JP7128499B2 - ガスバリア構造体およびフィルム積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、良好なガスバリア性を有するガスバリア構造体と、当該ガスバリア構造体をガスバリアフィルムとして備えておりガスバリア性を有するフィルム積層体と、に関する。
食品または医薬品等は、外気に接触することでその品質に大きな影響が及ぼされるものであり、それゆえ、従来から、このような物品を包装するためにガスバリア性を有する包装材(容器等も含む)が用いられてきた。このようなガスバリア性を含む包装材を、説明の便宜上、ガスバリア構造を含む「ガスバリア構造体」とすれば、代表的なガスバリア構造体としては、ガスバリア性を有する樹脂製フィルム(ガスバリアフィルム)が挙げられる。
このようなガスバリアフィルムは、食品または医薬品等以外に、電子材料または電子部品の包装材として用いられており、さらには電子機器の構造材、あるいは、真空断熱材の外被材等としても用いられている。具体的なガスバリアフィルムとしては、さまざまな構成が知られているが、一例としては、樹脂(プラスチック)製フィルム製の基材の表面に無機層状化合物の層を形成した構成のものを挙げることができる。
例えば、特許文献1には、合成スメクタイトおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を主な固体成分とする水系の分散性コーティング液と、このコーティング液により形成され、良好な水蒸気バリア性を実現可能とするコーティング膜と、このコーティング膜をガスバリア層として備える積層フィルムとが開示されている。特許文献1における合成スメクタイトが無機層状化合物に相当する。
また、特許文献2には、基材であるポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に、金属または酸化物の薄膜層(好ましくは蒸着膜層)を有し、この薄膜層上に無機層状化合物(好ましくは粘土鉱物)および樹脂を含有するコート層を有するガスバリア性積層フィルムが開示されている。すなわち、特許文献2に開示のガスバリア性積層フィルムでは、無機化合物層として、無機層状化合物を含有するガスバリア層(コート層)が用いられている。
特開2011-157523号公報 特開2018-176741号公報
ここで、例えば、無機層状化合物を含有するガスバリア層では、相対的に高温多湿の条件下では、特に水蒸気のガスバリア性(水蒸気バリア性)が低下する傾向にあることが知られている。それゆえ、ガスバリア構造体が、高温多湿の環境下での使用が想定される場合には、ガスバリア層においても、高温多湿の環境下で良好な水蒸気バリア性を実現することが求められる。
また、例えば、ガスバリア構造体がフラットパネルディスプレイまたは太陽電池等の分野に用いられるためには、高い透明性が要求されるが、それ以外の分野では、ガスバリア構造体の透明性は特に検討されていなかった。しかしながら、包装材の分野では、包装されている物品を確認するために、包装材にある程度の透光性(あるいは透明性)が要求される場合がある。
特許文献1では、良好な水蒸気バリア性を実現するコーティング膜(ガスバリア層)が開示されているが、高温多湿の条件下での水蒸気バリア性については特に検討がなされていない。また、特許文献1では、このコーティング膜(ガスバリア層)を備える積層フィルムの透光性については何ら検討されていない。
特許文献2では、40℃、相対湿度90%条件下での水蒸気透過度が2.0g/m2 ・day以下のコート層(ガスバリア層)が開示されているため、このコート層は、高温多湿の条件下であっても適当な水蒸気バリア性を有していると判断される。しかしながら、特許文献2では、このコート層を備える積層フィルムの透光性については何ら検討されていない。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、無機層状化合物を含有するガスバリア層を備えるガスバリア構造体において、高温多湿の条件下での良好なガスバリア性とともに、良好な透光性も併せて実現することを目的とする。
本発明に係るガスバリア構造体は、前記の課題を解決するために、基材上に、無機フィラーおよび樹脂材料を含有する複合材料層が形成された、ガスバリア構造体であって、前記樹脂材料がナイロン系樹脂であり、前記無機フィラーが無機層状化合物であり、前記複合材料層中の前記無機層状化合物の含有率が30~90重量%の範囲内であり、さらに、当該ガスバリア構造体における、40℃、相対湿度95%(以下95%RHと記載する)環境下での水蒸気透過度が1.0g/m2 ・day以下であり、かつ、全光線透過率が50%以上である構成である。
前記構成によれば、基材をナイロン系樹脂製とするとともに、前記複合材料層に含有される無機層状化合物の含有率を30~90重量%とすることにより、高温多湿条件下での水蒸気透過度の上限を低下させるとともに、構造体の全光線透過率を向上させることができる。これにより、無機層状化合物を含有するガスバリア層を備えるガスバリア構造体において、高温多湿の条件下での良好なガスバリア性とともに、良好な透光性も併せて実現することができる。
また、本発明には、前記構成のガスバリア構造体をガスバリアフィルムとして備えるフィルム積層体が含まれる。
本発明の上記目的、他の目的、特徴、および利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
本発明では、以上の構成により、無機層状化合物を含有するガスバリア層を備えるガスバリア構造体において、高温多湿の条件下での良好なガスバリア性とともに、良好な透光性も併せて実現することができる、という効果を奏する。
図1A,図1Bは、本発明の代表的な実施の形態に係るガスバリア構造体の一例であるガスバリアフィルムの構成を示す模式的断面図である。 図2A~図2Cは、図1に示すガスバリアフィルムを備えるフィルム積層体の代表的な構成を示す模式的断面図である。 本発明の代表的な実施例の結果である、ガスバリア構造体の複合材料層における無機層状化合物の含有率と、当該ガスバリア構造体の水蒸気透過度との関係を示すグラフである。 本発明の代表的な実施例の結果である、ガスバリア構造体の複合材料層におけるモンモリロナイトの含有率と、当該ガスバリア構造体の水蒸気透過度との関係を示すグラフである。 本発明の代表的な実施例の結果である、ガスバリア構造体の複合材料層における水の含有率と、当該ガスバリア構造体の水蒸気透過度との関係を示すグラフである。 本発明の代表的な実施例の結果である、ガスバリア構造体の複合材料層におけるアンモニアの含有率と、当該ガスバリア構造体の水蒸気透過度との関係を示すグラフである。 本発明の代表的な実施例の結果である、ガスバリア構造体の複合材料層における低分子量アミン化合物の添加率と、当該ガスバリア構造体の水蒸気透過度との関係を示すグラフである。 本発明の代表的な実施例の結果である、ガスバリア構造体の複合材料層の厚さ(乾燥前)と、当該ガスバリア構造体の全光線透過率との関係を示すグラフである。
本開示に係るガスバリア構造体は、基材上に、無機フィラーおよび樹脂材料を含有する複合材料層が形成された、ガスバリア構造体であって、前記樹脂材料がナイロン系樹脂であり、前記無機フィラーが無機層状化合物であり、前記複合材料層中の前記無機層状化合物の含有率が30~90重量%の範囲内であり、さらに、当該ガスバリア構造体における、40℃、相対湿度95%(95%RH)環境下での水蒸気透過度が1.0g/m2 ・day以下であり、かつ、全光線透過率が50%以上である構成である。
前記構成によれば、基材をナイロン系樹脂製とするとともに、前記複合材料層に含有される無機層状化合物の含有率を30~90重量%とすることにより、高温多湿条件下での水蒸気透過度の上限を低下させるとともに、構造体の全光線透過率を向上させることができる。これにより、無機層状化合物を含有するガスバリア層を備えるガスバリア構造体において、高温多湿の条件下での良好なガスバリア性とともに、良好な透光性も併せて実現することができる。
前記構成のガスバリア構造体においては、前記無機層状化合物がスメクタイトである構成であってもよい。
