以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るろ過装置の構成例を模式的に示す断面図である。実施形態1に係るろ過装置10は、極性溶媒72中に第1粒子(分離対象の粒子)71が分散されたスラリー(原液)70(対象処理液)から、第1粒子71を分離する装置である。具体的には、ろ過装置10は、ライフサイエンス分野や、下水処理、排水処理分野等に適用できる。ライフサイエンス分野では、培養細胞、微細藻類、細菌、バクテリア、ウイルス等の微生物体培養を行うバイオ産業や、培養微生物体が体外、体内に生産する酵素、タンパク質、多糖類、脂質等の利用、応用分野であるバイオ創薬や化粧品業界、又は、醸造、発酵、搾汁、飲料等を扱うビバレッジ産業に適用できる。下水処理、排水処理分野では、難ろ過性の微細バイオマス水系スラリーで、バイオマス粒子の分離に適用できる。あるいは、ろ過装置10は、表面帯電した微粒子が電気的反発作用で高分散したコロイド粒子系スラリーで、コロイド微粒子の濃縮回収用途に適用できる。
図1に示すように、実施形態1に係るろ過装置10は、上部筐体11と、蓋部12と、側部筐体13と、下部筐体14と、導体15と、を有する。ろ過装置10は、さらに、上部筐体11、側部筐体13及び下部筐体14で囲まれた内部空間に、第1ろ室30と、第1電極31と、第2電極32と、第3電極33と、ろ材34(図2参照)と、を有する。ろ過装置10は、さらに、第1電極31及び第2電極32に電気的に接続された、第1電源51と、第2電源52と、を有する。
具体的には、上部筐体11は、絶縁材料で形成された円柱状の部材である。側部筐体13は、絶縁材料で形成され、貫通孔を有する環状の部材である。上部筐体11の下端側の一部が側部筐体13の貫通孔に挿入される。下部筐体14は、絶縁材料で形成され、側部筐体13を支持する。蓋部12は、上部筐体11の上面を覆って設けられる。
第1電極31、第2電極32及びろ材34(図2参照)の外縁は、側部筐体13と下部筐体14との間に挟まれて固定される。第3電極33は、上部筐体11の下面(下部筐体14と対向する面)に、ボルト等の接続部材(図示しない)により固定され、側部筐体13の貫通孔の内部に位置する。また、導体15は、側部筐体13の周囲を囲むように設けられた環状の部材であり、側部筐体13と下部筐体14との間に設けられる。導体15の下端側は、第1電極31の外縁と接続される。なお、上部筐体11及び導体15は、環状の部材としているが、これに限定されるものではなく、多角形状等他の形状としてもよい。
上部筐体11と側部筐体13とは、ガイド部21aにより固定される。また、側部筐体13と下部筐体14と導体15とは、ボルト21b、21cにより固定される。これにより、各筐体の位置が固定され、第1電極31、第2電極32及びろ材34と、側部筐体13の内壁と、第3電極33とで囲まれた空間に第1ろ室30が形成される。また、各筐体間及び各電極間の接続部分には、それぞれOリング等の封止部材が設けられ、第1ろ室30が密閉して設けられる。また、上部筐体11は、下部筐体14との距離が調整可能に設けられている。これにより、ろ過装置10は、スラリー(原液)70(以下、対象処理液ということもある)の種類や量に応じて、第1ろ室30の体積を適切に設定できる。
上部筐体11には、スラリー供給通路11aと、排気通路11bと、貫通孔11cとが設けられる。スラリー供給通路11aの一端側は、上部筐体11の側面に開口し、スラリー供給部16に接続される。スラリー供給通路11aの他端側は、上部筐体11の下面に開口し、第3電極33の貫通孔33aと繋がって設けられる。スラリー供給バルブ17は、スラリー供給通路11aの内部に設けられた棒状部材17aを有し、棒状部材17aがスラリー供給通路11a内を上下方向に移動することで、貫通孔33aの開閉状態を切り替えることができる。
これにより、例えば、スラリー供給バルブ17の動作により貫通孔33aが開放状態の場合に、スラリー(原液)70は、スラリー供給部16、スラリー供給通路11a、第3電極33の貫通孔33aを介して第1ろ室30に供給される。また、スラリー供給バルブ17により貫通孔33aが閉じられた状態の場合には、スラリー(原液)70の第1ろ室30への供給が停止される。
排気通路11bの一端側は、上部筐体11の側面に開口し、エア排出部18に接続される。排気通路11bの他端側は、上部筐体11の下面に開口し、第3電極33の貫通孔33bと繋がって設けられる。エア排出用のバルブ19は、排気通路11bの内部に設けられた棒状部材19aを有し、棒状部材19aが排気通路11b内を上下方向に移動し、貫通孔33bにその先端が挿抜されることで、貫通孔33bの開閉状態を切り替えることができる。
第1ろ室30にスラリー(原液)70が供給される際に、エア排出用のバルブ19は、貫通孔33bを開放状態にする。これにより、第1ろ室30内の空気は、貫通孔33b、排気通路11b及びエア排出部18を介して外部に排気される。エア排出部18にはエア排出弁18aが接続されている。エア排出弁18aは、例えばフロート弁であり、第1ろ室30内の所定量の空気が排気されるとエア排出弁18aが閉じられるように設けられている。第1ろ室30内の排気が完了した後、エア排出用のバルブ19は貫通孔33bを閉じる。これにより、第1ろ室30内に充填されたスラリー(原液)70には、外部の加圧ポンプ等により、スラリー供給部16を介して所定の圧力(P)が加えられる。ここで、所定の圧力とは、内部の加圧が、例えば0.005MPaから0.5MPa、好適には0.01MPaから0.2MPa、より好ましくは0.05MPaから0.2MPaとするのがよい。
貫通孔11cの一端側は上部筐体11の上面に開口する。貫通孔11cの他端側は上部筐体11の下面に開口し、第3電極33の凹部33cと繋がって設けられる。貫通孔11cには、接続導体56が挿入され、凹部33cで接続導体56と第3電極33とが接続される。これにより、第3電極33は、接続導体56を介して基準電位GNDと電気的に接続される。基準電位GNDは、例えばグランド電位である。ただし、これに限定されず、基準電位GNDは、グランド電位とは異なる所定の固定された電位であってもよい。
第1電極31は、導体15及び接続導体54を介して第1電源51の第2端子51bと電気的に接続される。また、第1電極31は、導体15及び接続導体55aを介して第2電源52の第1端子52aと電気的に接続される。
下部筐体14には、凹状の第2ろ室35と、貫通孔14a、14bと、接続孔14cとが設けられている。第2ろ室35は、下部筐体14の上面で、第1ろ室30と重なる位置に設けられる。貫通孔14aは、第2ろ室35と排出部22とを繋ぐ。第1ろ室30に供給されたスラリー(原液)70は、各電極の駆動により第1粒子71が分離され、第1粒子71が分離された極性溶媒72(ろ液75)は、第1電極31、ろ材34(図2参照)及び第2電極32を通過して、第2ろ室35に流れる。第1粒子71が分離された極性溶媒72を含むろ液75は、第2ろ室35の排出部22から貫通孔14bを介して外部の貯留タンクに溜められる。
接続孔14cの一端側は、下部筐体14の上面に開口し、第2電極32の外縁は、接続孔14cの開口部14dを覆って設けられる。また、接続孔14cの他端側は、下部筐体14の側面に開口する。接続孔14cには接続導体55bが挿入され、接続導体55bと第2電極32とが接続される。これにより、第2電極32は、第2電源52の第2端子52bと電気的に接続される。
なお、図1に示すろ過装置10の構成は、あくまで一例であり、第1電極31、第2電極32及びろ材34(図2参照)と、第3電極33とで挟まれた第1ろ室30を形成できればどのような構成であってもよい。第1電極31、第2電極32及び第3電極33は、例えば、チタン合金やアルマイト処理されたアルミニウム合金等が用いられるが、これらに限定されるものではない。
次に、図2から図4を参照して、ろ過装置10の動作について説明する。図2は、実施形態1に係るろ過装置の動作を説明するための説明図である。図2では、説明を分かりやすくするために、第1電極31、第2電極32、第3電極33及びろ材34と、第1ろ室30及び第2ろ室35との配置関係を模式的に示している。
図2に示すように、第1電極31及び第2電極32は、例えば開口を有するメッシュ状の電極である。具体的には、第1電極31は、複数の導電細線31aを有し、複数の導電細線31aの間に複数の第1開口31bが設けられる。第2電極32は、複数の導電細線32aを有し、複数の導電細線32aの間に複数の第2開口32bが設けられる。第2電極32は、ろ材34を介して第1電極31の一方の面(下面)と対向して設けられる。言い換えると、ろ材34は、第1電極31と第2電極32との間に設けられる。第1電極31及び第2電極32は、ろ材34と直接、接して設けられる。複数の導電細線31a及び複数の導電細線32aは、金属でもよいし炭素繊維でもよい。なお、第1電極31及び第2電極32は、ろ材34と直接、接する構成に限定されず、ろ材34との間に隙間を有して配置されていてもよい。
ろ材34は、ろ過膜34aに複数の目開き34bが設けられて形成される。ろ材34は、例えば、精密ろ過膜(MF膜(Microfiltration Membrane))、限外ろ過膜(UF膜(Ultrafiltration Membrane))等が用いられる。実施形態1では、ろ材34は、樹脂材料等の絶縁材料で形成されている。なお、図2では、第1電極31の第1開口31b、第2電極32の第2開口32b及びろ材34の目開き34bは同じ大きさで示しているが、あくまで説明のために模式的に示したものであり、第1開口31b、第2開口32b及び目開き34bの大きさは異なっていてもよい。
図3は、第1電極、ろ材及び第2電極の構成を模式的に示す断面図である。図3に示すように、ろ材34に設けられた目開き34bの径D3は、第1電極31の第1開口31bの径D1よりも小さく、かつ、第2電極32の第2開口32bの径D2よりも小さい。言い換えると、複数の導電細線31aの配置ピッチと、複数の導電細線32aの配置ピッチと、ろ過膜34aの配置ピッチは、互いに異なって設けられる。例えば、第1電極31の第1開口31bの径D1は、0.5μm以上500μm以下、例えば70μm程度である。第2電極32の第2開口32bの径D2は、0.5μm以上1000μm以下、例えば100μm程度である。ろ材34に設けられた複数の目開き34bの径D3は、0.1μm以上100μm以下、より好ましくは1μm以上7μm以下程度である。
また、第1電極31の第1開口31bの径D1は、第2電極32の第2開口32bの径D2よりも小さい。ただしこれに限定されず、第1電極31の第1開口31bの径D1は、第2電極32の第2開口32bの径D2と同じ大きさで形成されてもよい。このような構成により、少なくとも第1開口31b及び第2開口32bと重なる領域で、ろ材34の目開き34bは、複数の導電細線31a及び複数の導電細線32aと非重畳に設けられる。また、第1電極31と第2電極32との間の距離は、ろ材34の厚さで規定される。
図2に戻って、第3電極33は、板状の部材であり、第1ろ室30を挟んで第1電極31の他方の面(上面)と対向して設けられる。なお、図2では、第3電極33の貫通孔33a、33b及び凹部33c(図1参照)は図示を省略している。
第1ろ室30は、第1電極31の他方の面(上面)と接して設けられる。第1ろ室30には、上述したように、分離対象の第1粒子71と極性溶媒72とを含むスラリー(原液)70が供給される。第1粒子71は、例えば、バイオマス粒子やコロイド粒子であり、粒子表面がマイナスに帯電している。具体的には、第1粒子71は、クロレラ、微細藻類スピルリナ、コロイダルシリカ、大腸菌、下水活性汚泥等である。第1粒子71の径は、適用される技術分野、分離対象の種類に応じて異なるが、5nm以上2000μm以下、例えば20nm以上500μm以下程度である。
第1粒子71が分散される極性溶媒72は、水であり、水分子73はプラスに帯電している。これにより、スラリー(原液)70は全体として電気的に平衡状態となっている。極性溶媒72は、水に限られず、例えばアルコール等でもよい。つまり、極性溶媒72は、極性溶媒であればよい。
また、図2に示すように、スラリー(原液)70は、例えば色素タンパク質等の第2粒子74を含む。第2粒子74は、第1粒子71と同じ極性(マイナス)に帯電しており、第1粒子71よりも小さい粒径を有する。第2粒子74は、例えば10nm以上300nm以下、例えば、30nm程度である。なお、第2粒子74は、スラリー70中には存在しない場合もある。
第1電源51は、第1電極31に、第1粒子71の極性と同じ極性の第1電位V1を供給する。第1電位V1は、例えば-60Vである。第2電源52は、第2電極32に、第1粒子71の極性と同じ極性であって、第1電位V1の絶対値よりも大きい絶対値の第2電位V2を供給する。第2電位V2は、例えば-70Vである。第3電極33は、基準電位GNDに接続される。基準電位GNDは、上述したようにグランド電位であり、理想的には0Vである。なお、第3電極33に供給される基準電位GNDは、0Vに限定されず、所定の固定された電位であってもよい。第1電位V1及び第2電位V2は、絶対値で1mV以上1000V以下の範囲で設定することができる。
図4は、実施形態1に係るろ過装置を示す電気的等価回路図である。図4に示すように、第1電源51は定電圧源であり、第2電源52は定電流源である。第1電極31と第2電極32との間に抵抗成分R1と容量成分Cとが並列に接続される。抵抗成分R1及び容量成分Cは、多数の目開き34bが設けられたろ材34により等価的に表される成分である。また、第1電極31と第3電極33との間に抵抗成分R2が接続される。抵抗成分R2は、第1ろ室30のスラリー(原液)70により等価的に表される抵抗成分である。
第2電源52は、定電圧電源であっても、定電流電源であってもよい。本実施形態1では、第2電源52は、定電流源であるので、ろ過装置10のろ過の状態に応じて、すなわち、ろ材34の抵抗成分R1及び第1ろ室30の抵抗成分R2の変動に応じて、第2電位V2は変化する。ただし、第2電位V2は第1粒子71の極性と同じ極性であって、第1電位V1の絶対値よりも大きい値を維持している。
図2に戻って、第1ろ室30にスラリー(原液)70が供給されると、クーロンの法則に基づいて、マイナスに帯電した第1粒子71と第1電極31との間には斥力が発生する。
ここで、クーロンの法則は、下記の式(1)で示される。
F=k×(q1×q2/s2) ・・・ (1)
ここで、kは定数であり、k=4πεで表される。q1及びq2は、電荷であり、sは電荷間の距離である。すなわち、距離sが小さいほど第1粒子71には大きいクーロン力Fが作用する。具体的には、マイナスに帯電した第1電極31に近い位置の第1粒子71には、より強力な斥力が発生する。マイナスに帯電した第1粒子71に発生する斥力F1は、矢印に示す方向、すなわち第1電極31から離れ第3電極33に近づく方向に作用する。マイナスに帯電した第1粒子71は、電気泳動により第3電極33側に移動する。
これにより、ろ過装置10は、第1粒子71が第1電極31の表面及びろ材34の表面に堆積してケーキ層が形成されることを抑制することができる。つまり、ろ材34の目開き34bのろ過抵抗が増大することを抑制することができる。
また、プラスに帯電した水分子73は、第1電極31との間に引力が発生する。プラスに帯電した水分子73に作用する引力F2は、矢印に示す方向、すなわち第3電極33から第1電極31に向かう方向に作用する。プラスに帯電した水分子73は、第1電極31側に移動する。この際、第1電極31と第2電極32との間の電位差により、ろ材34を厚さ方向に貫通するように、第1電極31から第2電極32に向かうバリアの電界(電界バリアの電界E)(図2中、一点鎖線)が形成されている。
第1電極31側に移動した水分子73は、電界により力を受けて、第2電極32側に引っ張られてろ材34を通過する。水分子73の移動に伴って、周囲の水分子73も第2電極32側に引きずられて、電気浸透流が形成される。これにより、プラスに帯電した水分子73を含む極性溶媒72(ろ液75)は、第2ろ室35に流れる。上述したように、第1粒子71は、電気泳動により第1電極31から引き離されており、第1粒子71が分離された極性溶媒72(ろ液75)が排出されることで、第1ろ室30内のスラリー(原液)70の第1粒子71の濃度を高めることができる。
このように、ろ過装置10は、第1電極31と第3電極33との間で、第1粒子71をクーロン力F(第1粒子71と第1電極31との間に発生する斥力)により移動させる電気泳動と、第1電極31と第2電極32との間の電界により水分子73を移動させてろ材34を通過させる電気浸透とを組み合わせることで、スラリー(原液)70の第1粒子71を分離できる。また、第1電極31は、電気泳動の電極と、電気浸透の電極とを兼用する。これにより、単純にスラリー(原液)70に圧力を加え、ろ材34の目開き34bよりも大きい粒径の第1粒子71を分離する方法に比べて、第1電極31の表面及びろ材34の表面にケーキ層が形成されることを抑制することができ、ろ過速度を数倍から10倍以上に向上させることができる。
