ここで、冷凍サイクルを用いて冷暖房を行う車両用空調システムは、通常、冷房運転時に冷媒を循環させる第一循環経路と、暖房運転時に冷媒を循環させ且つ第一循環経路とは異なる第二循環経路と、を有している。そして、第一循環経路及び第二循環経路を有する車両用空調システムにおいて、冷媒を用いて車両の発熱体を冷却する場合には、第一循環経路及び第二循環経路のいずれの経路で冷媒を循環させても、該冷媒によって発熱体を冷却できることが望ましい。また、発熱体が、例えば、低温時に出力が低下する二次電池である場合には、発熱体を低温時に加熱したいという要求もある。
本発明は、上記事実を考慮し、第一循環経路及び第二循環経路を有する車両用空調システムにおいて、第一循環経路及び第二循環経路のいずれの経路で冷媒を循環させても、該冷媒によって発熱体の冷却及び発熱体の加熱を選択的に実行できるようにすることを目的とする。
請求項1の発明は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記冷媒を膨張させ且つ開度が調整可能な第一、第二膨張弁と、前記冷媒と車室内の空気との間で熱交換する室内器と、前記冷媒と外気との間で熱交換する室外器と、前記圧縮機、前記室外器、前記第一膨張弁、車両に設けられた発熱体、前記第二膨張弁、前記室内器及び前記圧縮機の順で前記冷媒を循環させる第一循環経路と、前記圧縮機、前記室内器、前記第二膨張弁、前記発熱体、前記第一膨張弁、前記室外器及び前記圧縮機の順で冷媒を循環させる第二循環経路と、に切り替え可能な循環路と、を備える。
請求項1の構成によれば、第一、第二膨張弁は、冷媒を膨張させることで冷媒を減圧することができる。さらに、第一、第二膨張弁は、開度を調整可能となっている。このため、第一、第二膨張弁は、自らの開度により、冷媒を減圧する状態(以下、減圧状態という)と、冷媒を減圧しない状態(以下、無減圧状態という)と、冷媒を減圧するが前記減圧状態よりも減圧の程度が小さい状態(以下、小減圧状態)と、になりうる。さらに、循環路は、第一循環経路と第二循環経路とに切り替え可能となっている。
ここで、例えば、第一膨張弁を減圧状態とし且つ第二膨張弁を無減圧状態(又は小減圧状態)としたまま、第一循環経路で冷媒を循環させると、冷媒は、圧縮機、室外器、減圧状態の第一膨張弁、車両に設けられた発熱体、無減圧状態(又は小減圧状態)の第二膨張弁、室内器及び圧縮機の順で循環する。このように、冷媒を循環させることで、以下のような作用効果を生じさせることができる。
すなわち、第一循環経路を循環する冷媒は、圧縮機で圧縮されることで高温高圧の状態となって、室外器を通過する。室外器を通過する冷媒は、室外器において外気との間で熱交換される。これにより、室外器を通過する冷媒は、外気へ熱を放出して凝縮する。室外器において凝縮された冷媒は、第一膨張弁で減圧されることで低温低圧の状態となって、発熱体、第二膨張弁及び室内器をこの順で通過する。発熱体を通過する冷媒は、発熱体との間で熱交換される。これにより、発熱体を通過する冷媒が、発熱体から熱を奪って蒸発する。この結果、発熱体が冷却される。第二膨張弁を通過する冷媒は、第二膨張弁が無減圧状態(又は小減圧状態)であることで、圧力を維持したまま(圧力の低下が抑えられて)、室内器へ送られ、該冷媒が室内器を通過する。室内器を通過する冷媒は、室内器において、車室内の空気との間で熱交換される。これにより、室内器を通過する冷媒が、車室内の空気から熱を奪って蒸発する。この結果、車室内の空気が冷やされる。
また、例えば、第一膨張弁を無減圧状態(又は小減圧状態)とし且つ第二膨張弁を減圧状態としたまま、第一循環経路で冷媒を循環させた場合には、冷媒は、圧縮機、室外器、無減圧状態(又は小減圧状態)の第一膨張弁、発熱体、減圧状態の第二膨張弁、室内器及び圧縮機の順で循環する。このように、冷媒を循環させることで、以下のような作用効果を生じさせることができる。
すなわち、第一循環経路を循環する冷媒は、圧縮機で圧縮されることで高温高圧の状態となって、室外器、第一膨張弁及び発熱体を通過する。室外器を通過する冷媒は、室外器において外気との間で熱交換される。これにより、室外器を通過する冷媒は、外気へ熱を放出して凝縮する。第一膨張弁を通過する冷媒は、第一膨張弁が無減圧状態(又は小減圧状態)であることで、圧力を維持したまま(圧力の低下が抑えられて)、発熱体へ送られ、発熱体を通過する。発熱体を通過する冷媒は、発熱体との間で熱交換される。これにより、発熱体を通過する冷媒が、発熱体へ熱を放出し凝縮する。この結果、発熱体が加熱される。発熱体において凝縮した冷媒は、第二膨張弁で減圧されることで低温低圧の状態となって、室内器を通過する。室内器を通過する冷媒は、室内器において、車室内の空気との間で熱交換される。これにより、室内器を通過する冷媒が、車室内の空気から熱を奪って蒸発する。この結果、車室内の空気が冷やされる。
また、例えば、第一膨張弁を無減圧状態(又は小減圧状態)とし且つ第二膨張弁を減圧状態としたまま、第二循環経路で冷媒を循環させた場合には、冷媒は、圧縮機、室内器、減圧状態の第二膨張弁、発熱体、無減圧状態(又は小減圧状態)の第一膨張弁、室外器及び圧縮機の順で循環する。このように、冷媒を循環させることで、以下のような作用効果を生じさせることができる。
