JP7128618B2 - ロボットアーム及びこれに用いる多層フィルム又は多層シート - Google Patents

ロボットアーム及びこれに用いる多層フィルム又は多層シート Download PDF

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Description

本発明は、インフレータブル構造を用いたロボットアーム及びこれに用いる多層フィルム又は多層シートに関する。
従来から、駆動エネルギーとして空気等の流体を用いて作動させるインフレータブル構造のロボットアームが様々提案されている。このようなインフレータブル構造のロボットアームでは、柔らかい材料を用いて軽量化を図ることができるので、人体との接触等においての安全性を確保することができる。
インフレータブル構造を用いたロボットアームとしては、例えば、一定圧の流体を封入して形成した構造骨格の接続部分に、内圧が低く折れ曲がった状態から加圧することにより、形状回復力に起因する折れ曲がり部のトルクを駆動力として利用するアクチュエータを複数配置したロボットアームがある。
例えば特許文献1には、アクチュエータのトルクを向上させることができると共に関節部におけるねじれ現象及び振動を抑制することにより、位置決め精度を向上させたロボットアームが記載されている。そして、このロボットアームの流体圧アクチュエータは、高密度ポリエチレン(HDPE)等のプラスティック材料により形成できることが記載されている。
特開2015-166117号公報
本発明者らは、特許文献1に記載のようなロボットアームにおいて、流体圧アクチュエータを構成する材料としては、その特有の用途に適した強度等の物性を有する材料を使用すべき点に着目した。すなわち本発明の目的は、その特有の用途に適した強度等の物性を有する材料により形成された流体圧アクチュエータを有するロボットアーム及びこれに用いる多層フィルム又は多層シートを提供することを目的とする。
本発明にかかるロボットアームは、
プラスティック材料により内部に流体を封入可能な袋状構造に形成される第1リンクと、プラスティック材料により内部に流体を封入可能な袋状構造に形成される第2リンクと、前記第1リンクと前記第2リンクとを連結する関節部と、前記関節部を回動させるために、当該関節部に拮抗的に配置される一対の流体圧アクチュエータと、を備えるロボットアームであって、
前記関節部は、前記第1リンクが取り付けられる第1剛体部材と、前記第2リンクが取り付けられる第2剛体部材と、前記第1剛体部材及び前記第2剛体部材を回転可能に支持する軸部と、プラスティック材料により形成され、内部に流体が供給されて膨張することにより前記第2剛体部材の押圧片に対して前記軸部の軸方向側に圧力を作用させる膨張部材と、前記第1剛体部材に一端側が取り付けられた薄膜状の第1シート部材と前記第2剛体部材に一端側が取り付けられた薄膜状の第2シート部材のそれぞれの他端側が交互に複数積層された状態で、前記第2剛体部材の押圧片と前記第1剛体部材の押圧片との間に配置され、前記膨張部材により前記第2剛体部材の押圧片を押圧し、前記第1シート部材及び前記第2シート部材のそれぞれの他端側を、前記第2剛体部材の押圧片と前記第1剛体部材の押圧片により挟んで密着させることにより摩擦力を生じさせる摩擦力発生手段と、
を有しており、
前記一対の流体圧アクチュエータは、それぞれ多層フィルム又は多層シートにより内部に作動流体を収納可能な流体室が形成された袋状構造体が連続して複数設けられ、隣接する前記袋状構造体の流体室は、連通孔を介して作動流体が流通可能に構成されており、前記各流体室に作動流体が供給されることにより膨張して、扇状に回動することで、前記第1剛体部材又は前記第2剛体部材を回転させ、
前記流体が気体であり、
前記流体室を形成する多層フィルム又は多層シートが、基材層と融着層を含む積層体であり、かつ、前記流体室が該多層フィルム又は該多層シートの融着層同士が融着された部分を有して気体を封入可能な構造を形成し、
前記基材層が、熱可塑性樹脂製フラットヤーンを織製することにより得られた織布(クロス)、延伸ポリエステルフィルム又は延伸ポリアミドフィルムであり、
前記融着層が、
密度890~940kg/m 、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10minの直鎖状低密度ポリエチレン又はメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10min、融点が120~170℃のプロピレン系重合体50~100質量%と、
密度が850~900kg/m 、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10minのα-オレフィン共重合体0~50質量%と
