以下、本開示における実施例の形態を添付図面を参照して説明する。図1に示す本実施例の異物検知システムは、対象領域Aとして機械式駐車設備の入出庫スペースを想定している。対象領域A内には、車両1を運搬するパレット2が出入りするようになっており、このパレット2上にあたる領域が車両1の停止スペースPに設定されている。そして、対象領域A内において、停止スペースPに停止した車両1以外に物体(異物)Oが存在する場合に、該異物Oを検知するようになっている。尚、「異物」とは、対象領域内に存在する車両以外の物体であって、対象領域にもとより設置された物体以外の物体、例えば、車両の運転者、乗員、設備の係員等の人、また、手荷物、ゴミ等を指す。図1には、一例として対象領域A内に2つの異物Oを図示している。
入出庫スペースである対象領域Aは、四方を壁で囲まれた空間であり、奥側(図中上側)に搬送口3が、手前側(図中下側)に入出庫口4が設けられている。車両1を搬送するパレット2は、対象領域A外の格納スペース(図示せず)から搬送口3を通じて入出庫スペースである対象領域Aに出入りする。対象領域Aにおけるパレット2の定位置は、対象領域Aの中央部である。入庫時において、車両1は、入出庫口4を通じて対象領域A内に進入し、パレット2上の停止スペースPに停止し、パレット2と共に搬送口3から前記格納スペースへ搬送され、格納される。出庫時には、車両1はパレット2と共に前記格納スペースから搬送口3を通じて対象領域A内に搬送された後、入出庫口4から対象領域A外へ退出する。
対象領域Aには、該対象領域A内の測定を行う測域装置としての測域センサ5が配置されている。測域センサ5は、図1に矢印で示す如く、レーザ光や超音波等を照射波として周囲の空間に照射し、反射波を検出する装置である。測域センサ5からの照射波が周囲の物体、あるいは壁、床、柱といった構造物に到達して反射し、その反射波が測域センサ5に検出されると、反射した点の測域センサ5からの距離、および測域センサ5に対する角度がデータとして取得される(以下、測域センサ5によって反射波を検出された対象領域A内の点を、被検出点と称する)。
本実施例では、例えば図1中に示す如く、平面視で長方形状をなす対象領域Aに対し、2個の測域センサ5を、互いに対角線をなす角部に配置する。このように、一対の測域センサ5を、車両1の停止スペースPを挟むように配置することで、停止スペースPの平面視における全周を、測域センサ5の測定範囲に含むことができる。照射波は原則として直進するので、仮に対象領域Aに対して測域センサ5を1個だけ配置した場合、測域センサ5から見て停止スペースPに停止した車両1の反対側については測定範囲外となってしまう。そこで、図1に示す如く測域センサ5を配置すれば、車両1の周辺の領域全体について漏れなく異物検知を行うことができるのである。
さらに、対象領域A内には、停止スペースPに向かって進入する車両1の前方および左右にあたる位置に撮像装置6を設けている。この撮像装置6は、例えば車両1の前面および左右側面の画像データを取得するカメラであり、後述するように、車両1の車種を特定するために設置されている。
各測域センサ5により取得された各被検出点のデータは、測定信号5aとして制御装置7に入力され、処理される。また、撮像装置6により取得された車両1の画像データは、データ信号6aとして制御装置7に入力され、車種の特定に利用される。制御装置7は、入出庫スペースである対象領域Aを含む機械式駐車場全体を監視し、各部の運転を行う装置であり、搬送口3および入出庫口4の開閉、パレット2の搬送、各測域センサ5および各撮像装置6の作動等を制御する。また、制御装置7は、撮像装置6にて取得された画像、測域センサ5にて取得された車両1の位置情報および対象領域Aの被検出点データ等の処理を行う。
制御装置7は、各種のデータを記憶する記憶部7aと、機械式駐車場の各種設備機器類(搬送口3、測域センサ5等)と通信し、各種信号の授受を行う通信部7bと、各種のデータ処理を行う演算部7cを備えている。記憶部7aには、後述する車種認識の工程で使用する車種データDが格納されている。車種データDは、現在、使用されている種々の車両の外形、各部の寸法、カラーバリエーションといったデータを車種別に整理したデータであり、データベースの形で販売されている製品を使用することができる。
入出庫口4近傍の外壁には、操作部8が備えられている。操作部8を操作すると、操作の内容に応じた操作信号8aが制御装置7に入力される。制御装置7では、操作信号8aの入力に応じ、入出庫口4の開閉、パレット2の搬送といった各種の動作を実行するようになっている。尚、操作部8の設置位置は、ここに示した例に限らず、入出庫口4をはじめとする各部の動作等に好適な適宜位置を選択することができる。