結果的に、本電界ろ過分離技術によれば、単純にスラリー(原液)70に圧力を加えた方法に比べて、第1ろ室30内でのスラリー(原液)70のマイナスに帯電した第1粒子71の濃縮度を高めることができる。また、第1電極31の表面及びろ材34の表面にケーキ層が形成されることが抑制されるので、ろ材34の清掃、交換の頻度を少なくすることができ、効率よくスラリー(原液)70のろ過を行うことができる。あるいは、単純にスラリー(原液)70に圧力を加えてろ過を行う場合に比べて、第1ろ室30の体積を小さくし、ろ材34の面積を小さくしても、単純にスラリー(原液)70に圧力を加える場合と同程度のろ過速度を実現できる。すなわち、ろ過装置10は、小型化を図ることができる。
なお、第1ろ室30内で第1粒子71の濃度が高められた濃縮スラリーは、第1ろ室30より別途適宜排出される。
また、第1電極31と第2電極32との間に形成される電界を制御することで、ろ材34を通過する粒子レベル(粒子径)も制御することができる。例えば、第1電極31に第1電位V1=-60Vを印加し、第2電極32に第2電位V2=-70Vを印加することで、第1電極31と第2電極32との間にバリアの電界E(図2参照)が形成され、ろ材34の目開き34bよりも小さい粒径の第2粒子74が、ろ材34を通過することを抑制できる。
つまり、精密ろ過膜(MF膜(Microfiltration Membrane))相当のろ材34を用いた場合であっても、第1電源51、第2電源52及び基準電位GNDでの各電極間の電界制御により、限外ろ過膜(UF膜)、あるいはナノろ過膜(NF膜)相当まで、分離対象の粒子径を変更することができる。限外ろ過膜(UF膜)は、開口の径が10nm以上100nm以下程度のろ過膜である。ナノろ過膜(NF膜)は、開口の径が1nm以上10nm以下程度のろ過膜である。
なお、上述したろ過装置10の構成はあくまで一例であり、適宜変更することができる。例えば、第1電極31、ろ材34及び第2電極32が積層されて形成される負極ろ板と、第3電極33とは、平行平板状に対向配置される。これに限定されず、第1電極31、ろ材34及び第2電極32が積層されて形成される負極ろ板と、第3電極33とは、それぞれ曲面を有して形成されていてもよい。負極ろ板及び第3電極33の形状や配置は、ろ過装置10の形状、構造に応じて適宜変更できる。また、第1ろ室30に供給される対象処理液であるスラリー(原液)70の濃度は、特に限定されず、ろ過装置10が適用される分野に応じて変更できる。
実施形態1では、第1ろ室30の内部圧力は、加圧されており、第2ろ室35の内部圧力よりも大きい。他の態様としては、第2ろ室35の内部圧力を真空引きする等により陰圧することで、第1ろ室30の内部圧力が、第2ろ室35の内部圧力よりも相対的に大きくするようにしてもよい。
また、第1電位V1及び第2電位V2は、分離対象の第1粒子71の種類や、要求されるろ過特性に応じて適宜変更することが好ましい。
図5は、クロレラの固液分離における、ろ室内濃縮濃度とろ過速度との関係を示すグラフである。図5中、符号黒丸は実施例1、符号黒四角は実施例2、符号白三角は比較例1、符号白四角は比較例2を示す。
図5に示すグラフ1では、横軸がろ室内濃縮濃度(wt%)であり、縦軸がろ過速度(a.u.)である。ろ過速度は、時間単位あたりのろ材34を通過させることができる極性溶媒72(ろ液75)の量(重さ)であり、図5では、比較例1のろ過速度A3で規格化した値を示している。ろ室内濃縮濃度は、第1ろ室30でのスラリー(原液)70であるクロレラ培養液に対する第1粒子71の質量パーセント濃度を示している。
図5に示すグラフ1では、分離対象の第1粒子71がクロレラでありマイナスに帯電しており、粒子径は例えば2μm以上10μm以下程度である。実施例1、2は、上述したように、第1電極31に第1電位V1=-60Vを印加し、第2電極32に第2電位V2=-70Vを印加し、第3電極33を基準電位GNDとした場合を示す。実施例1では、第1ろ室30内のスラリー(原液)70に、0.1MPaの圧力を加えている。実施例2では、第1ろ室30内のスラリー(原液)70に、0.02MPaの圧力を加えている。すなわち、実施例2では、実施例1よりも小さい加圧でスラリー(原液)70のろ過を実施している。
比較例1は、第1電極31及び第2電極32にそれぞれ第1電位V1及び第2電位V2を供給せず、0.1MPaの加圧のみでスラリー(原液)70のろ過を実施している。比較例2は、第1電極31に第1電位V1=-60Vを印加し、第2電極32に第2電位V2を印加していない。
また、比較例2は、0.1MPaの加圧を行っている。すなわち、比較例2は、第1電極31と第3電極33との間での電気泳動を行い、第1電極31と第2電極32との間での電気浸透は行っていない。
図5に示すように、実施例1、2及び比較例1、2のいずれも、ろ室内濃縮濃度が大きくなるにしたがって、ろ過速度が小さくなる傾向を示す。例えば、ろ室内濃縮濃度を7wt%までスラリー(原液)70を濃縮する場合、実施例1でのろ過速度A1は、比較例1のろ過速度A3に比べて、13.6倍となることが示された。同様に実施例2でのろ過速度A2は、比較例1のろ過速度A3に比べて、3.9倍となることが示された。
一方、比較例2でのろ過速度A4は、比較例1のろ過速度A3に比べて0.16倍に小さくなる。すなわち、比較例2のように、第1電極31に第1電位V1を供給して電気泳動のみ行い、第1電極31と第2電極32との間で電気浸透を行わない場合には、良好にろ過できないことが示された。
また、図5に示すように、実施例1、2では、比較例1、2に比べて、ろ室内濃縮濃度をより大きくすることができる。比較例1では、ろ室内濃縮濃度は最大で11wt%程度であるのに対し、実施例1では、ろ室内濃縮濃度は16wt%以上まで濃縮できることが示された。以上のように、電気泳動と電気浸透とを組み合わせて第1粒子71の分離を行った実施例1、2では、比較例1、2に比べ、ろ過速度を向上させることができ、かつ、最大ろ室内濃縮濃度を向上させることが可能であることが示された。
図6は、下水活性汚泥の固液分離における、ろ室内濃縮濃度とろ過速度との関係を示すグラフである。図6に示すグラフ2では、分離対象のマイナスに帯電している第1粒子71が下水活性汚泥に含まれる微細バイオマス粒子である。また、図6に示すグラフ2の縦軸は、比較例3のろ過速度B4で規格化したろ過速度を示している。図6中、符号黒丸は実施例3、符号黒四角は実施例4、符号白三角は実施例5、符号白四角は比較例3を示す。
実施例3では、第1電極31に第1電位V1=-60Vを印加し、第1電極31と第2電極32との間に定電流0.3Aを流している。
実施例4では、第1電極31に第1電位V1=-60Vを印加し、第1電極31と第2電極32との間に定電流0.225Aを流している。
実施例5では、第1電極31に第1電位V1=-60Vを印加し、第1電極31と第2電極32との間に定電流0.15Aを流している。つまり、第2電極32に印加される第2電位V2の絶対値は、実施例3、実施例4、実施例5の順に小さくなる。
比較例3は、第1電極31及び第2電極32に第1電位V1及び第2電位V2を供給せず、0.1MPaの加圧のみでスラリー(原液)70のろ過を実施している。また、図6のグラフ2において、二点鎖線C1は、比較としての膜分離活性汚泥法でろ過した場合の最大濃縮濃度である1wt%を示している。また、二点鎖線C2は、比較としての遠心分離機等による機械濃縮法でろ過した場合の最大濃縮濃度である3.5wt%を示している。
例えば、ろ室内の第1粒子(微細バイオマス粒子)71の濃縮濃度を2.5wt%となるまでスラリー(原液)70である活性汚泥を濃縮する場合、実施例3でのろ過速度B1は、比較例3のろ過速度B4に比べて、15.7倍となることが示された。同様に、実施例4でのろ過速度B2は、比較例3のろ過速度B4に比べて、9.6倍となることが示された。実施例5でのろ過速度B3は、比較例3のろ過速度B4に比べて、5.9倍となることが示された。
また、図6に示すように、実施例3から実施例5では、いずれも膜分離活性汚泥法でろ過した場合の最大濃縮濃度1wt%及び機械濃縮法でろ過した場合の最大濃縮濃度3.5wt%を大きく超えてスラリー(原液)70である活性汚泥を濃縮することができる。実施例3では、ろ室内濃縮濃度6.5wt%以上まで濃縮でき、実施例4、5では、ろ室内濃縮濃度5wt%程度まで濃縮できることが示された。
以上説明したように、本実施形態1のろ過装置10は、複数の第1開口31bが設けられた第1電極31と、複数の第2開口32bが設けられ、第1電極31の一方の面と対向して設けられた第2電極32と、複数の目開き34bが設けられ、第1電極31と第2電極32との間に設けられたろ材34と、第1電極31の他方の面と接して設けられ、分離対象の第1粒子71と極性溶媒72とを含むスラリー(原液)70(対象処理液)が供給される第1ろ室30と、第1ろ室30を挟んで第1電極31と対向する第3電極33と、第1電極31に、第1粒子71の極性と同じ極性の第1電位V1を供給する第1電源51と、第2電極32に、第1粒子71の極性と同じ極性の第2電位V2を供給する第2電源52と、を有する。第3電極33は、基準電位GNDに接続される。
これによれば、ろ過装置10では、第1電極31と第1粒子71との間で発生する斥力(クーロン力F)により第1粒子71が第1電極31から離れる方向に電気泳動流により移動する。このような電気泳動により、第1電極31の表面及びろ材34の表面にケーキ層が形成されることを抑制することができる。また、第1電極31と第2電極32との間の電界により水分子73を移動させてろ材34を通過させる電気浸透により、第1粒子71を分離でき、第1ろ室30内でのスラリー(原液)70の第1粒子71の濃縮度を高めることができる。これにより、単純にスラリー(原液)70に圧力を加え、ろ材34の目開き34bよりも大きい粒径の第1粒子71を分離する方法に比べて、ろ過速度を数倍から10倍以上に向上させることができる。また、第3電極33は、基準電位GNDに接続されるので、第1電極31、第2電極32、第3電極33のそれぞれに電源を設ける場合に比べろ過装置10の小型化を図ることができる。
また、ろ過装置10において、第2電位V2の絶対値は第1電位V1の絶対値よりも大きく、第1電位V1と基準電位GNDとの電位差は、第1電位V1と第2電位V2との電位差よりも大きい。
これによれば、第1電極31と第2電極32との距離に比べ、ろ材34を挟んで対向する第1電極31と第3電極33との距離が大きい場合でも、電気泳動により、良好に第1粒子71を第1電極31から離れる方向に移動させることができる。
また、ろ過装置10において、第1電極31の表面に垂直な方向で、第2電極32、ろ材34、第1電極31、第1ろ室30、第3電極33の順に積層され、第1電極31と第2電極32との間の距離は、第1電極31と第3電極33との間の距離よりも小さい。
これによれば、第1電極31と第2電極32との間で形成される電界強度を高めることができ、電気浸透により水分子73を移動させて、第1電極31と第2電極32との間のろ材34を良好に通過させることができる。
また、ろ過装置10において、第1電源51は、定電圧源であり、第2電源52は、定電流源である。
これによれば、第1電源51により供給される第1電位V1により、第1電極31と第1粒子71との間に発生するクーロン力Fを規定することができる。また、第1電源51により供給される第1電位V1及びに第2電源52により供給される電流により、第1電極31と第2電極32との間で形成される電界強度が規定され、良好に電気浸透を行うことができる。
また、ろ過装置10において、目開き34bの大きさ(径D3)は、第1開口31bの径D1及び第2開口32bの径D2よりも小さい。
これによれば、ろ材34の目開き34bは、少なくとも第1開口31b及び第2開口32bと重畳する領域で、第1電極31及び第2電極32の導電細線31a、32aと非重畳となるように設けられる。これにより、水分子73は、電気浸透により良好にろ材34の目開き34bを通過することができる。
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係るろ過装置の構成例を模式的に示す断面図である。図8は、実施形態2に係るろ過装置の動作を説明するための説明図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図7に示すように、実施形態2に係るろ過装置10は、上部筐体11と、蓋部12と、側部筐体13と、下部筐体14と、導体15と、を有する。ろ過装置10は、さらに、上部筐体11、側部筐体13及び下部筐体14で囲まれた内部空間に、第1ろ室30と、第1電極31と、第2電極32と、第3電極33と、ろ材34(図8参照)と、を有する。ろ過装置10は、さらに、第1電極31、第2電極32及び第3電極33に電気的に接続された、第1電源51と、第2電源52と、第3電源53と、を有する。
貫通孔11cの一端側は上部筐体11の上面に開口する。貫通孔11cの他端側は上部筐体11の下面に開口し、第3電極33の凹部33cと繋がって設けられる。貫通孔11cには、接続導体56が挿入され、凹部33cで接続導体56と第3電極33とが接続される。これにより、第3電極33は、接続導体56を介して第3電源53の第1端子53aと電気的に接続される。
第1電極31は、導体15及び接続導体54を介して第1電源51の第2端子51bと電気的に接続される。また、第1電極31は、導体15及び接続導体55aを介して第2電源52の第1端子52aと電気的に接続される。第3電源53の第2端子53b及び第1電源51の第1端子51aは、基準電位GNDに接続される。基準電位GNDは、例えばグランド電位である。ただし、これに限定されず、基準電位GNDは、所定の固定された電位であってもよい。
図9は、実施形態2に係るろ過装置を示す電気的等価回路図である。図9に示すように、第1電源51及び第3電源53は定電圧源であり、第2電源52は定電流源である。第1電極31と第2電極32との間に抵抗成分R1と容量成分Cとが並列に接続される。抵抗成分R1及び容量成分Cは、多数の目開き34bが設けられたろ材34により等価的に表される成分である。また、第1電極31と第3電極33との間に抵抗成分R2が接続される。抵抗成分R2は、第1ろ室30のスラリー(原液)70により等価的に表される抵抗成分である。
第2電源52は、定電圧電源であっても、定電流電源であってもよい。実施形態2では、第2電源52は、定電流源であるので、ろ過装置10のろ過の状態に応じて、すなわち、ろ材34の抵抗成分R1及び第1ろ室30の抵抗成分R2の変動に応じて、第2電位V2は変化する。ただし、第2電位V2は第1粒子71の極性と同じ極性であって、第1電位V1の絶対値よりも大きい値を維持している。
図8に戻って、第1ろ室30にスラリー(原液)70が供給されると、上述した式(1)で示される、クーロンの法則に基づいて、マイナスに帯電した第1粒子71と第1電極31との間には斥力が発生する。また、マイナスに帯電した第1粒子71と第3電極33との間には引力が発生する。
具体的には、第1電極31に近い位置の第1粒子71には、より強力な斥力(f1)が発生し、第3電極33に近い位置の第1粒子71には、より強力な引力(f2)が発生する。マイナスに帯電した第1粒子71に発生する斥力(f1)及び引力(f2)のベクトルの総和F3は、矢印に示す方向、すなわち第1電極31から離れ第3電極33に近づく方向に作用する。マイナスに帯電した第1粒子71は、電気泳動により第3電極33側に移動する。
これにより、ろ過装置10は、第1粒子71が第1電極31の表面及びろ材34の表面に堆積してケーキ層が形成されることを抑制することができる。つまり、ろ材34の目開き34bのろ過抵抗が増大することを抑制することができる。
また、プラスに帯電した水分子73は、第1電極31との間に引力が発生する。プラスに帯電した水分子73に作用する引力F2は、矢印に示す方向、すなわち第3電極33から第1電極31に向かう方向に作用する。プラスに帯電した水分子73は、第1電極31側に移動する。この際、第1電極31と第2電極32との間の電位差により、ろ材34を厚さ方向に貫通するように、第1電極31から第2電極32に向かう電界が形成されている。
第1電極31側に移動した水分子73は、電界により力を受けて、第2電極32側に引っ張られてろ材34を通過する。プラスに帯電した水分子73の移動に伴って、帯電していない水分子も第2電極32側に引きずられて、電気浸透流が形成される。これにより、プラスに帯電した水分子73を含む極性溶媒72(ろ液75)は、第2ろ室35に流れる。上述したように、第1粒子71は、電気泳動により第1電極31から引き離され、第3電極33側に移動しており、第1粒子71が分離された極性溶媒72(ろ液75)が第2ろ室35側に排出されることで、第1ろ室30内のスラリー(原液)70の第1粒子71の濃度を高めることができる。
