以下、本発明の第一、第二実施形態を説明する。以下に記載されている装置の構造、フローチャートなどは、特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。以下説明は、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。
-第一実施形態-
図1を参照し、コンロ1の構造を説明する。コンロ1は、ビルトインコンロである。コンロ1は筐体2と天板3を備える。筐体2は上部が開口し、開口部分に天板3が設置される。天板3において、右手前には右コンロバーナ4(以下、右コンロ4と呼ぶ)、左手前には左コンロバーナ5(以下、左コンロ5と呼ぶ)、中央奥側には奥コンロバーナ6(以下、奥コンロ6と呼ぶ)が設けられる。右コンロ4、左コンロ5、奥コンロ6の夫々の側面には多数の炎孔が設けられる。右コンロ4の炎孔の近傍には、イグナイタ4Aの点火電極と熱電対4B(図7参照)が炎孔に臨むようにして設置される。左コンロ5の炎孔の近傍には、イグナイタ5Aの点火電極と熱電対5B(図7参照)が炎孔に臨むようにして設置される。奥コンロ6の炎孔の近傍には、イグナイタ6Aの点火電極と熱電対6B(図7参照)が炎孔に臨むようにして設置される。イグナイタ4A~6Aは、駆動することにより点火電極においてスパーク放電を発生し、炎孔から噴出されるガスに点火する。熱電対4B~6Bは、炎孔に形成される火炎により加熱されて熱起電力を発生する。故にコンロ1は、熱電対4B~6Bに発生する熱起電力に基づき、右コンロ4、左コンロ5、奥コンロ6における立ち消えを検出できる。右コンロ4、左コンロ5、奥コンロ6の夫々の略中央には、上方向に突出するサーミスタ4C,5C,6Cが設けられている。サーミスタ4C,5C,6Cは、五徳上に載置される鍋の底部に接触して押し下げられ、鍋底温度を検出する。
天板3の後方部には、筐体2内に設置されたグリル装置(図示略)の排気口7が設けられる。コンロ1の前面の略中央には、グリル扉8が設けられる。グリル扉8は、グリル装置に設けられるグリル庫(図示略)の前側開口部分を開閉する。グリル庫内には、グリルバーナ(図示略)、イグナイタ7A(図7参照)、熱電対7B(図7参照)、サーミスタ7C(図7参照)等が設けられる。グリルバーナは、グリル庫内に配置される焼き網(図示略)上の被調理物を加熱する。イグナイタ7Aの点火電極と熱電対7Bは、グリルバーナの炎孔に臨むようにして設けられる。サーミスタ7Cは、グリル庫内の温度を検出する。
グリル扉8の右側の領域には、正面視円形状の2つの操作つまみ11、12が横方向に並んで設けられる。グリル扉8の左側の領域には、操作つまみ11、12と同じ高さ位置に、同一形状の2つの操作つまみ13、14が横方向に並んで設けられる。操作つまみ11~14の夫々は、右コンロ4、グリルバーナ、奥コンロ6、左コンロ5の点火、消火及び火力調節を行う為に操作される。操作つまみ11~14は、夫々、燃料供給装置20(図2参照)の前端部に取り付けられる。
操作つまみ11、12の下方には、パネル9Aが設けられ、操作つまみ13、14の下方にはパネル9Bが設けられている。パネル9Aを指で押し込むと、周知のプッシュ・プッシュ機構(図示略)によって、パネル9Aの背面に固定された右操作パネル18(図7参照)が下部を基点に前方に回動して引き出される。右操作パネル18には、右コンロ4及びグリル装置を夫々操作する為の各種ボタンや、タイマ時間等を表示する為の表示部等が設けられる。パネル9Bを指で押し込むと、プッシュ・プッシュ機構によって、パネル9Bの背面に固定された左操作パネル19(図2参照)が下部を基点に前方に回動して引き出される。