また、対象領域A内におけるパレット2の近傍には、停止判定装置としての位置センサ9が配置されている。位置センサ9は、測定範囲にレーザ光あるいは超音波といった照射波を照射し、反射波によって測定範囲内の物体の有無、該物体の距離、速度等を検出する装置である。本実施例においては、図1に示す如く、位置センサ9は停止スペースPに向けて照射波を照射すると共に反射波を観測するようになっており、位置センサ9の検出した情報は、位置信号9aとして制御装置7に送信される。そして、パレット2内の停止スペースPに車両1が停止した場合に、車両1の停止を制御装置7において把握できるようになっている。
尚、車両1の停止を判定する仕組みは、ここに示した例に限定されない。停止判定装置(位置センサ)9としては、車両1の停止を判定できる限りにおいて種々の形式の装置を使用できるし、設置の個数、位置等も適宜設定できる。
対象領域Aの内外の各所には、警報装置10が備えられている。警報装置10は、制御装置7の管理する領域(対象領域Aを含む)において、人員に対して注意を促すべき何らかの事態が生じた場合に警報を発する装置であり、制御装置7からの警報信号10aの入力により作動する。「人員に対して注意を促すべき何らかの事態」とは、例えば車両1を対象領域A外の格納スペースへ移動させるにあたり、後述する異物検知の工程を実行した結果、対象領域Aに車両1以外の異物Oが検知された場合などである。警報の内容は、アラーム音、警告灯の点灯、警告メッセージの表示など、人員に対して注意を喚起できればどのようなものであっても良く、適当な形式を選択することができる。
ここに示した例では、警報装置10を対象領域Aの内壁、および入出庫口4近傍の外壁に図示しているが、この他の箇所にも必要に応じて警報装置10を設けても良い。例えば、図示しない機械式駐車場の管理室等に警報装置10を備えることもできる。
測定信号5a、データ信号6a、操作信号8a、位置信号9a、警報信号10aといった各種の信号のやり取りは、有線または無線いずれの形式で行っても良い。一例としては、Ethernet(登録商標)等により、制御装置7と測域センサ5、撮像装置6、操作部8、位置センサ9、警報装置10といった装置を接続し、相互に通信を行うように構成することができる。
次に、上記した本実施例の作動を説明する。
図1に示す本実施例の異物検知システムでは、対象領域A内の異物Oの検知を行う。検知にあたっては、例えば後に説明するように、ある時点における対象領域A内の状態と、別の時点における対象領域A内の状態を比較すれば良い。つまり、それぞれの時点で測域センサ5により対象領域A内の測定を行い、取得した被検出点データ同士を比較し、両データ間に所定以上の差が見られた時に異物を検知したと判定するのである。
ところで、機械式駐車場の入出庫スペースである対象領域Aにおいては、停止スペースPに車両1が存在している状態で異物Oの検知を行う場合と、停止スペースPに車両1が存在しない空室状態で異物Oの検知を行う場合の両方が想定できる。そして、上述の如く被検出点データの比較により異物検知を実行しようとした場合、車両1の有無により異物検知に支障が出る可能性がある。つまり、比較に係る両時点のうち、一方では車両1が停止スペースPにあり、他方では存在しない場合、車両1の有無によって被検出点データに差が生じ、異物Oが実際には無くても異物を検知したと判定されてしまうのである。
こうした事態を避けて異物の検知を正しく行うには、停止スペースPの同じ位置に同じ車両1が同じ姿勢で存在している状態同士で被検出点データを比較するか、対象領域A内に車両1が存在しない状態同士で比較すれば良い。
ただし、このような時間的な制限は極力少ない方が良く、例えば、空室状態の対象領域Aと、車両1が停止スペースPに停止した状態の対象領域Aとの比較により異物検知を実行できた方が、より便利である。このためには、車両1の有無については異物検知の判定対象から除外し、車両1以外の領域についてのみ異物検知を行うようにすれば良い。このためには、まず車両1の占める領域を特定し、車両1の占める領域以外について異物Oの検知を判定する。こうすることにより、停止スペースPにおける車両1の有無にかかわらず、対象領域A内における異物Oの有無を適切に判定することができる。
