JP3664746B2 - カチオン置換粘土鉱物を用いたクロマトグラフィー用充填剤、それを用いた魚類油脂の分離方法、及びカチオン置換粘土鉱物の製造方法 - Google Patents
カチオン置換粘土鉱物を用いたクロマトグラフィー用充填剤、それを用いた魚類油脂の分離方法、及びカチオン置換粘土鉱物の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明はカチオン置換粘土鉱物、それを用いたクロマトグラフィー用充填剤及びその製造方法、特に置換カチオンの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種物質の分析あるいは分離精製にクロマトグラフィーが汎用されており、このうち特に液体クロマトグラフィーはその分離機構により、大きくは吸着クロマトグラフィーと分配クロマトグラフィーに分類されている。
分配クロマトグラフィーはさらに、溶離液と充填剤の極性の関係から、順相分配クロマトグラフィーと逆相分配クロマトグラフィーとに分けられる。
前記吸着及び順相分配クロマトグラフィーにおける充填剤は、いずれも巨大孔と微細孔が網目状に分布した全多孔性シリカゲル系がほとんどであり、その他アルミナ系、ポーラスガラス系の無機担体やポリスチレン−ジビニルベンゼン、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシメタクリレート等のポーラスポリマー系、また特殊な用途として水酸化カルシウム粉末、リン酸カルシウムゲル等が用いられている。
【0003】
一方、逆相分配クロマトグラフィー用充填剤には、ODS−シリカゲルに代表されるように、前記充填剤(例えばシリカゲル)を担体として、これにオクタデシル基などのアルキル基を化学結合させたものが多く用いられている。
この他にもシリカゲルや有機ポーラスポリマーにスルホン基やカルボキシル基を有する化合物を結合させたカチオン交換用、あるいは4級アンモニウムやジエチルアミノエチル基を結合させたアニオン交換用の液体クロマトグラフィー用充填剤も用いられている。
【0004】
しかしながら、これらの充填剤はいずれも各種の課題を有しており、特に近似する分子量の物質の飽和−不飽和識別能がきわめて貧弱であり、この点に関する改善が従来より強く求められていた。
このような要望に応える充填剤として、本発明者らは特開平1−199155に開示される充填剤を開発している。
これは、水膨潤性粘土鉱物の層間イオンがナトリウムイオン以外のカチオン、特に銀イオンで実質的に置換されてなる充填剤であり、飽和−不飽和識別能を有するため、広範な不飽和化合物の不飽和度毎の分離が可能であり、各種分析や分離手段として用いられていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記粘土鉱物からなる充填剤にあっても、不飽和度3以上の高度不飽和化合物の吸着がきわめて強く、ピークもブロードなものとなるため、効率よく短時間に分析、分離を行うことができないものであった。
また、不飽和化合物の保持時間も、使用する溶媒によって経時的に変化するなどの課題が指摘されていた。
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は特に不飽和化合物の分離能力が高く、しかも経時安定性に優れたクロマトグラフィー用充填剤、及びその充填剤として用いるカチオン置換粘土鉱物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討を進めた結果、高度不飽和化合物のピークがブロードなものとなる点、及び保持時間の経時的変化が大きい点は、粘土鉱物の層間に存在する低原子価金属をアンミン錯体ないしアミン錯体とすることにより解決可能なことを見出し本発明を完成するにいたった。
すなわち、粘土鉱物の層間に存在する銀等の置換低原子価金属イオンは、溶媒と接触することにより、イオンとして存在する以外にも酸化、還元などによる存在状態の変化が生じ、これが高度不飽和化合物のピークをブロードなものとし、さらに保持時間の経時変化を大きくする要因となることを見出した。
【0007】
例えば、粘土鉱物の層間に存在させた1価の銀イオンは、熱と溶媒によって酸化され酸化銀に変化したり、金属銀に還元されることがX線解析の結果確かめられた。
また、銀と同様に飽和−不飽和識別能を有するとされる1価の銅イオンは乾燥により容易に酸化されて2価の銅イオンに変化してしまい、飽和−不飽和識別能を弱めることが確認されている。