すなわち、第二循環経路を循環する冷媒は、圧縮機で圧縮されることで高温高圧の状態となって、室内器を通過する。室内器を通過する冷媒は、室内器において、車室内の空気との間で熱交換される。これにより、室内器を通過する冷媒は、車室内の空気へ熱を放出して、凝縮する。この結果、車室内の空気が暖められる。室内器において凝縮された冷媒は、第二膨張弁で減圧されることで低温低圧の状態となって、発熱体、第一膨張弁及び室外器を通過する。発熱体を通過する冷媒は、発熱体との間で熱交換される。これにより、発熱体を通過する冷媒が、発熱体から熱を奪って蒸発する。この結果、発熱体が冷却される。第一膨張弁を通過する冷媒は、第一膨張弁が無減圧状態(又は小減圧状態)であることで、圧力を維持したまま(圧力の低下が抑えられて)、室外器へ送られ、室外器を通過する。室外器を通過する冷媒は、室外器において、外気との間で熱交換される。これにより、室外器を通過する冷媒は、外気から熱を奪って蒸発する。
また、例えば、第一膨張弁を減圧状態とし且つ第二膨張弁を無減圧状態(又は小減圧状態)としたまま、第二循環経路で冷媒を循環させた場合には、冷媒は、圧縮機、室内器、無減圧状態(又は小減圧状態)の第二膨張弁、発熱体、減圧状態の第一膨張弁、室外器及び圧縮機の順で循環する。このように、冷媒を循環させることで、以下のような作用効果を生じさせることができる。
すなわち、第二循環経路を循環する冷媒は、圧縮機で圧縮されることで高温高圧の状態となって、室内器、第二膨張弁及び発熱体を通過する。室内器を通過する冷媒は、室内器において、車室内の空気との間で熱交換される。これにより、室内器を通過する冷媒は、車室内の空気へ熱を放出して、凝縮する。この結果、車室内の空気が暖められる。第二膨張弁を通過する冷媒は、第二膨張弁が無減圧状態(又は小減圧状態)であることで、圧力を維持したまま(圧力の低下が抑えられて)、発熱体へ送られ、発熱体を通過する。発熱体を通過する冷媒は、発熱体との間で熱交換される。これにより、発熱体を通過する冷媒が、発熱体へ熱を放出し凝縮する。この結果、発熱体が加熱される。発熱体において凝縮した冷媒は、第一膨張弁で減圧されることで低温低圧の状態となって、室外器を通過する。室外器を通過する冷媒は、室外器において、外気との間で熱交換される。これにより、室外器を通過する冷媒は、外気から熱を奪って蒸発する。
以上のように、請求項1の構成によれば、第一循環経路及び第二循環経路のいずれの経路で冷媒を循環させても、該冷媒によって発熱体の冷却及び発熱体の加熱を選択的に実行できる。
請求項3の発明では、冷房運転において、前記第一膨張弁は、前記冷媒を減圧する減圧状態となり、前記第二膨張弁は、前記冷媒を減圧しない無減圧状態、又は、前記冷媒を減圧するが前記減圧状態よりも減圧の程度が小さい小減圧状態となり、前記第一膨張弁によって減圧された冷媒と前記発熱体との間の熱交換により前記冷媒を蒸発させながら、前記第一循環経路にて前記冷媒を循環させ、暖房運転において、前記第二膨張弁は、前記減圧状態となり、前記第一膨張弁は、前記無減圧状態又は前記小減圧状態となり、前記第二膨張弁によって減圧された冷媒と前記発熱体との間の熱交換により前記冷媒を蒸発させながら、前記第二循環経路にて前記冷媒を循環させる。
請求項3の構成によれば、冷房運転において、第一膨張弁は減圧状態となり、第二膨張弁は無減圧状態又は小減圧状態となる。さらに、冷房運転において、第一膨張弁によって減圧された冷媒と発熱体との間の熱交換により冷媒を蒸発させながら、第一循環経路にて冷媒を循環させる。このように、冷媒と発熱体との間の熱交換により冷媒が蒸発することで、発熱体が冷却される。
また、暖房運転においては、第二膨張弁は減圧状態となり、第一膨張弁は無減圧状態又は小減圧状態となる。さらに、暖房運転において、第二膨張弁によって減圧された冷媒と発熱体との間の熱交換により冷媒を蒸発させながら、第二循環経路にて冷媒を循環させる。このように、冷媒と発熱体との間の熱交換により冷媒が蒸発することで、発熱体が冷却される。
以上のように、請求項3の構成によれば、冷房及び暖房のどちらの運転状態においても、発熱体を冷却できる。
請求項4の発明では、前記冷房運転及び前記暖房運転において、前記冷媒を流通させながら前記発熱体との間で熱交換することで前記冷媒を強制対流下で沸騰させる。
請求項4の構成によれば、冷房運転及び暖房運転において、冷媒が発熱体で流通しながら発熱体との間で熱交換することで、強制対流下で(強制対流している状態で)沸騰する。これにより、発熱体が冷却される。このように、冷媒が強制対流下で沸騰することで発熱体が冷却されるので、冷媒が貯留された状態でプール沸騰(自然対流下での沸騰)することで発熱体が冷却される構成に比べ、熱交換効率が向上する。
請求項1の発明では、冷房運転において、前記第二膨張弁は、冷媒を減圧する減圧状態となり、前記第一膨張弁は、冷媒を減圧しない無減圧状態、又は、前記冷媒を減圧するが前記減圧状態よりも減圧の程度が小さい小減圧状態となり、前記第一膨張弁を通過した冷媒と前記発熱体との間の熱交換により前記冷媒を凝縮させながら、前記第一循環経路にて前記冷媒を循環させ、暖房運転において、前記第一膨張弁は、前記減圧状態となり、前記第二膨張弁は、前記無減圧状態又は前記小減圧状態となり、前記第二膨張弁を通過した冷媒と前記発熱体との間の熱交換により前記冷媒を凝縮させながら、前記第二循環経路にて前記冷媒を循環させる。
請求項1の構成によれば、冷房運転において、第二膨張弁は減圧状態となり、第一膨張弁は無減圧状態又は小減圧状態となる。さらに、冷房運転において、第一膨張弁を通過した冷媒と発熱体との間の熱交換により冷媒を凝縮させながら、第一循環経路にて冷媒を循環させる。このように、冷媒と発熱体との間の熱交換により冷媒が凝縮することで、発熱体が加熱される。
また、暖房運転においては、第一膨張弁は減圧状態となり、第二膨張弁は無減圧状態又は小減圧状態となる。さらに、暖房運転において、第二膨張弁を通過した冷媒と発熱体との間の熱交換により冷媒を凝縮させながら、第二循環経路にて冷媒を循環させる。このように、冷媒と発熱体との間の熱交換により冷媒が凝縮することで、発熱体が加熱される。