左操作パネル19の左側の領域には、左コンロ5を操作する為の各種ボタンや、タイマ時間等を表示する為の表示部等が設けられる。一方、右側の領域には、奥コンロ6を用いた調理メニューを設定する為のメニューボタン91、奥コンロ6を弱火からとろ火に切替える為のとろ火ボタン92等が設けられる。とろ火ボタン92の左上部には、とろ火ボタン92のオン時に点灯させるとろ火LED93が設けられる。これらパネル9A,9Bを筐体2側に再度押し込むことによって、右操作パネル18及び左操作パネル19が、筐体2の内側に収納され、パネル9A,9Bが筐体2の前面に対して面一となる。なお、詳述しないが、コンロ1の前面、右操作パネル18、左操作パネル19には、各種LED17(図7参照)が設けられ、コンロ1の状態に応じて適宜点灯する。
図2~図4を参照し、燃料供給装置20の構造を説明する。コンロ1は、右コンロ4、左コンロ5、奥コンロ6、グリル装置にガスを供給する4つの燃料供給装置を備える。そのうち、右コンロ4、左コンロ5、奥コンロ6にガスを供給する燃料供給装置20は公知のプッシュ・プッシュ機構24を備えた同一構成の装置である。また、グリル装置にガスを供給する燃料供給装置(図示略)は、燃料供給装置20と同様のプッシュ・プッシュ機構を備えるが、ガス流量の調節を電磁弁(図示略)によって行うため、流量調節部(図示略)を別体に設ける。本実施形態は、奥コンロ6にガスを供給する燃料供給装置20を一例として説明し、右コンロ4、奥コンロ6、グリル装置にガスを供給する燃料供給装置については説明を省略する。
図2に示すように、燃料供給装置20は、操作つまみ13の押し込み操作と回動操作により、奥コンロ6の点火と消火、及び奥コンロ6に供給するガス量の調節を行う。押し込み操作は、操作つまみ13の前面を後方へ押圧し、コンロ1の前面よりも奥側に押し込む操作である。回動操作は、操作つまみ13の側面を把持し、前後方向の軸(軸心AX)を中心に回動する操作である。燃料供給装置20は、操作部21、ガス流路部22、流量調節部31、火力調節カム26等を備える。
操作部21は、操作つまみ13、プッシュ・プッシュ機構24、連結部材25を備える。操作つまみ13は略円柱状に形成され、コンロ1の後方へ向けて押し込み移動させることにより、消火位置、押込位置、操作位置の各位置に移動する。消火位置は、操作つまみ13の先端面が、コンロ1の前面とほぼ面一となる位置である。なお、図3に示す燃料供給装置20は、操作つまみ13が消火位置に位置する。押込位置は、操作つまみ13の先端面が、コンロ1の前面よりも後方に押し込まれた位置である。操作つまみ13は、押込位置にて消火位置よりも後方に位置する。操作位置は、操作つまみ13の先端面が、コンロ1の前面に対して突出する位置である。操作つまみ13は、操作位置にて消火位置よりも前方に位置する。操作位置にあるとき、操作つまみ13は、前後方向に沿う軸心AXを中心に回動可能(回動操作可能)である。
プッシュ・プッシュ機構24は、操作つまみ13が前方・後方に進退自在に、且つ軸心AX回りに回動自在に前方端部に連結されている。プッシュ・プッシュ機構24は、操作つまみ13を消火位置、押込位置、操作位置の各位置にて位置決めし、各位置に応じて後述するメイン弁(図示略)を開放状態又は閉鎖状態に維持する。プッシュ・プッシュ機構24の内部には、操作つまみ13の押し込み操作に合わせて前後方向に移動するスライダ(図示略)と、スライダを前方へ向けて付勢するバネと、後述するメイン弁を駆動する弁駆動部(図示略)が設けられる。スライダには公知のカム機構(図示略)が設けられる。スライダは、操作つまみ13が押し込み操作される度に、操作つまみ13を消火位置から押込位置を経て操作位置に移動する動作と、操作位置から押込位置を経て消火位置に移動する動作とを繰り返す。弁駆動部は、操作つまみ13が消火位置から操作位置に移動する動作に連動してメイン弁を開放し、且つ開放状態に維持する動作を行い、操作つまみ13が操作位置から消火位置に移動する動作に連動してメイン弁を閉鎖し、且つ閉鎖状態に維持する動作を行う。プッシュ・プッシュ機構24は、イグナイタスイッチ15と基板スイッチ16(図7参照)をさらに備える。イグナイタスイッチ15と基板スイッチ16はレバースイッチであり、スライダによりオン又はオフの状態に操作される。