そこで、本発明者らは粘土鉱物の層間に存在する置換低原子価金属イオンの存在形態に着目したのである。
【0008】
すなわち、本出願の請求項1記載のクロマトグラフィー用充填剤は、カチオン置換粘土鉱物よりなるクロマトグラフィー用充填剤であって、前記粘土鉱物は、水膨潤性粘土鉱物の層間のカチオンを、1価又は2価の金属アンミン錯体によって、その金属イオンの含有量が0.1重量%以上となるように置換されたものであることを特徴とする。
請求項2記載のクロマトグラフィー用充填剤は、前記金属アンミン錯体は、[M(NH3) n ]X (M=金属,X=アニオン,n=1〜3)であることを特徴とする。
請求項3記載のクロマトグラフィー用充填剤は、前記Mが1価の銅、銀または金であることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載のカチオン置換粘土鉱物の製造方法は、水膨潤性粘土鉱物をアンモニアアルカリ性のアンモニウムイオン溶液に浸せきしたのち乾燥したものを、1価又は2価の金属アンミン錯体溶液に浸せきし、層間カチオンイオンを、1価又は2価の金属アンミン錯体によって、その金属イオン含有量が0.1重量%以上となるように置換することを特徴とする。
請求項5記載のカチオン置換粘土鉱物の製造方法は、前記金属アンミン錯体溶液に浸せきされた粘土鉱物をさらに焼成することを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の魚類油脂の分離方法は、水膨潤性粘土鉱物の層間のカチオンを1価又は2価の金属アンミン錯体によって、その金属イオン含有量が0.1重量%以上となるように置換してなる充填剤により、魚類油脂からドコサヘキサエン酸を分離・採取することを特徴とする。
請求項7記載の魚類油脂の分離方法は、魚類油脂を加水分解し、さらにエステル化した脂肪酸エステルを分離対象として用いることを特徴とする。
請求項8記載の魚類油脂の分離方法は、溶媒として超臨界流体を用いることを特徴とする。
【0011】
以下、本発明の構成について詳述する。
本発明において用いられる水膨潤性粘土鉱物は、スメクタイト属に属する層状ケイ酸鉱物であり、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロライト、サポナイト、及びヘクトライトなどが好適である。なお、天然または合成品のいずれも用いることができる。市販品としては、クニピア、スメクトン(クニミネ工業)、ビーガム(バンダービルト社)、ラポナイト(ラポルテ社)、フッ素四ケイ素雲母(トピー工業)などを用いることができる。本発明の実施にあたっては、これらの水膨潤性粘土性鉱物のうちから、一種又は二種以上が任意に選択される。クロマトグラフィー用充填剤としては、比表面積の大きい粉末である程、吸着容量が大きく、溶質分子を強く保持することができるため、充填剤として適している。
【0012】
また、クロマトグラフィー用充填剤としては、形状は破砕状よりも球状のほうが圧力損失及び圧力変動が小さいので適している。このような観点から、水性ゲルをスプレードライすることにより、球状の粘土鉱物を得ることができる合成サポナイトのスメクトンや合成ヘクトライトのラポナイトが特に好適である。
前記水膨潤性粘土鉱物に対し、その層間に存在するナトリウムイオンと置換する低原子価の金属のアンミン錯体(アンモニア錯塩)は、1価の銅、銀、金のアンミン錯体[M(NH3) n ]X (M=金属、X=アニオン、n=1〜3)を用いることができる。この他に2価の金属として銅、水銀、白金、パラジウム等のアンミン錯体を用いることも可能であるが、1価の銅、銀、金のアンミン錯体を用いることが好ましい。
【0013】
これらの金属アミン錯体の粘土鉱物への交換容量は、粘土鉱物100gあたり約60〜150ミリ当量であるが、10ミリ当量程度の少量のイオン交換でも飽和−不飽和識別能を有する。
アンミン錯体の調整方法としては、これらの1〜2価の金属塩(例えば塩化第一銅、硝酸銀等)を適量の水、アルコール等の溶媒に溶解し、適量の25〜28%アンモニア水を加え撹拌することにより得られる。
また、アミン錯体を調製する場合には、アンミン錯体の調製方法におけるアンモニア水に変えて有機アミンを使用することが好適である。
【0014】
用いる有機アミンとしては、エチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、モノエタノールアミンなどを用いることができる。