このように、ろ過装置10は、第1電極31と第3電極33との間で、第1粒子71をクーロン力F(第1粒子71と第1電極31との間に発生する斥力)により移動させる電気泳動と、第1電極31と第2電極32との間の電界により水分子73を移動させてろ材34を通過させる電気浸透とを組み合わせることで、第1粒子71を分離できる。また、第1電極31は、電気泳動の電極と、電気浸透の電極とを兼用する。これにより、単純にスラリー(原液)70に圧力を加え、ろ材34の目開き34bよりも大きい粒径の第1粒子71を分離する方法に比べて、第1電極31の表面及びろ材34の表面にケーキ層が形成されることを抑制することができ、ろ過速度を数倍から10倍以上に向上させることができる。
結果的に、単純にスラリー(原液)70に圧力を加えた方法に比べて、第1ろ室30内でのスラリー(原液)70の第1粒子71の濃縮度を高めることができる。また、第1電極31の表面及びろ材34の表面に第1粒子71のケーキ層が形成されることが抑制されるので、ろ材34の清掃、交換の頻度を少なくすることができ、効率よくスラリー(原液)70のろ過を行うことができる。あるいは、単純にスラリー(原液)70に圧力を加えてろ過を行う場合に比べて、第1ろ室30の体積を小さくし、ろ材34の面積を小さくしても、単純にスラリー(原液)70に圧力を加える場合と同程度のろ過速度を実現できる。すなわち、ろ過装置10は、小型化を図ることができる。
また、第1電極31と第2電極32との間に形成される電界Eを制御することで、ろ材34を通過する粒子レベル(粒子径)も制御することができる。例えば、第1電極31に第1電位V1=-30Vを印加し、第2電極32に第2電位V2=-40Vを印加することで、第1電極31と第2電極32との間にバリアの電界が形成され、ろ材34の目開き(0.1μm以上100μm以下)34bよりも小さい粒径(5nm以上2000μm以下)の第2粒子74が、ろ材34を通過することを抑制できる。
つまり、精密ろ過膜(MF膜)相当のろ材34を用いた場合であっても、第1電源51、第2電源52及び第3電源53での各電極間の電界制御により、限外ろ過膜(UF膜)、あるいはナノろ過膜(NF膜)相当まで、分離対象の粒子径を変更することができる。限外ろ過膜(UF膜)は、開口の径が10nm以上100nm以下程度のろ過膜である。ナノろ過膜(NF膜)は、開口の径が1nm以上10nm以下程度のろ過膜である。
なお、上述したろ過装置10の構成はあくまで一例であり、適宜変更することができる。例えば、第1電極31、ろ材34及び第2電極32が積層されて形成される負極ろ板と、第3電極33とは、平行平板状に対向配置される。これに限定されず、第1電極31、ろ材34及び第2電極32が積層されて形成される負極ろ板と、第3電極33とは、それぞれ曲面を有して形成されていてもよい。負極ろ板及び第3電極33の形状や配置は、ろ過装置10の形状、構造に応じて適宜変更できる。また、第1ろ室30に供給される対象処理液であるスラリー(原液)70の濃度は、特に限定されず、ろ過装置10が適用される分野に応じて変更できる。
実施形態2では、第1ろ室30の内部圧力は、加圧されており、第2ろ室35の内部圧力よりも大きい。他の態様としては、第2ろ室35の内部圧力を真空引きする等により陰圧することで、第1ろ室30の内部圧力が、第2ろ室35の内部圧力よりも相対的に大きくするようにしてもよい。
また、第1電位V1、第2電位V2及び第3電位V3は、分離対象の第1粒子71の種類や、要求されるろ過特性に応じて適宜変更することが好ましい。
以上説明したように、実施形態2のろ過装置10は、複数の第1開口31bが設けられた第1電極31と、複数の第2開口32bが設けられ、第1電極31の一方の面と対向して設けられた第2電極32と、複数の目開き34bが設けられ、第1電極31と第2電極32との間に設けられたろ材34と、第1電極31の他方の面と接して設けられ、分離対象の第1粒子71と極性溶媒72とを含むスラリー(原液)70(対象処理液)が供給される第1ろ室30と、第1ろ室30を挟んで第1電極31と対向する第3電極33と、第1電極31に、第1粒子71の極性と同じ極性の第1電位V1を供給する第1電源51と、第2電極32に、第1粒子71の極性と同じ極性の第2電位V2を供給する第2電源52と、第3電極33に、第1粒子71の極性と異なる極性の第3電位V3を供給する第3電源53と、を有する。
これによれば、ろ過装置10では、第1電極31と第3電極33との間で第1粒子71に発生するクーロン力F(第1粒子71と第1電極31との間に発生する斥力)により第1粒子71が第1電極31から第3電極33に向かう方向に移動する。このような電気泳動により、第1電極31の表面及びろ材34の表面にケーキ層が形成されることを抑制することができる。また、第1電極31と第2電極32との間の電界により水分子73を移動させてろ材34を通過させる電気浸透により、第1粒子71を分離でき、第1ろ室30内でのスラリー(原液)70の第1粒子71の濃縮度を高めることができる。これにより、単純にスラリー(原液)70に圧力を加え、ろ材34の目開き34bよりも大きい粒径の第1粒子71を分離する方法に比べて、ろ過速度を数倍から10倍以上に向上させることができる。
また、ろ過装置10において、第2電位V2の絶対値は第1電位V1の絶対値よりも大きく、第1電位V1と第3電位V3との電位差は、第1電位V1と第2電位V2との電位差よりも大きい。
これによれば、第1電極31と第2電極32との距離に比べ、ろ材34を挟んで対向する第1電極31と第3電極33との距離が大きい場合でも、電気泳動により、良好に第1粒子71を第3電極33側に移動させることができる。
また、ろ過装置10において、第1電極31の表面に垂直な方向で、第2電極32、ろ材34、第1電極31、第1ろ室30、第3電極33の順に積層され、第1電極31と第2電極32との間の距離は、第1電極31と第3電極33との間の距離よりも小さい。
これによれば、第1電極31と第2電極32との間で形成される電界強度を高めることができ、電気浸透により水分子73を移動させて、第1電極31と第2電極32との間のろ材34を良好に通過させることができる。
また、ろ過装置10において、第1電源51及び第3電源53は、定電圧源であり、第2電源52は、定電流源である。
これによれば、第1電源51により供給される第1電位V1及び第3電源53により供給される第3電位V3により、第1電極31と第3電極33との間で、第1粒子71に発生するクーロン力Fを規定することができる。また、第1電源51により供給される第1電位V1及びに第2電源52により供給される電流により、第1電極31と第2電極32との間で形成される電界強度が規定され、良好に電気浸透を行うことができる。
また、ろ過装置10において、目開き34bの大きさ(径D3)は、第1開口31bの径D1及び第2開口32bの径D2よりも小さい。
これによれば、ろ材34の目開き34bは、少なくとも第1開口31b及び第2開口32bと重畳する領域で、第1電極31及び第2電極32の導電細線31a、32aと非重畳となるように設けられる。これにより、水分子73は、電気浸透により良好にろ材34の目開き34bを通過することができる。
以上説明したように実施形態2のろ過装置10は、マイナスに帯電した第1粒子71が、電気泳動と電界バリアEの複合的効果により、数nm以上数μm以下の範囲で第1電極31から離隔している。また、第1粒子71が分離された極性溶媒72(ろ液75)が排出されることで、第1ろ室30内のスラリー(原液)70の第1粒子71の濃度が高まり、第1ろ室30内には、濃縮スラリーができる。
よって、第1ろ室30内において、マイナスに帯電した第1粒子71が濃縮された濃縮スラリーは、第1ろ室30に設けた濃縮液排出口(図示せず)から排出することができる。
実施形態2のろ過装置10では、第1電極31に近い位置の第1粒子71には、実施形態1のろ過装置10と比較して、より強力な斥力が発生している。これにより、実施形態1のろ過装置10と比較して、第3電極33に近い位置の第1粒子71には、より強力な引力が発生する。マイナスに帯電した第1粒子71に発生する斥力(図2のF1参照)及び引力(f2)のベクトルの総和F3は、実施形態1のろ過装置10での第1粒子に発生する斥力F1との力関係を比較すると、F1<F3の関係にあり、マイナスに帯電した第1粒子71に発生する斥力及び引力のベクトルの総和F3、電気泳動により第3電極33側に移動する力が大きい。
このように、実施形態1のろ過装置10よりも、実施形態2のろ過装置10は第3電極33を備え、第3電極33に所定の電位を印加していることにより、第1電極31との間に働く斥力及び引力のベクトルの総和F3により、数nm~数μmの範囲で第1電極31から離隔する効果が増大している。この結果、ろ材34のろ過抵抗が増大する時期が遅れる。よって、ろ材34のろ過抵抗が小さい状態が長期間継続し、ろ過速度がより向上する。
(実施形態3)
図10は、実施形態3に係るろ過装置の模式図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。実施形態3に係るろ過装置10は、極性溶媒72中に第1粒子71が分散されたスラリー(原液)70(対象処理液)から、第1粒子71を分離する装置である。
図10に示すように、実施形態3に係るろ過装置10は、筐体20と、筐体20の内部に配置される4つのろ過ユニット100と、第2ろ室35と、2つの第1電源51と、2つの第2電源52と、2つの第3電源53と、を備える。4つのろ過ユニット100は、ろ過ユニット101と、ろ過ユニット102と、ろ過ユニット105と、ろ過ユニット106と、を含む。ろ過ユニット101及びろ過ユニット102は、一方向Xに並んで配置される。ろ過ユニット105及びろ過ユニット106は、一方向Xに並んで配置される。ろ過ユニット101及びろ過ユニット105は、一方向Xに対して直交する他方向Yに並んで配置される。ろ過ユニット102及びろ過ユニット106は、他方向Yに並んで配置される。それぞれのろ過ユニット100は、第1ろ室30と、第1電極31と、第2電極32と、第3電極33と、ろ材34と、を有する。
第1ろ室30は、筐体20の内壁、第1電極31、及び第3電極33で囲まれた空間である。第1電極31及び第2電極32は、メッシュ状の電極である。具体的には、第1電極31は、複数の導電細線31aを有し、複数の導電細線31aの間に複数の第1開口31bが設けられる。第2電極32は、複数の導電細線32aを有し、複数の導電細線32aの間に複数の第2開口32bが設けられる。第2電極32は、ろ材34を介して第1電極31の一方の面(下面)と対向して設けられる。言い換えると、ろ材34は、第1電極31と第2電極32との間に設けられる。第1電極31及び第2電極32は、ろ材34と直接、接して設けられる。複数の導電細線31a及び複数の導電細線32aは、導電性素材であれば特に限定されず、例えば金属でもよいし炭素繊維でもよい。なお、第1電極31及び第2電極32は、ろ材34と直接、接する構成に限定されず、ろ材34との間に隙間を有して配置されていてもよい。
図10に示すように、第3電極33は、板状の部材であり、第1ろ室30を挟んで第1電極31の他方の面(上面)と対向して設けられる。1つのろ過ユニット100が備える第1電極31、第2電極32、第3電極33、及びろ材34は、他方向Yで隣り合うろ過ユニット100と共用される。言い換えると、1つの第1電極31、1つの第2電極32、1つの第3電極33及び1つのろ材34は、他方向Yで隣り合うろ過ユニット100(ろ過ユニット101及びろ過ユニット105の組、並びにろ過ユニット102及びろ過ユニット106の組)で共用される。
ろ過ユニット101及びろ過ユニット105では、一方向Xにおいて(図10の上から下に向かって)、複数の電極が、第3電極33、第1電極31、第2電極32の順に並ぶ。ろ過ユニット102及びろ過ユニット106では、一方向Xにおいて(図10の上から下に向かって)、複数の電極が、第2電極32、第1電極31、第3電極33の順に並ぶ。
図10では、第1電極31の第1開口31b、第2電極32の第2開口32b及びろ材34の目開き34bは同じ大きさで示しているが、あくまで説明のために模式的に示したものであり、第1開口31b、第2開口32b及び目開き34bの大きさは異なっていてもよい。
なお、図10に示すろ過ユニット100の構成は、あくまで一例であり、第1電極31、第2電極32及びろ材34と、第3電極33とで挟まれた第1ろ室30を形成できればどのような構成であってもよい。
図10に示すように、第1電極31は、第1電源51の第2端子51bと電気的に接続される。また、第1電極31は、第2電源52の第1端子52aと電気的に接続される。第2電極32は、第2電源52の第2端子52bと電気的に接続される。第3電極33は、第3電源53の第1端子53aと電気的に接続される。第3電源53の第2端子53b及び第1電源51の第1端子51aは、基準電位GNDに接続される。基準電位GNDは、例えばグランド電位である。ただし、これに限定されず、基準電位GNDは、所定の固定された電位であってもよい。
図9は、実施形態3に係るろ過ユニットを示す電気的等価回路図である。図9に示すように、第1電源51は、第1電極31に、第1粒子71の極性と同じ極性の第1電位V1を供給する。第1電位V1は、例えば-30Vである。第2電源52は、第2電極32に、第1粒子71の極性と同じ極性であって、第1電位V1の絶対値よりも大きい絶対値の第2電位V2を供給する。第2電位V2は、例えば-40Vである。第3電源53は、第3電極33に、第1粒子71の極性と異なる極性の第3電位V3を供給する。第3電位V3は、例えば+30Vである。第1電位V1、第2電位V2及び第3電位V3は、絶対値で1mV以上1000V以下の範囲で設定することができる。
図9に示すように、第1電源51及び第3電源53は定電圧源であり、第2電源52は定電流源である。第1電極31と第2電極32との間に抵抗成分R1と容量成分Cとが並列に接続される。抵抗成分R1及び容量成分Cは、多数の目開き34bが設けられたろ材34により等価的に表される成分である。また、第1電極31と第3電極33との間に抵抗成分R2が接続される。抵抗成分R2は、第1ろ室30のスラリー(原液)70により等価的に表される抵抗成分である。
第2電源52は、定電圧電源であっても、定電流電源であってもよい。本実施形態では、第2電源52は、定電流源であるので、ろ過装置10のろ過の状態に応じて、すなわち、ろ材34の抵抗成分R1及び第1ろ室30の抵抗成分R2の変動に応じて、第2電位V2は変化する。ただし、第2電位V2は第1粒子71の極性と同じ極性であって、第1電位V1の絶対値よりも大きい値を維持している。
筐体20には、スラリー供給部81と、第1排出部83と、第2排出部85とが接続されている。スラリー供給部81は、スラリー(原液)70が貯留されたタンク80に加圧装置316を介して接続される配管である。スラリー供給部81は、第1ろ室30と接続される。加圧装置316は、例えば加圧ポンプである。スラリー供給部81は、加圧装置316によって、分離対象の第1粒子71と極性溶媒72とを含むスラリー(原液)70を第1ろ室30に供給する。第1排出部83は、スラリー(原液)70の一部を第1ろ室30から排出するための配管である。第1排出部83は、第1ろ室30と接続される。第1排出部83は、スラリー供給部81とは異なる位置に設けられる。第1排出部83は、バルブ19を備える。バルブ19が開放された場合に、第1排出部83は、第1ろ室30に導入されたスラリー(原液)70が濃縮された濃縮スラリー70Aの一部を排出する。第2排出部85は、第2ろ室35にあるろ液75を第2ろ室35から排出するための配管である。第2排出部85は、減圧装置317と接続される。減圧装置317は、例えば真空ポンプである。減圧装置317によって生じる差圧によって、第2ろ室35のろ液75が外部に排出される。第2ろ室35は、筐体20の内壁、及び2つの第2電極32で囲まれた空間である。第2ろ室35は、一方向Xに並んだ2つのろ過ユニット100の間に配置される。
第1ろ室30において、各電極の駆動によりスラリー(原液)70の第1粒子71に斥力及び引力のベクトルの総和F3が働くので、第1粒子71の分散状況に濃度勾配が生じる。第1粒子71が分離されたスラリー(原液)70は、第1電極31、ろ材34及び第2電極32を順次通過して、第2ろ室35に流れる。第2ろ室35に排出されたろ液75は、第2排出部85を介して外部の貯留タンクに溜められる。
実施形態3においては、スラリー中の分離対象物の第1粒子71は、例えば、バイオマス粒子やコロイド粒子であり、粒子表面がマイナスに帯電している。具体的には、第1粒子71は、クロレラ、微細藻類スピルリナ、コロイダルシリカ、大腸菌、下水活性汚泥等である。第1粒子71の径は、適用される技術分野、分離対象の種類に応じて異なるが、5nm以上2000μm以下、例えば20nm以上500μm以下程度である。
第1粒子71が分散される極性溶媒72は、本実施形態では水であり、水分子73はプラスに帯電している。これにより、スラリー(原液)70は全体として電気的に平衡状態となっている。極性溶媒72は、水に限られず、アルコール等でもよい。つまり、極性溶媒72は、極性溶媒であればよい。
