JP7135390B2 - 熱硬化性導電性組成物 - Google Patents
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Description
導電性が高い繊維強化複合部材に関する従来技術として、例えば、無機系導電性粒子及び導電性フィラー等を、少なくともエポキシ樹脂を含む母材樹脂に添加し樹脂に導電性を付与する、繊維強化複合部材用樹脂組成物の技術が提案されている(特許文献1)。一方、導電性充填剤の使用を避け、ドープされた形態で良好な導電性を有する導電性高分子ドーパントを、スチレン誘導体等のカチオン反応性基を有するモノマーと混合した熱硬化性導電性樹脂組成物が開発されている(特許文献2)。
また、特許文献2に記載の導電性樹脂組成物の硬化物は優れた導電性を示すが、硬化前の組成物を保存している間であっても、モノマーの反応が起こるおそれがあるため、保存安定性に乏しいという問題がある。また、高導電化を図るために導電性樹脂の添加量を増やした場合、組成物が高粘度化するとともに、硬化成分が少なくなることで成形性、硬化性が消失してしまうという問題もある。すなわち、成形性に乏しいことが工業化展開の問題となっている。
(1)示差走査型熱量計を用いて測定した、前記熱硬化性導電性組成物の硬化反応開始温度が70℃以上
(2)硬化後の硬化物の体積抵抗率が1.0×10-4Ω・cm以上1.0×104Ω・cm以下
本発明の熱硬化性導電性組成物は、導電性ポリマー(A)、プロトン酸ドーパント(B)、及び脂環式骨格とエポキシ基とを有する化合物(C)を含み、下記(1)及び(2)を満たすことを特徴とする。
(1)示差走査型熱量計を用いて測定した、前記熱硬化性導電性組成物の硬化反応開始温度が70℃以上
(2)硬化後の硬化物の体積抵抗率が1.0×10-4Ω・cm以上1.0×104Ω・cm以下
本発明の熱硬化性導電性組成物(以下、単に「組成物」と略記することがある。)において、プロトン酸ドーパント(B)は導電性ポリマー(A)のドーパント成分として働き、かつモノマーである脂環式骨格とエポキシ基を有する化合物(C)(以下、単に「化合物(C)」と略記することがある。)の重合開始剤としても働く。導電性ポリマー(A)はプロトン酸ドーパント(B)中に均一に分散されていることにより、かつ各成分の含有割合等を好適に調整することによって組成物中に均一に分散した導電性ポリマー(A)及びプロトン酸ドーパント(B)からなる複合体により、組成物の硬化物は優れた導電性を有する。
さらに、本発明の組成物は高粘度化や硬化成分が少なくなるおそれがほとんどなく、硬化性が良好であることから成形性に優れる。また、本発明の組成物は、脂環式骨格とエポキシ基を有する化合物(C)を含有することで濡れ性にも優れる。
本発明の組成物は、(1)示差走査型熱量計を用いて測定した、組成物の硬化反応開始温度が70℃以上であることを特徴とする。上記硬化反応開始温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上である。上限は特に制限がないが、通常200℃以下である。
本発明の組成物は熱硬化性を有するため、昇温すると硬化反応を開始する。示差走査型熱量計(DSC)の測定により求められる、組成物の硬化反応開始温度が70℃未満であると昇温前に組成物の重合反応が起こるおそれがあり、優れた保存安定性を発現することができない。本発明の組成物は、保存安定性に優れるので保存している間であっても未硬化状態が維持されている。そのため、例えば、プリプレグ、塗料、電子部材等の各種用途の材料として、保存していた本発明の組成物を用いても、保存期間中に組成物の重合反応が進行していたことによって引き起こされる品質の不具合が生じるおそれがなく、硬化物の十分な実用物性が得られる。また、本発明の組成物であれば、組成物の製造後直ちに各種用途に用いることを要さず、生産性にも好適である。
本発明において上記硬化反応開始温度を所望する範囲内とするためには、モノマーとして化合物(C)を用いることが重要であり、加えて各成分の含有割合や分散性等を好適に調整することによって達成することができる。
より具体的には、硬化反応開始温度は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
本発明の組成物は、(2)硬化後の硬化物の体積抵抗率が1.0×10-4Ω・cm以上1.0×104Ω・cm以下であることを特徴とする。また上記体積抵抗率は、好ましくは1.0×103Ω・cm以下、より好ましくは1.0×102Ω・cm以下である。
上記体積抵抗率が1.0×10-4Ω・cm未満であると良好な導電性を得られるが樹脂の含有割合が少なくなり成形性に劣り、1.0×104Ω・cmを超えると導電性が不十分である。
本発明の組成物を硬化した硬化物の体積抵抗率を上記範囲内とするためには、導電性ポリマー(A)及びプロトン酸ドーパント(B)を適切に選択することや、これらの含有割合及び分散性を好適にすること等により調整することができる。
より具体的には、体積抵抗率は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
本発明の組成物は、硬化後の硬化物の表面接触角度は、好ましくは75°以下、より好ましくは65°以下、さらに好ましくは63°以下である。表面接触角度の下限は特に制限がないが、通常15°以上である。