これらの低原子価金属アンミン錯体ないしアミン錯体は、単独で用いても、あるいは2種以上組合せて用いてもよい。
本クロマトグラフィー用充填剤の金属イオン含有量は、金属によっても異なるが、0.1〜15重量%、好ましくは1〜5重量%である。
本発明にかかるカチオン置換粘土鉱物を製造する際には、原料粘土鉱物をあらかじめアンモニウムイオン溶液に浸せきすることが好適である。
【0015】
すなわち、例えばモンモリロナイトは三層体積層を有し、図1に示すように各三層単位10a、10bの層間12にナトリウムイオン14がイオン結合されている。そして、図2に示すように、層間12のナトリムイオンをアンモニウムイオン16に置換し、さらに図3に示すように低原子価金属の錯体18へと置換するのである。
このようにアンモニウムイオンで浸せきして、粘土鉱物中のナトリウムイオンをアンモニウムイオンにあらかじめイオン交換することで、耐水性が改善されるとともに、金属アンミン錯体の種類によってはアンモニウムイオンで交換された粘土鉱物の方がアンミン錯体とのイオン交換が容易となる。
【0016】
なお、アンモニウムイオンで浸せきしていない粘土鉱物にあっても、アンミン錯体あるいはアミン錯体と容易にカチオン交換できるものもあるので、前記アンモニウムイオン溶液への浸せきは必ずしも必須のものではない。 本発明において、粘土鉱物を浸せきする際のアンモニウムイオンの濃度は0.1〜10規定、好ましくは0.5〜3規定である。この時のアンモニウムイオン溶液のpHはアンモニアを添加し7〜12、好ましくは8.5〜10.5とする。
ここで添加するアンモニアは、アンモニア水が好ましいがアンモニアガスを用いることも可能である。
【0017】
アンモニウムイオン溶液に粘土鉱物を浸せきする時間は1時間以上が望ましい。
浸せき後、溶媒を濾過などの方法で除去し、乾燥する。乾燥温度は60℃以上、好ましくは100〜150℃とすることが好適である。このように乾燥を行うことにより、粘土鉱物の細孔内に満たされたアンモニアを除去し、金属錯イオンとの交換が容易となる。
さらに、これらの金属アンミン錯体ないし金属アミン錯体によりカチオン交換された粘土鉱物を焼成することも好適である。
【0018】
焼成温度、焼成時間は金属により異なるが、金属アンミン錯体もしくは金属アミン錯体が分解しない温度が好ましく、80℃〜500℃、特に好ましくは100℃〜250℃である。焼成時間は1時間〜48時間、好ましくは4時間〜18時間である。焼成温度が高いほど、また焼成時間が長いものほどクロマトグラフィーにおける保持力が強く、保持時間の調整も可能である。
このように焼成を行うことにより、粘土鉱物の外面に表出したシラノール基の活性が増加し、より充填剤としての機能を改善することができる。
【0019】
なお、本発明にかかるカチオン置換粘土鉱物は、必要に応じて通常の乾式分級法により分級し、クロマトグラフィー用充填剤として利用される。
また、本発明にかかる充填剤は、液体クロマトグラフィー用充填剤はもとより、超臨界クロマトグラフィー用、あるいはガスクロマトグラフィー用充填剤としても利用できる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例を説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1
ラポナイトXLG900gをイオン交換水30Lに撹拌しながら分散させる。得られたゲルを、ディスク式噴霧乾燥実験器によりディスク回転数20000rpm、入り口温度約200℃、排気温度約110℃で噴霧乾燥し、2〜20μmの球状粘土鉱物720gを得た。この球状粘土鉱物を乾式分級機TARBO CLASSIFINER TC-15N(日清エンジニアリング社製)を用いて分級し、3〜8μm粉径の粉末を180g得た。
【0021】
上記粉末30gを、500mlガラス製ビーカーに量り、これに6%{W/V}硝酸アンモニウム/メタノール溶液200ml及び28%アンモニア水0.66mlを加え、約1時間撹拌した後、ガラスフィルター(G4)で濾過した。これを乾燥器を用いて110℃で6時間乾燥し乾燥粉末を得、この乾燥粉末を500mlビーカーにとった。あらかじめ2.55gの硝酸銀に200mlのメタノールと28%アンモニア水2.4mlを加え溶解した液全量を前記ビーカーに加え16時間撹拌した後、グラスフィルターを用いて濾過した。この後、28%アンモニア水/メタノール(1:100)200mlを用いて3回濾過、洗浄を繰り返し、更に160℃で4時間乾燥し充填剤を得た。
