JP7132465B2 - 血管新生促進剤、及び治療方法 - Google Patents

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Description

本発明は、血管新生促進剤、及び治療方法に関する。
末梢性動脈疾患(PAD)等の治療のために、患者に線維芽細胞増殖因子(FGF;Fibroblast growth factor)等の成長因子を投与して、患者における血管新生を促進する方法が知られている。
例えば、特許文献1には、「酸素含有雰囲気下でゼラチン又はゼラチン誘導体が電子線の照射により架橋された架橋ゼラチンゲル層の複数層が互いに隣接して配置された層構成を有する架橋ゼラチンゲル多層構造体」に、生理活性因子を担持させてなる生理活性因子放出用製剤が記載されている。
国際公開第2008/016163号
特許文献1に記載された生理活性因子放出用製剤によれば、動物実験により、血管の新生が促進されることが示されている。しかし、本発明者らの検討によれば、生理活性因子(成長因子)は高価であり、かつ安定性が必ずしも十分ではないという課題がある。
成長因子を含有する特許文献1に記載された生理活性因子放出用製剤は、高価な成長因子を含有し、更に、意図した治療効果が得られない場合があり、改善の余地があった。
そこで、本発明は、成長因子を含有しなくても、優れた血管新生促進作用を発揮できる、血管新生促進剤を提供することを課題とする。また、本発明は、成長因子を投与しなくとも血管新生を促進できる方法、それによって、末梢性動脈疾患(PAD)等を治療する方法の提供も課題とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、特定のゼラチン誘導体又はその架橋物により上記課題を達成することができることを見出した。
[1] 下記式(1)で表されるゼラチン誘導体、及び前記ゼラチン誘導体の架橋物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、血管新生促進剤。
Figure 0007132465000001

式(1)中、Gltnはゼラチン残基を表し、Lは単結合、又は2価の連結基であり、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~20個の炭化水素基、又は水素原子であり、R及びRの少なくとも一つは前記炭化水素基である。
[2] 成長因子を実質的に含有しない、[1]に記載の血管新生促進剤。
[3] 上記炭化水素基が、炭素数2~20個の鎖状炭化水素基、炭素数2~20個の脂環式炭化水素基、炭素数6~14個の芳香族炭化水素基、及び、これらを組み合わせた炭素数2~20個の基からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載の血管新生促進剤。
[4] 上記ゼラチン誘導体が、冷水魚由来である、[1]~[3]のいずれかに記載の血管新生促進剤。
[5] 上記冷水魚がタラである、[4]に記載の血管新生促進剤。
[6] 前記ゼラチン誘導体の架橋物を有効成分として含有する、[1]~[5]のいずれかに記載の血管新生促進剤。
[7] ファイバーメッシュの形態である、[1]~[6]のいずれかに記載の血管新生促進剤。
[8] 粒子の形態である、[1]~[6]のいずれかに記載の血管新生促進剤。
[9] 抹消動脈疾患の治療のための、[1]~[8]のいずれかに記載の血管新生促進剤。
[10] 哺乳動物である対象に、医薬上有効量の[1]~[8]のいずれかに記載の血管新生促進剤を投与する、血管新生を促進する方法。
[11] 哺乳動物における抹消動脈疾患の治療方法であって、
治療を必要とする哺乳動物の患部に、医薬上有効量の[1]~[8]のいずれかに記載の血管新生促進剤を投与する工程を含む、治療方法。
[12] 抹消動脈疾患の治療のための、[1]~[8]のいずれかに記載の血管新生促進剤。
[13] 血管新生促進剤を調製するための、下記式1で表されるゼラチン誘導体、及び前記ゼラチン誘導体の架橋物からなる群より選択される少なくとも1種の使用。
Figure 0007132465000002

式1中、Gltnはゼラチン残基を表し、Lは単結合、又は、2価の連結基を表し、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1~20個の炭化水素基、又は、水素原子であり、R、及びRからなる群より選択される少なくとも一つは前記炭化水素基である。
[14] 前記血管新生促進剤が、抹消動脈疾患を治療するための医薬である、[13]に記載の使用。
[15] 前記血管新生促進剤が、成長因子を実質的に含有しない、[13]又は[14]に記載の使用。
[16] 前記炭化水素基が、炭素数2~20個の鎖状炭化水素基、炭素数2~20個の脂環式炭化水素基、炭素数6~14個の芳香族炭化水素基、及びこれらを組み合わせた炭素数2~20個の基からなる群より選択される少なくとも1種である、[13]~[15]のいずれかに記載の使用。
[17] 前記ゼラチン誘導体が冷水魚由来である、[13]~[16]のいずれかに記載の使用。
[18] 前記冷水魚がタラである、[17]に記載の使用。
[19] 前記ゼラチン誘導体の架橋物を有効成分として含有する、[13]~[18]のいずれかに記載の使用。
[20] 前記血管新生促進剤が、ファイバーメッシュの形態である、[13]~[19]のいずれかに記載の使用。
[20] 前記血管新生促進剤が、粒子の形態である、[13]~[19]のいずれかに記載の使用。
本発明によれば、新規血管新生促進剤、血管新生を促進する方法、及び末梢性動脈疾患(PAD)等の治療方法を提供できる。
スケソウダラゼラチンを原料とし、後述する方法によって、スケソウダラゼラチンのアミノ基の37mol%に対してドデシル基を導入した「37C12-ApGltn」の溶液を固形分20%(質量/体積)としてラット皮下に注入し、3日後に注入部位付近の組織を確認した際の様子を示す写真である。 図1の試験の対照としてリン酸緩衝生理食塩水を注入し、3日後に注入部位付近の組織を観察した際の様子を示す写真である。 レーザードップラーによる血流量画像である。 レーザードップラーによる血流量の定量結果である。 PBSのみを注入した組織の写真である。 34C14のゲルを埋入した組織の写真である。 PBSのみを注入した組織の写真である。 原料ゼラチン(Org)のゲルを注入した組織の写真である。 34C12のゲルを埋入した組織の写真である。 34C12のゲルを埋入した組織のHE染色像、NF-κB染色像、及びCD31染色像を示す。HE染色組織像に付記した緑の矢印、並びにCD31免疫染色組織像に付記した赤の矢印は血管を示す。 In vitroにおけるゲルの分解性の試験結果である。 ゲルの貯蔵弾性率とtanδの測定結果である。 ゲルのインジェクション試験の結果である。 ゲルの貯蔵弾性率の測定結果である。 ゲルのtanδの測定結果である。 架橋原料ゼラチン(Org)粒子の電子顕微鏡写真である。 架橋33C12粒子の電子顕微鏡写真である。 PBSのみを注入した組織の写真である。 原料ゼラチン(Org)を注入した部位の周辺組織の写真である。 33C12を埋入した部位の周辺組織の写真である。 レーザードップラーによる血流量の定量結果である。 架橋原料ゼラチン(Org)のファイバーメッシュの電子顕微鏡写真である。 架橋33C12のファイバーメッシュの電子顕微鏡写真である。 レーザードップラーによる血流量の定量結果である。 擬似剤(Sham)を注入した部位の周辺組織の写真である。 架橋原料ゼラチン(Org)のファイバーメッシュを埋入した部位の周辺組織の写真である。 架橋41C8のファイバーメッシュを埋入した部位の周辺組織の写真である。 架橋33C12のファイバーメッシュを埋入した部位の周辺組織の写真である。 架橋26C16のファイバーメッシュを埋入した部位の周辺組織の写真である。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
