JP7120691B2 - 非アルコール性脂肪肝炎の予防または治療用の薬学組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、非アルコール性脂肪肝炎を治療または予防するための薬学組成物に関する。また、本発明は、肝線維化を治療または予防するための薬学組成物に関する。
全世界的に非アルコール性脂肪肝炎の有病率は、2~4%(米国は3~5%)に達する。このような非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis)は、単なる脂肪症とは異なり、膨化変性(ballooning degeneration)及び細胞死滅、炎症性浸潤などの病理学的な所見を見せ、場合によってコラーゲン蓄積などの線維化所見を示すこともある。単なる脂肪症が、遅い組織的進行を示すことに対し、非アルコール性脂肪肝炎はより速い組織学的進行を示し、肝硬変へ進み得ることがよく知られており、脂肪肝と判明された人の約5~10%が脂肪肝炎と判明される(Metabolism Clinical and Experimental 65 (2016) 1038-1048)。
現在、このような脂肪肝炎を治療するための市販中の治療剤は存在せず、治療剤の不在によって、腹部肥満、高脂血症、糖尿などの他のメタボリック症候群治療剤、例えば、インシュリン抵抗性改善薬剤、抗酸化剤(例えば、ビタミンC,E)、脂質異常症治療剤、肝臓保護剤などが使用されているが、これらは非アルコール性脂肪肝炎の直接的な治療剤であるとはいえない。
一方、下記の化学式1で表される2-((R)-4-(2-フルオロ-4-(メチルスルホニル)フェニル)-2-メチルピペラジン-1-イル)-N-((1R,2s,3S,5S,7S)-5-ヒドロキシアダマンタン-2-イル)ピリミジン-4-カルボキサミド(2-((R)-4-(2-fluoro-4-(methylsulfonyl)phenyl)-2-methylpiperazin-1-yl)-N-((1R,2s,3S,5S,7S)-5-hydroxyadamantan-2-yl)pyrimidine-4-carboxamide)(以下、「ピリミジン-4-カルボキサミド」とする。)は、国際公開公報WO2011-139107に開示の化学式に含まれる化合物である。
Figure 0007120691000001
前記化学式1の化合物は、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型(11β-Hydroxysteroid Dehydrogenase Type 1,11β-HSD1)の阻害剤であって、2型糖尿病の治療剤として開発された化合物である。しかし、他の11β-HSD1阻害剤と同様に、単独投与及び糖尿病治療剤であるメトホルミン(Metformin)との併用投与時、十分な效能を示さず、開発が中断された。
本発明は、非アルコール性脂肪肝炎の治療、改善または予防のための薬学組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、肝線維化を治療、改善または予防するための薬学組成物を提供することを他の目的とする。
上記の課題を達成するため、本発明は、下記の化学式1のピリミジン-4-カルボキサミド(pyrimidine-4-carboxamide)化合物を有効成分として含む、非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis)の改善、予防または治療用の薬学組成物を提供する。
Figure 0007120691000002
また、本発明は、前記化学式1の化合物を有効成分として含む肝線維化症状を伴う非アルコール性脂肪肝炎の改善、予防または治療用の薬学組成物を提供する。
また、本発明は、前記化学式1の化合物を有効成分として含む肝線維化の改善、予防または治療用の薬学組成物を提供する。
さらに、本発明は、前記化学式1の化合物の治療学的または予防学的に有効な量を非アルコール性脂肪肝炎(望ましくは、肝線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎)及び/または肝線維化の治療、改善または予防が必要な個体に投与することを特徴とする、非アルコール性脂肪肝炎の治療、改善または予防法を提供する。
即ち、本発明は、前記化学式1の化合物の非アルコール性脂肪肝炎(望ましくは、肝線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎)及び/または肝線維化の治療、改善または予防の医学的用途を提供する。
