JP7122482B1 - バインダー成分、エマルジョン、エマルジョンの製造方法、及び水性インク - Google Patents

バインダー成分、エマルジョン、エマルジョンの製造方法、及び水性インク Download PDF

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Abstract

【課題】基材への密着性、耐擦過性、耐水性、耐ブロッキング性及び収縮時の耐白化性に優れたインク塗膜を形成しうる水性インクを調製することが可能なバインダー成分を提供する。【解決手段】下記一般式(1)で表される、第1のポリマー部分を持った構成単位(i)20~40質量%、特定の構成単位(ii)5~55質量%、及び特定の構成単位(iii)5~55質量%、及び必要に応じて設けられるその他の構成単位(iv)を有する、数平均分子量が15,000~30,000であり、酸価が10~80mgKOH/gである水不溶性のグラフト型ポリマーであり、第1のポリマー部分のガラス転移温度と、構成単位(ii)~(iv)で構成される第2のポリマー部分のガラス転移温度との差が25℃以上のバインダー成分である。TIFF0007122482000031.tif34170(R1は水素原子等、R2はアルキル基等、p、m、nは繰り返し数を示す)【選択図】なし

Description

本発明は、バインダー成分、エマルジョン、エマルジョンの製造方法、及び水性インクに関する。
近年、環境配慮型製品の開発が求められ、水性インクが注目を集めている。グラビア印刷、フレキソ印刷、及びインクジェット印刷の分野においても、インクの水性化が求められており、油性インクから水性インクへの移行が検討されている。水性インクのうち、水性グラビアインク、水性フレキソインク、及び水性インクジェットインク等は、プラスチック容器や、ラベル及びパッケージング等の包装用フィルムに印刷するためのインクとして用いられている。さらに、印刷した画像(印画物)を保護するためのオーバーコート剤として、透明ニス等が用いられている。
インクや透明ニスで形成される皮膜(以下、「インク塗膜」又は「塗膜」とも記す)には、基材に対する密着性、耐擦過性、耐水性、耐薬品性、及び耐溶剤性等の耐久性を有することが求められている。塗膜の耐久性を向上すべく、皮膜形成用のバインダー成分を配合した水性インクが注目されている。そして、各種のバインダー成分、及びバインダー成分を含有するエマルジョンや水分散体が開発されており、これらのエマルジョン等を配合した水性インクが種々提案されている(特許文献1~4)。
特開2018-131548号公報 特開2012-201729号公報 国際公開第2020/213413号 特表2009-515007号公報
水性インクは揮発性の有機溶剤を実質的に含有しないため、環境への負担が少ない。しかし、水性インクで形成される塗膜は、湿潤状態での耐摩擦性(耐湿摩擦性)が不十分である場合が多い。例えば、水性インクで形成された塗膜を有する印刷物が湿潤状態で輸送されると、輸送中に塗膜が剥がれやすくなるといった課題がある。そして、特許文献1~4で提案された水性インクで形成される塗膜の耐湿摩擦性は、必ずしも十分であるとはいえなかった。さらに、塗膜については、基材への密着性及び耐久性のさらなる向上が求められている。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、基材への密着性、耐擦過性、耐水性、耐ブロッキング性及び収縮時の耐白化性に優れたインク塗膜を形成しうる水性インクを調製することが可能なバインダー成分及びエマルジョンを提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記のエマルジョンの製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の課題とするところは、上記のバインダー成分及びエマルジョンを用いた、基材への密着性、耐擦過性、耐水性、耐ブロッキング性及び収縮時の耐白化性に優れたインク塗膜を形成しうる水性インクを提供することにある。
すなわち、本発明によれば、以下に示すバインダー成分が提供される。
[1]下記一般式(1)で表される、2以上のモノマーに由来する構成単位を含む第1のポリマー部分を持った構成単位(i)20~40質量%、下記一般式(2)で表される構成単位(ii)5~55質量%、下記一般式(3)で表される構成単位(iii)5~55質量%、及び必要に応じて設けられるその他の構成単位(iv)を有する(構成単位(i)~(iv)の合計を100質量%とする)、数平均分子量が15,000~30,000であり、酸価が10~80mgKOH/gである水不溶性のグラフト型ポリマーであり、前記第1のポリマー部分のガラス転移温度が55~150℃であり、前記構成単位(ii)、前記構成単位(iii)、及び前記構成単位(iv)で構成される第2のポリマー部分のガラス転移温度が-25~70℃であり、前記第1のポリマー部分のガラス転移温度と、前記第2のポリマー部分のガラス転移温度との差が、25℃以上であるバインダー成分。
Figure 0007122482000001
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、Rは炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリールメチル基、シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基、ヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基、又はポリ(n=2~25)アルキレン(炭素数2~4)グリコールアルキル(炭素数1~18)エーテル基を示し、p、m、及びnは任意の繰り返し数を示す)
Figure 0007122482000002
(前記一般式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Arはフェニル基、メチルフェニル基、又はナフチル基を示し、qは任意の繰り返し数を示す)
Figure 0007122482000003
(前記一般式(3)中、Rは炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリールメチル基、シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基、又はヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基を示し、rは任意の繰り返し数を示す)
[2]前記第1のポリマー部分が、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、及びメタクリル酸イソボルニルからなる群より選択される少なくとも一種のモノマーに由来する構成単位を70~90質量%含み、前記構成単位(ii)が、スチレンに由来する構成単位であり、前記構成単位(iii)が、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びアクリル酸イソボルニルからなる群より選択される少なくとも一種に由来する構成単位である前記[1]に記載のバインダー成分。
また、本発明によれば、以下に示すエマルジョンが提供される。
[3]水及び水溶性有機溶剤を含む水性媒体と、前記水性媒体中に分散した、前記[1]又は[2]に記載のバインダー成分であるグラフト型ポリマー中のカルボキシ基の少なくとも一部がアルカリで中和されて形成されたバインダー粒子と、を含有し、前記バインダー粒子の数平均粒子径が、50~300nmであるエマルジョン。
さらに、本発明によれば、以下に示すエマルジョンの製造方法が提供される。
[4]前記[3]に記載のエマルジョンの製造方法であって、下記一般式(4)で表される、数平均分子量が1,000~10,000であり、酸価が65~195mgKOH/gであるポリマー型モノマー、下記一般式(5)で表されるモノマー、及び下記一般式(6)で表されるモノマーを水溶性有機溶剤中でラジカル重合して、グラフト型ポリマーであるバインダー成分を得る工程と、得られた前記グラフト型ポリマー中のカルボキシ基の少なくとも一部をアルカリで中和してバインダー粒子を形成し、水及び前記水溶性有機溶剤を含む水性媒体中に分散させる工程と、を有するエマルジョンの製造方法。
Figure 0007122482000004
(前記一般式(4)中、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、Rは炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリールメチル基、シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基、ヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基、又はポリ(n=2~25)アルキレン(炭素数2~4)グリコールアルキル(炭素数1~18)エーテル基を示し、m及びnは任意の繰り返し数を示す)
Figure 0007122482000005
(前記一般式(5)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Arはフェニル基、メチルフェニル基、又はナフチル基を示す)
Figure 0007122482000006
(前記一般式(6)中、Rは炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリールメチル基、シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基、又はヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基を示す)
