JP7122194B2 - 打音の低減された熱可塑性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Description
そこで、本発明の目的は、打音の発生が抑制された成形品であって、好ましくは高い剛性を備えたものを提供し得る熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
前記ゴム質部分(a1)は、下記ゴム質部分(a1-1)及び下記ゴム質部分(a1-2)を含み、
前記樹脂部分(a2)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含んでなる、熱可塑性樹脂組成物が提供される。
ゴム質部分(a1-1):芳香族ビニル化合物が90質量%以上の重合体ブロックA、1,2-ビニル結合含量が25~70%のブタジエンと芳香族ビニル化合物の重合体ブロックB、及び、1,2-ビニル結合含量が25%未満のブタジエンの重合体ブロックCをそれぞれ1個以上有するブロック共重合体(I)のオレフィン性不飽和結合の80%以上を水素添加してなる水素添加ゴム質重合体(II)。
ゴム質部分(a1-2):エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体に由来するゴム質部分。
本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び/又は共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
また、JIS K 7121-1987に準じて測定した融点(本明細書において、「Tm」と表記することもある)は、DSC(示差走査熱量計)を用い、1分間に20℃の一定昇温速度で吸熱変化を測定し、得られた吸熱パターンのピーク温度を読みとった値である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(本明細書では「成分(X)」ともいう)は、ゴム質部分(a1)として、上記ゴム質部分(a1-1)と上記ゴム質部分(a1-2)の両方を備えているゴム強化樹脂(A)を含んでいればよく、ゴム強化樹脂(A)のみから構成されてもよく、または、ゴム強化樹脂(A)と他の熱可塑性樹脂(B)との混合物から構成されてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)において、ゴム強化樹脂(A)は、上記ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A1)及び(A2)以外に、他のゴム強化樹脂を含んでもよい。他のゴム強化樹脂としては、例えば、ジエン系ゴム強化芳香族ビニル系樹脂、上記ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A1)及び(A2)以外の非ジエン系ゴム強化芳香族ビニル系樹脂が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)に配合できる他の熱可塑性樹脂(B)の例としては、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ポリ乳酸樹脂などが挙げられる。
測定条件:
縦60mm、横100mm、厚さ4mmの試験片、及び、縦50mm、横25mm、厚さ4mmの試験片を用意し、温度23℃、湿度50%RH、荷重40N、速度10mm/秒、振幅20mmで3回、前者の試験片の面と後者の試験片の面とを擦り合わせて測定。
異音リスク値は、ドイツ自動車工業会(VDA)規格準拠の仕様にて、同一の材質で接触部材を作製した時のスティックスリップ異音発生リスクを10段階の指数で示したものであり、上記異音レベルが3以下なら合格とされている。
ゴム強化樹脂(A)は、打音低減効果を得るために、ゴム質部分(a1)が、上記ゴム質部分(a1-1)及び(a1-2)から少なくとも構成されることが必要であり、通常、上記ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A1)及び(A2)の混合物から構成される。
ゴム強化樹脂(A)は、上記熱可塑性樹脂組成物(X)が有するきしみ音等の異音の発生を抑制する機能をさらに優れたものとするため、結晶性を有することが好ましい。具体的には、JIS K 7121-1987に準じて測定した上記熱可塑性樹脂組成物(X)の融点が0~120℃の範囲にあることが好ましく、10~90℃の範囲がより好ましく、20~80℃の範囲がさらにより好ましい。
上記ゴム質部分(a1)は、25℃でゴム質(ゴム弾性を有する)であれば、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。また、上記ゴム質部分(a1)は、上記ゴム質部分(a1-1)及び(a1-2)から少なくとも構成されている必要があるが、これに加えて、それ以外のゴム質重合体に由来する他のゴム質部分を備えていてもよい。他のゴム質部分としては、例えば、ジエン系重合体(以下、「ジエン系ゴム」という)に由来するゴム質部分(a1-3)、エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体以外の非ジエン系重合体(以下、「EPゴム以外の非ジエン系ゴム」という)に由来するゴム質部分(a1-4)が挙げられる。また、これらの重合体は、架橋重合体であってもよいし、非架橋重合体であってもよい。このうち、本発明においては、耐衝撃性、剛性等の機械的強度向上の点から、上記ゴム質部分(a1)の少なくとも一部がジエン系ゴムに由来するゴム質部分(a1-3)から構成されることが好ましい。