本発明者は、マウスに経口投与して2時間後、組織別の化学式1の化合物の濃度を測定したとき、血漿濃度よりも肝組織の濃度がさらに高いということを確認し、後述する非アルコール性脂肪肝炎の動物モデル(予防及び治療)から経口投与による効能を確認することで、本発明の完成に至った。
本発明の前記化学式1の化合物は、肝組織の脂質含量を減少させ、肝組織の炎症を治療する効能を有し、また肝組織の線維化を抑制する効果を奏することから、非アルコール性脂肪肝炎の改善、予防及び治療に有用に使用できる。
本明細書で使用された「予防(prevention)」とは、患者にとって脂肪肝炎または肝線維化の再発防止、拡張または発病の予防を含む意味である。
本明細書で使用された「治療」とは、脂肪肝炎または肝線維化の根絶、除去または統制を含み、脂肪肝炎または肝線維化の拡張を最小化するか、または遅延させることを意味する。
前記化学式1の化合物は、国際公開公報WO2011-139107に開示された方法によって製造され得る。
本明細書で使用された用語である「化学式1の化合物」とは、化学式1の化合物のみならず、これらのクラスレート(clathrates)、水和物、溶媒和物または多形体(結晶多形)を含む意味である。
本明細書で使用される場合、用語「結晶多形(polymorph)」は、本発明の化合物の固体結晶形態またはそれの複合体を意味する。同じ化合物の他の結晶多形は、他の物理的、化学的及び/またはスペクトル特性を示す。物理的特性面における相違点としては、安定性(例えば、熱または光安定性)、圧縮性と密度(製剤化及び生産物の製造に重要)及び溶解率(生物学的な利用率に影響を与え得る)を含むが、これらに限定されない。安定性における差異は、化学反応性変化(例えば、さらに他の多形から構成された場合よりも一つの多形から構成された場合にさらに速く変色するような差別的酸化)または機械的な特徴(例えば、動力学的に選好された多形体であって、保存された錠剤の破片が熱力学的にさらに安定した多形へ変換)または両方とも(一つの多形の錠剤は、高い湿度で分解にさらに敏感)を惹起する。結晶多形の他の物理的性質は、それらの加工に影響を与え得る。例えば、一つの結晶多形は、さらに他の結晶多形に比べ、例えば、その形態または粒子の大きさ分布に起因して溶媒化合物を形成する可能性が高いか、ろ過または洗浄がより難しくなり得る。
本明細書で使用された用語「溶媒化合物」とは、非共有分子間の力によって結合した化学量論的または非化学量論的な量の溶媒を含む本発明の化合物を意味する。望ましい溶媒は、揮発性であり、無毒性であり、ヒトに極少量投与され得る。
本明細書で使用された用語「水和物(hydrate)」とは、非共有分子間の力によって結合した化学量論的または非化学量論的な量の水を含む本発明の化合物を意味する。
本明細書で使用された用語「クラスレート(clathrate)」とは、ゲスト分子(例えば、溶媒または水)を閉じ込める空間(例えば、チャンネル(channel))を含む結晶格子形態の本発明の化合物を意味する。
もし、ある化合物(プロドラッグ(prodrug))が体内から分離されて本発明の化合物を生成するようになるとしたら、そのような化合物も本発明の範疇に含まれる。本明細書で使用され、相違に指摘されないなら、用語「プロドラッグ」とは、活性化合物、特に、本発明の化合物を供給するために加水分解され、酸化し、生物学的条件(生体外または生体内)下で異なる反応ができる本発明の化合物を意味する。プロドラッグの例には、生加水分解できる(biohydrolyzable)アミド、生加水分解できるエステル、生加水分解できるカルバメート(carbamates)、生加水分解できる炭酸塩、生加水分解できるウレイド(ureides)及び生加水分解できるリン酸塩類似体のような生加水分解できる部分を含み、生加水分解されて本発明の化合物を生成する化合物を含むが、これらの具体的な態様に限定されない。望ましくは、カルボン酸官能基を有している化合物のプロドラッグは、カルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボン酸エステルは、分子に存在するカルボン酸の一部をエステル化することで、通常形成される。プロドラッグは、Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery 6th ed.(Donald J.Abrahamed., 2001,Wiley)及びDesign and Application of Prodrugs(H.Bundgaard ed.,1985,Harwood Academic Publishers Gmfh)に記載されたようによく知られた方法を用いて容易に製造できる。
