以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~図7を参照して、一実施形態による冷却装置100の構成について説明する。冷却装置100は、上面(設置面)上に設置された発熱体からの熱を吸収して冷却する液冷式のコールドプレートである。発熱体Mは、特に限定されないが、たとえば各種の電子機器、電子回路(または電子回路を構成する素子)などの発熱体である。発熱体Mは、たとえば電力変換装置に搭載されるパワーモジュールや、コンピュータに搭載されるCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサでありうる。以下では、発熱体Mが、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などの電力制御用スイッチング素子を備えたパワーモジュールである例について説明する。
(本体部)
図1に示すように、冷却装置100は、本体部1を備えている。本体部1は、発熱体Mが設置される設置面11を有する。本体部1は、設置面11上に設置された発熱体Mを冷却するための冷媒5を流通させる冷媒流路2(図2参照)を内部に有している。
本体部1は、概略で長方形状の平板形状を有する。本体部1は、それぞれ平坦面状の第1面(上面)と、第2面(下面)とを有する。本体部1の長手方向の一方(X1方向)の側端面および他方(X2方向)の側端面には、それぞれ、冷媒流路2に対する外部の冷媒流路(配管など)との接続口となるノズル3が設けられている。各ノズル3は、冷媒5が出入りするための開口部を有している。2つのノズル3は、開口部を介して、冷媒流路2の後述する入口開口22および出口開口24とそれぞれ連通している。以下、便宜的に、平面視(上面視)における直交する2方向のうち、本体部1の長手方向をX方向とし、本体部1の短手方向をY方向とする。本体部1の厚み方向(上下方向)をZ方向とする。
図1の例では、本体部1の第1面(上面)が設置面11である。設置面11は、たとえば平坦面であるが、発熱体Mの形状に応じて凹凸が形成されていてもよい。設置面11には、発熱体Mを配置するための配置領域12が複数形成されている。配置領域12は、設置面11内で、発熱体Mが載置されて発熱体Mの表面と設置面11とが接触する領域である。図1の例では、本体部1に4つの配置領域12が設けられており、冷却装置100には、4つの発熱体Mを配置することが可能である。
図1の例では、パワーモジュールである発熱体Mは、平面視で長方形の板状形状を有する。各配置領域12は、発熱体Mが、長辺がX方向に一致し、短辺がY方向に一致して載置されるように形成されている。発熱体Mの平面形状は任意である。
本体部1には、それぞれの配置領域12に対応するねじ穴(図示せず)が設けられ、発熱体Mを配置領域12に位置決めして固定することが可能である。発熱体Mは、熱伝導性コンパウンドや放熱グリスなどにより隙間をなくした状態で、設置面11上の配置領域12に密着するように配置(設置)される。
本体部1は、内部の冷媒流路2を区画する壁部13と、厚み方向の上下表面(第1面および第2面)を構成する板部材14とが接合された構造を有する。設置面11は、上下の板部材14の外表面により構成される。
(冷媒流路)
図2に示すように、冷媒流路2は、本体部1の内部に形成された冷媒の流通空間である。冷媒流路2は、壁部13と板部材14(図1参照)とによって区画されている。冷媒流路2は、冷媒5を流通させる通路である。冷媒流路2は、配置領域12の直下の位置(すなわち、平面視で配置領域12と重なる位置)に形成された複数の熱交換部21を含む。本実施形態の冷媒流路2は、少なくとも一部が液相の冷媒5が飽和状態で流入し、一部が熱交換部21において気化して、気液混相の冷媒5が流出するように構成されている。つまり、冷却装置100は、冷媒5の相変化(気化)に伴う気化熱を利用して発熱体Mの冷却を行う。このような冷媒5としては、たとえばHFC(ハイドロフルオロカーボン)またはHFO(ハイドロフルオロオレフィン)などのフッ素系有機化合物の冷媒を用いることが可能である。
冷媒流路2は、各熱交換部21に冷媒5を供給する流路と、各熱交換部21から冷媒を排出する流路とを含んで構成される。すなわち、冷媒流路2は、入口開口22と、入口開口22から分岐してそれぞれ熱交換部21につながる分配路23と、出口開口24とを含む。また、冷媒流路2は、それぞれの熱交換部21から合流して出口開口24につながる排出路25を含む。冷媒5は、入口開口22から出口開口24に向かって流れる。なお、冷媒流路2内の冷媒5の流通方向について、入口開口22に向かう方向を上流側、出口開口24に向かう方向を下流側という。
入口開口22は、冷媒流路2の端部開口であり、本体部1の側端面に1つ設けられている。図2の例では、入口開口22は、本体部1のX1方向側の側端面に開口してX1方向側のノズル3と連通している。入口開口22は、外部から冷媒5を受け入れて冷媒流路2内に供給する。入口開口22には、少なくとも一部が液相の冷媒5が流入する。冷媒5は、実質的に全て液相(ガス率=0%)の状態で入口開口22に流入してもよいし、一部が気相の気液混相の状態で入口開口22に流入してもよい。入口開口22において冷媒5は気相よりも液相の割合の方が大きい。