ゴム質部分(a1-1)を構成するゴム質重合体としては、特開2012-077274号公報に記載のものが挙げられる。
上記ブロック共重合体(I)成分で使用される芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、パラメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-tert-ブチルスチレン等が挙げられ、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。特に好ましくはスチレンである。
水素添加前のブロック共重合体(I)中の重合体ブロックAの含量は1~40質量%が好ましく、更に好ましくは3~35質量%である。1質量%未満では成形品の表面外観性が劣る傾向があり、一方、40質量%を超えると耐衝撃性が低下する傾向にある。さらに重合体ブロックAの数平均分子量は、耐衝撃性の面から好ましくは5,000から70,000である。また、重合体ブロックAの芳香族ビニル化合物の含量が90質量%未満では耐衝撃性が低下する。
重合体ブロックBのブタジエン/芳香族ビニル化合物の比率は、99~60/1~40質量%が好ましく、更に好ましくは98/2~65/35質量%、特に好ましくは96/4~70/30質量%である。ここで、芳香族ビニル化合物が1重量%未満では、樹脂の光沢が発現し難くなり好ましくなく、一方、40質量%を超えると耐衝撃性が低下する傾向にある。
重合体ブロックCの数平均分子量は、耐衝撃性の面から10,000~300,000が好ましい。
また、ブロック共重合体(I)の重合体分子鎖は、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。ブロック共重合体(I)の数平均分子量は、通常4万~70万であり、4万未満では耐衝撃性が低下する傾向にあり、70万を超えると成形性が劣る傾向にある。
また、有機リチウム開始剤としては、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムなどが用いられる、炭化水素溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロペンタン、シクロへキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、2-メチルブテン-1、2-メチルブテン-2などが用いられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
水素添加反応は、上記ブロック共重合体(I)を炭化水素溶媒中に溶解し、20~150℃、1~100kg/cm2 の加圧水素下で水素化触媒の存在下に行われる。
ゴム質部分(a1-2)を構成するエチレン・α-オレフィン系ゴムは、エチレンに由来する構造単位と、α-オレフィンに由来する構造単位とを含む共重合体ゴムである。α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン等が挙げられる。これらのα-オレフィンは、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。α-オレフィンの炭素原子数は、耐衝撃性の観点から、好ましくは3~20、より好ましくは3~12、更に好ましくは3~8である。エチレン・α-オレフィン系ゴムにおけるエチレン:α-オレフィンの質量比は、通常5~95:95~5、好ましくは50~95:50~5、より好ましくは60~95:40~5である。エチレン:α-オレフィンの質量比が上記範囲にあると、得られる成形品の耐衝撃性がさらに優れて、好ましい。エチレン・α-オレフィン系ゴムは、必要に応じて、非共役ジエンに由来する構造単位を含んでもよい。非共役ジエンとしては、アルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類が挙げられ、好ましくは5-エチリデン-2-ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンである。これらの非共役ジエンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。非共役ジエンに由来する構造単位の、非ジエン系ゴム全体に対する割合は、通常0~10質量%、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~3質量%である。
ゴム質部分(a1-3)を構成するジエン系ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体等のブタジエン系共重合体;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のイソプレン系共重合体等が挙げられる。これらは、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。該ジエン系ゴム質重合体は、架橋重合体であってよいし、未架橋重合体であってもよい。
ゴム強化樹脂(A)のゴム質部分(a1)は、必要に応じ、ゴム質部分(a1-2)を構成するエチレン・α-オレフィン系ゴム以外の非ジエン系ゴム質重合体に由来するゴム質部分(a1-4)を含有してもよい。かかる非ジエン系ゴム質重合体としては、ウレタン系ゴム;アクリル系ゴム;シリコーンゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム;共役ジエン系化合物に由来する構造単位を含む(共)重合体を水素添加してなる水素添加重合体(但し、水素添加率は50%以上)等が挙げられる。この水素添加重合体は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい(ただし、上記ブロック共重合体(I)の水素添加ゴム質重合体(II)は除く)。
