以下、本発明のエンコーダー、エンコーダーの製造方法、ロボットおよびプリンターを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
1.水平多関節ロボット
図1は、実施形態に係るロボットの一例である水平多関節ロボットを示す側面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図1中の基台側を「基端」、その反対側(エンドエフェクター側)を「先端側」と言う。また、図1の上下方向を「鉛直方向」とし、左右方向を「水平方向」とする。
図1に示すロボット100は、いわゆる水平多関節ロボット(スカラロボット)であり、例えば、精密機器等を製造する製造工程等で用いられ、精密機器や部品等の把持や搬送等を行うことができる。
図1に示すように、ロボット100は、基台110と、第1アーム120と、第2アーム130と、作業ヘッド140と、エンドエフェクター150と、配線引き回し部160と、を有している。以下、ロボット100の各部を順次簡単に説明する。
基台110は、例えば、図示しない床面にボルト等によって固定されている。基台110の上端部には、第1アーム120が連結されている。第1アーム120は、基台110に対して鉛直方向に沿う第1軸J1まわりに回動可能となっている。
基台110内には、第1アーム120を回動させる駆動力を発生させる第1モーターであるモーター111と、モーター111の駆動力を減速する第1減速機である減速機112とが設置されている。減速機112の入力軸は、モーター111の回動軸に連結され、減速機112の出力軸は、第1アーム120に連結されている。そのため、モーター111が駆動し、その駆動力が減速機112を介して第1アーム120に伝達されると、第1アーム120が基台110に対して第1軸J1まわりに水平面内で回動する。
また、基台110および第1アーム120には、減速機112の出力軸の回動角度を検出することで、基台110に対する第1アーム120の回動状態を検出する第1エンコーダーであるエンコーダー1が設けられている。ここで、エンコーダー1および減速機112は、エンコーダーユニット10を構成している。
第1アーム120の先端部には、第2アーム130が連結している。第2アーム130は、第1アーム120に対して鉛直方向に沿う第2軸J2まわりに回動可能となっている。図示しないが、第2アーム130内には、第2アーム130を回動させる駆動力を発生させる第2モーターと、第2モーターの駆動力を減速する第2減速機とが設置されている。そして、第2モーターの駆動力が第2減速機を介して第1アーム120に伝達されることにより、第2アーム130が第1アーム120に対して第2軸J2まわりに水平面内で回動する。また、図示しないが、第2モーターには、第1アーム120に対する第2アーム130の回動状態を検出する第2エンコーダーが設けられている。
第2アーム130の先端部には、作業ヘッド140が配置されている。作業ヘッド140は、第2アーム130の先端部に同軸的に配置された、図示しないスプラインナットおよびボールネジナットに挿通されたスプラインシャフト141を有している。スプラインシャフト141は、第2アーム130に対して、その軸まわりに回転可能であり、かつ、上下方向に移動(昇降)可能となっている。
第2アーム130内には、図示しないが、回転モーターおよび昇降モーターが配置されている。回転モーターの駆動力は、図示しない駆動力伝達機構によってスプラインナットに伝達され、スプラインナットが正逆回転すると、スプラインシャフト141が鉛直方向に沿う第3軸J3まわりに正逆回転する。また、図示しないが、回転モーターには、第2アーム130に対するスプラインシャフト141の回動状態を検出する第3エンコーダーが設けられている。
一方、昇降モーターの駆動力は、図示しない駆動力伝達機構によってボールネジナットに伝達され、ボールネジナットが正逆回転すると、スプラインシャフト141が上下に移動する。昇降モーターには、第2アーム130に対するスプラインシャフト141の移動量を検出する第4エンコーダーが設けられている。
スプラインシャフト141の先端部(下端部)には、エンドエフェクター150が連結されている。エンドエフェクター150としては、特に限定されず、例えば、被搬送物を把持するもの、被加工物を加工するもの等が挙げられる。
第2アーム130内に配置された各電子部品、例えば、第2モーター、回転モーター、昇降モーター、第1~第4エンコーダー等に接続される複数の配線は、第2アーム130と基台110とを連結する管状の配線引き回し部160内を通って基台110内まで引き回されている。さらに、かかる複数の配線は、基台110内でまとめられることによって、モーター111およびエンコーダー1に接続される配線とともに、基台110の外部に設置され、ロボット100を統括制御する図示しない制御装置まで引き回される。
以上、ロボット100の構成について簡単に説明した。このロボット100は、前述したように、第1部材である基台110と、基台110に対して回動する第2部材である第1アーム120と、エンコーダー1と、を備え、エンコーダー1が基台110に対する第1アーム120の回動角度を検出する。このようなロボット100によれば、後述するように第1アーム120の回動角度を高精度に検出し、その検出結果に基づいて、第1アーム120の駆動制御を高精度に行うことができる。
2.エンコーダー
<第1実施形態>
以下、エンコーダー1について詳述する。なお、以下では、エンコーダー1をロボット100に組み込む場合を例に説明する。
図2は、第1実施形態に係るエンコーダーを示す断面図である。図3は、エンコーダーを示すブロック図である。図4は、エンコーダーが備えるスケール部を説明するための図である。図5は、図4に示すスケール部のE部拡大図である。図6は、図5に示すスケール部のF部拡大図である。図7および図8は、それぞれ図6に示すスケール部について説明するための模式図である。図9は、図5に示すスケール部と撮像素子の撮像領域との関係を示す図である。
図2に示すように、前述したロボット100の基台110は、モーター111と減速機112を支持する支持部材114を有し、モーター111および減速機112を収納している。このような基台110には、第1アーム120が第1軸J1まわりに回動可能に設けられている。
第1アーム120は、水平方向に沿って延びているアーム本体部121と、アーム本体部121から下方に向けて突出している軸部122と、を有し、これらが互いに接続されている。そして、軸部122は、軸受115を介して基台110に第1軸J1まわりに回動可能に支持されているとともに、減速機112の出力軸に接続されている。また、減速機112の入力軸は、モーター111の回動軸1111に接続されている。減速機112としては、特に限定されないが、例えば、波動減速機、遊星歯車減速機、サイクロ減速機、RV減速機等が挙げられる。
ここで、基台110は、基台110の自重や基台110が支える他の質量による荷重が加わる構造体である。同様に、第1アーム120も、第1アーム120の自重や第1アーム120が支える他の質量による荷重が加わる構造体である。このような基台110および第1アーム120の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、金属材料が挙げられる。
本実施形態では、基台110および第1アーム120の外表面は、ロボット100の外表面の一部を構成している。なお、基台110および第1アーム120の外表面上には、カバー、衝撃吸収材等の外装部材が装着されていてもよい。
このような相対的に回動する基台110および第1アーム120には、これらの回動状態を検出するエンコーダー1が設けられている。
エンコーダー1は、第1アーム120に設けられているスケール部2と、基台110に設けられ、スケール部2を検出する検出部3と、検出部3に電気的に接続された回路部4と、を有する。ここで、回路部4は、処理部5と、記憶部6と、を有する。
図2に示すように、スケール部2は、アーム本体部121の基台110と対向する部分、すなわち、アーム本体部121の下面であって軸部122を囲む部分に設けられている。このスケール部2は、図4に示すように、第1軸J1とは異なる位置で第1軸J1まわりに沿って配置されている明暗のマークで構成されたパターンとして、後述するマーク集合体21を有している。本実施形態では、スケール部2が、第1アーム120の表面に設けられている。これにより、スケール部2を設けるための部材を基台110および第1アーム120とは別に設ける必要がない。そのため、部品点数を少なくすることができる。なお、スケール部2は、第1アーム120の表面に直に設けられている場合に限定されず、例えば、第1アーム120の表面に貼着されたシート状の部材に設けられていてもよいし、第1アーム120とともに回動するように設けられた板状の部材に設けられていてもよい。すなわち、スケール部2が設けられる部材は、第1アーム120とともに基台110に対して第1軸J1まわりに回動する部材であればよい。よって、エンコーダー1においてスケール部2が設けられる部材は回動部と言うことができる。また、前述の第2部材は第1アーム120であるので、回動部は第1アーム120である。また、図2とは逆に、スケール部2を基台110側に配置し、検出部3を第1アーム120側に配置することもできる。
図4ないし図7に示すように、スケール部2は、複数のドット20(マーク)が集合してなるマーク集合体21を複数有している。また、複数のマーク集合体21は、スケール部2の第1軸J1を中心とする円周に沿って、すなわち第1軸J1を中心とする円の周方向に沿って並んでいる。したがって、複数のマーク集合体21は、環状に並んでいる。これにより、スケール部2を第1軸J1まわりに回動させたとき、スケール部2は周方向に移動することとなる。なお、本明細書では、例えば図5に示すように、スケール部2のうち、第1軸J1を中心とする円の半径が延びる方向を「半径方向DR(第2方向)」といい、半径方向に直交する方向を「周方向DC(第1方向)」という。
マーク集合体21は、図5に示すように、それぞれ、周方向DCにおける長さに比べて半径方向DRにおける長さが長い形状をなしている。このマーク集合体21は、図6に拡大して示すように、複数のドット20が集合することにより、明暗を伴ったパターン(模様)で構成されている。
このように複数のドット20が集合してなるパターンは、後述する検出部3で撮像された後、テンプレートマッチングによって一意に検出することが可能である。テンプレートマッチングは、後に詳述するが、パターンを撮像した撮像画像(撮像画像)と基準画像(テンプレート)との比較を行い、ドット20の位置を求めることによって撮像画像内に基準画像と一致した領域が存在するか否かを識別する技術である。これにより、複数のマーク集合体21の中から、検出対象のパターンを特定する。
したがって、マーク集合体21は、それぞれ、テンプレートマッチングにおいて基準画像になり得る固有の特定パターン22を有している。「基準画像になり得る特定パターン22」とは、その特定パターン22が、テンプレートマッチングにおいて複数のマーク集合体21の中から1つを識別するのに必要な識別子として十分な情報量を有しているパターンであることをいう。この特定パターン22がマーク集合体21ごとに異なっていれば、複数のマーク集合体21の中から1つを一意に特定することが可能になる。これにより、スケール部2の回動状態を推定することが可能になる。
ここで、説明の便宜のため、図5に示す複数のマーク集合体21のうちの1つを「第1集合体211」とする。また、複数のマーク集合体21のうち、第1集合体211以外の残りをそれぞれ「第2集合体212」とする。したがって、図8に示すように、第1集合体211も第2集合体212も、それぞれ、テンプレートマッチングにおいて基準画像になり得る特定パターン22を有している。なお、説明の便宜のため、図8に示すように、第1集合体211が有する固有の特定パターン22を特に「個別パターンUP」とする。