上に説明した引用文献2、3に記載の発明は、同様の発想により開発された技術であり、本実施例でも、車両1を異物検知の判定から除外する方法を採っている。ただし、本実施例では、そのための具体的な演算処理が異なっている。車両1の車種を特定し、停止した状態における位置と合わせて、車両1の占める領域を特定するのである。この手順について、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
車両1の入庫を行う際には、車両1の運転者、乗員、施設の係員といった人員が操作部8を操作し、入庫の開始を指示する。制御装置7は、指示に応じて入出庫口4を開放する。入庫の開始にあたっては、空のパレット2が対象領域A内の定位置である中央部に配備された状態で入出庫口4を開放する。仮に、入庫の開始が指示された時点で対象領域A内に空のパレット2が存在しない場合には、搬送口3を開放して空のパレット2を対象領域Aへ搬送し、中央部に配備してから、入出庫口4を開放する。
尚、入庫の開始は、必ずしも操作部8への入力によらなくとも良く、他の方式により実行されるようにしても良い。例えば、自動運転車である車両1が無人の状態で入出庫スペースである対象領域Aの入出庫口4の前に移動し、自動で入庫する場合、操作部8を操作する人員がいない状況も想定される。そのような場合、例えば車両1を入出庫口4の前に検出するセンサを別途設け、該センサにより車両1が検知されたら、その検知信号の入力を条件としてパレット2の搬送、入出庫口4の開放等を実行しても良い。あるいは、入庫に際し、車両1から何らかの信号を出力するようにしても良い。
入庫が開始すると、車両1が入出庫口4から対象領域A内に進入してくる。そこで、対象領域Aの各所に設置された撮像装置6が車両1の画像を取得する(ステップS1)。各撮像装置6により取得された画像は、データ信号6aとして制御装置7に入力される。制御装置7の演算部7cは、通信部7bを介してデータ信号6aとして取得した画像と、記憶部7aに格納された車種データDを照合し、車両1の車種を特定する(ステップS2)。車種の特定にあたっては、車種データDに車種別に登録されている各部の形状(各部同士の位置関係、大小関係、また、特徴のある部位等)、あるいはカラーバリエーションを、取得した画像内の車両1と比較し、該当する車種を抽出する。そして、例えば、まず撮像装置6毎に取得された画像中の車両1を車種データDと比較し、最も一致度の高い車種を選定する。さらに、全撮像装置6においてそれぞれ選定された車種の中で、最も数の多い車種を車両1の車種と判定する。例えば、本実施例では、車両1の正面および左右の画像を取得する計3台の撮像装置6を備えているが、このうち、1台の撮像装置6において取得した画像では車両1の車種がAと判定され、残り2台において取得した画像では車種がBと判定された場合、車種をBと判定する。
車両1の車種が特定されたら、該当する車種の個別データを車種データDから読み出す(ステップS3)。個別データは、車種データDに登録された車両の各部の形状、寸法等であって、特定の車種に該当するデータである。本実施例の如き用途の場合、特に、平面視における当該車種の輪郭、また、縦横の寸法が個別データとして読み出される。
一方、車両1が対象領域A内を移動し、パレット2の上の停止スペースPまで到達すると、位置センサ9が車両1を検知する。制御装置7では、位置センサ9から入力される位置信号9aにより、位置センサ9の測定範囲内における物体(ここでは、車両1)の有無、また、車両1の動きを把握することができる。そして、車両1が停止スペースPにて停止した時には、位置信号9aに基づき、車両1の停止を判定する(ステップS4)。
車両1の停止が判定されたら、続いて車両1の停止した位置を特定する(ステップS5)。停止スペースPに停止した車両1の位置情報は、測域センサ5を作動させて得られる被検出点データから取得することができる。例えば、図1に示す如く、車両1に相当すると考えられる被検出点のうち、最も前方にあたる点Fの位置を、車両1の中心線のうち最前方にあたる点(前方中心点Fとする)の位置と見なすことができる。
前方中心点Fの位置を特定したら、ステップS3において取得した車両1の車種の個別データと合わせ、車両1の占める領域を特定する(ステップS6)。車種の個別データからは、車両1の車種に応じた平面視における輪郭、あるいは前後および幅方向の寸法等が得られるので、これを前方中心点Fの位置と合わせれば、停止した車両1が現に占めている領域が特定できるのである。
尚、車両1が停止スペースPにおいて著しく斜めを向いて停止している場合等、車両1の姿勢によっては、ステップS5において前方中心点Fとして取得された点の位置が必ずしも実際の車両1の前方中心点とは一致しないことも想定され得る。しかしながら、機械式駐車場のパレット2等の場合、車両1は停止スペースPに対して概ね一定の角度で進入し、停止すると見なすことができるので、実用上、さほどの問題は生じないと考えられる。