本発明において上記表面接触角度が75°以下であることで、本発明の組成物を硬化した硬化物は濡れ性に優れ、当該組成物を用いた各種材料と、塗料やゲルコート等との密着性が高くなり、室外で使用する際に、表面コート品の剥がれや、脱落が少なくなるという利点を有し、硬化物の耐候性の向上も期待できる。
上記硬化物の表面接触角度を上記範囲内とするためには、化合物(C)としてエポキシ基等の官能基が多い化合物を使用すればよい。
本発明において上記表面接触角度は、表面接触角度計を用いて測定することができる。より具体的には、表面接触角度は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
本発明においては、導電性ポリマー(A)として、ポリアニリン、ポリアニリン誘導体、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリ(3,4-ジオキシチオフェン)等を用いることができる。本発明において導電性ポリマー(A)は、好ましくはポリアニリン又はポリアニリン誘導体である。
ポリアニリンは、下記式(1)に示すエメラルディンベース(EB)状態では絶縁体である。
なお、ポリアニリンの電子状態は、UV-vis-NIRスペクトルから確認することができる。
プロトン酸ドーパント(B)は、EB状態の導電性ポリマー(A)を導電性にするために用いられる。
本発明においてプロトン酸ドーパント(B)としては、塩酸、硫酸、硝酸、及びリン酸等の無機酸;有機スルホン酸、有機カルボン酸、及び有機リン酸等の有機酸を用いることができるが、これらの中ではプロトン酸ドーパント(B)は有機スルホン酸であることが好ましい。
立体障害の大きい部位を有する有機酸として、具体的には、下記式(3)に示すドデシルベンゼンスルホン酸のほか、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アルキルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、樟脳スルホン酸、ジオクチルスルホコハク酸、ポルフィリンテトラスルホン酸、ポリビニルスルホン酸等の有機スルホン酸;プロピルリン酸、ブチルリン酸、ヘキシルリン酸、ポリエチレンオキシドドデシルエーテルリン酸、ポリエチレンオキシドアルキルエーテルリン酸等の有機リン酸等が挙げられる。中でも、ドデシルスルホン酸、アルキルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ブチルリン酸、ヘキシルリン酸がより好ましい。
上記プロトン酸ドーパント(B)は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。例えば粘度調整のため、プロトン酸ドーパントとして相溶性がある液体のものと固体のものを併用することもできる。
本発明において重合モノマーとして、脂環式骨格とエポキシ基とを有する化合物(C)が用いられる。
化合物(C)は、脂環式骨格と1個以上のエポキシ基とを有する化合物であり、分子内(一分子中)に脂環(脂肪族環)構造とエポキシ基(オキシラニル基)とを少なくとも有する化合物である。化合物(C)として具体的には、(i)脂環式骨格を構成している隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物、(ii)脂環式骨格を構成している炭素原子と直接単結合しているエポキシ基を有する化合物、(iii)水素化芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物等が挙げられ、これらは単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、プロトン酸ドーパント(B)がカチオン重合開始剤として働き、カチオン反応性触媒を使用しない。また、化合物(C)を重合モノマーとして用いる際、室温において重合反応はほとんど生じないが、熱を加えたときに重合反応が開始するという特徴を有する。
上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基等のC1-20アルキル基等が挙げられる。
上記アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基等のC2-20アルケニル基等が挙げられる。
上記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基等のC2-20アルキニル基等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のC6-14アリール基(特に、C6-10アリール基)等が挙げられる。
また、上記脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基としては、例えば、シクロへキシルメチル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等のC7-18アラルキル基、シンナミル基等のC6-10アリール-C2-6アルケニル基、トリル基等のC1-4アルキル置換アリール基、スチリル基等のC2-4アルケニル置換アリール基等が挙げられる。
上記連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、及びこれらが複数個連結した基等が挙げられる。