また、スラリー(原液)70は、さらに色素タンパク質等の第2粒子74を含む。第2粒子74は、第1粒子71と同じ極性(マイナス)に帯電しており、第1粒子71よりも小さい粒径を有する。第2粒子74は、10nm以上300nm以下、例えば、30nm程度である。なお、第2粒子74はスラリー中には存在しない場合もある。
第1ろ室30にスラリー(原液)70が供給されると、上述した式(1)で示される、クーロンの法則に基づいて、マイナスに帯電した第1粒子71と第1電極31との間には斥力が発生する。また、マイナスに帯電した第1粒子71と第3電極33との間には引力が発生する。
具体的には、第1電極31に近い位置の第1粒子71には、より強力な斥力が発生し、これに対して第3電極33に近い位置の第1粒子71には、より強力な引力が発生する。第1粒子71に発生する斥力及び引力のベクトルの総和F3は、矢印に示す方向、すなわち第1電極31から離れ第3電極33に近づく方向に作用する。マイナスに帯電した第1粒子71は、電気泳動により第3電極33側に移動する。
これにより、ろ過装置10は、第1粒子71が第1電極31の表面及びろ材34の表面に堆積してケーキ層が形成されることを抑制することができる。つまり、ろ材34の目開き34bのろ過抵抗が増大することを抑制することができる。
また、プラスに帯電した水分子73は、第1電極31との間に引力が発生する。プラスに帯電した水分子73に作用する引力F2は、矢印に示す方向、すなわち第3電極33から第1電極31に向かう方向に作用する。プラスに帯電した水分子73は、第1電極31側に移動する。この際、第1電極31と第2電極32との間の電位差により、ろ材34を厚さ方向に貫通するように、第1電極31から第2電極32に向かう電界Eが形成されている。
第1電極31側に移動したプラスに帯電した水分子73は、電界により力を受けて、水分子73に作用する引力F2により、第2電極32側に引っ張られてろ材34を通過する。プラスに帯電した水分子73の移動に伴って、帯電していない水分子も第2電極32側に引きずられて、電気浸透流が形成される。これにより、プラスに帯電した水分子73を含む極性溶媒72は、第2ろ室35に流れる。上述したように、第1粒子71は、電気泳動により第1電極31から引き離され、第3電極33側に移動しており、第1粒子71が分離されたろ液75が第2ろ室35側に排出されることで、第1ろ室30内のスラリー(原液)70の第1粒子71の濃度を高めることができる。
このように、ろ過装置10は、第1電極31と第3電極33との間で、第1粒子71をクーロン力F(第1粒子71と第1電極31との間に発生する斥力)により移動させる電気泳動と、第1電極31と第2電極32との間の電界により水分子73を移動させてろ材34を通過させる電気浸透とを組み合わせることで、第1粒子71を分離できる。また、第1電極31は、電気泳動の電極と、電気浸透の電極とを兼用する。これにより、単純にスラリー(原液)70に圧力を加え、ろ材34の目開き34bよりも大きい粒径の第1粒子71を分離する方法に比べて、第1電極31の表面及びろ材34の表面にケーキ層が形成されることを抑制することができ、ろ過速度を数倍から10倍以上に向上させることができる。
結果的に、単純にスラリー(原液)70に圧力を加えた方法に比べて、第1ろ室30内でのスラリー(原液)70の第1粒子71の濃縮度を高めることができる。また、ろ材34の清掃、交換の頻度を少なくすることができ、効率よくスラリー(原液)70のろ過を行うことができる。あるいは、単純にスラリー(原液)70に圧力を加えてろ過を行う場合に比べて、第1ろ室30の体積を小さくし、ろ材34の面積を小さくしても、従来と同程度のろ過速度を実現できる。すなわち、ろ過装置10は、小型化を図ることができる。
また、第1電極31と第2電極32との間に形成される電界を制御することで、ろ材34を通過する粒子レベル(粒子径)も制御することができる。例えば、第1電極31に第1電位V1=-30Vを印加し、第2電極32に第2電位V2=-40Vを印加することで、第1電極31と第2電極32との間にバリアの電界が形成され、ろ材34の目開き34bよりも小さい粒径の第2粒子74が、ろ材34を通過することを抑制できる。
つまり、精密ろ過膜(MF膜)相当のろ材34を用いた場合であっても、第1電源51、第2電源52及び第3電源53での各電極間の電界制御により、限外ろ過膜(UF膜)、あるいはナノろ過膜(NF膜)相当まで、分離対象の粒子径を変更することができる。限外ろ過膜(UF膜)は、開口の径が10nm以上100nm以下程度のろ過膜である。ナノろ過膜(NF膜)は、開口の径が1nm以上10nm以下程度のろ過膜である。
なお、上述したろ過装置10の構成はあくまで一例であり、適宜変更することができる。例えば、第1電極31、ろ材34及び第2電極32が積層されて形成される負極ろ板と、第3電極33とは、平行平板状に対向配置される。これに限定されず、第1電極31、ろ材34及び第2電極32が積層されて形成される負極ろ板と、第3電極33とは、それぞれ曲面を有して形成されていてもよい。負極ろ板及び第3電極33の形状や配置は、ろ過装置10の形状、構造に応じて適宜変更できる。また、第1ろ室30に供給される対象処理液であるスラリー(原液)70の濃度は、特に限定されず、ろ過装置10が適用される分野に応じて変更できる。
実施形態3では、第1ろ室30の内部圧力は、加圧されており、第2ろ室35の内部圧力よりも大きい。他の態様としては、第2ろ室35の内部圧力を真空引きする等により陰圧することで、第1ろ室30の内部圧力が、第2ろ室35の内部圧力よりも相対的に大きくするようにしてもよい。
実施形態3の複数のろ過ユニット100は、一方向X及び他方向Yの両方に対して直交する方向(図10における紙面の奥行き方向)に並んで配置されてもよい。すなわち、複数のろ過ユニット100は、3次元的に並んで配置されてもよい。
なお、各ろ過ユニット100は、ユニット間において、隔壁で仕切られていても良いし、仮想の隔壁であってもよい。隔壁で仕切られている場合には、各ユニットを連通する部材(例えば開口、連結通路等)により内部のスラリーを移動させるようにしてもよい。
ろ過装置10は、必ずしも第1電源51、第2電源52、及び第3電源53を2つずつ備えていなくてもよい。第1電源51、第2電源52、及び第3電源53のうち定電圧電源である電源の数は、1つであってもよい。例えば、第1電源51及び第3電源53が定電圧電源である場合、第1電源51及び第3電源53の数が1つであってもよい。この場合、1つの第1電源51が複数の第1電極31に接続され、1つの第3電源53が複数の第3電極33に接続される。
また、第1電位V1、第2電位V2及び第3電位V3は、分離対象の第1粒子71の種類や、要求されるろ過特性に応じて適宜変更することが好ましい。
ろ過装置10は、第3電源53を備えていなくてもよい。この場合、第3電極33は、例えば基準電位GNDに接続される。第3電極33を基準電位GNDに接続する場合、第1電極31、第2電極32、第3電極33のそれぞれに電源を設ける場合に比べ、ろ過装置10の小型化を図ることができる。
ろ過装置10は、必ずしも加圧装置316及び減圧装置317の両方を備えていなくてもよい。ろ過装置10は、加圧装置316及び減圧装置317の一方のみを備えていてもよい。
以上説明したように、本実施形態のろ過装置10は、複数のろ過ユニット100を有する。ろ過ユニット100は、第1電極31と、第2電極32と、ろ材34と、第1ろ室30と、第3電極33と、を含む。第1電極31は、複数の第1開口31bが設けられる。第2電極32は、複数の第2開口32bが設けられ、かつ第1電極31の一方の面と対向して設けられる。ろ材34は、複数の目開き34bが設けられ、かつ第1電極31と第2電極32との間に設けられる。第1ろ室30は、第1電極31の他方の面と接して設けられる。第3電極33は、第1ろ室30に設けられ、かつ第1電極31と対向する。2つのろ過ユニット100が一方向Xに並んで配置される。ろ過装置10は、2つの第2電極32の間に設けられる第2ろ室35を備える。
これによれば、2つのろ過ユニット100のそれぞれにおいて、第1電極31と第3電極33との間で第1粒子71に発生するクーロン力F(第1粒子71と第1電極31との間に発生する斥力)により第1粒子71が第1電極31から第3電極33に向かう方向に移動する。このような電気泳動により、第1電極31の表面及びろ材34の表面にケーキ層が形成されることを抑制することができる。また、第1電極31と第2電極32との間の電界により水分子73を移動させてろ材34を透過させる電気浸透により、第1粒子71を分離でき、第1ろ室30内でのスラリー(原液)70の第1粒子71の濃縮度を高めることができる。これにより、単純にスラリー(原液)70に圧力を加え、ろ材34の目開き34bよりも大きい粒径の第1粒子71を分離する方法に比べて、ろ過速度を数倍から10倍以上に向上させることができる。また、このように複数のろ過ユニット100を配置することで、ろ過装置10は、第1ろ室30にあるスラリー(原液)70の量を容易に調節することができる。
また、ろ過装置10において、一方のろ過ユニット100(ろ過ユニット101)では、一方向Xにおいて、複数の電極が、第3電極33、第1電極31、第2電極32の順に並ぶ。他方のろ過ユニット(ろ過ユニット102)では、一方向Xにおいて、複数の電極が、第2電極32、第1電極31、第3電極33の順に並ぶ。
これによれば、一方のろ過ユニット100(ろ過ユニット101)と他方のろ過ユニット100(ろ過ユニット102)とが、1つの第2ろ室35を共用することができる。このため、1つのろ過ユニット100に1つの第2ろ室35を設ける場合と比較して、ろ過装置10は、小型化を図ることができる。
また、ろ過装置10において、第1ろ室30には、対象処理液(スラリー(原液)70)を供給するためのスラリー供給部81と、スラリー供給部81とは異なる位置に設けられ、対象処理液(スラリー(原液)70の一部又は濃縮スラリー70A)の一部を排出するための第1排出部83とが接続されている。
これによれば、ろ過装置10は、第1ろ室30にある対象処理液(スラリー(原液)70)の量を容易に調節することができる。
また、ろ過装置10において、一方向Xに対して直交する他方向Yに2つのろ過ユニット100(ろ過ユニット101及びろ過ユニット105)が並んで配置される。
これによれば、ろ過装置10は、単位時間当たりにろ過できるスラリー(原液)70の量を多くすることができる。また、1つのろ過ユニット100を大型化する場合と比較して、ろ過ユニット100の交換が容易である。
また、ろ過装置10において、第2ろ室35には、第2ろ室35にあるろ液75を排出するための第2排出部85が接続されている。
これによれば、ろ過装置10は、ろ液75を、第2ろ室35の外部の貯留タンク等に容易に搬送することができる。
また、ろ過装置10において、1つのろ過ユニット100において、第2電極32の第2電位V2の絶対値は、第1電極31の第1電位V1の絶対値よりも大きい。第1電位V1と第3電極33の第3電位V3との電位差は、第1電位V1と第2電位V2との電位差よりも大きい。
これによれば、第1電極31と第2電極32との距離に比べ、第1ろ室30を挟んで対向する第1電極31と第3電極33との距離が大きい場合でも、電気泳動により、良好に第1粒子71を第3電極33側に移動させることができる。
また、ろ過装置10は、定電圧電源である第1電源51を含み、1つの第1電源51が、複数の第1電極31に第1電位V1を供給してもよい。ろ過装置10の第2電源52を定電圧電源とした場合、1つの第2電源52から複数の第2電極32に第2電位V2を供給してもよい。ろ過装置10は、定電圧電源である第3電源53を含み、1つの第3電源53が、複数の第3電極33に第3電位V3を供給してもよい。
これによれば、ろ過装置10は、電源装置を簡素化でき、製造コストを低減させることができる。
(実施形態3の変形例)
図11は、実施形態3の変形例に係るろ過装置の模式図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図11に示すように、変形例に係るろ過装置10Aは、8つのろ過ユニット100と、2つの第2ろ室35と、を備える。図10と同様であるので、図示は省略するが、変形例に係るろ過装置10Aは、4つの第1電源51と、4つの第2電源52と、4つの第3電源53と、を備える。
8つのろ過ユニット100は、ろ過ユニット101と、ろ過ユニット102と、ろ過ユニット103と、ろ過ユニット104と、ろ過ユニット105と、ろ過ユニット106と、ろ過ユニット107と、ろ過ユニット108と、を含む。
ろ過ユニット101、ろ過ユニット102、ろ過ユニット103、及びろ過ユニット104は、一方向Xに並んで配置される。ろ過ユニット105及びろ過ユニット106、ろ過ユニット107、及びろ過ユニット108は、一方向Xに並んで配置される。ろ過ユニット103及びろ過ユニット107は、他方向Yに並んで配置される。ろ過ユニット104及びろ過ユニット108は、他方向Yに並んで配置される。
1つのろ過ユニット100が備える第1電極31、第2電極32、第3電極33、及びろ材34は、他方向Yで隣り合うろ過ユニット100と共用される。言い換えると、1つの第1電極31、1つの第2電極32、1つの第3電極33及び1つのろ材34は、他方向Yで隣り合うろ過ユニット100(ろ過ユニット103及びろ過ユニット107の組、並びにろ過ユニット104及びろ過ユニット108の組)で共用される。
ろ過ユニット103及びろ過ユニット107では、一方向Xにおいて(図11の上から下に向かって)、複数の電極が、第3電極33、第1電極31、第2電極32の順に並ぶ。ろ過ユニット104及びろ過ユニット108では、一方向Xにおいて(図11の上から下に向かって)、複数の電極が、第2電極32、第1電極31、第3電極33の順に並ぶ。
ろ過ユニット102が備える第3電極33は、一方向Xで隣り合うろ過ユニット103と共用される。ろ過ユニット106が備える第3電極33は、一方向Xで隣り合うろ過ユニット107と共用される。言い換えると、一方向Xに2つの並んだ第1ろ室30の間は、一方向Xに隣り合うろ過ユニット100(ろ過ユニット102及びろ過ユニット103の組、並びにろ過ユニット106及びろ過ユニット107の組)で共用される第3電極33で区画されている。なお、本実施形態のろ過ユニットでは、図11に示すように、第3電極33を共用することにより、装置構成のコンパクト化を図ることができる。
なお、ろ過装置10Aにおいては、必ずしも4つのろ過ユニット100が一方向Xに並んでいなくてもよい。一方向Xに並ぶろ過ユニット100の数は、3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。また、一方向Xに2つの並んだ第1ろ室30の間に配置される第3電極33は、必ずしも2つのろ過ユニット100で共用されなくてもよい。すなわち、一方向Xに2つの並んだ第1ろ室30の間に、互いに絶縁された2つの第3電極33が配置されてもよい。
複数のろ過ユニット100は、一方向X及び他方向Yの両方に対して直交する方向(図11における紙面の奥行き方向)に並んで配置されてもよい。すなわち、複数のろ過ユニット100は、3次元的に並んで配置されてもよい。
ろ過装置10Aは、必ずしも第1電源51、第2電源52、及び第3電源53を4つずつ備えていなくてもよい。第1電源51、第2電源52、及び第3電源53のうち定電圧電源である電源の数は、1つであってもよい。例えば、第1電源51及び第3電源53が定電圧電源である場合、第1電源51及び第3電源53の数が1つであってもよい。この場合、1つの第1電源51が複数の第1電極31に接続され、1つの第3電源53が複数の第3電極33に接続される。
以上説明したように、変形例のろ過装置10Aにおいては、3つ以上のろ過ユニット100が並んで配置される。2つの並んだ第1ろ室30の間は、隣り合うろ過ユニット100で共用される第3電極33で区画されている。
これによれば、2つの並んだ第1ろ室30を隔てる壁が薄くなる。また、必要な第3電源の数を減らすことができる。したがって、第3電極33を共用しない場合と比較して、ろ過装置10Aは、小型化を図ることができる。
(実施形態4)
図12A及び12Bは、実施形態4に係るろ過システムの構成例を模式的に示す断面図である。図13は、実施形態4に係るろ過装置の構成例を模式的に示す断面図である。図14は、実施形態4に係る第1ろ過装置の模式図である。図15は、実施形態4に係る第2ろ過装置の模式図である。図16は、実施形態4に係る第3ろ過装置の模式図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図12A、図14、図15及び図16に示すように、ろ過システム300Aは、極性溶媒72中に第3粒子76が分散されたスラリー(原液)70(対象処理液)から、三種類の分離対象物を分離する装置である。
図12B、図14、及び図15に示すように、ろ過システム300Bは、極性溶媒72中に第3粒子76が分散されたスラリー(原液)70(対象処理液)から、二種類の分離対象物を分離する装置である。