前記構成によれば、無機層状化合物としてスメクタイトを用いることで、高温多湿の条件下におけるより良好なガスバリア性とより良好な透光性とを実現することができる。
また、前記構成のガスバリア構造体においては、前記スメクタイトが、モンモリロナイト、スティーブンサイト、サポナイト、ヘクトライトからなる群から選択される少なくとも1種以上である構成であってもよい。
前記構成によれば、スメクタイトとして前述したいずれか1種を少なくも用いることで、高温多湿の条件下におけるより良好なガスバリア性とより良好な透光性とを実現することができる。
また、前記構成のガスバリア構造体においては、前記スメクタイトが、前記モンモリロナイトおよび前記スティーブンサイトの混合物であるとともに、当該混合物中における前記モンモリロナイトの含有率が65重量%以上100重量%未満である構成であってもよい。
前記構成によれば、スメクタイトとして、モンモリロナイトおよびスティーブンサイトの混合物を用いるとともにモンモリロナイトの含有率を特定することにより、高温多湿の条件下におけるより良好なガスバリア性とより良好な透光性とを実現することができる。
また、前記構成のガスバリア構造体においては前記スメクタイトが、層間陽イオンとしてアンモニウムイオン(NH4 +)およびプロトン(H+)の少なくとも一方を含有する構成であってもよい。
前記構成によれば、スメクタイトの層間陽イオンをナトリウムイオンからアンモニウムイオンまたはプロトンに置換することになる。それゆえ、従来のリチウムイオンのような相対的に高価な材料(イオン)を用いることなく、複合材料層の耐水性を向上することができる。
また、前記構成のガスバリア構造体においては、前記複合材料層は、水分の含有量が2.5重量%以下である構成であってもよい。
前記構成によれば、乾燥後の複合材料層における水分の含有量の上限を規定することにより、複合材料層が十分に乾燥していると判断することができる。それゆえ、得られるガスバリア構造体において良好な水蒸気バリア性を実現することができる。
また、前記構成のガスバリア構造体においては、前記複合材料層は、アンモニアの含有量が1.0重量%以下である構成であってもよい。
前記構成によれば、複合材料層におけるアンモニアの含有量の上限を規定することにより、アンモニウムイオンの存在による多湿環境下での水の誘引を抑制することができる。それゆえ、得られるガスバリア構造体において良好な水蒸気バリア性を実現することができる。
また、前記構成のガスバリア構造体においては、前記樹脂材料には、分子量が200以下の水溶性の低分子量アミン化合物が添加されている構成であってもよい。
前記構成によれば、低分子量アミン化合物を添加することで、得られるガスバリア構造体において水蒸気バリア性が向上することに加え、複合材料層における基材からの剥離強度の改善も期待することができる。
また、前記構成のガスバリア構造体においては、前記複合材料層の厚さが10nm以上5μm以下である構成であってもよい。
前記構成によれば、複合材料層の厚さを前記の範囲内に限定することで、高温多湿の条件下での良好なガスバリア性と良好な透光性とを両立することができる。
また、前記構成のガスバリア構造体においては、前記基材が、無機蒸着層を有する樹脂フィルムである構成であってもよい。
前記構成によれば、基材が樹脂フィルムであるので、得られるガスバリア構造体をガスバリアフィルムとすることができる。また、樹脂フィルムには無機蒸着層が形成されているので、得られるガスバリア構造体は、良好なガスバリア性を実現できるとともに、基材上に形成される複合材料層の密着性を向上させることができる。
本開示に係るフィルム積層体は、前記構成のガスバリア構造体をガスバリアフィルムとして備える構成である。
前記構成によれば、高温多湿の条件下での良好なガスバリア性と良好な透光性とを両立するガスバリアフィルムを備えるフィルム積層体を得ることができるので、当該フィルム積層体においても、積層する他のフィルムを選択することで、高温多湿の条件下での良好なガスバリア性と良好な透光性とを両立することができる。
以下、本発明の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
[ガスバリア構造体]
本開示に係るガスバリア構造体は、基材上に、無機フィラーおよび樹脂材料を含有する複合材料層が形成された構成である。言い換えれば、本開示に係るガスバリア構造体は、基材の層と複合材料層とを備える少なくとも2層の構成であればよい。したがって、本開示に係るガスバリア構造体は、基材および複合材料層以外の層を備えてもよい。
ガスバリア構造体の具体的な構成は特に限定されないが、図1A,図1Bに示すように、フィルム状のものすなわちガスバリアフィルム10A,10Bを挙げることができる。本実施の形態では、ガスバリアフィルム10A,10Bを挙げて、本開示に係るガスバリア構造体について具体的に説明する。図1Aに示すガスバリアフィルム10Aは、基材11、複合材料層12、および無機蒸着層13を備えており、図1Bに示すガスバリアフィルム10Bは、基材11および複合材料層12を備えているが、無機蒸着層13は備えていない。
基材11の形態は特に限定されず、フィルム状、平板状、容器状等のさまざま形態をとり得る。また、基材11の具体的な種類は特に限定されず、ガスバリア構造体の用途に応じて、様々な種類のものを用いることができる。前記の通り、ガスバリア構造体がガスバリアフィルム10A,10Bであれば、基材11としては樹脂フィルムを用いることができる。
代表的な樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(TPX)等のポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T、ナイロンM5T等のナイロン(ポリアミド);トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂;ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリカーボネート(PC);等が挙げられるが特に限定されない。また、これら樹脂(プラスチック)材料を2種類以上組み合わせたもの(ポリマーアロイ)が用いられてもよいし、公知の添加剤等を含有してもよい。
基材11としての樹脂フィルムの厚さは特に限定されず、ガスバリアフィルム10A,10Bの用途等に応じて適宜設定することができる。また、樹脂フィルムは単層であってもよいが、2層以上の複数層であってもよい。基材11が樹脂フィルムであれば、通常は柔軟性を有するが、基材11が板状であれば剛性を有する。基材11が種々の容器状であれば、容器の形態によって柔軟性を有してもよいし剛性を有してもよい。基材11が板状または容器状であるときの厚さについても特に限定されない。
また、基材11における厚さ以外の諸条件または物性についても特に限定されない。ただし、後述するように、ガスバリア構造体の全光線透過率は、複合材料層12の透光性よりも基材11の透光性に影響を受ける。そのため、基材11についても全光線透過率を設定することが好ましい。基材11が樹脂フィルムである場合に、後述する実施例5(および図8)に示すように、当該樹脂フィルムに形成される複合材料層12の厚さ(ただし乾燥前の塗膜の厚さの実測値)を大きくしても、ガスバリア構造体の全光線透過率には顕著な低下は見られないことが明らかとなっている。ガスバリア構造体の全光線透過率は50%以上であればよいので、基材11の全光線透過率も50%以上であればよい。
基材11としての樹脂フィルムには、図1Aに示すように、複合材料層12を形成する側の面に無機蒸着層13が形成されてもよい。すなわち、本開示においては、複合材料層12の形成面に無機蒸着層13を有する樹脂フィルムが基材11として用いられてもよい。もちろん図1Bに示すように、基材11における複合材料層12の形成面に無機蒸着層13が形成されていなくてもよい。