[血管新生促進剤]
本発明の実施形態に係る血管新生促進剤は、下記式1で表されるゼラチン誘導体、及び当該ゼラチン誘導体の架橋物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する血管新生促進剤である。
Figure 0007132465000003
式1中、Gltnはゼラチン残基を表し、Lは単結合、又は2価の連結基であり、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~20個の炭化水素基、又は水素原子であり、R及びRの少なくとも一つは前記炭化水素基である。
本発明の実施形態に係る血管新生促進剤は、所定の置換基により修飾されたゼラチン誘導体、及び/又はその架橋物(以下、まとめて「ゼラチン誘導体等」ということがある。)を含有する。このような血管新生促進剤は、典型的には、所定量の水と混合され、ゲル化された後、患者における目的部位(患部)に経皮的に注入して使用できる。
ゼラチンは、コラーゲンが変性して3次元のトリプルヘリックス構造が崩れたものを意味し、生体適合性が高く既に臨床でも様々な医療材料として用いられている。
一方、上記ゼラチン誘導体は、所定の置換基を有し、このようなゼラチン誘導体等を有効成分として含有する血管新生促進剤は、典型的にはゲル化して生体内に注入されると、生体内において、驚くべきことに、上記ゲルが注入された周辺細胞において、血管新生促進作用を奏することを本発明者らは知見した。
後述する実施例により、上記ゲルが注入された周辺細胞において、血管新生マーカーの発現のみならず、細胞増殖因子の発現が確認されており、理論に拘泥するものではないが、血管新生促進効果が得られる機序について、本発明者らは以下のとおり推測している。
すなわち、本発明の実施形態に係る血管新生促進剤は、所定の置換基を有するゼラチン誘導体等を含有し、これを注入した部位の周辺で細胞の炎症性サイトカインの放出が誘導されやすくなるため、結果として、目的部位の周辺の細胞により、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、及び腫瘍壊死因子(TNF)等の成長因子が産生され、ゲル自体に成長因子を含有しなくても、十分に血管新生が促進されるものと推測される。
また、上述したとおり、上記血管新生促進剤(典型的にはゲル化して注入される)によれば、目的部位の周辺細胞により産生される内因性の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等を利用するため、成長因子を含有させなくても、より安定的に治療効果を得ることが期待される。
図1は、スケソウダラゼラチンを原料とし、後述する方法によって、スケソウダラゼラチンのアミノ基の37mol%に対してドデシル基を導入した「37C12-ApGltn」のゲル(固形分20%(質量/体積))をラット皮下に注入して3日後の埋入部位の周辺組織を示す写真である。
コントロールとしてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を注入した部位の周辺組織を示す図2の写真と比較すると、本発明の実施形態に係る血管新生促進剤を含有するゲルである「37C12-ApGltn」は、注入後3日目において、より多くの血管が新生していることがわかる。
なお、図1及び図2において、黒く筋状に見える部分が血管を表している。
以下、本発明の実施形態に係る血管新生促進剤が含有する各成分について詳述する。
(ゼラチン誘導体等)
本発明の実施形態に係る血管新生促進剤は、式1で表されるゼラチン誘導体、及びその架橋物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
Figure 0007132465000004
式1中、Gltnはゼラチン残基を表し、Lは単結合、又は2価の連結基を表し、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~20個の炭化水素基、又は水素原子であり、R及びRの少なくとも一つは前記炭化水素基である。
Lの2価の連結基としては特に制限されないが、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-N(R)-(Rは水素原子又は1価の有機基(好ましくは炭素数1~20個の炭化水素基)を表す)、アルキレン基(好ましくは炭素数2~10のアルキレン基)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~10のアルケニレン基)、及びこれらの組み合わせ等が挙げられ、なかでも-C(O)-が好ましい。
すなわち、式1中、Lは、単結合、又は-C(O)-が好ましい。
Nは、特に制限されないが、ゼラチン中のリジン(Lys)のε-アミノ基に由来することが好ましい。リジンのアミノ基に連結基を介して、又は介さずに(言い換えれば直接)、*-CHを結合させる方法としては、例えば、いわゆる還元(的)アミノ化反応(アルデヒド、又はケトンを用いる方法)、及びショッテン・バウマン(Schotten-Baumann)反応(酸クロライドを用いる方法)等を利用する方法が挙げられ、これらについては後で詳細に説明する。
他の形態としては、ゼラチン中のアミノ酸が有するカルボキシ基に、アミノ基を有する化合物をカルボジイミド化合物等を用いて反応させて得られる基であってもよい。
及びRの一方は水素原子であることが好ましい。
なお、式1の-NH-構造は、例えばFT-IR(フーリエ変換赤外吸収)スペクトルにおいて3300cm-1付近のバンドにより検出することができる。
炭素数1~20個の炭化水素基としては特に制限されず、例えば、炭素数1~20個の鎖状炭化水素基、炭素数3~20個の脂環式炭化水素基、炭素数6~14個の芳香族炭化水素基、及びこれらを組み合わせた基が挙げられる。
炭素数1~20個の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n―ブチル基、2-メチルプロピル基、1-メチルプロピル基、t-ブチル基等が挙げられる。
なかでも、より優れた本発明の効果を有する血管新生促進剤が得られる点で、鎖状炭化水素基の炭素数としては、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましく、6個以上が更に好ましく、7個以上が特に好ましく、8個以上が最も好ましく、19個以下が好ましく、18個以下がより好ましく、17個以下が更に好ましく、16個以下が特に好ましく、15個以下が最も好ましく、14個以下がより最も好ましい。
