JP7124658B2 - 難水溶性物用洗浄剤組成物 - Google Patents
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しかしながら、この洗浄剤組成物では、洗浄主成分として有機溶剤が配合されていることから使用環境が限られてしまうおそれや、アルカリ性が強い洗浄剤であることから繰り返し使用する場合に使用者に肌荒れを生じさせるおそれがあった。
しかしながら、この洗浄剤組成物では、洗浄効果が十分とは言えない場合や、シリコーンポリマーを含む洗浄剤であることから、洗浄後に化合物が残存することが敬遠される半導体などの電子材料分野などにおいて、かかる洗浄剤組成物の使用が制限されてしまう場合があった。
しかしながら、使用している界面活性剤が環状リポペプチドバイオサーファクタントであり、微生物により生成される物質であるため(特許文献3の段落〔0051〕等を参照)、製造に多大な時間を要するとともに、同様の構造を化学合成法により製造する場合であっても、煩雑な構造であるがゆえに製造コスト面における懸念があった。
即ち本発明は、式(1)で示される化合物(A)、式(2)で示される化合物(B)、キレート剤(C)および水溶性アルコール(D)を含有し、化合物(A)の含有量が12質量%よりも多く45質量%以下、化合物(B)の含有量が0.5~5質量%、キレート剤(C)の含有量が3~10質量%、水溶性アルコール(D)の含有量が4~10質量%であり、シリコーンまたは流動パラフィンを含有する難水溶性物を洗浄対象とする難水溶性物用洗浄剤組成物である。
(式中R1およびR1’は各々独立して炭素数8~12の分岐アルキル基である。M1は水素原子、アルカリ金属原子または4級アンモニウム化合物である。)
(式中R2は炭素数8~9の分岐アルキル基である。M2は水素原子、アルカリ金属原子または4級アンモニウム化合物である。)
なお、難水溶性物とはシリコーンや流動パラフィン等を含有し、水系溶剤による除去が困難な物質の総称である。
本発明の難水溶性物用洗浄剤組成物(以下「本発明の組成物」ともいう。)は、下記の化合物(A)、化合物(B)、キレート剤(C)および水溶性アルコール(D)を少なくとも含有する。まず化合物(A)について説明する。
本発明で用いられる化合物(A)は、下記の式(1)で示されるアルキルスルホコハク酸およびその塩である。本発明において、式(1)に包含される複数の化合物(A)のうち1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
炭素数8~12の分岐アルキル基を構成する分岐鎖としては、炭素数が1~3の炭化水素基が好ましく、洗浄性の観点から、メチル分岐およびエチル分岐がより好ましく、エチル分岐が特に好ましい。
具体的なR1およびR1’としては、例えば、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、イソデシル基、3,5,5-トリエチルヘキシル基などが挙げられ、2-エチルヘキシル基および3,5,5-トリメチルヘキシル基が好ましく、2-エチルヘキシル基がより好ましい。
本発明で用いられる化合物(B)は、下記の式(2)で示されるアルキル硫酸エステル塩である。本発明において、式(2)に包含される複数の化合物(B)のうち1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
具体的なR2としては、例えば、2-エチルヘキシル基、イソノニル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基などが挙げられ、2-エチルヘキシル基および3,5,5-トリメチルヘキシル基が好ましく、2-エチルヘキシル基がより好ましい。
本発明で用いられるキレート剤(C)は、有機酸およびその塩であり、例えば、アミノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシホスホスルホン酸およびこれらの塩から選ばれる1種または2種以上の化合物が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。
ヒドロキシホスホン酸としては、例えば、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)等が挙げられる。
これら有機酸の塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。アミン塩としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはナトリウム塩およびカリウム塩である。
キレート剤(C)としては、ヒドロキシカルボン酸塩およびその塩が好ましく、クエン酸およびその塩がより好ましく、クエン酸塩がさらに好ましい。また、クエン酸塩を用いる場合は、クエン酸と併用することによって、キレート剤としてのみならずpH調整剤として用いることができる。
本発明で用いられる水溶性アルコール(D)とは分子内に水酸基を少なくとも1個有する水溶性の化合物であり、水溶性アルコールの価数は1価および2価が好ましい。ここで水溶性とは、25℃にて水に任意の割合で溶解するものをいう。水溶性アルコールの炭素数は20以下が好ましく、2~12がより好ましく、3~10が特に好ましい。
特に、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールが好ましく、洗浄効果に優れる面から、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールがさらに好ましい。
本発明において、水溶性アルコール(D)は1種を単独で、または2種以上を併せて用いることができる。