一方、第2集合体212も、それぞれ、複数のドット20が集合してなるパターンを含んでいる。そして、第2集合体212も、それぞれ、基準画像になり得る固有の特定パターン22を有している。しかしながら、第2集合体212が有するこれらの特定パターン22は、前述した第1集合体211が含む個別パターンUPとは一致しない。つまり、個別パターンUPは、複数のマーク集合体21のうち、第1集合体211のみに含まれ、残りの全て、すなわち第2集合体212には含まれていない。
したがって、テンプレートマッチングにより個別パターンUPを識別することにより、複数のマーク集合体21の中から第1集合体211を一意に特定することができる。その結果、スケール部2における第1集合体211の位置を一意に特定することができ、スケール部2の回動状態を求めることが可能になる。
なお、マーク集合体21および特定パターン22については、後に詳述する。
図2に示す検出部3は、基台110内に設けられている撮像素子31と、基台110が有する開口に設けられている光学系32と、を有し、撮像素子31が光学系32を介してスケール部2の周方向での一部、すなわち図9に示す撮像領域RIを撮像する。なお、必要に応じて、撮像素子31の撮像領域RIを照明する光源を設けてもよい。
撮像素子31としては、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等が挙げられる。このような撮像素子31は、撮影された画像を画素ごとの電気信号に変換して出力する。撮像素子31は、二次元撮像素子(エリアイメージセンサー)、あるいは一次元撮像素子(ラインイメージセンサー)のどちらでも適用可能である。一次元撮像素子は、画素の並びがアームの旋回円に接する方向に配置することが望ましい。二次元撮像素子を用いた場合は、情報量の多い二次元画像を取得でき、後述のテンプレートマッチングによるドット20の検出精度を高めやすい。その結果、第1アーム120の回動状態を高精度に検出することができる。一次元撮像素子を用いた場合は、画像取得周期いわゆるフレームレートが高いため、検出頻度を高めることが可能になり、高速動作時に有利である。
光学系32は、スケール部2と撮像素子31との間に配置されている結像光学系である。この光学系32は、少なくとも物体側(スケール部2側)がテレセントリックであることが好ましい。これにより、スケール部2と撮像素子31との間の距離が変動しても、撮像素子31への結像倍率の変化を低減することができ、その結果、エンコーダー1の検出精度の低下を低減することができる。特に、光学系32が両側テレセントリックである場合、光学系32が有するレンズと撮像素子31との間の距離が変動しても、撮像素子31への結像倍率の変化を低減することができる。そのため、光学系32の組み立てが容易になるという利点がある。
ここで、図9に示すように、撮像素子31の撮像領域RIは、第1アーム120の下面において、スケール部2の周方向での一部に重なるように設定されている。これにより、撮像素子31は、撮像領域RI内にあるドット20を撮像することができる。したがって、撮像領域RIに位置するドット20を読み取ることにより、第1アーム120の回動状態を知ることができる。
なお、エンコーダー1は、必要に応じて複数の検出部3を備えていてもよい。複数の検出部3を備えることにより、ドット20の検出精度や検出速度の向上を図ることができる。
図2および図3に示す回路部4は、CPU(Central Processing Unit)等の処理部5(プロセッサー)と、ROM(Read only memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶部6(メモリー)と、を有する。ここで、記憶部6には、処理部5で読み取り可能な指示が記憶されており、処理部5は、記憶部6から指示を適宜読み取って実行することで、各種機能を実現する。このような回路部4は、例えば、ASIC(application specific integrated circuit)またはFPGA(field-programmable gate array)等を用いて構成することができる。このようにASICまたはFPGAを用いて回路部4をハードウエア化することで、回路部4の高処理速度化、小型化および低コスト化を図ることできる。なお、回路部4の少なくとも一部は、前述したロボット100の制御装置に組み込まれていてもよい。
処理部5は、検出部3の検出結果に基づいて、基台110および第1アーム120の相対的な回動状態を推定する。この回動状態としては、例えば、回動角度、回動速度、回動方向等が挙げられる。
特に、処理部5は、撮像素子31の撮像画像の画像データに対して基準画像の画像データを用いてテンプレートマッチングすることでドット20の集合体、すなわち図7に示すような「個別パターンUP」を画像認識し、その認識結果を用いて、基台110および第1アーム120の相対的な回動状態を推定する。
ここで、処理部5は、撮像素子31の撮像画像内での個別パターンUPの画像の位置に基づいて、基台110および第1アーム120の相対的な回動角度をより細かく推定することができるように構成されている。以下、基台110および第1アーム120の相対的な回動角度を単に「第1アーム120の回動角度」ともいう。また、処理部5は、個別パターンUPが検出される時間間隔に基づいて回動速度を求めたり、検出される個別パターンUPの種類の順序に基づいて回動方向を推定したりすることも可能に構成されている。そして、処理部5は、前述した推定結果に応じた信号、すなわち、基台110および第1アーム120の回動状態に応じた信号を出力する。この信号は、例えば、図示しない制御装置に入力され、ロボット100の動作の制御に用いられる。
また、処理部5は、撮像素子31の撮像画像の一部を切り取って基準画像を生成する機能をも有する。この基準画像の生成は、基台110および第1アーム120の相対的な回動状態を推定するのに先立って、あるいは、必要に応じて適時、基台110および第1アーム120の相対的な回動角度ごとに行われる。そして、生成した基準画像は、基台110および第1アーム120の相対的な回動角度ごとに対応して記憶部6に記憶される。そして、処理部5は、記憶部6に記憶されている基準画像を用いて、テンプレートマッチングを行う。なお、テンプレートマッチングおよびそれを用いた回動状態の推定については、後に詳述する。
記憶部6には、処理部5で読み取り可能な指示(プログラム)の他、処理部5で読み取り可能な各種情報(データ)が記憶されている。具体的には、記憶部6には、基台110および第1アーム120の相対的な回動状態ごとに、前述した基準画像の画像データが、それに対応する撮像画像内での座標、すなわち後述する基準画素の座標に関する情報、および、第1アーム120の回動角度に関する情報、つまり角度情報とともに記憶されている。このような記憶部6は、不揮発性メモリー、揮発性メモリーのいずれであってもよいが、電力を供給しなくても情報を記憶した状態を保持することができ、省電力化を図ることができるという観点から、不揮発性メモリーであることが好ましい。
(マーク集合体)
図6および図7に示すマーク集合体21は、周方向DCに並ぶ4つのドット20(複数のマーク)で構成された列状パターン200を有している。本実施形態では、ドット20が暗色を呈し、ドット20の背景が暗色よりも相対的に明るい明色を呈している。すなわち、マーク集合体21は、周方向DCに沿って明暗が変化してなる列状パターン200を複数有している。また、マーク集合体21では、これらの列状パターン200が、半径方向DRに並んでいる。
なお、図6および図7では、半径方向DRで隣り合う列状パターン200同士は、接触しているか、あるいはわずかに離間している。一方、周方向DCで隣り合うドット20同士は、十分に離間している。その結果、図6および図7に示すマーク集合体21では、半径方向DRに延びる線状のパターンが、互いに離間しつつ周方向DCに並んだようなパターンとして見えている。なお、このようなパターンは、一例であり、図示したものに限定されない。
図6および図7に示すマーク集合体21は、特に、周方向DCに高速で移動するスケール部2について、その回動状態の検出精度を高めやすい。すなわち、上述したような列状パターン200では、周方向DCにおいてドット20同士が十分に離間しているため、周方向DCにおいて十分なコントラストが確保されている。このため、周方向DCに高速で回動するスケール部2においても、テンプレートマッチングにおける識別率を高めやすく、検出精度の向上を図ることができる。
また、複数のマーク集合体21は、前述したように、周方向DCに沿って並んでいる。このとき、マーク集合体21同士は、図5に示すように、周方向DCにおいて互いに離れて配置されている。「互いに離れて配置されている」とは、周方向DCにおけるマーク集合体21同士の間隔が、周方向DCにおける1つのマーク集合体21の長さよりも長い状態を指す。このように配置されていることにより、テンプレートマッチングの際に、隣り合うマーク集合体21を誤って1つのマーク集合体21として誤判定する確率を十分に下げることができる。これにより、スケール部2の回動状態の検出精度、すなわちエンコーダー1の検出精度をより高めることができる。
また、図9に示す撮像領域RIは撮像素子31によって撮像される領域である。この撮像領域RIは、周方向DCに長軸を持つ略長方形に設定されている。そして、マーク集合体21の半径方向DRにおける長さは、図9に示すように、撮像領域RIの半径方向DRにおける長さよりも長くなるように設定されている。
これにより、マーク集合体21では、半径方向DRに複数の特定パターン22を分布させることができる。また、1つの特定パターン22は、図9に示す撮像領域RIに収まるサイズに設定されており、かつ、マーク集合体21は、撮像領域RIからはみ出すように、半径方向DRに沿って並ぶ複数の特定パターン22を含むものとなる。その結果、マーク集合体21の半径方向DRに対する撮像領域RIの位置が図9に示す位置からずれたとしても、別の特定パターン22(個別パターンUP)を撮像領域RI中に捉えることが可能になる。
換言すれば、半径方向DRに十分な長さを有し、かつ、半径方向DRに複数の特定パターン22が配置されてなるマーク集合体21は、撮像領域RIからマーク集合体21がはみ出ることを前提にしているため、スケール部2に対する撮像領域RIの位置ずれを許容する。このため、例えば基台110に第1アーム120を組み付ける際、スケール部2に対する撮像素子31の組み付け位置の要求精度を下げることができる。その結果、組み立てが容易なエンコーダー1を実現することができる。
以上のように、エンコーダー1は、複数のドット20(マーク)が集合しているマーク集合体21を複数有し、マーク集合体21が周方向DC(第1方向)に並んでおり、周方向DCに移動するスケール部2と、マーク集合体21の一部を撮像して撮像画像(撮像した結果)を出力する撮像素子31と、撮像画像に対してテンプレートマッチングを行い、周方向DCにおけるスケール部2の位置を求める処理を行う処理部5と、を有する。そして、このエンコーダー1では、周方向DCと垂直な方向である半径方向DR(第2方向)において、マーク集合体21の長さは、撮像素子31が撮像する領域(撮像領域RI)の長さよりも長く設定されている。また、複数のマーク集合体21のうち、1つを第1集合体211とし、残りを第2集合体212としたとき、第1集合体211は、テンプレートマッチングの基準画像になる個別パターンUPを含み、第2集合体212は、個別パターンUPと同一のパターンを含まない。