また、本発明によれば、以下に示す水性インクが提供される。
[5]前記[3]に記載のエマルジョンを含有する水性インク。
[6]グラビア印刷用、フレキソ印刷用、又はインクジェット印刷用である前記[5]に記載の水性インク。
本発明によれば、基材への密着性、耐擦過性、耐水性、耐ブロッキング性及び収縮時の耐白化性に優れたインク塗膜を形成しうる水性インクを調製することが可能なバインダー成分及びエマルジョンを提供することができる。また、本発明によれば、上記のエマルジョンの製造方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、上記のバインダー成分及びエマルジョンを用いた、基材への密着性、耐擦過性、耐水性、耐ブロッキング性及び収縮時の耐白化性に優れたインク塗膜を形成しうる水性インクを提供することができる。
<バインダー成分>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明のバインダー成分は、下記一般式(1)で表される構成単位(i)20~40質量%、下記一般式(2)で表される構成単位(ii)5~55質量%、下記一般式(3)で表される構成単位(iii)5~55質量%、及び必要に応じて設けられるその他の構成単位(iv)を有する(構成単位(i)~(iv)の合計を100質量%とする)、水不溶性のグラフト型ポリマーである。このグラフト型ポリマーは、数平均分子量が15,000~30,000であり、酸価が10~80mgKOH/gである。構成単位(i)は、2以上のモノマーに由来する構成単位を含む第1のポリマー部分を持ち、第1のポリマー部分のガラス転移温度は、55~150℃である。構成単位(ii)、構成単位(iii)、及び構成単位(iv)で構成される第2のポリマー部分のガラス転移温度は、-25~70℃である。そして、第1のポリマー部分のガラス転移温度と、第2のポリマー部分のガラス転移温度との差が、25℃以上である。以下、本発明のバインダー成分の詳細について説明する。
Figure 0007122482000007
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、Rは炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリールメチル基、シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基、ヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基、又はポリ(n=2~25)アルキレン(炭素数2~4)グリコールアルキル(炭素数1~18)エーテル基を示し、p、m、及びnは任意の繰り返し数を示す)
Figure 0007122482000008
(前記一般式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Arはフェニル基、メチルフェニル基、又はナフチル基を示し、qは任意の繰り返し数を示す)
Figure 0007122482000009
(前記一般式(3)中、Rは炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリールメチル基、シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基、又はヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基を示し、rは任意の繰り返し数を示す)
本発明のバインダー成分であるグラフト型ポリマーは、構成単位(ii)及び構成単位(iii)を含むポリマー鎖を主鎖とし、この主鎖から構成単位(i)のポリマー鎖が分岐してグラフトした構造を有するグラフトコポリマーである。構成単位(i)のポリマー鎖は、カルボキシ基を有する。このカルボキシ基がフィルム等の基材の表面と水素結合等することで、優れた密着性が発揮される。また、カルボキシ基がアルカリで中和されることで、構成単位(i)のポリマー鎖が水可溶性となり、グラフト型ポリマーが水性媒体中に分散及び乳化されるとともに、塗布及び乾燥することで塗膜が形成される。さらに、構成単位(i)中の第1のポリマー部分のガラス転移温度(Tg)を高く設定することで、形成される塗膜の基材への密着性をより高めることができるとともに、塗膜の耐ブロッキング性及び耐擦過性をより向上させることができる。
構成単位(i)のポリマー鎖の末端と、構成単位(ii)及び構成単位(iii)を含む主鎖は、水不溶性のポリマー鎖である。このため、構成単位(i)中のカルボキシ基を持った部分がアルカリで中和されることで水に溶解するとともに、水不溶性のポリマー鎖によってバインダー粒子が形成され、水性媒体中に分散及び乳化してエマルジョンが形成される。そして、このエマルジョンを含有するインクを基材に塗布及び乾燥すると、耐擦過性及び基材への密着性等に優れた水不溶性の塗膜が形成される。水不溶性のポリマー鎖のガラス転移温度(Tg)を低く設定することで、造膜性が向上するとともに、基材への追随性に優れた軟質な塗膜を形成することができる。
(構成単位(i))
構成単位(i)は、一般式(1)で表される構成単位であり、2以上のモノマーに由来する構成単位を含む第1のポリマー部分を有する。この構成単位(i)は、下記一般式(4)で表される、数平均分子量が1,000~10,000であり、酸価が65~195mgKOH/gであるポリマー型モノマーに由来する構成単位である。
Figure 0007122482000010
(前記一般式(4)中、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、Rは炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリールメチル基、シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基、ヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基、又はポリ(n=2~25)アルキレン(炭素数2~4)グリコールアルキル(炭素数1~18)エーテル基を示し、m及びnは任意の繰り返し数を示す)
一般式(4)で表される上記のポリマー型モノマー(以下、単に「ポリマー型モノマー」とも記す)は、その末端にラジカル重合しうる不飽和結合を有する。このポリマー型モノマーの末端は、アリル基のα位にカルボキシル基又はエステル基が結合した構造を有する。この不飽和結合は、立体障害のために、メタクリレートから生じた三級のラジカルとは共重合せず、ビニル系モノマーやアクリレート等から生じた二級のラジカルと共重合することが知られている。このような不飽和結合を有するポリマー型モノマーを用いることで、構成単位(ii)及び構成単位(iii)をそれぞれ構成するモノマーと共重合させて、目的とするバインダー成分であるグラフト型ポリマーを得ることができる。
ポリマー型モノマーは、例えば、(i)α-ブロモメチルアクリル酸又はそのエステル等の連鎖移動剤を用いること、(ii)コバルトポルフィリンやコバルト(II)アセチルアセトナート等のコバルト触媒を使用すること、(iii)末端に導入したブロモイソ酪酸エステル基に強塩基を作用させて脱臭化水素すること;等によって製造することができる。なかでも、(i)α-ブロモメチルアクリル酸又はそのエステル等の連鎖移動剤を用いて製造することが、コバルト等の触媒を除去する必要がないために好ましい。有機溶剤中でα-ブロモメチルアクリル酸等を用いて各種モノマーと重合することで、ポリマー型モノマーの有機溶剤溶液を得ることができる。有機溶剤としては、本発明のエマルジョンに含まれる水溶性有機溶剤を用いることが、得られる溶液をそのまま次の工程に用いることができるために好ましい。
ポリマー型モノマーは、メタクリル酸に由来する構成単位を含む第1のポリマー部分を有する。メタクリル酸に由来する構成単位を含むことで、ポリマー鎖にカルボキシ基を導入することができる。ポリマー型モノマー中のメタクリル酸に由来する構成単位の量は、ポリマー型モノマーの酸価と相関関係にある。ポリマー型モノマーの酸価は65~195mgKOH/gであり、好ましくは80~163mgKOH/gである。ポリマー型モノマーの酸価が65mgKOH/g未満であると、グラフト型ポリマーをアルカリで中和しても水に溶解しなくなる場合がある。一方、ポリマー型モノマーの酸価が195mgKOH/g超であると、形成される塗膜の耐水性が低下しやすくなる場合がある。
ポリマー型モノマー中の第1のポリマー部分は、メタクリル酸以外のメタクリレート系モノマーに由来する構成単位をさらに含む。メタクリレート系モノマーは、炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリールメチル基、シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基、ヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基、又はポリ(n=2~25)アルキレン(炭素数2~4)グリコールアルキル(炭素数1~18)エーテル基を有するメタクリレート(メタクリル酸エステル)である。
炭素数1~18のアルキル基を有するメタクリレートとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸テトラデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸イソオクタデシル等を挙げることができる。