より厳密に車両1の占める領域を把握したい場合には、例えば、前方中心点に加えて後方中心点をも取得しても良いし、あるいは、平面視で概ね長方形状をなす車両1の対角線をなす2点を取得して車両1の位置および角度を特定することもできる。尚、ここに説明した位置の特定方法は一例であって、その他、車両1の位置を特定するにあたっては、種々の方式を採用することができる。
ステップS6においては、車種の個別データから得た輪郭をそのまま車両1の占める領域として扱っても良いが、車両1に何らかの改造が加えられていたり、付加物等が取り付けられることで実際の輪郭がデータと食い違っている可能性も考えられる。こういった場合を考慮し、例えば車種の個別データから得られた輪郭をさらに外側に所定の距離だけ拡張した領域を、車両1の占める領域として扱うようにしても良い。
尚、ここでは説明の便宜から、ステップS1~S3の後にステップS4,S5を説明したが、実際の順序はこれに限定されない。車両1の車種の特定と、位置の特定はそれぞれ別個独立に行うことができるので、ステップS1~S3の前にステップS4,S5を実行したり、ステップS1~S3とステップS4,S5を同時並行で実行しても良い。
このように、本実施例では、停止スペースPに停止した車両1の占める領域を特定するにあたり、測域センサ5から得た検出点データに全面的に依拠しない。具体的には、測域センサ5では車両1に相当する一部の検出点データ(前方中心点F)のみに基づいて位置を特定する一方、撮像装置6で得た画像により車種を特定し、車種データから輪郭あるいは寸法を読み出し、これらを組み合わせて車両1の占める領域を特定している。こうすることで、異物Oの存在が車両1の占める領域の特定に影響することを極力回避することができる。
上に説明したように、車両1の入庫時には、車両1と共に人やゴミ等の異物Oが対象領域Aへ侵入する場合がある。特許文献2、3に記載の技術では、こういった場合に異物が車両の占める領域の認識に影響してしまう可能性があるが、本実施例の場合、仮に異物Oが対象領域Aに存在していたとしても、測域センサ5では一部の被検出点の位置を特定できれば足りる。領域を特定する工程の一部を車種データDに依拠することで、異物Oの影響を避け、車両1の占める領域を正確に特定することができるのである。
もっとも、車両1の位置を特定するための被検出点を取得するにあたり、必要な被検出点と測域センサ5の間が異物Oにより遮られていれば、結局、異物Oが車両1の位置の特定に影響してしまう可能性も存在することは否めない。しかしながら、車両1が停止する場合、一般に車両1の前方に人がいることはあまりないため、本実施例のように車両1の位置を特定するための被検出点として前方中心点Fを採用すれば、異物Oの存在が車両1の位置特定へ影響してしまう可能性を極めて低くすることができる。
また、特許文献3に記載の技術の場合、測域センサにより車両の輪郭を取得するようにしているが、測域センサによる位置の検出には反射波の検知が必要である。このため、光を用いた測域センサの場合、黒色あるいは濃色の車両では輪郭の取得が難しく、高利得の高価なセンサを使用しなくてはならないという問題がある。一方、本実施例の場合、測域センサ5は車両1にあたる検出点データをごく一部(前方中心点F)のみ取得すれば良いので、車両1が黒色あるいは濃色であっても、車両1の占める領域の特定に支障はない。
ステップS4における停止の判定について説明する。停止の判定にあたっては、例えば位置信号9aとして制御装置7に入力される車両1の状態に、一定の時間(例えば、10秒)の間、変化がないことを判定の基準とすれば良い。車両1の入庫の際には、車両1は入出庫口4からパレット2に向かって移動し、パレット2上の停止スペースPにて停止するが、このとき、サイドブレーキの作動等により、車両1の位置が僅かに動く場合がある。ここで仮に、車両1が停止した直後に前方中心点Fの位置を取得しようとすると、前方中心点Fの位置を取得した後にサイドブレーキがかけられて車両1が動き、その結果、車両1の占める領域として把握した領域が実際とずれてしまう虞がある。そこで、車両1が例えば10秒以上静止していることをもって車両1が停止したと判定し、その後に位置を特定するステップS5を実行するようにすれば、車両1の停止に伴う微動等が位置の特定の正確性に影響してしまうことを防ぐことができる。