なかでも、*-CHの炭素数の合計が9~20であると、より血流量が多くなり、11~19であると更に血流量が多くなり、12~18であるとより更に血流量が多くなり、12~17であるとより更に血流量が多くなり、12~16であるとより更に血流量が多くなり、12~15であると特に血流量が多くなり、12~14であると最も血流量が多くなる。
炭素数3~20個の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、及び、ノルボルニル基等が挙げられる。
炭素数6~14個の芳香族炭化水素基としては、特に制限されないが、フェニル基、トリル基、及びナフチル基等が挙げられる。
上記を組み合わせた基としては、特に制限されないが、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、及び、ナフチルエチル基等の炭素数6~12個のアラルキル基等が挙げられる。
なかでも、上記ゲルがより優れた本発明の効果を有する血管新生促進剤が得られる点で、式1中における炭素数1~20の炭化水素基としては、炭素数1~20個のアルキル基が好ましい。
アルキル基の炭素数としては、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましく、6個以上が更に好ましく、7個以上がより更に好ましく、8個以上がより更に好ましく、9個以上がより更に好ましく、10個以上が特に好ましく、11個以上が最も好ましく、19個以下が好ましく、18個以下がより好ましく、17個以下が更に好ましく、16個以下がより更に好ましく、15個以下がより更に好ましく、14個以下が特に好ましく、13個以下が最も好ましい。
式1で表されるゼラチン誘導体としては、より優れた本発明の効果を有する血管新生促進剤が得られる点で、以下の式2及び式3からなる群より選択される少なくとも1種のゼラチン誘導体が好ましく、式2で表されるゼラチン誘導体がより好ましい。
Figure 0007132465000005
Figure 0007132465000006
式2及び式3中、各記号の意味はすでに説明した式1と同様であり、好適形態も同様である。
式2及び式3で表されるゼラチン誘導体は、典型的にはリジンのアミノ基に*-CHR(*は結合位置を示す。以下、*-CHRで表される基を、以下「疎水性基」ともいう。)が結合されたものである。
式2及び式3で表されるゼラチン誘導体における疎水性基の導入量としては特に制限されないが、原料ゼラチンが有するアミノ基の量に対する、疎水性基が結合されたイミノ基(-NH-)の量の含有モル比(イミノ基/アミノ基)が、0.15~0.8が好ましく、0.3~0.7がより好ましい。 なお、本明細書において、上記「イミノ基/アミノ基」の含有モル比(言い換えれば、誘導化率)は、原料ゼラチン中のアミノ基と、ゼラチン誘導体のアミノ基量を、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸法(TNBS法)によって定量される数値を意味する。
上記ゼラチン誘導体の製造に使用可能な原料ゼラチンとしては特に制限されないが、天然由来、合成、発酵、及び遺伝子組換え等により得られるゼラチンのいずれであってもよい。なかでも、より優れた本発明の効果を有するゲルが得られる点で、原料ゼラチンとしては、哺乳動物由来または魚由来が好ましく水魚由来がより好ましい。冷水魚としては、サケ、タイ、タラなどが挙げられ、タラが好ましい。なお、本明細書において「タラ」とは、タラ亜科に属する魚類の総称を意味し、例えば、マダラ、コマイ、及び、スケトウダラ(スケソウダラ)等が挙げられ、なかでもスケトウダラが好ましい。また、本明細書において「サケ」とは、サケ科に属する魚類の総称を意味し、「タイ」とは、タイ科に属する魚類の総称を意味する。
また、原料ゼラチンは、処理済みゼラチンであってもよい。処理済みゼラチンとしては、例えば、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン、及び低エンドトキシン化等が挙げられ、これらの処理は組み合わせてもよい。なかでも、アルカリ処理ゼラチンが好ましく、低エンドトキシン化ゼラチンがより好ましい。
上記原料ゼラチンの分子量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有するゲルが得られる点で、重量平均分子量(Mw)が20,000~150,000であることが好ましく、30,000~100,000であることがより好ましい。本明細書において、原料ゼラチンの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準プルラン換算の重量平均分子量を意味する。
本発明の実施形態に係る血管新生促進剤は、ゼラチン誘導体の架橋物を含有していてもよい。上記ゼラチン誘導体は、分子間及び/又は分子内の相互作用により、可逆的な架橋構造(物理架橋)を形成する。本明細書において「ゼラチン誘導体の架橋物」というときには、上記の可逆的な物理架橋構造を有するゼラチン誘導体を含まず、不可逆的な架橋反応により得られるゼラチン誘導体の架橋物を意味する。
ゼラチン誘導体の架橋物とは、典型的には上記ゼラチン誘導体に熱、光、エネルギー線などでエネルギーを付与する、及び/又は架橋剤により架橋反応させることにより得られる不可逆的な架橋構造を有する反応物を意味する。
本発明の実施形態に係る血管新生促進剤は、上記のゼラチン誘導体、又はその架橋物を単独で含有していてもよく、ゼラチン誘導体、及びその架橋物を併せて含有していてもよい。
ゼラチン誘導体にエネルギーを付与してゼラチン誘導体の架橋物を得る方法としては特に制限されないが、例えば、ゼラチン誘導体に、熱、又は活性光線若しくは放射線(例えば、電子線等)等を照射する方法が挙げられる。
なかでも、より容易にゼラチン誘導体の架橋物が得られる点で、熱エネルギーを付与する(言い換えれば加熱する)方法が好ましい(熱架橋)。
ゼラチン誘導体を熱架橋する方法としては特に制限されないが、典型的にはゼラチン誘導体を100~200℃で、1~8時間、減圧下で加熱する方法が挙げられる。上記により、例えば、ゼラチン誘導体中のアミノ基、及びその他の反応性基(例えば、カルボキシ基、及び、メルカプト基等)が反応し、架橋物が形成される。
また、ゼラチン誘導体の架橋物は、ゼラチン誘導体と、架橋剤とを反応させて得られたものであってもよい。架橋剤としては特に制限されないが、ゲニピン、N-ヒドロキシスクシンイミド、N-スルホキシスクシンイミドで活性化された多塩基酸、アルデヒド化合物、酸無水物、ジチオカーボネート、及び、ジイソチオシアネート等が挙げられる。
架橋剤としては、例えば、国際公開第2018/079538号の0021~0024段落に記載された化合物も使用でき、上記内容は本明細書に組み込まれる。