無機蒸着層13の具体的な種類としては、例えば、シリカ(酸化ケイ素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、マグネシア(酸化マグネシウム)、チタニア(酸化チタン)、酸化スズ、酸化セリウム、酸化亜鉛、スピネル(MgAl24等の酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物;フッ化カルシウム、フッ化セリウム等のフッ化物;酸窒化ケイ素等の酸窒化物;等が挙げられるが特に限定されない。代表的には、シリカまたはアルミナ等の酸化物の蒸着層が好適に用いられる。
無機蒸着層13の厚さは特に限定されないが、厚さが大きすぎると、基材11としての柔軟性等に影響を及ぼす恐れがあるため、例えば2μm以下であればよく、好ましくは1μm以下であればよい。樹脂フィルム(基材11)に無機蒸着層13を形成する方法も特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD法);プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法等の化学気相成長法(CVD法);等の公知の方法を好適に用いることができる。
複合材料層12は、前記の通り、無機フィラーおよび樹脂材料を含有するものであればよいが、本開示においては、樹脂材料がナイロン系樹脂であり、無機フィラーが無機層状化合物である。複合材料層12は、基本的には、樹脂材料であるナイロン系樹脂をバインダー成分とし、このバインダー成分中に無機フィラーである無機層状化合物が分散している構成である。したがって、複合材料層12は、無機フィラーおよび樹脂材料から少なくとも構成されていればよいが、これら以外の公知の成分を含有してもよい。
複合材料層12を構成する無機フィラーは、前記の通り無機層状化合物であればよいが、具体的には、例えば、粘土鉱物、合成ヘクトライト、変性ベントナイト等の層状ケイ酸塩;アルミニウム鱗片、酸化鉄鱗片、チタン酸ストロンチウム鱗片、銀鱗片、ステンレス鱗片、亜鉛鱗片等の金属または金属化合物の鱗片状(フレーク状、薄片状)粒子;アルミニウム箔、スズ箔、青銅箔、ニッケル箔、インジウム箔等の金属箔;層状シリカ、六方晶窒化ホウ素、グラファイト、シリコン鱗片、層状ニオブ・チタン酸塩等の層状非金属系無機化合物;等を挙げることができるが、特に限定されない。これら無機層状化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
特に本開示では、無機層状化合物としては、粘土鉱物が好適に用いられる。具体的な粘土鉱物としては、例えば、リザーダイト、アメサイト、カオリナイト、ディッカイト、ハロイサイト、パイロフィライト等の1:1層型;モンモリロナイト、スティーブンサイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、ノントロナイト、ソーコナイト、3八面体型バーミキュライト、2八面体型バーミキュライト、タルク、金雲母、黒雲母、レピドライト、イライト、白雲母、パラゴナイト、クリントナイト、マーガライト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、ドンバサイト、クッケアイト(クーカイト)、スドーアイト等の2:1層型;アンチゴライト、グリーナライト、カリオピライト等のミスフィット類;等を挙げることができるが、特に限定されない(クリントナイトは、2:1層型だけでなくミスフィット類にも分類できる)。これら粘土鉱物は、無機層状化合物として単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよいし、粘土鉱物以外の1種類以上の無機層状化合物と適宜組み合わせて用いてもよい。
本開示では、無機層状化合物としては、2:1層型の粘土鉱物を好適に用いることができ、中でもスメクタイトを特に好適に用いることができる。スメクタイトは、層間に陽イオンを交換可能に保持しており、この層間陽イオンにより水分子が層間に取り込まれることで層間が拡大して膨潤する性質を有する。具体的なスメクタイトとしては、例えば、モンモリロナイト、スティーブンサイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、ノントロナイト、ソーコナイト等を挙げることができる。これらスメクタイトは1種類のみ用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
本実施の形態では、これらスメクタイトの中でも、モンモリロナイト、スティーブンサイト、サポナイト、ヘクトライトからなる群から選択される少なくとも1種以上が好適に用いられる。代表的には、例えば、モンモリロナイトおよびスティーブンサイトの組合せを好適に用いることができるが、モンモリロナイトのみであってもよいし、他のスメクタイト1種類のみであってもよいし、モンモリロナイトおよびスティーブンサイト以外のスメクタイトの組合せであってもよい。このスメクタイトの組合せは2種類に限定されず3種類以上であってもよい。
無機層状化合物がスメクタイトである場合、層間陽イオンの種類は特に限定されない。一般的には、スメクタイトの層間陽イオンはナトリウムイオン(Na+ )であるが、このナトリウムイオンが他の陽イオンに置換されてもよい。置換し得る他の陽イオンとしては、例えば、参考文献1:国際公開WO2011/152500号明細書に開示されているように、リチウムイオン(Li+ )を挙げることができるが、本開示においては、特に好ましくはアンモニウムイオン(NH4 +)を挙げることができる。
参考文献1に記載されるように、層間陽イオンをナトリウムイオンからリチウムイオンに置換して熱処理することにより、耐水性を向上することができる。ただし、リチウムは相対的に高価であるとともに、リチウムイオンに起因する、水分の誘引を抑制するためには、熱処理温度も比較的高めに設定する必要がある。これに対して、アンモニウムイオンを含む化合物はリチウムよりも安価であり、また、置換後の熱処理温度を相対的に低くすることが可能である。そして、熱処理によって、置換されたアンモニウムイオンからアンモニア(NH3 )が脱離することにより、層間陽イオンは最終的にプロトン(H+ )となるため、良好な耐水性を実現することが可能となる。
したがって、本開示に係るガスバリア構造体(ガスバリアフィルム10A,10B)では、複合材料層12中の無機層状化合物(無機フィラー)がスメクタイトであるときに、層間陽イオンは、アンモニウムイオン(NH4 +)およびプロトン(H+)の少なくとも一方であることが好ましい。ガスバリア構造体の用途等によって要求される耐水性に応じて、熱処理の条件を適宜設定することにより、層間陽イオンをアンモニウムイオンからプロトンにする比率を調整することができる。それゆえ、複合材料層12中のスメクタイトにおける層間陽イオンとしては、アンモニウムイオンおよびプロトンが共存してもよい。もちろん、熱処理前であれば層間陽イオンのほとんどがアンモニウムイオンであり、十分に熱処理すれば層間陽イオンのほとんどがプロトンとなり得る。また、元々の層間陽イオンであるナトリウムイオンが一部残存してもよいことはいうまでもない。
複合材料層12を構成する樹脂材料であるナイロン系樹脂の具体的な種類は特に限定されない。本開示において好適に用いることのできるナイロン系樹脂としては、例えば、前述した基材11の一例として挙げた各種ナイロン(ポリアミド)を好適に用いることができる。これらナイロン系樹脂は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜ブレンドしたポリマーアロイとして用いてもよい。
複合材料層12を構成するナイロン系樹脂の代表的な一例としては、水溶性ナイロンを挙げることができる。水溶性ナイロンの具体的な構成は特に限定されないが、例えば、モノマーとしてアミン化合物を用いたもの、あるいは、モノマーとしてアルキレンオキサイド化合物を用いたものを挙げることができる。アミン化合物を多く用いた水溶性ナイロンであれば、複合材料層12のガスバリア性をより良好なものにすることができ、アルキレンオキサイド化合物を多く用いた水溶性ナイロンであれば、複合材料層12の耐剥離性をより良好なものとすることができる。