このようなエンコーダー1は、撮像素子31とスケール部2との相対位置がずれても、撮像領域RIには個別パターンUPが含まれることになるので、高い検出精度を維持することができる。また、例えば基台110に第1アーム120を組み付ける際、スケール部2に対する撮像素子31の位置ずれを許容し得るため、組み立てが容易である。さらに、マーク集合体21同士が周方向DCで互いに離れているため、パターンを誤検出することが少なくなり、個別パターンUPの検出精度が高いものとなる。マーク集合体21同士が周方向DCで互いに離れている距離は、マーク集合体21の幅以上であることが望ましい。
次に、個別パターンUPについて詳述する。
図7に示す個別パターンUPは、半径方向DRにおいて並ぶ複数の列状パターン200のうち、半径方向DRにおいて隣り合う4つの列状パターン200A、200B、200C、200Dで構成されたパターンである。
これらの4つの列状パターン200A、200B、200C、200Dは、それぞれ、周方向DCに並ぶ4つのドット20で構成されている。具体的には、図7に示す列状パターン200A、200B、200C、200Dに含まれるドット20は、それぞれ、等間隔に設定された4つの基準位置STP、または、各基準位置STPから図7の右側(周方向DCの一端側)に向かってずらしたシフト位置SFP、のいずれかに配置されている。
より具体的には、図7に示す第1集合体211では、図7の左側から右側に向かって、基準位置STP1、シフト位置SFP1、基準位置STP2、シフト位置SFP2、基準位置STP3、シフト位置SFP3、基準位置STP4、および、シフト位置SFP4が、この順で並ぶように設定されている。そして、4つのドット20のうち、1つは、基準位置STP1とシフト位置SFP1のいずれかに配置され、1つは、基準位置STP2とシフト位置SFP2のいずれかに配置され、1つは、基準位置STP3とシフト位置SFP3のいずれかに配置され、1つは、基準位置STP4とシフト位置SFP4のいずれかに配置されている。
図7の例では、1つの列状パターン200Aに含まれる4つのドット20を、図7の左側から順にドット201A、202A、203A、204Aとする。この列状パターン200Aでは、ドット201Aが基準位置STP1に配置され、ドット202Aが基準位置STP2に配置され、ドット203Aが基準位置STP3に配置され、ドット204Aがシフト位置SFP4に配置されている。このような列状パターン200Aは、4ビットの識別子として扱うことができる。これにより、列状パターン200Aを他の列状パターン200と識別することが可能になる。なお、図7では、説明の便宜上、列状パターン200Aに「A」という記号を付している。
また、図7の半径方向DRにおいて列状パターン200Aに隣り合う列状パターン200を列状パターン200Bとする。そして、図7に示す列状パターン200Bに含まれる4つのドット20を、図7の左側から順にドット201B、202B、203B、204Bとする。この列状パターン200Bでは、ドット201Bが基準位置STP1に配置され、ドット202Bがシフト位置SFP2に配置され、ドット203Bがシフト位置SFP3に配置され、ドット204Bが基準位置STP4に配置されている。このような列状パターン200Bは、4ビットの識別子として扱うことができる。これにより、列状パターン200Bを他の列状パターン200と識別することが可能になる。なお、図7では、説明の便宜上、列状パターン200Bに「B」という記号を付している。
また、図7の半径方向DRにおいて列状パターン200Bに隣り合う列状パターン200を列状パターン200Cとする。そして、図7に示す列状パターン200Cに含まれる4つのドット20を、図7の左側から順にドット201C、202C、203C、204Cとする。この列状パターン200Cでは、ドット201Cがシフト位置SFP1に配置され、ドット202Cがシフト位置SFP2に配置され、ドット203Cがシフト位置SFP3に配置され、ドット204Cが基準位置STP4に配置されている。このような列状パターン200Cは、4ビットの識別子として扱うことができる。これにより、列状パターン200Cを他の列状パターン200と識別することが可能になる。なお、図7では、説明の便宜上、列状パターン200Cに「C」という記号を付している。
また、図7の半径方向DRにおいて列状パターン200Cに隣り合う列状パターン200を列状パターン200Dとする。そして、図7に示す列状パターン200Dに含まれる4つのドット20を、図7の左側から順にドット201D、202D、203D、204Dとする。この列状パターン200Dでは、ドット201Dが基準位置STP1に配置され、ドット202Dが基準位置STP2に配置され、ドット203Dが基準位置STP3に配置され、ドット204Dが基準位置STP4に配置されている。このような列状パターン200Dは、4ビットの識別子として扱うことができる。これにより、列状パターン200Dを他の列状パターン200と識別することが可能になる。なお、図7では、説明の便宜上、列状パターン200Dに「D」という記号を付している。
以上のようにして、本実施形態では、図7に示す複数の列状パターン200を、列状パターン200A、200B、200C、200Dの4種類のパターンに分けることができる。図7では、説明の便宜上、「ABCD」という記号を付している。
ここで、図7に示す第1集合体211では、半径方向DRにおいて「ABCD」という記号の配列が複数回繰り返されるように、列状パターン200を並べている。すなわち、第1集合体211に含まれる複数の列状パターン200は、明暗の変化が互いに異なる「A」(第1パターン)、「B」(第2パターン)、「C」および「D」で構成された「ABCD」の配列を含んでおり、かつ、「ABCD」の配列は、半径方向DRにおいて周期的に配置されている。すなわち、列状パターン200が半径方向DRにおいて周期的に配置されている。その結果、第1集合体211は、個別パターンUPとして、互いに同一である「ABCD」の配列を複数有している。
このように「ABCD」の配列が半径方向DRにおいて周期的に配置されていることにより、スケール部2に対する撮像領域RIの位置ずれを許容することができる。すなわち、スケール部2には、半径方向DRに沿って「ABCD」の配列が複数存在しているため、スケール部2に対する撮像領域RIの位置がずれたとしても、撮像領域RIはいずれかの「ABCD」の配列を捉えることができる。このため、位置ずれがあった場合でも第1集合体211を一意に特定することができる。したがって、位置ずれがある程度許容される分、組み立てが容易なエンコーダー1を実現することができる。
一方、図7に示すように、半径方向DRにおいて「ABCD」の配列が複数回繰り返されている場合、「ABCD」の配列のみを個別パターンUPに設定するのではなく、「BCDA」、「CDAB」または「DABC」のように、先頭の記号をずらした配列についても、「ABCD」の配列と等価であるとみなすようにしてもよい。なお、個別パターンUPをこのように設定した場合でも、第2集合体212は、この個別パターンUPと等価のパターン、すなわち「ABCD」、「BCDA」、「CDAB」および「DABC」の全てを含んでいない。
このようにすれば、図9に示す撮像領域RIが「ABCD」、「BCDA」、「CDAB」および「DABC」のうちのいずれかを識別したことをもって、個別パターンUPを捉えたとみなすことができる。このため、テンプレートマッチングのアルゴリズムをより簡略化することができ、処理部5や記憶部6の簡素化およびテンプレートマッチングの高速化を図ることができる。
なお、本実施形態に係る列状パターン200の場合、前述したように4ビットの識別子として扱うことができる。そして、個別パターンUPは、その列状パターン200を4つ有していることから、識別子として十分な情報量を有している。すなわち、本実施形態に係る列状パターン200は、「ABCD」以外の記号、例えばE、F、G、H、I、J・・・を付与可能な種類を取り得る。このため、多数のマーク集合体21を配置した場合でも、各マーク集合体21に含まれる特定パターン22を、マーク集合体21同士で互いに異ならせることができる。
また、図7に示す第1集合体211では、半径方向DRにおいて「ABCD」という記号の配列が複数回繰り返されるように列状パターン200が並べられているが、第1集合体211はこれに限定されない。例えば、第1集合体211が互いに異なる複数の個別パターンを含んでいる場合、互いに同一の個別パターンUP、つまり「ABCD」という記号の配列を複数含んでいることを要しない。
図8は、第1集合体211と、それに隣り合う2つの第2集合体212とで、特定パターン22の例を比較した図である。この例では、説明の便宜上、図8において第1集合体211の左側に隣り合う第2集合体212に含まれる特定パターン22に「EFGH」という記号を付している。また、同様に、図8において第1集合体211の右側に隣り合う第2集合体212に含まれる特定パターン22に「DBGE」という記号を付している。
このようにして、図8では、各マーク集合体21に対し、固有な特定パターン22が配置されている。その結果、多数のマーク集合体21の中から、第1集合体211を一意に特定することが可能になる。
なお、特定パターン22が有する列状パターン200の数をさらに増やすことにより、特定パターン22の識別子としての情報量を増やすことができる。これにより、スケール部2に配置することができるマーク集合体21の数、すなわち、図4に示すマーク集合体21の数を増やすことができる。その結果、エンコーダー1の分解能を高めることができる。
また、図7に示す個別パターンUPでは、16個のドット20の配置によってビットを表現している。そして、本実施形態では、このドット20の個数が他の特定パターン22でも同数になっている。このため、各特定パターン22では、撮像画像において暗部と明部の面積比率を一定の範囲に収めることができる。これにより、テンプレートマッチングのアルゴリズムをより簡略化することができ、処理部5や記憶部6の簡素化およびテンプレートマッチングの高速化を図ることができる。
さらには、このような特定パターン22によれば、撮像画像におけるドット20と背景との境界線の長さを、特定パターン22同士の間で一定の範囲に収めることができる。これにより、特定パターン22間で、テンプレートマッチングにおけるドット20の検出精度のバラつきを抑えることができる。その結果、エンコーダー1の検出精度が大きく変化してしまうのを防止することができる。
なお、以上のような第1集合体211と第2集合体212との関係は、スケール部2が有する各マーク集合体21のいずれが第1集合体211になった場合でも成り立つものである。したがって、記憶部6には、互いにパターンが異なった、少なくともマーク集合体21の数に等しい数の固有の個別パターンUPが記憶されており、テンプレートマッチングによって第1集合体211の位置を一意に特定することができる。このようにしてスケール部2の回動状態を検出することができる。
また、本実施形態では、図7に示す4つの列状パターン200A、200B、200C、200Dの全体が、個別パターンUPに含まれている。すなわち、図7に示す個別パターンUPの左上隅では、基準位置STP1にドット20が配置されており、そのドット20の上端および左端と個別パターンUPの上端および左端とが重なっている。また、図7に示す個別パターンUPの右下隅において、シフト位置SFP4にドット20が配置されたことを想定したとすると、そのドット20の下端および右端と個別パターンUPの下端および右端とが重なっているのが好ましい。このような条件を満たすように個別パターンUPを設定することにより、個別パターンUPを撮像するのに必要な画素数を抑えつつ、併せて、個別パターンUPに識別子としての十分な情報量を持たせることができる。また、画素数が抑えられることによってテンプレートマッチングに関する演算時間を短縮することができる。そのため、第1アーム120の第1軸J1まわりの角速度が速い場合においても、高精度な検出を応答性よく行うことができる。
