親グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を同定する工程と;(b)工程(a)で同定されたポリヌクレオチド配列を改変して、配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Val-552、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置で親グルコシルトランスフェラーゼの少なくとも1つのアミノ酸を置換し、それにより、(i)親グルコシルトランスフェラーゼのα-グルカン収率よりも高いα-グルカン収率、および/または(ii)親グルコシルトランスフェラーゼのロイクロース収率よりも低いロイクロース収率を有する非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を提供する工程とを含む方法。
17.(i)アミノ酸残基Leu-373に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gln、Ala、Val、Met、PheもしくはLeu残基によるものであるか;(ii)アミノ酸残基Leu-428に対応する位置でのアミノ酸置換は、Val残基によるものであるか;(iii)アミノ酸残基Ala-472に対応する位置でのアミノ酸置換は、SerもしくはCys残基によるものであるか;(iv)アミノ酸残基Ala-510に対応する位置でのアミノ酸置換は、Glu、Ile、ValもしくはAsp残基によるものであるか;(v)アミノ酸残基Leu-513に対応する位置でのアミノ酸置換は、Tyr、PheもしくはTrp残基によるものであるか;(vi)アミノ酸残基Met-529に対応する位置でのアミノ酸置換は、LeuもしくはAsn残基によるものであるか;アミノ酸残基Val-552に対応する位置でのアミノ酸置換は、Gly残基によるものであるか;(vii)アミノ酸残基Phe-607に対応する位置でのアミノ酸置換は、Trp、TyrもしくはAsn残基によるものであるか;(viii)アミノ酸残基Asn-613に対応する位置でのアミノ酸置換は、Val、Ile、Thr、Gly、MetもしくはLeu残基によるものであるか;(ix)アミノ酸残基Gln-616に対応する位置でのアミノ酸置換は、Glu残基によるものであるか;(x)アミノ酸残基Ser-631に対応する位置でのアミノ酸置換は、Thr、Asp、GluもしくはArg残基によるものであるか;(xi)アミノ酸残基Gly-633に対応する位置でのアミノ酸置換は、Trp残基によるものであるか;(xii)アミノ酸残基Phe-634に対応する位置でのアミノ酸置換は、Ala残基によるものであるか;(xiii)アミノ酸残基Thr-635に対応する位置でのアミノ酸置換は、Trp、HisもしくはTyr残基によるものであるか;または(xiv)アミノ酸残基Phe-951に対応する位置でのアミノ酸置換は、Tyr残基によるものである、実施形態16の方法。
18.同定する工程は、(a)インシリコで、(b)核酸ハイブリダイゼーション工程を含む方法を用いて、(c)タンパク質シーケンシング工程を含む方法を用いて、および/もしくは(d)タンパク質結合工程を含む方法を用いて実施され;かつ/または改変する工程は、(e)インシリコで実施され、その後、非天然グルコシルトランスフェラーゼ酵素をコードするポリヌクレオチド配列の合成が行われるか、または(f)親グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列の物理的なコピーを使用して実施される、実施形態16または17の方法。
本開示を以下の実施例において詳細に説明する。これらの実施例は、本明細書の所定の好ましい態様を示しているが、単に説明の目的でのみ記されていることを理解されたい。上述の考察およびこれらの実施例から、当業者であれば、本明細書に開示した実施形態の本質的な特徴を確認することができ、本発明の趣旨および範囲を逸脱しない範囲で、本明細書に開示した実施形態を様々な使用および条件に適合させるために様々な変更形態および修飾形態をなし得る。
実施例1
α-グルカン合成に対するグルコシルトランスフェラーゼの選択性に影響を及ぼすアミノ酸部位の分析
本実施例は、スクロースからのα-グルカンの合成に対して向上した選択性を有するグルコシルトランスフェラーゼバリアントに関するスクリーニングについて記載する。このスクリーニングの別の目的は、ロイクロースおよびグルコ-オリゴ糖などの副生成物の合成の減少を示すグルコシルトランスフェラーゼバリアントを同定することであった。これらの収率特性のいずれかまたは両方を有するバリアントを同定した。