シクロアルキル基又はアルキルシクロアルキル基を有するメタクリレートとしては、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸イソボルニル等を挙げることができる。アリールメチル基を有するメタクリレートとしては、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ナフチルメチル等を挙げることができる。
シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基を有するメタクリレートとしては、メタクリル酸テトラヒドロフルフリルメチル、メタクリル酸テトラヒドロピラニルメチル等を挙げることができる。ヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基を有するメタクリレートとしては、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3-ヒドロキシブチル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル等を挙げることができる。ポリ(n=2~25)アルキレン(炭素数2~4)グリコールアルキル(炭素数1~18)エーテル基を有するメタクリレートとしては、メタクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、メタクリル酸ポリエチレングリコールプロピレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
環境への負荷を考慮すると、天然材料由来の原料を用いたメタクリレートを用いることが好ましい。天然材料由来の原料を用いたメタクリレートとしては、植物由来のアルコールを原料とする、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸テトラデシル、メタクリル酸オクタデシル等を挙げることができる。
構成単位(i)中の第1のポリマー部分のガラス転移温度(Tg)は55~150℃であり、好ましくは60~120℃である。第1のポリマー部分のガラス転移温度(Tg)が55℃未満であると、グラフト型ポリマーが軟質になり、形成される塗膜の耐ブロッキング性及び耐擦過性が低下する。一方、第1のポリマー部分のガラス転移温度(Tg)が150℃超であると、アルカリで中和しても水に溶解させることが困難になる。
本明細書における「ガラス転移温度(Tg)」は、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)から算出される値(理論値)である。例えば、x種類のモノマーを共重合したポリマー(共重合体)につき、それぞれモノマーの質量(g)を「W、W、・・・W」と仮定し、それぞれのモノマーのホモポリマーのガラス転移温度(Tg(℃))を「T、T、・・・T」と仮定する。このように仮定した場合、この共重合体のガラス転移温度(T(℃))を下記式(A)より算出することができる。
1/T
=W/(T+273)+W/(T+273)+・・・W/(T+273)
・・・(A)
ホモポリマーのガラス転移温度(Tg(℃))は、「ポリマーハンドブック 第4版」に記載の値を使用してもよいし、その他、様々な文献の値を使用してもよい。本明細書においては、「ポリマーハンドブック 第4版」に記載の値を使用する。
第1のポリマー部分に含まれる構成単位を形成するメタクリレート(メタクリル酸エステル)としては、第1のポリマー部分のガラス転移温度(Tg)が高くなるようなメタクリレートが好ましい。このようなメタクリレートとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、及びメタクリル酸イソボルニルからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。また、第1のポリマー部分中のこれらのメタクリレートに由来する構成単位の割合は、第1のポリマー部分の全体を基準として、70~90質量%であることが好ましい。
ポリマー型モノマーの数平均分子量(Mn)は1,000~10,000であり、好ましくは3,000~8,000である。ポリマー型モノマーの数平均分子量(Mn)が1,000未満であると、エマルジョンを得ることが困難になるとともに、そのような低分子量のポリマー型モノマーを合成することが実質的に困難である。一方、ポリマー型モノマーの数平均分子量(Mn)が10,000超であると、水に溶解する鎖の分子量が大きく、得られるエマルジョンの粘度が高くなりすぎてしまうとともに、形成される塗膜の耐水性が低下する。
本明細書における「数平均分子量(Mn)」及び「重量平均分子量(Mw)」は、いずれも、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の値である。ポリマー型モノマーの分子量分布(PDI=重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、1.1~2.2であることが好ましく、1.3~2.0であることがさらに好ましい。
(構成単位(ii))
構成単位(ii)は、一般式(2)で表される構成単位である。構成単位(ii)は、下記一般式(5)表されるモノマーに由来する構成単位である。
Figure 0007122482000011
(前記一般式(5)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Arはフェニル基、メチルフェニル基、又はナフチル基を示す)
一般式(5)表されるモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、及びビニルナフタレン等を挙げることができる。芳香環を有する構成単位(ii)を有することで、ポリエチレンテレフタレートやポリスチレン等の樹脂製の基材に対しても密着性が向上した塗膜を形成することができる。また、一般式(5)で表されるモノマーを用いることで、重合反応の制御が容易になる。一般式(5)で表されるモノマーとしては、汎用性が高く安価であることから、スチレンが好ましい。すなわち、構成単位(ii)は、スチレンに由来する構成単位であることが好ましい。
(構成単位(iii))
構成単位(iii)は、一般式(3)で表される構成単位である。構成単位(iii)は、下記一般式(6)表されるモノマーに由来する構成単位である。
Figure 0007122482000012
(前記一般式(6)中、Rは炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリールメチル基、シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基、又はヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基を示す)
構成単位(iii)としては、軟質であるとともに、ガラス転移温度(Tg)が低く、、水に不溶となる第2のポリマー部分を構成するための構成単位である。一般式(6)で表されるモノマーは、炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリールメチル基、シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基、又はヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基を有するアクリレート(アクリル酸エステル)である。
炭素数1~18のアルキル基を有するアクリレートとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸テトラデシル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸オクタデシル等を挙げることができる。
シクロアルキル基又はアルキルシクロアルキル基を有するアクリレートとしては、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル等を挙げることができる。アリールメチル基を有するアクリレートとしては、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ナチフル等を挙げることができる。
シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基を有するアクリレートとしては、アクリル酸テトラヒドロフルフリルメチル、アクリル酸テトラヒドロピラニルメチル等を挙げることができる。ヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基を有するアクリレートとしては、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸4-ヒドロブチル等を挙げることができる。
環境への負荷を考慮すると、天然材料由来の原料を用いたアクリレートを用いることが好ましい。天然材料由来の原料を用いたアクリレートとしては、植物由来のアルコールを原料とする、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸テトラデシル、アクリル酸オクタデシル等を挙げることができる。
一般式(6)で表されるモノマーとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びアクリル酸イソボルニルが好ましい。すなわち、構成単位(iii)は、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びアクリル酸イソボルニルからなる群より選択される少なくとも一種に由来する構成単位であることが好ましい。
(その他の構成単位(iv))