本発明の化合物は、通常治療的に有効な量が投与される。
本発明の化合物は、任意の望ましい経路によって、このような経路に適切な薬学組成物の形態及び意図する治療のための効果的な投与量で投与され得る。効果的な投与量は、単回投与または分割投与で、通常約0.01~50mg/体重(kr)/日であり、望ましくは約0.05~20mg/体重(kg)/日である。年齢、種及び治療しようとする疾病または状態(condition)によって、前記範囲の下限未満の投与量水準が望ましい場合がある。その他の場合には、依然としてより多い投与量で有害な副作用なく使用され得る。より多い投与量は、一日の投与のために数回の少ない投与量に分割され得る。適切な投与量を決定するための方法は、本発明が属した分野によく知られており、例えば、文献Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,20th ed.,2000が参照され得る。
他の様態において、本発明の化学式1の化合物及び薬学的に許容可能な担体または添加剤を含む薬学組成物を提供する。
用語「薬学的に許容可能な」とは、薬学的製剤としての使用に適合することを意味し、一般的にこのような使用に安全であると認められ、このような使用のために国家の管理機関によって公式的に承認されるか、または韓国薬典または米国薬局方の目録に載っていることを意味する。
前述した疾病または状態(conditon)の治療のために、本明細書で説明された前記化合物は、下記のように投与され得る。
[口腔投与(Oral administration)]
本発明の化合物は口腔に投与可能であり、口腔は嚥下(swallowing)を含む概念である。口腔投与によって、本発明の化合物が胃腸管(gastrointestinal tract)に入るか、例えば、口腔(buccal)または舌下(sublingual)投与のように、口から血流へ直接的に吸収され得る。
口腔投与のための望ましい組成物は、固形、液状、ゲル(gel)またはパウダー状であり得、錠剤(tablet)、トローチ剤(lozenge)、カプセル(capsule)、顆粒剤、散剤などの剤形を有し得る。
口腔投与のための組成物は、選択的に腸溶コーティング(enteric coating)され得、腸溶コーティングによって遅延された(delayed)または持続した(sustained)放出を示し得る。即ち、本発明による口腔投与のための組成物は、即時または変形された(modified)放出パターンを有する剤形であり得る。
液状剤形は、溶液、シロップ及び懸濁液を含み得、このような液状組成物は、軟質または硬質カプセル内に含有された形態であり得る。このような剤形は、薬学的に許容可能な担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、セルロースまたはオイルを含み得る。また、前記剤形は、一つ以上の乳化剤及び/または懸濁剤を含み得る。
錠剤(tablet)の剤形において、活性成分である薬物の量は、錠剤の総重量に対して約0.05~95重量%、より一般的には剤形の約2~50重量%で存在し得る。また、錠剤は、約0.5~35重量%、より一般的には剤形の約2~25重量%を含む崩壊剤を含み得る。崩壊剤の例としては、乳糖、でん粉、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム(croscarmellose sodium)、マルトデキストリンまたはこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
錠剤を製造するために含まれる滑沢剤としては、望ましく約0.1~5重量%の量で存在し得、タルク(talc)、二酸化ケイ素、ステアリン酸、カルシウム、亜鉛またはマグネシウムステアレート、ステアリルフマル酸ナトリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
