JP7120136B2 - 燃料電池用のセパレータ - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池用のセパレータに関する。
燃料電池は、複数の単セルが積層されて構成される。各単セルでのセパレータには、反応ガスや冷媒をシールするビードが設けられている。例えば特許文献1では、蛇行したビードが記載されている。
特表2017-537433号公報
複数の単セルが締結された状態では、セパレータのビードには積層方向で圧縮荷重が作用する。このような圧縮荷重に対する反力は、蛇行したビードの方が直線状のビードよりも大きいため、蛇行したビードは高いシール性を有している。しかしながら、大きな圧縮荷重がビードに作用すると、圧縮荷重がビードの反力を上回り、シール性が低下する恐れがある。
本発明は、シール性が向上した燃料電池用のセパレータを提供することを目的とする。
上記目的は、平坦な基部と、前記基部から一方側に突出した複数の流路リブと、前記基部から前記一方側に突出して、前記基部の外周縁側に沿って延び前記複数の流路リブを包囲し、少なくとも第1方向に蛇行しながら延びたビードと、前記基部から前記一方側に前記ビードよりも低い突出高さで突出して前記ビードに接続した第1リブと、を備え、前記ビードの蛇行しながら前記第1方向に延びた部分は、前記基部よりも前記一方側に位置した頂部、前記基部から傾斜して前記頂部に連続し互いに対向した第1及び第2側部、を含み、前記第1側部は、前記第1リブの第1端部が接続した第1領域と、前記第1領域から前記第1方向に連続し前記第1リブの第2端部が接続した第2領域と、を有し、前記一方側からであって前記基部に垂直な方向から見た平面視で、前記第1領域内での前記第1側部の外側面上の任意の点での法線方向である第1法線方向は、前記第1方向の成分を含み、前記平面視で、前記第2領域内での前記第1側部の外側面上の任意の点での法線方向である第2法線方向は、前記第1方向とは反対方向の第2方向の成分を含み、前記平面視で、前記第1リブが前記第1端部から延びた方向は、前記第1方向と前記第1方向に直交し前記第1側部の外側の方向である第3方向との間の方向であり、前記平面視で、前記第1リブが前記第2端部から延びた方向は、前記第2方向と前記第3方向との間の方向である、燃料電池用のセパレータによって達成できる。
前記第1リブは、円弧状に湾曲していてもよい。
前記第1リブは、前記第1及び第2端部からそれぞれ直線状に延びた第1及び第2直状部を含んでもよい。
前記第1リブの幅は、前記ビードの幅よりも狭くてもよい。
前記第1側部は、前記基部の外縁に対向していてもよい。
前記第1リブが前記第1端部から延びた方向は、前記第1端部と前記第1領域との接続地点での前記第1法線方向を中心とした60度の角度範囲内に含まれてもよい。
前記第1リブが前記第2端部から延びた方向は、前記第2端部と前記第2領域との接続地点での前記第2法線方向を中心とした60度の角度範囲内に含まれていてもよい。
前記基部から前記一方側に前記ビードよりも低い突出高さで突出して前記ビードに接続されている第2リブを備え、前記第2側部は、前記第2リブの第3端部が接続した第3領域と、前記第3領域から前記第1方向に連続し前記第2リブの第4端部が接続した第4領域と、を有し、前記平面視で、前記第3領域内での前記第2側部の外側面上の任意の点での法線方向である第3法線方向は、前記第1方向の成分を含み、前記平面視で、前記第4領域内での前記第2側部の外側面上の任意の点での法線方向である第4法線方向は、前記第2方向の成分を含み、前記平面視で、前記第2リブが前記第3端部から延びた方向は、前記第1方向と前記第3方向の反対側の第4方向との間の方向であり、前記平面視で、前記第2リブが前記第4端部から延びた方向は、前記第2方向と前記第4方向との間の方向であってもよい。
本発明によれば、シール性が向上した燃料電池用のセパレータを提供できる。
図1は、燃料電池の斜視図である。 図2は、単セルのアノードセパレータの平面図である。 図3は、図2のA-A間に相当する箇所でのセル積層体の一部を示す断面図である。 図4は、外周ビード周辺を示したセパレータの部分拡大斜視図である。 図5は、+Z方向側から見た外周ビード周辺を示したセパレータの部分拡大平面図である。 図6Aは、図5のA-A断面図であり、図6Bは、図5のB-B断面図である。 図7は、比較例のセパレータの説明図である。 図8は、図5の部分拡大図である。 図9は、第1変形例であるセパレータの部分拡大平面図である。 図10は、第2変形例であるセパレータの部分拡大平面図である。