なお、図7に示す列状パターン200は、周方向DCにおける基準位置STP、および、基準位置STPから図7の右側(周方向DCの一端側)に向かってずらしたシフト位置SFPのうち、一方に配置された明部と、他方に配置された暗部と、を一組とする明暗マークセットMSが、周方向DCに並べられたパターンともいえる。すなわち、列状パターン200は、明部と暗部とが周方向DCに並んだ明暗マークセットを複数有している。この明暗マークセットMSは、1ビットの識別子となる。また、4つの列状パターン200A、200B、200C、200Dを構成するドット20(マーク)は全て円形であり外径も等しい。つまり、同一のドット20によって複数の列状パターン200がそれぞれ構成されている。
この場合、基準位置STPからシフト位置SFPまでのシフト量をSF[μm]とし、撮像素子31の画素ピッチをp[μm]とし、撮像素子31の撮像倍率をmとしたとき、スケール部2は、SF≧2p/mの関係を満たすことが好ましく、具体的にはSF≧10μmであるのが好ましい。すなわち、シフト量SFとは、半径方向DRに並んだ複数の明暗マークセットにおいて、互いの明部同士のずれ量または暗部同士のずれ量と言うことができる。言い換えれば、半径方向DRに並んだ複数の列状パターンにおいて、半径方向DRに並んだドット20同士のずれ量がシフト量SFである。例えば、ドット201A、201Bおよび201Dに対するドット201Cのずれ量であり、またドット202A、202Dに対するドット202B、202Cのずれ量もシフト量SFである。
このような関係を満たすスケール部2では、画素ピッチpをスケール部2に投影したと仮定したとき、その投影された画素ピッチに比べてシフト量SFを十分に長く確保することができる。このため、テンプレートマッチングにおいて、例えばドット20が基準位置STPに配置されているにもかかわらずシフト位置SFPに配置されている、と誤判定する確率を低下させることができる。このため、列状パターン200は、識別子としての識別率が高いものとなり、エンコーダー1の検出精度を向上させることができる。
また、ドット20の外径をd[μm]とし、撮像素子31の画素ピッチをp[μm]とし、撮像素子31の撮影倍率をmとしたとき、スケール部2は、d≧4p/mの関係を満たすことが好ましく、具体的にはd≧20μmであるのが好ましい。
このような関係を満たすスケール部2では、スケール部2の撮像画像においてドット20のコントラストを高めることができる。このため、テンプレートマッチングにおける識別率および応答性をより高めることができ、エンコーダー1の検出精度の向上を図ることができる。
また、ドット20同士の最小の間隔をs[μm]とし、撮像素子31の画素ピッチをp[μm]とし、撮像素子31の撮影倍率をmとしたとき、スケール部2は、s≧2p/mの関係を満たすことが好ましく、具体的にはs≧10μmであるのが好ましい。
このような関係を満たすスケール部2では、画素ピッチpをスケール部2に投影したと仮定したとき、その投影された画素ピッチに比べてドット20同士の最小の間隔sを十分に長く確保することができる。このため、撮像画像においてドット20と背景との境界線がより明瞭になり、テンプレートマッチングにおけるドット20の識別率をより高めることができる。
なお、ドット20同士の最小の間隔sは、周方向DCにおけるドット20同士の間隔の最小値のことをいう。
また、マーク集合体21におけるドット20(マーク)の外径の平均値をaとしたとき、ドット20の外径dは、0.8a以上1.2a以下であるのが好ましく、0.9a以上1.1a以下であるのがより好ましい。このようなドット20は、その外径dが平均値aに近い値になっていることから、外径dがほぼ一定であるとみなすことができる。したがって、ドット20は、その作成にあたって位置や外径、形状等を安定させやすいものとなる。このため、テンプレートマッチングにおける識別率および応答性をより高めることができ、エンコーダー1の検出精度の向上を図ることができる。
なお、ドット20の外径dとは、スケール部2の撮像画像におけるドット20の円相当径のことをいう。また、ドット20の外径dの平均値aとは、100個以上のドット20の外径dについての平均値である。
また、前述したように、エンコーダー1は、スケール部2が配置され、かつ、第1軸J1(回動軸)まわりに回動することにより、マーク集合体21を周方向DC(第1方向)に移動させる回動部である第1アーム120を有している。これにより、マーク集合体21は、周方向DCに回動することとなり、エンコーダー1は、スケール部2の回動状態を検出することが可能になる。したがって、エンコーダー1は、ロータリーエンコーダーとして機能する。
なお、列状パターン200に含まれるドット20の数は、列状パターン200同士で互いに異なっていてもよいが、互いに同じであることが好ましい。これにより、撮像画像におけるドット20と背景との境界線の長さが、列状パターン200同士で互いに近い長さとなる。このため、テンプレートマッチングにおけるドット20の識別率が安定し、エンコーダー1の検出精度の向上を図ることができる。
また、図7に示す列状パターン200および個別パターンUPにおけるドット20の数、配置等は、一例であり、これに限定されるものではない。
また、ドット20の色度や明度は、特に限定されず、いかなる色度や明度であってもよいが、スケール部2のドット20以外の部分、すなわちドット20の背景の色度や明度と異なることが好ましく、具体的にはドット20を黒色または暗色にし、背景を白色または明色にする、またはその反対の組み合わせにすることがより好ましい。これにより、撮像素子31の撮像画像のコントラストを高めることができ、その結果、検出精度を向上させることができる。
また、ドット20の形状は、各図では円形としているが、これに限定されず、例えば、楕円形、円環、三角形、四角形、星形、異形状等であってもよく、数字、文字、記号、符号、しるし、標章、図案等であってもよい。さらに、互いに形状の異なるドット20が混在していてもよい。その場合、形状の違いでビットを表現することも可能である。
また、本実施形態では、ドット20のビットが2値、すなわちドット20の配置が基準位置STPまたはシフト位置SFPのいずれかであるが、ドット20のビットは3値やそれ以上の多値であってもよい。その場合、ドット20の配置ではなく、色度や明度を変えることにより、ドット20のビットの多値化を図るようにしてもよい。
例えば、ドット20に複数の色相を用い、ドット20同士で色相を異ならせるようにしてもよい。その場合、スケール部2を照らす照明光の波長を経時的に変化させ、複数の色相のうちの照明光の波長に応じた特定の色相のみが撮像されるようにしてもよい。これにより、色相の違いでもビットを表現することが可能になる。また、撮像素子31としてカラー画像を撮像可能な素子を用いた場合には、白色または単色の照明光を用いたとしても、ドット20同士の色相の違いを判別することが可能になる。
さらに、スケール部2のドット20は、撮像素子31によって撮像可能なドット20であれば、いかなる方法で形成されたものであってもよい。ドット20の形成方法としては、例えば、染料や顔料等のインクを用いた印刷法、マスター型を転写する転写法、フォトリソグラフィーとエッチングとを組み合わせた方法等が挙げられる。
(テンプレートマッチングおよびそれを用いた回動状態の推定)
以下、処理部5におけるテンプレートマッチングおよびそれを用いた回動状態の推定について詳述する。なお、以下では、回動状態として回動角度を推定する場合を代表的に説明する。
-基準画像の取得-
エンコーダー1では、テンプレートマッチングを用いて基台110に対する第1アーム120の回動状態を推定するのに先立って、当該テンプレートマッチングに用いる基準画像を取得する。この基準画像の取得は、最初のテンプレートマッチングの前に1回行うだけでよいが、その後必要に応じて適時行ってもよい。その場合、テンプレートマッチングに用いる基準画像を、新たに取得した基準画像に更新することができる。
基準画像を取得する際には、第1アーム120を基台110に対して第1軸J1まわりに適宜回動させ、撮像素子31で複数の特定パターン22を特定パターン22ごとに撮像する。そして、得られた各撮像画像をトリミングすることにより、特定パターン22ごとの基準画像を生成する。生成された基準画像は、その画素座標情報および角度情報とともにこれらに対応付けられて記憶部6に記憶される。以下、図10に基づいて、この点を詳述する。
図10は、図2に示すエンコーダーが備える撮像素子の撮像画像を説明するための図である。
第1アーム120が基台110に対して第1軸J1まわりに回動すると、例えば、図10に示すように、撮像素子31の撮像画像G内に映っている特定パターン22の画像である特定パターン画像22Aは、撮像画像G内を円弧C1、C2に沿って移動する。ここで、円弧C1は、基台110に対する第1アーム120の回動に伴って特定パターン画像22Aの図10中下端が描く軌跡であり、円弧C2は、基台110に対する第1アーム120の回動に伴って特定パターン画像22Aの図10中上端が描く軌跡である。また、図10は、図9に示す撮像領域RI内に、互いに異なるマーク集合体21に属する3つの特定パターン22が含まれている場合を図示している。そして、これに対応するように、図10に示す撮像画像Gには、特定パターン画像22Aの他に、特定パターン画像22Aに対して周方向での一方側に位置する特定パターン画像22Bと、他方側に位置する特定パターン画像22Xとが含まれている。
ここで、撮像素子31が撮像することにより得られる撮像画像Gは、撮像領域RIに対応した形状であって、X軸方向に沿って延びている2つの辺とY軸方向に沿って延びている2つの辺とを有する矩形をなしている。また、撮像画像GのX軸方向に沿って延びている2つの辺は、円弧C1、C2にできるだけ沿うように配置されている。また、撮像画像Gは、X軸方向およびY軸方向に行列状に並んでいる複数の画素を有する。ここで、画素の位置は、X軸方向での画素の位置を示す「X」、および、Y軸方向での画素の位置を示す「Y」で表される画素座標系(X,Y)で表される。また、撮像画像Gの外周部を除いた中央領域を有効視野領域RUとし、有効視野領域RUの図中左上端の画素が画像座標系(X,Y)の原点画素(0,0)に設定されている。
例えば、特定パターン画像22Aに対応する基準画像TAを生成する場合、第1アーム120を基台110に対して適宜回動させ、特定パターン画像22Aを有効視野領域RU内の所定位置、すなわち図10ではX軸方向での有効視野領域RUの中央に設定された中心線LY上に位置させる。ここで、特定パターン画像22Aが当該所定位置に位置するときの、基台110に対する第1アーム120の回動角度θA0は、測定等により事前に取得されている。
このような図10に示す撮像画像Gを、特定パターン画像22Aを包含する必要最小限の範囲となるような矩形の画素範囲でトリミングすることにより、基準画像TA、すなわち特定パターン22を検出するためのテンプレートを得る。得られた基準画像TAは、記憶部6に記憶される。このとき、基準画像TAは、前述した回動角度θA0に関する角度情報、および、基準画像TAの画素範囲における基準画素、すなわち図10の基準画像TAの左上端の画素の画素座標である基準画素座標(XA0,YA0)に関する画素情報とともに、これらに対応付けられて記憶される。これにより、基準画像TA、角度情報および画素座標情報は、テンプレートマッチングに用いる1つのテンプレートセットとなる。ここで、エンコーダー1がアブソリュート型である場合、このテンプレートセットにおける角度情報は絶対角度である。また、エンコーダー1がインクリメント型である場合、このテンプレートセットにおける角度情報は相対角度である。