また、複合材料層12を構成するバインダー成分としては、ナイロン系樹脂以外の樹脂材料を含有してもよい。つまり、本開示においては、バインダー成分の主成分としてナイロン系樹脂が用いられればよいが、諸条件に応じて、ナイロン系樹脂に他の樹脂材料がブレンドされてもよい。他の樹脂材料は特に限定されないが、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート等を挙げることができる。これら他の樹脂材料は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。これら他の樹脂材料とナイロン系樹脂とを混合して熱処理することで、複合材料層12に架橋構造を形成することができるので、得られるガスバリア構造体の耐湿性を向上することができる。
ナイロン系樹脂に対する他の樹脂材料の添加量は特に限定されず、複合材料層12によるガスバリア性を妨げない範囲内であればよいが、例えば10重量%以下を挙げることができる。バインダー成分がナイロン系樹脂を主成分とするのであれば、他の樹脂材料は50重量%未満とすることもできるが、ナイロン系樹脂に由来する良好な物性を実現する観点では、バインダー成分が含有するナイロン系樹脂は例えば90重量%以上であることが好ましい。
また、ナイロン系樹脂には、公知の添加剤が含有されてもよい。具体的な添加剤は特に限定されないが、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、着色剤、増粘剤、無機層状化合物以外の公知のフィラー等を挙げることができる。複合材料層12のバインダー成分である樹脂材料を第一の成分とし、無機フィラーである無機層状化合物を第二の成分と見なしたときに、これら添加剤は、複合材料層12を構成する第三の成分と見なしてもよい。言い換えれば、前記の通り、複合材料層12は、少なくとも無機フィラーおよび樹脂材料を含有しているが、公知の添加剤等をさらに含有してもよい。
本開示においては、前述した第三の成分の代表的な一例として増粘剤を挙げることができる。増粘剤は、単に粘度を上昇させるだけでなく糸曳性(長く糸状に伸びる性質)を付与できる材料であることが好ましい。具体的な増粘剤は特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレンオキサイド等を挙げることができる。これら増粘剤は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。これらのうちPVCは、複合材料層12(ガスバリア構造体)の耐湿性の観点から完全けん化品を用いることが望ましい。
本開示においては、ガスバリア構造体の水蒸気バリア性をより良好なものとする観点では、ナイロン系樹脂に対して、分子量が200以下の水溶性の低分子量アミン化合物を添加することができる。具体的な低分子量アミン化合物としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミンの低分子量ジアミン;2,6-ジアミノアプロン酸等の低分子量ジアミノカルボン酸;ジエタノールアミン等の低分子量アミノアルコール;等を挙げることができるが、特に限定されない。これら低分子量アミン化合物は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
ナイロン系樹脂に対する低分子量アミン化合物の添加量は特に限定されないが、ナイロン系樹脂の重量を基準として添加量を設定することができる。具体的には、ナイロン系樹脂の重量をWA とし、低分子量アミン化合物の重量をWB としたときに、低分子量アミン化合物の添加率RB は、ナイロン系樹脂の重量WA と低分子量アミン化合物の重量WB との和に対する低分子量アミン化合物の重量WB の百分率(RB =WB /(WA +WB )×100)で表すことができる(単位:重量%)。なお、前記の通り、ナイロン系樹脂以外の樹脂をバインダー成分として含む場合には、バインダー成分(樹脂成分)全体の重量を基準として(ナイロン系樹脂の重量WA をバインダー成分全体の重量に置き換えて)低分子量アミン化合物の添加率RB を設定してもよい。
低分子量アミン化合物の添加率RB は特に限定されず、良好な水蒸気バリア性を発揮できる範囲内であればよいが、例えば後述する実施例4(および図7)に示すように、20~75重量%の範囲内を挙げることができ、好ましくは40~70重量%の範囲内を挙げることができる。低分子量アミン化合物の含有量がこの範囲内であれば、得られるガスバリア構造体において水蒸気バリア性が向上することに加え、複合材料層12における基材11からの剥離強度の改善も期待することができる。
低分子量アミン化合物が良好な水蒸気バリア性を実現できるとともに、剥離強度の改善にも寄与する理由は現時点では明らかではないが、(1)無機層状化合物に含まれる対イオンであるアンモニウムイオン(NH4 +)がプロトン(H+ )を放出し、低分子量アミン化合物のアミノ基が、より疎水的なアンモニウム型の対イオンを形成することで、複合材料層12の水和が抑制されること、並びに、(2)樹脂材料の主成分であるナイロン系樹脂の親水基(例えばアミノ基)と低分子量アミン化合物のアミノ基とが水素結合を形成することで、バインダー成分(樹脂材料)の凝集力が増大するとともに、前記の疎水的なアンモニウム型の対イオンによるバインダー成分と無機層状化合物との凝集力も増大すること、という2つの理由が推測される。
本開示に係るガスバリア構造体(ガスバリアフィルム10A,10B)においては、複合材料層12が含有する無機層状化合物の比率(含有率)は、30~90重量%の範囲内であればよいが、例えば後述する実施例1(および図3)に示すように、45~85重量%の範囲内であってもよく、50~85重量%の範囲内であってもよく、60~80重量%の範囲内であってもよい。高温多湿の環境下で良好な水蒸気バリア性を実現する観点では、60重量%を超えて80重量%未満となる範囲内であってもよいし、65~75重量%の範囲内であってもよい。無機層状化合物温含有率は、使用環境に求められる水蒸気バリア性に応じて、その上限値または下限値を適宜選択することができる。
複合材料層12が含有する無機層状化合物がスメクタイトである場合であって、例えば、高温多湿の環境下で良好な水蒸気バリア性を実現する観点では、スメクタイトとしては、例えば、前述したモンモリロナイトおよびスティーブンサイトの混合物を好適に用いることができる。このとき、当該混合物中におけるモンモリロナイトおよびスティーブンサイトの配合比は特に限定されず、種々の条件に応じて適宜の範囲内に設定することができる。
代表的な一例としては、後述する実施例2(および図4)に示すように、混合物中におけるモンモリロナイトの含有率が65重量%以上100重量%未満となる配合比を挙げることができる。言い換えれば、混合物におけるスティーブンサイトの含有率は0重量%以上35重量%未満であればよい。モンモリロナイトの含有率が65質量%を超えることにより、40℃95%RH環境下という高温多湿の環境下でも良好な水蒸気バリア性(例えば、0.07g/m2 ・day以下)を実現することができる。なお、モンモリロナイトの含有率が100重量%すなわちスメクタイト(無機層状化合物)としてモンモリロナイトのみが用いられても、良好な水蒸気バリア性を実現することができる。また、ガスバリア構造体の使用条件等によっては、後述する実施例2に例示するようにスティーブンサイトの含有率が100重量%であってもよい。
本開示に係るガスバリア構造体(ガスバリアフィルム10A,10B)における複合材料層12の具体的な条件は特に限定されず、当該ガスバリア構造体の用途等に応じて好適な条件を適宜設定することができる。例えば、複合材料層12の厚さは特に限定されないものの、代表的には、乾燥後の厚さが10nm(0.01μm)以上5μm以下の範囲内であればよく、上限値は3μm以下であってもよいし、2μm以下であってもよい。複合材料層12の厚さが10nm未満であると、諸条件にもよるが当該複合材料層12が薄すぎて十分なガスバリア性を実現できない場合がある。一方、複合材料層12の厚さが5μmを超えると、諸条件にもよるが厚さに見合ったガスバリア性を実現できないだけでなく、例えば基材11が樹脂フィルムであれば、複合材料層12が厚くなり過ぎて十分な柔軟性が得られなくなる可能性がある。