なお、上記架橋物の架橋度については、誘導化率に依存して架橋反応に関与できるアミノ基の数が異なり、アミノ基が全て反応した状態として定義される架橋度100%が異なるため、その範囲を限定することはできない。一般に、ゼラチン誘導体の場合、誘導化されずに残留しているアミノ基量が少ないので、より反応性が低いと考えられ、3時間程度の加熱処理により、アミノ基量の10~30%程度が反応して架橋反応が終了するものと考えられる。
(形状、他の成分等)
ゼラチン誘導体又はその架橋物の形状としては、特に制限されないが、より取り扱いが容易である点、及び溶媒への分散性に優れる点で、粒子状であることが好ましい。上記粒子の粒子径としては特に制限されないが、一般に0.5~1000μmが好ましい。
また、顆粒状、繊維状、シート状、プレート状、及びファイバーメッシュ状など他の形状とすることもできる。なかでも、広域の面積で体内に血管網を形成できる点でファイバーメッシュが好ましい。
本発明の実施形態に係る血管新生促進剤は、薬学的に許容しうる他の成分(助剤)を含有してもよく、助剤としては、例えば、賦形剤、安定剤、緩衝化剤等が挙げられる。また、公知の方法により、粉末状、顆粒状、及び、錠剤状等の任意の剤形に製剤化することもできる。
緩衝化剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び、イプシロン-アミノカプロン酸等が挙げられるが上記に制限されない。
また、本発明の実施形態に係る血管新生促進剤は、他の成分を含有してもよく、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び濃グリセリン等の等張化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ステアリン酸ポリオキシル40、及び、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の界面活性剤;等を含有することができる。
本発明の実施形態に係る血管新生促進剤は、成長因子を含有する必要がなく、好ましい実施形態では、実質的に成長因子を含有しない。成長因子は、動物体内において、細胞の増殖や分化を促進する内因性のタンパク質の総称であり、例えば、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、及びトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)等が挙げられるが、これらに制限されない。
本明細書において、「実質的に成長因子を含有しない」とは、本発明の血管新生促進剤をゲル化する際に添加する溶媒の体積に対して、成長因子の含有量が100ng/mL以下であることを意味し、10ng/mL以下であることが好ましく、1ng/mL以下であることが更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
なお、ゲル中における成長因子の含有量は、酵素免疫測定法(ELISA法)により測定される。
[血管新生促進剤の調製方法]
血管新生促進剤の調製方法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。公知の方法としては、例えば、国際公開2018/079538号の0029~0035段落に記載の方法が適用でき、上記内容は本明細書に組み込まれる。
本発明の実施形態に係る血管新生促進剤の調製は、典型的には、ゼラチン誘導体の調製工程を含む。また、血管新生促進剤がゼラチン誘導体の架橋物を含有する場合には、更に、ゼラチン誘導体の架橋物の調製工程を含む。以下では、上記各工程について詳述する。
(ゼラチン誘導体の調製工程)
(1)原料ゼラチン水性溶液の調製
原料のゼラチンを5~50質量/体積%となる量で、40~90℃で加熱して、溶媒(水、有機溶媒又は水と有機溶媒の混和物)に溶解してゼラチン溶液を得る。水としては、超純水、脱イオン水、及び蒸留水等を用いることができる。
有機溶媒としては、特に制限されないが、炭素数1~3個のアルコール、及びエステル等を用いることができ、エタノールが好ましい。
(2)誘導体化
上記(1)で得られたゼラチン溶液に、導入する炭化水素基を有する誘導体化試薬を添加し、所定時間撹拌して反応させる。誘導体化試薬としては、炭化水素基を有するアルデヒド、及びケトン等が使用できる。また、炭化水素基に更にアミノ基(例えば、第1級アミノ基)が結合した化合物を使用することもできる。
誘導体化試薬として炭化水素基を有するアルデヒド、及びケトン等を使用する場合には、いわゆる「還元アミノ化」を用いて、上記式1のゼラチン誘導体が得られる。
また、誘導体化試薬として、炭化水素基にアミノ基が結合した化合物を用いる場合には、カルボジイミド化合物を用いて、上記炭化水素基を、イミノ基を介して、ゼラチンのカルボキシ基に結合させ、上記式1のゼラチン誘導体が得られる。
炭化水素基を有するアルデヒド、及びケトン等としては、特に制限されないが、例えばドデカナール、テトラデカナール、及び、デシルエチルケトン等が使用できる。
このときの反応温度は30~80℃、反応時間は0.5~12時間であり、通常、撹拌するだけでゼラチンのアミノ基にシッフ塩基(~N=CR)を介して上記炭化水素基が結合されたゼラチンを得ることができる。アルデヒドの使用量は、所望の誘導化率に相当する化学量論量に対して1~4倍とする。より好ましくは、1~2倍とする。
次いで、上記シッフ塩基を還元して上記式(1)の構造とする。還元剤としてはシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBHCN)、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(NaBH(OAc))、2-ピコリンボラン、及び、ピリジンボラン等の公知の還元剤が使用できる。
これらのうち、2-ピコリンボランが好ましい。ピコリンボランは安定性があり、有機溶媒中でアルデヒド又はケトンの還元アミノ化反応を一段(ワンポ
ット)で行うことが可能である。また、80~90%の収率を達成することができる。
2-ピコリンボランの使用量は、誘導体化試薬の当量に対して1~3当量であることが好ましい。なお、還元剤と、アルデヒド等を添加する順序は任意でよく、いずれを先にゼラチン溶液に添加しても、同時に添加しても構わない。
また、誘導体化の他の形態としては、Schotten-Baumann反応を利用することもできる。Schotten-Baumann反応は、カルボン酸クロリドとアミンとを、塩基の存在下で反応させて、アミドを得る方法である。Schotten-Baumann反応を使用すれば、典型的にはリジンのε-アミノ基に由来して、アミド結合を形成し、所定の疎水性基を導入できる。
より具体的には、ゼラチン溶液に塩基を加え、カルボン酸クロリドを有機系溶媒に溶解させ、両者を混合させることで縮合反応を進行させればよい。
また、塩基としては、特に制限されず、一般的に水溶性のもの、例えばトリエチルアミン、ピリジン等が使用できる。
(3)精製
工程(2)で得られた反応溶液に、大過剰の貧溶媒、例えば冷エタノールを加えて、又は反応溶液を冷エタノールに加えて、粗ゼラチン誘導体を沈殿させる。上記沈殿を濾別した後、エタノール等で洗浄して、最終生成物(ゼラチン誘導体)を得る。