錠剤を製造するための結合剤(binder)としては、ゼラチン、ポリエチレングリコール、糖(sugar)、ガム(gum)、でん粉(starch)、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられ、錠剤の製造に望ましい希釈剤としては、マンニトル、キシリトール、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、でん粉、微結晶セルロースなどが挙げられるが、これらに限定されない。
錠剤に選択的に含まれ得る可溶化剤は、錠剤の総重量に対して約0.1~3重量%の量が使用され得、例えば、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、プロピレンカーボネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルイソソルビド、ポリオキシエチレングリコール化した天然または水素化ヒマシ油、HCORTM(Nikkol)、オレイルエステル、ゲルシア(GelucireTM)、カプリリック/カプリル酸モノ/ジグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルトールHSTMなどが本発明による薬学組成物に使用され得るが、これらに限定されない。
[非経口投与(Parenteral Administration)]
本発明の化合物は、血流、筋肉または内臓内へ直接投与され得る。非経口投与のための望ましい方法は、静脈内(intravenous)、筋肉内(intra-muscular)、皮下動脈内(subcutaneous intra-arterial)、腹腔内(intraperitoneal)、髄腔内(intrathecal)、頭蓋内(intracranial)注射などを含む。非経口投与のための望ましい装置は、(針及び無針注射器を含む)注射器(injector)及び注入方法(infusion method)を含む。
非経口投与のための組成物は、即時または変形された放出パターンを有する剤形であり得、変形された放出パターンは、遅延された(delayed)または持続した(sustained)放出パターンであり得る。
多くの非経口剤形は液状組成物であり、このような液状組成物は、本発明による薬効成分、塩、緩衝剤、等張化剤などを含む水溶液である。
非経口剤形は、乾燥された形態(例えば、凍結乾燥)または滅菌非水溶液として製造され得る。これらの剤形は、滅菌水(sterile water)のような適したビヒクル(vehicle)と共に使用され得る。また、溶解度増強剤(solubility-enhancing agents)も、非経口溶液の製造に使用可能である。
[局所投与(Topical Administration)]
本発明の化合物は、皮膚または経皮で局所的に投与され得る。このような局所投与のための剤形は、ローション、溶液、クリーム、ゲル、ハイドロゲル、軟膏、フォーム(foam)、インプラント(implant)、パッチなどを含む。局所投与剤形のための薬学的に許容可能な担体は、水、アルコール、ミネラルオイル、グリセリン、ポリエチレングリコールなどを含み得る。また、局所投与は、電気穿孔法(electroporation)、イオン導入法(iontophoresis)、音波泳動(phonophoresis)などによって行われ得る。
局所投与のための組成物は、即時または変形された放出パターンを有する剤形であり得、変形された放出パターンは、遅延された(delayed)または持続した(sustained)放出パターンであり得る。
[薬学組成物の製造のための参考文献]
疾病または状態の適切な治療または予防のための薬学組成物の製造方法は、本発明が属した分野における通常の知識を有する者によく知られている。例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients(7th ed.),Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),Encyclopedia of Pharmaceutical Technology (3rd ed.),Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems (1978)などにおける記載に従って、薬学的に許容可能な担体、運搬体、添加剤などを本発明による化合物と適切に混合して本発明の目的のための薬学組成物を製造し得る。
本発明は、化学式1の化合物を有効成分として含む、非アルコール性脂肪肝炎または肝線維化の改善、治療または予防に有用な薬学組成物を提供する。即ち、本発明は、非アルコール性脂肪肝炎または肝線維化の改善、治療または予防に有用な、化学式1の化合物の医薬用途を提供する。