複合材料層12の形成方法、すなわち、ガスバリア構造体(ガスバリアフィルム10A,10B)の製造方法は特に限定されず、基材11上に、無機フィラーとしての無機層状化合物と、樹脂材料(バインダー成分)としてのナイロン系樹脂とを含有する複合材料層12を公知の方法で形成すればよい。代表的には、無機層状化合物およびナイロン系樹脂を含有する塗工液を公知の方法で調製し、この塗工液を公知の方法で基材11の表面上(無機蒸着層13を有する場合には、基材11における無機蒸着層13の上)に形成し、乾燥すればよい。
代表的な塗工液としては、無機層状化合物およびナイロン系樹脂を公知の溶剤に分散させて調製した分散液を挙げることができる。塗工液における無機層状化合物およびナイロン系樹脂の濃度(塗工液の組成)は特に限定されず、塗工方法または乾燥方法等の諸条件に応じて適宜設定することができる。塗工液には、必要に応じて無機層状化合物およびナイロン系樹脂以外の成分が含まれてもよい。また、溶剤(分散媒)の種類も特に限定されず、無機層状化合物およびナイロン系樹脂の種類に応じて適宜設定することができる。後述する実施例に示すように、溶剤(分散媒)としては少なくとも水が用いられ、これ以外に、アルコールまたは他の水溶性有機溶媒等を併用することができる。
塗工液の塗工方法としては、バーコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、ラミナーフローコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、ナイフコーティング、カーテンコーティング、ロッドコーティング、エアードクターコーティング、ブレードコーティング、コンマコーティング等の公知のコーティング方法を挙げることができるが特に限定されない。
塗工された塗膜の乾燥方法としては、加熱乾燥、減圧乾燥、またはこれらの組合せ等を挙げることができるが、特に限定されない。加熱または減圧の条件(例えば、温度、時間、圧力)も特に限定されず、塗工液の組成または基材11の種類等の諸条件に応じて適宜設定することができる。なお、前述したように、無機層状化合物がスメクタイトであり、層間陽イオンがアンモニウムイオン(NH4 +)である場合には、熱処理によりアンモニウムイオンからアンモニア(NH3 )を脱離させるが、この熱処理工程と塗膜の乾燥工程とをまとめて1工程で実施してもよい。
複合材料層12を塗工液により形成する場合には、乾燥前の塗工液の厚さは、乾燥後の厚さとの間に相関関係を有する。例えば、塗工液の固形分、すなわち、少なくとも無機層状化合物およびナイロン系樹脂(他の無機フィラーまたは他の樹脂材料を併用する場合には、これら他の成分も固形分に含む)の濃度が、後述する実施例1~4に示すように約3重量%または実施例5に示すように約2重量%であれば、乾燥前の塗膜の厚さ(膜厚)は、乾燥後の膜厚(溶剤/分散媒が実質的に除去された厚さ)に比例する。
後述する実施例では、例えば約3重量%の固形分濃度で実測100μmの膜厚で塗膜を形成したときには、乾燥後の膜厚(複合材料層12の厚さ)は、1.3~2.8μmの範囲内程度となり、約2重量%の固形分濃度で実測100μmの膜厚で塗膜を形成したときには、乾燥後の膜厚は0.9~1.9μmの範囲内程度となることが明らかとなっている。したがって、本実施の形態では、塗工液の固形分濃度(重量%濃度)の数値に基づいて、複合材料層12の乾燥前の膜厚から乾燥後の膜厚を近似する計算値を算出することができる。
形成された複合材料層12においては、水の残存量およびアンモニアの残存量も規定することができる。すなわち、乾燥後の複合材料層12において、水の残存量の上限値を規定することで、当該複合材料層12が十分に乾燥していると判断することができる。また、前述したように、無機層状化合物がスメクタイトであり、層間陽イオンがアンモニウムイオン(NH4 +)である場合であって、熱処理工程と乾燥工程とをまとめて実施する場合には、乾燥後の複合材料層12において、アンモニアの残存量の上限値を規定することで、当該複合材料層12においてアンモニアが十分に脱離していると判断することができる。
複合材料層12における水の残存量の上限値としては、例えば、後述する実施例3(および図5)に示すように、2.5重量%以下であればよい。複合材料層12における水の含有量がこの数値以下であれば、複合材料層12が十分に乾燥していると判断することができる。また、複合材料層12におけるアンモニアの残存量の上限値としては、後述する実施例3(および図6)に示すように、1.0重量%以下であればよい。複合材料層12におけるアンモニアの含有量がこの数値以下であれば、アンモニウムイオンの存在による多湿環境下での水の誘引を抑制することができる。なお、複合材料層12における水またはアンモニアの含有量の測定方法は特に限定されないが、後述するように、水の含有量はカールフィッシャー水分計で測定する方法を挙げることができ、アンモニアの含有量はイオンクロマトグラフィーにより測定する方法を挙げることができる。
このように、本開示に係るガスバリア構造体としてのガスバリアフィルム10A,10Bは、図1Bに示すように、基材11および複合材料層12の少なくとも2層を有する構成であり、好ましい一例として、図1Aに示すように、基材11および複合材料層12の間に無機蒸着層13を有する構成を挙げることができる。しかしながら、ガスバリアフィルム10A,10B(ガスバリア構造体)の具体的な構成はこれらに限定されず、基材11、複合材料層12および無機蒸着層13以外の他の層を有する構成であってもよい。
本開示に係るガスバリア構造体(ガスバリアフィルム10A,10B)は、前述した構成を有しており、高温多湿の条件下での良好なガスバリア性とともに、良好な透光性も併せて実現することができる。本開示に係るガスバリア構造体の水蒸気透過度は、高温多湿の条件下である40℃95%RH環境下で、少なくとも1.0g/m2 ・day以下であればよく、好ましくは0.1g/m2 ・day以下であり、より好ましくは0.07g/m2 ・day以下であればよい。
なお、後述する実施例1(および図3)では、複合材料層12において無機層状化合物の含有率が0%であるときの水蒸気透過度は0.20g/m2 ・dayであり(図3には図示せず)、1.0g/m2 ・day以下であるが、水蒸気透過度は、複合材料層12だけでなく基材11のガスバリア性にも影響を受ける。したがって、実施例1では、無機層状化合物の含有率が0%である実験結果は、実施例1における基材11の影響を考慮するための「参考例」と位置付けられ、本願発明の範囲内には入らない。
また、本開示に係るガスバリア構造体の全光線透過率は50%以上であればよく、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。前述したように、ガスバリア構造体を構成する基材11の全光線透過率は50%以上であればよいが、例えば、後述する実施例5(および図8)に示すように、本開示に係るガスバリア構造体では、複合材料層12の厚さ(ただし乾燥前の塗膜の厚さの実測値)が0μmすなわち複合材料層12が形成されない基材11のみの場合と比較しても、複合材料層12の厚さを大きくしてもガスバリア構造体の全光線透過率については顕著な低下は見られない。
言い換えれば、ガスバリア構造体の全光線透過率は基材11の全光線透過率に実質的に依存するということができる。それゆえ、ガスバリア構造体の全光線透過率が50%以上(好ましくは60%以上、70%以上または90%以上)であるときには、基11材の全光線透過率も50%以上(好ましくは60%以上、70%以上または90%以上)であればよい。それゆえ、本開示に係るガスバリア構造体では、基材11が良好な透光性を有していれば、当該ガスバリア構造体も良好な透光性を実現することも可能である。