以上のように、請求項1の構成によれば、冷房及び暖房のどちらの運転状態においても、発熱体を加熱できる。
請求項2の発明では、前記冷房運転及び前記暖房運転において、前記冷媒を流通させながら前記発熱体との間で熱交換することで前記冷媒を強制対流下で凝縮させる。
請求項2の構成によれば、冷房運転及び暖房運転において、冷媒が発熱体で流通しながら発熱体との間で熱交換することで、強制対流下で(強制対流している状態で)凝縮する。これにより、発熱体が加熱される。このように、冷媒が強制対流下で凝縮することで発熱体が加熱されるので、冷媒が貯留された状態において自然対流下で凝縮することで発熱体が加熱される構成に比べ、熱交換効率が向上する。
請求項1の発明では、複数の前記発熱体が前記循環路に直列に配置され、前記第一膨張弁は、前記複数の発熱体に対する前記室外器側に配置され、前記第二膨張弁は、前記複数の発熱体に対する前記室内器側に配置され、さらに、前記冷媒を膨張させ且つ開度が調整可能な第三膨張弁が、前記複数の発熱体のそれぞれの間に配置されている。
請求項1の構成によれば、第一循環経路及び第二循環経路において、複数の発熱体のそれぞれの上流側及び下流側で第一、第二、第三膨張弁を含む各膨張弁によって冷媒の圧力を調整することができる。これにより、第一循環経路及び第二循環経路において、複数の発熱体のそれぞれの上流側及び下流側で冷媒の飽和温度を調整できる。この結果、第一循環経路及び第二循環経路のいずれの経路で冷媒を循環させても、複数の発熱体のそれぞれの加熱温度及び冷却温度を調整できる。
請求項5の発明では、複数の前記発熱体が前記循環路における前記第一膨張弁及び前記第二膨張弁との間において並列に配置されている。
請求項5の構成によれば、第一循環経路において第一膨張弁を通過した冷媒を分流させて、複数の発熱体のそれぞれへ流通させることができる。第二循環経路において第二膨張弁を通過した冷媒を分流させて、複数の発熱体のそれぞれへ流通させることができる。したがって、第一膨張弁又は第二膨張弁を通過した冷媒が、複数の発熱体のそれぞれを順番に流通する直列配置に比べ、複数の発熱体のそれぞれを同等の温度で加熱及び冷却できる。
請求項6の発明では、前記循環路における前記第一膨張弁及び前記第二膨張弁との間において、前記複数の発熱体のそれぞれの前記第一膨張弁側及び前記第二膨張弁側に配置され、前記循環路を循環する冷媒の流量を調整可能な調整弁、を備える。
請求項6の構成によれば、複数の発熱体のそれぞれの第一膨張弁側及び第二膨張弁側に配置された調整弁によって、第一循環経路及び第二循環経路でを循環する冷媒の流量を調整可能とされている。このため、複数の発熱体のそれぞれを通過する冷媒の流量を調整できるので、複数の発熱体のそれぞれの加熱温度及び冷却温度を調整できる。
請求項7の発明では、前記循環路は、前記冷媒が前記発熱体を迂回する発熱体迂回路を有する。
請求項7の構成によれば、発熱体の冷却が不要な場合に、発熱体へ送られる冷媒の全部を発熱体迂回路によって迂回させることで、発熱体の冷却を停止できる。また、発熱体の冷却の程度を小さく抑えたい場合には、発熱体へ送られる冷媒の一部を発熱体迂回路によって迂回させることで、発熱体の冷却の程度を小さくできる。
請求項8の発明は、前記冷媒を気相の冷媒と液相の冷媒に分離して、該気相の冷媒を前記圧縮機へ送り、該液相の冷媒を貯留する貯留部を有するアキュムレータ、を備えており、前記循環路は、前記第一循環経路において、前記圧縮機、前記室外器、前記第一膨張弁、前記発熱体、前記第二膨張弁、前記室内器、前記アキュムレータ及び前記圧縮機の順で前記冷媒を循環させ、前記第二循環経路において、前記圧縮機、前記室内器、前記第二膨張弁、前記発熱体、前記第一膨張弁、前記室外器、前記アキュムレータ及び前記圧縮機の順で冷媒を循環させる。
請求項8の構成によれば、第一循環経路を循環する冷媒が、室内器を通過した後に液相の冷媒を含んでいた場合でも、液相の冷媒が圧縮機へ送られず、圧縮機への負荷増大が抑制される。さらに、第二循環経路を循環する冷媒が、室外器を通過した後に液相の冷媒を含んでいた場合でも、液相の冷媒が圧縮機へ送られず、圧縮機への負荷増大が抑制される。したがって、第一循環経路及び第二循環経路のいずれの経路で冷媒を循環させても、液相の冷媒が圧縮機へ送られず、圧縮機への負荷増大が抑制される。
本発明は、上記構成としたので、第一循環経路及び第二循環経路を有する車両用空調システムにおいて、第一循環経路及び第二循環経路のいずれの経路で冷媒を循環させても、該冷媒によって発熱体の冷却及び発熱体の加熱を選択的に実行できる。
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(車両用空調システム10)
まず、車両用空調システム10の構成について説明する。図1~図4には、車両用空調システム10の概略構成図が示されている。
車両用空調システム10は、車両の車室内における空気の温度等を調節(調整)するシステムであり、車両の車室を暖房及び冷房する機能を有している。さらに、車両用空調システム10は、車両に設けられた発熱体80の冷却及び加熱を選択的に実行する機能を有している。発熱する発熱体80としては、例えば、車両として電気自動車及びハイブリッド電気自動車等が用いられる場合の二次電池などが挙げられる。なお、二次電池は、温度が上昇して温度が所定温度を超えると、電池性能が低下し且つ劣化しやすくなる。また、二次電池は、温度が低下して温度が所定温度を下回ると、出力が低下する。
車両用空調システム10は、具体的には、図1~図4に示されるように、ヒートポンプ式の空調システムであり、圧縮機12と、室内器30と、室外器50と、第一膨張弁71と、第二膨張弁72と、アキュムレータ18と、循環路20と、を備えている。