図12A、図14、図15及び図16に示すように、実施形態4に係るろ過システム300Aは、極性溶媒72中に第3粒子76、第4粒子77及び第5粒子78が分散されたスラリー(原液)70から、第3粒子76、第4粒子77及び第5粒子78を分離する装置である。図12Aに示すように、実施形態4に係るろ過システム300Aは、第1ろ過装置91と、第2ろ過装置92と、第3ろ過装置93と、第1加圧装置95と、第2加圧装置96と、第3加圧装置97と、第4加圧装置98と、を備える。
図13に示すように、実施形態4に係る第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93は、直列に接続される。第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93のそれぞれは、上部筐体11と、蓋部12と、側部筐体13と、下部筐体14と、導体15と、を有する。第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93のそれぞれは、さらに、上部筐体11、側部筐体13及び下部筐体14で囲まれた内部空間に、第1ろ室30と、第1電極31と、第2電極32と、第3電極33と、ろ材34(図14から図16参照)と、を有する。第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93のそれぞれは、さらに、第1電極31、第2電極32及び第3電極33に電気的に接続された、第1電源51と、第2電源52と、第3電源53と、を有する。
具体的には、上部筐体11は、絶縁材料で形成された円柱状の部材である。側部筐体13は、絶縁材料で形成され、貫通孔13aを有する環状の部材である。上部筐体11の下端側の一部が側部筐体13の貫通孔13aに挿入される。下部筐体14は、絶縁材料で形成され、側部筐体13を支持する。蓋部12は、上部筐体11の上面を覆って設けられる。
第1電極31、第2電極32及びろ材34(図14から図16参照)の外縁は、側部筐体13と下部筐体14との間に挟まれて固定される。第3電極33は、上部筐体11の下面(下部筐体14と対向する面)に、ボルト等の接続部材(図示しない)により固定され、側部筐体13の貫通孔13aの内部に位置する。また、導体15は、側部筐体13の周囲を囲むように設けられた環状の部材であり、側部筐体13と下部筐体14との間に設けられる。導体15の下端側は、第1電極31の外縁と接続される。
上部筐体11と側部筐体13とは、ガイド部21aにより固定される。また、側部筐体13と下部筐体14と導体15とは、ボルト21b、21cにより固定される。これにより、各筐体の位置が固定され、第1電極31、第2電極32及びろ材34と、側部筐体13の内壁と、第3電極33とで囲まれた空間に第1ろ室30が形成される。また、各筐体間及び各電極間の接続部分には、それぞれOリング等の封止部材が設けられ、第1ろ室30が密閉して設けられる。また、上部筐体11は、下部筐体14との距離が調整可能に設けられている。これにより、第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93は、スラリー(原液)70の種類や量に応じて、第1ろ室30の体積を適切に設定できる。
上部筐体11には、スラリー供給通路11aと、排気通路11bと、貫通孔11cとが設けられる。スラリー供給通路11aの一端側は、上部筐体11の側面に開口し、スラリー供給部16に接続される。スラリー供給通路11aの他端側は、上部筐体11の下面に開口し、第3電極33の貫通孔33aと繋がって設けられる。スラリー供給バルブ17は、スラリー供給通路11aの内部に設けられた棒状部材を有し、棒状部材がスラリー供給通路11a内を上下方向に移動することで、貫通孔33aの開閉状態を切り替えることができる。
これにより、例えば、スラリー供給バルブ17の動作により貫通孔33aが開放状態の場合に、スラリー(原液)70は、スラリー供給部16、スラリー供給通路11a、第3電極33の貫通孔33aを介して第1ろ過装置91の第1ろ室30に供給される。また、スラリー供給バルブ17により貫通孔33aが閉じられた状態の場合には、スラリー(原液)70の第1ろ過装置91の第1ろ室30への供給が停止される。
排気通路11bの一端側は、上部筐体11の側面に開口し、エア排出部18に接続される。排気通路11bの他端側は、上部筐体11の下面に開口し、第3電極33の貫通孔33bと繋がって設けられる。エア排出用のバルブ19は、排気通路11bの内部に設けられた棒状部材を有し、棒状部材が排気通路11b内を上下方向に移動することで、貫通孔33bの開閉状態を切り替えることができる。
第1ろ過装置91において、第1ろ室30にスラリー(原液)70がタンク80から供給される際に、エア排出用のバルブ19は、貫通孔33bを開放状態にする。これにより、第1ろ室30内の空気は、貫通孔33b、排気通路11b及びエア排出部18を介して外部に排気される。エア排出部18にはエア排出弁18aが接続されている。エア排出弁18aは、例えばフロート弁であり、第1ろ室30内の所定量の空気が排気されるとエア排出弁18aが閉じられるように設けられている。第1ろ室30内の排気が完了した後、エア排出用のバルブ19は貫通孔33bを閉じる。これにより、第1ろ室30内に充填されたスラリー(原液)70には、第1加圧装置95により、スラリー供給部16を介して所定の圧力が加えられる。
貫通孔11cの一端側は上部筐体11の上面に開口する。貫通孔11cの他端側は上部筐体11の下面に開口し、第3電極33の凹部33cと繋がって設けられる。貫通孔11cには、接続導体56が挿入され、凹部33cで接続導体56と第3電極33とが接続される。これにより、第3電極33は、接続導体56を介して第3電源53の第1端子53aと電気的に接続される。
第1電極31は、導体15及び接続導体54を介して第1電源51の第2端子51bと電気的に接続される。また、第1電極31は、導体15及び接続導体55aを介して第2電源52の第1端子52aと電気的に接続される。第3電源53の第2端子53b及び第1電源51の第1端子51aは、基準電位GNDに接続される。基準電位GNDは、例えばグランド電位である。ただし、これに限定されず、基準電位GNDは、所定の固定された電位であってもよい。
下部筐体14には、凹状の第2ろ室35と、貫通孔14a、14bと、接続孔14cとが設けられている。第2ろ室35は、下部筐体14の上面で、第1ろ室30と重なる位置に設けられる。貫通孔14aは、第2ろ室35と排出部22とを繋ぐ。
図14に示すように、第1ろ過装置91において、各電極の駆動によりスラリー(原液)70のマイナスに帯電した第3粒子76に斥力及び引力のベクトルの総和F4が働くので、第3粒子76の分散状況に濃度勾配が生じる。マイナスに帯電した第3粒子76が分離されたスラリー(原液)70は、第1電極31、ろ材34及び第2電極32を通過して、第2ろ室35に第1中間処理液79aとして流れる。図12Aに示すように、第1ろ過装置91の第2ろ室35にある第4粒子77と第5粒子78とを含む第1中間処理液79aは、排出部22に導かれる。第1ろ過装置91の排出部22は、第2加圧装置96を介して、第1ろ過装置91の後流側に直列に配置される第2ろ過装置92の第1ろ室30と接続される。第4粒子77と第5粒子78とを含む第1中間処理液79aは、第2ろ過装置92の第1ろ室30へ供給される。
図15に示すように、第2ろ過装置92において、各電極の駆動により第1中間処理液79aのマイナスに帯電した第4粒子77に斥力及び引力のベクトルの総和F5が働くので、第5粒子78の分散状況に濃度勾配が生じる。第4粒子77が分離された第5粒子78を含む第1中間処理液79aは、第1電極31、ろ材34及び第2電極32を順次通過して、第2ろ室35に流れる。図12Aに示すように、第2ろ過装置92の第2ろ室35にある第5粒子78を含む第2中間処理液79bは、排出部22に導かれる。第2ろ過装置92の排出部22は、第3加圧装置97を介して、第3ろ過装置93の第1ろ室30と接続される。第5粒子78を含む第2中間処理液79bは、第2ろ過装置92の後流側に直列に配置される第3ろ過装置93の第1ろ室30へ供給される。
図16に示すように、第3ろ過装置93において、各電極の駆動により第2中間処理液79bのマイナスに帯電した第5粒子78に斥力及び引力のベクトルの総和F6が働くので、マイナスに帯電した第5粒子78の分散状況に濃度勾配が生じる。マイナスに帯電した第5粒子78が分離された第2中間処理液79bは、第1電極31、ろ材34及び第2電極32を順次通過して、第2ろ室35に流れる。図12Aに示すように、第3ろ過装置93の第2ろ室35にある第3中間処理液79c(ろ液)は、排出部22に導かれる。第3ろ過装置93の排出部22は、第4加圧装置98を介してタンク80と接続される。第3中間処理液79cは、タンク80へ供給される。第3中間処理液79cであるろ液は、水分子73からなる清澄な極性溶媒72である。
以上説明したように、第1加圧装置95は、タンク80に貯留された分離対象物を含むスラリー(原液)70を加圧し、第1ろ過装置91の第1ろ室30に供給する。第2加圧装置96は、第1ろ過装置91の第2ろ室35から排出された第1中間処理液79aを加圧し、第2ろ過装置92の第1ろ室30に供給する。第3加圧装置97は、第2ろ過装置92の第2ろ室35から排出された第2中間処理液79bを加圧し、第3ろ過装置93の第1ろ室30に供給する。第4加圧装置98は、第3ろ過装置93の第2ろ室35から排出された第3中間処理液79c(ろ液)を加圧し、タンク80に戻す。第1加圧装置95、第2加圧装置96、第3加圧装置97及び第4加圧装置98は、例えば加圧ポンプである。第4加圧装置98及び配管を用いて液体を搬送することは、流体コンベアとも呼ばれる。第4加圧装置98は、第3ろ過装置93の第2ろ室35から排出されたろ液である清澄な極性溶媒72を搬送流体として粒子を系内に循環させる。なお、ろ過システム300Aにおいては、ダイアフィルトレーション(ろ過液量と同量の溶媒をスラリー(原液)70中に加えながらろ過することによってスラリー(原液)70中の分離対象を回収する方法)が用いられてもよい。
接続孔14cの一端側は、下部筐体14の上面に開口し、第2電極32の外縁は、接続孔14cを覆って設けられる。また、接続孔14cの他端側は、下部筐体14の側面に開口する。接続孔14cには接続導体55bが挿入され、接続導体55bと第2電極32とが接続される。これにより、第2電極32は、第2電源52の第2端子52bと電気的に接続される。
なお、図13に示す第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93のそれぞれの構成は、あくまで一例であり、第1電極31、第2電極32及びろ材34と、第3電極33とで挟まれた第1ろ室30を形成できればどのような構成であってもよい。
次に、図14から図16を参照して、第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93の動作について説明する。図14から図16では、説明を分かりやすくするために、第1電極31、第2電極32、第3電極33及びろ材34と、第1ろ室30及び第2ろ室35との配置関係を模式的に示している。
図14から図16に示すように、第1電極31及び第2電極32は、メッシュ状の電極である。具体的には、第1電極31は、複数の導電細線31aを有し、複数の導電細線31aの間に複数の第1開口31bが設けられる。第2電極32は、複数の導電細線32aを有し、複数の導電細線32aの間に複数の第2開口32bが設けられる。第2電極32は、ろ材34を介して第1電極31の一方の面(下面)と対向して設けられる。言い換えると、ろ材34は、第1電極31と第2電極32との間に設けられる。第1電極31及び第2電極32は、ろ材34と直接、接して設けられる。複数の導電細線31a及び複数の導電細線32aは、導電性素材であれば特に限定されず、例えば金属でもよいし炭素繊維でもよい。なお、第1電極31及び第2電極32は、ろ材34と直接、接する構成に限定されず、ろ材34との間に隙間を有して配置されていてもよい。
ろ材34は、ろ過膜34aと、目開き34bと、を含む。ろ過膜34aに複数の目開き34bが設けられている。ろ過膜34aに対して電界が働く。ろ材34は、例えば、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)等が用いられる。実施形態4では、ろ材34は、樹脂材料等の絶縁材料で形成されている。なお、図14から図16では、第1電極31の第1開口31b、第2電極32の第2開口32b及びろ材34の目開き34bは同じ大きさで示しているが、あくまで説明のために模式的に示したものであり、第1開口31b、第2開口32b及び目開き34bの大きさは異なっていてもよい。
第1ろ室30は、第1電極31の他方の面(上面)と接して設けられる。第1ろ室30には、上述したように、分離対象の第3粒子76、第4粒子77、及び第5粒子78、並びに極性溶媒72含むスラリー(原液)70が供給される。第3粒子76は、例えば、バイオマス粒子やコロイド粒子であり、粒子表面がマイナスに帯電している。実施形態4においては、具体的には、第3粒子76は、例えばクロレラ、微細藻類スピルリナ、コロイダルシリカ、大腸菌、下水活性汚泥等である。第3粒子76の径は、適用される技術分野、分離対象の種類に応じて異なるが、例えば100nm以上2000μm以下、例えば200nm以上100μm以下程度である。第4粒子77は、例えば高分子量の多糖体であり、粒子表面がマイナスに帯電している。第4粒子77の径は、第3粒子76の径よりも小さい。第4粒子77の径は、適用される技術分野、分離対象の種類に応じて異なるが、例えば30nm以上500nm以下、例えば100nm程度である。第5粒子78は、例えば低分子量の多糖体であり、粒子表面がマイナスに帯電している。第5粒子78の径は、第4粒子77の径よりも小さい。第5粒子78の径は、適用される技術分野、分離対象の種類に応じて異なるが、例えば5nm以上100nm以下、例えば20nm程度である。
本実施形態で用いるスラリー70中に存在する分離対象物は、マイナスに帯電した第3粒子76がその培養中にその細胞外に多糖類を生産する微細藻類を用いているが本実施形態はこれに限定されるものではない。なお、この第3粒子76がその培養中に生産する多糖類としては高分子量多糖類をマイナスに帯電した第4粒子77、低分子量多糖類をマイナスに帯電した第5粒子78とした場合の電界ろ過操作について、以下説明する。
第3粒子76、第4粒子77、及び第5粒子78が分散される極性溶媒72は、水であり、水分子73はプラスに帯電している。これにより、スラリー(原液)70は全体として電気的に平衡状態となっている。極性溶媒72は、水に限られず、アルコール等でもよい。
第1電源51は、第1電極31に、第3粒子76、第4粒子77、及び第5粒子78の極性と同じ極性の第1電位V1を供給する。第1ろ過装置91における第1電位V1は、例えば-20Vである。第2ろ過装置92における第1電位V1は、例えば-40Vである。第3ろ過装置93における第1電位V1は、例えば-60Vである。
第2電源52は、第2電極32に、第3粒子76、第4粒子77、及び第5粒子78の極性と同じ極性であって、第1電位V1の絶対値よりも大きい絶対値の第2電位V2を供給する。第1ろ過装置91における第2電位V2は、例えば-30Vである。第2ろ過装置92における第2電位V2は、例えば-50Vである。第3ろ過装置93における第2電位V2は、例えば-70Vである。
第3電源53は、第3電極33に、第3粒子76の極性と異なる極性の第3電位V3を供給する。第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93における第3電位V3は、例えば+30Vである。第1電位V1、第2電位V2及び第3電位V3は、絶対値で1mV以上1000V以下の範囲で設定することができる。
第1ろ過装置91において、第1電極31の第1電位V1(-20V)と第3電極33の第3電位V3(+30V)との第1電位差(50V)は、第1電位V1(-20V)と第2電極32の第2電位V2(-30V)との第2電位差(10V)よりも大きい。
第2ろ過装置92において、第1電極31の第1電位V1(-40V)と第3電極33の第3電位V3(+30V)との第1電位差(70V)は、第1電位V1(-40V)と第2電極32の第2電位V2(-50V)との第2電位差(10V)よりも大きい。
第3ろ過装置93において、第1電極31の第1電位V1(-60V)と第3電極33の第3電位V3(+30V)との第1電位差(90V)は、第1電位V1(-60V)と第2電極32の第2電位V2(-70V)との第2電位差(10V)よりも大きい。
第2ろ過装置92における第1電位差(70V)は、第1ろ過装置91における第1電位差(50V)よりも大きい。第3ろ過装置93における第1電位差(90V)は、第1ろ過装置91における第1電位差(50V)、及び第2ろ過装置92における第1電位差(70V)よりも大きい。