本実施例におけるアミノ酸置換を作製するために使用されるグルコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列は、配列番号4(GTF6855)であり、これは、本質的にはストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)SK126(表1を参照されたい)由来の全長野生型グルコシルトランスフェラーゼ(配列番号62によって表される)のN末端がトランケートされた(シグナルペプチドおよび可変領域が除去された)バージョンである。配列番号4においてなされる置換は、配列番号4の各アミノ酸残基/位置(配列番号4のMet-1残基を除く)が配列番号62内のアミノ酸残基/位置と適宜に対応するため、天然のアミノ酸残基に対する置換として特徴付けられ得る。少なくともスクロースおよび水を含む反応において、配列番号4のグルコシルトランスフェラーゼは、通常、約100%のα-1,3結合および400以上のDPwを有するα-グルカンを生成する(例えば、米国特許第8871474号明細書および同第9169506号明細書ならびに米国特許出願公開第2017/0002336号明細書(これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。不溶性であるこのα-グルカン生成物は、例えば、濾過を介して酵素的合成後に単離することができる。
本実施例を要約すると、部位評価ライブラリー(SEL)由来のGTF6855バリアント(各々が単一のアミノ酸置換を有する)は、それぞれ細菌に発現され、精製され、かつ100ppmの濃度に標準化された。次に、α-1,3グルカン合成反応における基質としてスクロースを用いて各酵素調製物を(三重に)選別した。各反応において生成されるα-1,3グルカンポリマーの量を決定することに加えて、可溶性糖生成物(フルクトース、グルコース、ロイクロース、グルコ-オリゴ糖)および各反応の残留スクロースをおよそ20時間のインキュベーション後にHPLCによって分析した。
バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)宿主においてGTF6855(配列番号4)の種々の単一アミノ酸置換バリアントを個別に発現するためのプラスミドを作製した。このようなプラスミドを次のとおり作製した。(5’から3’方向に作動可能に連結された)B.サブティリス(B.subtilis)aprEプロモーター、配列番号4(GTF6855)をコードするコドン最適化配列およびBPN’ターミネーターを有するDNA発現カセットを合成した。この発現カセットを(pHYT-GTF6855を形成する)pHYT複製型シャトルベクターにクローン化し、B.サブティリス(B.subtilis)CBS12-1に形質転換した。pHYTベクターは、BstEIIおよびEcoRI部位を使用してテトラサイクリン耐性遺伝子の後ろにターミネーター配列(配列番号67)を加えることによりpHY300PLK(Takara)から誘導された。pHY300PLKにおけるHindIII部位は、リンカー配列(示さず)をBamHIおよびHindIII部位にクローン化することにより除去された。pHYT-GTF6855プラスミドを増幅し、SELを生成するために使用した。結果として得られる単一アミノ酸置換GTFをコードするプラスミドは、各置換を検証するために配列決定された。
GTF6855(配列番号4)およびその単一アミノ酸置換バリアントを生成するために、pHYT-GTF6855またはその変異したバージョンで個別に形質転換されたB.サブティリス(B.subtilis)をトリプトンソーヤブロス(Oxoid Ltd.,UK)およびGrant’s II培地で培養した。ハートインフュージョン寒天プレート(Difco Laboratories、MI)を使用して、形質転換体を選択した。プラスミドの完全性は、25μg/mLのテトラサイクリンの添加によって維持した。37℃での約6時間のインキュベーション後、発現の対象となった各GTFを増殖培地において検出した。遠心分離および濾過後、発現したGTFを有する培養上清を得た。上清中に存在するGTF酵素は、洗浄された(2×MILLIQ 1×25mM NaH2PO4 pH5.7、中間の遠心分離工程100×gを伴う)SUPERDEX 200レジン(GE Healthcare)を用いる親和性クロマトグラフィーにより、明らかに一様になるまで精製された。各GTFを、25mM NaH2PO4 pH5.7中のデキストラン T1(Pharmacosmos)の15%溶液を用いて100×gの遠心分離によって溶出した。精製された各GTFを、Harvard Apparatusの96ウェルDISPODIALYZER(10000ダルトン MWCO)を用いて、25mM NaH2PO4 pH5.7緩衝液(少なくとも100×)に対して透析した。