(但し、前記直鎖状低密度ポリエチレン又は前記プロピレン系重合体と前記α-オレフィン共重合体の合計を100質量%とする。)
を含む
ことを特徴としている。
前記複数の袋状構造体、扇状に回動する際の支点側に位置する基端から先端までの距離が、両端側に設けられる前記袋状構造体から中央側に設けられる前記袋状構造体に向かうに従って短くなるように構成することができる。
前記第1リンク及び第2リンクのうちの少なくとも一つの袋状構造、プラスティック材とその側面に巻き付けられたクロス基材を有する構造とすることができる。
前記第1リンク及び第2リンクが、中空部を有しており、外周部内部に流体を封入可能な袋状構造の流体袋を外周方向に連続して複数設けて形成することができる。
本発明にかかる多層フィルム又は多層シートは、
基材層と融着層を含む積層体であり、
前記基材層が、熱可塑性樹脂製フラットヤーンを織製することにより得られた織布(クロス)、延伸ポリエステルフィルム又は延伸ポリアミドフィルムであり、
前記融着層が、
密度890~940kg/m 、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10minの直鎖状低密度ポリエチレン又はメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10min、融点が120~170℃のプロピレン系重合体50~100質量%と、
密度が850~900kg/m 、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10minのα-オレフィン共重合体0~50質量%と
(但し、前記直鎖状低密度ポリエチレン又は前記プロピレン系重合体と前記α-オレフィン共重合体の合計を100質量%とする。)
を含み、
上記のロボットアームの袋状構造体の有する流体室に用いられる
ことを特徴としている。
本発明にかかるロボットアームによれば、その特有の用途に適した強度等の物性を有する材料により形成された流体圧アクチュエータを有するロボットアームを提供することができる。また、本発明にかかる多層フィルム又は多層シートは強度等の物性に優れるので、流体圧アクチュエータの作動流体を収納する為の構造体に用いられることにより優れた効果を発揮する。
本発明の実施形態に係るロボットアームの一例を示す概略正面図である。 第1リンク及び第2リンクの一例を示す概略平面断面図である。 関節部の一例を示す概略正面図である。 関節部の一例を示す要部概略平面図であって、(a)は摩擦力を付与していない時の状態を示しており、(b)は摩擦力を付与している時の状態を示している。 流体圧アクチュエータの一例を示す概略正面図である。 図5におけるA-A線断面図である。 第1シート部材及び第2シート部材の一例を示す概略正面図である。 第1シート部材及び第2シート部材が積層された状態を示す概略正面図である。 水平旋回機構の一例を示す概略断面図である。
以下、本発明の実施形態に係るロボットアーム1について、図面を参照しつつ説明する。ロボットアーム1は、例えば、対象物(不図示)を把持して、目的の場所へと運ぶ作業等を行うためのものであって、図1に示すように、内部に流体を封入可能な袋状構造に形成される第1リンク2aと第2リンク2bとを連結する関節部3と、関節部3を回動させるために当該関節部3に拮抗的に配置される一対の流体圧アクチュエータ4a,4bとを備えている。また、ロボットアームは、水平旋回が可能なように、土台5に水平旋回機構6が設けられており、先端側には、対象物を把持するための把持部7が、リンク2cの先端側に取り付けられている連結部材8を介して設けられている。尚、図1では説明の便宜のため、一対の流体圧アクチュエータ4a、4b等の各部に流体を供給するための供給源である流体ポンプ及び流体ポンプから各部の給排孔へと接続されるチューブ等は省略して図示している。
第1リンク2a及び第2リンク2bは、それぞれ薄膜状のプラスティック材料により内部に流体を封入可能な袋状構造に形成されているものであって、内部に封入された流体からの内圧によって剛性を有している。第1リンク2a及び第2リンク2bは、図2に示すように、中空部21を有しており、外周部が内部に流体を封入可能な袋状構造を有する複数の流体袋22により形成されている。複数の流体袋22は、それぞれ外周方向に連続して設けられており、流体が流通可能なように隣接する流体袋22の内部はそれぞれ連通するよう形成されている。また、少なくとも1つの流体袋22には、給排孔23が設けられており、外部に設けられる流体ポンプから流体が供給されることにより、内部の流体圧を調整できるようになっている。