式(4-1)中のYが単結合である脂環式エポキシ化合物としては、3,4,3’,4’-ジエポキシビシクロヘキサン等が挙げられる。
上記連結基Yとしては、特に、酸素原子を含有する連結基が好ましく、具体的には、例えば、-CO-、-O-CO-O-、-COO-、-O-、-CONH-;これらの基が複数個連結した基;これらの基の1又は2以上と2価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基等が挙げられる。2価の炭化水素基としては上記で例示したものが挙げられる。
なお、下記式(I-5)、(I-7)中のl、mは、それぞれ1~30の整数を表す。下記式(I-5)中のRは炭素数1~8のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1~3の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。下記式(I-9)、(I-10)中のn1~n6は、それぞれ1~30の整数を示す。
上記式(II)で表される化合物としては、具体的には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)等]等が挙げられる。
下記式(III)で表される化合物としては、具体的には、商品名「YX8000」(三菱ケミカル(株)製)、商品名「YX8034」(三菱ケミカル(株)製)等を使用できる。
本発明の組成物において、化合物(C)の含有量は、導電性と成形性との両立を考慮し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。また本発明の組成物における化合物(C)の含有量は、上記と同様の観点から好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
本発明の組成物において、導電性ポリマー(A)がポリアニリンである場合、ポリアニリンの窒素原子と、プロトン酸ドーパント(B)は、モル比[ポリアニリンの窒素原子:プロトン酸ドーパント]で、好ましくは10:1~1:2である。
プロトン酸ドーパント(B)が少なすぎると、加熱しても重合・硬化反応が十分に進行しないほか、ポリアニリンの状態がES状態からEB状態に変化し、導電性が失われてしまう。一方、プロトン酸ドーパント(B)がこの範囲を超えて多く存在すると、ポリアニリンによる導電路形成が困難となり、良好な導電性を示さない以外、加熱しなくても室温で発熱を伴う反応が開始し、反応制御が困難となり、速やかに硬化してしまう。
導電性ポリマー(A)及びプロトン酸ドーパント(B)の合計が多くなるほど組成物の導電性が高くなるが、多くなり過ぎると成形性に不具合が生じる。また上記質量比の範囲内であれば組成物中に導電性ポリマー(A)及びプロトン酸ドーパント(B)の複合物が好適に分散され優れた導電性が発現されやすくなる。
本発明の組成物は、低粘度及び保存安定性を向上するため、上記化合物(C)以外の他のエポキシ化合物(D)(以下、「他のエポキシ化合物(D)」と称することがある。)を併用することもできる。
上記他のエポキシ化合物(D)としては、例えば、芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物[例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAのクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、トリスフェノールメタンから得られるエポキシ化合物等]、脂肪族グリシジルエーテル系エポキシ化合物[例えば、脂肪族ポリグリシジルエーテル等]、グリシジルエステル系エポキシ化合物、グリシジルアミン系エポキシ化合物、エポキシ基を有するイソシアヌレート化合物[例えば、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート化合物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物、トリグリシジルイソシアヌレート化合物等]が挙げられる。
本発明の組成物において上記他のエポキシ化合物(D)は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
他のエポキシ化合物(D)を使用することで、組成物の粘度を調整することができる。
他のエポキシ化合物(D)の含有量は、特に限定されないが、組成物の粘度にしたがって、適当な比率で添加することもできる。
本発明の組成物は、上記他のエポキシ化合物(D)を含有する場合、硬化剤(E)をさらに含有することができる。
硬化剤(E)としては、エポキシ樹脂用硬化剤として公知乃至慣用の硬化剤を使用することができ、特に限定されないが、例えば、酸無水物類(酸無水物系硬化剤)、アミン類(アミン系硬化剤)、ポリアミド樹脂、イミダゾール類(イミダゾール系硬化剤)、ポリメルカプタン類(ポリメルカプタン系硬化剤)、フェノール類(フェノール系硬化剤)、ポリカルボン酸類、ジシアンジアミド類、有機酸ヒドラジド等が挙げられる。上記硬化剤(E)は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物は、上記他のエポキシ化合物(D)を含有する場合、硬化促進材(F)をさらに含有することができる。