圧縮機12は、冷媒(熱媒体)を圧縮する機能を有している。この圧縮機12は、冷媒を吸入する吸入口12Aと、冷媒を送り出す送出口12Bと、を有している。圧縮機12には、圧縮機12を駆動する駆動部13が設けられている。圧縮機12は、駆動部13によって駆動されて冷媒を圧縮することで高温高圧の状態となった冷媒を、送出口12Bから送り出す。
第一膨張弁71及び第二膨張弁72は、冷媒を膨張させることで冷媒を減圧させる機能を有している。第一膨張弁71及び第二膨張弁72は、開度を調整可能とされている。このため、第一膨張弁71及び第二膨張弁72は、自らの開度により、冷媒を減圧する状態(以下、減圧状態という)と、冷媒を減圧しない状態(以下、無減圧状態という)と、冷媒を減圧するが前記減圧状態よりも減圧の程度が小さい状態(以下、小減圧状態)と、になりうる。冷媒は、減圧状態の第一膨張弁71(又は減圧状態の第二膨張弁72)によって減圧されることで、低温低圧の状態となって、第一膨張弁71(又は第二膨張弁72)から送り出される。
室内器30は、車室から取り込んだ車室内の空気(以下、車内空気という)と冷媒との間で熱交換する熱交換器33と、熱交換器33によって冷媒との間で熱交換された車内空気を車室内へ放出する送風機37と、を有している。室内器30では、車室内から取り込んだ車内空気を、熱交換器33によって、冷媒との間で熱交換して、該車内空気を送風機37によって車室内へ放出する。
具体的には、室内器30では、車両用空調システム10の冷房運転において、熱交換器33における熱交換よって、冷媒が車内空気から熱を奪って車内空気を冷却し、その冷気を送風機37によって車室内へ放出する。このとき、冷媒は、蒸発する。また、室内器30では、車両用空調システム10の暖房運転において、熱交換器33おける熱交換によって、冷媒が車内空気へ熱を放出して車内空気を加熱し、その熱気を送風機37によって車室内へ放出する。このとき、冷媒は、凝縮する。
室外器50は、車外から取り込んだ外気と冷媒との間で熱交換する熱交換器53と、熱交換器53によって冷媒との間で熱交換された外気を車外へ放出する送風機57と、を有している。室外器50では、車外から取り込んだ外気を、熱交換器53によって、冷媒との間で熱交換して、該外気を送風機57によって車外へ放出する。
具体的には、室外器50では、車両用空調システム10の暖房運転において、熱交換器53における熱交換によって、冷媒が外気から熱を奪って外気を冷却し、その冷気を送風機57によって車外へ放出する。このとき、冷媒は、蒸発する。また、室外器50では、車両用空調システム10の冷房運転において、熱交換器53における熱交換よって、冷媒が外気へ熱を放出して外気を加熱し、その熱気を送風機57によって車外へ放出する。このとき、冷媒は、凝縮する。
アキュムレータ18は、気相の冷媒と液相の冷媒を分離して、気相の冷媒を圧縮機12へ送る機能を有している。アキュムレータ18は、気相の冷媒と分離された液相の冷媒を貯留する貯留部18Aを有している。
循環路20は、冷媒を循環させる流路であり、冷媒の循環経路を切り替える切替手段としての四方弁40を有している。四方弁40は、第一ポート41、第二ポート42、第三ポート43及び第四ポート44を有している。四方弁40では、第一ポート41と第二ポート42とが連通し且つ第三ポート43と第四ポート44とが連通する第一連通状態(図1及び図2に示す状態)と、第一ポート41と第四ポート44とが連通し且つ第二ポート42と第三ポート43とが連通する第二連通状態(図3及び図4に示す状態)と、に切り替え可能となっている。四方弁40には、四方弁40を第一連通状態と第二連通状態と切り替える駆動部49が設けられている。
さらに、循環路20は、第一流路21と、第二流路22と、第三流路23と、第四流路24と、第五流路25と、第六流路26と、第七流路27と、を有している。第一流路21は、圧縮機12の送出口12Bと、四方弁40の第一ポート41と、を連通している。第二流路22は、四方弁40の第二ポート42と、室外器50と、を連通している。第三流路23は、室外器50と、第一膨張弁71と、を連通している。第四流路24は、第一膨張弁71と、第二膨張弁72と、を連通している。第五流路25は、第二膨張弁72と、室内器30と、を連通している。第六流路26は、室内器30と、四方弁40の第四ポート44と、を連通している。第七流路27は、四方弁40の第三ポート43と、圧縮機12の吸入口12Aと、を連通している。なお、図1~図4には、循環路20を循環する冷媒の流通方向が、矢印にて示されている。以下、冷媒の流通方向を「冷媒流通方向」と称する。
第四流路24には、前述の発熱体80が配置されている。したがって、発熱体80は、第一膨張弁71に対する冷媒流通方向下流側であって、第二膨張弁72に対する冷媒流通方向上流側に配置されている。第四流路24は、発熱体80と熱的に接触しており、第四流路24を流通する冷媒と発熱体80との間で熱交換がなされる。
第七流路27には、前述のアキュムレータ18が配置されている。したがって、アキュムレータ18は、四方弁40の第三ポート43に対する冷媒流通方向下流側であって、圧縮機12に対する冷媒流通方向上流側に配置されている。
車両用空調システム10における冷房運転は、四方弁40が第一連通状態(図1及び図2に示す状態)となっている場合に、第一連通状態を維持した状態で、開始される。また、当該冷房運転は、四方弁40が第二連通状態となっている場合には、駆動部49によって第一連通状態へ切り替えられてから、開始される。