図9は、実施形態4に係る第1ろ過装置、第2ろ過装置及び第3ろ過装置を示す電気的等価回路図である。図9に示すように、第1電源51及び第3電源53は定電圧源であり、第2電源52は定電流源である。第1電極31と第2電極32との間に抵抗成分R1と容量成分Cとが並列に接続される。抵抗成分R1及び容量成分Cは、多数の目開き34bが設けられたろ材34により等価的に表される成分である。また、第1電極31と第3電極33との間に抵抗成分R2が接続される。抵抗成分R2は、第1ろ室30のスラリー(原液)70、第1中間処理液79a、又は第2中間処理液79bにより等価的に表される抵抗成分である。
第2電源52は、定電圧電源であっても、定電流電源であってもよい。本実施形態では、第2電源52は、定電流源であるので、第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93のろ過の状態に応じて、すなわち、ろ材34の抵抗成分R1及び第1ろ室30の抵抗成分R2の変動に応じて、第2電位V2は変化する。ただし、第2電位V2は第3粒子76、第4粒子77、及び第5粒子78の極性と同じ極性であって、第1電位V1の絶対値よりも大きい値を維持している。
図14に示すように、第1ろ過装置91において、第1ろ室30に、分離対象の三種類の粒子(第3粒子76、第4粒子77、及び第5粒子78)、並びに極性溶媒72を含むスラリー(原液)70が供給されると、上述した式(1)で示される、クーロンの法則に基づいて、マイナスに帯電した第3粒子76と第1電極31との間には斥力(f1)が発生する。また、マイナスに帯電した第3粒子76と第3電極33との間には引力(f2)が発生する。
具体的には、第1ろ過装置91において、第1電極31に近い位置のマイナスに帯電した第3粒子76には、より強力な斥力(f1)が発生し、第3電極33に近い位置の第3粒子76には、より強力な引力(f2)が発生する。第3粒子76に発生する斥力(f1)及び引力(f2)のベクトルの総和F4は、矢印に示す方向、すなわち第1電極31から離れ第3電極33に近づく方向に作用する。マイナスに帯電した第3粒子76は、電気泳動により第3電極33側に移動する。
これにより、第1ろ過装置91は、第3粒子76が第1電極31の表面及びろ材34の表面に堆積してケーキ層が形成されることを抑制することができる。つまり、ろ材34の目開き34bのろ過抵抗が増大することを抑制することができる。
また、プラスに帯電した水分子73は、第1電極31との間に引力が発生する。プラスに帯電した水分子73に作用する引力F2は、矢印に示す方向、すなわち第3電極33から第1電極31に向かう方向に作用する。プラスに帯電した水分子73は、第1電極31側に移動する。この際、第1電極31と第2電極32との間の電位差により、ろ材34を厚さ方向に貫通するように、第1電極31から第2電極32に向かう電界Eが形成されている。
第1電極31側に移動した水分子73は、電界により力を受けて、第2電極32側に引っ張られてろ材34を通過する。プラスに帯電した水分子73の移動に伴って、帯電していない水分子も第2電極32側に引きずられて、電気浸透流が形成される。これにより、プラスに帯電した水分子73を含む極性溶媒72は、第2ろ室35に流れる。上述したように、第3粒子76は、電気泳動により第1電極31から引き離され、第3電極33側に移動しており、第3粒子76が分離された極性溶媒72が排出されることで、第1ろ過装置91の第1ろ室30内のスラリー(原液)70の第3粒子76の濃度を高めることができる。また、第1ろ過装置91の第2ろ室35には第4粒子77、第5粒子78を含む第1中間処理液79aが、ろ液として排出される。
また、第1電極31と第2電極32との間に形成される電界を制御することで、ろ材34を通過する粒子レベル(粒子径)も制御することができる。例えば、第1ろ過装置91において、第1電極31に第1電位V1=-20Vを印加し、第2電極32に第2電位V2=-30Vを印加することで、第1電極31と第2電極32との間にバリアの電界Eが形成される。これにより、第1ろ過装置91は、第3粒子76がろ材34を通過することを抑制し、第4粒子77及び第5粒子78がろ材34を通過することを許容する。このため、第1ろ室30内のスラリー(原液)70の第3粒子76の濃度を高めることができる。
つまり、精密ろ過膜(MF膜)相当のろ材34を用いた場合であっても、第1電源51、第2電源52及び第3電源53での各電極間の電界制御により、限外ろ過膜(UF膜)、あるいはナノろ過膜(NF膜)相当まで、分離対象の粒子径を変更することができる。限外ろ過膜(UF膜)は、開口の径が10nm以上100nm以下程度のろ過膜である。ナノろ過膜(NF膜)は、開口の径が1nm以上10nm以下程度のろ過膜である。
図15に示すように、第2ろ過装置92では、第1ろ過装置91の第2ろ室35からの第4粒子77、第5粒子78を含む第1中間処理液79aが第1ろ室30に導入される。図15に示すように、第2ろ過装置92において、第1電極31に近い位置のマイナスに帯電している第4粒子77には、より強力な斥力(f1)が発生し、第3電極33に近い位置の第4粒子77には、より強力な引力(f2)が発生する。第4粒子77に発生する斥力(f1)及び引力(f2)のベクトルの総和F5は、矢印に示す方向、すなわち第1電極31から離れ第3電極33に近づく方向に作用する。マイナスに帯電した第4粒子77は、電気泳動により第3電極33側に移動する。
これにより、第2ろ過装置92は、第4粒子77が第1電極31の表面及びろ材34の表面に堆積してケーキ層が形成されることを抑制することができる。つまり、ろ材34の目開き34bのろ過抵抗が増大することを抑制することができる。
例えば、第2ろ過装置92において、第1電極31に第1電位V1=-40Vを印加し、第2電極32に第2電位V2=-50Vを印加することで、第1電極31と第2電極32との間にバリアの電界Eが形成される。これにより、第2ろ過装置92は、マイナスに帯電している第4粒子77がろ材34を通過することを抑制し、第4粒子77の径よりも小さい第5粒子78がろ材34を通過することを許容する。このため、第2ろ過装置92における第1ろ室30内の第1中間処理液79aの第4粒子77の濃度を高めることができる。また、第2ろ過装置92の第2ろ室35には第5粒子78を含む第2中間処理液79bがろ液として排出される。
図16に示すように、第3ろ過装置93では、第2ろ過装置92の第2ろ室35からの第5粒子78を含む第2中間処理液79bが第1ろ室30に導入される。図16に示すように、第1電極31に近い位置のマイナスに帯電している第5粒子78には、より強力な斥力(f1)が発生し、第3電極33に近い位置の第5粒子78には、より強力な引力(f2)が発生する。第5粒子78に発生する斥力(f1)及び引力(f2)のベクトルの総和F6は、矢印に示す方向、すなわち第1電極31から離れ第3電極33に近づく方向に作用する。マイナスに帯電した第5粒子78は、電気泳動により第3電極33側に移動する。
これにより、第3ろ過装置93は、第5粒子78が第1電極31の表面及びろ材34の表面に堆積してケーキ層が形成されることを抑制することができる。つまり、ろ材34の目開き34bのろ過抵抗が増大することを抑制することができる。また、第3ろ過装置93の第2ろ室35には第3中間処理液79cが清澄ろ液として排出される。
例えば、第3ろ過装置93において、第1電極31に第1電位V1=-60Vを印加し、第2電極32に第2電位V2=-70Vを印加することで、第1電極31と第2電極32との間にバリアの電界Eが形成される。これにより、第3ろ過装置93は、第5粒子78がろ材34を通過することを抑制する。このため、第1ろ室30内の第2中間処理液79bの第5粒子78の濃度を高めることができる。
このように、第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93は、第1電極31と第3電極33との間で、第3粒子76、第4粒子77及び第5粒子78をクーロン力F(第3粒子76と第1電極31との間に発生する斥力)により移動させる電気泳動と、第1電極31と第2電極32との間の電界により水分子73を移動させてろ材34を通過させる電気浸透とを組み合わせることで、第3粒子76、第4粒子77及び第5粒子78を各々分離できる。また、第1電極31は、電気泳動の電極と、電気浸透の電極とを兼用する。これにより、単純にスラリー(原液)70、第1中間処理液79a、及び第2中間処理液79bに圧力を加え、ろ材34の目開き34bよりも大きい粒径の第3粒子76、第4粒子77及び第5粒子78を分離する方法に比べて、第1電極31の表面及びろ材34の表面にケーキ層が形成されることを抑制することができ、ろ過速度を数倍から10倍以上に向上させることができる。
結果的に、単純にスラリー(原液)70、第1中間処理液79a、及び第2中間処理液79bに圧力を加えた方法に比べて、それぞれの第1ろ室30内での第3粒子76、第4粒子77及び第5粒子78の濃縮度を高めることができる。また、ろ材34の清掃、交換の頻度を少なくすることができ、効率よくスラリー(原液)70、第1中間処理液79a、又は第2中間処理液79bのろ過を行うことができる。あるいは、単純にスラリー(原液)70、第1中間処理液79a、又は第2中間処理液79bに圧力を加えてろ過を行う場合に比べて、第1ろ室30の体積を小さくし、ろ材34の面積を小さくしても、従来と同程度のろ過速度を実現できる。すなわち、第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93は、小型化を図ることができる。
なお、上述した第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93の構成はあくまで一例であり、適宜変更することができる。例えば、第1電極31、ろ材34及び第2電極32が積層されて形成される負極ろ板と、第3電極33とは、平行平板状に対向配置される。これに限定されず、第1電極31、ろ材34及び第2電極32が積層されて形成される負極ろ板と、第3電極33とは、それぞれ曲面を有して形成されていてもよい。負極ろ板及び第3電極33の形状や配置は、第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93の形状、構造に応じて適宜変更できる。また、第1ろ室30に供給されるスラリー(原液)70、第1中間処理液79a、及び第2中間処理液79bの濃度は、特に限定されず、第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93が適用される分野に応じて変更できる。
実施形態4では、第1ろ室30の内部圧力は、加圧されており、第2ろ室35の内部圧力よりも大きい。他の態様としては、第2ろ室35の内部圧力を真空引きする等により陰圧することで、第1ろ室30の内部圧力が、第2ろ室35の内部圧力よりも相対的に大きくするようにしてもよい。
また、第1電位V1、第2電位V2及び第3電位V3は、分離対象の第3粒子76、第4粒子77及び第5粒子78の種類や、要求されるろ過特性に応じて適宜変更することが好ましい。
第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93は、第3電源53を備えていなくてもよい。この場合、第3電極33は、例えば基準電位GNDに接続される。第3電極33を基準電位GNDに接続する場合、第1電極31、第2電極32、第3電極33のそれぞれに電源を設ける場合に比べ、第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93の小型化を図ることができる。
第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93から排出された第1中間処理液79a、第2中間処理液79b、及び第3中間処理液(ろ液)79cは、必ずしも加圧装置によって搬送されなくてもよく、例えば作業者によって手動で搬送されてもよい。すなわち、ろ過システム300Aを用いるろ過方法が、第1ろ過装置91の第2ろ室35の第1中間処理液79aを、第2ろ過装置92の第1ろ室30へ供給するステップと、第2ろ過装置92の第2ろ室35の第2中間処理液79bを、第3ろ過装置93の第1ろ室30へ供給するステップと、第3ろ過装置93の第2ろ室35の第3中間処理液(ろ液)79cを、タンク80に戻すステップと、を有していてもよい。
ここで、図12Aのろ過システム300Aでは、第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93を直列に配置している実施形態について説明している。本実施形態のろ過システムは、これに限定されるものではなく、さらに複数のろ過装置を直列に配置するようにしてもよい。なお、本実施形態のろ過システムが、さらに複数のろ過装置を直列に複数配置する場合は、スラリー中に粒径の異なる4成分以上の分離対象物を含むスラリー(原液)70を分離できる。
また、スラリー中に粒径の異なる2成分を含むような場合には図12Bに示すように、ろ過システム300Bとして、第1ろ過装置91と、第2ろ過装置92とを備えるのが好ましい。
以上説明したように、図12A及び図12Bに示すように、実施形態4のろ過システム300A、300Bは、少なくとも第1ろ過装置91と、第2ろ過装置92とを備える。第1ろ過装置91及び第2ろ過装置92は、それぞれ、複数の第1開口31bが設けられた第1電極31と、複数の第2開口32bが設けられ、第1電極31の一方の面と対向して設けられた第2電極32と、複数の目開き34bが設けられ、第1電極31と第2電極32との間に設けられたろ材34と、第1電極31の他方の面と接して設けられる第1ろ室30と、第1ろ室30に設けられ、第1電極31と対向する第3電極33と、第2電極32の他方の面と接して設けられる第2ろ室35と、を有する。第1ろ過装置91の第2ろ室35の中間処理液(第1中間処理液79a)が、第2ろ過装置92の第1ろ室30へ供給される。
これによれば、第1ろ過装置91及び第2ろ過装置92では、第1電極31と第3電極33との間で粒子に発生するクーロン力F(第3粒子76と第1電極31との間に発生する斥力)により粒子が第1電極31から第3電極33に向かう方向に移動する。このような電気泳動により、第1電極31の表面及びろ材34の表面にケーキ層が形成されることを抑制することができる。また、第1電極31と第2電極32との間の電界により水分子73を移動させてろ材34を透過させる電気浸透により、粒子を分離でき、第1ろ室30内でのスラリー(原液)70の粒子の濃縮度を高めることができる。これにより、単純にスラリー(原液)70に圧力を加え、ろ材34の目開き34bよりも大きい粒径の粒子を分離する方法に比べて、ろ過速度を数倍から10倍以上に向上させることができる。
また、ろ過システム300Bにおいて、第2電極32の第2電位V2の絶対値は、第1電極31の第1電位V1の絶対値よりも大きい。第1電位V1と第3電極33の第3電位V3との第1電位差は、第1電位V1と第2電位V2との第2電位差よりも大きい。第2ろ過装置92における第1電位差は、第1ろ過装置91における第1電位差よりも大きい。
これによれば、第1電極31と第2電極32との距離に比べ、ろ材34を挟んで対向する第1電極31と第3電極33との距離が大きい場合でも、電気泳動により、良好に第3粒子76を第3電極33側に移動させることができる。また、第1ろ過装置91及び第2ろ過装置92のそれぞれにおいて、異なる粒子が分離される。ろ過システム300Bは、2種類の粒子を含むスラリー(原液)70から、第3粒子76及び第4粒子77を別々に分離することができる。
また、図12Bに示すように、ろ過システム300Bは、第2ろ過装置92における第1ろ室30へ、第1ろ過装置91における、第2ろ室35の中間処理液(第1中間処理液79a)を供給するための第2加圧装置96をさらに備える。
これによれば、第2ろ過装置92における第1ろ室30の圧力を高めることができる。このため、ろ過システム300Bは、第2ろ過装置92のろ過速度をより向上させることができる。
また、図12Aに示すように、ろ過システム300Aは、第3ろ過装置93をさらに備える。第3ろ過装置93は、複数の第1開口31bが設けられた第1電極31と、複数の第2開口32bが設けられ、当該第1電極31の一方の面と対向して設けられた第2電極32と、複数の目開き34bが設けられ、当該第1電極31と当該第2電極32との間に設けられたろ材34と、当該第1電極31の他方の面と接して設けられる第1ろ室30と、当該第1ろ室30に設けられ、当該第1電極31と対向する第3電極33と、当該第2電極32の他方の面と接して設けられる第2ろ室35と、を有する。第3ろ過装置93において、第1電極31の第1電位V1と第3電極33の第3電位V3との第1電位差は、第1電位V1と第2電極32の第2電位V2との第2電位差よりも大きい。第2ろ過装置92における、第2ろ室35の中間処理液(第2中間処理液79b)が、第3ろ過装置93における第1ろ室30へ供給される。第3ろ過装置93における第1電位差は、第2ろ過装置92における第1電位差よりも大きい。