尚、車両1が停止した後には、乗員の降車等の動きが車両1の周辺に発生する。このため、本実施例の如く車両1の一定時間以上の静止をもって停止を判断する場合、降車等を行っている最中に停止を判断し、さらに測域センサ5により車両1の位置を特定するといった事態も生じ得る。しかしながら、本実施例においては上述の如く、位置の特定にあたってはごく一部の被検出点(前方中心点F)の位置を取得できれば足りるので、たとえ降車等の最中に車両1の位置を特定するステップS5を実行したとしても支障はない。
また、本実施例では、停止スペースPにおける車両1の位置情報を取得する位置判定装置としての役割と、対象領域A内を測定する測域装置としての役割を、いずれも測域センサ5が担っているが、測域装置としての測域センサ5とは別に、位置判定装置としての装置を備えるようにしても良い。ただし、本実施例のように測域装置である測域センサ5に位置判定装置の機能を兼用させるようにすると、最低限のシンプルな装置構成により、車両1の車種と位置による領域の特定を実行することができる。あるいは、位置センサ9の構成によっては、位置判定装置としての役割を測域センサ5ではなく、位置センサ9が担うようにすることも可能である。また、測域センサ5を車両1の停止の判定に流用することも理論上は可能であり、その場合、測域装置、位置判定装置のほか、停止判定装置の役割をも測域センサ5が担うことになる。その他、車両1の車種と位置に基づく車両1の占める領域の特定を好適に実行できる限りにおいて、異物検知システムとしては種々の装置構成を採用することができる。
次に、異物検知の工程について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
異物検知工程は、対象領域A内の状態を確認したい任意のタイミングで開始することができる。例えば、入庫時に車両1内に運転者や乗員がいたり、対象領域A内に係員等がいたりする場合には、停止スペースPに車両1が停止した後、パレット2による車両1の搬送を開始する前に、対象領域Aが無人であることを確認する必要があることが想定できる。その場合は、車両1の入庫後、車両1の占める領域の特定が完了したら異物検知工程を自動的に開始し、異物Oが検知されなかったことを条件としてパレット2の移動を実行すれば良い。あるいは、操作部8の操作等により車両1の搬送が指示された時点で異物検知工程を開始し、異物Oが検知されなかった場合に搬送を行い、検知されたら搬送を停止するようにしても良い。
同様に、車両1の出庫時にも、車両1を対象領域A内に搬送する前や、車両1を搬送して入出庫口4を開放する前などのタイミングで、対象領域A内の無人を確認するようにしても良い。また、入出庫の際、入出庫口4を閉鎖する前に異物検知工程を実行し、異物Oの不在を確認してから扉の動作を行う、といった態様が想定できる。
異物検知工程では、異物検知をしたい任意の時点(例えば、リアルタイム)における被検出点データを、別の時点に取得した被検出点データと比較し、所定以上の差分が認められた場合に異物Oを検知したと判定する。そこで、異物検知を行う場合、任意の時点の被検出点データとは別に、比較の基準となる被検出点データを取得する必要がある(以下、「基準データ」と称する)。
そこで、本実施例では、任意の時点において被検出点データを取得するのに先立って、空室時に測域センサ5による測定を行い、被検出点データを基準データとして取得しておく(ステップS11)。尚、図3では便宜上、このステップS11から、ステップS13以降を一連の流れとして表示しているが、基準データの取得は、対象領域A内に異物Oの存在しない時点であればどの時点に実行しても良い。また、取得した基準データの処理(次のステップS12)についても、ステップS13以降の工程とは独立に実行して良い。
ここで、基準データとしては、空室時の被検出点データ、すなわち「対象領域A内に異物Oがなく、車両1もない状態の被検出点データ」に限らず、「車両1の占める領域以外に異物Oのない状態の被検出点データ」であれば利用できる。つまり、対象領域A内に車両1以外に異物Oがないことが確認できれば、車両1が存在する状態での被検出点データを基準データとしても良い。以下に説明する異物検知工程では、車両1の占める領域以外について異物Oの検知を行うので、車両1の有無は異物検知の結果に影響しないからである。ただし、車両1の占める領域は、車両1の車種、寸法、種類、位置、角度等によって変動するので、車両1が存在する状態の被検出点データを基準データとして使用する場合には、停止スペースPにおける車両1の状態が同じ時点同士での被検出点データを比較すべきである。例えば、出庫時に異物検知を行いたい場合には、同じ車両1の入庫時に取得した被検出点データを基準データとして使用すれば良い。同一の車両1の入庫時と、その後の出庫時であれば、パレット2上における車両1の位置や角度は一致するはずであるので、異物検知のための比較に用いることができる。