連結部材25は、略円筒状に形成され、操作つまみ13と同軸上に一体して連結する。連結部材25は、内側にプッシュ・プッシュ機構24のスライダの前端側を挿入する。連結部材25は、操作つまみ13の押し込み操作によって前後に移動することにより、スライダを前後に移動させる。連結部材25は、操作つまみ13が操作位置に位置決めされたときに、操作つまみ13と後述する火力調節カム26とを一体回転自在に連結する。これにより、連結部材25は、操作つまみ13の回転力を、火力調節カム26に伝達できる。
ガス流路部22は、プッシュ・プッシュ機構24の後側に連結される。ガス流路部22の内部には、メイン配管(図示略)が設けられる。メイン配管は、下部に開口する導入口23に接続するガス供給管(図示略)から供給されるガスを、後述する流量調節部31に流通させる。メイン配管には、安全弁48(図7参照)とメイン弁(図示略)が設けられる。安全弁48は、メイン配管を閉じる閉状態に弾性付勢された電磁操作式の弁であり、スライダによって開放されたときに、CPU101(図7参照)によって開放状態に維持される。メイン弁は、操作つまみ13の押し込み操作に応じてメイン配管の開閉を行う弁である。CPU101は、メイン弁の閉鎖によって奥コンロ6が消火すると、安全弁48の開放状態を解除する。この場合、安全弁48はバネによってメイン配管を閉鎖する。
流量調節部31は、プッシュ・プッシュ機構24及びガス流路部22の上部に設けられる。流量調節部31の内部には、図5,図6に示すように、前後方向に延びるガス配管50が設けられる。ガス配管50の後端部(ガスが流れる方向の上流側の端部)は、メイン配管の後端部(ガスが流れる方向の下流側の端部)に接続される。ガス配管50は、メイン配管から供給されるガスを前方に向けて流通し、上向きに開口する流出口32に供給する。流出口32には、奥コンロ6に接続するコンロ配管(図示略)が接続される。ガス配管50の途中には、火力制御機構部60とニードル部69が設けられる(図6参照)。
図5に示すように、火力制御機構部60は、バイパス管51と電磁弁61を備える。ガス配管50には、上流側から下流側に向かって順に、分岐部65と合流部66が設けられる。バイパス管51は、分岐部65と合流部66の間に接続される。電磁弁61は、ガス配管50における分岐部65と合流部66の間に設けられる。電磁弁61は、ガス流量調整用のキープソレノイドバルブである。コンロ1は、電磁弁61を開閉することにより、ニードル部69に流れるガス流量を、第1流量と第2流量の二段階で調節可能である。電磁弁61が開いた状態では、ガスはガス配管50とバイパス管51の両方を通るので、ニードル部69には第1流量のガスが流れる。電磁弁61が閉じた状態では、ガスはバイパス管51のみを通るので、ニードル部69には第2流量のガスが流れる。第2流量は第1流量よりも少ない。これにより、操作つまみ13によってニードル部69を流れるガス流量が最大に調節されたときの火力は、弱火力と強火力の二段階に調節される。第1流量は強火力、第2流量は弱火力に対応する。上記構成を備える火力制御機構部60は、CPU101からの指令を受け、電磁弁61を閉じることで作動する。