流体袋22を形成するために用いられるプラスティック材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)を用いることができ、低コストで第1リンク2a及び第2リンク2bを作製することができる。第1リンク2a及び第2リンク2bは、このように軽量且つ柔らかい材料を用いて形成されるので、人体と接触したような場合でも安全性を確保することができる。また、第1リンク2a及び第2リンク2bでは、中空部21を有するように形成されているので、図2に示すように、中空部21内に流体ポンプから一対のアクチュエータ4a、4b等の各部へ流体を供給するためのチューブ9を収納することができる。尚、本実施形態では、第1リンク21及び第2リンク22の外周部は、4つの流体袋22により形成されている例を示しているが、流体袋22の数は特に限定されるものではなく、中空部21を形成できるように設けられていれば良い。また、第1リンク21及び第2リンク22の構造は、中空部21を有さない1つの流体袋により略円柱状に構成し、各部へ流体を供給するためのチューブ9を第1リンク21及び第2リンク22の外周面に沿うように配置しても良い。その場合には、例えば、外周面側からポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンを順に重ね合わせて接着させた材料を用いることにより、内圧に対する強度を向上させるように構成しても良い。
関節部3は、第1リンク2aと第2リンク2bとを回転可能に連結するものであって、図3及び図4に示すように、第1リンク2aの先端側が取り付けられる第1剛体部材31と、第2リンク2bの基端側が取り付けられる第2剛体部材32と、第1剛体部材31及び第2剛体部材32を回転可能に支持する軸部33と、内部に流体が供給されることにより膨張する膨張部材34と、第1剛体部材31に一端側が取り付けられる第1シート部材35と、第2剛体部材32に一端側が取り付けられる第2シート部材36とを備えている。尚、図4では、説明の便宜のため、一対の流体圧アクチュエータ4a、4bは省略して図示している。
第1剛体部材31及び第2剛体部材32は、それぞれ剛体材料によって形成されている。第1剛体部材31は、図3及び図4に示すように、第1リンク2aの先端側を挿入させた状態で取り付けるための挿入孔が設けられた取付部31aと、内周面から軸部33の軸方向に対して直交する方向に突出するよう形成される押圧片31bとを有している。押圧片31bは、正面側から見た場合、略円形状に形成されており、軸部33が挿通可能な挿通孔31cを有している。また、第2剛体部材32は、第2リンク2bの基端側を挿入させた状態で取り付けるための挿入孔が設けられた取付部32aと、軸部33の軸方向と平行な幅方向の一端側から軸部33の軸方向に対して直交する方向に突出するように形成される押圧片32bとを有している。押圧片32bも押圧片31bと同様に正面側から見た場合、略円形状に形成されており、軸部33が挿通可能な挿通孔32cを有している。このような第1剛体部材31及び第2剛体部材32を形成する剛体材料としては、例えば、軽量で耐衝撃性に優れたABS樹脂等を好適に用いることができる。また、第1剛体部材31及び第2剛体部材32は、それぞれ軸部33に回転可能に支持されており、軸部33の端部は、第1剛体部材31の外周面上に位置している。
膨張部材34は、プラスティック材料により袋状に形成されており、内部に流体が供給されることにより軸部33の軸方向側に膨張するように構成されている。この膨張部材34は、図4に示すように、略中央部に軸部33が挿通可能な挿通孔34aを有するドーナツ状に形成されている。膨張部材34は、内部に流体が供給されると、図4(b)に示すように、軸部33の軸方向側に膨張し、第2剛体部材32の押圧片32bが軸部33の軸方向内側(図中右方向)へと移動するように押圧片32bに対して圧力を作用させる。このような膨張部材34を形成するプラスティック材料としては、例えば、ポリエチレン等を用いることができる。尚、詳しくは図示しないが、膨張部材34には、外部に設けられる流体ポンプからチューブを介して流体が供給されるように、給排孔が形成されており、供給される流体の供給量が調整されることにより、押圧片32bに対して作用させる圧力を調整できるようになっている。
第1シート部材35及び第2シート部材36は、図4及び図7に示すように、それぞれ薄膜状のプラスティック材料によって同形状のシート状に形成されている。第1シート部材35及び第2シート部材36は、図7に示すように、それぞれ前方後円形状に形成されており、略円形状を有する円形部35a、36aには、軸部33が挿通可能な挿通孔35b、36bが形成されている。第1シート部材35及び第2シート部材36を形成するプラスティック材料としては、例えば、ポリプロピレン等を用いることができる。