なお、基準画像TAの画素数は、テンプレートマッチングに関する演算時間を左右する。このため、テンプレートとして十分な情報量を有することを前提に、画素数はできるだけ少ない方が好ましい。一例として、100~1000画素程度であるのが好ましい。これにより、例えばASICまたはFPGAを用いて回路部4をハードウエア化することがより容易になり、エンコーダー1の検出時間の短縮を図ることができる。
また、有効視野領域RUの半径方向DRにおける長さは、特定パターン22の半径方向DRにおける長さの1倍以上2倍未満であるのが好ましい。これにより、有効視野領域RUは、半径方向DRに並ぶ複数の特定パターン22のうち、いずれか1つを確実に捉えることができる。その上で、有効視野領域RUにおいて、2つ以上の特定パターン22を同時に捉えるおそれがなくなる。その結果、スケール部2に対する撮像素子31の位置合わせを厳密に行わなくても、1つのマーク集合体21において1つの特定パターン22のみを同定することができる。これにより、エンコーダー1の検出精度のさらなる向上を図ることができる。
-テンプレートマッチングを用いた回動状態の推定-
次に、図11ないし図14に基づいて、前述したように生成した基準画像TAを用いたテンプレートマッチングについて説明する。
図11は、図10に示す撮像画像内に設定される探索領域でのテンプレートマッチングを説明するための図である。図12は、テンプレートマッチングの際に相関値が最大または最小となる状態から1画素分ずれた状態を示す図である。図13は、テンプレートマッチングの際に相関値が最大または最小となる状態を示す図である。図14は、テンプレートマッチングの際に相関値が最大または最小となる状態から図12に示す状態とは反対側に1画素分ずれた状態を示す図である。
図11に示すように、有効視野領域RU内に特定パターン画像22Aが存在しているとき、基準画像TAを用いて有効視野領域RUの画像に対してテンプレートマッチングを行う。本実施形態では、有効視野領域RU全域を探索領域RSとし、探索領域RSに基準画像TAを重ね、探索領域RSに対して基準画像TAを一画素ずつずらしながら、探索領域RSと基準画像TAとの重なり部分の相関値を算出する。ここで、基準画像TAは、その基準画素の画素座標を開始座標PS(原点画素P0)から終了画素PEまで1画素ずつ移動し、探索領域RS全域の画素について、探索領域RSと基準画像TAとの重なり部分の相関値が基準画像TAの基準画素の画素座標ごとに算出される。そして、算出された相関値は、撮像画像データと基準画像データとの相関値データとして、基準画像TAの基準画素の画素座標に対応付けされて記憶部6に記憶される。
次に、記憶部6に記憶されている画素座標ごとの複数の相関値のうち、最大値となる相関値を選択し、その選択された相関値となる基準画像TAの画素座標(XA1,YA1)を特定パターン画像22Aの画素座標として決定する。このようにして、撮像画像G内での特定パターン画像22Aの位置を検出することができる。
ここで、特定パターン画像22Aの画素座標を求める際、サブピクセル推定法を用いることが好ましい。相関値が最大となる近傍では、図12ないし図14に示すように、特定パターン画像22Aに対して基準画像TAが重なる。図13に示す状態は、図12、14に示す状態(図13に示す状態から1画素ずれた状態)よりも相関値が大きく、相関値が最も大きくなる。しかし、図13に示す状態のように、特定パターン画像22Aに対して基準画像TAが完全に一致せずにずれて重なる場合、図13に示す状態を特定パターン画像22Aの画素位置と判断すると、そのずれが誤差となる。このずれは、最大で1画素あたりの視野サイズBXとなる。すなわち、サブピクセル推定法を用いない場合、1画素あたりの視野サイズBXが最小の分解能(精度)となる。これに対し、サブピクセル推定法を用いると、1画素あたりの視野サイズBXごとの相関値を放物線や等角直線等でフィッティングし、これらの相関値間(画素ピッチ間)を補完(近似)することができる。そのため、より高精度に特定パターン画像22Aの画素座標を求めることができる。なお、前述した説明では、相関値が最大となる画素座標が特定パターン画像22Aの画素位置となる場合を例に説明したが、相関値が最小となる画素座標が特定パターン画像22Aの画素位置となるようにテンプレートマッチングを行うことも可能である。
このように、処理部5は、撮像画像Gの一部の領域である有効視野領域RUに探索領域RSを設定し、探索領域RS内でテンプレートマッチングを行う。これにより、テンプレートマッチングに用いる探索領域RSの画素数を少なくし、テンプレートマッチングに関する演算時間を短縮することができる。そのため、第1アーム120の第1軸J1まわりの角速度が速い場合においても、高精度な検出を応答性よく行うことができる。また、探索領域RSの画素数を少なくすることで、ASICまたはFPGAを用いて回路部4をハードウエア化することがより容易になる。さらに、撮像素子31と特定パターン22との間に配置されている光学系32の収差によって、撮像画像Gの外周部分の歪やボケが大きくなっても、そのような歪やボケの少ない領域を探索領域RSとして用いることで、検出精度の低下を低減することができる。なお、撮像画像G全域を用いて基準画像TAの生成およびテンプレートマッチングを行ってもよいが、この場合、必要に応じて、収差を考慮した補正を行うことが好ましい。
なお、本実施形態では、撮像領域RIと第1軸J1との間の距離が十分に長いため、撮像画像G内において、円弧C1、C2は、それぞれ、ほぼ直線に近似することができる。したがって、撮像画像G内において、特定パターン画像22Aの移動方向は、X軸方向に一致していると考えることができる。
そうすると、図11に示す特定パターン画像22Aは、基準画素座標(XA0,YA0)にある基準画像TAに対してX軸方向に画素数(XA1-XA0)分ずれた位置にあることとなる。したがって、撮像領域RIの中心と第1軸J1との間の距離をrとし、撮像素子31の1画素に対応する撮像領域RI上の領域のX軸方向での幅(撮像素子31の1画素あたりの視野サイズ)をWとしたとき、基台110に対する第1アーム120の回動角度θは、下記式(1)を用いて求めることができる。
この式(1)において、(XA1-XA0)×Wは、基準画像TAの基準画素座標(XA0,YA0)に対応する実位置と、前述した相関値が最大値となる基準画像TAの画素座標(XA1,YA1)に対応する実位置との間の距離に相当する。また、2rπは、基台110に対して第1アーム120が360°回転したときの特定パターン22の軌跡の長さ(円周の長さ)に相当する。なお、θA0は、前述したように、特定パターン画像22Aが所定位置に位置するときの、基台110に対する第1アーム120の回動角度である。また、回動角度θは、第1アーム120が基台110に対して基準状態(0°)から回動した角度である。
以上のようなテンプレートマッチングおよびそれを用いた回動角度θの算出を、随時、他の特定パターン22についても同様に行う。回路部4には、あらかじめ任意の回動角度θにおいて、有効視野領域RU内に少なくとも1つの特定パターン22が欠けなく映り、かつ、テンプレートマッチング可能なように各特定パターン22に対応した基準画像が登録されている。これにより、テンプレートマッチングが不可能な角度範囲が生じることを防止することができる。
前述した図10では、任意の回動角度θにおいて、有効視野領域RU内に1つの特定パターン22が欠けなく映るように、特定パターン22および有効視野領域RUが構成されているが、任意の回動角度θにおいて、有効視野領域RU内に複数のマーク集合体21の各特定パターン22が欠けなく映るように、マーク集合体21および有効視野領域RUが構成されていることが好ましい。すなわち、図10に示す有効視野領域RUは、複数のマーク集合体21を同時に捉え得る程度の長さを有している。この場合、有効視野領域RU内に映っている複数の特定パターン22に対して同時にテンプレートマッチングが可能となるように、互いに隣り合う2つ以上の特定パターン22に対応する2つ以上の基準画像を用いてテンプレートマッチングを行うようにしてもよい。これにより、エンコーダー1の検出時間の短縮を図ることができる
また、撮像素子31は、前述したように、複数のマーク集合体21のうちの2つ以上を1枚の画像として撮像し得る視野を有することが好ましい。これにより、撮像画像Gに映っている少なくとも2つの特定パターン22のうちの一方の特定パターン22が汚れ等により正確に読み取られない状態になっていたとしても、他方の特定パターン22を読み取って検出を行うことができる。そのため、高精度な検出精度を担保しやすいという利点がある。このように、処理部5は、探索領域RSに対して複数の基準画像を同時に用いてテンプレートマッチングを行うことが好ましい。これにより、検出精度を高めることができる。
<第2実施形態>
図15は、第2実施形態に係るエンコーダーが備えるスケール部について説明するための模式図である。
以下、第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図15において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
本実施形態に係るスケール部2Aは、特定パターン22が異なる以外、第1実施形態に係るスケール部2と同様である。具体的には、第1実施形態に係るスケール部2では、ドット20の配置によってビットを表現しているのに対し、本実施形態に係るスケール部2Aでは、ドット20同士の間隙の長さによってビットを表現している点が相違している。
図15に示す個別パターンUPは、前述した図7に示す個別パターンUPと同様、半径方向DRにおいて並ぶ複数の列状パターン200のうち、半径方向DRにおいて隣り合う4つの列状パターン200A、200B、200C、200Dで構成されたパターンである。
図15に示すこれら4つの列状パターン200A、200B、200C、200Dは、それぞれ、周方向DCに並ぶ5つのドット20で構成されている。具体的には、図15に示す列状パターン200A、200B、200C、200Dは、それに含まれるドット20同士の間隙の長さが1単位長さまたは2単位長さのいずれかになるように、ドット20が配置されている。4つの列状パターン200A、200B、200C、200Dは、ドット20同士の間隙を4つ含んでいるため、4ビットの識別子として扱うことができる。
より具体的には、図15に示す第1集合体211において、図15の左側から右側に向かって、ドット20同士の間隙の長さが1単位長さまたは2単位長さになるように、ドット20が並んでいる。なお、2単位長さは1単位長さの2倍であり、図15に示す破線の四角における左右方向の長さが「1単位長さ」を表している。
また、5つのドット20を含むことにより、本実施形態に係る列状パターン200は、第1実施形態に係る列状パターン200に比べて、ドット20と背景との境界線をより長く含むものとなる。このため、サブピクセル推定法を用いて特定パターン画像22Aの画素座標を求める際、その特定精度を高めることができる。
ここで、図15に示す列状パターン200Aに含まれる5つのドット20を、図15の左側から順にドット201A、202A、203A、204A、205Aとする。この列状パターン200Aでは、ドット201Aとドット202Aとの間隙215Aの長さ、ドット202Aとドット203Aとの間隙225Aの長さ、ドット203Aとドット204Aとの間隙235Aの長さ、および、ドット204Aとドット205Aとの間隙245Aの長さが、いずれも1単位長さである。これにより、列状パターン200Aを他の列状パターン200と識別することが可能になる。なお、図15では、説明の便宜上、列状パターン200Aに「A」という記号を付している。