硬化促進剤(F)は、他のエポキシ化合物(D)が硬化剤(E)と反応する際に、その反応速度を促進する機能を有する化合物である。
硬化促進剤(F)としては、公知乃至慣用の硬化促進剤を使用でき、特に限定されないが、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)又はその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩等);1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)又はその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩等);ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン;2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール;リン酸エステル;トリフェニルホスフィン、トリス(ジメトキシ)ホスフィン等のホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p-トリル)ボレート等のホスホニウム化合物;オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ、ステアリン酸亜鉛等の有機金属塩;アルミニウムアセチルアセトン錯体等の金属キレート等が挙げられる。上記硬化促進剤(F)は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物には、添加剤として、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びエラストマーからなる群から選ばれた1種以上の樹脂を添加することができる。この添加剤は、組成物の靭性を向上させ、かつ、粘弾性を変化させて、粘度、貯蔵弾性率及びチキソトロープ性を適正化する役割がある。添加剤として用いられる熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーまたはエラストマーは、単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
中でも、例えばポリアクリレート、ナイロン、ポリアラミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン及びポリエーテルスルホンのようなエンジニアリングプラスチックに属する熱可塑性樹脂の一群がより好ましく用いられる。
耐熱性に優れることから、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン及びポリエーテルスルホン等が特に好ましく使用される。この中でもポリエーテルスルホンは、硬化物の耐熱性と弾性率を維持したまま靭性を高めることができより好ましい。
また、これらの熱可塑性樹脂が熱硬化性樹脂との反応性の官能基を有することは、靭性向上及び硬化樹脂の耐環境性維持の観点から好ましい。特に好ましい官能基としては、カルボキシル基、アミノ基及び水酸基等が挙げられる
本発明の組成物は、導電性ポリマー(A)及びプロトン酸ドーパント(B)を混合してプロトン酸ドーパント(B)中に導電性ポリマー(A)を分散させて、導電性ポリマー(A)及びプロトン酸ドーパント(B)からなる複合体とした後、該複合体と、化合物(C)及び必要に応じて(D)~(F)やその他の成分とを混合、分散させて製造することができる。
上記混合に用いる装置としては特に制限はなく、例えば例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌法等が挙げられる。
本発明の組成物の硬化は、前述のとおりプロトン酸ドーパント(B)が重合開始剤となって重合反応が進行する。重合反応は昇温すればよく、100~250℃程度で行うことが好ましい。硬化温度を100℃以上とすることにより硬化時間が短縮され、250℃以下とすることにより空気中の酸素等により副反応が生じたり、導電性、成形性及び濡れ性に不具合が発生したりするおそれが抑えられる。
・(C):セロキサイド2021P:商品名「セロキサイド2021P」[3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート]、分子量252、(株)ダイセル製
<評価法>
(1)硬化反応開始温度(保存安定性)
実施例又は比較例で得られた6~10mgの組成物を試料として示差走査型熱量計中に置く。それから試料を5℃/分で加熱し、200~230℃の最終温度まで到達させる。示差走査熱量分析により得られる発熱曲線の変曲点の接線とベースラインの接線の交点から硬化反応開始温度を求めた。
かかる硬化反応開始温度が70℃未満であると保存安定性が不十分で、70℃以上であると保存安定性が良好であると評価した。
なお、本実施例において、樹脂組成物の保存安定性は硬化反応開始温度の高い方が好ましい。
(2)体積抵抗率(導電性)
実施例又は比較例で得られた硬化物を用いて測定用の試料(約100mm×約100mm×約200μm)を作製し、抵抗率計「ロレスタGP」(ロレスタGPMCP-T610型抵抗率計、JIS K 7194:1994準拠、4端子4探針法定電流印加方式、(株)三菱ケミカルアナリテック製)(0.5cm間隔の4端子プローブ)を用い、体積抵抗値(Ω・cm)を測定した。