本発明の組成物における水の含有量は、好ましくは40~80.5質量%であり、より好ましくは45~70質量%であり、特に好ましくは50~65質量%である。
また、本発明の組成物は液性が中性または中性付近であり、pH=5.0~9.0であることが好ましく、より好ましくはpH=6.0~8.0、特に好ましくはpH=6.5~8.0、さらに好ましくはpH=7.0~7.5である。
本発明の組成物の液性を中性または中性付近に調整する方法としては、例えば、水の含有量を調節する方法、pH調整剤を用いる方法が挙げられる。なお、上述のとおり、本発明で用いるキレート剤(C)がpH調整剤として機能することもある。
IOB値とは、有機概念図(藤田穆(Fujita Atsushi)、有機化合物の予測と有機概念図、化学の領域 vol.11、No.10(1957)、719~725)に基づき求められる無機性値および有機性値の比を表すものである。なお、難水溶性物が二種類以上の成分の混合物である場合には、当該難水溶性物のIOB値は、各成分のIOB値の加重平均により算出することができる。IOB値の算出方法は下式のとおりである。
IOB値 =(無機性値)/(有機性値)
表1に示す化合物(A)、表2に示す化合物(B)、表3に示すキレート剤(C)、表4に示す水溶性アルコール(D)を用いて、実施例(表5)および比較例(表6)の難水溶性物用洗浄剤組成物(原液)を通常の方法により調製した。いずれの組成物においても水を用いて全量を100質量%に調整した。
なお、表1中の記号は式(1)における記号を表し、表2中の記号は式(2)における記号を表す。
a)希釈液の調製
100mlビーカー中にて、各洗浄剤組成物(原液)を2.5g秤量し、47.5gの水で20倍に希釈し、スターラーチップを用いて25℃で10分間撹拌した。得られた希釈液を用いて下記の洗浄試験を行なった。
本試験では、高真空用のシリコーングリースをSUS316板(縦×横×厚さ=50×15×1.5mm)に塗布したものに対する洗浄試験を実施した。
50mLスクリュー管中で上記のシリコーングリースを塗布したSUS板を上記希釈液45gに対して浸漬し、60℃で10分間攪拌して洗浄した。その後、液から取り出した際のSUS板の汚れ落ちについて、シリコーングリースの除去率により評価した。
除去率の算出法および判定方法は以下のとおりである。
○:除去率が95%以上、98%未満である。
×:除去率が95%未満である。
a)希釈液の調製
上記グリース洗浄試験で用いた希釈液の調製方法に従って、本試験用の希釈液を調製した。得られた希釈液を用いて下記の洗浄試験を行なった。
本試験では、流動パラフィンをガラス板(縦×横×厚さ=50×15×1.5mm)に塗布したものに対する洗浄試験を実施した。
50mLスクリュー管中で上記の流動パラフィンを塗布したガラス板を上記希釈液45gに対して浸漬し、60℃で10分間攪拌して洗浄した。その後、液から取り出した際のガラス板の汚れ落ちについて、上記のシリコーングリースの除去率の算出法および判定方法と同様にして、パラフィンの除去率により評価した。
各洗浄剤組成物(原液)のpHをpHメーター(LAQUA F-72:株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。なお、測定温度は25℃とし、25℃の恒温槽中にて各洗浄剤組成物(原液)を攪拌しながら測定した。
各洗浄剤組成物(原液)を50mlスクリュー管に30ml入れて、-5℃および25℃の恒温槽にそれぞれ1週間静置して外観を確認し、評価を行った。原液の安定性の評価は、下記の評価基準に従い行った。
○:どちらの温度においても均一かつ透明である。
×:少なくとも一方の温度において薬液(原液)にて析出もしくは分層する。
実施例1~12の洗浄剤組成物については、薬液(原液)のpHが中性でありながら、塗布したシリコーングリースおよび流動パラフィンに対する洗浄力が高く、さらには原液の安定性も高いことが確認された。
比較例1は化合物(A)を含有しないため、グリースおよびパラフィンに対する洗浄効果が良好ではない。
比較例2は化合物(A)のR1が分岐アルキルでないため、グリースおよびパラフィンに対する洗浄効果が良好ではない。
比較例3は化合物(B)を含有しないため、グリースに対する洗浄効果が良好ではない。
比較例4は化合物(B)のR2が分岐アルキルでないため、グリースに対する洗浄効果および原液の安定性が良好ではない。
比較例5はキレート剤(C)を含有しないため、グリースおよびパラフィンに対する洗浄効果が良好ではない。
比較例6は水溶性アルコール(D)を含有しないため、グリースおよびパラフィンに対する洗浄効果や原液の安定性が良好ではない。
Claims (1)
- 式(1)で示される化合物(A)、式(2)で示される化合物(B)、キレート剤(C)および水溶性アルコール(D)を含有し、化合物(A)の含有量が12質量%よりも多く45質量%以下、化合物(B)の含有量が0.5~5質量%、キレート剤(C)の含有量が3~10質量%、水溶性アルコール(D)の含有量が4~10質量%であり、シリコーンまたは流動パラフィンを含有する難水溶性物を洗浄対象とする難水溶性物用洗浄剤組成物。
R1-OCOCH2( SO3M1) CHCOO-R1’ ・・・(1)
(式中R1およびR1’は各々独立して炭素数8~12の分岐アルキル基である。M1は水素原子、アルカリ金属原子または4級アンモニウム化合物である。)
R2O-SO3M2 ・・・(2)
(式中R2は炭素数8~9の分岐アルキル基である。M2は水素原子、アルカリ金属原子または4級アンモニウム化合物である。)
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