また、図15の半径方向DRにおいて列状パターン200Aに隣り合う列状パターン200を列状パターン200Bとする。そして、図15に示す列状パターン200Bに含まれる5つのドット20を、図15の左側から順にドット201B、202B、203B、204B、205Bとする。この列状パターン200Bでは、ドット201Bとドット202Bとの間隙215Bの長さが、2単位長さである。一方、ドット202Bとドット203Bとの間隙225Bの長さ、ドット203Bとドット204Bとの間隙235Bの長さ、および、ドット204Bとドット205Bとの間隙245Bの長さは、いずれも1単位長さである。これにより、列状パターン200Bを他の列状パターン200と識別することが可能になる。なお、図15では、説明の便宜上、列状パターン200Bに「B」という記号を付している。
また、図15の半径方向DRにおいて列状パターン200Bに隣り合う列状パターン200を列状パターン200Cとする。そして、図15に示す列状パターン200Cに含まれる5つのドット20を、図15の左側から順にドット201C、202C、203C、204C、205Cとする。この列状パターン200Cでは、ドット201Cとドット202Cとの間隙215Cの長さ、および、ドット202Cとドット203Cとの間隙225Cの長さが、いずれも2単位長さである。一方、ドット203Cとドット204Cとの間隙235Cの長さ、および、ドット204Cとドット205Cとの間隙245Cの長さは、いずれも1単位長さである。これにより、列状パターン200Cを他の列状パターン200と識別することが可能になる。なお、図15では、説明の便宜上、列状パターン200Cに「C」という記号を付している。
また、図15の半径方向DRにおいて列状パターン200Cに隣り合う列状パターン200を列状パターン200Dとする。そして、図15に示す列状パターン200Dに含まれる5つのドット20を、図15の左側から順にドット201D、202D、203D、204D、205Dとする。この列状パターン200Dでは、ドット201Dとドット202Dとの間隙215Dの長さ、および、ドット202Dとドット203Dとの間隙225Dの長さが、いずれも1単位長さである。一方、ドット203Dとドット204Dとの間隙235Dの長さ、および、ドット204Dとドット205Dとの間隙245Dの長さは、いずれも2単位長さである。これにより、列状パターン200Dを他の列状パターン200と識別することが可能になる。なお、図15では、説明の便宜上、列状パターン200Dに「D」という記号を付している。
以上のようにして、本実施形態では、図15に示す複数の列状パターン200を、列状パターン200A、200B、200C、200Dの4種類のパターンに分けることができる。図15では、説明の便宜上、「ABCD」という記号を付している。
なお、前述した第1実施形態では、図7に示す4つの列状パターン200A、200B、200C、200Dの全体が、テンプレートマッチングにおいて基準画像になり得る特定パターン22に含まれているが、特定パターン22はこれに限定されない。すなわち、本実施形態では、図15に示す4つの列状パターン200A、200B、200C、200Dの一部が、特定パターン22からはみ出している。具体的には、ドット205Cの一部およびドット205Dの全部が特定パターン22からはみ出している。このような場合であっても、本実施形態では、ドット20同士の間隙の長さを識別子としているため、少なくとも4つの間隙が特定パターン22に含まれていれば、識別子として機能する。
なお、ドット20同士の間隙の長さとして前述した「1単位長さ」をs1[μm]とし、撮像素子31の画素ピッチをp[μm]とし、撮像素子31の撮影倍率をmとしたとき、スケール部2Aは、s1≧2p/mの関係を満たすことが好ましく、具体的にはs1≧10μmであるのが好ましい。
このような関係を満たすスケール部2Aでは、画素ピッチpをスケール部2Aに投影したと仮定したとき、その投影された画素ピッチに比べてドット20同士の間隔の1単位長さを十分に長く確保することができる。このため、撮像画像においてドット20と背景との境界線がより明瞭になり、テンプレートマッチングにおけるドット20の識別率をより高めることができる。
また、ドット20同士の間隙の長さとして前述した「2単位長さ」をs2[μm]とし、撮像素子31の画素ピッチをp[μm]とし、撮像素子31の撮影倍率をmとしたとき、スケール部2Aは、s2≧4p/mの関係を満たすことが好ましく、具体的にはs2≧20μmであるのが好ましい。
このような関係を満たすスケール部2Aでは、画素ピッチpをスケール部2Aに投影したと仮定したとき、その投影された画素ピッチに比べてドット20同士の間隙の2単位長さを十分に長く確保することができる。このため、撮像画像において1単位長さと2単位長さとの区別がより明瞭になり、列状パターン200は、識別子としての識別率が高いものとなり、エンコーダー1の検出精度を向上させることができる。
以上のように、本実施形態に係るスケール部2Aは、ドット20同士の間隙の長さによってビットを表現したものであるが、このような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
<第3実施形態>
図16は、第3実施形態に係るエンコーダーが備えるスケール部について説明するための模式図である。
以下、第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図16において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
本実施形態に係るスケール部2Bは、特定パターン22が異なる以外、第1実施形態に係るスケール部2と同様である。具体的には、第1実施形態に係るスケール部2では、ドット20の配置によってビットを表現しているのに対し、本実施形態に係るスケール部2Bでは、ドット20の周方向DCにおける長さによってビットを表現している点が相違している。
図16に示す個別パターンUPは、前述した図7に示す個別パターンUPと同様、半径方向DRにおいて並ぶ複数の列状パターン200のうち、半径方向DRにおいて隣り合う4つの列状パターン200A、200B、200C、200Dで構成されたパターンである。
図16に示すこれら4つの列状パターン200A、200B、200C、200Dは、それぞれ、周方向DCに並ぶ4つのドット20で構成されている。具体的には、図16に示す列状パターン200A、200B、200C、200Dは、それに含まれるドット20の周方向DCにおける長さが、1単位長さまたは2単位長さのいずれかになるように、ドット20が形成されている。一方、ドット20の半径方向DRにおける長さは、互いにほぼ等しくなっている。その結果、図16には、ほぼ真円をなすドット20と、楕円をなすドット20とが混在している。なお、2単位長さは1単位長さの2倍である。4つの列状パターン200A、200B、200C、200Dは、ドット20を4つ含んでいるため、4ビットの識別子として扱うことができる。
ここで、図16に示す列状パターン200Aに含まれる4つのドット20を、図16の左側から順にドット201A、202A、203A、204Aとする。この列状パターン200Aでは、ドット201Aの長さ、ドット202Aの長さ、ドット203Aの長さ、および、ドット204Aの長さが、いずれも2単位長さである。これにより、列状パターン200Aを他の列状パターン200と識別することが可能になる。なお、図16では、説明の便宜上、列状パターン200Aに「A」という記号を付している。
また、図16の半径方向DRにおいて列状パターン200Aに隣り合う列状パターン200を列状パターン200Bとする。そして、図16に示す列状パターン200Bに含まれる4つのドット20を、図16の左側から順にドット201B、202B、203B、204Bとする。この列状パターン200Bでは、ドット201Bの長さおよびドット203Bの長さが、いずれも1単位長さである。一方、ドット202Bの長さおよびドット204Bの長さが、いずれも2単位長さである。これにより、列状パターン200Bを他の列状パターン200と識別することが可能になる。なお、図16では、説明の便宜上、列状パターン200Bに「B」という記号を付している。
また、図16の半径方向DRにおいて列状パターン200Bに隣り合う列状パターン200を列状パターン200Cとする。そして、図16に示す列状パターン200Cに含まれる4つのドット20を、図16の左側から順にドット201C、202C、203C、204Cとする。この列状パターン200Cでは、ドット201Cの長さが、2単位長さである。一方、ドット202Cの長さ、ドット203Cの長さ、および、ドット204Cの長さが、いずれも1単位長さである。これにより、列状パターン200Cを他の列状パターン200と識別することが可能になる。なお、図16では、説明の便宜上、列状パターン200Cに「C」という記号を付している。
また、図16の半径方向DRにおいて列状パターン200Cに隣り合う列状パターン200を列状パターン200Dとする。そして、図16に示す列状パターン200Dに含まれる4つのドット20を、図16の左側から順にドット201D、202D、203D、204Dとする。この列状パターン200Dでは、ドット201Dの長さ、ドット202Dの長さ、ドット203Dの長さ、および、ドット204Dの長さが、いずれも1単位長さである。これにより、列状パターン200Dを他の列状パターン200と識別することが可能になる。なお、図16では、説明の便宜上、列状パターン200Dに「D」という記号を付している。
以上のようにして、本実施形態では、図16に示す複数の列状パターン200を、列状パターン200A、200B、200C、200Dの4種類のパターンに分けることができる。図16では、説明の便宜上、「ABCD」という記号を付している。
なお、ドット20の長さとして前述した「1単位長さ」をL1[μm]とし、撮像素子31の画素ピッチをp[μm]とし、撮像素子31の撮像倍率をmとしたとき、スケール部2Bは、L1≧4p/mの関係を満たすことが好ましく、具体的にはL1≧20μmであるのが好ましい。
このような関係を満たすスケール部2Bでは、スケール部2の撮像画像においてドット20のコントラストを高めることができる。このため、テンプレートマッチングにおける識別率および応答性をより高めることができ、エンコーダー1の検出精度の向上を図ることができる。
また、ドット20の長さとして前述した「2単位長さ」をL2[μm]とし、撮像素子31の画素ピッチをp[μm]とし、撮像素子31の撮像倍率をmとしたとき、スケール部2Bは、L2≧L1+(2p/m)の関係を満たすことが好ましく、具体的にはL2≧30μmであるのが好ましい。
このような関係を満たすスケール部2Bでは、画素ピッチpをスケール部2Bに投影したと仮定したとき、その投影された画素ピッチに比べてドット20の2単位長さを十分に長く確保することができる。このため、撮像画像において1単位長さと2単位長さとの区別がより明瞭になり、列状パターン200は、識別子としての識別率が高いものとなり、エンコーダー1の検出精度を向上させることができる。
以上のように、本実施形態に係るスケール部2Bは、ドット20の周方向DCにおける長さによってビットを表現したものであるが、このような第3実施形態においても、第1、第2実施形態と同様の効果が得られる。
<変形例>
図17は、第3実施形態に係るエンコーダーが備えるスケール部の変形例について説明するための模式図である。
以下、第3実施形態の変形例について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図17において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