四方弁40が第一連通状態へ切り替わることで、図1及び図2に示されるように、循環路20は、第一流路21、第二流路22、第三流路23、第四流路24、第五流路25、第六流路26、第七流路27及び第一流路21の順で、連通した状態となる。これにより、車両用空調システム10における冷房運転において、圧縮機12、室外器50、第一膨張弁71、発熱体80、第二膨張弁72、室内器30、アキュムレータ18、及び圧縮機12の順で、冷媒を循環させる第一循環経路(図1及び図2に示す経路)が形成される。
一方、車両用空調システム10における暖房運転は、四方弁40が第二連通状態(図3及び図4に示す状態)となっている場合に、第二連通状態を維持した状態で、開始される。また、当該暖房運転は、四方弁40が第一連通状態となっている場合には、駆動部49によって第二連通状態へ切り替えられてから、開始される。
四方弁40が第二連通状態へ切り替わることで、図3及び図4に示されるように、循環路20は、第一流路21、第六流路26、第五流路25、第四流路24、第三流路23、第二流路22、第七流路27、及び第一流路21の順で、連通した状態となる。これにより、車両用空調システム10における暖房運転において、圧縮機12、室内器30、第二膨張弁72、発熱体80、第一膨張弁71、室外器50、アキュムレータ18、及び圧縮機12の順で、冷媒を循環させる第二循環経路(図3及び図4に示す経路)が形成される。なお、第二循環経路と第一循環経路とでは、第二流路22、第三流路23、第四流路24、第五流路25及び第六流路26における冷媒流通方向が逆になり、第一流路21及び第七流路27における冷媒流通方向は同じである。
以上のように、四方弁40が第一連通状態(図1及び図2に示す状態)と第二連通状態(図3及び図4に示す状態)とに切り替わることで、循環路20は、第一循環経路と第二循環経路とに切り替わるようになっている。
車両用空調システム10における冷房運転において、発熱体80を冷却する場合には(冷却モード)、図1に示されるように、第一膨張弁71の開度を小さくし、第二膨張弁72の開度を大きくする。すなわち、第一膨張弁71を、冷媒を減圧する減圧状態にし、第二膨張弁72を、冷媒を減圧しない無減圧状態、又は、冷媒を減圧するが減圧状態よりも減圧の程度が小さい小減圧状態にする。これにより、冷媒は、第一膨張弁71によって減圧され、低温低圧の状態(液相を含む状態)となって発熱体80及び室内器30を通過する。そして、冷媒が、液相の冷媒を含んだ状態で第四流路24を流通しながら、発熱体80との間で熱交換されることで、冷媒が強制対流下で(強制対流している状態で)沸騰して、発熱体80が冷却される構成となっている。発熱体80を通過した冷媒は、液相の冷媒を含む状態のまま、第二膨張弁72を通過し、室内器30へ送られる。
車両用空調システム10における冷房運転において、発熱体80を加熱する場合には(加熱モード)、図2に示されるように、第二膨張弁72の開度を小さくし、第一膨張弁71の開度を大きくする。すなわち、第二膨張弁72を、冷媒を減圧する減圧状態にし、第一膨張弁71を、冷媒を減圧しない無減圧状態、又は、冷媒を減圧するが前記減圧状態よりも減圧の程度が小さい小減圧状態にする。これにより、高温高圧の状態(気相の冷媒を含む状態)の冷媒は、第一膨張弁71での圧力低下が抑えられ、気相の冷媒を含む状態のまま、発熱体80へ送られ、発熱体80を通過する。そして、冷媒が、気相の冷媒を含んだ状態で第四流路24を流通しながら、発熱体80との間で熱交換されることで、冷媒が強制対流下で(強制対流している状態で)凝縮して、発熱体80が加熱される構成となっている。さらに、第二膨張弁72によって減圧され、低温低圧の状態(液相を含む状態)となって室内器30へ送られる。
車両用空調システム10における暖房運転において、発熱体80を冷却する場合には(冷却モード)、図3に示されるように、第二膨張弁72の開度を小さくし、第一膨張弁71の開度を大きくする。すなわち、第二膨張弁72を、冷媒を減圧する減圧状態にし、第一膨張弁71を、冷媒を減圧しない無減圧状態、又は、冷媒を減圧するが前記減圧状態よりも減圧の程度が小さい小減圧状態にする。これにより、冷媒は、第二膨張弁72によって減圧され、低温低圧の状態(液相を含む状態)となって発熱体80及び室外器50を通過する。そして、冷媒が、液相の冷媒を含んだ状態で第四流路24を流通しながら、発熱体80との間で熱交換されることで、冷媒が強制対流下で沸騰して、発熱体80が冷却される構成となっている。発熱体80を通過した冷媒は、液相の冷媒を含む状態のまま、第一膨張弁71を通過し、室外器50へ送られる。
車両用空調システム10における暖房運転において、発熱体80を加熱する場合には(加熱モード)、図4に示されるように、第一膨張弁71の開度を小さくし、第二膨張弁72の開度を大きくする。すなわち、第一膨張弁71を、冷媒を減圧する減圧状態にし、第二膨張弁72を、冷媒を減圧しない無減圧状態、又は、冷媒を減圧するが前記減圧状態よりも減圧の程度が小さい小減圧状態にする。これにより、高温高圧の状態(気相の冷媒を含む状態)の冷媒は、第二膨張弁72での圧力低下が抑えられ、気相の冷媒を含む状態のまま、発熱体80へ送られ、発熱体80を通過する。そして、冷媒が、気相の冷媒を含んだ状態で第四流路24を流通しながら、発熱体80との間で熱交換されることで、冷媒が強制対流下で凝縮して、発熱体80が加熱される構成となっている。さらに、第一膨張弁71によって減圧され、低温低圧の状態(液相を含む状態)となって室外器50へ送られる。
(車両用空調システム10の作用効果)
次に、車両用空調システム10の作用効果について説明する。