下記の図面において、データは平均±S.D.で記載されている(G1:Normal control,G2:Vehicle control,G3:Positive control 10mg/体重(kg)/日,G4:テスト化合物10mg/体重(kg)/日,G5:テスト化合物30mg/体重(kg)/日)。
非アルコール性脂肪肝炎の疾患モデルに6週間投与した後の血液の生化学分析結果を示す。***/**:G1に対して各々、p<0.001/p<0.01水準で有意義な差がある###/##/#:G2に対して各々、p<0.001/p<0.01/p<0.05水準で有意義な差がある$$:G3に対して、p<0.01水準で有意義な差がある 乳酸脱水素酵素(Lactase Dehydrogenase,LDH)の測定結果である。*:G1に対して、p<0.05水準で有意義な差がある 肝の絶対重量及び相対重量を各々示す。***/*:G1に対して各々、p<0.001/p<0.05水準で有意義な差がある##/#:G2に対して各々、p<0.01/p<0.05水準で有意義な差がある$:G3に対して、p<0.05水準で有意義な差がある ELISAを用いて肝組織から総コレステロール及び中性脂肪を測定した結果である。試験物質投与群で容量依存的にTCHO及びTGが減少することを確認することができる。***:G1に対して、p<0.05水準で有意義な差がある###/##/#:G2に対して各々、p<0.001/p<0.01/p<0.05水準で有意義な差がある 組織病理学的な試験結果である。***/**/*:G1に対して各々、p<0.001/p<0.01/p<0.05水準で有意義な差がある###/##/#:G2に対して各々、p<0.001/p<0.01/p<0.05水準で有意義な差がある 本発明の化合物の予防効果を評価するための試験モデルにおいて、肝細胞内の中性脂肪を分析した結果である。*:G1に対して、p<0.05水準で有意義な差がある**:G2に対して、p<0.05水準で有意義な差がある
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
(実施例1.非アルコール性脂肪肝炎治療モデルにおける疾患誘発及び投与)
脂肪肝炎の動物モデルであるMCD(methionine-choline deficient)モデルを用いた。C57BL/6マウスを用いて、MCD飼料を5日間供給し、その後の2日間は正常飼料を供給する方式で10週間MCD飼料と正常飼料とを交互に摂取させた。動物は、順化期間(青色)、投与及び観察期間(赤色)の間に、尾部標識法を用いて識別した。飼育箱には、色で区別される個体識別カードを付着し、飼育室の入口には、動物室使用記録紙を付着した。
順化期間中に血液の生化学的検査及び体重測定後、順位化したALT及び体重水準によって各群の平均が最大限に均一に分布するように無作為に分配した[正常飼料給与群:10匹(G1)、MCD飼料給与群:40匹(G2~G5)]。
MCD飼料で10週間にわたって誘発した非アルコール性脂肪肝炎のC57BL/6マウスモデルに、試験物質を1日1回、6週間反復投与したときに現れる改善効果を評価した。陽性対照群としては、非アルコール性脂肪肝炎を適応症にして、現在、第3相試験を進行中にあるオベチコール酸(Obeticholic acid,OCA)を使用した。
対照物質(OCA 10mg/体重(kg)/日)の場合、適量を秤量した後、滅菌蒸溜水に希釈して投与し、試験物質の場合、適量を秤量した後、1重量%のTween 80が添加された0.5重量%のメチルセルロース水溶液に希釈して調製した。経口投与時、マウスの体重を測定し、動物を頚背部の皮膚固定法で固定し、経口投与用ゾンデを用いて各々の試験物質を投与した。
(実施例2.非アルコール性脂肪肝炎治療モデルにおける観察及び検査項目)
(1)体重測定
投与開始日、その後には、週一回及び剖検日に測定した。
(2)飼料摂取量
試験物質の投与を開始する前、その後には週一回測定した。測定方法は、飼料を定量給与した翌日、残量を飼育箱単位で測定してその差を計算し、一匹当たりの平均摂取量を算出した。
(3)血液の生化学的検査
試験物質を投与する前、試験物質の投与後6週目(剖検日)に採血して分離した血清を、生化学自動分析装置(7180 Hitachi,Japan)を用いて下記の項目を検査した。