なお、本実施例において、数値が小さい方が導電性に優れている。
(3)表面接触角度(濡れ性)
実施例又は比較例で得られた硬化物を水平面に静置し、水平面に対して垂直方向から8μLの純水滴をポリマー複合体等に滴下した。表面接触角計WPI-3000((株)共和化学工業所製)を用いて「液滴法:θ/2法」モードで表面接触角度を測定した。
なお、表面接触角度の値が小さいほど、表面の親水性が高いといえる。
(4)硬化性(成形性)
実施例又は比較例で得られた組成物の硬化性を次の基準にしたがい評価した。
○:硬化反応が良好に進行し、反応の残りが生じない。
△:硬化反応が進行するが、残モノマーのにおい等の不具合が生じる。
×:硬化反応が進行しない、又は、進行しても未硬化の液体が残りタックが出る等の不具合が生じる。
(1)ポリアニリン-ドデシルベンゼンスルホン酸複合体の調製[導電性ポリマー(A)とプロトン酸ドーパント(B)の混合物]
市販されたエメラルディンベース(EB)状態のポリアニリン(PANI)30部と、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)70部を3本ロールミル機に配合し、均一分散するように混練することでペースト状の混合物(ポリアニリンA-ドデシルベンゼンスルホン酸複合体)を得た。
(2)組成物
上記ポリアニリンA-ドデシルベンゼンスルホン酸複合体7gに、脂環式エポキシ化合物(化合物(C)、セロキサイド2021P、前述のエポキシ化合物(i)に相当)を3g加え、3本ロールミル機を用いて良分散したペースト状の組成物を得た。得られた組成物を用いて上述の方法により硬化反応開始温度を求めた。
また、得られた組成物を150℃で1.5時間加熱し、シート状の硬化物を得た。得られた硬化物を用いて上述の方法により、体積抵抗率、表面接触角度、及び硬化性を評価した。
各種評価結果を表1に示す。
実施例1の(1)で得たポリアニリンA-ドデシルベンゼンスルホン酸複合体5gに、ジビニルベンゼン((C’))5gを加え、自転公転ミキサーを用いて室温で20分間撹拌し、ジビニルベンゼン中にポリアニリンA-ドデシルベンゼンスルホン酸複合体が良分散したペースト状のポリアニリン組成物を得た。撹拌の途中、組成物の粘度が少しずつ上昇していることが感じられた。
得られた組成物を用いて120℃で1.5時間加熱し、シート状の硬化物を得た。ただし、硬化物は残モノマーの匂いがあった。得られた組成物及び硬化物について上述の方法により各種評価を行い、結果を表1に示す。
実施例1の(1)で得たポリアニリンA-ドデシルベンゼンスルホン酸複合体4gに、脂環式エポキシ(化合物(C)、セロキサイド2021P、前述のエポキシ化合物(i)に相当)6gを加え、自転公転ミキサーを用いて室温で20分間撹拌し、クリーム状の低粘度組成物を得た。
得られた組成物を用い、150℃で1.5時間加熱したが、未反応組成物が残り、粘状物になり硬化物が得られなかった。
得られた組成物について上述の方法により硬化反応開始温度を求めた。また、硬化物は得られなかったため体積抵抗率及び表面接触角度の測定は実施できず、上記粘状物について硬化性を評価した。
各種評価結果を表1に示す。
Claims (8)
- 導電性ポリマー(A)、プロトン酸ドーパント(B)、及び脂環式骨格とエポキシ基とを有する化合物(C)を含み、下記(1)及び(2)を満たし、前記化合物(C)の含有量が5質量%以上50質量%以下である、熱硬化性導電性組成物。
(1)示差走査型熱量計を用いて測定した、前記熱硬化性導電性組成物の硬化反応開始温度が70℃以上
(2)硬化後の硬化物の体積抵抗率が1.0×10-4Ω・cm以上1.0×104Ω・cm以下 - 前記化合物(C)の重量平均分子量が200~2000である、請求項1に記載の熱硬化性導電性組成物。
- 前記導電性ポリマー(A)がポリアニリンである、請求項1又は2に記載の熱硬化性導電性組成物。
- 前記ポリアニリンの窒素原子と、前記プロトン酸ドーパント(B)とのモル比が、10:1~1:2である、請求項3に記載の熱硬化性導電性組成物。
- 前記導電性ポリマー(A)及び前記プロトン酸ドーパント(B)の合計と、前記化合物(C)との質量比が、1:1~1:0.1である、請求項1~4のいずれかに記載の熱硬化性導電性組成物。
- 前記化合物(C)が、(i)脂環式骨格を構成している隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有する化合物、(ii)脂環式骨格を構成している炭素原子と直接単結合しているエポキシ基を有する化合物、及び(iii)水素化芳香族グリシジルエーテル系エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~5のいずれかに記載の熱硬化性導電性組成物。
- 前記プロトン酸ドーパント(B)が有機スルホン酸である、請求項1~6のいずれかに記載の熱硬化性導電性組成物。
- 硬化後の硬化物の表面接触角度が75°以下である、請求項1~7のいずれかに記載の熱硬化性導電性組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018069885A JP7135390B2 (ja) | 2018-03-30 | 2018-03-30 | 熱硬化性導電性組成物 |
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