これによれば、第1ろ過装置91、第2ろ過装置92及び第3ろ過装置93のそれぞれにおいて、異なる粒子が分離される。ろ過システム300Aは、3種類の粒子を含むスラリー(原液)70から、第3粒子76、第4粒子77及び第5粒子78を別々に分離することができる。
(実施形態4の第1変形例)
図17は、実施形態4の第1変形例に係るろ過システムの構成例を模式的に示す模式図である。図18は、実施形態4の第1変形例に係るろ過システムの構成例を模式的に示す断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図17に示すように、実施形態4の第1変形例に係るろ過システム200Aは、直列に接続された第1ろ過装置91Aと、第2ろ過装置92Aと、第3ろ過装置93Aと、を備える。図18に示すように、第1ろ過装置91A、第2ろ過装置92A及び第3ろ過装置93Aのそれぞれは、筐体20と、筐体20の内部に配置される4つのろ過ユニット100と、第2ろ室35と、2つの第1電源51と、2つの第2電源52と、2つの第3電源53と、を備える。4つのろ過ユニット100は、ろ過ユニット101と、ろ過ユニット102と、ろ過ユニット105と、ろ過ユニット106と、を含む。ろ過ユニット101及びろ過ユニット102は、一方向Xに並んで配置される。ろ過ユニット105及びろ過ユニット106は、一方向Xに並んで配置される。ろ過ユニット101及びろ過ユニット105は、一方向Xに対して直交する他方向Yに並んで配置される。ろ過ユニット102及びろ過ユニット106は、他方向Yに並んで配置される。それぞれのろ過ユニット100は、第1ろ室30と、第1電極31と、第2電極32と、第3電極33と、ろ材34と、を有する。
1つのろ過ユニット100が備える第1電極31、第2電極32、第3電極33、及びろ材34は、他方向Yで隣り合うろ過ユニット100と共用される。言い換えると、1つの第1電極31、1つの第2電極32、1つの第3電極33及び1つのろ材34は、他方向Yで隣り合うろ過ユニット100(ろ過ユニット101及びろ過ユニット105の組、並びにろ過ユニット102及びろ過ユニット106の組)で共用される。
ろ過ユニット101及びろ過ユニット105では、一方向Xにおいて(図18の上から下に向かって)、複数の電極が、第3電極33、第1電極31、第2電極32の順に並ぶ。ろ過ユニット102及びろ過ユニット106では、一方向Xにおいて(図18の上から下に向かって)、複数の電極が、第2電極32、第1電極31、第3電極33の順に並ぶ。
筐体20には、スラリー供給部81と、第1排出部83と、第2排出部85とが接続されている。スラリー供給部81は、スラリー(原液)70、第1中間処理液79a、又は第2中間処理液79bを第1ろ室30に供給する配管である。第1排出部83は、濃縮スラリー70Aの一部を第1ろ室30から排出するための配管である。第1排出部83は、スラリー供給部81とは異なる位置に設けられる。第1排出部83は、バルブ84を備える。バルブ84が開放された場合に、第1排出部83は、第1ろ室30の濃縮スラリー70Aの一部を排出する。濃縮スラリー70Aは、分離対象物が分離された濃縮されたスラリー(原液)70である。第2排出部85は、第2ろ室35にある第1中間処理液79a、第2中間処理液79b、又は第3中間処理液79cを第2ろ室35から排出するための配管である。第2ろ室35は、筐体20の内壁、及び2つの第2電極32で囲まれる。第2ろ室35は、一方向Xに並んだ2つのろ過ユニット100の間に配置される。
第1ろ過装置91Aにおいて、各電極の駆動によりスラリー(原液)70の第3粒子76(図14参照)に発生する斥力及び引力のベクトルの総和F4が働くので、第3粒子76の分散状況に濃度勾配が生じる。第3粒子76が分離されたスラリー(原液)70は、第1電極31、ろ材34及び第2電極32を順次通過して、第2ろ室35に第1中間処理液79aとして流れる。第1ろ過装置91Aの第2ろ室35にある第1中間処理液79aは、第2排出部85を介して第2ろ過装置92Aに供給される。
第2ろ過装置92Aにおいて、各電極の駆動により第1中間処理液79aの第4粒子77(図15参照)に発生する斥力及び引力のベクトルの総和F5が働くので、第4粒子77の分散状況に濃度勾配が生じる。第4粒子77が分離された第1中間処理液79aは、第1電極31、ろ材34及び第2電極32を順次通過して、第2ろ室35に第2中間処理液79bとして流れる。第2ろ過装置92Aの第2ろ室35にある第2中間処理液79bは、第2排出部85を介して第3ろ過装置93Aに供給される。
第3ろ過装置93Aにおいて、各電極の駆動により第2中間処理液79bの第5粒子78(図16参照)に発生する斥力及び引力のベクトルの総和F6が働くので、第5粒子78の分散状況に濃度勾配が生じる。第5粒子78が分離された第2中間処理液79bは、第1電極31、ろ材34及び第2電極32を順次通過して、第2ろ室35に第3中間処理液(ろ液)79cとして流れる。第3ろ過装置93Aの第2ろ室35にある第3中間処理液(ろ液)79cは、第2排出部85を介してスラリー(原液)70が貯留されたタンク80に戻される(図17参照)。第3中間処理液(ろ液)79cは、清澄ろ液の極性溶媒72である。
なお、ろ過システム200Aにおいて、複数のろ過ユニット100は、一方向X及び他方向Yの両方に対して直交する方向(図18における紙面の奥行き方向)に並んで配置されてもよい。すなわち、複数のろ過ユニット100は、3次元的に並んで配置されてもよい。
第1ろ過装置91A、第2ろ過装置92A及び第3ろ過装置93Aのそれぞれは、必ずしも第1電源51、第2電源52、及び第3電源53を2つずつ備えていなくてもよい。第1電源51、第2電源52、及び第3電源53のうち定電圧電源である電源の数は、1つであってもよい。例えば、第1電源51及び第3電源53が定電圧電源である場合、第1電源51及び第3電源53の数が1つであってもよい。この場合、1つの第1電源51が複数の第1電極31に接続され、1つの第3電源53が複数の第3電極33に接続される。
(実施形態4の第2変形例)
図19は、実施形態4の第2変形例に係るろ過装置の構成例を模式的に示す断面図である。上述したように、図18に示す、4つのろ過ユニット100は、ろ過ユニット101と、ろ過ユニット102と、ろ過ユニット105と、ろ過ユニット106と、を含む。図18に示すろ過ユニット101と、ろ過ユニット102と、第2ろ室35で構成されるろ過ユニットが、図19に示すろ過ユニット110に相当する。同様に、図18に示すろ過ユニット105と、ろ過ユニット106と、第2ろ室35で構成されるろ過ユニットが、図19に示すろ過ユニット110に相当する。図18では、図19に示すろ過ユニット110が方向Yに2つ直列に配置されている。図19に示す、ろ過装置94では、ろ過ユニット110が方向Yに4つ直列に配置されている。
図19には、ろ過装置94のY方向距離に応じた、第1ろ室30内のマイナスに帯電した粒子の濃度の関係を模式的に示すグラフが併記されている。ろ過装置94において、スラリー供給部81からスラリー70を第1ろ室30に導入する。第1ろ室30内のマイナスに帯電した粒子の濃度は、スラリー供給部81から濃縮スラリー70Aを排出する第1排出部83側にスラリーが移動するにつれて、増加する。
なお、ろ過装置94において、隣り合うろ過ユニット110の第1ろ室30の境界には、隔壁を備え、ろ過ユニット110間を移動する流量を制限してもよい。
(実施形態4の第3変形例)
図20は、実施形態4の第3変形例に係る第1ろ過装置、第2ろ過装置及び第3ろ過装置の模式図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図20に示すように、実施形態4の第3変形例に係るろ過システム200Bは、直列に接続された第1ろ過装置91Bと、第2ろ過装置92Bと、第3ろ過装置93Bと、を備える。第1ろ過装置91B、第2ろ過装置92B、及び第3ろ過装置93Bのそれぞれは、8つのろ過ユニット100と、2つの第2ろ室35と、を備える。図10と同様であるので、図示は省略するが、実施形態4の第3変形例に係るろ過システム200Bは、4つの第1電源51と、4つの第2電源52と、4つの第3電源53と、を備える。
8つのろ過ユニット100は、ろ過ユニット101と、ろ過ユニット102と、ろ過ユニット103と、ろ過ユニット104と、ろ過ユニット105と、ろ過ユニット106と、ろ過ユニット107と、ろ過ユニット108と、を含む。ろ過ユニット101、ろ過ユニット102、ろ過ユニット103と、及びろ過ユニット104は、一方向Xに並んで配置される。ろ過ユニット105及びろ過ユニット106、ろ過ユニット107、及びろ過ユニット108は、一方向Xに並んで配置される。ろ過ユニット103及びろ過ユニット107は、他方向Yに並んで配置される。ろ過ユニット104及びろ過ユニット108は、他方向Yに並んで配置される。
1つのろ過ユニット100が備える第1電極31、第2電極32、第3電極33、及びろ材34は、他方向Yで隣り合うろ過ユニット100と共用される。言い換えると、1つの第1電極31、1つの第2電極32、1つの第3電極33及び1つのろ材34は、他方向Yで隣り合うろ過ユニット100(ろ過ユニット103及びろ過ユニット107の組、並びにろ過ユニット104及びろ過ユニット108の組)で共用される。
ろ過ユニット103及びろ過ユニット107では、一方向Xにおいて(図20の上から下に向かって)、複数の電極が、第3電極33、第1電極31、第2電極32の順に並ぶ。ろ過ユニット104及びろ過ユニット108では、一方向Xにおいて(図20の上から下に向かって)、複数の電極が、第2電極32、第1電極31、第3電極33の順に並ぶ。
ろ過ユニット102が備える第3電極33は、一方向Xで隣り合うろ過ユニット103と共用される。ろ過ユニット106が備える第3電極33は、一方向Xで隣り合うろ過ユニット107と共用される。言い換えると、一方向Xに2つの並んだ第1ろ室30の間は、一方向Xに隣り合うろ過ユニット100(ろ過ユニット102及びろ過ユニット103の組、並びにろ過ユニット106及びろ過ユニット107の組)で共用される第3電極33で区画されている。
スラリー(原液)70は、第1ろ過装置91Bのろ過ユニットに設けた供給部16Aに導入され、第1ろ過装置91Bのろ過ユニット101、102の第1ろ室30内に供給される。
第1ろ室30に設けた第1排出部831は、ろ過ユニット105及びろ過ユニット106の第1ろ室30の濃縮スラリー(原液)70Aの一部を排出する。第2排出部851は、ろ過ユニット105及びろ過ユニット106の間の第2ろ室35にある。第2排出部851は、第1中間処理液79a、第2中間処理液79b、又は第3中間処理液79cを第2ろ室35から排出するための配管である。第2排出部851からの排出液は、ろ過ユニット103及びろ過ユニット104の第1ろ室30に接続される。
第3排出部832は、ろ過ユニット107及びろ過ユニット108の第1ろ室30の濃縮スラリー70Aを排出する。第4排出部852は、ろ過ユニット107及びろ過ユニット108の間の第2ろ室35にある第1中間処理液79a、第2中間処理液79b、又は第3中間処理液(ろ液)79cを第2ろ室35から排出するための配管である。
なお、第1ろ過装置91Bと、第2ろ過装置92Bと、第3ろ過装置93Bにおいては、必ずしも4つのろ過ユニット100が一方向Xに並んでいなくてもよい。一方向Xに並ぶろ過ユニット100の数は、3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。また、一方向Xに2つの並んだ第1ろ室30の間に配置される第3電極33は、必ずしも2つのろ過ユニット100で共用されなくてもよい。すなわち、一方向Xに2つの並んだ第1ろ室30の間に、互いに絶縁された2つの第3電極33が配置されてもよい。
なお、ろ過システム200Bにおいて、複数のろ過ユニット100は、一方向X及び他方向Yの両方に対して直交する方向(図20における紙面の奥行き方向)に並んで配置されてもよい。すなわち、複数のろ過ユニット100は、3次元的に並んで配置されてもよい。
第1ろ過装置91B、第2ろ過装置92B及び第3ろ過装置93Bのそれぞれは、必ずしも第1電源51、第2電源52、及び第3電源53を4つずつ備えていなくてもよい。第1電源51、第2電源52、及び第3電源53のうち定電圧電源である電源の数は、1つであってもよい。例えば、第1電源51及び第3電源53が定電圧電源である場合、第1電源51及び第3電源53の数が1つであってもよい。この場合、1つの第1電源51が複数の第1電極31に接続され、1つの第3電源53が複数の第3電極33に接続される。
図20において、第1ろ過装置91Bのろ過ユニット105、106に設けた第2排出部851から排出された符号A(ろ液(第1中間処理液79a、第2中間処理液79b、第3中間処理液79c))は、下段のろ過ユニット103のスラリー供給部16Bから導入され、ろ過ユニット103、104の第1ろ室30内に供給される。
さらに、第1ろ過装置91Bのろ過ユニット107、108の第4排出部852から排出される符号B(ろ液(第1中間処理液79a、第2中間処理液79b、第3中間処理液79c)は、直列に配置された第2ろ過装置92Bのろ過ユニットに設けた供給部16Aに導入され、第2ろ過装置92Bのろ過ユニット101、102の第1ろ室30内に供給される。
(実施形態5)
図21は、実施形態5に係るろ過装置の模式図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図21に示すように、実施形態5のろ過装置10は、筐体40と、第1ろ室400と、第1電極401と、第2電極402と、第3電極403と、第1ろ材404と、第2ろ室405と、第4電極411と、第5電極412と、第2ろ材414と、第3ろ室415と、第6電極421と、第7電極422と、第3ろ材424と、第4ろ室425と、第1電源61と、第2電源62と、第4電源64と、第5電源65と、第6電源66と、第7電源67と、を有する。
第1ろ室400は、筐体40の内壁、第1電極401、及び第3電極403で囲まれた空間である。第1電極401及び第2電極402は、メッシュ状の電極である。具体的には、第1電極401は、複数の導電細線401aを有し、複数の導電細線401aの間に複数の第1開口401bが設けられる。第2電極402は、複数の導電細線402aを有し、複数の導電細線402aの間に複数の第2開口402bが設けられる。第2電極402は、第1ろ材404を介して第1電極401の一方の面(下面)と対向して設けられる。言い換えると、第1ろ材404は、第1電極401と第2電極402との間に設けられる。第1電極401及び第2電極402は、第1ろ材404と直接、接して設けられる。第3電極403は、板状の部材であり、第1ろ室400を挟んで第1電極401の他方の面(上面)と対向して設けられる。
第1ろ材404は、ろ過膜404aと、第1目開き404bと、を含む。ろ過膜404aに複数の第1目開き404bが設けられている。ろ過膜404aに対して電界が働く。第1ろ材404は、例えば、精密ろ過膜(MF膜(Microfiltration Membrane))が用いられる。実施形態5では、第1ろ材404は、樹脂材料等の絶縁材料で形成されている。第2ろ室405は、第2電極402を挟んで第1電極401とは反対側に配置される。第2ろ室405は、第2電極402と接して設けられる。
第1電極401は、第1電源61の第2端子61bと電気的に接続される。また、第1電極401は、第2電源62の第1端子62aと電気的に接続される。第2電極402は、第2電源62の第2端子62bと電気的に接続される。第3電極403及び第1電源61の第1端子61aは、基準電位GNDに接続される。
第1電源61は、第1電極401に、第3粒子76、第4粒子77、及び第5粒子78の極性と同じ極性の第1電位V1を供給する。第1電位V1は、例えば-20Vである。第2電源62は、第2電極402に、第3粒子76、第4粒子77、及び第5粒子78の極性と同じ極性であって、第1電位V1の絶対値よりも大きい絶対値の第2電位V2を供給する。第2電位V2は、例えば-30Vである。第1電極401の第1電位V1(-20V)と第3電極403の第3電位(0V)との電位差(20V)は、第1電位V1(-20V)と第2電極402の第2電位V2(-30V)との電位差(10V)よりも大きい。なお、ろ過装置10がさらに第3電源を備えており、第3電源が第3電極403に第3粒子76、第4粒子77、及び第5粒子78の極性と異なる極性の第3電位V3(例えば+30V)を供給してもよい。第1電位V1、第2電位V2及び第3電位V3は、絶対値で1mV以上1000V以下の範囲で設定することができる。
第4電極411及び第5電極412は、メッシュ状の電極である。具体的には、第4電極411は、複数の導電細線411aを有し、複数の導電細線411aの間に複数の第4開口411bが設けられる。第4電極411は、第2電極402との間に第2ろ室405を挟んで配置される。第5電極412は、複数の導電細線412aを有し、複数の導電細線412aの間に複数の第5開口412bが設けられる。第5電極412は、第2ろ材414を介して第4電極411の一方の面(下面)と対向して設けられる。言い換えると、第2ろ材414は、第4電極411と第5電極412との間に設けられる。第4電極411及び第5電極412は、第2ろ材414と直接、接して設けられる。第4電極411及び第5電極412は、例えば、チタン合金やアルマイト処理されたアルミニウム合金が用いられる。