分配路23は、冷媒流路2のうちで、上流側の1つの端部と、下流側の複数の端部とを有する分岐した流路部分である。分配路23の上流側端部が入口開口22に連通している。分配路23の複数の下流側端部は、それぞれ熱交換部21に連通している。分配路23は、入口開口22からの冷媒5を複数の熱交換部21に分配するように構成されている。分配路23の複数の下流側端部の数は、図2の例では2つである。図3に示すように、分配路23は、1つの入口開口22から分岐部23aにおいて分岐して、下流側の2つの熱交換部21に1本ずつ接続している。以下では、分岐部23aから分かれた個々の下流側の流路部分を、支流路26という。
図2および図3の例では、分配路23が、入口開口22から分岐部23aまでX2方向に延びて、分岐部23aにおいてY方向の両側に2分岐した後、それぞれの支流路26がX2方向に延びて、Y方向に並んだ2つの熱交換部21にそれぞれ接続している。分岐部23a以降の各支流路26は、互いに連通していない。各支流路26における冷媒流量の合計が、入口開口22に流入する流量に相当する。
本実施形態では、分配路23の分岐部23aと熱交換部21との間(支流路26)には、流路抵抗を増大させることにより、発熱体Mの発熱量(負荷)の変動に伴う冷媒5の分配量の変動を抑制する抵抗体30が設けられている。抵抗体30は、分配路23の分岐部23aと熱交換部21との間の流路の一部を遮るように設けられた障害物である。本実施形態では、抵抗体30は、排出路25には設けられずに分配路23に設けられている。抵抗体30の詳細については、後述する。
図2に示すように、熱交換部21は、冷媒流路2の一部であって、設置面11上の複数の発熱体Mと冷媒5との間でそれぞれ熱交換を行う流路部分である。本実施形態の例では、4つの発熱体Mがそれぞれ4つの配置領域12に設置されるので、熱交換部21は、4つの配置領域12の直下の位置に1つずつ設けられている。熱交換部21は、上流側の1つの端部と、下流側の1つの端部とを有する流路部分である。
複数の熱交換部21は、第1熱交換部21aと第2熱交換部21bとを含む。第1熱交換部21aと第2熱交換部21bとは、分岐した分配路23によって入口開口22に対して並列的に接続されている。図2の例では、第1熱交換部21aと第2熱交換部21bとは、壁部13aを挟んでY方向に並んで配置されている。第1熱交換部21aと第2熱交換部21bとは、4つの発熱体M(配置領域12)に対応して2つずつ設けられている。すなわち、X方向に並んだ2つの第1熱交換部21aが1組となり、冷媒流路2においてX方向に直列的に接続されている。X方向に並んだ2つの第2熱交換部21bが1組となり、冷媒流路2においてX方向に直列的に接続されている。X方向に延びた第1熱交換部21aの列と第2熱交換部21bの列とが、Y方向に並列的に並んでいる。
X方向に並んだ2つ1組の第1熱交換部21a(第2熱交換部21b)に対して、まず上流側の第1熱交換部21a(第2熱交換部21b)に冷媒5が供給される。上流側の第1熱交換部21a(第2熱交換部21b)を通過した冷媒5が下流側の第1熱交換部21a(第2熱交換部21b)に供給される。X方向に並んだ2つの第1熱交換部21a(第2熱交換部21b)の間は、直線状の接続路27によって接続されている。Y方向に並んだ2つの第1熱交換部21aと2つの第2熱交換部21bとの間は、分岐した冷媒流路2を区画する壁部13aによって区画されており、互いに連通していない。
第1熱交換部21aまたは第2熱交換部21bである個々の熱交換部21は、X方向に直線状に延びている。熱交換部21の流路長さ(冷媒の流通方向の長さ)および流路幅(流通方向と直交する幅方向の長さ)は、発熱体M(図1参照)の平面形状(配置領域12の形状)に応じて設計されている。冷媒5は、熱交換部21を通過する過程でそれぞれの発熱体Mから熱を吸収する。吸熱により、熱交換部21を通過する冷媒5の一部が気化する。冷媒5の気化熱によって、気化熱を利用しない場合と比べて冷却装置100による発熱体Mの熱交換効率を上昇させることが可能である。
それぞれの熱交換部21は、冷媒5の流通方向に沿って設けられた第1フィン21cを含む。第1フィン21cは、熱交換部21に設けられる伝熱用のフィンである。第1フィン21cは、冷媒流路2(熱交換部21)を局所的に複数のチャネルに分割することにより伝熱面積を増大させて熱交換性能を向上させる。第1フィン21cは、たとえばコルゲートフィンであり、平面内の第1方向に沿って延びる複数の板状のフィン部41が、平面内で第1方向と直交する第2方向に間隔を隔てて並ぶように設けられた構造を有している。第1フィン21cは、フィン部41が延びる第1方向が、熱交換部21における冷媒5の流通方向(X方向)に沿うように設けられたフィンである。
第1フィン21cの種類(フィン形状)としては、たとえば、図4に示すプレーンフィン40a、図5に示すパーフォレートフィン40b、図6に示すオフセットフィン(セレートフィンとも呼ばれる)40cなどを採用することができる。プレーンフィン40aは、第1方向(A方向)に直線状に延びるフィン部41が、第2方向(B方向)に一定のピッチPで配列された構造を有する。複数のフィン部41は、それぞれ高さ方向(上下方向)のいずれかの端部同士が板状の接続部45によって接続されている。パーフォレートフィン40bは、プレーンフィン40aに複数の貫通孔42が設けられた構造を有する。オフセットフィン40cは、第1方向(A方向)に延びるフィン部41が第2方向(B方向)に配列されて構成された複数の列43が、互いに第2方向(B方向)へずれる(オフセットする)ように設けられているフィンである。第1フィン21cは、冷媒流路(熱交換部21)を複数のフィン部41によって局所的に複数のチャネルに分割し、これにより冷媒5の伝熱面積を増大する。