図6に示すように、ニードル部69は、火力制御機構部60の下流側に設けられる。ニードル部69は、弁摺動部75とニードル弁28を備える。弁摺動部75は前後方向に延びる管路であり、その前端部は、流量調節部31の前端部に設けられた穴部30と連通する。弁摺動部75の途中には連結部77が設けられ、流出口32と連結する。ニードル弁28は、穴部30から弁摺動部75に摺動自在に挿入される。ニードル弁28は、前端側が穴部30から外部に露出され、後端側が弁摺動部75内に摺動自在に挿入される。ニードル弁28の後端部は漸次細くなっている。ニードル弁28の後端部には、弁穴28A,28Bが設けられる。弁穴18Bは、流出口32と連通する。弁穴28A,28Bは、弱火力におけるガスの最小流量を確保する。ニードル弁28の穴部30から外部に露出する前端部には、上下方向に延びるピン29が直交して設けられる。ピン29の下端部は、火力調節カム26の後述するカム溝27に係合する。
火力調節カム26は、略半円筒状に形成され、プッシュ・プッシュ機構24の前端側上部を覆うようにして、軸心AXの回りを回動可能に設けられている。火力調節カム26は、前後方向への移動が規制される。火力調節カム26の外周部には、カム溝27が設けられる。カム溝27は、軸心AXを中心とする螺旋状に形成される。上記の通り、カム溝27には、ニードル弁28に設けられたピン29の下端部が係合する。火力調節カム26が回動すると、カム溝27がピン29を案内し、ニードル弁28を前後方向に移動する。ニードル弁28が弁摺動部45内を前後方向に移動すると、ガス配管50から流出口32へ流れるガスの通路面積が増減する。これにより、ニードル弁28の弁開度が調節され、奥コンロ6に供給されるガス量が調節される。
図7を参照し、コンロ1の電気的構成を説明する。コンロ1は、制御回路100を備える。制御回路100は、CPU101、ROM102、RAM103、タイマ104に加え、図示しないI/Oインタフェイス等を備える。CPU101はコンロ1の各種動作を統括制御する。ROM102は、とろ火制御プログラム等の各種プログラム等を記憶する。とろ火制御プログラムは、後述するとろ火制御処理を実行する為のものである。RAM103は、各種情報を一時的に記憶する。タイマ104はプログラムで作動するものであり、後述するとろ火制御処理において、奥コンロ6の点火直後からの燃焼時間を計測する。
制御回路100には、電源回路120、スイッチ入力回路111、熱電対入力回路112、右操作パネル18、左操作パネル19、LEDドライバ回路115、安全弁回路116、電磁弁回路117、イグナイタ回路118、サーミスタ入力回路119、音声出力回路122等が各々接続される。電源回路120は、電源125から供給される交流(例えば100V)を直流(例えば5V)に降圧して整流し、各種回路に電力を供給する。スイッチ入力回路111は、燃料供給装置20のイグナイタスイッチ15と基板スイッチ16のオン・オフの状態を検出し、電源回路120と制御回路100に入力する。なお、制御回路100は、いずれかの燃料供給装置20の基板スイッチ16がオンの状態になると作動し、全ての燃料供給装置20の基板スイッチ16がオフの状態になると動作を停止する。熱電対入力回路112は、熱電対4B~7Bからの検出値(熱起電力に対応する信号)を制御回路100に入力する。
LEDドライバ回路115は、コンロ1の前面に設けられた複数のLED17の点灯及び消灯を制御する。安全弁回路116は、CPU101の制御に基づき、燃料供給装置20の安全弁48を開閉する。電磁弁回路117は、CPU101の制御に基づき、燃料供給装置20の流量調節部31に設けられる電磁弁61を開閉する。イグナイタ回路118は、イグナイタスイッチ15の状態に応じてCPU101が出力する制御信号に基づき、イグナイタ4A~7Aを各々駆動する。サーミスタ入力回路119は、サーミスタ4C~7Cからの検出値(検出温度に対応する信号)を制御回路100に入力する。音声出力回路122は、CPU101が出力する制御信号に基づき、各種音声をスピーカ121より出力する。