透析後、精製されたGTF6855を標準として用いて、OD280によりGTF酵素濃度を決定した。精製された各GTFの100ppmへの標準化は、25mM NaH2PO4 pH5.7により適切に希釈することによって達成された。各サンプルのタンパク質濃度は、AGILENT BIO SEC3ガードカラムカラム(3μm 100Å(4.6×50mm)を装着したAGILENT 1200(Agilent Technologies)HPLCを用いて確認された。5μLのサンプルを測定毎にカラムに注入した。均一濃度流の25mM KH2PO4 pH6.8+0.1M NaClにより流速0.5mL/分で1.3分間化合物を溶出した。
各GTF(GTF6855およびその各バリアント)をスクロースとともに反応に投入して、収率および選択性を決定した。各反応を次のとおり実施した:37.5μLの100ppm酵素サンプル(BSA検量線に基づくppm)を20mM Na2HPO4/NaH2PO4 pH5.7中の262.5μLの86g/Lスクロース(75g/L終濃度)に添加し、30℃で一晩(約20時間)インキュベートした。このインキュベーション後、各反応を80℃で1時間のインキュベーションによりクエンチした。クエンチされた各反応の一定分量200μLを、0.45μmフィルタープレート(Millipore 0.45μm 親水性)を介して真空濾過し、各濾液をHPLC糖分析のための調製物中において5倍希釈した(10μLのサンプル+40μLの20mM Na2HPO4/NaH2PO4)。
希釈された各濾液中のスクロース濃度、グルコース濃度、フルクトース濃度、ロイクロース濃度および相対的なオリゴ糖濃度を、150×7.80mm PHENOMENEX REZEX RNM炭水化物Na+8%カラムPHENOMENX KRUDKATCHER0.5μmガードカラムを装着したAGILENT 1200(Agilent Technologies)HPLCを用いて決定した。カラムは、10mM Na2HPO4/NaH2PO4 pH6.7を用いて流速0.9mL/分の均一濃度により80℃で操作された(1サンプル当たり5分)。5μLの希釈サンプルを注入した。適切なスクロース、グルコース、フルクトースおよびロイクロースの検量線を使用して糖濃度を決定した。精製されたグルコ-オリゴ糖の混合物を使用してオリゴマー濃度を決定した。
上記方法論により測定されるような反応(約20時間)のプロファイルが表3において提供される。
表3のデータに基づくと、GTF6855(配列番号4)における所定の単一アミノ酸置換により、例えばグルカン合成反応において、この酵素のα-1,3-グルカン収率を増加させることができ、かつ/またはそのロイクロース収率を減少させることができることは明白である。
実施例2
他のグルコシルトランスフェラーゼにおける単一アミノ酸置換の効果の分析
本実施例は、GTF6855(配列番号4)以外のグルコシルトランスフェラーゼの活性における所定の単一アミノ酸置換の効果について記載する。概して、α-グルカン収率および/またはロイクロース収率に著しい効果を有する実施例1において観察される置換に対応する(または類似する)置換は、異なるグルコシルトランスフェラーゼに対して類似の効果を与えるのに有用であり得ると思われる。
Phe-607-Tyr
実施例1は、例えば、配列番号62の607位に対応する位置でのGTF6855(配列番号4)における置換が酵素活性に影響を及ぼしたことを実証した(表3)。具体的には、AsnまたはTrp残基によるPhe残基の置換の両方は、非置換酵素のそれぞれの収率と比較して、α-1,3グルカン収率(増加)およびロイクロース収率(減少)に対して著しい効果を有した。
異なるGTFにおいて類似の置換が収率に同様に影響を及ぼすことができたかを試験するために、配列番号62の607位に対応するGTF7527(GTFJ、配列番号65)の位置で置換を行い、PheをTyr残基に交換した。GTF7527(配列番号65)は、本質的にはストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)(表1を参照されたい)由来の全長野生型グルコシルトランスフェラーゼ(配列番号60によって表される)のN末端がトランケートされた(シグナルペプチドおよび可変領域が除去された)バージョンである。配列番号65においてなされる置換は、配列番号65の各アミノ酸残基/位置(配列番号65のMet-1残基を除く)が配列番号60内のアミノ酸残基/位置と適宜に対応するため、天然のアミノ酸残基に対する置換として特徴付けられ得る。少なくともスクロースおよび水を含む反応において、配列番号65のグルコシルトランスフェラーゼは、通常、約100%のα-1,3結合および400以上のDPnを有するα-グルカンを生成する(例えば、米国特許出願公開第2017/0002335号明細書[出願番号第15/182,747号](これは、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。グルカン合成反応は、配列番号62の607位に対応する位置でのPheからTyrへの置換を含むGTF7527(配列番号65)またはそのバージョンを用いて、以下のとおり準備される:容器、100rpmで撹拌される250mLのくぼみ付き振盪フラスコ;初期pH、5.5;反応容量、50mL;スクロース、100.1g/L;GTF、100U/L;KH2PO4、25mM;温度、25℃;時間、20時間。二重に実行された各反応のプロファイル(実施例1において開示されるものと類似の方法論により測定される)が表4において提供される。