ただし、異物検知に際し、対応し得る基準データをその都度呼び出すのは煩雑である。空室時の被検出点データであれば、車両1の状態にかかわらず一定であるので、以下の異物検知工程に用いる基準データとして最も簡便であり、好適である。
続いて、ステップS11において取得した基準データから、車両1の占める領域に相当する被検出点データを除く(ステップS12)。
ステップS13で、異物検知をしたい任意の時点における被検出点データを取得する。リアルタイムの異物検知を行う場合、この時点で測域センサ5を作動させ、対象領域A内の測定を行う。次のステップS14では、ステップS13において取得した被検出点データから、車両1の占める領域に相当する被検出点データを除く。ステップS12において、基準データに対して行った処理と同様である。
続くステップS15では、ステップS13にて取得した被検出点データを、ステップS11にて取得した基準データと比較する。さらに、ステップS16,S17では、ステップS15で行った比較の結果、データ間に所定以上の差分が見られるか否かを判定し、これに基づき、ステップS13にて被検出点データを取得した時点において対象領域Aに異物Oが存在するか否かを判定する。先のステップS12およびステップS14において、比較に係る両データからは車両1の占める領域のデータが除かれているので、ステップS15~S17の工程は、対象領域Aのうち、車両1の占める領域以外に検出された被検出点に関してのみ行われることになる。
ステップS15では、抽出後の両データの差分を、測域センサ5毎に算出する。ステップS16では、算出された各測域センサ5の差分データに関し、閾値以上の値が認められたら、異物が検知されたと判定し(ステップS17)、異物検知工程は終了する。いずれの測域センサ5の差分データにも閾値以上の値を示す被検出点データがなければ、異物検知工程は終了する。
以上の異物検知工程において異物Oが検知された場合には、例えばパレット2の移動、あるいは入出庫口4の開閉といった動作を停止したり、操作を禁止するなどの処置を行う。また、必要に応じて警報装置10から警報を発報する。そして、例えば係員等により対象領域A内に異物Oが無いことが確認され、警報が解除されたら、再度上記の異物検知工程を実行する。異物検知工程を再実行し、異物Oが検知された場合には、パレット2、入出庫口4等の操作を禁止したままとし、検知されなければ、操作の禁止を解除すれば良い。
このような異物検知システムおよび方法によれば、対象領域Aに対して測域センサ5を配置した簡単な構成により、対象領域A内の異物Oを検知することができる。上記特許文献1に記載の技術のように床面で異物を検知するシステムとは異なり、測域センサ5の照射波により空間を走査するので、パレット2上の異物Oをも検知することが可能である。
尚、上では基準データと、任意の時点に取得した被検出点データのそれぞれから車両1の占める領域に関する被検出点データを除外してから両者を比較する場合を説明したが、異物検出に係る工程の手順はこれに限定されない。例えば、両データの差分を算出した後で、車両1の占める領域に関する被検出点データを異物として判断する対象から除外するような処理を行っても良い。異物検出にあたり、車両1の占める領域に関する被検出点データを適切に除外することができれば具体的な手順は問わない。
また、上では異なる時点に取得した被検出点データ同士を比較し、その差分の有無あるいは大小により異物検知を行う場合を例示したが、これ以外にも、例えば以下の如き方法によれば、差分を取ることなく異物検知を行うことが可能である。まず、異物検知をしたい任意の時点の被検出点データを取得し、その中から床面付近に検出された被検出点データを抽出する。そのうち、車両1の占める領域以外に検出された被検出点データから、柱や壁、床等の構造物にあたる被検出点データを除外し、残った被検出点データがあれば、その被検出点データは異物の被検出点データと考え、異物を検出したと判定することができる。対象領域内の床や構造物の形状が単純であれば、それらの検出点データを除外するための計算量が少なくて済むので、有効な手法である。その他、異物検知の具体的な工程は上記実施例に限定されず、異物検知の対象領域のうち、車両1の占める領域以外の領域に検出された被検出点データに基づいて異物検知を行うことができれば、種々の工程を採用できる。