図8を参照し、とろ火制御処理を説明する。例えば、使用者が奥コンロ6で調理を行う場合、調理鍋を五徳上に載置し、操作つまみ13を押し込む。操作つまみ13が押し込まれると、CPU101は、安全弁48、火力制御機構部60の電磁弁61を開放し、イグナイタ6Aを作動させ、奥コンロ6を点火させる。奥コンロ6の点火が熱電対6Bで検知されると、CPU101は、ROM72から「とろ火制御プログラム」を読出し、本処理を実行する。
CPU101は、とろ火ボタン92が押下されたか否か判断する(S11)。とろ火ボタン92の押下は、とろ火ボタン92に内蔵されたスイッチ(図示略)で検出する。点火されて燃焼中である奥コンロ6でとろ火調理を行いたい場合、使用者は、左操作パネル19に設けられたとろ火ボタン92(図2参照)を押下する。CPU101は、スイッチからの検出信号に基づき、とろ火ボタン92の押下を判断する。とろ火ボタン92が押下されるまで(S11:NO)、CPU101はS11に戻って待機する。とろ火ボタン92が押下された場合(S11:YES)、CPU101は、サーミスタ7Cによりグリル庫内の温度を検出する(S12)。サーミスタ7Cの検出温度は、サーミスタ入力回路119により制御回路100に入力される。
CPU101は、グリル庫内の検出温度が所定温度(例えば、150℃)以上か否か判断する(S13)。検出温度が所定温度未満であった場合(S13:NO)、グリルバーナが現在点火されていない、若しくは弱火であることからグリル庫からの燃焼排気又はドラフトによる気流がグリル庫内から排気口7を介して奥コンロ6に流れ込む量が少ないので、奥コンロ6をとろ火にしても立ち消えする可能性は低い。そこで、CPU101は、火力制御機構部60の電磁弁61を閉じる(S14)。これにより、ガス配管50からニードル部69に流れるガス流量は第2流量になるので、奥コンロ6の火力は自動的に弱火力になる。CPU101は、とろ火LED93を点灯させ(S16)、とろ火操作が有効であることを使用者に知らせる。なお、とろ火操作とは、とろ火ボタン92を押下する操作を意味する。使用者は、奥コンロ6が自動的に弱火力に制御され、とろ火LED93が点灯したのを確認した後で、操作つまみ13で火力をさらに弱めることで、奥コンロ6をとろ火にできる。このように、通常の操作つまみ13による圧損に、電磁弁61による圧損が合算されるので、通常よりも低いインプットまで火力を絞ることができる。また、電磁弁61による圧損により最大のインプットも低下しているので、操作つまみ13の操作によるインプットの幅も小さくなるので、火炎が安定化し、立ち消えすることもない。これにより、使用者は、とろ火に調節された奥コンロ6を用いて、煮物等のとろ火調理を安定して行うことができる。
次いで、CPU101は、とろ火ボタン92が再押下されたか否か判断する(S17)。使用者は、奥コンロ6の火力調節を通常のインプットの範囲に戻したい場合がある。その場合、使用者は、とろ火ボタン92を再押下すればよい。CPU101は、とろ火ボタン92が再押下されるまでは(S17:NO)、S17に戻って監視する。とろ火ボタン92が再押下された場合(S17:YES)、CPU101は、火力制御機構部60の電磁弁61を開き(S18)、とろ火LED93を消灯させる(S19)。これにより、ガス配管50からニードル部69に流れるガス流量は、第2流量から第1流量になるので、奥コンロ6の火力は自動的に元の火力に戻る。その後、CPU101はS11に戻って、処理を繰り返す。なお、操作つまみ13が再度押し込まれて、奥コンロ6が消火された場合は、本処理は強制的に終了される。
一方、とろ火ボタン92が押下されたときに、グリル庫内の検出温度が所定温度以上であった場合(S13:YES)、グリルバーナは現在燃焼状態にあり、グリル庫からの燃焼排気又はドラフトによる気流がグリル庫内から排気口7を介して奥コンロ6に流れ込むことから、この状態で奥コンロ6をとろ火にすると立ち消えする可能性が高い。