本発明において、ゴム強化樹脂(A)中のゴム質部分(a1)の含有量即ちゴム含量は、ゴム強化樹脂(A)全体100質量%に対して、好ましくは3~80質量%、より好ましくは3~75質量%、さらに好ましくは4~70質量%、さらに好ましくは5~70質量%、特に好ましくは7~65質量%である。ゴム含量が前記範囲にあると、熱可塑性樹脂組成物(X)の耐衝撃性、打音やきしみ音等の異音の低減効果、寸法安定性、及び成形性等がさらに優れて好ましい。
ゴム強化樹脂(A)の樹脂部分(a2)は、ビニル系単量体に由来する構造単位からなり、芳香族ビニル化合物を必須成分として含み、芳香族ビニル化合物と該芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物とから構成されてもよい。上記芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、β-メチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独でまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、スチレン及びα-メチルスチレンが好ましい。
ゴム強化樹脂(A)は、例えば、上記ゴム質部分を構成する各種ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル系化合物を含むビニル系単量体(b)をグラフト重合して製造することができる。この製造方法における重合方法は、上記グラフト共重合体が得られる限り特に限定されず、公知の方法を適用することができる。重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、又は、これらを組み合わせた重合方法とすることができる。これらの重合方法では、公知の重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤等を適宜使用することができる。
グラフト率(質量%)=((S-T)/T)×100 …(1)
上記式中、Sはゴム強化樹脂(A)1グラムをアセトン20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはゴム強化樹脂(A)1グラムに含まれるゴム質部分(a1)の質量(g)である。このゴム質部分(a1)の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法により求めることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)は、各成分を所定の配合比で、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサーなどで混合した後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等の混練機を用いて適当な条件下で溶融混練して製造することができる。好ましい混練機は、二軸押出機である。更に、各々の成分を混練するに際しては、それらの成分を一括して混練しても、多段、分割配合して混練してもよい。尚、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練したあと、押出機によりペレット化することもできる。溶融混練温度は、通常180~240℃、好ましくは190~230℃である。
本発明の成形品は、熱可塑性樹脂組成物(X)を射出成形、プレス成形、シート押出成形、真空成形、異形押出成形、発泡成形、材料押出堆積法、粉末焼結積層造形等の公知の成形法により成形することで製造することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物(X)は、上記のような優れた性質を有するので、メータバイザー、コンソールボックス、グローブボックス、カップホルダー等の車両内装品、フロントグリル、ホイールキャップ、バンパー、フェンダー、スポイラー、ガーニッシュ、ドアミラー、ラジエターグリル、ノブ等の車両外装品、直管型LEDランプ、電球型LEDランプ、電球型蛍光灯などの照明器具、携帯電話、タブレット端末、炊飯器、冷蔵庫、電子レンジ、ガスコンロ、掃除機、食器洗浄機、空気清浄機、エアコン、ヒーター、TV、レコーダーなどの家電器具、プリンター、FAX、コピー機、パソコン、プロジェクター等のOA機器、オーディオ器具、オルガン、電子ピアノ等の音響機器、化粧容器のキャップ、電池セル筐体等として使用することができ、特に車両内装品として好ましく使用することができる。
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A1)として、下記の製造例1-1~1-3で得られた原料P1を用いた。
50リットルオートクレーブに脱気・脱水したシクロへキサン25000部、1,3-ブタジエン800部を仕込んだのち、n-ブチルリチウム1.0部を加えて、重合温度50℃で等温重合を行った。転化率がほぼ100%となったのち、テトラヒドロフラン30.0部、1,3-ブタジエン2400部、スチレン200部を添加し、50℃から80℃の昇温重合を行った。重合転化率がほぼ100%となった後、スチレン600部を加え、15分間重合を行った。重合転化率はほぼ100%であった。得られたA-B-Cトリブロック共重合体(I)の分子特性を表1に示した。