本変形例に係るスケール部2Cは、特定パターン22が異なる以外、第3実施形態に係るスケール部2Bと同様である。具体的には、第3実施形態に係るスケール部2Bでは、ドット20の周方向DCにおける長さによってビットを表現しているが、周方向DCにおけるドット20の位置は、図16に示すように、基準位置STPに揃っている。このため、ドット20同士の間隙の長さは、ドット20の周方向DCにおける長さに応じてそれぞれ変化している。
一方、本変形例に係るスケール部2Cでは、ドット20の周方向における長さによってビットを表現している点では、第3実施形態と同様であるが、ドット20同士の間隙の長さは、1単位長さで一定になっている。すなわち、列状パターン200の間でドット20の配置が揃っているか否かが、第3実施形態と本変形例との相違点である。
このようなスケール部2Cも、4ビットの識別子として扱うことができる。
また、本変形例に係る列状パターン200は、第3実施形態に係る列状パターン200に比べて、ドット20と背景との境界線をより長く含むものとなる。すなわち、本変形例では、列状パターン200の間でドット20の数が異なる場合もある。例えば、図17の場合、ドット20の数が4個である列状パターン200と、5個である列状パターン200とが、混在している。このため、ドット20の数が多くなる場合があるという点で、図16と相違している。このようにドット20の数を多くすることができれば、例えばサブピクセル推定法を用いて特定パターン画像の画素座標を求める際、その特定精度を高めることができる。
以上のような変形例においても、第1~第3実施形態と同様の効果が得られる。
3.エンコーダーの製造方法
次に、実施形態に係るエンコーダーの製造方法について説明する。
図18は、実施形態に係るエンコーダーの製造方法を示す工程図である。図19は、図2のエンコーダーのスケール部を示す部分拡大図である。図20ないし図22は、それぞれ図18に示すエンコーダーの製造方法を説明するための図である。
エンコーダーの製造方法は、図18ないし図22に示すように、マーク形成用部材201を用意する準備工程S01と、レーザーLを照射してドット20(マーク)を形成し、スケール部2を得るレーザー加工工程S02と、スケール部2に対し、検出部3等を組み付ける組立工程S03と、を有する。
また、図19に示すスケール部2は、互いに表裏の関係を満たす上面202a(第1面)および下面202b(第2面)を有する基板202と、上面202aに設けられている第1層203と、第1層203の基板202とは反対側に設けられた第2層204と、を有する。そして、第2層204には、その一部を貫通する凹部205が形成されており、この凹部205が前述したドット20(マーク)となる。
以下、図18に示す各工程について順次説明する。なお、後述する製造方法は、前述したスケール部2を製造する方法の一例であり、スケール部2は他の製造方法で製造されたものであってもよい。
[1]準備工程S01
まず、マーク形成用部材201を用意する。図20に示すマーク形成用部材201は、前述したように、基板202と、上面202aに設けられている第1層203および第2層204と、を有する。したがって、マーク形成用部材201は、基板202、第1層203および第2層204がこの順で積層されてなる積層体である。
基板202の構成材料は、特に限定されないが、例えばガラス材料、炭素材料、シリコン材料、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料等が挙げられる。このうち、機械的強度等を考慮すると、アルミニウム等の金属材料が好ましく用いられる。
また、第1層203の構成材料および第2層204の構成材料は、それぞれ特に限定されないが、例えば、ガラス材料、樹脂材料、炭素材料等が挙げられる。このうち、レーザーLの照射により、気化し得る材料が好ましく用いられる。
ここで、第1層203および第2層204は、互いに明度が異なっている。明度とは、色の明るさを表す属性であるが、その定量化にあたっては光の反射率で代替してもよい。すなわち、第1層203および第2層204は、互いに光の反射率が異なっていればよい。なお、光の反射率は、例えば相対拡散反射測定装置等により測定可能である。また、相対拡散反射測定装置で測定した光の反射率は、第1層203と第2層204との間で10%以上異なっているのが好ましく、30%以上異なっているのがより好ましい。これにより、明度に十分な差を確保することができ、撮像画像におけるドット20のコントラストをより高めることができる。
したがって、第1層203および第2層204が呈する色は、それぞれ上記明度の差に応じて決めることができ、限定されるものではないが、例えば第1層203を白色、第2層204を黒色に設定したり、反対に第1層203を黒色、第2層204を白色に設定したりすればよい。
なお、第1層203の明度と第2層204の明度との大小関係は、特に限定されず、第2層204の明度が第1層203の明度より高くても、低くてもよい。ただし、レーザーLの吸収率を考慮すると、第2層204の明度が第1層203の明度より低いことが好ましい。これにより、第2層204におけるレーザーLの吸収率が高くなるため、短時間で精度の高い加工が可能になる。このため、輪郭形状が精度よく制御された加工痕を短時間で形成することができる。
また、第1層203の厚さおよび第2層204の厚さは、それぞれ特に限定されないが、10μm以上50μm以下であるのが好ましい。なお、第2層204の厚さについては、第1層203が透けて見えないように、双方の明度差に応じて適宜設定される。また、第1層203の厚さについては、第2層204をレーザー加工した余勢で第1層203が多少加工されてしまうことを考慮して、第2層204よりも厚くするようにしてもよい。
[2]レーザー加工工程S02
次に、図21に示すように、マーク形成用部材201の第2層204に向けてレーザーLを照射する。レーザーLが照射されると、照射領域の第2層204は、気化して除去される。その結果、図22に示すように、照射領域の第1層203が露出するように凹部205が形成される。例えば、第2層204の厚さ方向からの平面視において、レーザーLの照射領域が円形である場合、それに応じて、凹部205の平面視形状の円形になる。したがって、この凹部205は、第2層204が呈する色を背景色として、第1層203が呈する色のドット20となる。このとき、第1層203と第2層204とで明度が異なっていることにより、撮像画像においてドット20のコントラストを十分に確保することができる。ドット20とその背景とで、構成材料が互いに異なることも、撮像画像におけるドット20のコントラストを高めることに寄与する。その結果、テンプレートマッチングにおけるドット20の識別率を高めることができ、エンコーダー1の検出精度の向上を図ることができる。
また、レーザー加工によって凹部205を形成することにより、凹部205の輪郭が鈍りにくくなる。つまり、レーザー加工によれば、ドット20の輪郭形状を精度よく制御することが可能である。これにより、形状精度や位置精度の高いドット20を効率よく形成することができる。かかるドット20は、テンプレートマッチングにおける識別率が高いため、エンコーダー1の検出精度の向上に寄与する。
なお、レーザーLとしては、例えばYAGレーザー、YVO4レーザー、Ybレーザー、半導体レーザーのような各種固体レーザー、CO2レーザー、He-Neレーザー、UVレーザーのような各種気体レーザー等が挙げられる。このうち、光量の均等性や加工に適した波長であるといった観点から、ArFエキシマーレーザー、KrFエキシマーレーザー等の各種UVレーザーが好ましく用いられる。
[3]組立工程S03
次に、得られたスケール部2に対し、撮像素子31を含む検出部3および処理部5を含む回路部4を組み立てる。これにより、スケール部2と、スケール部2を検出する検出部3と、回路部4と、を有する図2のエンコーダー1が得られる。
エンコーダー1は、前述したように、スケール部2に対する撮像素子31の位置ずれを許容し得るものであるため、容易に組み立て可能である。
以上のように、実施形態に係るエンコーダー1の製造方法は、複数のドット20(マーク)を有するスケール部2と、ドット20を撮像して撮像した結果を出力する撮像素子31と、撮像した結果に基づきスケール部2の位置を求める処理を行う処理部5と、を有するエンコーダー1の製造に適用される。そして、その製造方法は、表裏の関係を満たす上面202a(第1面)および下面202b(第2面)を有する基板202と、上面202aに設けられている第1層203と、第1層203の基板202とは反対側に設けられ第1層203とは明度が異なる第2層204と、を有するマーク形成用部材201を用意する工程(準備工程S01)と、レーザーLを照射して、第2層204の一部を選択的に除去することにより、ドット20(マーク)を形成し、スケール部2を得る工程(レーザー加工工程S02)と、スケール部2に対し、撮像素子31および処理部5を組み付ける工程(組立工程S03)と、を有する。
このような製造方法によれば、撮像画像におけるドット20のコントラストが良好で、かつ、ドット20の形状や位置の精度も高めることができる。また、高い検出精度を損なうことなく、エンコーダー1の容易な組み立てが可能である。したがって、かかる製造方法によれば、テンプレートマッチングにおける識別率が高いドット20を備えた検出精度の高いエンコーダー1を効率よく製造することができる。
4.垂直多関節ロボット
図23は、実施形態に係るロボットの一例である垂直多関節ロボットを示す斜視図である。なお、以下では、ロボット100Cの基台210側を「基端側」、エンドエフェクター側を「先端側」という。
以下、実施形態に係る垂直多関節ロボットについて説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図23において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
図23に示すロボット100Cは、垂直多関節の6軸ロボットである。このロボット100Cは、基台210と、ロボットアーム209と、を有し、ロボットアーム209が、第1アーム220、第2アーム230、第3アーム240、第4アーム250、第5アーム260および第6アーム270と、を備え、これらのアームが基端側から先端側に向かってこの順に連結されている。第6アーム270の先端部には、図示しないが、例えば、精密機器、部品等を把持するハンド等のエンドエフェクターを着脱可能に取り付けられる。また、図示しないが、ロボット100Cは、ロボット100Cの各部の作動を制御するパーソナルコンピューター(PC)等のロボット制御装置(制御部)を備えている。
ここで、基台210は、例えば、床、壁または天井等に対して固定されている。第1アーム220は、基台210に対して第1回動軸O1まわりに回動可能となっている。第2アーム230は、第1アーム220に対して第1回動軸O1に直交している第2回動軸O2まわりに回動可能となっている。第3アーム240は、第2アーム230に対して第2回動軸O2に平行な第3回動軸O3まわりに回動可能となっている。第4アーム250は、第3アーム240に対して第3回動軸O3と直交している第4回動軸O4まわりに回動可能となっている。第5アーム260は、第4アーム250に対して第4回動軸O4と直交している第5回動軸O5まわりに回動可能となっている。第6アーム270は、第5アーム260に対して第5回動軸O5と直交している第6回動軸O6まわりに回動可能となっている。なお、第1回動軸O1~第6回動軸O6について、「直交」とは、2つの軸のなす角度が90°から±5°の範囲内でずれている場合も含み、また、「平行」とは、2つの軸の一方が他方に対して±5°の範囲内で傾斜している場合も含む。