ゼラチン誘導体の架橋物を得る場合には、上記の工程に加え、以下に記載する工程を更に有していてもよい。
(ゼラチン誘導体の架橋物を得る工程)
ゼラチン誘導体の架橋物を得る方法としてはすでに説明したとおりであり、具体的には、ゼラチン誘導体にエネルギー付与する方法が挙げられ、例えば、ゼラチン誘導体を熱架橋する方法が挙げられる。
熱処理の方法としては特に制限されないが、例えば、原料ゼラチン分子量(Mw)が約100,000の場合、140~160℃で、1~6時間加熱する方法が挙げられる。
ゼラチン誘導体の架橋物を粒子状とする場合、架橋工程の前にゼラチン誘導体を造粒する工程を有していてもよい。ゼラチン誘導体を造粒する方法としては特に制限されないが、例えば、ゼラチン誘導体を溶媒に分散し、スプレードライ法により造粒する方法が挙げられる。スプレードライ法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。
また、ゼラチン誘導体の架橋物を繊維状とする場合、架橋工程の前にゼラチン誘導体を紡糸する工程を有していてもよい。ゼラチン誘導体を紡糸する方法としては特に制限されないが、例えば、ゼラチン誘導体を溶媒(例えば、エタノール等の水性有機溶媒と水の混和物)に溶解し、紡糸装置のノズルから凝固浴中に押し出して繊維状にする方法が挙げられる。
また、ゼラチン誘導体又はその架橋物のファイバーメッシュを得る場合には、例えば、ゼラチン誘導体を溶媒(例えば、エタノール等の水性有機溶媒と水の混和物)に溶解し、電界紡糸法により、得られた溶解液に高電圧を印加して帯電させることで繊維を得て、これを堆積させることで不織布(ファイバーメッシュ)を得、架橋構造を導入する場合には、更にエネルギー付与工程を行うことで架橋構造を有する不織布(ファイバーメッシュ)を得ることができる。
ゼラチン誘導体を帯電させる方法としては、高圧電源装置と接続した電極を溶解液、又はそれを入れた容器に接続し、典型的には1~100kVの電圧、好ましくは5~50kVの電圧を印加する方法がある。電圧の種類としては、直流又は交流のいずれであってもよい。
電界紡糸の際の温度は特に制限はないが、溶媒の沸点、及び揮発性に応じて、適宜調整すればよい。一実施形態としては、10~30℃が好ましい。
電界紡糸法では、ゼラチン誘導体を加熱しなくとも不織布(ファイバーメッシュ)を製造できる。そのため、ゼラチン誘導体が意図せず架橋することが抑制され、より均一な構造(より均一な繊維径等)を有する生体組織接着シートが得られやすい。
エネルギー付与工程は、不織布にエネルギーを付与して、生体組織接着シートを得る工程である。エネルギーの付与によってゼラチン誘導体の少なくとも一部が、分子間及び/又は分子内で架橋し、より優れたバルク強度、及びより優れた耐水性を有する得られる生体組織接着シートが得られる。
付与するエネルギーとしては特に制限されず、例えば、エネルギー線、光、及び熱が挙げられる。なかでも、より簡便に生体組織接着シートが得られる点で、加熱によるエネルギーの付与が好ましい。
加熱の方法としては特に制限されないが、典型的には、不織布を減圧環境、100~200℃の条件下で、1~8時間加熱する方法が挙げられる。より具体的には、例えば、原料のゼラチンの分子量(Mw)が約100,000の場合、減圧環境、140~160℃(例えば、150℃)の条件下で、1~6時間加熱する方法が挙げられる。
好ましいゼラチン誘導体の架橋物を得る方法としては、以下の工程を有する方法が挙げられる。
(ゼラチン誘導体の架橋物を得る工程の好適形態1)
・ゼラチン誘導体溶液をスプレードライして粒子化し、ゼラチン誘導体粒子を得る工程、及び
・上記ゼラチン誘導体を140~160℃(例えば150℃)で、1~6時間、減圧下で加熱し、ゼラチン誘導体の架橋物を得る工程。
(ゼラチン誘導体の架橋物を得る工程の好適形態2)
・ゼラチン誘導体水溶液にエタノールを添加し、ゼラチン誘導体を析出させ、ゼラチン誘導体粒子を得る工程、及び
・ゼラチン誘導体粒子を凍結乾燥させて、その後、140~160℃(例えば150℃)で、1~6時間、減圧下で加熱し、ゼラチン誘導体の架橋物を得る工程。
(ゼラチン誘導体の架橋物を得る工程の好適形態3)
・ゼラチン誘導体を溶媒中に溶解し、紡糸装置のノズルから凝固浴中に溶液を吐出して繊維状にする工程。
(ゼラチン誘導体の架橋物を得る工程の好適形態4)
・ゼラチン誘導体を溶媒中に溶解し、得られた溶解液に高電圧を印加して帯電させることで繊維を得る工程、
・得られた繊維を堆積させることで不織布(ファイバーメッシュ)を得る工程、及び
・任意選択で、不織布(ファイバーメッシュ)にエネルギー付与して、架橋構造を導入する工程。
[ハイドロゲルの調製及び治療方法]
本発明の実施形態に係る血管新生促進剤は、上記ゼラチン誘導体またはその架橋物を含み、対象に投与されて血管新生促進に用いられ、例えば、哺乳動物における抹消動脈疾患などの、血管新生が望まれる疾患の治療に用いられる。従って、一の実施形態において、本発明は、哺乳動物である対象に、上記血管新生促進剤を投与する、血管新生を促進する方法を提供する。また、他の実施形態において、本発明は、哺乳動物における抹消動脈疾患の治療方法であって、治療を必要とする哺乳動物の患部に、医薬上有効量の上記血管新生促進剤を投与する工程を含む、治療方法を提供する。
哺乳動物としては特に制限されないが、ヒト及び家畜等が挙げられる。別の形態としては、哺乳動物としては、ヒト以外の哺乳動物であってもよい。
上記血管新生促進剤を患部に投与する方法としては特に制限されないが、典型的には溶媒と混合してゲル化させ、経皮的に患部に投与する方法が好ましい。
この際の投与量は、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、及び投与期間等によって適宜増減すればよい。
本発明の実施形態に係る血管新生促進剤をゲル化させる方法としては、血管新生促進剤と溶媒とを混合させる方法によればよい。
典型的には、溶媒と緩衝化剤とを含有する緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水。以下「PBS」ともいう。)に分散させる方法が挙げられる。
上記の様にして得られたゲルは、シリンジ等からなる経皮注入デバイスを用いて、患者の対象部位に注入して使用できる。
溶媒としては特に制限されないが、水、有機溶媒、又は水と有機溶媒の混和物が挙げられる。有機溶媒としては特に制限されないが、水と混和可能な有機溶媒が好ましく、例えば、エタノール、及びイソプロパノール等が挙げられる。
混合する溶媒の量としては特に制限されないが、一般に、得られるゲルの全質量に対して、50~99質量%となるよう調整すればよい。
ゲルは溶媒の1種を単独で含有してもよく、2種以上を併せて含有していてもよい。ゲルが2種以上の溶媒を含有する場合、2種以上の溶媒の合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
本発明の実施形態に係る血管新生促進剤は、疎水性基を有するゼラチン誘導体を含有するため、典型的には経皮的に対象部位にインジェクションされた後に、周辺細胞からの炎症性サイトカイン産生を誘導しやすく、これにより周辺細胞により産生される内因性の成長因子によって、血管の新生を促進するという効果を有する。