【0022】
つぎに本充填剤を内径4.6mm,長さ250mmのステンレスカラムに平衡スラリー法により均一に充填し、充填カラムを得た。本充填カラムを高速クロマトグラフに接続し、移動相溶媒に1%エタノール/ヘキサンを1ml/minの流速でながした。温度は35℃に設定し、検出器はUV検出器をもちいて波長225nmで検出した。
この充填カラムに、試料として、炭素数20で不飽和度0〜4の脂肪酸メチルエステル混合物を注入したところ、図4に示すクロマトグラムが得られた。不飽和度0〜4の順にシャープに分離溶出したクロマトグラムが得られた。
【0023】
比較例1
エタノール1Lに硝酸銀1.7gを溶解し、上記の分級した球状の粘土鉱物10gを分散し、4時間撹拌する。その後メタノールで洗浄し、80℃で乾燥し充填剤を得た。その後、実施例1と同様に高速液体クロマトグラフに接続し、クロマトグラムを測定したところ、吸着が極めて強く、脂肪酸メチルエステルの溶出はいずれも観測されなかった。そこで移動相溶媒をより溶出力の強いアセトンに替え、更に検出器を示差屈折計に替え、得られたクロマトグラムを図5に示す。5種の脂肪酸メチルエルテルが分離溶出しているが、不飽和度3〜4の脂肪酸メチルエステルは大きなテイリングを示し、分離も不良であった。
【0024】
実施例2
実施例1で得られた分級した球状の粘土鉱物30gを500mlガラス製ビーカーに量り、これに6%{W/V}硝酸アンモニウム/メタノール溶液200mlと28%アンモニア水1.0mlを加え、約3時間撹拌した後、ガラスフィルターで濾過した。これを乾燥器を用いて110℃で6時間乾燥し、乾燥粉末を得、この乾燥粉末を500mlビーカーにとった。あらかじめ1.49gの塩化第一銅に400mlのメタノールと28%アンモニア水5.0mlを加え溶解した液の全量を前記ビーカーに加え、24時間撹拌した後、グラスフィルターを用いて濾過した。この後28%アンモニア水/メタノール{1/100}200mlを用いて3回濾過、洗浄を繰り返し、更に110℃で16時間乾燥し充填剤を得た。次に本充填剤を内径4.6mm、長さ250mmのステンレスカラムに充填し、充填カラムを得た。
【0025】
本充填カラムを高速液体クロマトグラフに接続し、移動相溶媒に0.5%アセトニトリル/2%ジオキサン/ヘキサンを0.5ml/minの流速で流した。温度は40℃に設定し、検出器はUV検出器を用いて波長225nmで検出した。試料として、炭素数20で不飽和度1〜4の脂肪酸メチルエステル混合物と、魚油のエチルエステルを注入したところ、それぞれ図6、図7のクロマトグラムが得られた。図6の脂肪酸メチルエステル混合物のクロマトグラムは実施例1以上にシャープであり、どの成分もほぼ完全に分離することができた。また、図7の魚油のエチルエステルのクロマトグラムには比較例1のカラムでは溶出させることのできなかった炭素数20、不飽和度5のエイコサペンタエン酸エチルエステルが22.8分に、また炭素数22、不飽和度6のドコサヘキサエン酸エチルエステルが28.0分に、極めてシャープに分離、溶出させることができた。
【0026】
実施例3
実施例1で得られた球状の粘土鉱物に銀アンミン錯体を交換し、110℃で16時間乾燥し得られた充填剤をさらに250℃で4時間焼成して得られた粉末を、内径4.6mm、長さ250mmのステンレスカラムに充填し、充填カラムを得た。本充填カラムを超臨界流体クロマトグラフ(日本分光製)に接続し、圧力200Kg,温度90℃の超臨界状態で10%アセトニトリル/二酸化炭素{W/W}を1ml/minの流速で流した。検出器はUV検出器を用いて波長225nmでモニターした。試料は炭素数18、不飽和度0〜3の脂肪酸メチルエルテルと、炭素数20、不飽和度4の脂肪酸メチルエルテルの混合物を注入した。得られたクロマトグラムを図8に示す。本実施例にかかる充填剤を用いた場合、超臨界流体クロマトグラフィーによっても不飽和度毎のシャープな分離溶出が可能であった。
【0027】
実施例4
前記実施例1で製造した充填剤100gをパッカーとポンプを用いて、内径20mm、長さ250mmのステンレススチール製カラムに平行スラリー法で充填し、充填カラムを作成した。