投与前の検査項目:アラニントランスアミナーゼ(alanine transaminase,ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(aspartate transaminase,AST)
試験物質投与後6週目:ALT、AST、トリグリセリド(triglyceride,TG)、総コレステロール(Total cholesterol,TCHO)、高比重リポ蛋白(High-density lipoprotein,HDL)、低比重リポ蛋白(Low-density lipoprotein,LDL)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(Gamma-glutamyltransferase,GGT)、乳酸脱水素酵素(Lactate dehydrogenase,LDH)
(4)剖検
剖検日にピモニダゾール(Pimonidazole)を30mg/mlの濃度で生理食塩水(saline)に希釈した後、60mg/kgの投与量で静脈内に投与した。投与90分後、動物を安楽死させた。各剖検時点で動物をエーテルで吸入麻酔し、麻酔が確認された後に開腹して後大静脈から注射器を用いて採血を行った。その後、腹大動脈及び後代静脈を切断して放血し、致死させた。血液は、クロットアクティベーター(clot activator)が入っている真空採血管(vacutainer tube)に注入し、約15分間室温に放置して凝固させた後、3,000rpmで10分間遠心分離して血清を分離した。血清は、分析前まで-70℃以下に設定されている冷凍庫(Deep freezer)に保管し、血液の生化学的検査に使用した。
剖検時、肝は摘出して重量を測定し、肝の右葉は10%中性緩衝ホルマリン液に固定し、左葉は半分に分けて液体窒素を用いて急速冷凍した。急速冷凍した検体は、ELISA分析前まで-70℃以下に設定されている超低温冷凍庫に保管した。
(5)ELISA分析
剖検時、摘出した肝を用いて肝組織内のTG及びTCHOの含量を分析した。分析は、商用化したELISAキットを用いて行った。
(6)組織病理学的検査
固定された組織は、切り出し、脱水、パラフィン包埋、薄切などの通常の組織処理過程を経て組織病理学的検査のための検体を製作した後、Hematoxylin&Eosin(H&E)、オイルレッドO染色及びマッソントリクローム染色(Masson trichrome stain)を行い、光学顕微鏡(Olympus BX53,Japan)を用いて組織病理学的変化を観察した。
(7)統計学的分析
本実験結果に対して、資料の正規性を仮定し、パラメトリック多重比較法(parametric multiple comparison procedures)またはノンパラメトリック多重比較法(non-parametric multiple comparison procedures)を用いて分析した。
パラメトリック一元配置分散分析(One-way ANOVA)の結果が有意義な場合、ダネットの検定(Dunnett’s multiple comparison test)を用いて事後検定を行い、ノンパラメトリッククラスカル・ウォリス検定(Kruskal-Wallis’H-test)の分析結果が有意義な場合、ダンの検定(Dunn’s multiple comparison test)を用いて事後検定を行った。
統計学的分析は、Prism 5.03(GraphPad Software Inc.,San Diego,CA,USA)を用いて行い、p値が0.05未満である場合、統計学的に有意義であると判定した。
(実施例3.非アルコール性脂肪肝炎治療モデルにおける試験結果)
(1)体重測定
体重測定結果、全体の実験期間中における全てのMCD飼料給与群G2~G5の体重水準は、正常対照群G1に比べて有意義に低く示された(p<0.001)。これは、MCD飼料給与時、通常観察される現象である。
(2)飼料摂取量
飼料摂取量の測定結果、全体の実験期間中における正常対照群G1、賦形剤対照群G2及び陽性対照群G3に対し、全ての試験群から有意義な差は観察されなかった。
(3)血液の生化学的検査