表4のデータに基づくと、GTF7527(配列番号65)におけるF607Y置換により、例えばグルカン合成反応において、この酵素のα-1,3-グルカン収率を増加させることができ、かつ/またはそのロイクロース収率を減少させることができることは明白である。
Ala-510-Glu、Ala-510-ValまたはAla-510-Cys
実施例1は、例えば、配列番号62の510位に対応する位置でのGTF6855(配列番号4)における置換が酵素活性に影響を及ぼしたことを実証した(表3)。具体的には、Glu、IleまたはVal残基によるAla残基の置換の全ては、非置換酵素のそれぞれの収率と比較して、α-1,3グルカン収率(増加)およびロイクロース収率(減少)に対して著しい効果を有した。
異なるGTFにおいてこれらまたは類似の置換が収率に同様に影響を及ぼすことができたかを試験するために、配列番号62の510位に対応するGTF2919(配列番号28)、0427(配列番号26)、5926(配列番号14)、0874(配列番号2)、0544(配列番号12)、2379(配列番号6)、5618(配列番号18)、4297(配列番号16)、1366(配列番号24)および6907(配列番号36)の位置で置換を行い、AlaをGlu、ValまたはCys残基に交換した。これらのGTFの各々は、本質的には全長野生型グルコシルトランスフェラーゼ(例えば、表1に列記されるものなど、それぞれのGENBANKの注釈情報を参照されたい)のN末端がトランケートされた(シグナルペプチドおよび可変領域が除去された)バージョンである。配列番号28、26、14、2、12、6、18、16、24および36の各々においてなされる置換は、これらの配列(各々のMet-1残基を除く)の各アミノ酸残基/位置が各々の対応する全長野生型グルコシルトランスフェラーゼ対応物内のアミノ酸残基/位置と適宜に対応するため、天然のアミノ酸残基に対する置換として特徴付けられ得る。表2は、少なくともスクロースおよび水を含む反応において配列番号28、26、14、2、12、6、18、16、24および36の各々によって通常生成されるα-グルカンを列記する。
GTF2919(配列番号28)、0427(配列番号26)、5926(配列番号14)、0874(配列番号2)、0544(配列番号12)、2379(配列番号6)、5618(配列番号18)、4297(配列番号16)、1366(配列番号24)もしくは6907(配列番号36)または配列番号62の510位に対応する位置で置換を含むそのバージョンの作製は、以下のとおり実施された。これらのGTFの各々をコードするコドン最適化(大腸菌(E.coli)用)配列を細菌発現のための好適なプラスミド
に個別にクローン化した。次に、各コンストラクトを大腸菌(E.coli)BL21-AI(Invitrogen、Carlsbad、CA)に形質転換した。形質転換株を、100mg/Lのアンピシリンを含有する10mLの自動誘導培地(10g/Lトリプトン、5g/L酵母抽出物、5g/L NaCl、50mM Na2HPO4、50mM
KH2PO4、25mM(NH4)2SO4、3mM MgSO4、0.75%グリセロール、0.075%グルコース、0.05%アラビノース)中において37℃で20時間、200rpmの撹拌下で増殖させた。細胞を4℃における8000rpmでの遠心分離により回収し、CelLytic(商標)Express(Sigma、St.Louise、MO)を伴う1mLの20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.0中で製造業者の指示書に従って再懸濁した。加えて、再懸濁した細胞を1回以上の凍結融解サイクルに付して、細胞溶解を確実にした。溶解された細胞を、室温において10分間12,000gで遠心分離した。結果として生じた各上清をSDS-PAGEにより分析して、発現されている特定のGTF酵素の発現を確認した。各上清を、酵素活性が決定され得るまで4℃において氷上に保持し(1時間以内)、かつ/または-20℃で保存した。
グルカン合成反応を準備し、その生成物を米国特許出願公開第2014/0087431号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)の開示におおむね従って分析した。各反応を24~30時間実行した。各反応のプロファイルが表5において提供される。
表5のデータに基づくと、配列番号62の510位に対応する位置での種々のGTFにおけるいくつかの置換により、例えばグルカン合成反応において、GTFのα-グルカン収率を増加させることができ、かつ/またはそのロイクロース収率を減少させることができることは明白である。