別の容器でチタノセンジクロライド15.0部をシクロヘキサン240部に分散させ、室温でトリエチルアルミニウム20部と反応させた。得られた暗青色の均一な溶液を製造例1-1で得たポリマー溶液に加え、50℃で、50kg/cm2 の水素圧力下、2時間水素化反応を行った。その後、メタノール・塩酸を用いて脱触及び重合体の沈殿を行った後、2,6-ジ-tert-ブチルカテコールを加えて減圧乾燥を行いA-B-Cトリブロック共重合体(I)に水素化反応を行い、水素添加ゴム質重合体(II)を得た。分子特性を表1に示した。
リボン型攪拌翼を備えた内容積10リットルのステンレス製オートクレーブに予め均一溶液にした水素添加ゴム質重合体(II)を30部、スチレン51部、アクリロニトリル19部、トルエン120部およびtert-ドデシルメルカプタン0.1部を仕込み、攪拌しながら昇温し50℃にて、ベンゾイルパーオキサイド0.5部、ジクミルパーオキサイド0.1部を添加し、更に昇温し、80℃に達した後は80℃一定に制御しながら攪拌回転数を200rpmにて重合反応を行わせた。反応終了後2,2-メチレンビス-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール0.2部を添加したのち、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去し細かく粉砕した後、40mmベント付き押出機(220℃、700mmHg真空)にて実質的に揮発分を留去するとともにゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A1)をペレット化した。本ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A1)のグラフト率は53%、アセトン可溶分の極限粘度〔η〕は0.45dl/gであった。
ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A2)及び(A3)として、下記の合成例2-1及び2-2の原料Q1及びQ2を用いた。
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備した容積20リットルのステンレス製オートクレーブに、エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体として、エチレン・プロピレン共重合体(エチレン/プロピレン=78/22(%)、ムーニー粘度(ML1+4 ,100℃)20、融点(Tm)は40℃、ガラス転移温度(Tg)は-50℃)22部、スチレン55部、アクリロニトリル23部、t-ドデシルメルカプタン0.5部、トルエン110部を仕込み、内温を75℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.45部を添加し、内温を更に昇温して、100℃に達した後は、この温度を保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応開始後4時間目から、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合反応を終了した。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)-プロピオネート0.2部、ジメチルシリコーンオイル;KF-96-100cSt(商品名:信越シリコーン株式会社製)0.02部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去し、さらに40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化した。得られたエチレン・α-オレフィン系ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A2)のグラフト率は47%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.47dl/gであった。
攪拌機付き重合容器に、水280部およびジエン系ゴム質重合体として、重量平均粒子径0.26μm、ゲル分率90%のポリブタジエンラテックス60部(固形分換算)、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部を仕込み、脱酸素後、窒素気流中で撹拌しながら60℃に加熱した後、アクリロニトリル10部、スチレン30部、t-ドデシルメルカプタン0.2部、クメンハイドロパーオキサイド0.3部からなる単量体混合物を60℃で5時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合温度を65℃にし、1時間撹拌を続けた後、重合を終了させ、グラフト共重合体のラテックスを得た。重合転化率は98%であった。その後、得られたラテックスに、2,2′-メチレン-ビス(4-エチレン-6-t-ブチルフェノール)0.2部を添加し、塩化カルシウムを添加して凝固し、洗浄、濾過および乾燥工程を経てパウダー状の樹脂組成物を得た。得られたゴム強化樹脂(A3)のグラフト率は40%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.38dl/gであった。
ゴム質重合体に由来する部分を含まない熱可塑性樹脂として、下記の原料R1及びR2を用いた。
アクリロニトリル単位及びスチレン単位の割合が、それぞれ、27%及び73%であり、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)が、0.47dl/gであるアクリロニトリル・スチレン共重合体。ガラス転移温度(Tg)は、103℃であった。