血液の生化学的検査結果、試験物質の投与開始日に、全てのMCD飼料給与群G2~G5のALT及びAST水準は、正常対照群G1に比べて有意義に高く(p<0.001)、TG、TCHO及びHDL水準は、正常対照群G1に比べて統計学的に有意義に低かった(p<0.001)。試験物質投与後6週目に、全てのMCD飼料給与群G2~G5のALT及びAST水準は、正常対照群G1に比べて有意義に高く(p<0.001またはp<0.01)、G5のALT及びAST水準は、賦形剤対照群G2に比べて有意義に低かった(p<0.001またはp<0.05)。試験物質投与後6週目に、G3及びG4のALT水準は、賦形剤対照群G2に比べて有意義に低く(p<0.05)、全てのMCD飼料給与群G2~G5のTG、TCHO及びHDL水準は、正常対照群G1に比べて有意義に低かった(p<0.001)。試験物質投与後6週目に、全てのMCD飼料給与群G2~G5のLDL水準は、正常対照群G1に比べて有意義に低く(p<0.001またはp<0.01)、G4及びG5のLDL水準は、賦形剤対照群G2及び陽性対照群G3に比べて有意義に低かった(p<0.01)。試験物質投与後6週目に、G3のLDH水準は、正常対照群G1に比べて有意義に高かった(p<0.05)。
その結果を総合して図1及び図2に示した。
図1は、非アルコール性脂肪肝炎疾患モデルにおいて、6週間投与後に血液の生化学的分析結果を示す。肝機能の指標であるALT、ASTは、試験群で容量依存的に統計的に有意義な減少を示し、LDLコレステロールの場合、G1、G2、G3に対して統計的に有意義な減少を示した。
図2は、LDH(Lactase Dehydrogenase)の測定結果である。LDHは、虚血性肝炎(Ischemic hepatitis)においてたびたび増加することが知られており、肝細胞の損傷(Liver injury)に係わる。化学式1の試験物質は、陽性対照群に対してLDHが減少する傾向を示し、特に、高容量の投与群で正常群に類似な濃度を示すことを確認することができる。
(4)肝の重量測定
結果値である絶対重量及び相対重量を図3に示した。肝の重量測定結果、全てのMCD飼料給与群の肝の重量水準は、正常対照群G1に比べて有意義に低く(p<0.001)、G5の肝の重量水準は、賦形剤対照群G2に比べて有意義に低かった(p<0.05)。G2の肝の相対重量水準は、正常対照群G1に比べて有意義に高く(p<0.05)、G5の肝の相対重量水準は、賦形剤対照群G2及び陽性対照群G3に比べて有意義に低かった(p<0.01またはp<0.05)。
(5)肝組織における脂肪分析
分析結果を図4に示した。ELISA分析結果、全てのMCD飼料給与群G2~G5のTG及びTCHO水準は、正常対照群G1に比べて有意義に高く(p<0.001)、G4及びG5のTG及びTCHO水準は、賦形剤対照群G2に比べて有意義に低かった(p<0.001,p<0.01またはp<0.05)。
(6)組織病理学的検査
組織病理学的検査結果を図5に示した。全てのMCD飼料給与群G2~G5の微小空胞性脂肪変性(Microvesicular steatosis)及び炎症(Inflammation)水準は、正常対照群に比べて有意義に高く(p<0.01またはp<0.05)、G5の微小空胞性脂肪変性の水準は、賦形剤対照群に比べて有意義に低く観察された(p<0.05)。
全ての非アルコール性脂肪肝炎誘発群G2~G5のオイルレッドO及びマッソントリクローム染色(Masson trichrome stain)の面積水準は、正常対照群に比べて有意義に高く(p<0.001)、G4及びG5のオイルレッドO染色の面積水準は、賦形剤対照群に比べて有意義に低く示された(p<0.01)。
G2、G3及びG4のヒドロキシプロリン発現の面積水準は、正常対照群G1に比べて有意義に高く(p<0.001またはp<0.05)、G3、G4及びG5のヒドロキシプロリン発現の面積水準は、賦形剤対照群G2に比べて有意義に低かった(p<0.001またはp<0.01)。
総合すると、組織病理学的検査結果、試験物質の高容量投与群の微小空胞性脂肪変性の水準は、賦形剤対照群に比べて有意義に低く、オイルレッドO染色を用いた脂肪面積の測定結果及び肝線維化の指標であるヒドロキシプロリンの発現面積も、賦形剤対照群に対して有意義に低い水準で観察された。一方、試験物質投与群は、賦形剤対照群に対して低い炎症水準を示した。
(7)総合意見
本試験条件下でMCD飼料によって誘発した非アルコール性脂肪肝炎のC57BL/6マウスモデルに、試験物質を6週間繰り返して投与したとき、試験物質投与群から、賦形剤対照群に対する肝機能関連数値であるALT、AST及びLDL水準の容量相関性のある統計学的に有意義な変化様相が観察され、試験物質投与群の肝の相対重量水準も容量相関性を示し、賦形剤対照群に比べて有意義に低く観察された。また、組織病理学的検査結果、微小空胞性脂肪変性水準、オイルレッドOの面積水準及びヒドロキシプロリン水準における有意義な減少が観察され、肝組織内のTG及びTCHO分析結果から、試験物質投与群の肝組織内のTCHO及びTG水準は、賦形剤対照群に対して有意義に低く観察された。特に、試験物質の高容量投与群の場合、血液の生化学検査、肝の相対重量、肝組織内のTG、TCHO含量分析結果及び微小空胞性脂肪変性水準などの多数の項目で陽性対照群に比べて低い水準を示した。