[燃料電池の概略構成]
図1は、燃料電池100の斜視図である。図1には、互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向を示している。燃料電池100は、例えば電気自動車の電力源として利用できる。図1のように、燃料電池100は、セル積層体11、ターミナルプレート12a及び12b、絶縁プレート13a及び13b、及びエンドプレート14a及び14bを含む。セル積層体11は、複数の単セル10がZ方向に積層されている。単セル10は、反応ガスとして燃料ガス(例えば水素)と酸化剤ガス(例えば空気)との供給を受けて発電する固体高分子形燃料電池である。
ターミナルプレート12a及び12bは、セル積層体11の積層方向の両端部に配置されている。絶縁プレート13a及び13bは、セル積層体11の積層方向でターミナルプレート12a及び12bよりも外側に配置されている。エンドプレート14a及び14bは、セル積層体11の積層方向で絶縁プレート13a及び13bよりも外側に配置されている。ターミナルプレート12a及び12bは、緻密性カーボン又は銅などの導電性部材で形成され、単セル10の発電電力を取り出すために用いられる。絶縁プレート13a及び13bは、ゴム又は樹脂などの絶縁性部材で形成され、ターミナルプレート12a及び12bとエンドプレート14a及び14bとの間を絶縁する。エンドプレート14a及び14bは、セル積層体11とターミナルプレート12a及び12bと絶縁プレート13a及び13bとを締結する。
単セル10とターミナルプレート12aと絶縁プレート13aとエンドプレート14aとは、それぞれ複数のマニホールド孔を有していて、それぞれの複数のマニホールド孔が連通して複数のマニホールド20~25が形成されている。マニホールド20はセル積層体11に燃料ガスを供給するために用いられ、マニホールド21はセル積層体11から燃料ガスを排出するために用いられる。マニホールド22はセル積層体11に酸化剤ガスを供給するために用いられ、マニホールド23はセル積層体11から酸化剤ガスを排出するために用いられる。マニホールド24はセル積層体11に冷媒(例えば冷却水)を供給するために用いられ、マニホールド25はセル積層体11から冷媒を排出するために用いられる。
図2は、単セル10のアノードセパレータ37の平面図である。図3は、図2のA-A間に相当する箇所でのセル積層体11の一部を示す断面図である。図2に示すように、アノードセパレータ(以下、単にセパレータと称する)37は、X方向及びY方向をそれぞれ短手方向及び長手方向とする略矩形状であり、外周縁を画定する縁372~375を有している。縁372及び373は、Y方向に略平行でありX方向に離れている。縁374及び375は、X方向に略平行でありY方向に離れている。また、セパレータ37には、マニホールド20~25のそれぞれを画定するためのマニホールド孔50~55が形成されている。マニホールド孔52、54、及び51は、縁374に沿って設けられている。マニホールド孔50、55、及び53は、縁375に沿って設けられている。マニホールド孔50、55、及び53と、マニホールド孔52、54、及び51との間には、Y方向に延びX方向に所定の間隔を空けて並んだ複数の流路リブ42が形成されている。また、セパレータ37には、冷媒や反応ガスをシールするためのマニホールドビード44a~44fや外周ビード44gが設けられている。マニホールドビード44a~44fは、それぞれマニホールド孔50~55を包囲する。外周ビード44gは、マニホールド孔54及び55が外側に位置するようにガスマニホールド孔50~53と複数の流路リブ42を包囲し、縁372~375に沿って蛇行しながら延びている。外周ビード44gについては、詳しくは後述する。
図3に示すように、単セル10は、膜電極ガス拡散層接合体(以下、MEGA(Membrane Electrode Gas diffusion layer Assembly)と称する)36と、MEGA36を囲む枠状の絶縁フレーム39と、MEGA36及び絶縁フレーム39に対向したセパレータ37と、MEGA36及び絶縁フレーム39とは反対側でセパレータ37に対向したカソードセパレータ(以下、単にセパレータと称する)38と、を備える。セパレータ37及び38は、ガス遮断性及び電子伝導性を有する部材で形成され、例えばプレス成型したステンレス鋼などの金属部材で形成されている。絶縁フレーム39は、例えばゴム又はエラストマー樹脂などの弾性を有する樹脂部材で形成されているが、弾性を有さない絶縁部材で形成されていてもよい。