第1シート部材35は、一端側が第1剛体部材31の内周面に固定され、他端側の円形部35aは、挿通孔35bに軸部33が挿通された状態で回転可能に支持される。また、第2シート部材36は、一端側が第2剛体部材32の内周面に固定され、他端側の円形部36aは、挿通孔36bに軸部33が挿通された状態で回転可能に支持される。従って、図4及び図8に示すように、第1シート部材35の他端側の円形部35aと第2シート部材36の他端側の円形部36aが交互に複数重ね合わされて積層された状態になり、第1シート部材35及び第2シート部材36は、第1剛体部材31の押圧片31bと第2剛体部材32の押圧片32bとの間に配置される。ロボットアーム1では、このような状態で、膨張部材34を膨張させて、第2剛体部材32の押圧片32bが軸部33の軸方向内側(図中右方向)へと移動するように押圧片32bに対して圧力を作用させることで、第1シート部材35の他端側の円形部35aと第2シート部材36の他端側の円形部36aが、第2剛体部材32の押圧片32bと第1剛体部材31の押圧片31bによって挟まれて密着させられることにより円形部35aと円形部36aの密着面に摩擦力を生じさせ、この摩擦力をブレーキ等として利用することができる。
このように本実施形態では、他端側の円形部35aと円形部36aが交互に複数重ね合わされて積層された状態で、第1剛体部材31の押圧片31bと第2剛体部材32の押圧片32bとの間に配置される複数の第1シート部材35及び第2シート部材36によって構成される積層型拘束要素が摩擦力を発生させるための摩擦力発生手段としての役割を果たしている。また、第1シート部材35及び第2シート部材36では、それぞれの他端側を交互に複数重ね合わされて積層させると共に、他端側をそれぞれ円形状に形成しているので、密着面積を大きく確保することができ、拘束力を向上させることができる。
一対の流体圧アクチュエータ4a、4bは、図3に示すように、関節部3を回転させるために当該関節部3に拮抗的に配置されている。流体圧アクチュエータ4a、4bは、図5及び図6に示すように、それぞれ多層フィルム又は多層シートにより内部に作動流体を収納可能な流体室42が形成された袋状構造体41(41a~41d)が連続して複数設けられており、隣接する袋状構造体41の流体室42は、それぞれ連通孔43を介して作動流体が流通可能なように構成されている。そして、流体圧アクチュエータ4a、4bでは、各流体室42に外部に設けられる流体ポンプ(不図示)等から給排孔44に接続されるチューブ9を介して作動流体が供給されることにより、扇状に回動するように膨張する。
また、流体圧アクチュエータ4a、4bの複数の袋状構造体41は、図5に示すように、扇状に回動する際の支点側に位置する基端oから各袋状構造体41a~41dの先端a~dまでの距離が、両端に位置する袋状構造体41aから中央に位置する袋状構造体41dに向かうに従って短くなるように形成されている。つまり、流体圧アクチュエータ4a、4bでは、線分oa、線分ob、線分oc、線分odの順に短くなるように袋状構造体41a~41dが形成されている。これにより、袋状構造体41の各流体室42の体積が大きくなるのを抑制することができるので、各流体室42に供給する作動流体の供給量を軽減しつつ、回転トルクを効率的に得ることができる。
このような流体圧アクチュエータ4a、4bを形成する多層フィルム又は多層シートとしては、基材層と融着層を含む積層体が好ましい。強度に優れる基材層と接着性に優れる融着層を有する多層フィルム又は多層シートは、この流体圧アクチュエータ4a、4bのような特有の用途に必要な物性(例えば耐圧に関する強度など)を十分発現できるからである。
基材層としては、特に、熱可塑性樹脂製フラットヤーンを織製することにより得られた織布(クロス)、延伸ポリエステルフィルム、ナイロン等の延伸ポリアミドフィルムが好ましい。基材層の厚さは、好ましくは5~500μm、より好ましくは10~400μmである。
融着層は、直鎖状低密度ポリエチレン又はプロピレン系重合体と、必要に応じてα-オレフィン共重合体とを含むことが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレン又はプロピレン系重合体の量は、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~90質量%、α-オレフィン共重合体の量は、好ましくは0~50質量%、より好ましくは10~40質量%(但し、前記直鎖状低密度ポリエチレン又は前記プロピレン系重合体と前記α-オレフィン共重合体の合計を100質量%とする。)である。
直鎖状低密度ポリエチレンは、メタロセン触媒を用いて得られたものであることが好ましい。その密度は、好ましくは890~940kg/m、より好ましくは900~930kg/mである。また、そのメルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.1~30g/10min、より好ましくは0.5~20g/10minである。
プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体であっても良いし、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体であっても良い。他のα-オレフィンとしては、エチレン、ブチレンが好ましい。他のα-オレフィンに起因する構造の含有量は、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは1~5質量%である。
ポリプロピレンのメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.1~30g/10minである。また、その融点は、好ましくは120~170℃である。
α-オレフィン共重合体は、メタロセン触媒を用いて得られたものであることが好ましい。その密度は、好ましくは850~900kg/m、より好ましくは855~890kg/mである。また、そのメルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.1~30g/10min、より好ましくは0.5~20g/10minである。α-オレフィン共重合体を得る為のα-オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、ブチレンが挙げられる。
融着層の厚さは、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~100μmである。
また、第1リンク及び第2リンクのうちの少なくとも一つの袋状構造が、プラスティック材とその側面に巻き付けられたクロス基材を有する構造であることも、耐圧に関する強度の点から好ましい。クロス基材の具体例としては、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィンフラットヤーン等の織布(クロス)が挙げられる。クロス基材の厚さは、好ましくは100~500μm、より好ましくは200~400μmである。クロス基材を巻き付けられるプラスティック材としては、例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、直鎖上低密度ポリエチレン等のプラスティック材が挙げられる。プラスティック材の厚さは、好ましくは10~300μm、より好ましくは20~200μmである。
なお、以上説明した多層フィルム又は多層シートは強度等の物性に優れるので、本発明のロボットアームの以外のものに用いられる場合であっても非常に有用である。すなわち、本発明の多層フィルム又は多層シートは、流体圧アクチュエータの作動流体を収納する為の構造体に用いられる多層フィルム又は多層シートである。
流体圧アクチュエータ4a、4bに供給する作動流体としては、例えば、空気等の気体を好適に用いることができるが、これに限定されるものではなく、他の流体を用いることも可能である。
流体圧アクチュエータ4aは、図3に示すように、一端側に位置する袋状構造体41aが第1剛体部材31に取り付けられており、他端側に位置する袋状構造体41a’が第2剛体部材32に取り付けられている。また、流体圧アクチュエータ4bも流体圧アクチュエータ4aと同様に、一端側に位置する袋状構造体41aが第1剛体部材31に取り付けられており、他端側に位置する袋状構造体41a’が第2剛体部材32に取り付けられている。このような状態において、例えば、第1リンク2a側が回転しないように拘束されている場合には、流体圧アクチュエータ4aに作動流体を供給することにより、流体圧アクチュエータ4aは、扇状に回動して、第2剛体部材32に軸部33を中心に反時計回り方向へ回転させるためのトルクを与えることができるので、図3中に矢印で示すように、第2剛体部材32の取付部32aに取り付けられている第2リンク2bを反時計回り方向へと回転させることができる。また、第2リンク2bを時計回り方向へ回転させる場合には、流体圧アクチュエータ4bに作動流体を供給するようにすれば良い。尚、図3では、袋状構造体41が7個設けられている流体圧アクチュエータ4a、4bの例を示しているが、袋状構造体41の数はこれに限定されるものではなく、関節部3を回動させるために扇状に回動するように構成されていれば良い。また、複数の袋状構造体41は、基端oから各袋状構造体41a~41dの先端a~dまでの距離が、両端に位置する袋状構造体41aから中央に位置する袋状構造体41dに向かうに従って短くなるように形成されているが、これに限定されるものではなく、基端oから各袋状構造体41a~41dの先端a~dまでの距離が等しくなるように形成されていても良い。また、図5では、給排孔44が一端側に位置する袋状構造体41aに設けられている例を示しているが、給排孔44の位置や数は特に限定されるものではなく、各流体室42内に作動流体が供給できるように設けられていれば良い。