そこで、CPU101はこのような立ち消えを未然に防止する為、奥コンロ6をとろ火にすることなく、とろ火操作が無効であることを音声で報知する(S15)。例えば、「とろ火操作は無効です。グリルを速やかに消火し、庫内温度が下がってからとろ火ボタンを再度押してください。」等の音声をスピーカ121から出力するとよい。この音声を聞いた使用者は、グリルバーナを速やかに消火し、庫内温度が下がってから、とろ火ボタン92の押下を再度試みることができる。このとき、とろ火LED93は点灯しないので、使用者は、とろ火ボタン92の押下は無効であることを認識できる。これにより、コンロ1は、とろ火燃焼について、グリルとの併用を避けることができるので、とろ火ボタン92押下後におけるとろ火燃焼の立ち消えを未然に防止できる。CPU101はS11に戻り、とろ火ボタン92の押下を監視し、処理を繰り返す。
以上説明したように、第一実施形態のコンロ1は、燃料供給装置20を備える。燃料供給装置20は、各コンロバーナに夫々対応して設けられる。奥コンロ6に対応する燃料供給装置20はガス配管50を備え、当該ガス配管50には、火力制御機構部60とニードル部69が設けられる。ニードル部69は、操作つまみ13の回動操作に応じて、ガス配管50から奥コンロ6へ流れるガス流量を調節する。火力制御機構部60は、ニードル部69により調節可能な最少流量よりも少ない第2流量でガスを奥コンロ6へ供給可能である。コンロ1に設けられた左操作パネル19には、奥コンロ6に対応するとろ火ボタン92が設けられる。
奥コンロ6の点火後にとろ火ボタン92が押下されると、コンロ1のCPU101は、グリル庫内のサーミスタ7Cの検出温度が所定温度以上か否か判断する。検出温度が所定温度未満の場合、グリルバーナが現在点火されていない、若しくは弱火であることからグリル庫からの燃焼排気又はドラフトによる気流がグリル庫内から排気口7を介して奥コンロ6に流れ込む量が少ないので、奥コンロ6をとろ火にしても立ち消えする可能性は低い。そこで、CPU101は、火力制御機構部60の電磁弁61を閉じる。これにより、ガス配管50からニードル部69に流れるガス流量は第2流量になるので、奥コンロ6の火力は自動的に弱火力になる。使用者は、奥コンロ6が自動的に弱火力に制御されたのを確認した後で、操作つまみ13で火力をさらに弱めることで、奥コンロ6をとろ火にできる。
一方、とろ火ボタン92が押下されたときに、グリル庫内の検出温度が所定温度以上の場合、グリルバーナは現在燃焼状態にあり、グリル庫からの燃焼排気又はドラフトによる気流がグリル庫内から排気口7を介して奥コンロ6に流れ込むことから、この状態で奥コンロ6をとろ火にすると立ち消えする可能性が高い。そこで、CPU101はこのような立ち消えを未然に防止する為、とろ火ボタン92の押下を無効化し、火力制御機構部60の電磁弁61を閉じない。これにより、コンロ1は、とろ火燃焼について、グリルとの併用を避けることができるので、とろ火ボタン92押下後におけるとろ火燃焼の立ち消えを未然に防止できる。
上記説明において、ニードル部69が本発明の「ガス量調節手段」の一例であり、火力制御機構部60が本発明の「最少ガス量供給手段」の一例であり、とろ火ボタン92に設けられたスイッチが本発明の「スイッチ」の一例である。サーミスタ7Cが本発明の「グリルサーミスタ」の一例である。図8のS11とS14の処理を実行するCPU101が本発明の「制御手段」の一例である。S12、S13、S15の処理を実行するCPU101が本発明の「無効化手段」の一例である。
-第二実施形態-
本発明の第二実施形態を説明する。第二実施形態は、上記第一実施形態の変形例であり、図8のとろ火制御処理の一部を変形したものである。第二実施形態では、奥コンロ6の点火後にとろ火ボタン92が押下され、グリル庫内の検出温度が所定温度以上であっても、奥コンロ6の点火してからの燃焼時間が所定時間未満である場合は、所定時間を超えるまで火力制御機構部60の作動を遅延させる点に特徴を有する。なお、「火力制御機構部60の作動を遅延させる」とは、火力制御機構部60の電磁弁61を閉じるタイミングを遅延させるという意味である。また、コンロ1の物理的構成、電気的構成は、第一実施形態と同じであるので説明を省略する。