車両用空調システム10では、冷房運転をしながら発熱体80を冷却する場合(冷房、冷却モード)には、第一膨張弁71の開度を小さくし、第二膨張弁72の開度を大きくしたまま、第一循環経路で冷媒を循環させる。すなわち、第一膨張弁71を減圧状態とし且つ第二膨張弁72を無減圧状態(又は小減圧状態)としたまま、第一循環経路で冷媒を循環させる。第一循環経路では、圧縮機12、室外器50、第一膨張弁71、発熱体80、第二膨張弁72、室内器30、アキュムレータ18及び圧縮機12の順で冷媒が循環する。
第一循環経路を循環する冷媒は、圧縮機12で圧縮されることで高温高圧の状態となって、室外器50を通過する。室外器50を通過する冷媒は、室外器50において外気との間で熱交換される。これにより、室外器50を通過する冷媒は、外気へ熱を放出して凝縮する。室外器50において凝縮された冷媒は、第一膨張弁71で減圧されることで、低温低圧の状態となって、発熱体80、第二膨張弁72及び室内器30をこの順で通過する。発熱体80を通過する冷媒は、発熱体80との間で熱交換される。これにより、発熱体80を通過する冷媒が、発熱体80から熱を奪って蒸発する。この結果、発熱体80が冷却される。第二膨張弁72を通過する冷媒は、第二膨張弁72が無減圧状態(又は小減圧状態)であることで、圧力を維持したまま(圧力の低下が抑えられて)、室内器30へ送られ、該冷媒が室内器30を通過する。室内器30を通過する冷媒は、室内器30において、車室内の空気との間で熱交換される。これにより、室内器30を通過する冷媒は、車室内の空気から熱を奪って蒸発する。この結果、車室内の空気が冷やされ、その冷気が送風機37によって車室内へ放出される。冷房運転をしながら発熱体80を冷却する場合(冷房、冷却モード)では、冷媒が、液相の冷媒を含んだ状態で第四流路24を流通しながら、発熱体80との間で熱交換されることで、冷媒が強制対流下で沸騰して、発熱体80を冷却する。
冷房運転をしながら発熱体80を加熱する場合(冷房、加熱モード)には、第一膨張弁71の開度を大きくし、第二膨張弁72の開度を小さくしたまま、第一循環経路で冷媒を循環させる。すなわち、第一膨張弁71を無減圧状態(又は小減圧状態)とし且つ第二膨張弁72を減圧状態としたまま、第一循環経路で冷媒を循環させる。
第一循環経路を循環する冷媒は、圧縮機12で圧縮されることで高温高圧の状態となって、室外器50、第一膨張弁71及び発熱体80を通過する。室外器50を通過する冷媒は、室外器50において外気との間で熱交換される。これにより、室外器50を通過する冷媒は、外気へ熱を放出して凝縮する。第一膨張弁71を通過する冷媒は、第一膨張弁71が無減圧状態(又は小減圧状態)であることで、圧力を維持したまま(圧力の低下が抑えられて)、気相の冷媒を含んだ状態で発熱体80へ送られ、発熱体80を通過する。発熱体80を通過する冷媒は、発熱体80との間で熱交換される。これにより、発熱体80を通過する冷媒が、発熱体80へ熱を放出し凝縮する。この結果、発熱体80が加熱される。発熱体80において凝縮した冷媒は、第二膨張弁72で減圧されることで低温低圧の状態となって、室内器30を通過する。室内器30を通過する冷媒は、室内器30において、車室内の空気との間で熱交換される。これにより、室内器30を通過する冷媒が、車室内の空気から熱を奪って蒸発する。この結果、車室内の空気が冷やされ、その冷気が送風機37によって車室内へ放出される。冷房運転をしながら発熱体80を加熱する場合(冷房、加熱モード)では、冷媒が、気相の冷媒を含んだ状態で第四流路24を流通しながら、発熱体80との間で熱交換されることで、冷媒が強制対流下で凝縮して、発熱体80を加熱する。
暖房運転をしながら発熱体80を冷却する場合(暖房、冷却モード)には、第一膨張弁71の開度を大きくし、第二膨張弁72の開度を小さくしたまま、第二循環経路で冷媒を循環させる。すなわち、第一膨張弁71を無減圧状態(又は小減圧状態)とし且つ第二膨張弁72を減圧状態としたまま、第二循環経路で冷媒を循環させる。
第二循環経路を循環する冷媒は、圧縮機12で圧縮されることで高温高圧の状態となって、室内器30を通過する。室内器30を通過する冷媒は、室内器30において車内空気との間で熱交換される。これにより、室内器30を通過する冷媒は、車内空気へ熱を放出して凝縮する。この結果、車室内の空気が暖められ、その熱気が送風機37によって車室内へ放出される。室内器30において凝縮された冷媒は、第二膨張弁72で減圧されることで、低温低圧の状態となって、発熱体80、第一膨張弁71及び室外器50をこの順で通過する。発熱体80を通過する冷媒は、発熱体80との間で熱交換される。これにより、発熱体80を通過する冷媒が、発熱体80から熱を奪って蒸発する。この結果、発熱体80が冷却される。第一膨張弁71を通過する冷媒は、第一膨張弁71が無減圧状態(又は小減圧状態)であることで、圧力を維持したまま(圧力の低下が抑えられて)、室外器50へ送られ、該冷媒が室外器50を通過する。室外器50を通過する冷媒は、室外器50において、外気との間で熱交換される。これにより、室外器50を通過する冷媒は、外気から熱を奪って蒸発する。なお、冷媒は、室外器50の上流で発熱体80から受熱するので、室外器50での必要な受熱量が少なくて済み、室外器50の着想が低減できる。暖房運転をしながら発熱体80を冷却する場合(暖房、冷却モード)では、冷媒が、液相の冷媒を含んだ状態で第四流路24を流通しながら、発熱体80との間で熱交換されることで、冷媒が強制対流下で沸騰して、発熱体80を冷却する。
車両用空調システム10では、暖房運転をしながら発熱体80を加熱する場合(暖房、加熱モード)には、第一膨張弁71の開度を小さくし、第二膨張弁72の開度を大きくしたまま、第二循環経路で冷媒を循環させる。すなわち、第一膨張弁71を減圧状態とし且つ第二膨張弁72を無減圧状態(又は小減圧状態)としたまま、第二循環経路で冷媒を循環させる。