このカラムを超臨界クロマトグラフィー装置(日本分光社製)に接続し、それぞれ下記表1の分離条件下で二酸化炭素超臨界流体による分離精製を行った。魚類油脂を常法により加水分解して得た脂肪酸組成、C14:0(3.3%)、C16:0(16.9%)、C18:0(5.2%)、C18:1(16.3%)、C20:5(12.2%)、C22:6(30.0%)及びその他(14.3%)、(Cの添数字は、それぞれ前者が対応する脂肪酸の炭素数を示し、後者は炭素−炭素の二重結合数を示す。したがって、C20:5はEPAを、そしてC22:6はDHAを表す)からなる脂肪酸混合物を常法によりエチルアルコールでエステル化したサンプルを処理した。
【0028】
つまり、カラムを工程Iの条件に平衡化させた後、サンプル2.72gをカラムに負荷し、工程I,IIの順に条件を変化させた。各フラクションは15分毎に分画し、溶媒を留去後、その収量と純度を求めた。
【 表1】
条件I,IIの順に、条件を変化させた。
各フラクションは15分毎にサンプリングした。
【0029】
各フラクションの純度を、ガスクロマトグラムの面積百分率により求めたところ、工程IIのフラクション(11)〜 (17)から純度99.5%のDHA0.59g(回収率72.3%)が得られた。
図9に各フラクションのEPA及びDHAの純度を、また図10に各フラクションの収量及びEPA、DHAの重量を示した。
尚、前記EPA、DHAの重量は、各フラクションのそれぞれの純度及び収量より求めた。
【0030】
実施例5
サンプルとして魚類脂肪処理物に代え、γ−リノレン酸5.9%を含有するγ−リノレン酸含有油脂より調整した脂肪酸エチルエステル混合物を用い、二酸化炭素超臨界流体による分離条件を表2記載の通りとした以外は、前記実施例4に準じる。
尚、粗サンプルの組成は、C14:0(0.8%)、C16:0(27.6%)、C18:0(6.5%)、C18:1(42.6%)、C18:2(8.9%)、C18:3(5.9%)及びその他(6.4%)である。
カラムを表2の工程Iの条件に平衡化させた後、サンプル2.64gをカラムに負荷し、工程I〜XIの順に条件を変化させた。各フラクションは15分毎に分画し、溶媒を留去後、その重量測定とGC分析を行った。
【0031】
【表2】
【0032】
各フラクションの純度をガスクロマトグラムの面積百分率より求めたところ、工程VIII、IX、X、XIのフラクション(17),(18),(19),(20)に純度75%以上のγ−リノレン酸エチルエステルが得られた。
次の表3に主要フラクションのγ−リノレン酸エチルエステルの純度、収量、回収率を示す。
【表3】
図11に各フラクションのC16:0,C18:1,C18:2,C18:3の純度を示した。また、図12に各フラクションの収量を示した。
【0033】
実施例6
実施例4で作成したカラムを液体クロマトグラフィー装置(島津製作所製)に接続し、下記表4の分離条件下で液体クロマトグラフィーによる分離精製を行った。サンプルは前記実施例4と同様である。
すなわち、カラムを工程Iの条件に平衡化させた後、サンプル2.58gをカラムに負荷し、工程I,II,III,IVの順に条件を変化させた。各フラクションは、10分毎に分画し、溶媒を留去後、その収量と純度を求めた。
【表4】
各フラクションの純度を、ガスクロマトグラムの面積百分率より求めたところ、工程IVのフラクション(14)〜(19)から純度99.1%のDHA0.35g(回収率45.2%)が得られた。
図13に各フラクションのEPA及びDHAの純度を示す。また、図14に各フラクションの収量及びEPA、DHAの重量を示す。
【0034】
実施例7
実施例4と同一の装置を用い、DHA含有トリグリセリドの二酸化炭素超臨界流体による精製を行った。尚、サンプルは実施例4で用いたエチルエステル化前の魚類油脂である。
表5に示すように、カラムを工程Iの条件に平衡化させた後、サンプル2.70gをカラムに負荷し、工程I〜IVの順に条件を変化させた。各フラクションは15分毎に分画し、溶媒を留去後、重量測定とGC分析を行った。尚、上記GC分析は、常法によりサンプルをエチルエステル化した後行った。
【0035】
各フラクションの組成を、GCの面積百分率より求めたところ、工程III,IVのフラクション▲9▼〜(14)に構成脂肪酸としてDHAを約40%含有するトリグリセリドが得られた。表6にフラクション▲9▼〜(14)をあわせた時のDHA純度、収量、回収率を示した。
また、図15に各フラクションのEPA及びDHAの純度を、図16に各フラクションの収量及びEPA、DHAの収量を示した。