なお、後述する実施例5の結果に基づけば、基材11の全光線透過率を基準として、複合材料層12の厚さ(乾燥前の塗膜の厚さ)を変化させたときには、厚さ1μm当たりの増加で基材11の全光線透過率は0.5~1%程度の範囲内で低下する。したがって、本開示においては、例えば、基材11の全光線透過率が51%であって複合材料層12の厚さが1μmのときに、ガスバリア構造体の全光線透過率は50%以上であればよいと定義することが可能である。
このように、本開示に係るガスバリア構造体は、基材11をナイロン系樹脂製とするとともに、複合材料層12に含有される無機層状化合物の含有率が30~90重量%とすることにより、高温多湿条件下での水蒸気透過度の上限を低下させることができる。そのため、高温多湿の条件下で良好なガスバリア性(特に水蒸気バリア性)を発揮することができる。
しかも、本開示に係るガスバリア構造体は、当該構造体の全光線透過率が50%以上であるため、少なくとも半透明状態を実現することができる。そのため、ガスバリア構造体を包装材料として用いた場合には、包装された物品を外部から容易に確認することができる。これにより、包装材料としての利便性を向上することができる。
[フィルム積層体]
次に、本開示に係るガスバリア構造体をガスバリアフィルム10A,10Bとして備えるフィルム積層体について、図2A~図2Cを参照して具体的に説明する。図2A~図2Cに示すように、本実施の形態に係るフィルム積層体20A~20Cは、前述したガスバリアフィルム10Aを「ガスバリア層」として備える積層構造を有している。
なお、図1Aに示すように、ガスバリアフィルム10Aは、基材11、無機蒸着層13、および複合材料層12の3層構造を有しているが、図2A~図2Cでは、積層される他のフィルムとの区別を明確にする便宜上、ガスバリアフィルム10Aを網掛けした「単一のフィルム」として図示する。また、図2A~図2Cにおいては、ガスバリアフィルム10Aを、図1Bに示すガスバリアフィルム10Bまたは他の構成のガスバリアフィルムに置き換え可能であることはいうまでもない。
例えば、図2Aに示すフィルム積層体20Aは、保護フィルム21、熱融着フィルム22およびガスバリアフィルム10Aを備えており、保護フィルム21および熱融着フィルム22の間にガスバリアフィルム10Aが挟持された3層構造となっている。保護フィルム21は、当該フィルム積層体20Aを袋体に構成したときに、当該袋体の外面になり、熱融着フィルム22は、当該袋体の内面になる。なお、説明の便宜上、保護フィルム21の側すなわち袋体の外面となる側を「上側」とし、熱融着フィルム22の側すなわち袋体の内面となる側を「下側」とする。
また、図2Bに示すフィルム積層体20Bは、保護フィルム21、熱融着フィルム22、および2層のガスバリアフィルム23およびガスバリアフィルム10Aを備えており、保護フィルム21および熱融着フィルム22の間に2層のガスバリアフィルム23,10Aが挟持された4層構造となっている。フィルム積層体20Bは、上側から下側に向かって、保護フィルム21、ガスバリアフィルム23、ガスバリアフィルム10A、および熱融着フィルム22の順で積層されている。
図2Bに示す例では、下側のガスバリアフィルム10Aが本開示に係るガスバリア構造体であるが、上側のガスバリアフィルム23は、本開示に係るガスバリア構造体とは異なる構成であればよい。なお、ガスバリアフィルム10Aは、下側(熱融着フィルム22に接する側)ではなく、上側(保護フィルム21に接する側)であってもよい。また、図示しないが、保護フィルム21および熱融着フィルム22の間には、3層以上のガスバリアフィルムが挟持され、そのうち少なくとも1層がガスバリアフィルム10A(ガスバリア構造体)であってもよい。
図2Aに示すフィルム積層体20Aおよび図2Bに示すフィルム積層体20Bは、保護フィルム21、熱融着フィルム22および1層以上のガスバリアフィルム10Aを備える構成であるが、フィルム積層体の具体的な構成は、これらに限定されない。例えば、図2Cに示すフィルム積層体20Cのように、上側がガスバリアフィルム10Aであり下側が熱融着フィルム22である2層構造であってもよいし、図示しないが上側が保護フィルム21であり下側がガスバリアフィルム10Aであってもよいし、保護フィルム21、熱融着フィルム22、ガスバリアフィルム10A以外の構成のフィルムが積層された4層以上の構成であってもよい。
また、図2A~図2Cに示すフィルム積層体20A~20Cでは、ガスバリアフィルム10Aとして本開示に係るガスバリア構造体を1層備える構成であるが、フィルム積層体の具体的な構成はこれに限定されない。例えば、図2Aに示す構成のフィルム積層体20Aにおいて、本開示に係るガスバリア構造体を2層以上積層したものをガスバリアフィルム10Aとして用いてもよい。
保護フィルム21は、袋体の外面(表面)を保護するための層(外面保護層)であればよく、その具体的な材料は袋体の用途に応じて適宜選択され、特に限定されないが、代表的には、ある程度の耐久性を有する各種の樹脂を挙げることができる。具体的な樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(ポリアミド、PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリサルフォン(PSF)、超高分子量ポリエチレン(U-PE,UHPEまたはUHMWPE)等を挙げることができるが、これらに特に限定されない。
これら樹脂は単独で用いられてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせたポリマーアロイとして用いられてもよい。ポリマーアロイには、保護フィルム21として好適な樹脂以外の樹脂が含まれてもよい。さらに、保護フィルム21には、前述した樹脂以外の成分(各種添加剤等)が含まれてもよい。つまり、保護フィルム21は、前述した樹脂のみで構成されてもよいが、他の成分を含む樹脂組成物で構成されてもよい。
図2A~図2Cに示すフィルム積層体20A~20Cでは、保護フィルム21は1層(単層)の樹脂フィルムとして構成されているが、複数の樹脂フィルムを積層して構成されてもよい。保護フィルム21の厚さは特に限定されず、袋体の外面を保護できる範囲の厚さを有していればよい。
熱融着フィルム22は、フィルム積層体20A~20C同士を対向させて貼り合わせるための層(接着層)であるとともに、袋体の内面を保護する層(内面保護層)としても機能する。接着層としての熱融着フィルム22について説明すると、例えば、図2Aに示す3層構造のフィルム積層体20Aであれば、当該フィルム積層体20Aの熱融着フィルム22同士を対面させて加熱することにより、フィルム積層体20Aの内面同士を熱融着することができる。それゆえ、対面させたフィルム積層体20Aの周囲を熱融着することで、当該フィルム積層体20Aを袋体に構成することができる。
また、内面保護層としての熱融着フィルム22について説明すると、前述した例と同様に図2Aに示す3層構造のフィルム積層体20Aであれば、ガスバリアフィルム10Aの一方の面(外面)は、保護フィルム21で保護されているが、他方の面(内面)は熱融着フィルム22により保護されることになる。したがって、ガスバリアフィルム10Aから見れば、保護フィルム21は「外面保護層」として機能し、熱融着フィルム22は前記の通り「内面保護層」として機能する。
熱融着フィルム22として用いられる材料は、加熱により溶融して接着可能な熱融着性を有する材料であれば特に限定されないが、代表的には、各種の熱可塑性樹脂(熱融着性樹脂)であればよい。具体的な樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(U-PE,UHPEまたはUHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ナイロン(ポリアミド、PA)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