また、ここでは、対象領域Aの例として、車両1の搬送のための装置としてパレット2のみを備えた入出庫スペースを説明したが、対象領域Aの形式はこれに限定されない。例えば、パレットの手前にターンテーブルを備えた形式の入出庫スペースにおいて、前記ターンテーブルおよびその周辺と、前記パレットおよびその周辺に、それぞれ本開示における異物検知システムと同様のシステムを備えることもできる。あるいは、機械式駐車場に限らず、例えば電気自動車の給電設備など、車両の周辺で何らかの操作を行う設備一般に広く適用し得る。
以上のように、本実施例の異物検知方法は、車両1の画像から前記車両1の車種を特定するステップS1,S2と、停止スペースPに停止した前記車両1の位置を特定するステップS5と、特定された前記車両1の車種および位置に基づき、前記車両1の占める領域を特定するステップS6と、対象領域Aに対して配置された測域装置5により、対象領域Aの被検出点データを取得するステップS13と、対象領域Aのうち、前記車両1の占める領域以外に検出された被検出点データに基づいて異物検知を行うステップS15~S17とを含んでいる。
また、本実施例の異物検知システムは、車両1の画像を取得する撮像装置6と、停止スペースPに停止した前記車両1の位置情報を取得する位置判定装置(測域センサ)5と、対象領域Aに対して配置され、対象領域A内を測定する測域装置(測域センサ)5と、前記撮像装置6にて取得された画像、前記位置判定装置9にて取得された前記車両1の位置情報、および前記測域装置5にて取得された被検出点データを処理する制御装置7とを備え、前記制御装置7は、前記撮像装置6にて取得された画像から前記車両1の車種を特定し、前記位置判定装置9にて取得された位置情報から前記車両1の位置を特定し、前記車両1の車種および位置に基づき、前記車両1の占める領域を特定し、前記測域装置5により、対象領域Aの被検出点データを取得し、対象領域Aのうち、前記車両1の占める領域以外に検出された被検出点データに基づいて異物検知を行うよう構成されている。
このようにすると、異物検知に先立って車両1の占める領域を特定する工程の一部を車種データDに依拠することで、異物Oの影響を極力避けることができる。すなわち、車両1の占める領域を特定する際、仮に異物Oが対象領域Aに存在していたとしても、位置判定装置5では一部の被検出点の位置を特定できれば足り、車両1の占める領域を正確に特定することができる。
また、本実施例の異物検知方法において、前記車両1の位置を特定するステップS5は、前記車両1が停止スペースPに一定時間以上静止していることをもって前記車両1が停止したと判定するステップS4の後に実行される。このようにすれば、車両1の停止に伴う微動等が位置の特定の正確性に影響してしまうことを防ぐことができる。
また、本実施例の異物検知方法において、前記車両1の位置を特定するステップS5は、前記車両1の前方にあたる点(前方中心点F)の位置を特定することによって行われるようにしている。一般に車両1の前方に人がいることはあまりないため、このようにすれば、異物Oの存在が車両1の位置特定へ影響してしまう可能性を極めて低くすることができる。
また、本実施例の異物検知方法において、前記基準データは、対象領域A内に異物Oがなく、停止スペースPに車両1がない状態において取得された被検出点データとしている。このようにすれば、車両1の状態にかかわらず一定のデータを基準データとして扱うので、異物検知を行うにあたって簡便である。
また、本実施例の異物検知方法において、前記異物検知を行うステップS15~S17は、対象領域A内に異物Oのない状態で、前記測域装置5により基準データとして取得された被検出点データと、任意の時点において前記測域装置5により取得された被検出点データとを比較し、対象領域Aのうち車両1の占める領域以外に関し、データ間に所定以上の差分が見られた場合に、前記任意の時点において対象領域A内に異物Oが存在すると判定することによって行われる。このようにすれば、異物Oの検知を好適に実行することができる。
また、本実施例の異物検知システムにおいて、前記位置判定装置および前記測域装置は測域センサ5としている。このようにすれば、最低限のシンプルな装置構成により、車両1の車種と位置による領域の特定を実行することができる。
したがって、上記本実施例によれば、対象領域内において車両の占める領域を正確且つ簡便に検知し得る。
尚、本開示において説明した本発明の異物検知方法およびシステムは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。