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にかかるカチオン置換粘土鉱物によれば、クロマトグラフィー用充填剤として用いることにより優れた分離能及び経時安定性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】、
【図2】、
【図3】本発明にかかるカチオン置換粘土鉱物の製造工程の説明図である。
【図4】本発明の実施例1にかかる充填剤を用いたクロマトグラムである。
【図5】比較例1にかかる充填剤を用いたクロマトグラムである。
【図6】実施例2にかかる充填剤を用い、炭素数20で不飽和度0〜4の脂肪酸メチルエステル混合物を分離した場合のクロマトグラムである。
【図7】実施例2にかかる充填剤を用い、魚油のエチルエステルを分離したクロマトグラムである。
【図8】実施例3にかかる充填剤を用いて得られたクロマトグラムである。
【図9】実施例1にかかる充填剤を用いて、魚類油脂脂肪酸を、二酸化炭素超臨界流体により分離精製を行った場合のフラクションとEPA,DHAの純度との関係を示す説明図である。
【図10】実施例1にかかる充填剤を用いて、魚類油脂脂肪酸を、二酸化炭素超臨界流体により分離精製を行った場合のフラクションとEPA,DHAの収量との関係を示す説明図である。
【図11】実施例1にかかる充填剤を用いて、γ−リノレン酸含有油脂を、二酸化炭素超臨界流体により分離精製を行った場合のフラクションと各脂肪酸の純度との関係を示す説明図である。
【図12】実施例1にかかる充填剤を用いて、γ−リノレン酸含有油脂を、二酸化炭素超臨界流体により分離精製を行った場合のフラクションと収量との関係を示す説明図である。
【図13】実施例1にかかる充填剤を用いて、魚類油脂脂肪酸を、液体クロマトグラフィーにより分離精製を行った場合のフラクションとEPA,DHAの純度との関係を示す説明図である。
【図14】実施例1にかかる充填剤を用いて、魚類油脂脂肪酸を、液体クロマトグラフィーにより分離精製を行った場合のフラクションとEPA,DHAの収量との関係を示す説明図である。
【図15】実施例1にかかる充填剤を用いて、DHA含有トリグリセリドを、液体クロマトグラフィーにより分離精製を行った場合のフラクションとEPA,DHAの純度との関係を示す説明図である。
【図16】実施例1にかかる充填剤を用いて、DHA含有トリグリセリドを、液体クロマトグラフィーにより分離精製を行った場合のフラクションとEPA,DHAの収量との関係を示す説明図である。
Claims (8)
- カチオン置換粘土鉱物よりなるクロマトグラフィー用充填剤であって、
前記粘土鉱物は、水膨潤性粘土鉱物の層間のカチオンを、1価又は2価の金属アンミン錯体によって、その金属イオンの含有量が0.1重量%以上となるように置換されたものであることを特徴とするクロマトグラフィー用充填剤。 - 請求項1記載のクロマトグラフィー用充填剤において、前記金属アンミン錯体は、[M(NH3) n ]X (M=金属,X=アニオン,n=1〜3)であることを特徴とするクロマトグラフィー用充填剤。
- 請求項2記載のクロマトグラフィー用充填剤において、Mは1価の銅、銀または金であることを特徴とするクロマトグラフィー用充填剤。
- 水膨潤性粘土鉱物をアンモニアアルカリ性のアンモニウムイオン溶液に浸せきしたのち乾燥したものを、1価又は2価の金属アンミン錯体溶液に浸せきし、層間カチオンイオンを、1価又は2価の金属アンミン錯体によって、その金属イオン含有量が0.1重量%以上となるように置換することを特徴とするカチオン置換粘土鉱物の製造方法。
- 請求項4記載の方法において、前記金属アンミン錯体溶液に浸せきし、イオン交換された粘土鉱物をさらに焼成することを特徴とするカチオン置換粘土鉱物の製造方法。
- 水膨潤性粘土鉱物の層間のカチオンを1価又は2価の金属アンミン錯体によって、その金属イオン含有量が0.1重量%以上となるように置換してなる充填剤により、魚類油脂からドコサヘキサエン酸を分離・採取することを特徴とする魚類油脂の分離方法。
- 請求項6記載の方法において、魚類油脂を加水分解し、さらにエステル化した脂肪酸エステルを分離対象として用いることを特徴とする魚類油脂の分離方法。
- 請求項6または7記載の方法において、溶媒として超臨界流体を用いることを特徴とする魚類油脂の分離方法。
Priority Applications (2)
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