撹拌機付き重合容器に、水250部およびパルミチン酸ナトリウム1.0部を投入し、脱酸素後、窒素気流中で撹拌しながら70℃まで加熱した。さらにナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部を仕込み後、α-メチルスチレン70部、アクリロニトリル25部、スチレン5部、t-ドデシルメルカプタン0.5部、クメンハイドロパーオキサイド0.2部から成る単量体混合物を、重合温度70℃で連続的に7時間かけて滴下した。滴下終了後、重合温度を75℃にし、1時間撹拌を続けて重合を終了させ、共重合体のラテックスを得た。重合転化率は99%であった。その後、得られたラテックスを塩化カルシウムを添加して凝固し、洗浄、濾過および乾燥工程を経てパウダー状の共重合体を得た。得られた共重合体のアセトン可溶分の極限粘度[η]は0.40dl/gであった。
4-1.原料S1(PC樹脂)
三菱エンジニアリングプラスチック社製ポリカーボネート樹脂「NOVAREX 7022J(商品名)」を使用した。
1.熱可塑性樹脂組成物の作製
表2に示す原料〔P〕、〔Q〕、〔R〕及び〔S〕を同表に示す配合割合で混合した。その後、二軸押出機(型式名「TEX44、日本製鋼所」)を用いて、250℃で溶融混練してペレット化した。得られた樹脂組成物を用い、下記の測定及び評価に供した。結果を下記表2に示す。なお、実施例1~3及び比較例1~2では、配合助剤として、アデカスタブAO-20(ADEKA社製、1,3,5-tris(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzyl)-1,3,5-triazine-2,4,6(1H,3H,5H)-trione)0.1部及びアデカスタブPEP-24G(ADEKA社製、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジホスファイト)0.2部を配合し、実施例4~6及び比較例3~4では、配合助剤として、アデカスタブ2112(ADEKA社製、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)0.2部を配合した。
JIS K7121-1987に従い、DSC(示差走査熱量計)を用い、1分間に20℃の一定昇温速度で吸熱変化を測定し、得られた吸熱パターンのピーク温度から求めた。
ISO178に従って測定
ISO75に従って、1.8MPa荷重条件で測定
ISO2039に従って測定
ISO527に従って測定
ISO178に従って測定
各熱可塑性樹脂組成物を用い、図1に示すような縦120mm、横60mm、厚さ3mmの矩形本体の上端に上底20mm、下底40mm、高さ8mm、厚さ1.5mmの台形状の突起を備えた形状の一体成形品である試験片を、東芝機械製IS-170FA射出成形機によりシリンダ温度250℃、射出圧力50MPa、金型温度60℃にて射出成形した。そして、この試験片の前記突起に2本の糸をテープで貼り付けて吊り下げた状態で、前記試験片の一方の面の中央を、打撃力を測定できるPCBピエゾトロニクス社製のステンレス製のハンマー(商品名:086C03)を用いて20±5Nの力で叩いた時の響きを、前記面に対して垂直方向に12cm離して設置したPCBピエゾトロニクス社製の音圧マイクロホン(商品名:378B02)で集音して、オロス社製のフーリエ変換アナライザー(商品名:マルチJOB FFTアナライザ OR34J-4)にて音圧の周波数スペクトルに変換した。得られた周波数スペクトル中の音圧(Pa/N)の最大値とその周波数(Hz)を測定値として用いた。なお、測定は室温23℃の部屋で行った。なお、測定値として得られた音圧(Pa/N)は、測定された打撃力1Nあたりの音圧を意味する。
前記打音の音圧測定と同様の操作を行い、オロス社製のフーリエ変換アナライザー(商品名:マルチJOB FFTアナライザ OR34J-4)にて音圧の時間変化を測定した。音の発生から、音圧が最大音圧の1/4の音圧に静まるまでに要する時間を打音の減衰時間として用いた。打音の減衰は、0.01秒よりも短いことが好ましく、0.008秒よりも短いことがより好ましい。
各熱可塑性樹脂組成物を東芝機械製IS-170FA射出成形機によりシリンダ温度250℃、射出圧力50MPa、金型温度60℃にて射出成形し、縦150mm、横100mm、厚さ4mmの射出成形プレートを得た。このプレートから、縦60mm、横100mm、厚さ4mm及び縦50mm、横25mm、厚さ4mmの試験片をディスクソーで切り出し、番手#100のサンドペーパーで端部を面取りした後、細かなバリをカッターナイフで除去し、大小2枚のプレートを試験片として用いた。
2枚の試験片を80℃±5℃に調整したオーブンで300時間エージングし、25℃で24時間冷却後、大きな試験片と小さな試験片をジグラー(ZIEGLER)社製スティックスリップ試験機SSP-02に固定し、温度23℃、湿度50%RH、荷重40N、速度10mm/秒、振幅20mmで3回擦り合わせたときの異音リスク値が最も大きい条件の数値を抽出して測定値とした。異音リスク値が大きいほど軋み音の発生リスクは高くなり、異音リスク値が3以下であれば良好である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物〔X〕を用いた実施例1~6は、剛性が高く、かつ、20~20,000Hzの周波数域の音圧の最大値が3.0Pa/N以下であり、また、該音圧の最大値を与える周波数も20~9,000Hzまたは14,000Hz~19,000Hzの範囲であり、さらには、異音リスク値が低く、剛性だけでなく打音(及びきしみ音等の音響特性にも優れることが判った。