また、本実施形態に係るロボットアーム1では、詳しくは図示しないが、例えば、関節部3の回転速度を検出するための角速度センサと、膨張部材34による圧力を検出する圧力センサと、流体圧アクチュエータ4a、4bや膨張部材34等へ流体ポンプから供給される流体の供給量等を制御するためのコンピュータ等から構成される制御部とを備えている。制御部では、例えば、角速度センサ及び圧力センサから得られた検出信号に基づいて、関節部3の回転速度に比例して膨張部材34の圧力を増減させるように、膨張部材34への流体の供給を制御して、第1シート部材35の円形部35aと第2シート部材36の円形部36aとの密着面に生じる摩擦力を可変にすることにより、関節部3に粘性効果が得られる。これにより、関節部3の振動が抑制される。
水平旋回機構6は、ロボットアーム1が鉛直平面内だけでなく、3次元空間での作業を実現するために、土台5に設けられるものであって、図1及び図9に示すように、土台5上に水平回転自在に設けられる水平回転部材61と、水平回転部材61に対して水平回転方向に圧力を作用させるための流体圧アクチュエータ62a、62bと、水平回転部材61に基端側が取り付けられ、水平回転部材61の回転に伴って回転するリンク(水平旋回軸)63とを備えている。
水平回転部材61は、例えば、不図示のベアリングを介して土台5上に水平回転自在に設けられている。水平回転部材61は、図1及び図9に示すように、リンク63の基端側を挿入させた状態で取り付けるための挿入孔が設けられたリンク支持部61aと、該リンク支持部61aからそれぞれ90度間隔で放射状に延びる4本の回転片61bとを有している。
流体圧アクチュエータ62a、62bは、水平回転部材61に対して水平回転方向に圧力を作用させることにより、水平回転部材61を水平回転させるためのものであって、図9に示すように、それぞれ交互に隣接する回転片61bの間に配置されている。この流体圧アクチュエータ62a、62bは、上述した関節部3に拮抗的に配置される流体圧アクチュエータ4a、4bと同様のものであり、流体が供給されることにより膨張し、扇状に回動するものである。尚、流体圧アクチュエータ4a、4bは、流体圧アクチュエータ62a、62bと同様であるので、詳細な説明については省略する。流体圧アクチュエータ62aは、両端側に位置する袋状構造体621aが、それぞれ回転片61bに取り付けられている。また、流体圧アクチュエータ62bも両端側に位置する袋状構造体621bが、それぞれ回転片61bに取り付けられている。水平旋回機構6では、このように隣接する回転片61bの間に交互に配置された流体圧アクチュエータ62aと流体圧アクチュエータ62bとの差圧により水平回転部材61を水平回転できるように構成されている。
リンク63は、基端側が水平回転部材61のリンク支持部61aに取り付けられており、水平回転部材61の水平回転に伴って回転するよう構成されている。本実施形態に係るロボットアーム1では、図1に示すように、リンク63の先端側は、関節部3に取り付けられており、リンク63と第1リンク2aとは、この関節部3を介して連結されている。リンク63の構造は、図9に示すように、プラステッィク材料により第1リンク2aや第2リンク2bと同様の形状に形成されている。尚、リンク63の構造は、これに限定されるものではなく、薄膜状のプラスティック材料を複数重ね合わせて強度を向上させたものにより筒状に形成したリンクを用いても良い。
把持部7は、図1に示すように、第2リンク2bの先端側に関節部3を介して連結されたリンク2cの先端側に設けられた連結部材8に取り付けられている。尚、リンク2cは、第1リンク2a及び第2リンク2bと同様の構造のものであるので、その詳細な説明については省略する。把持部7は、対象物(不図示)を把持するためのものであって、3つの把持部7が異なる位置で連結部材8に取り付けられている。これらの把持部7は、特開2014-020462号公報に開示されているものであって、薄膜状のプラスティック材料により形成され、作動流体を供給することにより、屈曲動作を実現することができる流体圧アクチュエータを把持部として利用したものである。尚、把持部7の構造は、これに限定されるものではなく、対象物を把持することができる従来公知のインフレータブル構造の把持手段を適用しても良い。
以上のように、本発明に係るロボットアーム1は、軽量且つ柔らかい材料を用いて形成されているので、人体と接触したような場合でも安全性を確保することができる。また、ロボットアーム1は、各部の流体を抜くことで、小さく纏めることができるので、容易に移動させることも可能であると共に、使用しない場合の収納も省スペース化することができる。また、ロボットアーム1は、非常に軽く構成することができるので、重力の影響が少なく、複数の関節部3を介してリンクを多数連結させることにより、片持ち構造で長尺に構成することが可能である。従って、ロボットアーム1の先端にカメラ等の撮像手段を 設けておくことにより、細長い場所等もその中の様子を観察することが可能になる。