図3に示すように、セパレータ37は、XY平面に略平行であって平坦な基部371と、基部371から+Z方向に突出した複数の流路リブ42と外周ビード44gとを含む。図1に示したマニホールド20を流れる燃料ガスは、マニホールド孔50から隣接する流路リブ42とこれに対向するMEGA36との間を流れて、マニホールド孔51を介してマニホールド21から排出される。
セパレータ38は、XY平面に略平行であって平坦な基部381と、基部381から-Z方向に突出した複数の流路リブ43と外周ビード45gとを含む。セパレータ38の基部381は、セパレータ38に対向するセパレータ37の基部371に当接している。セパレータ38の複数の流路リブ43は、Y方向に延びてX方向に所定の間隔を空けて並んでおり、セパレータ38に対向するセパレータ37の複数の流路リブ42とZ方向で対向している。図1に示したマニホールド22を流れる酸化剤ガスは、マニホールド孔52から隣接する流路リブ43とこれに対向するMEGA36との間を流れて、マニホールド孔53を介してマニホールド23から排出される。図1に示したマニホールド24を流れる冷媒は、マニホールド孔54から対向する流路リブ42及び43の間を流れて、マニホールド孔55を介してマニホールド25から排出される。
図3に示すように、セパレータ37の外周ビード44gは、Z方向の圧縮荷重に対して反力が確保できるように、基部371から+Z方向に突出している。同様に、セパレータ38の外周ビード45gは、Z方向の圧縮荷重に対して反力が確保できるように、基部381から-Z方向に突出している。セパレータ37の外周ビード44gは、このセパレータ37と対向するセパレータ38の外周ビード45gとZ方向で対向している。セパレータ38の外周ビード45gは、セパレータ37の外周ビード44gと同様に蛇行しながらセパレータ38の外周縁に沿うように伸びている。
セパレータ37の外周ビード44gは、このセパレータ37に対向する絶縁フレーム39に、弾性部材であるゴム製のガスケット70を介して押圧される。外周ビード45gについても同様である。尚、図2に示したマニホールドビード44a~44fも、不図示のガスケットを介して絶縁フレーム39に押圧されている。尚、図3は、セパレータ37に設けられたリブ47を示しているが詳しくは後述する。
尚、セパレータ38及び絶縁フレーム39には、セパレータ37のマニホールド孔50~55と同様に、複数のマニホールド孔が設けられている。また、セパレータ38には、セパレータ37のマニホールドビード44a~44fや外周ビード44gと同様に複数のシール部が設けられている。セパレータ37及び38は、マニホールドビード44a、44b、44c、及び44dの周りや外周ビード44gの周りで接合されている。セパレータ37及び38の接合は、例えばレーザ溶接によって行われるが、アーク溶接又は熱圧着接合などの他の方法で接合されてもよい。
MEGA36は、膜電極接合体(以下、MEA(Membrane Electrode Assembly)と称する)35と、アノードガス拡散層(以下、単に拡散層と称する)33、及びカソードガス拡散層(以下、単に拡散層と称する)34と、を備える。MEA35は、電解質膜30と、電解質膜30の一方の面の全面に設けられたアノード触媒層(以下、単に触媒層と称する)31と、他方の面に電解質膜30の外周縁部30aを露出させて設けられたカソード触媒層(以下、単に触媒層と称する)32と、を備える。絶縁フレーム39は、例えば接着剤などによって電解質膜30の外周縁部30aに接合されている。
電解質膜30は、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂材料又は炭素系樹脂材料で形成された固体高分子膜であり、湿潤状態において良好なプロトン伝導性を有する。触媒層31及び32は、電気化学反応を進行させる触媒(白金又は白金-コバルト合金など)を担持したカーボン粒子(カーボンブラックなど)と、スルホン酸基を有する固体高分子であり、湿潤状態において良好なプロトン伝導性を有するアイオノマーと、を含む。拡散層33及び34は、ガス透過性及び電子伝導性を有する部材で形成され、例えばカーボンクロス又はカーボンペーパなどの多孔質カーボン部材で形成されている。
[外周ビード44gの詳細構成]