図9を参照し、第二実施形態のとろ火制御処理を説明する。なお、図8に示すとろ火制御処理と共通するステップは説明を省略又は簡略化し、異なるステップを中心に説明する。図9のフローチャートにおいて、第一実施形態と共通するステップは、第一実施形態と同じステップ番号を付している。
例えば、操作つまみ13が押し込まれると、CPU101は、安全弁48、火力制御機構部60の電磁弁61を開放し、イグナイタ6Aを作動させ、奥コンロ6を点火させる。奥コンロ6の点火が熱電対6Bで検知されると、CPU101は、ROM72から「とろ火制御プログラム」を読出し、本処理を実行する。
CPU101はタイマ104を0に初期化し、燃焼時間tの計時を開始する(S10)。CPU101は、とろ火ボタン92が押下されたか否か判断する(S11)。とろ火ボタン92が押下された場合(S11:YES)、CPU101は、サーミスタ7Cによりグリル庫内の温度を検出する(S12)。CPU101は、グリル庫内の検出温度が所定温度(例えば、150℃)以上か否か判断する(S13)。ここで、グリル庫内の検出温度が所定温度以上であった場合(S13:YES)、グリルバーナは現在燃焼状態にあり、グリル庫からの燃焼排気又はドラフトによる気流がグリル庫内から排気口7を介して奥コンロ6に流れ込むことから、奥コンロ6の燃焼状態が十分に安定していなければ、立ち消えしてしまう可能性が高くなる。特に、奥コンロ6の点火直後においては、奥コンロ6が十分に温められておらず、とろ火にすることで火炎温度が急激に低下し、立ち消えする可能性はより高くなる。
そこで、CPU101は、奥コンロ6の燃焼時間tが所定時間(例えば60秒)を超えたか否か判断する(S21)。燃焼時間tが60秒以下であった場合(S21:NO)、とろ火LED93を点滅させると共に(S22)、火力制御機構部60の作動を遅延させることを音声で報知する(S23)。CPU101は、S21に戻って燃焼時間tが60秒を超えるまで(S21:NO)、処理を繰り返す。なお、遅延報知の音声の一例として、「少々お待ち下さい。」等の音声をスピーカ121から出力するとよい。遅延報知の音声は、燃焼時間が60秒を超えるまで、一定間隔で繰り返し出力してもよいし、一回だけ出力するようにしてもよい。そして、とろ火LED93を点灯させるのではなく、点滅させることで、とろ火ボタン92の操作は有効であるが、それに対応する動作がまだ完了していないことを使用者に知らせることができる。遅延報知の音声を聞いた使用者は、弱火力に変更されるタイミングが遅延することを認識できる。
そして、燃焼時間tが60秒を超えた場合(S21:YES)、奥コンロ6は十分に温められていることから、CPU101は、火力制御機構部60の電磁弁61を閉じる(S14)。これにより、ガス配管50からニードル部69に流れるガス流量は、第2流量になるので、奥コンロ6の火力は自動的に弱火力になる。CPU101は、とろ火LED93を点滅から点灯に切替え(S16)、とろ火調節が可能であることを使用者に知らせる。使用者は、奥コンロ6が自動的に弱火力に制御され、とろ火LED93が点滅から点灯に変わったのを確認した後で、操作つまみ13で火力をさらに弱めることで、奥コンロ6をとろ火にできる。奥コンロ6は十分に温められていることから、とろ火燃焼は安定化している。それ故、グリル庫からの燃焼排気又はドラフトによる気流が生じたとしても、奥コンロ6において立ち消えするのを防止できる。