これら樹脂は単独で用いられてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせたポリマーアロイとして用いられてもよい。ポリマーアロイには、熱融着フィルム22として好適な樹脂以外の樹脂が含まれてもよい。さらに、熱融着フィルム22には、前述した樹脂以外の成分(各種添加剤等)が含まれてもよい。つまり、熱融着フィルム22は、前述した樹脂のみで構成されてもよいが、他の成分を含む樹脂組成物で構成されてもよい。
図2A~図2Cに示すフィルム積層体20A~20Cでは、熱融着フィルム22は、保護フィルム21と同様に1層(単層)の樹脂フィルムとして構成されているが、複数の樹脂フィルムを積層して構成されてもよい。熱融着フィルム22の厚さは特に限定されず、フィルム積層体20A~20C同士を貼り合わせたときに十分な接着性を発揮できる厚さを有していればよく、望ましくは、内面保護層としてフィルム積層体20A~20Cの内面を保護できる範囲の厚さを有していればよい。
図2Bに例示する他のガスバリアフィルム23は、ガスバリアフィルム10Aとは異なる構成であって、好適なガスバリア性を有する公知のフィルムであればよい。代表的には、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔等の金属箔;基材となる樹脂フィルムに対して金属または金属酸化物を蒸着した蒸着層を有する蒸着フィルム;この蒸着フィルムの表面にさらに公知のコーティング処理(ただし本開示に係る複合材料層12を除く)を施したフィルム等が挙げられるが特に限定されない。
蒸着フィルムに用いられる基材としては、本開示に係るガスバリアフィルム10A,10Bの基材と同様の樹脂フィルム等を挙げることができるが特に限定されない。また、金属または金属酸化物としては、アルミニウム、銅、アルミナ、シリカ等を挙げることができるが、特に限定されない。また、他のガスバリアフィルム23は、1層のフィルムまたは箔で構成されてもよいし、複数のフィルムまたは箔を積層して構成されてもよい。
本開示に係るガスバリアフィルム10A,10B(ガスバリア構造体)は、高温多湿の条件下で特に水蒸気について良好なバリア性を有するが、他の条件で他の気体に対して好適なバリア性を有するフィルムを選択して、ガスバリアフィルム10A,10Bと併用することで、フィルム積層体20Bにおける総合的なガスバリア性をより一層向上することができる。
本開示に係るガスバリアフィルム10A,10Bを含む、本開示に係るガスバリア構造体の具体的な用途は特に限定されないが、代表的には、例えば、食品または医薬品等の包装材、電子材料または電子部品の包装材、電子機器の構造材、あるいは、真空断熱材の外被材等を挙げることができる。
本発明について、実施例、比較例および参考例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例における各種合成反応や物性等の測定・評価は次に示すようにして行った。
(測定・評価方法)
[水蒸気透過度]
参考文献2:REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS 88 043301 (2017)に記載される差圧式質量分析法に基づいて、環境温度40℃、95%RHの条件下(高温多湿条件下)で、各実施例の試料(ガスバリア構造体)におけるガス供給側(曝露側)に水蒸気を導入し、透過側(検出側)を真空排気して、四重極質量分析計を備えたガス透過率測定装置(オーウエル株式会社製、製品名オメガトランス)で評価した。
[複合材料層中の水またはアンモニア含有量]
実施例3の試料における複合材料層の水またはアンモニアの含有率については、まず、塗工液をガラス基板上に塗布、乾燥してから削り取ったものを、含有量測定用の試料として調製した。
水の含有量については、上記試料を窒素雰囲気化で200℃に加熱し、揮発した水分を回収してカールフィッシャー水分計(三菱化学株式会社製、製品名CA-200,VA-200)により水分量を測定し、複合材料層の水含有量として評価した。
アンモニアの含有量については、上記試料にイオン交換水を加えてからNaOHの添加によりアルカリ性に調整し、加熱および蒸留して当該試料からのアンモニアを硫酸水溶液中に回収した。回収したアンモニアを含む水溶液を希釈定容してイオンクロマトグラフィー(Dionex社製、製品名ICS-2000)によりアンモニア量を測定し、複合材料層のアンモニア含有量として評価した。
[全光線透過率]
JIS K7361-1に規定される「プラスチック透明材料の全光線透過率の試験方法」に基づいて、実施例5の試料(ガスバリア構造体)の全光線透過率を測定した。なお、この試験方法におけるヘーズメータ(ヘイズメータ)としては、日本電色工業株式会社製、製品名(型式)NDH7000を用いた。
(無機層状化合物のアンモニウムイオン交換)
市販の陽イオン交換樹脂をアンモニウムイオン型に調整してカラムに充填した。また、層間ナトリウムイオンを有する無機層状化合物である天然のスメクタイト(モンモリロナイトまたはスティーブンサイト)を水に分散してスメクタイト分散液を調製した。このスメクタイト分散液を上記カラムに流通させることにより、層間ナトリウムイオンをアンモニウムイオンに交換したスメクタイトを得た。
(実施例1)
無機層状化合物(無機フィラー)として、前記の通りそれぞれアンモニウムイオン交換されたモンモリロナイトおよびスティーブンサイトを用い、樹脂材料(バインダー成分)として、市販の水溶性変性ナイロンを用い、分散媒として水およびエタノールを用いて、無機層状化合物と樹脂材料との混合比(重量比)を変化させた複数種類の塗工液を調製した。なお、無機層状化合物および樹脂材料を固形分として、塗工液の固形分濃度を約3重量%に調整した。また、本実施例では、モンモリロナイトの重量W11としスティーブンサイトの重量W12としたときに、無機層状化合物におけるモンモリロナイトとスティーブンサイトとの混合比W11:W12=85:15で固定した。
基材として厚さ約12μmのシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)を準備し、複数種類の前記塗工液をそれぞれ基材の蒸着面にバーコーターにより厚さ約100μmとなるように塗布し、100℃以上の温度で乾燥して分散媒(水およびエタノール)を除去した。これにより、無機層状化合物の含有率が異なる複合材料層を有するガスバリア構造体(ガスバリアフィルム)の試料を複数作製した。
これら試料について、前記の通り水蒸気透過度を測定した。その結果を図3のグラフに示す。なお、図3においては、横軸が無機層状化合物の含有率(単位:重量%)であり、縦軸が水蒸気透過度(単位:g/m2 ・day)である。また、図3においては図示しないが、無機層状化合物の含有量が0重量%のときは、水蒸気透過度は0.20g/m2 ・dayであった。
(実施例2)
無機層状化合物の重量WC とし前記の通り樹脂材料(ナイロン系樹脂)の重量WA としたときに、無機層状化合物と樹脂材料との混合比WC :WA =85:15で固定した上で、無機層状化合物におけるモンモリロナイトとスティーブンサイトの混合比(重量比)を変化させた複数の塗工液を調製した。これ以外は、実施例1と同様にして、無機層状化合物におけるモンモリロナイトの含有率が異なる複合材料層を有するガスバリア構造体(ガスバリアフィルム)の試料を複数作製した。
これら複数の試料について、前記の通り水蒸気透過度を測定した。その結果を図4のグラフに示す。なお、図4においては、横軸が無機層状化合物におけるモンモリロナイトの含有率(単位:重量%)であり、縦軸が水蒸気透過度(単位:g/m2 ・day)である。なお、モンモリロナイトの含有量が0重量%のときは、水蒸気透過度は0.11g/m2 ・dayであった。
(実施例3)
無機層状化合物と樹脂材料との混合比WC :WA =85:15で固定するとともに、無機層状化合物におけるモンモリロナイトとスティーブンサイトとの混合比W11:W12=85:15で固定した塗工液を調製した。この塗工液を複数の基材の蒸着面に塗布し、乾燥温度を変化させた以外は、実施例1と同様にして、複合材料層における水およびアンモニアの含有率が異なるガスバリア構造体(ガスバリアフィルム)の試料を複数作製した。