図4は、外周ビード44g周辺を示したセパレータ37の部分拡大斜視図である。図5は、+Z方向側から見た外周ビード44g周辺を示したセパレータ37の部分拡大平面図である。図5は、外周ビード44gが突出した側からであって基部371の面に垂直な方向から見た平面図に相当する。図4及び図5では、縁372に沿って延びた外周ビード44gの一部分を示しており、この外周ビード44gの一部分は+Y方向に蛇行しながら延びている。具体的には外周ビード44gは、振幅及び波長がそれぞれ略一定で波状に延びている。図6Aは、図5のA-A断面図である。図6Bは、図5のB-B断面図である。
外周ビード44gは、側部441及び442と、頂部443とを含む。側部441及び442は、基部371に対して傾斜するように+Z方向側に突出している。頂部443は、基部371と略平行であり、基部371よりも+Z方向側に位置している。側部441は、側部442よりも縁372の近くに位置している。外周ビード44gには湾曲したリブ46及び47が接続されている。
図5では、側部441と基部371との境界線である稜線L1と、側部442と基部371との境界線である稜線L2とを示している。また、図5には、稜線L1上で-X方向及び+X方向にそれぞれ最も突出した位置である地点M1及びM2と、稜線L2上で+X方向及び-X方向にそれぞれ最も突出した位置である地点M3及びM4とを示している。地点M1及びM2は、+Y方向で波状に延びた外周ビード44gの1/2波長の間隔を空けて交互に並び、地点M3及びM4も同様である。
また、図5では、側部441の+Y方向に交互に繰り返される領域R1及びR2と、側部442の+Y方向に交互に繰り返される領域R3及びR4とを示す。領域R1は、地点M1からこの地点M1に+Y方向で隣接した地点M2までの側部441の領域である。領域R2は、地点M2からこの地点M2に+Y方向で隣接した地点M1までの側部441の領域である。領域R3は、地点M3からこの地点M3に+Y方向で隣接した地点M4までの側部442の領域である。領域R4は、地点M4からこの地点M4に+Y方向で隣接した地点M3までの側部442の領域である。領域R1は、平面視で領域R1内の外側面上の任意の点での法線方向が+Y方向の成分を含む領域である。領域R2は、平面視で領域R2内の外側面上の任意の点での法線方向が+Y方向の成分を含む領域である。領域R3は、平面視で領域R3内の外側面上の任意の点での法線方向が+Y方向の成分を含む領域である。領域R4は、平面視で領域R4内の外側面上の任意の点での法線方向が-Y方向の成分を含む領域である。領域R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ第1、第2、第3、及び第4領域の一例である。また、図5において、+Y方向は第1方向の一例であり、-Y方向は第2方向の一例であり、-X方向は第3方向の一例であり、+X方向は第4方向の一例である。
[リブ46及び47の詳細構成]
リブ46の端部461及び462は、外周ビード44gの側部441の領域R1及びR2にそれぞれ接続されている。同様にリブ47の端部471及び472は、外周ビード44gの側部442の領域R3及びR4にそれぞれ接続されている。リブ46は、全体で-X方向に凸となった円弧状である。リブ47は、全体で+X方向に凸となった円弧状である。
図5には、領域R1及びR2の外側面のそれぞれの法線方向N1及びN2と、領域R3及びR4の外側面のそれぞれの法線方向N3及びN4を示している。法線方向N1は、領域R1とリブ46の端部461との接続位置での法線方向である。法線方向N2は、領域R2とリブ46の端部462との接続位置での法線方向である。法線方向N3は、領域R3とリブ47の端部471との接続位置での法線方向である。法線方向N4は、領域R4とリブ47の端部472との接続位置での法線方向である。リブ46は、端部461から法線方向N1に延び、端部462から法線方向N2に延びている。従って、換言すれば、法線方向N1は、端部461でのリブ46の接線方向でもあり、法線方向N2は、端部462でのリブ46の接線方向でもある。同様に、リブ47は、端部471から法線方向N3に延び、端部472から法線方向N4に延びており、法線方向N3及びN4はそれぞれ端部471及び472でのリブ47の接線方向である。
尚、図4、図6A、及び図6Bに示すように、リブ46及び47は、基部371から外周ビード44gよりも低い突出高さで+Z方向側に突出している。また、リブ46及び47は、断面視で円弧状であるが、これに限定されず、例えば台形状であってもよいし三角形状であってもよい。