図2に戻り、排出路25は、上流側の複数の端部と、下流側の1つの端部とを有し、分岐した流路を合流させる流路部分である。排出路25の複数の上流側端部が、それぞれ熱交換部21に連通している。排出路25の下流側端部は、出口開口24に連通している。排出路25は、分岐した各熱交換部21を通過した冷媒5を合流させて、出口開口24に送り込むように構成されている。排出路25の複数の上流側端部の数は、図2の例では2つである。
出口開口24は、冷媒流路2の端部開口であり、本体部1の側端面に1つ設けられている。図2の例では、出口開口24は、本体部1のX2方向側の側端面に開口してX2方向側のノズル3と連通している。出口開口24は、冷媒流路2の最下流に設けられ、熱交換後(冷却後)の冷媒5を外部へ排出する。出口開口24からは、少なくとも一部が熱交換部21において気化した冷媒5が流出する。つまり、入口開口22に流入した液相の冷媒5のうちの一部が気化して気相の冷媒5となり、入口開口22への流入時よりもガス率が上昇した気液混相の冷媒5が、出口開口24から流出する。なお、入口開口22に流入した液相の冷媒5の全部が気化してもよく、その場合、出口開口24からは気相の冷媒5が流出する。
このような構成により、冷媒流路2は、入口開口22と出口開口24との間で分岐した2つの経路20aおよび20bを含んでいる。経路20aは、冷媒流路2の分岐部23aから延びて、支流路26、上流側の第1熱交換部21a、接続路27、下流側の第1熱交換部21aを含んだ、第1熱交換部21aを通過する経路である。経路20bは、冷媒流路2の分岐部23aから延びて、支流路26、上流側の第2熱交換部21b、接続路27、下流側の第2熱交換部21bを含んだ、第2熱交換部21bを通過する経路である。
第1熱交換部21aを通る経路20aと、第2熱交換部21bを通る経路20bとは、それぞれ第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bにおける負荷(熱量)が等しい時、経路20a全体の圧力損失と経路20b全体の圧力損失とが略一致するように構成されている。そのため、図2に示した例では、分岐部23aから排出路25まで2本の経路20a、20bは、互いに同一構造を有し、分岐部23aを境界としてY方向に略対称である。
(抵抗体)
次に、抵抗体30の詳細について説明する。抵抗体30は、分配路23の分岐部23aと熱交換部21との間の複数の支流路26のうち少なくとも1つに設けられる。図3に示す例では、抵抗体30は、複数(2つ)の支流路26の各々に設けられている。抵抗体30は、冷媒流路2の内部に設置されている。抵抗体30は、冷媒流路2内で、冷媒流路2を区画する壁部13および/または板部材14に固定されている。抵抗体30は、弁体などの開度変更を行うための可動部を有さず、固定された構造によって流路抵抗を生じさせる。
抵抗体30は、分配路23において、発熱体Mとの熱交換に伴う熱交換部21からの熱伝導の影響を受けないように熱交換部21から離間した位置に配置されている。具体的には、抵抗体30は、分配路23において熱交換部21よりも分岐部23aに近い位置に配置されている。本実施形態では、抵抗体30が分岐部23aの直後の位置に配置されている。すなわち、抵抗体30は、支流路26の上流側端部の位置(分岐部23aと支流路26との境界部)に設けられている。抵抗体30の下流側端部は、熱交換部21よりも上流側に離れて配置されている。言い換えると、支流路26は、抵抗体30の下流側端部と熱交換部21との間を接続する流路部分を含んでいる。抵抗体30は、支流路26の流路幅と略等しい幅W1を有する。冷媒5の流通方向(X方向)における抵抗体30の長さL1は、支流路26の長さよりも小さい。冷媒5の流通方向(X方向)において、抵抗体30の長さL1は、熱交換部21の長さよりも小さい。
抵抗体30は、抵抗体30を設置しない場合と比べて、冷媒流路2の流路抵抗を増大させる。抵抗体30は、たとえば、微細孔が形成されたオリフィス板、支流路26の一部を遮るように設けられるブロック体などにより構成されうる。本実施形態では、抵抗体30は、同一条件下で第1フィン21cよりも流路抵抗を増大させるように構成されている。つまり、図3に示した抵抗体30の設置領域に、抵抗体30に代えて第1フィン21cを設置したと仮定した場合よりも、流路抵抗を増大させる。
抵抗体30の具体例として、本実施形態では、抵抗体30は、冷媒5の流通方向と交差する方向に向けて設けられ、かつ、冷媒5が流通方向に通過可能な第2フィン31により構成されている。第2フィン31は、流路抵抗の増大を目的として(抵抗体30として)、通常の設置方向(フィン部41の延びる第1方向(A方向、図4~図6参照)を冷媒5の流通方向に向ける方向)とは異なる向きで冷媒流路2に設置される。第2フィン31は、たとえばコルゲートフィンのうち、冷媒5の流通方向と交差する方向に向けて配置しても冷媒5が流通方向へ流通可能なコルゲートフィンである。
抵抗体30を構成する第2フィン31は、オフセットフィン40c(図6参照)またはパーフォレートフィン40b(図5参照)を含む。本実施形態では、第2フィン31としてオフセットフィン40cが採用されている。図3に示した第2フィン31は、フィン部41の延びる第1方向(A方向)を、冷媒5の流通方向(X方向)と直交する流路幅方向(Y方向)に向けて設置されている。このため、第2フィン31では、第1方向(A方向)に延びるフィン部41が、冷媒流路2(支流路26)を遮る障壁として機能するように構成されている。第2フィン31は、フィン部41の配列方向である第2方向(B方向、図6参照)が、冷媒5の流通方向(X方向)に一致している。