以上説明したように、第二実施形態のコンロ1のCPU101は、第一実施形態と同様に、奥コンロ6の点火後にとろ火ボタン92が押下されると、グリル庫内のサーミスタ7Cの検出温度が所定温度以上か否か判断する。検出温度が所定温度未満の場合、CPU101は、火力制御機構部60の電磁弁61を閉じる。これにより、ガス配管50からニードル部69に流れるガス流量は第2流量になるので、奥コンロ6の火力は自動的に弱火力になる。使用者は、奥コンロ6が自動的に弱火力に制御されたのを確認した後で、操作つまみ13で火力をさらに弱めることで、奥コンロ6をとろ火にできる。
一方、とろ火ボタン92が押下されたときに、グリル庫内の検出温度が所定温度以上の場合、CPU101は、奥コンロ6が点火されてからの燃焼時間tが所定時間以上か否か判断する。燃焼時間tが所定時間を経過していない場合、奥コンロ6が十分に温められておらず、とろ火にすることで火炎温度が急激に低下し、立ち消えする可能性はより高くなる。そこで、CPU101は燃焼時間tが所定時間を超えるまで、火力制御機構部60の作動を遅延させる。所定時間を超えた場合、奥コンロ6は十分に温められていることから、CPU101は、火力制御機構部60の電磁弁61を閉じる。このように、火力制御機構部60の作動を遅延させることで、奥コンロ6を温めた後で弱火力に制御され、とろ火燃焼に移行するので、とろ火燃焼の安定性を向上できる。これにより、グリル庫からの燃焼排気、又はドラフトによる気流等により、奥コンロ6が立ち消えする可能性を低減できる。
上記説明において、図7に示すタイマ104が本発明の「燃焼時間計測手段」の一例である。図9のS11とS14の処理を実行するCPU101が本発明の「制御手段」の一例である。S13とS21の処理を実行するCPU101が本発明の「無効化手段」の一例である。
なお、本発明は上記第一、第二実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。上記実施形態では、ビルトインタイプのコンロ1を例示したが、テーブルコンロであってもよい。コンロバーナの数は一つでも複数でもよい。
上記実施形態のコンロ1は、奥コンロ6をとろ火に調節可能であるが、右コンロ4、左コンロ5においてもとろ火に調節可能とし、夫々に対応するとろ火ボタンを右操作パネル18及び左操作パネル19に設けてもよい。
上記実施形態では、とろ火ボタン92を押下し、奥コンロ6が弱火力になった後で、操作つまみ13で火力をさらに弱めることで、奥コンロ6をとろ火にしているが、例えば、操作つまみ13で先に火力を絞った状態で、とろ火ボタン92を押下することで、奥コンロ6をとろ火に調節するようにしてもよい。
上記実施形態の火力制御機構部60は、火力を二段階に調節できるものであるが、例えばバイパス管や電磁弁を追加することで、ガス配管50を流れるガス量をさらに多段階に切替えるようにしてもよい。
上記実施形態の燃料供給装置20は、操作つまみ13の回動操作で、ニードル弁28の位置を調節するものであるが、例えばレバーの回動操作で調節するものでもよい。
上記第一実施形態の図8に示すとろ火制御処理のS15の操作無効報知、及び第二実施形態の図9に示すとろ火制御処理のS22の遅延報知は、音声以外の手段で報知してもよく、例えばアラームをスピーカ121から出力したり、表示部を新たに設けて、その表示部に操作無効又は遅延の旨を表示するようにしてもよい。
上記第一実施形態のS12,S13では、グリル庫内の温度を検出し、その検出温度が所定温度以上か否かを判断することで、とろ火ボタン92の押下を無効にするか否かを決定するが、例えば、グリルバーナが燃焼中か否かで、とろ火ボタン92の押下を無効にするか否かを決定してもよい。グリルバーナが燃焼中か否かは、熱電対7Bで検出すればよい。グリルバーナが燃焼中の場合、グリル庫からの燃焼排気、又はドラフトによる気流等により奥コンロ6が立ち消えする可能性があるので、とろ火ボタン92の押下を無効にすればよい。なお、第二実施形態のS12,S13においても同様である。