第二循環経路を循環する冷媒は、圧縮機12で圧縮されることで高温高圧の状態となって、室内器30、第二膨張弁72及び発熱体80を通過する。室内器30を通過する冷媒は、室内器30において車内空気との間で熱交換される。これにより、室内器30を通過する冷媒は、車内空気へ熱を放出して凝縮する。この結果、車室内の空気が暖められ、その熱気が送風機37によって車室内へ放出される。第二膨張弁72を通過する冷媒は、第二膨張弁72が無減圧状態(又は小減圧状態)であることで、圧力を維持したまま(圧力の低下が抑えられて)、気相の冷媒を含んだ状態で発熱体80へ送られ、発熱体80を通過する。発熱体80を通過する冷媒は、発熱体80との間で熱交換される。これにより、発熱体80を通過する冷媒が、発熱体80へ熱を放出し凝縮する。この結果、発熱体80が加熱される。発熱体80において凝縮した冷媒は、第一膨張弁71で減圧されることで低温低圧の状態となって、室外器50を通過する。室外器50を通過する冷媒は、室外器50において、外気との間で熱交換される。これにより、室外器50を通過する冷媒は、外気から熱を奪って蒸発する。暖房運転をしながら発熱体80を加熱する場合(暖房、加熱モード)では、冷媒が、気相の冷媒を含んだ状態で第四流路24を流通しながら、発熱体80との間で熱交換されることで、冷媒が強制対流下で凝縮して、発熱体80を加熱する。
以上のように、車両用空調システム10によれば、第一循環経路及び第二循環経路のいずれの経路で冷媒を循環させても、冷媒によって発熱体80の冷却及び発熱体の加熱を選択的に実行できる。言い換えれば、車両用空調システム10では、冷房及び暖房のどちらの運転状態においても、発熱体80の冷却及び発熱体の加熱を選択的に実行できる。
また、車両用空調システム10の構成によれば、室内器30と室外器50との間に発熱体80を配置し且つ発熱体80の室内器30側及び室外器50側に膨張弁を配置することで、第一循環経路及び第二循環経路を循環する冷媒を用いて、発熱体80の冷却及び発熱体の加熱を選択的に実行できる。したがって、従来の車両用空調システムに膨張弁を1つ追加することのみで、すなわち、少ない要素の追加で、第一循環経路及び第二循環経路を循環する冷媒を用いて、発熱体80の冷却及び発熱体80の加熱を選択的に実行することができる。
さらに、車両用空調システム10の構成によれば、冷房運転及び暖房運転における冷却モードにおいて、液相の冷媒を含む冷媒が、発熱体80で流通しながら発熱体80との間で熱交換することで、強制対流下で沸騰して発熱体80を冷却する。このため、冷媒が貯留された状態においてプール沸騰(自然対流下で沸騰)して発熱体80を冷却する構成(比較例)に比べ、熱交換効率が向上する。
さらに、車両用空調システム10の構成によれば、冷房運転及び暖房運転における加熱モードにおいて、気相の冷媒を含む冷媒が、発熱体80で流通しながら発熱体80との間で熱交換することで、強制対流下で凝縮して発熱体80を加熱する。このため、冷媒が貯留された状態において自然対流下で凝縮して発熱体80を加熱する構成(比較例)に比べ、熱交換効率が向上する。
また、車両用空調システム10では、第一循環経路を循環する冷媒は、室内器30を通過した後、アキュムレータ18で、気相の冷媒と液相の冷媒を分離されて、気相の冷媒が圧縮機12へ送られる。このため、第一循環経路を循環する冷媒が、室内器30を通過した後に、液相の冷媒を含んでいた場合でも、液相の冷媒が圧縮機12へ送られず、圧縮機12への負荷増大が抑制される。
同様に、第二循環経路を循環する冷媒が、室外器50を通過した後に液相の冷媒を含んでいた場合でも、液相の冷媒が圧縮機12へ送られず、圧縮機12への負荷増大が抑制される。したがって、第一循環経路及び第二循環経路のいずれの経路で冷媒を循環させても、液相の冷媒が圧縮機12へ送られず、圧縮機12への負荷増大が抑制される。
(循環路20の変形例)
循環路20は、図5に示されるように、冷媒が発熱体80を迂回する発熱体迂回路122を有していてもよい。図5に示す構成では、発熱体迂回路122の一端が、第四流路24における発熱体80に対する冷媒流通方向の一端側に接続(連通)されている。発熱体迂回路122の他端は、第四流路24における発熱体80に対する冷媒流通方向の他端側に接続(連通)されている。発熱体迂回路122には、発熱体迂回路122を開閉する開閉弁124が設けられている。第四流路24における発熱体迂回路122の一端と発熱体80との間には、第四流路24を開閉する開閉弁127が設けられている。第四流路24における発熱体迂回路122の他端と発熱体80との間には、第四流路24を開閉する開閉弁129が設けられている。
図5に示す構成では、冷房運転及び暖房運転において、発熱体80を冷却する場合には、開閉弁124を閉じると共に開閉弁129を開く。これにより、冷媒は、発熱体迂回路122を流通せずに、発熱体80へ送られる。
一方、冷房運転において、発熱体80の冷却が不要な場合には、開閉弁124を開くと共に開閉弁127を閉じる。これにより、冷媒は、発熱体80に送られず、発熱体迂回路122を流通する。また、暖房運転において、発熱体80の冷却が不要な場合には、開閉弁124を開くと共に開閉弁129を閉じる。これにより、冷媒は、発熱体80に送られず、発熱体迂回路122を流通する。以上のように、開閉弁124、127、129の開閉を制御することで、冷媒が発熱体80を通過するか否かが切り替えられる。すなわち、開閉弁124、127、129が、冷媒が発熱体80を通過するか否かを切り替える切替手段として機能する。