Phe-951-Tyr、Leu-373-PheまたはLeu-373-Met
GTF6855(配列番号4)における置換が酵素活性に影響を及ぼしたことを実証した(表3)。具体的には、Tyr残基によるPhe-951残基の置換は、非置換酵素のそれぞれの収率と比較して、ロイクロース収率(減少)に対して著しい効果を有した。Ala、GlnまたはVal残基によるLeu-373残基の置換は、ロイクロース収率に対して著しい低下効果も有した。
類似の置換が異なるGTFにおいて収率に影響を及ぼすことができたかを試験するために、GTF5604(配列番号68)の839位(PheをTyrに交換する)およびGTF8845(配列番号69、下記の代用となるGTFを参照されたい)の886位(PheをTyrに交換する)で置換を行い、これらの各々の位置は、配列番号62の951位に対応する。他の分析では、GTF5604(配列番号68)の316位(LeuをPheまたはMetに交換する)およびGTF8845(配列番号69、下記の代用のGTFを参照されたい)の363位(LeuをPheまたはMetに交換する)で置換を行い、これら各々の位置は、配列番号62の373位に対応する。
GTF5604(配列番号68)は、ストレプトコッカス・クリセティ(Streptococcus criceti)(表1を参照されたい)由来の全長野生型グルコシルトランスフェラーゼ(残基1~36のシグナルペプチドを含む)であり、そのため、発現された成熟形態の酵素は、配列番号68の残基37~1338を有すると予想された。GTF8845(配列番号69)は、ストレプトコッカス・ソブリナス(Streptococcus sobrinus)(表1を参照されたい)由来の全長野生型グルコシルトランスフェラーゼ(残基1~36のシグナルペプチドを含む)である。GTF8845の代用物は、本明細書において配列番号70の形態で発現され、これは、B.サブティリス(B.subtilis)のAprEシグナルペプチドと融合した全長野生型グルコシルトランスフェラーゼのN末端がトランケートされたバージョンに対応する(GTF8845について列記される上記置換は、実際に代用のGTFに関して試験された)。具体的には、配列番号70の残基30~1414は、GTF8845(配列番号69)の残基170~1554に対応する一方、配列番号70の残基1~29は、シグナルペプチドを含む異種アミノ酸に対応する。したがって、発現された成熟形態の代用のGTFは、GTF8845(配列番号69)の残基170~1554を有すると予想された。少なくともスクロースおよび水を含む反応において、成熟形態のGTF5604(配列番号68)は、約100%のα-1,6結合を有するDP8および上記(すなわちDP8+)(例えば、DP18または19)のオリゴ糖を生成すると考えられる(国際公開第2015/183714号パンフレットまたは米国特許出願公開第2017/0218093号明細書(これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる)の表4[サンプルSG1018]を参照されたい)。少なくともスクロースおよび水を含む反応において、GTF8845(配列番号69)の残基170~1554を有する成熟GTFは、約80%のα-1,6結合、3%のα-1,3結合および17%のα-1,3,6結合を有するDP8+のオリゴ糖(例えば、DP116または117)を生成すると考えられる(国際公開第2015/183714号パンフレットの表4[サンプルSG1051]を参照されたい)。
バチルス(Bacillus)(タンパク質分泌)において前述のGTFおよびその単一アミノ酸置換バリアントを発現するためのプラスミドを適宜作製した。次に、これらのプラスミドを個別にバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)株BG6006に形質転換し、形質転換クローンをテトラサイクリン(12.5μg/mL)プレートで選択した。BG6006は、よく知られたB.サブティリス(B.subtilis)基準株168に由来する9つのプロテアーゼの欠損株であり、遺伝子型:amyE::xylRPxylAcomK-ermC、degUHy32、oppA、DspoIIE3501、ΔaprE、ΔnprE、Δepr、ΔispA、Δbpr、Δvpr、ΔwprA、Δmpr-ybfJ、ΔnprBを有する。各形質転換株を、最初に10μg/mLのテトラサイクリンを含有するLB培地において増殖させ、次に12.5μg/mLのテトラサイクリンを含有するGrants II培地に継代し、37℃で2日間増殖させた。培養物を4℃、15,000gで30分間旋回させ、上清を0.22μmフィルターで濾過した。各培養物から濾過された上清をSDS-PAGEにかけて、GTFの発現を確認した。GTFバリアントとそれらの対応する非バリアントの親との間で発現レベルの明らかな相違は観察されなかった。