したがって、本試験条件下で試験物質の反復的な投与は、非アルコール性脂肪肝炎を改善することができる効能を有し、試験物質30mg/体重(kg)/日の効能は、陽性対照物質に対して卓越な効能を有することが確認された。
特に、陽性対照群であるOCAが臨床で10%以上の被験者に腹痛(stomach pain)、疲労感を示し、約10%の被験者から不規則な心臓拍動、皮膚乾燥、便秘、関節痛、末梢性浮腫、咽喉痛、甲状腺ホルモンの不規則(thyroid hormone irregularity)、発疹などを示すなどの副作用が少なくない薬物であることを勘案するとき、本発明の化学式1の化合物の有用性は非常に大きいと考えられる。
(実施例4.非アルコール性脂肪肝炎予防モデルにおける疾患誘発及び投与)
試験物質に対する非アルコール性脂肪肝炎の予防効能を評価した。7週令のマウスC57BL/6を用いて、正常群G1には一般飼料を供給し、賦形剤対照群G2と陽性対照群G3及び試験群G4、G5には、MCD飼料を12週間にわたって供給した。MCD飼料と共に試験物質を対照群に1日1回経口投与し、総5個の群に分けて各群当たり15匹ずつ総75匹を実験に使用した。
予防効能を評価するために、MCD飼料による誘発と同時に試験物質を12週間投与し、脂肪肝炎の予防に対する試験物質の效能を評価した。
対照物質(オベチコール酸、10mg/体重(kg)/日)及び試験物質を各々適量秤量した後、1重量%のTween 80が添加された0.5重量%のメチルセルロース水溶液に希釈して調剤した。経口投与時、マウスの体重を測定し、動物を頚背部の皮膚固定法で固定し、経口投与用ゾンデを用いて各々の試験物質を投与した。
(実施例5.非アルコール性脂肪肝炎予防モデルにおける試験結果)
(1)体重測定
体重測定結果、全体の実験期間中における全てのMCD飼料給与群G2~G5の体重水準は、正常対照群G1に比べて有意義に低く示された(p<0.001)。これは、MCD飼料給与時、通常観察される現象である。
(2)飼料摂取量
飼料摂取量の測定結果は、全体の実験期間中における正常対照群G1、賦形剤対照群G2及び陽性対照群G3に対する全ての試験群から有意義な差は観察されなかった。
(3)肝組織の中性脂肪分析
5個群に対して、マウスの肝組織を摘出し、脂質抽出キット(Lipid Extraction Kit,Cell biolabs,USA)を用いて検体を抽出した後、生化学分析機(7020,Hitachi,Japan)を用いて肝組織内の中性脂肪を分析した。
実験結果は、平均値と標準偏差を用いて示し、各群同士の比較は、ソフトウェアであるスタットビュー(StatView,Version 4.51,Abacus Concepts,Berkeley,CA)を用いて分散分析(ANOVA)を行い、有意性が認められた場合、事後検定はフィッシャーのLSD法(Fisher’s LSD)によって行い、群同士を比較して5%の有意水準で有意性を検証した。
12週間投与後の分析結果を図6に示した。12週間投与後の分析結果、賦形剤対照群G2に対して、陽性対照群G3、試験群G4、G5から統計的に有意義な中性脂質の減少を確認した。このような結果は、非アルコール性脂肪肝炎の疾患予防モデルにおいて化学式1の化合物が容量依存的に肝細胞内の中性脂肪の蓄積を抑制することを意味する。
(4)総合意見
前記結果から、本発明による化合物は、非アルコール性脂肪肝炎の予防効果を有することを確認することができた。

Claims (3)

  1. 化学式1のピリミジン-4-カルボキサミド化合物を有効成分として含む、非アルコール性脂肪肝炎の予防または治療用の薬学組成物。
    Figure 0007120691000003
  2. 前記組成物が、肝線維化症状を改善することを特徴とする、請求項1に記載の薬学組成物。
  3. 化学式1のピリミジン-4-カルボキサミド化合物を有効成分として含む、肝線維化改善用の薬学組成物。
    Figure 0007120691000004
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