尚、本発明の実施の形態は上述の形態に限るものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
<実施例1>
ナイロンからなる厚さ15μmの基材層(延伸ポリアミドフィルム)と、プロピレンランダム共重合体(rPP)(融点140℃、MFR(230℃、2.16kg荷重)7.0g/10min、エチレン含量2質量%)からなる厚さ100μmの熱融着層とが積層されてなる多層シートを用意した。そして50mm四方の2枚の多層シートの熱融着層同士を重ね合せ、ハンドシーラーを用いて3片を熱融着させた。残る一片には空気注入のためのチューブを挿入した状態で熱融着させて、50mm四方の袋状構造体を作製した。また同様の手順で、100mm四方の袋状構造体も作製した。
<実施例2>
ナイロンからなる厚さ15μmの基材層と、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(密度937kg/m、融点126℃、MFR(190℃、2.16kg荷重)2.3g/10min)からなる厚さ100μmの熱融着層とが積層されてなる多層シートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして50mm四方の袋状構造体及び100mm四方の袋状構造体を作製した。
<比較例1>
プロピレンランダム共重合体(rPP)(融点140℃、MFR(230℃、2.16kg荷重)7.0g/10min、エチレン含量2質量%)からなる厚さ100μmの単層シートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして50mm四方の袋状構造体及び100mm四方の袋状構造体を作製した。
<比較例2>
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(密度937kg/m、融点126℃、MFR(190℃、2.16kg荷重)2.3g/10min)からなる厚さ100μmの単層シートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして50mm四方の袋状構造体及び100mm四方の袋状構造体を作製した。
<耐圧性能の評価>
以上の実施例及び比較例で作製した袋状構造体にチューブを介して空気を流入し、空気漏れが生じた際の圧力値(破袋圧力[kPa])を計測した。結果を表1に示す。
Figure 0007128618000001
<参考例1>
高密度ポリエチレン(HDPE)(密度950kg/m、融点130℃、MFR(190℃、2.16kg荷重)1g/10min)からなる厚さ100μmのシートを用意した。このHDPEシートを高さ280mm、直径90mmの円筒状にし、円筒側面部および底部を熱融着させた。残る頭部には空気注入のためのチューブを挿入した状態で熱融着させて、HDPEからなる円筒状部材を得た。さらに、その側面部に厚さ300μmのクロス基材(フラットヤーン織製)を巻き付けて、リンク部材を作製した。
<比較参考例1>
参考例1と同様にしてHDPEからなる円筒状部材を作製し、このクロス基材を巻き付けていない円筒状部材を、そのままリンク部材とした。
<耐圧性能の評価>
以上の参考例及び比較参考例で作製したリンク部材にチューブを介して空気を流入し、空気漏れが生じた際の圧力値(破リンク圧力[kPa])を計測した。結果を表2に示す。
Figure 0007128618000002
1 ロボットアーム
2a 第1リンク
2b 第2リンク
21 中空部
22 流体袋
3 関節部
31 第1剛体部材
31b 押圧片
32 第2剛体部材
32b 押圧片
33 軸部
34 膨張部材
35 第1シート部材
36 第2シート部材
4a、4b 流体圧アクチュエータ
41、41a~41d 袋状構造体
42 流体室
43 連通孔

Claims (7)

  1. プラスティック材料により内部に流体を封入可能な袋状構造に形成される第1リンクと、プラスティック材料により内部に流体を封入可能な袋状構造に形成される第2リンクと、前記第1リンクと前記第2リンクとを連結する関節部と、前記関節部を回動させるために、当該関節部に拮抗的に配置される一対の流体圧アクチュエータと、を備えるロボットアームであって、