第2フィン31としてのオフセットフィン40c(図6参照)またはパーフォレートフィン40b(図5参照)は、冷媒5を第2方向(B方向)に流通させることが可能なフィンである。すなわち、図6に示すオフセットフィン40cでは、フィン部41の奇数番目の列43と、偶数番目の列43とで、フィン部41の位置が第2方向(B方向)にずれている。そのため、偶数番目の列43を構成するフィン部41と、奇数番目の列43を構成するフィン部41との間には、B方向のオフセット量Osに応じた大きさの隙間44が形成される。これにより、オフセットフィン40cに対して冷媒5が第2方向(B方向)に流入すると、フィン部41の側面に衝突した冷媒5が各フィン部41の間の隙間44に入り込み、隙間44を介してそれぞれのフィン部41の間をジグザグに進行する。その結果、冷媒5はオフセットフィン40cに対して第2方向(B方向)に通過可能である。
オフセットフィン40cには、フィン部41の長さL2、各列43におけるフィン部41のピッチP、フィン部41のオフセット量Osなどが異なる様々な種類がある。オフセットフィン40cにより構成された抵抗体30(第2フィン31)では、これらのフィン部41の長さL2、フィン部41のピッチP、フィン部41のオフセット量Osなどが、流路抵抗を決定するためのパラメータとなる。
なお、図5に示すパーフォレートフィン40bでは、フィン部41に形成された貫通孔42が、第2方向(B方向)に流通する冷媒5の通り道となる。そのため、冷媒5はパーフォレートフィン40bに対して第2方向(B方向)に通過可能である。パーフォレートフィン40bには、貫通孔42の直径(または開口面積)、貫通孔42の数(または非貫通部に対する貫通孔42の割合)、貫通孔42の形成位置などが異なる様々な種類がある。抵抗体30(第2フィン31)がパーフォレートフィン40bである場合、これらの貫通孔42の直径、数および位置などが、流路抵抗を増減させるパラメータとなる。
このように冷媒5がB方向に流通する第2フィン31では、冷媒5がA方向に流通する場合と比べて、高い流路抵抗が生じる。そのため、第2フィン31によって構成された抵抗体30では、所望の流路抵抗を得るために必要となる距離を小さくすることができる。すなわち、図3に示したように、所望の流路抵抗を実現するために必要となる抵抗体30の長さL1を小さくすることが可能である。
ところで、本体部1は、冷媒流路2を区画する壁部13と、設置面11(図1参照)を構成する板部材14(図1参照)と、冷媒流路2内に配置された抵抗体30とがろう付けにより一体化された構造を有する。すなわち、壁部13、第1フィン21c、抵抗体30(第2フィン31)、板部材14には、いずれもろう材が塗布または被覆されており、図2に示したように壁部13と、第1フィン21cと、抵抗体30(第2フィン31)とを配置し、厚み方向の両側をそれぞれ板部材14によって挟み込むようにした組立体を構成し、組立体を所定のろう付け温度まで加熱してろう材を溶融させた後、冷却することにより、本体部1を構成する各部材が一括で接合される。
抵抗体30による流路抵抗は、抵抗体30の下流側にある熱交換部21における発熱体Mが発生する熱量や、冷媒流路2の全体の圧力損失、個々の分岐部分(分岐部23aから排出路25の合流部までの支流路26、熱交換部21を含む経路)の圧力損失等を考慮して設定される。
各発熱体Mが発生する熱量が同等であると見なせる場合、経路20aおよび経路20bにそれぞれ設置された2つの抵抗体30の流路抵抗は、略同一となるように設定される。一方、個々の発熱体Mの性能が異なり発生する熱量が相違する場合、2つの抵抗体30の流路抵抗は、それぞれの熱量に応じて異なる流路抵抗を有しうる。このような場合は、たとえば、各発熱体Mの性能が異なり、2つの第1熱交換部21aの各々における熱量が、2つの第2熱交換部21bの各々における熱量よりも大きい場合などが該当する。
また、抵抗体30は、第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bの一方における圧力損失が最大となり、第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bの他方における圧力損失が最小となる場合に、第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bの各々に分配される冷媒5の流量差が予め設定された範囲内に収まるように、設置位置における冷媒流路2の流路抵抗を増大させる。
すなわち、パワーモジュールである発熱体Mの負荷(発熱量)は、電力制御用スイッチング素子の動作に応じて変動する。この負荷の変動を、ここでは負荷率で表現する。すなわち、個々の発熱体Mの負荷は、設計上の最小発熱量である負荷率0%から最大発熱量である負荷率100%までの間で変動する。熱交換部21におけるガス率は、負荷率100%で最も上昇し、負荷率0%では上昇量が最小(実質的に上昇量がゼロ)となる。したがって、第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bの一方が負荷率100%となり冷媒5の気化(ガス率の上昇)に起因する圧力損失が最大となり、かつ、第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bの他方が負荷率0%となり冷媒5の気化に起因する圧力損失が最小となるケースで、冷媒分配量の差が最大となる。言い換えると、抵抗体30による流路抵抗は、第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bの間での冷媒5の気化に起因する圧力損失の差異が最大となる場合に、第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bの各々に分配される冷媒5の流量差が予め設定された範囲内に収まるように設定される。