以上のように、図5に示す構成では、発熱体80の冷却が不要な場合に、発熱体80へ送られる冷媒の全部を発熱体迂回路122によって迂回させることで、発熱体80の冷却を停止できる。図5に示す構成では、発熱体80の両側及び発熱体迂回路122に開閉弁を設けていたが、これに限られない。例えば、以下のように構成してもよい。すなわち、第一膨張弁71と発熱体80とが連通した状態と、第一膨張弁71と発熱体迂回路122の一端とが連通した状態と、に切り替える切替弁(三方弁)等を、第四流路24と発熱体迂回路122の一端との分岐部分(接続部分)に設ける。さらに、第二膨張弁72と発熱体80とが連通した状態と、第二膨張弁72と発熱体迂回路122の他端とが連通した状態と、に切り替える切替弁(三方弁)等を、第四流路24と発熱体迂回路122の他端との分岐部分(接続部分)に設ける。
た構成であってもよい。
図5に示す構成では、発熱体80へ送られる冷媒の全部を発熱体迂回路122によって迂回させる構成とされていたが、これに限られない。例えば、発熱体80へ送られる冷媒の一部を発熱体迂回路122によって迂回させる構成であってもよい。具体的には、例えば、図5に示す構成において、開閉弁127、129を無くし、且つ、開閉弁124に替えて、発熱体迂回路122を流通する冷媒の流量を調整可能な調整弁を設ける構成とすることができる。この構成によれば、発熱体80の冷却の程度を小さく抑えたい場合に、発熱体迂回路122で流通する冷媒の流量を増加させることで、発熱体80へ送られる冷媒の一部を発熱体迂回路122によって迂回させ、発熱体80の冷却の程度を小さくできる。
(発熱体80の直列配置)
第四流路24に複数の発熱体80A、80Bを配置する場合には、図6に示されるように、発熱体80A、80Bを直列に配置することができる。図6に示す構成では、第四流路24における発熱体80Aと発熱体80Bとの間に第三膨張弁73が配置されている。すなわち、複数(具体的には3つ)の膨張弁の間のそれぞれに、複数の発熱体80A、80Bが1つずつ配置されている。
第三膨張弁73は、第一膨張弁71及び第二膨張弁72と同様に、構成されている。すなわち、第三膨張弁73は、冷媒を膨張させることで冷媒を減圧させる機能を有している。第三膨張弁73は、開度を調整可能とされている。このため、第三膨張弁73は、自らの開度により、冷媒を減圧する状態(以下、減圧状態という)と、冷媒を減圧しない状態(以下、無減圧状態という)と、冷媒を減圧するが前記減圧状態よりも減圧の程度が小さい状態(以下、小減圧状態)と、になりうる。冷媒は、第三膨張弁73によって減圧されることで、低温低圧の状態となって、第三膨張弁73から送り出される。
この構成では、第一循環経路(冷房運転)及び第二循環経路(暖房運転)において、発熱体80A及び発熱体80Bのそれぞれの上流側及び下流側で、第一膨張弁71、第二膨張弁72及び第三膨張弁73のそれぞれによって冷媒の圧力を調整することで冷媒の飽和温度を調整できる。これにより、第一循環経路及び第二循環経路のいずれの経路で冷媒を循環させても(冷房及び暖房のどちらの運転状態においても)、発熱体80A及び発熱体80Bのそれぞれの加熱温度及び冷却温度を調整できる。
なお、図6に示す構成において、発熱体迂回路122を設ける場合には、図7に示されるように、発熱体迂回路122の一端が、第四流路24における発熱体80Aに対する冷媒流通方向の一端側に接続(連通)される。発熱体迂回路122の他端は、第四流路24における発熱体80Bに対する冷媒流通方向の他端側に接続(連通)される。
(発熱体80の並列配置)
第四流路24に複数の発熱体80A、80Bを配置する場合には、図8に示されるように、循環路20における第一膨張弁71及び第二膨張弁72との間において発熱体80A、80Bを並列に配置することができる。
図8に示す構成では、第一膨張弁71又は第二膨張弁72を通過した冷媒を分流させて、発熱体80A及び発熱体80Bのそれぞれへ流通させることができる。このため、第一膨張弁71又は第二膨張弁72を通過した冷媒が、発熱体80A及び発熱体80Bのそれぞれを順番に流通する直列配置に比べ、発熱体80A及び発熱体80Bのそれぞれを同等の温度で加熱及び冷却できる。
さらに、図8に示す構成において、図9に示されるように、第四流路24を循環する冷媒の流量を調整可能な調整弁340を、循環路20における第一膨張弁71及び第二膨張弁72との間において、発熱体80A及び発熱体80Bのそれぞれの第一膨張弁71側及び第二膨張弁72側に配置してもよい。この構成では、第一循環経路(冷房運転)及び第二循環経路(暖房運転)において、発熱体80A及び発熱体80Bのそれぞれを通過する冷媒の流量を調整できる。このため、第一循環経路及び第二循環経路のいずれの経路で冷媒を循環させても(冷房及び暖房のどちらの運転状態においても)、発熱体80A及び発熱体80Bのそれぞれの加熱温度及び冷却温度を調整できる。
なお、図8に示す構成において、発熱体迂回路122を設ける場合には、例えば、図10に示されるように、発熱体迂回路122の一端を、第四流路24における発熱体80A、80Bに対する冷媒流通方向の一端側に接続(連通)することができる。さらに、発熱体迂回路122の他端は、第四流路24における発熱体80A、80Bに対する冷媒流通方向の他端側に接続(連通)することができる。
(他の変形例)
また、本実施形態では、第七流路27にアキュムレータ18が設けられていたが、これに限られない。例えば、冷媒が発熱体80において蒸発(沸騰)した結果、冷媒のほとんどが気相となる場合には、アキュムレータ18が設けられていない構成であってもよい。
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。