[比較例]
次に比較例について説明する。図7は、比較例のセパレータ37xの説明図である。セパレータ37xは、上述したリブ46及び47は設けられていない点で本実施例のセパレータ37と異なるが、その他の点については同じである。燃料電池は、セパレータ37xや絶縁フレーム39、MEGA36等が積層されて、Z方向に圧縮荷重が作用するようにこれらの部材が締結される。セパレータ37xの外周ビード44gにZ方向での圧縮荷重が作用すると、側部441上には、側部441上の任意の点での側部441の外側に向けた法線方向に力が作用し、同様に側部442上には、側部442上の任意の点での側部442の外側に向けた法線方向に力が作用する。
図7には、外周ビード44gに圧縮荷重が作用した際に領域R1~R4のそれぞれに作用する力のベクトルP1~P4を示している。ベクトルP1~P4は、それぞれ領域R1~R4の法線方向の力のベクトルを示す。また、理解を容易にするために、ベクトルP1~P4の始点は、それぞれ図5に示した法線方向N1~N4の始点と一致させている。即ち、ベクトルP1~P4の始点は、それぞれ、領域R1とリブ46の端部461との接続位置、領域R2とリブ46の端部462との接続位置、領域R3とリブ47の端部471との接続位置、及び領域R4とリブ47の端部472との接続位置に一致している。そのため、ベクトルP1~P4の方向は、それぞれ法線方向N1~N4と一致している。
ベクトルP1のY方向成分P1yは+Y方向に作用しているのに対し、ベクトルP2のY方向成分P2yは-Y方向に作用する。このため、Y方向成分P1y及びP2yは互いに相殺される。同様に、ベクトルP3のY方向成分P3yは+Y方向に作用しているのに対し、ベクトルP4のY方向成分P4yは-Y方向に作用し、Y方向成分P3y及びP4yは互いに相殺される。このように、側部441及び442にそれぞれ作用した力の一部が相殺されるのは、外周ビード44gが蛇行した形状だからである。このため、蛇行した外周ビード44gは圧縮荷重に対する反力が確保されている。
しかしながら、ベクトルP1及びP2のそれぞれのX方向成分P1x及びP2xは、共に-X方向に作用する。また、ベクトルP3及びP4のそれぞれのX方向成分P3x及びP4xは、共に+X方向に作用する。従って、外周ビード44gに反力よりも大きな圧縮荷重が作用すると、側部441及び442がそれぞれ-X方向及び+X方向に広がるように変形して、上述したガスケット70を介しての外周ビード44gと絶縁フレーム39との間のシール性が低下する可能性がある。
[本実施例の効果]
本実施例では、外周ビード44gに圧縮荷重が作用すると、側部441の領域R1からリブ46の端部461を介して端部462側へと力が伝播すると共に、側部441の領域R2からリブ46の端部462を介して端部461側へと力が伝播する。この結果、端部461からの力と端部462からの力とが相殺される。
ここで、上述したように、リブ46の、端部461から延びた方向は、領域R1と端部461との接続地点での領域R1の法線方向N1であり、リブ46の、端部462から延びた方向は、領域R2と端部462との接続地点での領域R2の法線方向N2である。従って、例えば上述したベクトルP1が領域R1からリブ46の端部461に作用した場合には、ベクトルP1の成分の大部分が、端部461から法線方向N1に沿って延びたリブ46に伝播する。換言すれば、本実施例のリブ46により、比較例のようにベクトルP1がX方向成分P1x及びY方向成分P1yに分散されることが抑制されて、大きな力がリブ46に伝播する。
同様に、ベクトルP2が領域R2からリブ46の端部462に作用した場合にも、ベクトルP2の成分の大部分が、端部462から法線方向N2に沿って延びたリブ46に伝播する。このように、外周ビード44gに圧縮荷重が作用した場合には、側部441からリブ46の端部461及び462の双方から大きな力が伝播して互いに相殺される。同様に、側部442からリブ47の端部471及び472の双方から大きな力が伝播して互いに相殺される。このようにリブ46及び47により、外周ビード44gには大きな圧縮荷重に対しても十分な反力が生じ、シール性が向上している。