グルカン合成反応を準備し、その生成物を以下のとおり分析した。発現されたGTFを含有する上記で作製したB.サブティリス(B.subtilis)の上清を使用して、基質としてスクロースを含む反応を準備した。各反応は、100g/Lのスクロース、10%(v/v)のGTF上清、10mMクエン酸ナトリウム緩衝液pH5.0および1mM CaCl2を含み、37℃で1日または2日間保持した。α-グルカン生成物(例えば、DP3~8またはDP8+の可溶性グルコ-オリゴ糖)の形成の他に、各反応は、例えば、フルクトース副産物およびロイクロース副生成物も生成した。反応を濾過し、HPLCにより分析した。BioRad AMINEX HPX-87Cカラムを使用して小さい糖(単糖および二糖)を分析した。直列の2つのBioRad AMINEX HPX-87Cカラム(300cm×7.8mm)を85℃の外部ヒーター中に配置した。標準のカートリッジホルダー(BioRadカタログ番号125-0131)は、MICROGUARD CARBO-Cカートリッジ(BioRadカタログ番号125-0128)を収容した。移動相は、流速0.6mL/分のd.d.H2Oであった。注入量は、10μLであった。RI検出器を40℃で410に設定した。分析時間は、各サンプルについて35分であった。BioRad AMINEX HPX-42Aカラムを使用してオリゴ糖を分析した。BioRad AMINEX HPX-42Aカラム(300cm×7.8mm)を85℃の外部ヒーター中に配置した。脱灰カートリッジホルダー(BioRadカタログ番号125-0139)は、脱灰再充填カートリッジ(BioRadカタログ番号125-0118)を収容した。移動相および検出は、HPX-87Cカラムについてのものと同様であった。下の表6は、各GTF反応における糖およびオリゴ糖のHPLC分析を要約している。データは、それぞれの反応を4回繰り返したものの平均であり、それぞれの標準偏差は、7%未満であった。
表6に示されるように、親GTF5604は、約10.6g/Lのロイクロースを生成した。GTF5604のL373F、L373MおよびF951Yバリアントを使用する反応では、ロイクロースは、それぞれ3.4g/L、7.1g/Lおよび1.1g/L生成された。このロイクロース副生成物の減少と一致して、各バリアントGTFの反応は、フルクトース副産物レベルとDP8+オリゴマーの推定レベルとの両方において増加した。これらの反応プロファイルは、概して、GTF8845およびL373Fを除くそのバリアントによって反映された。
表6に列記される反応生成物の結合プロファイルは、GC/MSによって分析された。非バリアントの親GTFによる生成物とそれらの対応する単一アミノ酸置換バリアントの生成物との間で、結合において著しい相違は観察されなかった。
要するに、表6のデータに基づくと、配列番号62の373位または951位に対応する位置での種々のGTFにおけるいくつかの置換により、例えばグルカン合成反応において、GTFのα-グルカン収率を増加させることができ、かつ/またはそのロイクロース収率を減少させることができることは明白である。
実施例3
α-グルカン合成に対するグルコシルトランスフェラーゼの選択性における2つ以上のアミノ酸置換の効果の分析
本実施例は、グルコシルトランスフェラーゼに対する複数のアミノ酸置換の導入の効果およびα-グルカン合成に対する酵素選択性におけるそれらの効果を決定することについて記載する。
簡潔に述べると、配列番号4(GTF6855、このグルコシルトランスフェラーゼの説明については、表1および実施例1を参照されたい)に対して所定のアミノ酸置換を行った。これらの置換は、下の表7に列記される。各バリアント酵素を、以下と同じまたは類似のパラメーターを用いてグルカン合成反応に投入した:容器、120rpmで撹拌される250mLのくぼみ付き振盪フラスコ;初期pH、5.7;反応容量、50mL;スクロース、75g/L;GTF、酵素を異種性発現する大腸菌(E.coli)細胞の1.5mLの溶解物;KH2PO4、20mM;温度、30℃;時間、約20~24時間。各反応のα-1,3グルカン収率(実施例1において開示されるものと類似の方法論により測定される)が表7において提供される。
表7のデータに基づくと、GTF6855(配列番号4)への複数のアミノ酸置換の導入により、この酵素のα-1,3-グルカン収率を増加させることができる。例えば、これらの収率を、表3に示される置換を有しないGTF6855(配列番号4)のものと比較されたい。表7に列記されるバリアントGTF酵素の各々は、ロイクロース、グルコースおよびグルコ-オリゴマーの収率の著しい減少も示した(データは示さず)。
例えば、配列番号62の510位および/または607位に対応する位置などで複数の置換を有するGTFがGTFのα-グルカン収率を増加させることができることは明白である。