冷媒5の流量差の範囲は、十分に小さいことが好ましい。たとえば、冷媒5の流量差の範囲は、入口開口22における冷媒流量の30%以下であり、より好ましくは20%以下である。
(流体回路)
本実施形態の冷却装置100は、たとえば図7に示すような流体回路50の一部を構成する。流体回路50は、主として、冷媒循環部51と、凝縮部52と、各部を接続する管路53とを備える。この他、流体回路50の各部には、流量調整などのためのバルブ(図示せず)などが設けられうる。
冷却装置100は、入口側のノズル3が、管路53を介して冷媒循環部51と接続されている。冷却装置100は、出口側のノズル3が、管路53を介して凝縮部52と接続されている。凝縮部52が管路53を介して冷媒循環部51と接続されている。流体回路50は、冷媒循環部51と、冷却装置100と、凝縮部52とで冷媒5を循環させる閉じた流体回路となっている。冷媒循環部51は、ポンプを含んで構成され、冷却装置100に対して冷媒5を供給する。冷媒循環部51は、圧力により流体回路50内の冷媒5を循環させる。冷却装置100は、二点鎖線で示したように、流体回路50において複数設けられていてもよい。
図7および図2に示すように、冷却装置100の入口開口22に供給された冷媒5は、分岐した分配路23によって第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bをそれぞれ通過する。この際、冷却装置100に設置された発熱体M(図1参照)の熱を冷媒5が吸収し、冷媒5の一部が気化するとともに発熱体Mを冷却する。冷却装置100内の冷媒5は、排出路25で合流して、出口開口24から排出される。冷却装置100から排出された冷媒5は、凝縮部52に送られる。凝縮部52は、冷媒5が吸収した熱を排出させることにより、冷却装置100において気化した気相の冷媒5を液相に戻す。凝縮部52は、公知の熱交換器により構成されうる。凝縮部52から排出された冷媒5は、冷媒循環部51に戻り、再度流体回路50を循環する。
(冷却装置の作用)
次に、本実施形態の冷却装置100の作用を説明する。図8および図9は、抵抗体30を設けない場合の比較例による経路20aおよび経路20bへの冷媒5の分配量を示した図である。図10は、抵抗体30を設けた本実施形態による経路20aおよび経路20bへの冷媒5の分配量を示した図である。図8~図10では、説明の便宜のため、図2に示した冷媒流路2を簡略化し、それぞれ2つずつ設けられた第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bを、まとめて1つの熱交換部として図示している。なお、以下の説明において示される具体的な分配量(流量)や圧力損失の値は、説明のために示す一例であって、これに限られない。
図8は、第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bの各々における発熱体Mの負荷が等しい(負荷=100%)場合の比較例(抵抗体なし)を示している。この場合、経路20aおよび経路20bの圧力損失が等しくなるように冷媒流路2が構成されているので、図8では、経路20aおよび経路20bにおける冷媒分配量は一致する。すなわち、入口開口22における流量20L/minの場合に、経路20aの流量Q1および経路20bの流量Q2は、それぞれQ1=Q2=10L/minとなる。冷媒流路2の全体の圧力損失ΔPは、ΔP=15kPaとする。第1熱交換部21aにおける圧力損失ΔP1が、第2熱交換部21bにおける圧力損失ΔP2と等しい。
次に、図9は、第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bの各々における発熱体Mの負荷が異なる場合の比較例(抵抗体なし)を示している。図9では、第1熱交換部21aにおいて発熱体Mが負荷100%となり、第2熱交換部21bにおいて発熱体Mが負荷0%となる。経路20aの第1熱交換部21aでは、発熱体M(負荷100%)からの入熱によって冷媒5が気化し、冷媒5の気化(ガス率の上昇)に伴う圧力損失が増大する。一方、経路20bの第2熱交換部21bでは、発熱体Mからの入熱がないため冷媒5が気化せず、第1熱交換部21aのような圧力損失の増大は起こらない。つまり、同一流量においては、第1熱交換部21aにおける圧力損失ΔP1よりも、第2熱交換部21bにおける圧力損失ΔP2が大幅に小さい。
この結果、図9のように経路20aと経路20bとで発熱体Mの負荷が変動する場合、経路20b側へ冷媒5の流入が集中して、経路20a側への冷媒分配量が減少する。その結果、熱量の大きい第1熱交換部21a(負荷100%)における冷却能力が不足する。入口開口22における流量20L/minの場合に、経路20aおよび経路20bでは、それぞれ流量Q1=2L/minおよび流量Q2=18L/minとなる。冷媒流路2の全体の圧力損失ΔPは、ΔP=3kPaとなる。
図10に示す本実施形態でも、第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bの各々における発熱体Mの負荷の条件は図9と同様とする。つまり、第1熱交換部21aにおいて発熱体Mが負荷100%となり、第2熱交換部21bにおいて発熱体Mが負荷0%となる。経路20aおよび経路20bにおいて、抵抗体30は同一構造を有するが、それぞれの抵抗体30による圧力損失は、各経路の下流側の熱交換部での圧力損失(ΔP1、ΔP2)の差異を反映した値となる。