また、基台210に対して第1アーム220を回動させる駆動源には、図示しないモーターおよびエンコーダーユニット10が設けられている。このエンコーダーユニット10が有するエンコーダー1の検出結果は、例えば、図示しないロボット制御装置に入力され、基台210に対して第1アーム220を回動させる駆動源の駆動制御に用いられる。また、図示しないが、他の関節部にもモーターおよびエンコーダーユニットが設けられており、このエンコーダーユニットとして、エンコーダーユニット10を用いることができる。
以上のように、ロボット100Cは、第1部材である基台210と、基台210に対して回動する第2部材である第1アーム220と、エンコーダー1と、を備え、エンコーダー1が基台210に対する第1アーム220の回動角度を検出する。このようなロボット100Cによれば、第1アーム220の回動角度を高精度に検出し、その検出結果に基づいて、第1アーム220の駆動制御を高精度に行うことができる。
すなわち、ロボット100Cは、複数のドット20(マーク)が集合しているマーク集合体21を複数有し、マーク集合体21が周方向DC(第1方向)に並んでおり、周方向DCに移動するスケール部2と、マーク集合体21の一部を撮像して撮像画像(撮像した結果)を出力する撮像素子31と、撮像画像に対してテンプレートマッチングを行い、周方向DCにおけるスケール部2の位置を求める処理を行う処理部5と、を有する。そして、このロボット100Cでは、周方向DCと垂直な方向である半径方向DR(第2方向)において、マーク集合体21の長さは、撮像素子31が撮像する領域RIの長さよりも長く設定されている。また、複数のマーク集合体21のうち、1つを第1集合体211とし、残りを第2集合体212としたとき、第1集合体211は、テンプレートマッチングの基準画像になる個別パターンUPを含み、第2集合体212は、個別パターンUPと同一のパターンを含まない。
このようなロボット100Cでは、スケール部2の位置を高い精度で検出することができるため、その検出結果に基づいて、第1アーム220の駆動制御を高精度に行うことができる。
以上では、エンコーダー1が基台210に対する第1アーム220の回動状態を検出する場合を説明したが、エンコーダー1を他のアームの回動状態を検出するように他の関節部に設置することも可能である。この場合、関節部に対して一方側のアームを第1部材、他方側のアームを第2部材として捉えればよい。
5.プリンター
図24は、プリンターの実施形態の概略構成を示す図である。
図24に示すプリンター1000は、ドラム状のプラテンを備えたラベル印刷装置である。このプリンター1000では、その両端が繰出軸1120および巻取軸1140に記録媒体としてのロール状に巻き付けられた紙系やフィルム系等の1枚のシートS(ウェブ)が、繰出軸1120と巻取軸1140の間に張架されており、シートSはこうして張架された搬送経路Scに沿って、繰出軸1120から巻取軸1140へと搬送される。そして、プリンター1000は、この搬送経路Scに沿って搬送されるシートSに対して機能液を吐出してシートS上に画像を記録(形成)するように構成されている。
プリンター1000は、概略的な構成として、繰出軸1120からシートSを繰り出す繰出部1102と、繰出部1102から繰り出されたシートSに画像を記録するプロセス部1103と、プロセス部1103で画像の記録されたシートSを切り抜くレーザースキャナー装置1007と、シートSを巻取軸1140に巻き取る巻取部1104とを含み構成されている。
繰出部1102は、シートSの端を巻き付けた繰出軸1120と、繰出軸1120から引き出されたシートSを巻き掛ける従動ローラー1121と、を有する。
プロセス部1103は、繰出部1102から繰り出されたシートSを支持部としてのプラテンドラム1130で支持しつつ、プラテンドラム1130の外周面に沿って配置されたヘッドユニット1115に配置された記録ヘッド1151等により適宜処理を行わせ、シートSに画像を記録するものである。
プラテンドラム1130は、図示しない支持機構によりドラム軸1130sを中心にして回転自在に支持された円筒形状のドラムであり、繰出部1102から巻取部1104へと搬送されるシートSを裏面(記録面とは反対側の面)側から巻き掛けられる。このプラテンドラム1130は、シートSとの間の摩擦力を受けてシートSの搬送方向Dsに従動回転しつつ、周方向での範囲Raにわたって、シートSを裏面側から支持するものである。ここで、プロセス部1103では、プラテンドラム1130への巻き掛け部の両側でシートSを折り返す従動ローラー1133、1134が設けられている。また、繰出軸1120と従動ローラー1133との間には、従動ローラー1121、1131およびセンサーSeが設けられ、巻取軸1140と従動ローラー1134との間には、従動ローラー1132、1141が設けられている。
プロセス部1103は、ヘッドユニット1115を備え、ヘッドユニット1115には、イエロー、シアン、マゼンタおよびブラックに対応する4個の記録ヘッド1151が設けられている。各記録ヘッド1151は、プラテンドラム1130に巻き掛けられたシートSの表面に対して若干のクリアランス(プラテンギャップ)を空けて対向しており、対応する色の機能液をノズルからインクジェット方式で吐出する。そして、搬送方向Dsへ搬送されるシートSに対して各記録ヘッド1151が機能液を吐出することにより、シートSの表面にカラー画像が形成される。
ここで、機能液として、紫外線または光を照射することで硬化するUV(ultraviolet)インクまたは光硬化性インクを用いる。そのため、プロセス部1103のヘッドユニット1115には、UVインクを仮硬化させてシートSに定着させるために、複数の記録ヘッド1151の各間に第1UV光源1161(光照射部)が設けられている。また、複数の記録ヘッド1151(ヘッドユニット1115)に対して搬送方向Dsの下流側には、本硬化用の硬化部としての第2UV光源1162が設けられている。
レーザースキャナー装置1007は、画像の記録されたシートSを部分的に切り抜く、もしくは分断するように設けられている。レーザースキャナー装置1007のレーザー発振器1401によって発振されたレーザー光は、前述した第1実施形態または第2実施形態のエンコーダー1を含む駆動装置1402、1406、1408によって位置または回転位置(角度)を制御された第1レンズ1403および第1ミラー1407や第2ミラー1409などを経由し、被加工物であるシートSに照射される。このように、シートSに照射されるレーザー光LAは、各駆動装置1402、1406、1408によって照射位置が制御され、シートS上の所望の位置に照射することができる。シートSは、レーザー光LAの照射された部分が溶断され、部分的に切り抜かれるか、もしくは分断される。
以上のようなプリンター1000は、エンコーダー1を備える。このようなプリンター1000によれば、エンコーダー1の検出精度が高いため、エンコーダー1の検出結果を用いて、プリンター1000の高精度な動作制御を行うことができる。
すなわち、プリンター1000は、複数のドット20(マーク)が集合しているマーク集合体21を複数有し、マーク集合体21が周方向DC(第1方向)に並んでおり、周方向DCに移動するスケール部2と、マーク集合体21の一部を撮像して撮像画像(撮像した結果)を出力する撮像素子31と、撮像画像に対してテンプレートマッチングを行い、周方向DCにおけるスケール部2の位置を求める処理を行う処理部5と、を有する。そして、このプリンター1000では、周方向DCと垂直な方向である半径方向DR(第2方向)において、マーク集合体21の長さは、撮像素子31が撮像する領域RIの長さよりも長く設定されている。また、複数のマーク集合体21のうち、1つを第1集合体211とし、残りを第2集合体212としたとき、第1集合体211は、テンプレートマッチングの基準画像になる個別パターンUPを含み、第2集合体212は、個別パターンUPと同一のパターンを含まない。
このようなプリンター1000では、スケール部2の位置を高い精度で検出することができるため、その検出結果に基づいて、プリンター1000の高精度な動作制御を行うことができる。
以上、本発明のエンコーダー、エンコーダーの製造方法、ロボットおよびプリンターを図示の好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、前述した2つ以上の実施形態の構成を組み合わせてもよい。
また、本発明のエンコーダーは、アブソリュート型およびインクリメンタル型のいずれの形式にも適用可能である。
また、前記実施形態では、いずれもロータリーエンコーダーについて説明したが、本発明のエンコーダーは、リニアエンコーダーにも適用可能である。リニアエンコーダーは、撮像素子に対して直線状に移動するスケール部と、そのスケール部を撮像する撮像素子と、スケール部の移動方向における位置を求める処理部と、を有する。そして、スケール部に設けられた複数のマーク集合体は、スケール部の移動方向(第1方向)に並んでいる。一方、移動方向と垂直な方向である直交方向(第2方向)においては、マーク集合体の長さが、撮像素子が撮像する領域の長さよりも長く設定されている。加えて、複数のマーク集合体のうち、1つを第1集合体とし、残りを第2集合体としたとき、第1集合体は、テンプレートマッチングの基準画像になる個別パターンを含み、第2集合体は、個別パターンと同一のパターンを含まない。
このようなリニアエンコーダーにおいても、スケール部に対する撮像素子の位置ずれを許容し得るため、組み立てが容易であるとともに、検出精度を高められるという効果を享受することができる。
また、前述したように、エンコーダー1は、スケール部2が配置され、かつ、第1軸J1(回動軸)まわりに回動することにより、マーク集合体21を周方向DC(第1方向)に移動させる回動部である第1アーム120を有している。これにより、マーク集合体21は、周方向DCに回動することとなり、エンコーダー1は、スケール部2の回動状態を検出することが可能になる。したがって、エンコーダー1は、ロータリーエンコーダーとして機能する。
また、前述した実施形態では、ロボットの基台を「基部(第1部材)」、第1アームを「回動部(第2部材)」とした場合を例に説明したが、これに限定されず、相対的に回動する任意の2つの部材の一方を「基部」、他方を「回動部」とすることができる。すなわち、エンコーダーの設置箇所は、基台と第1アームとの関節部に限定されず、相対的に回動する任意の2つのアームの関節部であってもよい。また、エンコーダーの設置箇所は、ロボットが有する関節部に限定されない。
また、前述した実施形態では、ロボットアームの数は、1つであったが、ロボットアームの数は、これに限定されず、例えば、2つ以上でもよい。すなわち、本発明のロボットは、例えば、双腕ロボット等の複数腕ロボットであってもよい。
また、前述した実施形態では、ロボットアームが有するアームの数は、2つまたは6つであったが、アームの数は、これに限定されず、1つでもよいし、3つ以上5つ以下または7つ以上でもよい。
また、前述した実施形態では、本発明のロボットの設置箇所は、床面に限定されず、例えば、天井面や側壁面等でもよいし、AGV(Automatic Guided Vehicle)等の移動体でもよい。また、本発明のロボットは、建物等の構造物に固定設置されるものに限定されず、例えば、脚部を有する脚式歩行(走行)ロボットであってもよい。
また、本発明のエンコーダーは、前述したプリンターに限定されず、回転部を有する産業用プリンター、民生用プリンター等の各種プリンターに用いることができる。また、本発明のエンコーダーをプリンターに用いる場合、エンコーダーの設置箇所は、前述したものに限定されず、例えば、紙送り機構、インクジェットプリンターのインクヘッドを搭載したキャリッジの移動機構等に用いてもよい。