グラフト型ポリマーは、必要に応じて、上述の構成単位(i)~(iii)以外のその他の構成単位(iv)をさらに有していてもよい。その他の構成単位(iv)を構成するモノマーとしては、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル等のメタクリレート;(メタ)アクリルアミド系モノマー;(メタ)アクリロニトリル;アルカン酸ビニル等のビニル系モノマー;イタコン酸、マイレン酸等の酸モノマー;酸モノマーのエステル化物;けい皮酸、ケイ皮酸エステル類等のα,β-置換モノマー類;リモネン、シクロヘキセン等の炭化水素系不飽和結合含有モノマー;等を挙げることができる。
(グラフト型ポリマー)
上記の構成単位(ii)及び構成単位(iii)、並びに必要に応じて設けられる構成単位(iv)で構成される第2のポリマー部分(主鎖)のガラス転移温度(Tg)は-25~70℃であり、好ましくは-23~50℃、さらに好ましくは-22~35℃である。第2のポリマー部分のガラス転移温度(Tg)が-25℃未満であると、第2のポリマー部分(主鎖)が液状になることがあり、形成される塗膜の基材への密着性が低下する。一方、第2のポリマー部分のガラス転移温度(Tg)が70℃超であると、室温条件下でも軟質にならないため、形成される塗膜が固くなり、基材への追随性が不足するとともに、基材への密着性が低下する。
第1のポリマー部分のガラス転移温度(Tg)と、第2のポリマー部分のガラス転移温度(Tg)との差は、25℃以上であり、好ましくは30~150℃である。第1のポリマー部分(側鎖)と第2のポリマー部分(主鎖)のガラス転移温度(Tg)の差を十分にとることで、それぞれのポリマー鎖の機能を明確に分離させることが可能となり、基材への密着性や基材追随性に優れた塗膜を形成することができると考えられる。
ポリマー型モノマー中の構成単位(i)の割合は、構成単位(i)~(iv)の合計を100質量%として20~40質量%であり、好ましくは25~35質量%である。ポリマー型モノマー中の構成単位(i)の割合が20質量%未満であると、水溶解性が不十分になり、バインダー成分であるグラフト型ポリマーを水中に分散及び乳化させることが困難になる。一方、ポリマー型モノマー中の構成単位(i)の割合が40質量%超であると、水に溶解する部分が過剰になるため、バインダー成分の耐水性が低下したり、エマルジョンの粘度が過度に高くなったりする場合がある。
ポリマー型モノマー中の構成単位(ii)の割合は、構成単位(i)~(iv)の合計を100質量%として5~55質量%であり、好ましくは10~40質量%である。ポリマー型モノマー中の構成単位(ii)の割合が5質量%未満であると、芳香環の量が少なくなり、基材への塗膜の密着性が不十分になる。一方、ポリマー型モノマー中の構成単位(ii)の割合が55質量%超であると、主鎖(第2のポリマー部分)のTgが高くなり過ぎてしまい、基材への塗膜の密着性及び追随性が低下する。
ポリマー型モノマー中の構成単位(iii)の割合は、構成単位(i)~(iv)の合計を100質量%として5~55質量%であり、好ましくは10~40質量%である。ポリマー型モノマー中の構成単位(iii)の割合が5質量%未満であると、第2のポリマー部分のガラス転移温度(Tg)が低くならない場合がある。一方、ポリマー型モノマー中の構成単位(iii)の割合が55質量%超であると、第2のポリマー部分のガラス転移温度(Tg)が低くなり過ぎてしまい、塗膜が過度に軟質になる場合がある。
バインダー成分であるグラフト型ポリマーの数平均分子量(Mn)は15,000~30,000であり、好ましくは18,000~28,000である。数平均分子量(Mn)を上記の範囲内とすることで、アルカリで中和することにより、より粘度の低いエマルジョンとすることができる。グラフト型ポリマーの数平均分子量(Mn)が15,000未満であると、形成される塗膜としての物性が低下する。一方、数平均分子量(Mn)が30,000超のグラフト型ポリマーを製造するのは、比較的困難である。また、グラフト型ポリマーの数平均分子量(Mn)が大きすぎると、エマルジョン中のバインダー粒子の粒子径が過度に大きくなる場合がある。なお、グラフト型ポリマーの分子量分布(PDI)は、1.1~3.0であることが好ましく、1.6~2.5であることがさらに好ましい。
グラフト型ポリマーの酸価は10~80mgKOH/gであり、好ましくは20~50mgKOH/gである。グラフト型ポリマーの酸価を上記の範囲内とすることで、アルカリで中和するとともに、水に分散及び乳化させてエマルジョンとすることができる。グラフト型ポリマーの酸価が10mgKOH/g未満であると、中和しても水に分散及び乳化させることができない。また、インクジェット印刷用の水性インクに適用した場合に、再溶解性が発現しにくくなる。一方、グラフト型ポリマーの酸価が80mgKOH/g超であると、親水性が高くなり過ぎてしまい、形成される塗膜の耐水性が低下する。
<エマルジョン及びその製造方法>
(エマルジョン)
本発明のエマルジョンは、水及び水溶性有機溶剤を含む水性媒体と、この水性媒体中に分散した、前述のバインダー成分であるグラフト型ポリマー中のカルボキシ基の少なくとも一部がアルカリで中和されて形成されたバインダー粒子と、を含有する。
グラフト型ポリマーに含まれる構成単位(i)中のカルボキシ基の少なくとも一部をアルカリで中和し、カルボキシ基をイオン化することで、水性媒体中に分散及び乳化させてエマルジョンとすることができる。アルカリとしては、アンモニア;トリエチルアミン、ジメチルアミノエタノール、アミノメチルプロパノール等の有機アミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属塩;等を用いることができる。形成する塗膜の耐水性を考慮すると、乾燥することで水に不溶なカルボキシ基に容易に戻る、揮発性のアンモニアが好ましい。
エマルジョン中のバインダー粒子の数平均粒子径は50~300nmであり、好ましくは60~150nmである。バインダー粒子の数平均粒子径が50nm未満であると、エマルジョンの粘度が過剰に高くなることがある。一方、バインダー粒子の数平均粒子径が300nm超であると、インクジェット印刷用の水性インクに適用した場合に、記録ヘッドで詰まりが生じやすくなることがあるとともに、インクの吐出性が不安定になる場合がある。
水性媒体は、水及び水溶性有機溶剤を含有する。水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフラノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーエル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド系溶剤;テトラメチル尿素、1,3-ジメチルイミダゾリン等の尿素系溶剤;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄含有溶剤;プロピレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、グリセリン等の多価アルコール;等を挙げることができる。なかでも、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール系溶剤が好ましい。
エマルジョン中の水溶性有機溶剤の含有量は、5~30質量%であることが好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が多すぎると、乾燥性が低下するとともに、バインダー粒子が形成されにくくなり、エマルジョンの粘度が過度に高くなる場合がある。なお、水性媒体は、水溶性有機溶剤を実質的に含有しなくてもよい。
(エマルジョンの製造方法)
本発明のエマルジョンは、以下に示す方法によって製造することができる。すなわち、本発明のエマルジョンの製造方法は、一般式(4)で表されるポリマー型モノマー、一般式(5)で表されるモノマー、及び一般式(6)で表されるモノマーを水溶性有機溶剤中でラジカル重合して、グラフト型ポリマーであるバインダー成分を得る工程と、得られたグラフト型ポリマー中のカルボキシ基の少なくとも一部をアルカリで中和してバインダー粒子を形成し、水及び水溶性有機溶剤を含む水性媒体中に分散させる工程と、を有する。
エマルジョンを製造する方法としては、例えば、ポリマー型モノマーのアルカリ水溶液に、ラジカル発生剤の存在下、一般式(5)で表されるモノマー及び一般式(6)で表されるモノマーを滴下してエマルジョン重合する方法;ポリマー型モノマーのアルカリ水溶液と、一般式(5)で表されるモノマー及び一般式(6)で表されるモノマーとを機械的に撹拌して乳化液を調製してエマルジョン重合する方法;等がある。しかし、これらの方法では、ポリマー型モノマーの乳化作用が重要であり、安定なエマルジョン粒子を形成することが困難であった。また、反応系中に水溶性有機溶剤が存在すると、エマルジョン粒子がうまく形成されない場合もあった。さらに、上記のエマルジョン重合では、重合したポリマー型モノマーを反応系から取り出す必要があるので、工程が煩雑になるとともに、コスト面でも不利であった。
これに対して、本発明のエマルジョンの製造方法では、ポリマー型モノマーの水溶性有機溶剤溶液から、ポリマー型モノマーを取り出すことなくそのまま使用し、一般式(5)で表されるモノマー及び一般式(6)で表されるモノマーとラジカル重合すればよい。このため、工程が簡略化されているとともに、エマルジョン粒子を調製する必要もなく、より簡便かつ安定して、目的とするエマルジョンを製造することができる。
ラジカル重合の際に用いるラジカル開始剤としては、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤;等を挙げることができる。ラジカル開始剤の存在下、重合反応液中のモノマーの合計含有量を、好ましくは40~80質量%、さらに好ましくは50~75質量%、特に好ましくは60~70質量%に設定してラジカル重合する。これにより、グラフト型ポリマーであるバインダー成分を得ることができる。