すなわち、経路20aでは、第1熱交換部21a(負荷100%)において、冷媒5の気化に伴う圧力損失ΔP1=12kPaとなる。経路20bでは、第2熱交換部21b(負荷0%)において、冷媒5の気化が発生しないため圧力損失ΔP2=1kPaとなる。このとき、経路20aの抵抗体30における圧力損失が10kPaとなり、経路20bの抵抗体30における圧力損失が21kPaとなる。この結果、発熱体Mの負荷が異なる場合でも、経路20aと経路20bとで圧力損失が同等になり、経路20aおよび経路20bへの冷媒分配量の差異が抑制される。図10の例では、入口開口22における流量20L/minの場合に、経路20aおよび経路20bは、それぞれ流量Q1=8.5L/minおよび流量Q2=11.5L/minとなる。冷媒流路2の全体の圧力損失ΔPは、ΔP=22kPaとなる。
このように、図10に示した本実施形態では、図9に示した比較例と同じように経路20aと経路20bとで発熱体Mの負荷が変動した場合でも、冷媒分配量の変動が抑制される。特に、図9に示した比較例では、負荷100%の第1熱交換部21aへの冷媒流量Q1が2L/minとなるのに対して、図10に示した本実施形態では冷媒流量Q1が9.5L/minとなるので、熱量の大きい第1熱交換部21aにおける冷却能力の不足が緩和される。図10の例において、第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bの各々に分配される冷媒5の流量差|Q1-Q2|は、3L/minであり、入口開口22における冷媒流量(20L/min)の15%に収まる。説明は省略するが、第1熱交換部21aの負荷と第2熱交換部21bの負荷とが逆転した場合にも、流量Q1と流量Q2との関係が逆になるだけで同様の範囲に収まる。実際の冷却装置100の設計では、抵抗体30の流路抵抗を可変パラメータとして、図10のケースにおいて流量Q1および流量Q2の差が予め設定された範囲内に収まるように、抵抗体30の流路抵抗が決定される。
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態による冷却装置100では、上記のように、冷媒5が気化する熱交換部21の手前の、分岐部23aとの間の位置で、抵抗体30により、ガス率が増大する前の冷媒5の流路抵抗を予め増大させておくことができる。すなわち、それぞれの熱交換部21の手前に設けた抵抗体30により圧力損失を予め大きくすることにより、図10に示したように、抵抗体30による圧力損失によって、各熱交換部21における圧力損失(ΔP1、ΔP2)の差異が各熱交換部21への冷媒分配量(流量Q1、流量Q2)に及ぼす影響を、相対的に小さくすることができる。その結果、分岐した流路内での冷媒5の気化熱を利用して複数の発熱体Mを冷却する冷却装置100において、発熱体Mの負荷が変動した場合でも冷媒分配量の変動を抑制することができる。
また、抵抗体30は、排出路25には設けられずに分配路23に設けられており、各熱交換部21におけるガス率の相違により圧力損失(ΔP1、ΔP2)の差が生じる前の上流側(分配路23)にのみ抵抗体30が配置されるので、効果的に冷媒分配量(流量Q1、流量Q2)の変動を抑制することができる。
また、抵抗体30は、分配路23において、発熱体Mとの熱交換に伴う熱交換部21からの熱伝導の影響を受けないように熱交換部21から離間した位置に配置されているので、抵抗体30の配置位置において熱交換部21からの熱伝導によって冷媒5が気化することが抑制される。そのため、発熱体Mの熱の影響を受ける前段階の位置で流路抵抗(圧力損失)を増大させることができる。
また、抵抗体30は、分配路23において熱交換部21よりも分岐部23aに近い位置に配置されているので、抵抗体30を熱交換部21から相対的に離れた位置に配置できる。その結果、より確実に、発熱体Mの熱によってガス率(圧力損失)に差異が生じる前段階の位置でそれぞれの熱交換部21への流路抵抗(圧力損失)を増大させることができる。
また、第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bの一方における圧力損失が最大となり、第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bの他方における圧力損失が最小となる場合に、第1熱交換部21aおよび第2熱交換部21bの各々に分配される冷媒5の流量差が予め設定された範囲内に収まるように、設置位置における冷媒流路2の流路抵抗を増大させるように、抵抗体30が設けられるので、第1熱交換部21aと第2熱交換部21bとで負荷が最大限相違し、圧力損失の差が最大となる場合でも、冷媒5の分配量を予め設定した範囲内に収めることができる。したがって、発熱体Mの熱負荷が最大限変動した場合にも対応可能な冷却装置100の性能を確保できる。
また、抵抗体30は、同一条件下で熱交換部21の第1フィン21cよりも流路抵抗を増大させるように構成されているので、たとえば分配路23にも第1フィン21cを設けることにより流路抵抗を増大させる場合と異なり、抵抗体30によって流路抵抗を効果的に増大させることができる。そのため、冷媒流通方向(X方向)における抵抗体の長さL1を抑制できる。その結果、冷媒流路2の流路長が不必要に増大することを抑制できるので、流路長の増大により冷却装置100が大型化することを抑制できる。