    前記関節部は、前記第1リンクが取り付けられる第1剛体部材と、前記第2リンクが取り付けられる第2剛体部材と、前記第1剛体部材及び前記第2剛体部材を回転可能に支持する軸部と、プラスティック材料により形成され、内部に流体が供給されて膨張することにより前記第2剛体部材の押圧片に対して前記軸部の軸方向側に圧力を作用させる膨張部材と、前記第1剛体部材に一端側が取り付けられた薄膜状の第1シート部材と前記第2剛体部材に一端側が取り付けられた薄膜状の第2シート部材のそれぞれの他端側が交互に複数積層された状態で、前記第2剛体部材の押圧片と前記第1剛体部材の押圧片との間に配置され、前記膨張部材により前記第2剛体部材の押圧片を押圧し、前記第1シート部材及び前記第2シート部材のそれぞれの他端側を、前記第2剛体部材の押圧片と前記第1剛体部材の押圧片により挟んで密着させることにより摩擦力を生じさせる摩擦力発生手段と、を有しており、
    前記一対の流体圧アクチュエータは、それぞれ多層フィルム又は多層シートにより内部に作動流体を収納可能な流体室が形成された袋状構造体が連続して複数設けられ、隣接する前記袋状構造体の流体室は、連通孔を介して作動流体が流通可能に構成されており、前記各流体室に作動流体が供給されることにより膨張して、扇状に回動することで、前記第1剛体部材又は前記第2剛体部材を回転させ、
    前記流体が気体であり、
    前記流体室を形成する多層フィルム又は多層シートが、基材層と融着層を含む積層体であり、かつ、前記流体室が該多層フィルム又は該多層シートの融着層同士が融着された部分を有して気体を封入可能な構造を形成し、
    前記基材層が、熱可塑性樹脂製フラットヤーンを織製することにより得られた織布(クロス)、延伸ポリエステルフィルム又は延伸ポリアミドフィルムであり、
    前記融着層が、
    密度890~940kg/m3、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10minの直鎖状低密度ポリエチレン又はメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10min、融点が120~170℃のプロピレン系重合体50~100質量%と、
    密度が850~900kg/m3、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10minのα-オレフィン共重合体0~50質量%と(但し、前記直鎖状低密度ポリエチレン又は前記プロピレン系重合体と前記α-オレフィン共重合体の合計を100質量%とする。)を含む
    ことを特徴とするロボットアーム。
  2. 前記複数の袋状構造体が、扇状に回動する際の支点側に位置する基端から先端までの距離が、両端側に設けられる前記袋状構造体から中央側に設けられる前記袋状構造体に向かうに従って短くなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のロボットアーム。
  3. 前記流体が空気である請求項1に記載のロボットアーム。
  4. 前記第1リンク及び第2リンクのうちの少なくとも一つの袋状構造が、プラスティック材とその側面に巻き付けられたクロス基材を有する構造であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のロボットアーム。
  5. 前記クロス材の厚さが100~500μmであり、前記プラスティック材の厚さが10~300μmである請求項4に記載のロボットアーム。
  6. 前記第1リンク及び第2リンクが、中空部を有しており、外周部が内部に流体を封入可能な袋状構造の流体袋を外周方向に連続して複数設けて形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のロボットアーム。
  7. 基材層と融着層を含む積層体であり、
    前記基材層が、熱可塑性樹脂製フラットヤーンを織製することにより得られた織布(クロス)、延伸ポリエステルフィルム又は延伸ポリアミドフィルムであり、
    前記融着層が、
    密度890~940kg/m3、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10minの直鎖状低密度ポリエチレン又はメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10min、融点が120~170℃のプロピレン系重合体50~100質量%と、
    密度が850~900kg/m3、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1~30g/10minのα-オレフィン共重合体0~50質量%と
    (但し、前記直鎖状低密度ポリエチレン又は前記プロピレン系重合体と前記α-オレフィン共重合体の合計を100質量%とする。)
    を含み、
    請求項1~6のいずれかに記載のロボットアームの袋状構造体の有する流体室に用いられることを特徴とする多層フィルム又は多層シート。

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