これら複数の試料について、前記の通り水蒸気透過度を測定するとともに、水およびアンモニアの含有率を算出した。その結果を図5および図6のグラフに示す。なお、図5においては、横軸が複合材料層における水含有率(単位:重量%)であり、縦軸が水蒸気透過度(単位:g/m2 ・day)である。また、図6においては、横軸が複合材料層におけるアンモニア含有率(単位:重量%)であり、縦軸が水蒸気透過度(単位:g/m2 ・day)である。
(実施例4)
無機層状化合物と樹脂材料との混合比WC :WA =85:15で固定するとともに、無機層状化合物をモンモリロナイトのみとし(混合比W11:W12=100:0で固定)、さらに無機層状化合物に対して、低分子量アミン化合物として1,2-シクロヘキサンジアミンを異なる濃度となるように添加した複数種類の塗工液を調製した。これ以外は、実施例1と同様にして、複合材料層に低分子量アミン化合物が添加されたガスバリア構造体(ガスバリアフィルム)の試料を複数作製した。
これら複数の試料について、前記の通り水蒸気透過度を測定した。その結果を図7のグラフに示す。なお、図7においては、横軸が低分子量アミン化合物の添加率(樹脂材料(ナイロン系樹脂)の重量WA および低分子量アミン化合物の重量WB の合計に対する低分子量アミン化合物の重量WB の比、単位:重量%)であり、縦軸が水蒸気透過度(単位:g/m2 ・day)である。
(実施例5)
無機層状化合物と樹脂材料との混合比WC :WA =85:15で固定するとともに、無機層状化合物をモンモリロナイトのみとし(混合比W11:W12=100:0で固定)、さらに固形分濃度を約2重量%に調整した塗工液を調製した。この塗工液を複数の基材の蒸着面に対して異なる厚さで塗布した以外は、実施例1と同様にして、乾燥前の複合材料層(塗膜)の厚さ(膜厚)が異なるガスバリア構造体(ガスバリアフィルム)の試料を複数作製した。
これら複数の試料について、前記の通り全光線透過率を測定した。その結果を図8のグラフに示す。なお、図8においては、横軸が、乾燥前の塗膜の膜厚(単位:μmであり、縦軸が全光線透過率(単位:%)である。
(各実施例の結果)
実施例1の結果である図3のグラフから明らかなように、本実施例に係るガスバリア構造体において、複合材料層が含有する無機層状化合物の比率(含有率)は、30~90重量%の範囲内であれば、高温多湿条件下であっても低い水蒸気透過度を実現できることがわかる。さらに、無機層状化合物の含有率が45~85重量%の範囲内であれば水蒸気透過度がより低くなり、50~85重量%の範囲内であれば水蒸気透過度はさらに低くなり、60~80重量%の範囲内であれば、特に水蒸気透過度が低くなることがわかる。
また、実施例2の結果である図4のグラフから明らかなように、本実施例に係るガスバリア構造体において、複合材料層が含有する無機層状化合物がスメクタイトであってモンモリロナイトおよびスティーブンサイトの混合物である場合に、当該混合物中におけるモンモリロナイトの含有率が65重量%以上100重量%未満であれば、高温多湿条件下であってもより低い水蒸気透過度を実現できることがわかる。
また、実施例3の結果である図5のグラフから明らかなように、本実施例に係るガスバリア構造体において、複合材料層における水の残存量(含有量)が、2.5重量%以下であれば、高温多湿条件下であっても低い水蒸気透過度を実現できることがわかる。同じく実施例3の結果である図6のグラフから明らかなように、本実施例に係るガスバリア構造体において、複合材料層におけるアンモニアの残存量(含有量)が1.0重量%以下であれば、高温多湿条件下であっても低い水蒸気透過度を実現できることがわかる。
また、実施例4の結果である図7のグラフから明らかなように、本実施例に係るガスバリア構造体において、複合材料層に低分子量アミン化合物を添加する場合、その添加率が20~75重量%の範囲内であれば、高温多湿条件下において水蒸気透過度を有意に低下させることができ、好ましくは40~70重量%の範囲内であれば、水蒸気透過度をより低下させることができることがわかる。
また、実施例5の結果である図8のグラフから明らかなように、本実施例に係るガスバリア構造体の全光線透過率は、複合材料層の厚さ(ただし乾燥前の塗膜の厚さの実測値)を大きくしても全光線透過率の顕著な低下は見られないことがわかる。それゆえ、本開示に係るガスバリア構造体では、全光線透過率が50%以上となる良好な透光性を実現できることがわかる。
このように、本開示に係るガスバリア構造体においては、これにより、無機層状化合物を含有するガスバリア層として複合材料層を備えており、樹脂材料がナイロン系樹脂であり、無機フィラーが無機層状化合物であり、複合材料層中の無機層状化合物の含有率が30~90重量%の範囲内であるので、ガスバリア構造体において、高温多湿の条件下での良好なガスバリア性とともに、良好な透光性も併せて実現することができる。
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
本発明は、ガスバリアフィルムを含むガスバリア構造体の分野に広く好適に用いることができるだけでなく、当該ガスバリア構造体を用いたフィルム積層体等の分野にも広く好適に用いることができる。
10A,10B:ガスバリアフィルム(ガスバリア構造体)
11:基材
12:複合材料層
13:無機蒸着層
20A,20B,20C:フィルム積層体(外被材)
21:保護フィルム
22:熱融着フィルム
23:他のガスバリアフィルム

Claims (11)

  1. 基材上に、無機フィラーおよび樹脂材料を含有する複合材料層が形成された、ガスバリア構造体であって、
    前記樹脂材料がナイロン系樹脂であり、
    前記無機フィラーが無機層状化合物であり、
    前記複合材料層中の前記無機層状化合物の含有率が30~90重量%の範囲内であり、
    さらに、当該ガスバリア構造体における、40℃、相対湿度95%環境下での水蒸気透過度が1.0g/m2 ・day以下であり、かつ、全光線透過率が50%以上であることを特徴とする、
    ガスバリア構造体。
  2. 前記無機層状化合物がスメクタイトであることを特徴とする、
    請求項1に記載のガスバリア構造体。
  3. 前記スメクタイトが、モンモリロナイト、スティーブンサイト、サポナイト、ヘクトライトからなる群から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする、
    請求項2に記載のガスバリア構造体。
  4. 前記スメクタイトが、前記モンモリロナイトおよび前記スティーブンサイトの混合物であるとともに、
    当該混合物中における前記モンモリロナイトの含有率が65重量%以上100重量%未満であることを特徴とする、
    請求項3に記載のガスバリア構造体。
  5. 前記スメクタイトが、層間陽イオンとしてアンモニウムイオン(NH4 +)およびプロトン(H+)の少なくとも一方を含有することを特徴とする、
    請求項2から4のいずれか1項に記載のガスバリア構造体。
  6. 前記複合材料層は、水分の含有量が2.5重量%以下であることを特徴とする、
    請求項1から5のいずれか1項に記載のガスバリア構造体。
  7. 前記複合材料層は、アンモニアの含有量が1.0重量%以下であることを特徴とする、
    請求項1から6のいずれか1項に記載に記載のガスバリア構造体。
  8. 前記樹脂材料には、分子量が200以下の水溶性の低分子量アミン化合物が添加されていることを特徴とする、
    請求項1から7のいずれか1項に記載のガスバリア構造体。
  9. 前記複合材料層の厚さが10nm以上5μm以下であることを特徴とする、
    請求項1から8のいずれか1項に記載のガスバリア構造体。
  10. 前記基材が、無機蒸着層を有する樹脂フィルムであることを特徴とする、
    請求項1から9のいずれか1項に記載のガスバリア構造体。
  11. 請求項1から10のいずれか1項に記載のガスバリア構造体をガスバリアフィルムとして備えることを特徴とする、
    フィルム積層体。
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