また、抵抗体30は、冷媒5の流通方向と交差する方向(Y方向)に向けて設けられ、かつ、冷媒5が流通方向に通過可能な第2フィン31により構成されているので、冷媒5を通過可能としつつ、冷媒5を遮るように冷媒5の流通方向と交差する方向(通常と異なる方向)に向けた第2フィン31によって、流路抵抗を効果的に増大させることができる。また、フィンは、熱交換部21にも設けられる部材であるため、抵抗体30として専用の部材を設ける必要がなく装置構成を簡素化できる。
また、抵抗体30を構成する第2フィン31が、オフセットフィン40cを含むので、短距離でも効果的に流路抵抗を増大させることが可能な抵抗体30を構成することができる。また、上述の通り、オフセットフィン40cには、オフセット量Osやフィン部41の長さL2において多様な種類があるので、これらを利用することによって冷媒流路2に適した流路抵抗の抵抗体30を容易に得ることができる。なお、上述の通り、第2フィン31がパーフォレートフィン40bを含む場合でも、同様の効果が得られる。
また、本体部1が、冷媒流路2を区画する壁部13と、設置面11を構成する板部材14と、冷媒流路2内に配置された抵抗体30とがろう付けにより一体化された構造を有するので、ろう付けにより、冷媒流路2と抵抗体30とを一括して確実に接合することができる。一方、ろう付けでは、ろう材を溶融させて部材を接合するため、たとえば抵抗体30として、微小孔が形成されたオリフィス板や、微小隙間が形成されたブロック体などを用いる場合、溶けたろう材によって目詰まりを起こさないようにする必要があり製造難易度が増大する。これに対して、第2フィン31により構成される抵抗体30では、ろう付けにより接合された冷却装置にフィンが多く用いられている実績があり、目詰まりなどを生じさせることなく接合させることが容易である。そのため、第2フィン31により構成される抵抗体30では、ろう付けによる一括接合を行う場合でも、目詰まりの発生や流路抵抗の設計値からの乖離を生じることなく容易に抵抗体30を構成できるので、冷却装置100の性能と製造の容易性との両立を図ることができる。
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、発熱体Mが電力制御用スイッチング素子を備えたパワーモジュールである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、発熱体Mは特に限定されず、どのような物であってもよい。
また、上記実施形態では、設置面11に4つの配置領域12を設けて、冷媒流路2に4つの熱交換部21を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。配置領域12の数(つまり、設置面11に設置する発熱体Mの数)は、複数であれば2つ、3つ、または5つ以上でもよい。熱交換部21は、設置面11に設置される発熱体Mの数に応じた数だけ設ければよい。
また、上記実施形態では、本体部1の第1面(上面)を設置面11とした例を示したが、本発明はこれに限られない。本体部1の第2面(下面)が設置面11であってもよいし、第1面および第2面の両方が設置面11であってもよい。第1面および第2面の両方が設置面11である場合には、本体部1が第1面と隣接する冷媒流路2と、第2面と隣接する冷媒流路2を備えるように、本体部1の厚み方向に複数層の冷媒流路2が形成されてもよい。
また、上記実施形態では、本体部1のX1方向の側端面に入口開口22を設け、X2方向の側端面に出口開口24を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、本体部1の同一の側端面に入口開口22および出口開口24を設けてもよい。この場合、入口開口22から延びた冷媒流路2が入口開口22とは反対側の端部で逆向きに折り返して(Uターンして)、出口開口24に接続するようにしてもよい。入口開口22および出口開口24は、いずれも、本体部1のどの表面に開口していてもよく、たとえば板部材14を厚み方向に貫通して第1面または第2面に開口してもよい。
また、上記実施形態では、第1フィン21cの例として、プレーンフィン40a、パーフォレートフィン40bまたはオフセットフィン40cを示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1フィン21cとして、これら以外のルーバーフィンやヘリンボーンフィンを採用してもよい。
また、上記実施形態では、冷媒流路2が2つの支流路26に分岐した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、冷媒流路2が3つ以上に分岐してもよい。たとえば、4つの熱交換部21に対して、冷媒流路2が4つの支流路26に分岐してもよい。また、1つの分岐部23aにおいて4分岐するのではなく、最初の分岐部で2分岐した後、それぞれの支流路26に設けた第2の分岐部でさらに2分岐することにより、合計4分岐するような構成でもよい。
また、上記実施形態では、抵抗体30を、2つに分岐した冷媒流路2のそれぞれの支流路26に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、分岐した支流路26の全部に抵抗体30を設ける必要はなく、分岐した支流路26のうちの一部にのみ抵抗体30を設けてもよい。たとえば第1熱交換部21aの発熱体Mと第2熱交換部21bの発熱体Mとでパワーモジュールの稼働率が異なり、第1熱交換部21aの発熱体Mは、常時100%付近の負荷で稼働するのに対して、第2熱交換部21bの発熱体Mでは30%付近の負荷で稼働するような場合には、第2熱交換部21b側の支流路26に抵抗体30を設けるだけでもよい。