図8は、図5の部分拡大図である。図8に示すように本実施例では、リブ46は端部461から法線方向N1に延びているが、例えば、リブ46は端部461から法線方向N1を中心とした60度の角度範囲内、好ましくは45度の角度範囲内、更に好ましくは30度の角度範囲内で延びていてもよい。リブ46の端部461から延びた方向と、側部441と端部461との接続地点での法線方向N1との角度差が小さいほど、外周ビード44gに圧縮荷重が作用した際に側部441から端部461に伝播する力は大きくなり、相殺され得る力は増大して、反力を確保できるからである。同様に、リブ46は端部462から法線方向N2を中心とした60度の角度範囲内、好ましくは45度の角度範囲内、更に好ましくは30度の角度範囲内で延びていてもよい。リブ47に関しても同様である。
リブ46は、端部461から法線方向N1を中心とした60度の角度範囲外から延びていてもよいが、リブ46の端部461から延びた方向は、-X方向と+Y方向との間の方向であることが好ましい。同様に、リブ46の端部462から延びた方向は、-X方向と-Y方向との間の方向であることが好ましい。例えばY方向に平行なリブを想定すると、ベクトルP1のY方向成分P1yとベクトルP2のY方向成分P2yとを相殺することはできるが、ベクトルP1のX方向成分P1xとベクトルP2のX方向成分P2xとはこのようなリブに伝播せずにこれらの成分を互いに相殺することは困難になると考えられる。また、例えばリブの双方の端部が-X方向に延びた横U字状であるリブを想定すると、一方の端部から伝播した-X方向成分と、他方の端部から伝播した-X方向成分とが、リブの形状に沿って伝播せずに、互いに相殺することが困難になると考えられる。リブ47も同様に、リブ47の端部471から延びた方向は、+X方向と+Y方向との間の方向であることが好ましく、リブ47の端部472から延びた方向は、+X方向と-Y方向との間の方向であることが好ましい。
上記のように力の相殺を考慮しなくても、側部441にはリブ46が接続されているため、外周ビード44gに圧縮荷重が作用した際に側部441の変形を抑制でき、同様に、側部442に接続されたリブ47により側部442の変形を抑制できる。即ち、リブ46及び47により側部441及び442自体の剛性を確保することができ、この作用によってもシール性が向上している。
リブ46及び47の各幅は外周ビード44gの幅よりも広くてもよいが、本実施例のように狭い方が好ましい。例えば、外周ビード44gと外周ビード44gとに沿って延びた縁372との間のスペースが狭い場合であってもリブ46を設けることができ、また、外周ビード44gと流路リブ42との間のスペースが狭い場合であってもリブ47を設けることができるからである。
リブ47の+Z方向での突出高さは、図3に示したように、周辺の他の部材に接触せず、且つアノードガスの圧損に大きな影響を与えない程度であることが好ましい。尚、リブ46及び47の+Z方向での突出高さは同じに限られない。
[その他]
リブ46の端部461から延びた方向と法線方向N1との間の角度と、リブ46の端部462から延びた方向と法線方向N2との間の角度とは同じに限定されない。また、リブ46の端部461から延びた方向と、リブ46の端部462から延びた方向とは、X方向に平行な線分に対して対称であることに限定されない。同様に、リブ47の端部471から延びた方向と法線方向N3との間の角度と、リブ47の端部472から延びた方向と法線方向N4との間の角度とは同じに限定されない。リブ47の端部471から延びた方向と、リブ47の端部472から延びた方向とは、X方向に平行な線分に対して対称であることに限定されない。リブ46及び47は、Y方向に平行な線分に対して対称形状であるがこれに限定されない。即ち、リブ46の端部461から延びた方向とリブ47の端部472から延びた方向とは、互いに逆方向であることに限定されず、リブ46の端部462から延びた方向とリブ47の端部471から延びた方向とは、互いに逆方向に限定されない。
リブ46の端部461は側部441の領域R1内の任意の位置に接続されていよく、端部462も側部441の領域R2内の任意の位置に接続されていればよい。リブ47の端部471も同様に、側部442の領域R3内の任意の位置に接続されていればよく、端部472は側部442の領域R4内の任意の位置に接続されていればよい。リブ46は、平面視で略一定の曲率で湾曲しているがこれに限定されず、例えば、リブ46は、端部461及び462のそれぞれから大きい曲率で延び、端部461からの長さと端部462からの長さとが略同じとなる位置付近で曲率が小さくなった形状であってもよい。また、リブ46は、部分的に直線状に延びた部位を有していてもよい。リブ47についても同様である。