ラジカル重合は、リビングラジカル重合であることが好ましい。リビングラジカル重合としては、ニトロキサイドを使用した熱解離重合(NMP法)、銅錯体等を触媒とした酸化還元を利用した原子移動ラジカル重合(ATRP法)、ジチオエステル化合物等を使用した可逆的付加開裂型連鎖移動重合(RAFT法)、有機テルルを開始剤とした有機テルルリビングラジカル重合(TERP法)、ヨウ素有機化合物を開始剤とし、有機化合物を触媒とした可逆的移動触媒重合(RTCP法)、可逆的触媒媒介重合(RCMP法)等を挙げることができる。重合後、得られたグラフト型ポリマー中のカルボキシ基の少なくとも一部を前述のアルカリで中和してバインダー粒子を形成する。必要に応じて水等を添加し、固形分の含有量を、好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは15~30質量%に調整する。これにより、水性媒体中にバインダー粒子を分散させて、目的とするエマルジョンを得ることができる。
(バインダー成分及びエマルジョンの使用)
前述のバインダー成分及びそれを用いて調製されるエマルジョンは、水性の皮膜形成材料として用いることができる。具体的には、水性塗料、水性文具、水性コーティング剤、及び水性接着剤等に配合される材料として有用である。なかでも、印画物等の塗膜(皮膜)形成用の成分として水性インクに用いることが好ましい。水性インクとしては、グラビア印刷用の水性インク、フレキソ印刷用の水性インク、及びインクジェット印刷用の水性インク等が好適である。
<水性インク>
本発明の水性インクは、前述のエマルジョンを含有する。水性インクは、通常、水及び水溶性有機溶剤を含む水性媒体や、その他の添加剤等をさらに含有する。本発明の水性インクは、顔料等の着色剤を含有する無彩色・有彩色の水性インクであってもよく、着色剤を実質的に含有しないOPニス等の透明ニスであってもよい。
添加剤としては、染料、顔料、消泡剤、レベリング剤、界面活性剤、ワックス成分、架橋剤、フィラー、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、防腐剤、抗菌剤、粘度調整剤、擦り傷防止剤、表面張力調整剤、pH調整剤、及びその他のバインダー成分等を挙げることができる。
水性インク中のバインダー粒子(バインダー成分)の含有量は、固形分を基準として、1~80質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがさらに好ましい。バインダー粒子(バインダー成分)の含有量を上記の範囲内とすることで、基材との密着性により優れているとともに、耐擦過性、耐摩耗性、耐水性、耐ブロッキング性、及び基材追従性等にさらに優れた印刷層(塗膜)を形成可能な水性インクとすることができる。
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、及びノニオン性の界面活性剤を用いることができる。なかでも、アセチレン系界面活性剤、ポリシリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤が好ましい。水性インク中の界面活性剤の含有量は、0.1~1質量%であることが好ましい。
ワックス成分は、形成する塗膜の耐擦過性、耐摩耗性、及び耐水性当の特性をさらに向上させるための成分である。ワックス成分としては、炭化水素系のワックスが好ましい。ワックスとしては、パラフィン類、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィン系ワックス、フッ化炭化水素系ワックス、これらの水分散体及び乳化液を用いることができる。水性インク中のワックス成分の含有量は、0.5~5質量%であることが好ましい。
架橋剤は、形成する塗膜の密着性、耐擦過性、及び耐溶剤性等の特性を向上させるための成分である。架橋剤としては、バインダー成分(グラフト型ポリマー)中の反応性基と架橋反応して三次元網目構造を形成しうる、2以上の反応性基を有する多官能架橋剤を用いることが好ましい。架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリンジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、ブロック化イソシアネート系架橋剤等を挙げることができる。水性インク中の架橋剤の含有量は、バインダー成分中のカルボキシ基や水酸基の量に合わせて設定することが好ましい。具体的には、バインダー成分中の反応性基1モルに対し、架橋剤の反応性基が0.7~1.2モルとなる量の架橋剤を用いることが好ましい。
着色剤としては、染料及び顔料を用いることができる。但し、形成する印刷層(塗膜)の耐光性、耐水性、及び耐溶剤性等の特性を向上させる観点から、顔料を着色剤として用いることが好ましい。顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、弁柄、オーカー、複合金属酸化物、マイカ、硫酸バリウム等の無機顔料;カーボンブラック、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、アゾメチンアゾ系顔料、アゾメチン系顔料、アンスラキノン系顔料、ぺリノン・ペリレン系顔料、インジゴ・チオインジゴ系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キノフタロン系顔料、インダスレン系顔料、蛍光顔料等を挙げることができる。カーボンブラックとしては、環境対応の観点から、植物由来のカーボンブラックが好ましい。例えば、植物性オイルや松脂等を炭化させて得られるカーボンブラック、及び竹炭などが好ましい。
有機顔料の数平均粒子径は、50~150nmであることが好ましい。また、無機顔料の数平均粒子径は、50~300nmであることが好ましい。水性インク中の顔料の含有量は、固形分を基準として、10~80質量%であることが好ましい。
顔料の好適例としては、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、15:6;C.I.ピグメントレッド122、176、254、269、291;C.I.ピグメントバイオレット19、23;C.I.ピグメントイエロー74、150、155、180;C.I.ピグメントグリーン36、58;C.I.ピグメントオレンジ43、71;C.I.ピグメントブラック7;C.I.ピグメントホワイト6等を挙げることができる。
顔料は、その粒子表面に親水性基を導入する、又はポリマーで処理する等した自己分散性顔料として用いることができる。また、顔料分散剤を用いてインク中に顔料を分散させることもできる。顔料分散剤としては、界面活性剤や、親水性部を有する、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン(メタ)アクリル系ポリマー、スチレンマレイン酸系ポリマー、スチレンアクリルマレイン酸系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー等の樹脂分散剤を用いることができる。樹脂分散剤の構造は、グラフト型やブロック型等の制御された構造が好ましい。前述のポリマー型モノマーをアルカリで中和したものは、バインダー成分との相溶性が良好であるために好ましい。水性インク中の顔料分散剤の含有量は、有機顔料100質量部に対して、5~50質量部とすることが好ましい。また、水性インク中の顔料分散剤の含有量は、無機顔料100質量部に対して、1~30質量部とすることが好ましい。
前述のバインダー成分(グラフト型ポリマー)以外のその他のバインダー成分としては、スチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウタレン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は、乳化重合、自己分散重合、及び溶液重合で得られるエマルジョンや水分散体として水性インクに配合することができる。
フィラーは、形成する塗膜の耐擦過性及び耐摩擦性等の特性を向上させながら、軽量化するための成分である。フィラーとしては、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、磁性粉、金属粉、中空ガラスビーズ、ガラス繊維、カーボンナノチューブ等の無機系フィラー;セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、樹脂ビーズ等の有機系フィラーを挙げることができる。
防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール、チアベンダゾール、ソルビタン酸カリウム、ソルビタン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、チアゾスルファミド、及びピリジンチオールオキシド等を挙げることができる。水性インク中の防腐剤の含有量は、0.05~2.0質量%であることが好ましく、0.1~1.0質量%であることがさらに好ましい。
本発明の水性インクは、グラビア印刷用、フレキソ印刷用、又はインクジェット印刷用の水性インクとして好適である。ザーンカップ♯3又は♯4を使用して測定される、グラビア印刷用及びフレキソ印刷用の水性インクの25℃における粘度は、5~30秒であることが好ましい。グラビア印刷用及びフレキソ印刷用の水性インクの25℃における表面張力は、20~50mN/mであることが好ましい。インクジェット印刷用の水性インクは、使用する記録ヘッドの吐出特性に応じて調整することが好ましい。低粘度対応の記録ヘッドであれば、インクジェット印刷用の水性インクの25℃における粘度は、2~5mPa・sであることが好ましい。また、高粘度対応の記録ヘッドであれば、インクジェット印刷用の水性インクの25℃における粘度は、3~50mPa・sであることが好ましい。なお、インクジェット印刷用の水性インクの25℃における表面張力は、15~45mN/mであることが好ましく、20~40mN/mであることがさらに好ましい。