以上、本発明を要約すると下記の通りである。
1.配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を含む非天然グルコシルトランスフェラーゼであって、1,3-結合および/または1,6-結合を含むα-グルカンを合成し、
(i)前記置換位置のみで前記非天然グルコシルトランスフェラーゼと異なる第2のグルコシルトランスフェラーゼのα-グルカン収率よりも高いα-グルカン収率、および/または
(ii)前記第2のグルコシルトランスフェラーゼのロイクロース収率よりも低いロイクロース収率
を有する非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
2.(i)アミノ酸残基Leu-373に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Gln、Ala、Val、Met、PheもしくはLeu残基によるものであるか;
(ii)アミノ酸残基Leu-428に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Va
l残基によるものであるか;
(iii)アミノ酸残基Ala-472に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、SerもしくはCys残基によるものであるか;
(iv)アミノ酸残基Ala-510に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Glu、Ile、ValもしくはAsp残基によるものであるか;
(v)アミノ酸残基Leu-513に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Tyr、PheもしくはTrp残基によるものであるか;
(vi)アミノ酸残基Met-529に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、LeuもしくはAsn残基によるものであるか;
(vii)アミノ酸残基Phe-607に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Trp、TyrもしくはAsn残基によるものであるか;
(viii)アミノ酸残基Asn-613に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Val、Ile、Thr、Gly、MetもしくはLeu残基によるものであるか;
(ix)アミノ酸残基Gln-616に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Glu残基によるものであるか;
(x)アミノ酸残基Ser-631に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Thr、Asp、GluもしくはArg残基によるものであるか;
(xi)アミノ酸残基Gly-633に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Trp残基によるものであるか;
(xii)アミノ酸残基Phe-634に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Ala残基によるものであるか;
(xiii)アミノ酸残基Thr-635に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Trp、HisもしくはTyr残基によるものであるか;または
(xiv)アミノ酸残基Phe-951に対応する前記位置での前記アミノ酸置換は、Tyr残基によるものである、上記1に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
3.2つ以上のアミノ酸置換を含み、前記置換の少なくとも1つは、配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置におけるものである、上記1に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
4.配列番号62のアミノ酸残基Ala-510またはPhe-607に対応する位置で少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、上記3に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
5.配列番号62のアミノ酸残基Ala-510およびPhe-607に対応する位置でアミノ酸置換を含む、上記4に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