外周ビード44gの形状は、振幅及び波長が一定の波状であるが、蛇行していればこれに限定されない。例えば、ビードは、直線状部分を含んだジグザグ状であってもよい。また、図3に示したセパレータ38の外周ビード45gにも、上述したリブ46及び47が接続するように設けられていてもよい。
[第1変形例]
次に複数の変形例に係るセパレータについて説明する。図9は、第1変形例であるセパレータ37aの部分拡大平面図である。図9は、図5に対応している。セパレータ37aのリブ46aは、端部461及び462からそれぞれ法線方向N1及びN2に直線状に延びた直状部46a1及び46a2と、直状部46a1及び46a2が接続した湾曲部46a3とを有している。直状部46a1及び46a2は、互いに同じ長さであるがこれに限定されない。直状部46a1及び46a2の間の内角は、90度である。湾曲部46a3では、直線状の直状部46a1と直状部46a2とが湾曲して接続されている。同様にリブ47aも、端部471及び472からそれぞれ法線方向N3及びN4に直線状に延びた直状部47a1及び47a2と、直状部47a1及び47a2が接続した湾曲部47a3とを有している。
外周ビード44gに圧縮荷重が作用した際に、リブ46aの端部461から直状部46a1を介して湾曲部46a3に力が伝播し、同様に端部462から直状部46a2を介して湾曲部46a3に力が伝播し、湾曲部46a3で双方からの力が相殺される。リブ47aについても同様に、端部471から直状部47a1を介して湾曲部47a3に力が伝播し、同様に端部472から直状部47a2を介して湾曲部47a3に力が伝播し、湾曲部47a3で双方からの力が相殺される。このようなリブ46a及び47aによっても、外周ビード44gに圧縮荷重が作用した際に力を相殺することにより、外周ビード44gの反力を確保でき、シール性が向上している。
また、直状部46a1は直線状に延びているため、側部441の領域R1を十分に支持することができ、外周ビード44gに圧縮荷重が作用した際に側部441の領域R1の変形を抑制できる。同様に、直状部46a2は、側部441の領域R2を十分に支持することができ、側部441の領域R2の変形を抑制できる。直状部47a1及び47a2についても同様である。このように、外周ビード44gの剛性が確保されている。
第1変形例において、リブ46aの代わりに上述した本実施例でのリブ46を採用してもよいし、リブ47aの代わりにリブ47を採用してもよい。
[第2変形例]
図10は、第2変形例であるセパレータ37bの部分拡大平面図である。図10は、図5に対応している。セパレータ37bには、上述した実施例とは異なり、側部441に接続されたリブ46は設けられているが、側部442に接続されるリブは設けられていない。ここで、リブ46が接続された側部441は、縁372に沿って+Y方向に延びており、換言すれば基部371の縁372に対向している。ここで側部441が縁372に対向するとは、側部441と縁372との間にリブ46以外の凹凸状の部位は形成されていないことを意味する。外周ビード44gに圧縮荷重が作用した際には、リブ46により側部441の反力を確保することができる。また、セパレータ37bでは側部442に接続されるリブは設けられていないため、セパレータ37bの製造が容易であり、製造コストの増大も抑制されている。
ここで、図3に示すように、セパレータ37bの中央部にも複数の流路リブ42が形成されており、外周ビード44gの側部442は、複数の流路リブ42側に設けられている。この複数の流路リブ42により、セパレータ37bの中央部は、縁372側よりも剛性が確保されている。ここで、セパレータ37bの外周ビード44gにZ方向の圧縮荷重が作用する際には、実際には外周ビード44gのみならず、複数の流路リブ42にもZ方向の圧縮荷重が作用する。このため、剛性が確保された複数の流路リブ42に対向した側部442に作用する圧縮荷重は、縁372に対向した側部441に作用する圧縮荷重よりも小さいと考えられる。このため、側部442に接続されるリブは設けられていなくても、シール性を確保できる。
例えば、外周ビード44gに作用する圧縮荷重の大きさが比較的大きい場合には、上述した本実施例又は第1変形例のセパレータ37又は37aを採用し、外周ビード44gに作用する圧縮荷重の大きさが比較的大きくない場合には、製造コストが抑制されている第2変形例のセパレータ37bを採用してもよい。
第2変形例において、リブ46の代わりに第1変形例に示したリブ46aを採用してもよい。