水性インクの25℃におけるpHは、7.0~10.0であることが好ましく、7.5~9.5であることがさらに好ましい。水性インクのpHが7.0未満であると、バインダー成分が析出しやすくなる。一方、水性インクのpHが10.0超であると、アルカリ性が強くなるので、印刷機や記録ヘッドが劣化しやすくなることがある。
被印刷体となる基材としては、紙、インクジェット紙、マット紙、合成紙、プラスチックフィルム、プラスチック成形物、鋼板、アルミ箔、木材、織布、編布、不織布、石膏ボード、木質ボード、陶磁器等を挙げることができる。なかでも、包装用ラベル等に用いられるプラスチックフィルムとしては、多層フィルム、アルミ蒸着フィルム、アルミ箔を含む積層フィルム、シリカ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム等を挙げることができる。プラスチックフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド;ポリ乳酸;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン等;を挙げることができる。フィルムは、未延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよい。また、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されていてもよい。フィルムの厚さは、通常、1~1,000μm程度である。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
<ポリマー型モノマーの製造>
(製造例1:MAC-1)
イソプロパール(IPA)104.5部、メタクリル酸メチル(MMA)30部、メタクリル酸ブチル(BMA)30部、メタクリル酸2-エチルヘキシル(2EHMA)20部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)5部、メタクリル酸(MAA)15部、α-ブロモメチルアクリル酸エチル(EBMA)4部、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(V-601)0.5部を反応容器に入れた。窒素をバブリングしながら80℃で8時間重合して、ポリマー型モノマーであるMAC-1を含有する液体を得た。得られた液体の一部をサンプリングし、テトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したMAC-1の数平均分子量(Mn)は5,400であり、分子量分布(PDI=重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は1.73であった。得られた液体の一部をアルミ皿に測りとり、150℃の送風乾燥機にて3時間乾燥させて得た残分から算出した重合率は約100%であり、得られた液体の固形分は49.8%であった。H-NMRを測定して、MAC-1の末端に不飽和結合が導入されていることを確認した。前述の式(A)により算出した、MAC-1中のモノマー成分(EBMAを除く)に由来する第1のポリマー部分(側鎖)のガラス転移温度(Tg)は、57℃であった。なお、熱分析して測定したTgは56.6℃であり、式(A)より算出したTgとほぼ同一であることを確認した。また、トルエン/エタノール=1/1(質量比)の混合溶媒に溶解させ、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1mol/L水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定して測定したMAC-1の酸価は、96.6mgKOH/gであった。
(製造例2~13:MAC-2~13)
表1~3の中段に示す配合処方(単位:部)としたこと以外は、前述の製造例1と同様にして、ポリマー型モノマーであるMAC-2~13をそれぞれ含有する液体を得た。各種物性等を表1~3の下段に示す。また、表2及び3中の略号の意味を以下に示す。
・BzMA:メタクリル酸ベンジル
・CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
・TMCHMA:メタクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル
・BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
・EMA:メタクリル酸エチル(デンプンや糖を分解して得たエタノールを用いて製造されたモノマー)
・THFMA:メタクリル酸テトラヒドロフルフリル(トウモロコシの芯等から得たフルフラールを水素化して調製したテトラヒドロフルフリルアルコールと、メタクリル酸とを反応させて製造されたモノマー)
・IBXMA:メタクリル酸イソボルニル(松脂や松精油から得たα-ピネンを異性化したカンフェンと、メタクリル酸とを反応させて製造されたモノマー)
Figure 0007122482000013
Figure 0007122482000014
Figure 0007122482000015
(比較製造例1~4:HMAC-1~4)
表4の中段に示す配合処方(単位:部)としたこと以外は、前述の製造例1と同様にして、ポリマー型モノマーであるHMAC-1~4をそれぞれ含有する液体を得た。各種物性等を表4の下段に示す。
Figure 0007122482000016
<エマルジョンの製造>
(実施例1:RR-1)
IPA12.8部、MAC-1を含有する液体60.2部、スチレン(St)25部、アクリル酸ブチル(BA)20部、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)20部、HEMA5部、及び2-エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3-テトラメチルブチル(商品名「パーオクタO」、日油社製)1部を反応容器に入れ、73℃で8時間重合して、ポリマー(バインダー成分)を含有する液体を得た。得られたポリマーのMnは22,000であり、PDIは2.26であった。得られた液体に28%アンモニア水3.5部及びイオン交換水256.5部の混合液を添加して、青白い半透明のエマルジョンであるRR-1を得た。RR-1の固形分は24.9%であった。RR-1中のポリマーの酸価は29.3mgKOH/gであり、RR-1のpHは9.4であった。B型粘度計を使用し、ローター1、回転数60rpm、25℃の条件で測定したRR-1の粘度は14.6mPa・sであった。動的光散乱式の粒子径分布測定装置(商品名「nanoSAQRA」、大塚電子社製)を使用して測定したRR-1中のバインダー粒子の数平均粒子径は、77.7nmであった。前述の式(A)により算出した、構成単位(ii)、構成単位(iii)、及びその他の構成単位(iv)で構成される第2のポリマー部分(主鎖)のTgは、-23.0℃であった。第1のポリマー部分(側鎖)のTgは57℃であったことから、主鎖Tgと側鎖Tgの差は80℃である。
(実施例2~14:RR-2~14)
表5~7の中段に示す配合処方(単位:部)としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、エマルジョンであるRR-2~14を得た。各種物性等を表5~7の下段に示す。
Figure 0007122482000017
Figure 0007122482000018
Figure 0007122482000019
(実施例15)
BDG37.8部、MAC-10を含有する液体60.5部、St30部、アクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFA)20部、アクリル酸イソボルニル(IBXA)20部、及び2-エチルヘキサンペルオキシ酸1,1,3,3-テトラメチルブチル1部を反応容器に入れ、前述の実施例1と同様に重合して、ポリマー(バインダー成分)を含有する液体を得た。得られたポリマーのMnは26,000であり、PDIは2.67であった。得られた液体に28%アンモニア水3.8部及びイオン交換水227.9部の混合液を添加して、青白い半透明のエマルジョンであるRR-15を得た。RR-15の固形分は24.8%であった。RR-15中のポリマーの酸価は29.4mgKOH/gであり、RR-15のpHは9.3であり、粘度は119.6mPa・sであった。RR-1中のバインダー粒子の数平均粒子径は、79.3nmであった。前述の式(A)により算出した、構成単位(ii)及び構成単位(iii)で構成される第2のポリマー部分(主鎖)のTgは、59.6℃であった。第1のポリマー部分(側鎖)のTgは91.6℃であったことから、主鎖Tgと側鎖Tgの差は32℃である。
(実施例16~18:RR-16~18)
表8の中段に示す配合処方(単位:部)としたこと以外は、前述の実施例15と同様にして、エマルジョンであるRR-16~18を得た。各種物性等を表8の下段に示す。
Figure 0007122482000020
(比較例1~5:HRR-1~5)
表9の中段に示す配合処方(単位:部)としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、エマルジョンであるHRR-1、3~5を得た。各種物性等を表9の下段に示す。なお、比較例2(HRR-2)については、重合時に高発熱して温度制御することができず、ポリマーを得ることができなかった。
Figure 0007122482000021
<水性フレキソOPニスの製造>
(実施例19~26、比較例6、7)