そのため、血管新生促進剤を含有するゲル自体に成長因子を含有していなくても十分に血管の新生が促進されるため、高価で、かつ安定性の低い成長因子を含有させなくてもよい。更に上記ゼラチン誘導体は細胞接着性を有するため、血管内皮細胞が遊走、浸潤するための足場として作用するという特徴がある。
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
[ゼラチン誘導体の調製]
(実施例1)
スケトウダラ由来のゼラチン(Mw=33,000、新田ゼラチン(株)製)100gを水350mLに溶解し、得られた水溶液にエタノール140mLを加えて50℃にて撹拌した。ゼラチンのアミノ基に対して、誘導化率50モル%に相当する化学量論量の1.5当量のドデカナール(C1224O)を5mLエタノールに溶解して、ゼラチン溶液に混合し、次いでドデカナールの約1.5当量の2-ピコリンボランを加えて、18時間撹拌した。反応溶液の10倍体積量の冷エタノール中に反応溶液を滴下して、生成されたゼラチン誘導体を再沈殿させ、吸引ろ過を行った。得られた沈殿物の約5倍体積量の冷エタノール中に沈殿物を入れ、1時間撹拌しながら洗浄後吸引ろ過を行った。この洗浄を3回行った後、2日間真空乾燥して、ドデシル基が導入された白色のゼラチン誘導体を、収率約91.6(質量/質量)%で得た。誘導化率(導入率)は、トリニトロベンゼンスルホン酸を用いた比色法により確認したところ、19モル%(0.19)であった。
以下では、上記により得られたゼラチン誘導体を「19C12-ApGltn」と表記する。同様に、以下の記載において、『「a」C「b」-ApGltn』と表記することがあり、「b」は式1における疎水性基(*-CHR)の炭素数の合計を表し、「a」は疎水性基の導入率(モル%)を表している。
また、以下の記載では、「-ApGltn」部分の記載を省略して「aCb」と記載する場合もあるが、上記と同様の意味である。
(実施例2~7)
C6、C10、C12、C14、C16及びC18の直鎖アルキルアルデヒドをそれぞれ、ゼラチンのアミノ基に対して、誘導化率150モル%に相当する量をゼラチン溶液に混合し、加えたアルキルアルデヒドに対して1.5当量の2-ピコリンボランを加えた以外は、上記ゼラチン誘導体19C12と同様にして、ゼラチン誘導体48C6、30C10、34C12、34C14、24C16、及び9C18を調製した。
[評価]
上記のようにして得られた各ゼラチン誘導体を用いて、以下の各評価試験を実施した。
(血流量の測定)
実施例1~7の各ゼラチン誘導体及び原料ゼラチン(Org)にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、20%(質量/体積)のハイドロゲルを調製した。マウス背部皮下に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び各ハイドロゲルを注入し、血流量をレーザードップラー血流計により測定した。
各ゼラチン誘導体、及び原料ゼラチンはそれぞれ粉末状態で1時間紫外線照射して滅菌し、その100mgを500μlのPBSへ溶解させた後に、再度1時間UVを照射して滅菌した。マウスは、Hos:HR-1ヘアレスマウスを使用した。
マウス麻酔下で背部中央付近にPBS及び各ハイドロゲルを250μlずつ注入し、1、2、3、4、及び7日後、レーザードップラー血流計を用いてサンプル埋入部の血流量を測定した。なお、2日目よりマウス呼吸数(3回/秒)とレーザーゲイン(40)を固定後、測定を行った。
1、2、3、及び7日後のレーザードップラーによる血流量画像を図3に示した。図3中、色が濃く表示されている部分は血流量がより多くなっていることを示している。また、図3中、C6、C10、C12、C14、C16、及びC18とあるのは、48C6、30C10、34C12、34C14、24C16、及び9C18に対応している。以下の説明でも同様である。
また、血流量の定量結果を図4に示した。
図3及び図4によれば、本発明の実施形態に係る血管新生促進剤を含有するゲルを用いた場合、いずれの試料でも注入後2~3日目には、血流量の増加が観察された。一方、PBSのみを注入した場合、及び原料ゼラチンを注入した場合には、このような効果は得られなかった。
表1には注入後初期(具体的には、注入後3日目)の血流量を示した。表1によれば、原料ゼラチン(Org)、及びコントロール(PBS)と比較して、本発明の実施形態に係る血管新生促進剤を含有するゲルを注入した場合にはいずれも血流量が増加していた。
なかでも、疎水性基の炭素数が9~20であるとより血流量が多くなり、11~19であると更に血流量が多くなり、12~18であるとより更に血流量が多くなり、12~17であるとより更に血流量が多くなり、12~16であるとより更に血流量が多くなり、12~15であると特に血流量が多くなり、12~14であると最も血流量が多くなることが分かった。
Figure 0007132465000007
(組織観察1)
上記血流量の測定の場合と同様にして、34C14-ApGltnゲルをマウス背部皮下に埋入後2日目に、埋入部位の周辺組織を摘出し、観察した。
図5には、PBSのみを注入した組織(対照)、図6には、34C14(図中には「C14」と記載した)を埋入した組織の写真を示した。
図5及び図6によれば、PBSと比較して34C14-ApGltnゲルを埋入した条件では毛細血管の密度が明らかに上昇していることがわかった。
(組織観察2)
上記血流量の測定の場合と同様にして、34C12-ApGltnゲルを500μlマウス背部皮下に埋入し、3日目後に、埋入部位の周辺組織を摘出し、観察した。
図7には、PBSのみを注入した組織(対照)、図8には、原料ゼラチン(図中には「Org」と記載した)を注入した組織、図9には、34C12-ApGltnゲル(図中には「34C12」と記載した)を埋入した組織の写真を示した。
図7~9に示す通り、PBS及び原料ゼラチンのゲルを注入した組織と比較して、34C12-ApGltnのゲルを埋入した組織では毛細血管の密度が明らかに上昇していた。
(HE染色及び免疫染色による組織像)
上記血流量の測定の場合と同様にして、34C12-ApGltnゲルを500μlマウス背部皮下に埋入後3日目に、埋入部位の周辺組織を摘出し、中性緩衝ホルマリンで固定し、パラフィン包埋した後薄切し、得られた切片をヘマトキシリン-エオジン染色(HE染色)、並びにNF-kB及びCD31の免疫染色で染色し(NF-kBは、NF-kB抗体を用いて染色し、CD31は、CD31抗体を用いて染色した)、各染色組織を顕微鏡で観察した。各染色組織の鏡顕像は図10の通りであり、観察結果は以下の通りである。
1.HE染色
リン酸緩衝液(PBS)、又は原料ゼラチン(Org)を埋入した組織では血管及び赤血球が観察されなかったが、34C12-ApGltnゲルを埋入した組織においては、血管及び赤血球が観察され、血管新生を確認した。
2.NF-kBの免疫染色
リン酸緩衝液(PBS)、又は原料ゼラチン(Org)を埋入した組織では染色されなかったが、34C12-ApGltnゲルを埋入した組織においては染色された(薄茶色の部分)ことから、NF-kBが関与した血管内皮細胞による血管新生を確認した。