第2変形例では、側部442に接続されたリブが設けられていないセパレータ37bを説明したが、側部442に接続されたリブは設けられているが側部441に接続されたリブは設けられてないセパレータを用いてもよい。
上述した本実施例及び変形例では、外周ビード44gに接続されたリブ46等を説明したがこれに限定されず、マニホールド孔50~55をそれぞれ包囲するマニホールドビード44a~44fの少なくとも一つを蛇行した形状としてこれに接続されたリブ46等を設けてもよい。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
100 燃料電池
37、37a、37b アノードセパレータ(燃料電池用のセパレータ)
371 基部
372 縁
44g 外周ビード(ビード)
46、47、46a、47a リブ
461 端部(第1端部)
462 端部(第2端部)
N1~N4 法線方向

Claims (8)

  1. 平坦な基部と、
    前記基部から一方側に突出した複数の流路リブと、
    前記基部から前記一方側に突出して、前記基部の外周縁側に沿って延び前記複数の流路リブを包囲し、少なくとも第1方向に蛇行しながら延びたビードと、
    前記基部から前記一方側に前記ビードよりも低い突出高さで突出して前記ビードに接続した第1リブと、を備え、
    前記ビードの蛇行しながら前記第1方向に延びた部分は、前記基部よりも前記一方側に位置した頂部、前記基部から傾斜して前記頂部に連続し互いに対向した第1及び第2側部、を含み、
    前記第1側部は、前記第1リブの第1端部が接続した第1領域と、前記第1領域から前記第1方向に連続し前記第1リブの第2端部が接続した第2領域と、を有し、
    前記一方側からであって前記基部に垂直な方向から見た平面視で、前記第1領域内での前記第1側部の外側面上の任意の点での法線方向である第1法線方向は、前記第1方向の成分を含み、
    前記平面視で、前記第2領域内での前記第1側部の外側面上の任意の点での法線方向である第2法線方向は、前記第1方向とは反対方向の第2方向の成分を含み、
    前記平面視で、前記第1リブが前記第1端部から延びた方向は、前記第1方向と前記第1方向に直交し前記第1側部の外側の方向である第3方向との間の方向であり、
    前記平面視で、前記第1リブが前記第2端部から延びた方向は、前記第2方向と前記第3方向との間の方向である、燃料電池用のセパレータ。
  2. 前記第1リブは、円弧状に湾曲している、請求項1の燃料電池用のセパレータ。
  3. 前記第1リブは、前記第1及び第2端部からそれぞれ直線状に延びた第1及び第2直状部を含む、請求項1の燃料電池用のセパレータ。
  4. 前記第1リブの幅は、前記ビードの幅よりも狭い、請求項1乃至3の何れかの燃料電池用のセパレータ。
  5. 前記第1側部は、前記基部の外縁に対向している、請求項1乃至4の何れかの燃料電池用のセパレータ。
  6. 前記第1リブが前記第1端部から延びた方向は、前記第1端部と前記第1領域との接続地点での前記第1法線方向を中心とした60度の角度範囲内に含まれる、請求項1乃至5の何れかの燃料電池用のセパレータ。
  7. 前記第1リブが前記第2端部から延びた方向は、前記第2端部と前記第2領域との接続地点での前記第2法線方向を中心とした60度の角度範囲内に含まれる、請求項1乃至6の何れかの燃料電池用のセパレータ。
  8. 前記基部から前記一方側に前記ビードよりも低い突出高さで突出して前記ビードに接続されている第2リブを備え、
    前記第2側部は、前記第2リブの第3端部が接続した第3領域と、前記第3領域から前記第1方向に連続し前記第2リブの第4端部が接続した第4領域と、を有し、
    前記平面視で、前記第3領域内での前記第2側部の外側面上の任意の点での法線方向である第3法線方向は、前記第1方向の成分を含み、
    前記平面視で、前記第4領域内での前記第2側部の外側面上の任意の点での法線方向である第4法線方向は、前記第2方向の成分を含み、
    前記平面視で、前記第2リブが前記第3端部から延びた方向は、前記第1方向と前記第3方向の反対側の第4方向との間の方向であり、
    前記平面視で、前記第2リブが前記第4端部から延びた方向は、前記第2方向と前記第4方向との間の方向である、請求項1乃至7の何れかの燃料電池用のセパレータ。
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