これに対し、打音低減材を含まない比較例1~4では、剛性が高く、かつ、異音リスク値が低かったが、20~20,000Hzの周波数域の音圧の最大値が3.0Pa/Nを超えており、また、該音圧の最大値を与える周波数も9,000Hz超または14,000~19,000Hzの範囲を外れ、打音の減衰も0.008秒以上であり、打音の発生が顕著であった。
Claims (10)
- ゴム質部分(a1)と樹脂部分(a2)とを有するゴム強化樹脂(A)から少なくとも構成される熱可塑性樹脂組成物であって、
前記ゴム強化樹脂(A)は、下記ゴム質部分(a1-1)と芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む樹脂部分(a2)とを有するゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A1)と、下記ゴム質部分(a1-2)と芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む樹脂部分(a2)とを有するゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A2)とを含む、
熱可塑性樹脂組成物。
ゴム質部分(a1-1):芳香族ビニル化合物が90質量%以上の重合体ブロックA、1,2-ビニル結合含量が25~70%のブタジエンと芳香族ビニル化合物の重合体ブロックB、及び、1,2-ビニル結合含量が25%未満のブタジエンの重合体ブロックCをそれぞれ1個以上有するブロック共重合体(I)のオレフィン性不飽和結合の80%以上を水素添加してなる水素添加ゴム質重合体(II)。
ゴム質部分(a1-2):エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体に由来するゴム質部分。 - 前記ゴム質部分(a1-1)に前記樹脂部分(a2)が結合したグラフト共重合体、前記ゴム質部分(a1-2)に前記樹脂部分(a2)が結合したグラフト共重合体、及び前記ゴム質部分(a1)に結合していない樹脂部分(a2)を構成する(共)重合体の含有割合が、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、2~85質量%、2~80質量%、及び10~96質量%である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ゴム質部分(a1-1)及び前記ゴム質部分(a1-2)の合計量の割合が、前記熱可塑性樹脂組成物の全体に対して、3~50質量%である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ゴム質部分(a1)は、さらに、ジエン系ゴム質重合体に由来するゴム質部分(a1-3)を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ゴム強化樹脂(A)は、前記ゴム質部分(a1-1)と前記樹脂部分(a2)とを有するゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A1)と、前記ゴム質部分(a1-2)と前記樹脂部分(a2)とを有するゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A2)と、前記ゴム質部分(a1-3)と前記樹脂部分(a2)とを有するゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A3)とを含む、請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ゴム質部分(a1-1)、前記ゴム質部分(a1-2)及び前記ゴム質部分(a1-3)の合計量の割合が、前記熱可塑性樹脂組成物の全体に対して、3~50質量%である、請求項4または5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ゴム質部分(a1-2)及び前記ゴム質部分(a1-3)の含有割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、15~90質量%及び10~85質量%である、請求項4乃至6の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1~7の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
- 車両内装品である、請求項8に記載の成形品。
- 下記ゴム質部分(a1-1)と芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む樹脂部分(a2)とを有するゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A1)と、下記ゴム質部分(a1-2)と芳香族ビニル化合物に由来する構造単位を含む樹脂部分(a2)とを有するゴム強化芳香族ビニル系樹脂(A2)とを含む熱可塑性樹脂組成物からなる、熱可塑性樹脂組成物用の打音低減材。
ゴム質部分(a1-1):芳香族ビニル化合物が90質量%以上の重合体ブロックA、1,2-ビニル結合含量が25~70%のブタジエンと芳香族ビニル化合物の重合体ブロックB、及び、1,2-ビニル結合含量が25%未満のブタジエンの重合体ブロックCをそれぞれ1個以上有するブロック共重合体(I)のオレフィン性不飽和結合の80%以上を水素添加してなる水素添加ゴム質重合体(II)。
ゴム質部分(a1-2):エチレン・α-オレフィン系ゴム質重合体に由来するゴム質部分。
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