表10に示す種類のエマルジョン 270部、水22.5部、ポリエチレンワックス分散体(商品名「ケミパールW500」、三井化学社製)6部、消泡剤(商品名「テゴフォーメックス805N」、エボニック社製)0.6部、界面活性剤(商品名「テゴウェット500」、エボニック社製)0.3部、及び増粘剤(商品名「SNシックナー623N」、サンノプコ社製)0.6部を混合し、ディスパーを用いて十分撹拌して、水性フレキソOPニス(NS-1~8、HNS-1、2)を得た。ザーンカップ♯4を使用して測定した水性フレキソOPニスの25℃における粘度は14秒であり、pHは8.3であった。
<水性フレキソOPニスの評価>
(シュリンクラベルの製造(塗膜の形成))
ポリスチレン及びポリエチレンテレフタレートが積層された熱収縮性のフィルム(商品名「HST」、グンゼ社製)を用意し、表面をコロナ処理した。また、水性インキ(商品名「ハイドリック FCFシリーズ」、大日精化工業社製)をイオン交換水で希釈し、ザーンカップ#4を用いて測定される25℃における粘度が14秒であるカラーインクを調製した。セルボリューム4.5cm/mのアニロックスロールを搭載したフレキソハンドプルーファーをアプリケーターとして使用し、フィルムのコロナ処理した表面上にカラーインクを塗工した。また、製造したした各水性フレキソOPニス100部にエポキシ硬化剤(商品名「デナコールEX-612」、長瀬ケムテックス社製)5部を添加するとともに、イオン交換水で希釈し、ザーンカップ#4を用いて測定される25℃における粘度が15秒である塗工用OPニスを調製した。セルボリューム8.5cm/mのアニロックスロールを搭載したフレキソハンドプルーファーをアプリケーターとして使用し、カラーインクの上に塗工用OPニスを塗工した。25℃で48時間乾燥して塗膜を形成し、シュリンクラベルを得た。
(密着性)
製造したシュリンクラベルの塗工用OPニスの塗工面(塗膜)上にセロファンテープを貼着して十分に押し当てた後、剥離した。そして、塗膜の剥がれ具合を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって塗膜の密着性を評価した。結果を表10に示す。
◎:塗膜がまったく剥がれなかった。
○:塗膜がわずかに剥がれた。
△:剥がれた塗膜の面積の方が、剥がれずに残った塗膜の面積よりも小さかった。
×:剥がれた塗膜の面積の方が、剥がれずに残った塗膜の面積よりも大きかった。
(耐ブロッキング性)
未処理のフィルムとシュリンクラベルを、フィルムの未処理面とシュリンクラベルの塗膜とが接触するように積層した。7kg/cmの荷重をかけた状態で40℃の恒温槽内で24時間放置した。そして、未処理のフィルムとシュリンクラベルを剥離した際の剥離抵抗力を確認するとともに、塗膜の外観を観察し、以下の評価基準にしたがって塗膜の耐ブロッキング性を評価した。結果を表10に示す。
◎:未処理面への塗膜の転移がなく、剥離抵抗もなかった。
〇:未処理面への塗膜の転移がほとんどなく、剥離抵抗をわずかに感じた。
△:未処理面への塗膜の転移がやや認められ、剥離抵抗をやや感じた。
△×:未処理面への塗膜の転移が認められ、剥離抵抗を感じた。
×:未処理面への塗膜の激しい転移が認められ、剥離抵抗を強く感じた。
(耐湿摩擦性)
学振型摩擦堅牢度試験機(商品名「RT-300」、大栄科学社製)を使用し、水で湿らせた白布によって、荷重200gの条件で塗膜の表面を100回往復した。100回往復後の塗膜の状態を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって塗膜の耐湿摩擦性を評価した。結果を表10に示す。
◎:塗膜がまったく剥がれなかった。
○:塗膜がわずかに剥がれた。
△:剥がれた塗膜の面積の方が、剥がれずに残った塗膜の面積よりも小さかった。
×:剥がれた塗膜の面積の方が、剥がれずに残った塗膜の面積よりも大きかった。
(収縮白化)
カラーインクを用いずに、塗工用OPニスをフィルムのコロナ処理面に直接塗工したこと以外は、前述のシュリンクラベルの場合と同様にして、シュリンクラベルを製造した。製造したシュリンクラベルを85℃の熱水に5秒間浸漬した。そして、積分球式ヘイズメーターを使用して50%収縮させたシュリンクラベルのヘイズ値を測定し、以下に示す評価基準にしたがって塗膜の収縮白化を評価した。結果を表10に示す。
○:ヘイズ値が30未満であった。
△:ヘイズ値が30以上50未満であった。
×:ヘイズ値が50以上であった。
Figure 0007122482000022
<水性グラビアインク>
(参考製造例1:顔料分散剤-1)
フラスコにイオン交換水1,000部を入れ、ティスパーを使用して撹拌しながら、製造例6で得たMAC-6を含有する液体100部を徐々に添加してポリマー(MAC-6)を析出させた。固形分をろ過してイオン交換水で洗浄し、固形分45%の水ペーストを得た。得られた水ペースト100部、アンモニア水5.2部、及び水7.3部を、ディスパーを使用して撹拌し、顔料分散剤-1の水溶液を得た。顔料分散剤-1の水溶液の固形分は39.8%であり、pHは8.7であった。
(実施例27~32、比較例8、9)
酸化チタン(商品名「R-960」、デュポン社製)40部、顔料分散剤-1 5部、表11に示す種類のエマルジョン45部、及び消泡剤(商品名「テゴフォーメックス805N」、エボニック社製)0.2部の混合液を、ディスパーを用いて混合した。次いで、横型媒体分散機(商品名「ダイノミル0.6リットルECM型」、シンマルエンタープライゼス社製、ジルコニア製ビーズの径:0.5mm)を使用し、周速10m/sで分散処理してミルベース中に顔料(酸化チタン)を十分に分散させた。その後、ポリエチレンワックス分散体(商品名「ケミパールW500」、三井化学社製)5部、界面活性剤(商品名「テゴウェット500」、エボニック社製)0.1部、及び増粘剤(商品名「SNシックナー623N」、サンノプコ社製)0.2部を添加し、十分撹拌して、水性グラビアインク(G-1~6、HG-1、2)を得た。
<水性グラビアインクの評価>
(印刷フィルムの製造(塗膜の形成))
コロナ処理したポリプロピレン製の二軸延伸フィルム(商品名「パイレンP」、東洋紡績社製)を用意した。また、製造した各水性グラビアインク100部にエポキシ硬化剤(商品名「デナコールEX-612」、長瀬ケムテックス社製)5部を添加するとともに、イオン交換水で希釈し、ザーンカップ#4を用いて測定される25℃における粘度が15秒である塗工用水性グラビアインクを調製した。版深35μmのグラビアプレートを備えた簡易グラビア印刷機を使用し、用意した二軸延伸フィルムの表面(コロナ処理面)に乾燥後の厚さが3μmとなるように塗工用水性グラビアインクを付与した後、50℃で乾燥して塗膜を形成し、印刷フィルムを得た。
(密着性、耐ブロッキング性、耐湿摩擦性)
水性フレキソOPニスについて行った前述の各評価と同様にして、「密着性」、「耐ブロッキング性」、及び「耐湿摩擦性」の各評価を行った。結果を表11に示す。
(保存安定性)
水性グラビアインクを40℃で1週間保存した。そして、ザーンカップNo.4を使用して保存前後の水性グラビアインクの25℃における粘度を測定するとともに、粘度変化率を算出し、以下に示す評価基準にしたがってインクの保存安定性を評価した。結果を表11に示す。
◎:粘度変化率が±10%未満であった。
○:粘度変化率が±10%以上±15%未満であった。
△:粘度変化率が±15%以上±20%未満であった。
×:粘度変化率が±20%以上であった。
Figure 0007122482000023
<水性インクジェットインク>
(参考製造例2:顔料分散剤-2)
反応容器にBDG300部を入れ、窒素をバブリングしながら70℃に加温した。別容器に、IBXMA30部、THFMA120部、ラウリルメタクリレート(LMA)60部、HEMA60部、MAA30部、及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名「V-65」、富士フイルム社製)(V-65)2部を入れて混合し、均一化してモノマー混合液を調製した。調製したモノマー混合液の1/3を反応容器内に滴下した後、モノマー混合液の残部を2時間かけてさらに滴下し、70℃で8時間重合してポリマーを合成し、ポリマーを含有する液体を得た。ポリマーのMnは19,800であり、PDIは2.01であり、重合率は約100%であった。ポリマーを含有する溶液に、水酸化ナトリウム13.9部及び水136.1部の混合液を添加して中和し、粘稠な淡黄色透明液体である顔料分散剤-2の水溶液を得た。得られた水溶液の固形分は42.1%であり、pHは10.1であった。
(実施例33~37、比較例10、11)
顔料分散剤-2の水溶液89.1部及びイオン交換水337.8部を混合して透明の液体を得た。得られた液体に銅フタロシアニン顔料PB-15:3(商品名「シアニンブルーA220JC」、大日精化工業社製)150部を添加し、ディスパーを使用して30分撹拌してミルベースを調製した。前述の横型媒体分散機を使用し、周速10m/sで分散処理してミルベース中に顔料を十分に分散させた後、水256.4部を添加して顔料濃度を18%に調整した。ミルベースを遠心分離処理(7,500回転、20分間)した後、ポアサイズ5μmのメンブレンフィルターでろ過した。水で希釈して、顔料濃度14%である顔料分散液(シアン色)を得た。粒度測定器(商品名「NICOMP 380ZLS-S」、インターナショナル・ビジネス社製)を使用して測定した顔料分散液(シアン色)中の顔料の数平均粒子径は138.5nmであり、顔料が微分散されていることを確認した。また、顔料分散液(シアン色)の粘度は3.70mPa・sであり、pHは9.4であった。70℃で1週間保存後の顔料分散液(シアン色)中の顔料の数平均粒子径は137.5nmであり、粘度は3.66mPa・sであった。