6.前記α-グルカンは、不溶性であり、かつ少なくとも約50%のα-1,3結合を含み、任意選択的に、前記α-グルカンは、少なくとも100の重量平均重合度(DPw)を有する、上記1に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
7.配列番号4の残基55~960、配列番号65の残基54~957、配列番号30の残基55~960、配列番号28の残基55~960または配列番号20の残基55~960と少なくとも約90%同一である触媒ドメインを含む、上記6に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
8.配列番号4、配列番号65、配列番号30、配列番号28または配列番号20と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む、上記7に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
9.少なくとも約90%のα-1,3-結合を有する不溶性α-1,3-グルカンを合成する、上記7に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
10.前記α-グルカンは、不溶性であり、かつ少なくとも約75%のα-1,6-結合を含む、上記1に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
11.配列番号68、配列番号68の37~1338位、配列番号69、配列番号69の
37~1554位または配列番号69の170~1554位と少なくとも約90%同一であるアミノ酸配列を含む、上記10に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
12.前記α-グルカン収率は、前記第2のグルコシルトランスフェラーゼの前記α-グルカン収率よりも少なくとも約10%高い、上記1に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ。
13.上記1に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、任意選択的に、1つ以上の調節配列は、前記ヌクレオチド配列に作動可能に連結され、好ましくは、前記1つ以上の調節配列は、プロモーター配列を含む、ポリヌクレオチド。
14.水、スクロースおよび上記1に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼを含む反応組成物。
15.α-グルカンを生成する方法であって、
(a)少なくとも水、スクロースおよび請求項1に記載の非天然グルコシルトランスフェラーゼ酵素を接触させる工程であって、それにより、α-グルカンは、生成される、工程と;
(b)任意選択的に、工程(a)で生成された前記α-グルカンを単離する工程と
を含む方法。
16.非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を作製する方法であって、
(a)(i)配列番号4または配列番号4の55~960位と少なくとも約30%同一であるアミノ酸配列を含み、かつ(ii)1,3-結合および/または1,6-結合を含むα-グルカンを合成する親グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を同定する工程と;
(b)工程(a)で同定された前記ポリヌクレオチド配列を改変して、配列番号62のアミノ酸残基Leu-373、Leu-428、Ala-472、Ala-510、Leu-513、Met-529、Phe-607、Asn-613、Gln-616、Ser-631、Gly-633、Phe-634、Thr-635またはPhe-951に対応する位置で前記親グルコシルトランスフェラーゼの少なくとも1つのアミノ酸を置換し、それにより、
(i)前記親グルコシルトランスフェラーゼのα-グルカン収率よりも高いα-グルカン収率、および/または
(ii)前記親グルコシルトランスフェラーゼのロイクロース収率よりも低いロイクロース収率
を有する非天然グルコシルトランスフェラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を提供する工程と
を含む方法。
17.前記同定する工程は、
(a)インシリコで、
(b)核酸ハイブリダイゼーション工程を含む方法を用いて、
(c)タンパク質シーケンシング工程を含む方法を用いて、および/もしくは
(d)タンパク質結合工程を含む方法を用いて実施され;かつ/または
前記改変する工程は、
(e)インシリコで実施され、その後、前記非天然グルコシルトランスフェラーゼ酵素をコードする前記ポリヌクレオチド配列の合成が行われるか、もしくは
(f)前記親グルコシルトランスフェラーゼをコードする前記ポリヌクレオチド配列の物理的なコピーを使用して実施される、上記16に記載の方法。