3.CD31の免疫染色
リン酸緩衝液(PBS)、及び原料ゼラチン(Org)を注入した組織に比べ、34C12-ApGltnゲルを埋入した組織においてはより多くのCD31の存在(薄茶色の部分)が確認されたことから、血管内皮細胞を通じて血管新生を確認した。
(分解性)
In vitroにおけるゲルの分解性を調べるため、コラーゲナーゼを用いて分解実験を行った。
まず、2.5ml PP(ポリプロピレン)チューブに濃度200mg/mlの各ゲルを入れ、PBSを500μl添加して膨潤させた。次に、余剰のPBSを除いた後、コラーゲナーゼ 10units/ml(Tris-HCl溶液、CaClを2%含有していた)を500μl加え、37℃でインキュベーションした。
一定時間後、ゲルはPPチューブごと10000rcfで遠心し、上清を除いた後に残存重量を計量した。この操作を繰り返し、最大8時間まで測定した。
Org、C6、C18についてはPBSと混和してしまったため、測定不能であった。結果を図11に示した。
図11によれば、分解8時間後においてC12ゲル残量はその他の条件と比較して有意に多かった。
図12には後述する方法により測定した、貯蔵弾性率とtanδとを示した。図12によれば、各ゲルの間で、貯蔵弾性率を比較すると有意な差が無い一方、粘り気を示すtanδを比較すると分解速度と相関関係にあった。したがって、粘り気があることでコラーゲナーゼによる分解・拡散が抑制されたと考えられた。
すなわち、疎水性基の炭素数の合計が、13~17個(好ましくは、14~16個)であると、ゲルは優れた分解性を有することがわかった。
(インジェクション試験)
実施例3~7の各ゼラチン誘導体(C10、C12、C14、C16、及びC18)及び原料ゼラチン(Org)から、上記血流量の測定の場合と同様にしてゲルを調製し、シリンジを用いて押し出す試験を行った。押し出した様子を図13に示した。
容易に押し出すことができ、かつ均一なゲルが形成されているほど、血管新生促進用のゲルとして、より優れた効果を有することを示している。
実施例3~7の各ゼラチン誘導体(C10、C12、C14、C16、及びC18)のいずれもシリンジから押し出し可能であり、図13に示す通り、均一なゲルを形成した。Orgは押し出し可能であるものの、十分にゲルが形成されなかった。
また、C16は、C10と比較して、より十分にゲルが形成されやすかった。また、C16は、C18と比較して、より均一なゲルが形成されやすかった。
上記から、疎水性基の炭素数の合計が11~17であると、より容易にゲルが形成されやすく、疎水性基の炭素数の合計が12~16であると、更に均一なゲルが形成されやすく、疎水性機の炭素数の合計が13~16であると、より容易にインジェクション可能であった。
(実施例8~17)
C18、C16、C14、C12、及びC10の直鎖アルキルアルデヒドをそれぞれ、ゼラチンのアミノ基に対して、誘導化率150モル%に相当する量をゼラチン溶液に混合し、加えたアルキルアルデヒドに対して1.5当量の2-ピコリンボランを加えた以外は、上記ゼラチン誘導体19C12と同様にして、ゼラチン誘導体9C18、56C16、24C16、12C16、34C14、16C14、52C12、34C12、60C10、及び30C10を調製した。
(粘弾性測定)
実施例1及び実施例8~17の各ゼラチン誘導体(19C12、9C18、56C16、24C16、12C16、34C14、16C14、52C12、34C12、60C10、及び30C10)及び原料ゼラチン(Org)から、上記血流量の測定の場合と同様にしてゲルを調製し、以下の方法により貯蔵弾性率(Pa)、及びtanδを測定した。結果を図14、図15及び表2に示した。
・試験条件
使用機器:動的粘弾性測定装置(MCR301, Anton Paar GmbH, Austria)
サンプルの形状:直径10mm、厚さ1mm
角周波数、ひずみ、温度:0.1-100Hz、1%、37℃
Figure 0007132465000008
[架橋したゼラチン誘導体の調製]
(実施例18~20)
スケトウダラ由来のゼラチン(Mw=33,000、新田ゼラチン(株)製)100gを水350mLに溶解し、得られた水溶液にエタノール140mLを加えて50℃にて撹拌した。ゼラチンのアミノ基に対して、誘導化率150モル%に相当する化学量論量の1.5当量のドデカナール(C1224O)を5mLエタノールに溶解して、ゼラチン溶液に混合し、次いでドデカナールの約1.5当量の2-ピコリンボランを加えて、18時間撹拌した。反応溶液の10倍体積量の冷エタノール中に反応溶液を滴下して、生成されたゼラチン誘導体を再沈殿させ、吸引ろ過を行った。得られた沈殿物の約5倍体積量の冷エタノール中に沈殿物を入れ、1時間撹拌しながら洗浄後吸引ろ過を行った。この洗浄を3回行った後、2日間真空乾燥して、ドデシル基が導入された白色のゼラチン誘導体を、収率約91.6(質量/質量)%で得た。誘導化率(導入率)は、トリニトロベンゼンスルホン酸を用いた比色法により確認したところ、33モル%(0.33)であった。
上記により得られたゼラチン誘導体(33C12-ApGltn)を、ゼラチン濃度が5質量%となるよう、50℃の超純水に溶解し、ゼラチン溶液を得た。次に、上記水溶液に同体積のエタノールを加え希釈液を得た。次に、上記希釈液の温度を50℃に維持し、スプレードライヤー装置(ミニスプレードライヤー、B-290、ビュッヒ社製)に設置し、180℃で窒素ガスの流速440L/h、希釈液の流速410mL/hとなるように調整して乾燥し、中間体粒子を含有する中間粉体を得た。得られた中間粉体を150℃にて3時間、6時間又は9時間加熱して、架橋ゼラチン粉体を得た(実施例19~21)。
原料ゼラチン(Org)についても、同様に、150℃にて3時間、6時間又は9時間加熱して、架橋ゼラチン粉体を得た。図16に、原料ゼラチン(Org)を3時間加熱して得られた架橋粒子の電子顕微鏡写真を示し、図17に、33C12-ApGltnを3時間加熱して得られた架橋粒子の電子顕微鏡写真を示す。3時間加熱して得られた33C12-ApGltnの架橋粒子では、0.5~5μmの粒径のより均一の粒径を有していた。
[評価]
上記のようにして得られた架橋ゼラチン誘導体(33C12-ApGltn)の粒子について、以下の各評価試験を実施した。
(血流量の測定)
架橋時間の異なる架橋ゼラチン誘導体(33C12-ApGltn)及び架橋原料ゼラチン(Org)にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加えて、40%(質量/体積)のハイドロゲルを調製した。マウス背部皮下に、得られた各ハイドロゲル埋入し、血流量をレーザードップラー血流計により測定した。コントロールとしてPBSを、対照として擬似剤(Sham)を同様にマウス背部皮下に注入し、血流量をレーザードップラー血流計により測定した。
各ゼラチン誘導体、及び原料ゼラチンはそれぞれ粉末状態で1時間紫外線照射して滅菌し、その200mgを500μlのPBSへ溶解させた後に、再度1時間UVを照射して滅菌した。マウスは、Hos:HR-1ヘアレスマウスを使用した。