顔料4部、表12に示す種類のエマルジョン(固形分)4部、界面活性剤(商品名「サーフィノールS465」、日信化学工業社製)0.1部、ワックス(エチレン・アクリル酸のアイオノマー、商品名「ケミパールW300」、三井化学社製)0.7部、プロピレングリコール12.0部、及び水(合計100部となる残部)を混合した。十分撹拌した後、ポアサイズ10μmのメンブランフィルターでろ過して、水性インクジェットインク(I-1~5、HI-1、2)を得た。
<水性インクジェットインクの評価>
(保存安定性)
水性インクジェットインクを70℃で1週間保存した。保存後の水性インクジェットインクの粘度及びインク中の顔料の数平均粒子径を測定し、以下に示す評価基準にしたがってインクの保存安定性を評価した。結果を表12に示す。
○:顔料の数平均粒子径及び粘度の変化率は、いずれも±5%以内であった。
△:顔料の数平均粒子径の変化率は±5%以内であったが、粘度の変化率が10%以上であった。
×:顔料の数平均粒子径の変化率が±5%を超えていた、又は粘度の変化率が10%以上であった。
(印刷物の製造(画像の印刷))
水性インクジェットインクをカートリッジにそれぞれ充填し、プレートヒーター付きのインクジェット印刷機(商品名「MMP825H」、マスターマインド社製)に装着した。そして、プレートヒーターによって表面温度50℃に加熱した印刷基材に画像を印刷して印刷物を得た。用いた印刷基材を以下に示す。
・OPPフィルム(ポリプロピレンフィルム、フタムラ化学社製、50μm)
・PETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、フタムラ化学社製、60μm)
(吐出性)
画像印刷時のインクの吐出状態を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがってインクの吐出性を評価した。結果を表12に示す。
○:問題なく吐出することができ、良好な画像を印刷することができた。
△:微小液滴の飛び散りが認められた。
×:吐出の際、液滴がスプラッシュして飛び散り、画像が乱れた。
(密着性)
ドライヤーを使用して印刷物を十分に乾燥させた後、画像にセロファンテープを貼着して十分に押し当てた後、剥離した。そして、フィルムからの画像の剥がれ具合を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって画像の密着性を評価した。結果を表12に示す。
◎:画像がまったく剥がれなかった。
○:画像がわずかに剥がれた。
△:剥がれた画像の面積の方が、剥がれずに残った画像の面積よりも小さかった。
×:剥がれた画像の面積の方が、剥がれずに残った画像の面積よりも大きかった。
(耐乾摩擦性及び耐湿摩擦性)
学振型摩擦堅牢度試験機(商品名「RT-300」、大栄科学社製)を使用し、乾燥した白布及び水で湿らせた白布によって、それぞれ荷重500gの条件で画像の表面を20回往復した。200回往復後の画像の状態を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって画像の耐乾摩擦性及び耐湿摩擦性を評価した。結果を表12に示す。
◎:画像がまったく剥がれなかった。
○:画像がわずかに剥がれた。
△:剥がれた画像の面積の方が、剥がれずに残った画像の面積よりも小さかった。
×:剥がれた画像の面積の方が、剥がれずに残った画像の面積よりも大きかった。
Figure 0007122482000024
本発明のバインダー成分及びそれを用いて得られるエマルジョンは、各種基材への密着性、耐摩擦性、及び耐ブロッキング性等の特性に優れた皮膜(塗膜)である画像を形成しうる水性インクを調製可能な成分として有用である。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で表される、2以上のモノマーに由来する構成単位を含む第1のポリマー部分を持った構成単位(i)20~40質量%、下記一般式(2)で表される構成単位(ii)5~55質量%、下記一般式(3)で表される構成単位(iii)5~55質量%、及び必要に応じて設けられるその他の構成単位(iv)を有する(構成単位(i)~(iv)の合計を100質量%とする)、数平均分子量が15,000~30,000であり、酸価が10~50mgKOH/gである水不溶性のグラフト型ポリマーであり、
    前記第1のポリマー部分のガラス転移温度が55~150℃であり、
    前記構成単位(ii)、前記構成単位(iii)、及び前記構成単位(iv)で構成される第2のポリマー部分のガラス転移温度が-25~70℃であり、
    前記第1のポリマー部分のガラス転移温度と、前記第2のポリマー部分のガラス転移温度との差が、25℃以上であるバインダー成分。
    Figure 0007122482000025
    (前記一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、Rは炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリールメチル基、シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基、ヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基、又はポリ(n=2~25)アルキレン(炭素数2~4)グリコールアルキル(炭素数1~18)エーテル基を示し、p、m、及びnは任意の繰り返し数を示す)
    Figure 0007122482000026
    (前記一般式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Arはフェニル基、メチルフェニル基、又はナフチル基を示し、qは任意の繰り返し数を示す)
    Figure 0007122482000027
    (前記一般式(3)中、Rは炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリールメチル基、シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基、又はヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基を示し、rは任意の繰り返し数を示す)
  2. 前記第1のポリマー部分のガラス転移温度と、前記第2のポリマー部分のガラス転移温度との差が、93.7℃以上である請求項1に記載のバインダー成分。
  3. 前記第1のポリマー部分が、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、及びメタクリル酸イソボルニルからなる群より選択される少なくとも一種のモノマーに由来する構成単位を70~90質量%含み、
    前記構成単位(ii)が、スチレンに由来する構成単位であり、
    前記構成単位(iii)が、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、及びアクリル酸イソボルニルからなる群より選択される少なくとも一種に由来する構成単位である請求項1又は2に記載のバインダー成分。
  4. 水及び水溶性有機溶剤を含む水性媒体と、
    前記水性媒体中に分散した、請求項1~3のいずれか一項に記載のバインダー成分であるグラフト型ポリマー中のカルボキシ基の少なくとも一部がアルカリで中和されて形成されたバインダー粒子と、を含有し、
    前記バインダー粒子の数平均粒子径が、50~300nmであるエマルジョン。
  5. 請求項に記載のエマルジョンの製造方法であって、
    下記一般式(4)で表される、数平均分子量が1,000~10,000であり、酸価が65~195mgKOH/gであるポリマー型モノマー、下記一般式(5)で表されるモノマー、及び下記一般式(6)で表されるモノマーを水溶性有機溶剤中でラジカル重合して、グラフト型ポリマーであるバインダー成分を得る工程と、
    得られた前記グラフト型ポリマー中のカルボキシ基の少なくとも一部をアルカリで中和してバインダー粒子を形成し、水及び前記水溶性有機溶剤を含む水性媒体中に分散させる工程と、を有するエマルジョンの製造方法。
    Figure 0007122482000028
    (前記一般式(4)中、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を示し、Rは炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリールメチル基、シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基、ヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基、又はポリ(n=2~25)アルキレン(炭素数2~4)グリコールアルキル(炭素数1~18)エーテル基を示し、m及びnは任意の繰り返し数を示す)
    Figure 0007122482000029
    (前記一般式(5)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Arはフェニル基、メチルフェニル基、又はナフチル基を示す)
    Figure 0007122482000030
    (前記一般式(6)中、Rは炭素数1~18のアルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アリールメチル基、シクロアルキル(炭素数4~6)エーテルメチル基、又はヒドロキシアルキル(炭素数2~4)基を示す)
  6. 請求項に記載のエマルジョンを含有する水性インク。
  7. グラビア印刷用、フレキソ印刷用、又はインクジェット印刷用である請求項に記載の水性インク。
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