また、上記実施形態では、抵抗体30を分配路23に設けて排出路25には設けない例を示したが、本発明はこれに限られない。抵抗体を排出路25にも設けてもよい。このとき、たとえば分配路23に設けた抵抗体30による圧力損失の増分に比べて、排出路25に設けた抵抗体による圧力損失の増分が十分小さければ、排出路25に設けた抵抗体によって冷媒分配量の変動が増大する影響は、分配路23に設けた抵抗体30によって冷媒分配量の変動を抑制する効果に比べて十分小さくなるため、問題がない。
また、上記実施形態では、抵抗体30を分配路23において熱交換部21よりも分岐部23aに近い位置に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。抵抗体30は、少なくとも分配路23の分岐部23aと熱交換部21との間に設けられればよく、抵抗体30が分岐部23aよりも熱交換部21に近くてもよい。ただし、抵抗体30の設置位置において発熱体Mの熱により冷媒5が気化する場合、負荷の高い側の抵抗体30では圧力損失が相対的に増大し、負荷の低い側の抵抗体30では圧力損失が相対的に減少して、抵抗体30を設けたことによる冷媒分配量の変動抑制効果が小さくなる。そのため、少なくとも発熱体Mによる熱の影響を受けない程度に、熱交換部21から離れた位置に抵抗体30を配置することが好ましい。
また、上記実施形態では、冷媒5の流通方向(X方向)において、抵抗体30の長さL1は、熱交換部21の長さよりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。冷媒5の流通方向における抵抗体30の長さL1は、熱交換部21の長さと同じでもよいし、熱交換部21の長さよりも大きくてもよい。
また、上記実施形態では、抵抗体30を構成する第2フィン31がオフセットフィン40cである例を示したが、上記のように、第2フィン31がパーフォレートフィン40bであってもよい。
また、上記実施形態では、抵抗体30が、同一条件下で第1フィン21cよりも流路抵抗を増大させるように構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、抵抗体30の流路抵抗と第1フィン21cの流路抵抗とが同程度であってもよいし、第1フィン21cの方が流路抵抗が大きくてもよい。
また、上記実施形態では、本体部1が、壁部13と、板部材14と、抵抗体30とがろう付けにより一体化された構造を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本体部1は、ろう付け以外の方法(溶接、締結、固相拡散接合など)により各部材が一体化されていてもよい。
また、上記実施形態では、図2に示したように2分岐してX方向に直線状に延びた後、合流する形状の冷媒流路2を例示したが、本発明はこれに限られない。冷媒流路2の形状(本体部1内での経路)は任意であり、設置面11における発熱体M(配置領域12)の位置や、入口開口22および出口開口24の位置、本体部1の外形形状などに応じて適宜設定されればよい。
たとえば、図2の例では、2つの第1熱交換部21aおよび2つの第2熱交換部21bが、それぞれX方向に並んで、直線状の接続路27によって接続された例を示したが、各第1熱交換部21a(各第2熱交換部21b)が、X方向に並ばなくてもよい。また、たとえば図11に示すように、上流側の熱交換部21と下流側の熱交換部21とを接続する接続路27が非直線形状であってもよい。
図11では、接続路27が、2つの屈曲部71を有して曲がっている。図11のように、上流側の熱交換部21を通過した冷媒5が、曲がった接続路27を通過して下流側の熱交換部21に流入する場合、冷媒5が気液混相状態となっているため、遠心力により、屈曲部71の外周側に比重の大きい液相の冷媒5が集中し、内周側に気相の冷媒5が集中する。接続路27において気相と液相とが分かれた偏った状態で下流側の熱交換部21に流入すると、冷却能力が低下する可能性がある。そのため、曲がった接続路27を採用する場合には、図11のように、屈曲部71において接続路27を複数のチャネル72に分割する偏流抑制部73を設けるのが好ましい。偏流抑制部73は、たとえば冷媒5の流通方向に沿って延びるフィンであって、第2方向(B方向)へは冷媒5が流通しないプレーンフィン40a(図4参照)などにより構成するのが好ましい。これにより、屈曲部71では、気相と液相との偏りはそれぞれのフィン部41の間のチャネル72内で局所的に発生することになる。そのため、偏流抑制部73を設けずに接続路27の全体で偏りが生じる場合と比べて気相と液相との偏りを抑制できる。
さらに、図11のように曲がった接続路27に直線部74がある場合、直線部74は、フィンが設けられない空隙部とするか、冷媒5が第2方向(B方向)にも流通可能なフィン(すなわち、パーフォレートフィン40b(図5参照)またはオフセットフィン40c(図6参照))を設けることが好ましい。これにより、直線部74において冷媒5が流路幅方向にも流動可能となる。これにより、曲がった接続路27の外周側を通過する冷媒5と内周側を通過する冷媒5との間での経路長の相違に起因する偏流を抑制することができる。
なお、屈曲部71に偏流抑制部73を設ける構成は、図12に示すように分配路23の屈曲部75に適用してもよい。すなわち、入口開口22に気液混相状態の冷媒5が供給される場合、分配路23のそれぞれの屈曲部75に偏流抑制部73を設けてもよい。これにより、予め気液混相で流入した冷媒5が、分配路23において内周側の気相と外周側の液相とに偏って流れることを抑制できる。