マウス麻酔下で背部中央付近にPBS、擬似剤(Sham)及び各ハイドロゲルを250μlずつ注入した。2、7、15及び22日後、レーザードップラー血流計を用いてサンプル埋入部の血流量を測定した。なお、2日目よりマウス呼吸数(3回/秒)とレーザーゲイン(40)を固定後、測定を行った。血流量の測定結果を図18に示した。測定値は、各測定日の擬似剤(Sham)の血流量を100とした場合の相対値である。架橋ゼラチン誘導体(33C12-ApGltn)の粉体では、何れの架橋時間でも、擬似剤(Sham)に比較して血流量が増加した。特に、架橋時間6時間及び9時間では血流量が非常に増加した。一方、PBSのみを注入した場合、及び架橋原料ゼラチンを注入した場合には、同様の効果は得られなかった。
(組織観察)
上記血流量の測定に使用した組織と同様にして、3時間加熱で得られた架橋ゼラチン誘導体(33C12-ApGltn)及び架橋原料ゼラチン(Org)のハイドロゲルをマウス背部皮下に50μl注入し、2日後に、埋入部位の周辺組織を摘出し、観察した。
図19には、PBSのみを注入した組織(コントロール)、図20には、架橋原料ゼラチン(図中には「Org」と記載した)及び図21には、架橋ゼラチン誘導体33C12-ApGltn(図中には「33C12」と記載した)を埋入した組織の写真を示した。
図19乃至21に示す通り、PBS及び架橋原料ゼラチンのゲルを注入した組織と比較して、架橋33C12-ApGltnのゲルを埋入した組織では毛細血管の密度が上昇していた。
[架橋ファイバーメッシュの調製]
(実施例21~24)
まず、C8、C12及びC16の直鎖アルキルアルデヒドをそれぞれ、ゼラチンのアミノ基に対して、誘導化率150モル%に相当する量をゼラチン溶液に混合し、加えたアルキルアルデヒドに対して1.5当量の2-ピコリンボランを加えた以外は、実施例1と同様にして、ゼラチン誘導体41C8、33C12及び26C16を調製した。
次に、得られたゼラチン誘導体41C8、33C12、及び26C12を、15%(質量/体積)濃度で20~50%エタノール水溶液に溶解させた後、電解紡糸装置(ナノファイバー電界紡糸装置NANON-03、株式会社メック社製)を用い、溶液を常温に維持しながら、30kVの電圧を溶液を入れた容器に印加して繊維を形成し、次いで静置して繊維を堆積させてシート状にした。得られたファイバーメッシュは、減圧環境で、4時間、150℃で加熱して架橋構造を導入した。図22に、原料ゼラチン(Org)から得られた架橋ファイバーメッシュの電子顕微鏡写真を示し、図23に、26C16-ApGltnから得られた架橋ファイバーメッシュの電子顕微鏡写真を示す。26C16-ApGltnの架橋ファイバーメッシュでは、繊維の直径が1~5μmのより細い均一のファイバーでシートが形成されていた。
[評価]
(血流量の測定)
マウス麻酔下で背部中央付近にPBS、擬似剤(Sham)を250μl並びに各ファイバーメッシュ(直径7mmの略円形)を埋入した。1、2及び3日後、レーザードップラー血流計を用いて試料埋入部の血流量を測定した。各測定日における各ファイバーメッシュ及びPBSを注入した組織の血流量は、擬似剤(Sham)の血流量を100とした相対値として算出した。試験結果を図24に示す。
図24によれば、本発明の実施形態に係るファイバーメッシュを用いた場合、注入後3日目には、血流量の増加が観察された。一方、PBSのみを注入した場合、及び、架橋原料ゼラチンから得られたファイバーメッシュを埋入した場合には、このような効果は得られなかった。
(組織観察)
得られた実施例21~24の架橋ファイバーメッシュ(41C8、33C12及び26C16)、並びに架橋原料ゼラチンから得られたファイバーメッシュ及び擬似剤(Sham)を、マウス背部皮下に埋入し、3日後に埋入部位の周辺組織を摘出し、観察した。図25には、擬似剤(Sham)を埋入した組織、図26には、原料ゼラチン架橋ファイバーメッシュ(図中には「Org」と記載した)、図27には、41C8架橋ファイバーメッシュ、(図中には「41C8」と記載した)、図28には、33C12架橋ファイバーメッシュ(図中には「33C12」と記載した)及び図29には、26C16架橋ファイバーメッシュ(図中には「26C16」と記載した)を埋入した組織の写真を示した。
図25乃至29によれば、擬似剤(Sham)及び原料ゼラチン架橋ファイバーメッシュを埋入した組織と比較して、41C8架橋ファイバーメッシュ、33C12架橋ファイバーメッシュ、及び26C16架橋ファイバーメッシュを埋入した組織では毛細血管の密度が上昇していた。

Claims (12)

  1. 下記式1で表されるゼラチン誘導体、及び前記ゼラチン誘導体の架橋物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有し、成長因子を実質的に含有しない、血管新生促進剤。
    Figure 0007132465000009

    式1中、Gltnはゼラチン残基を表し、Lは単結合を表し、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~20個の炭化水素基、又は、水素原子であり、R及びR 少なくとも一つは前記炭化水素基であり、-CH の炭素数の合計が9~20である。
  2. -CH の炭素数の合計が12~14である、請求項1に記載の血管新生促進剤。
  3. 前記炭化水素基が、炭素数2~20個の鎖状アルキル基である、請求項1又は2に記載の血管新生促進剤。
  4. 前記ゼラチン誘導体が冷水魚由来である、請求項1~3のいずれか1項に記載の血管新生促進剤。
  5. 前記冷水魚がタラである、請求項4に記載の血管新生促進剤。
  6. 前記ゼラチン誘導体の架橋物を有効成分として含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の血管新生促進剤。
  7. 粒子の形態である、請求項1~6のいずれか1項に記載の血管新生促進剤。
  8. 抹消動脈疾患の治療のための、請求項1~のいずれか1項に記載の血管新生促進剤。
  9. 哺乳動物である対象(ヒトを除く)に、医薬上有効量の請求項1~8のいずれか1項に記載の血管新生促進剤を投与する、血管新生を促進する方法。
  10. 哺乳動物(ヒトを除く)における抹消動脈疾患の治療方法であって、
    治療を必要とする哺乳動物の患部に、医薬上有効量の請求項1~8のいずれか1項に記載の血管新生促進剤を投与する工程を有する、治療方法。
  11. 成長因子を実質的に含有しない血管新生促進剤を調製するための、下記式1で表されるゼラチン誘導体、及び前記ゼラチン誘導体の架橋物からなる群より選択される少なくとも1種の使用。
    Figure 0007132465000010

    式1中、Gltnはゼラチン残基を表し、Lは単結合を表し、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1~20個の炭化水素基、又は、水素原子であり、R、及びR 少なくとも一つは前記炭化水素基であり、-CH の炭素数の合計が9~20である。
  12. 前記血管新生促進剤が、抹消動脈疾患を治療するための医薬である、請求項11に記載の使用。
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