第2ろ材414は、ろ過膜414aと、第2目開き414bと、を含む。ろ過膜414aに複数の第2目開き414bが設けられている。ろ過膜414aに対して電界が働く。第2目開き414bの大きさは、第1ろ材404の第1目開き404bと同じである。第2ろ材414は、例えば、精密ろ過膜(MF膜(Microfiltration Membrane))、限外ろ過膜(UF膜(Ultrafiltration Membrane))等が用いられる。第2ろ材414は、樹脂材料等の絶縁材料で形成されている。第3ろ室415は、第5電極412を挟んで第4電極411とは反対側に配置される。第3ろ室415は、第5電極412と接して設けられる。
第4電極411は、第4電源64の第2端子64bと電気的に接続される。また、第4電極411は、第5電源65の第1端子65aと電気的に接続される。第5電極412は、第5電源65の第2端子65bと電気的に接続される。第4電源64の第1端子64aは、基準電位GNDに接続される。
第4電源64は、第4電極411に、第3粒子76、第4粒子77、及び第5粒子78の極性と同じ極性の第4電位V4を供給する。第4電位V4は、例えば-40Vである。第5電源65は、第5電極412に、第3粒子76、第4粒子77、及び第5粒子78の極性と同じ極性であって、第4電位V4の絶対値よりも大きい絶対値の第5電位V5を供給する。第5電位V5は、例えば-50Vである。第4電極411の第4電位V4(-40V)と第3電位V3(0V)との電位差(40V)は、第4電位V4(-40V)と第5電極412の第5電位(-50V)との電位差(10V)よりも大きい。第4電位V4(-40V)と第3電位V3(0V)との電位差(40V)は、第1電位V1(-20)と第3電位V3(0V)との電位差(20V)よりも大きい。第4電位V4及び第5電位V5は、絶対値で1mV以上1000V以下の範囲で設定することができる。
第6電極421及び第7電極422は、メッシュ状の電極である。具体的には、第6電極421は、複数の導電細線421aを有し、複数の導電細線421aの間に複数の第6開口421bが設けられる。第6電極421は、第5電極412との間に第3ろ室415を挟んで配置される。第7電極422は、複数の導電細線422aを有し、複数の導電細線422aの間に複数の第7開口422bが設けられる。第7電極422は、第3ろ材424を介して第6電極421の一方の面(下面)と対向して設けられる。言い換えると、第3ろ材424は、第6電極421と第7電極422との間に設けられる。第6電極421及び第7電極422は、第3ろ材424と直接、接して設けられる。第6電極421及び第7電極422は、例えば、チタン合金やアルマイト処理されたアルミニウム合金が用いられる。
第3ろ材424は、ろ過膜424aと、第3目開き424bと、を含む。ろ過膜424aに複数の第3目開き424bが設けられている。ろ過膜424aに対して電界が働く。第3目開き424bの大きさは、第2ろ材414の第2目開き414bと同じである。第3ろ材424は、例えば、精密ろ過膜(MF膜(Microfiltration Membrane))が用いられる。第3ろ材424は、樹脂材料等の絶縁材料で形成されている。第4ろ室425は、第7電極422を挟んで第6電極421とは反対側に配置される。第4ろ室425は、第7電極422と接して設けられる。
第6電極421は、第6電源66の第2端子66bと電気的に接続される。また、第6電極421は、第7電源67の第1端子67aと電気的に接続される。第7電極422は、第7電源67の第2端子67bと電気的に接続される。第6電源66の第1端子66aは、基準電位GNDに接続される。
第6電源66は、第6電極421に、第3粒子76、第4粒子77、及び第5粒子78の極性と同じ極性の第6電位V6を供給する。第6電位V6は、例えば-60Vである。第7電源67は、第7電極422に、第3粒子76、第4粒子77、及び第5粒子78の極性と同じ極性であって、第6電位V6の絶対値よりも大きい絶対値の第7電位V7を供給する。第7電位V7は、例えば-70Vである。第6電極421の第6電位V6(-60V)と第3電位V3(0V)との電位差(60V)は、第6電位V6(-60V)と第7電極422の第7電位V7(-70V)との電位差(10V)よりも大きい。第6電位V6(-60V)と第3電位V3(0V)との電位差(60V)は、第4電位V4(-40V)と第3電位(0V)との電位差(40V)よりも大きい。第6電位V6及び第7電位V7は、絶対値で1mV以上1000V以下の範囲で設定することができる。
加圧装置99は、第4ろ室425のろ液79cを第1ろ室400に戻す。加圧装置99は、例えば加圧ポンプである。加圧装置99及び配管を用いて液体を搬送することは、流体コンベアとも呼ばれる。加圧装置99は、第1ろ室400、第2ろ室405及び第3ろ室415のろ過抵抗(圧力損失)の合計よりも大きな圧力を第1ろ室400に与えることができる。加圧装置99の循環流量は、第1ろ室400、第2ろ室405及び第3ろ室415のうち最もろ過速度(取得ろ液量)の少ないろ室の容量以下である。
第1ろ室400において、第1電極401に近い位置の第3粒子76には、より強力な斥力が発生し、第3電極403に近い位置の第3粒子76には、より強力な引力が発生する。マイナスに帯電した第3粒子76に発生する斥力及び引力のベクトルの総和F4は、矢印に示す方向、すなわち第1電極401から離れ第3電極403に近づく方向に作用する。マイナスに帯電した第3粒子76は、電気泳動により第3電極403側に移動する。
これにより、第1ろ室400において、第3粒子76が第1電極401の表面及び第1ろ材404の表面に堆積してケーキ層が形成されることが抑制される。つまり、第1ろ材404の第1目開き404bのろ過抵抗が増大することを抑制することができる。
また、プラスに帯電した水分子73は、第1電極401との間に引力が発生する。プラスに帯電した水分子73に作用する引力F2は、矢印に示す方向、すなわち第3電極403から第1電極401に向かう方向に作用する。プラスに帯電した水分子73は、第1電極401側に移動する。この際、第1電極401と第2電極402との間の電位差により、第1ろ材404を厚さ方向に貫通するように、第1電極401から第2電極402に向かう電界が形成されている。
第1電極401側に移動した水分子73は、電界Eにより力を受けて、第2電極402側に引っ張られて第1ろ材404を通過する。プラスに帯電した水分子73の移動に伴って、帯電していない水分子も第2電極402側に引きずられて、電気浸透流が形成される。これにより、プラスに帯電した水分子73を含む極性溶媒72は、第2ろ室405に流れる。上述したように、第3粒子76は、電気泳動により第1電極401から引き離され、第3電極403側に移動しており、第3粒子76が分離された極性溶媒72が排出されることで、第1ろ室400内のスラリー(原液)70の第3粒子76の濃度を高めることができる。
また、第1電極401と第2電極402との間に形成される電界Eを制御することで、第1ろ材404を通過する粒子レベル(粒子径)も制御することができる。例えば、第1電極401に第1電位V1=-20Vを印加し、第2電極402に第2電位V2=-30Vを印加することで、第1電極401と第2電極402との間にバリアの電界Eが形成される。これにより、ろ過装置10は、第3粒子76が第1ろ材404を通過することを抑制し、第4粒子77及び第5粒子78が第1ろ材404を通過することを許容する。このため、第1ろ室400内のスラリー(原液)70の第3粒子76の濃度を高めることができる。
例えば、第4電極411に第4電位V4=-40Vを印加し、第5電極412に第5電位V5=-50Vを印加することで、第4電極411と第5電極412との間にバリアの電界Eが形成される。これにより、ろ過装置10は、第4粒子77が第2ろ材414を通過することを抑制し、第5粒子78が第2ろ材414を通過することを許容する。このため、第2ろ室405内の第1中間処理液79aの第4粒子77の濃度を高めることができる。
例えば、第6電極421に第6電位V6=-60Vを印加し、第7電極422に第7電位V7=-70Vを印加することで、第6電極421と第7電極422との間にバリアの電界が形成される。これにより、ろ過装置10は、第5粒子78が第3ろ材424を通過することを抑制する。このため、第3ろ室415内の第2中間処理液79bの第5粒子78の濃度を高めることができる。
以上説明したように、実施形態5のろ過装置10は、複数の第1開口401bが設けられた第1電極401と、複数の第2開口402bが設けられ、第1電極401の一方の面と対向して設けられた第2電極402と、複数の第1目開き404bが設けられ、第1電極401と第2電極402との間に設けられた第1ろ材404と、第1電極401の他方の面と接して設けられる第1ろ室400と、第1ろ室400に設けられ、第1電極401と対向する第3電極403と、第2電極402の他方の面と接して設けられる第2ろ室405と、を有する。さらに、ろ過装置10は、第2電極402との間に第2ろ室405を挟み、複数の第4開口411bが設けられた第4電極411と、複数の第5開口412bが設けられ、第4電極411の一方の面と対向して設けられた第5電極412と、複数の第2目開き414bが設けられ、第4電極411と第5電極412との間に設けられた第2ろ材414と、第5電極412の他方の面と接して設けられる第3ろ室415と、を有する。第1電極401の第1電位V1と第3電極403の第3電位V3との電位差は、第1電位V1と第2電極402の第2電位V2との電位差よりも大きい。第4電極411の第4電位V4と第3電位V3との電位差は、第4電位V4と第5電極412の第5電位V5との電位差よりも大きい。第4電位V4と第3電位V3との電位差は、第1電位V1と第3電位V3との電位差よりも大きい。
これによれば、ろ過装置10では、第1電極401と第3電極403との間で粒子に発生するクーロン力Fにより粒子が第1電極401から第3電極403に向かう方向に移動する。このような電気泳動により、第1電極401の表面及び第1ろ材404の表面にケーキ層が形成されることを抑制することができる。また、第1電極401と第2電極402との間の電界により水分子73を移動させて第1ろ材404を透過させる電気浸透により、粒子を分離でき、第1ろ室400内でのスラリー(原液)70の粒子の濃縮度を高めることができる。これにより、単純にスラリー(原液)70に圧力を加え、第1ろ材404の第1目開き404bよりも大きい粒径の粒子を分離する方法に比べて、ろ過速度を数倍から10倍以上に向上させることができる。また、第1ろ室400及び第2ろ室405のそれぞれにおいて、異なる粒子が分離される。ろ過装置10は、2種類の粒子を含むスラリー(原液)70から、第3粒子76及び第4粒子77を別々に分離することができる。
また、実施形態5のろ過装置10は、第5電極412との間に第3ろ室415を挟み、複数の第6開口421bが設けられた第6電極421と、複数の第7開口422bが設けられ、第6電極421の一方の面と対向して設けられた第7電極422と、複数の第3目開き424bが設けられ、第6電極421と第7電極422との間に設けられた第3ろ材424と、第7電極422の他方の面と接して設けられる第4ろ室425と、を有する。第6電極421の第6電位V6と第3電位V3との電位差は、第6電位V6と第7電極422の第7電位V7との電位差よりも大きい。第6電位V6と第3電位V3との電位差は、第4電位V4と第3電位V3との電位差よりも大きい。
これによれば、第1ろ室400、第2ろ室405、及び第3ろ室415のそれぞれにおいて、異なる粒子が分離される。ろ過装置10は、3種類の粒子を含むスラリー(原液)70から、第3粒子76、第4粒子77、及び第5粒子78を別々に分離することができる。
なお、分離された第3粒子76、第4粒子77及び第5粒子78の各分離物は別途精製され、その成分の性質に応じて、例えば健康食品の添加物、保湿化粧品、育毛剤成分等適宜、有価物として回収される。
(実施形態6)
図22は、実施形態6に係るろ過装置の構成例を模式的に示す断面図である。図23は、実施形態6に係る第3電極の構成例を模式的に示す平面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図22に示すように、実施形態6のろ過装置10は、実施形態2の第3電極33を回転可能としている。実施形態6のろ過装置10は、実施形態1の構成に加え、モータMと、接続導体56が回転しても電位を供給可能な電極ブラシBEとを備える。モータMは、接続導体56を回転し、第3電極33を回転する。
図23に示すように、第3電極33は、樹脂製の基材33Bの表面に露出する、厚みが例えば1mmから2mm程度の羽根付き電極33Aを有する。羽根付き電極33Aは、複数の羽根部33pと、複数の羽根部33pを電気的に接続する中央部33Cとを備える。中央部33Cの裏面には、接続導体56が当接しており、第3電極33には、第3電位V3が供給される。
第3電極33の周囲には、第1粒子71が滞留する。第1粒子71の滞留時間が長いと、第1粒子71が変性する可能性がある。実施形態6のろ過装置10は、第3電極33を回転させるので、第3電極33の回りの極性溶媒72を撹拌することができる。その結果、第1粒子71が移動して、第3電極33の表面近傍に存在し続けることを抑制できる。その結果、第1粒子71の変性を抑制し、第1電極31と第3電極33との間の電界分布を均一にすることができる。
実施形態6のろ過装置10は、実施形態2以外の上述した実施形態の第3電極33を回転可能としてもよい。また、実施形態6では、第3電極33が回転するが、第1電極31及び第2電極32が回転してもよい。
(変形例)
なお、実施形態1から実施形態6のスラリー(原液)70の溶媒は、極性溶媒であるプラスに帯電している水分子73を例示しているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、非極性溶媒(例えばトルエン、ジオキサン、EG(エチレングリコール)、THF(テトラヒドロフラン)、油(植物油、鉱物油)等)であってもよい。
なお、上記した実施の形態は、本開示の理解を容易にするためのものであり、本開示を限定して解釈するためのものではない。本開示は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本開示にはその等価物も含まれる。
(付記)
本実施形態は、以下の構成を含む。
(1)
複数の第1開口が設けられた第1電極と、
複数の第2開口が設けられ、前記第1電極の一方の面と対向して設けられた第2電極と、
複数の目開きが設けられ、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられたろ材と、
前記第1電極の他方の面と接して設けられ、分離対象の粒子と液体とを含む対象処理液が供給されるろ室と、
前記ろ室を挟んで前記第1電極と対向する第3電極と、を含む、
ろ過装置。
(2)
前記第1電極に、前記粒子の極性と同じ極性の第1電位が供給され、
前記第2電極に、前記粒子の極性と同じ極性であって、前記第1電位の絶対値よりも異なる絶対値の第2電位が供給される、
上記(1)に記載のろ過装置。
(3)
前記第1電極に、前記粒子の極性と同じ極性の前記第1電位を供給する第1電源と、
前記第2電極に、前記粒子の極性と同じ極性の前記第2電位を供給する第2電源と、をさらに有し、
前記第3電極は、基準電位に接続される
上記(2)に記載のろ過装置。
(4)
前記第2電位の絶対値は前記第1電位の絶対値よりも大きく、
前記第1電位と前記基準電位との電位差は、前記第1電位と前記第2電位との電位差よりも大きい
上記(3)に記載のろ過装置。
(5)
前記第1電源は、定電圧源であり、
前記第2電源は、定電流源である
上記(3)又は上記(4)に記載のろ過装置。
(6)
前記第1電極に、前記粒子の極性と同じ極性の第1電位を供給する第1電源と、
前記第2電極に、前記粒子の極性と同じ極性の第2電位を供給する第2電源と、
前記第3電極に、前記粒子の極性と異なる極性の第3電位を供給する第3電源と、をさらに有する
上記(1)に記載のろ過装置。
(7)
前記第2電位の絶対値は前記第1電位の絶対値よりも大きく、
前記第1電位と前記第3電位との電位差は、前記第1電位と前記第2電位との電位差よりも大きい
上記(6)に記載のろ過装置。
(8)
前記第1電源及び前記第3電源は、定電圧源であり、
前記第2電源は、定電流源である
上記(6)又は上記(7)に記載のろ過装置。
(9)
前記第1電極の表面に垂直な方向で、
前記第2電極、前記ろ材、前記第1電極、前記ろ室、前記第3電極の順に積層され、前記第1電極と前記第2電極との間の距離は、前記第1電極と前記第3電極との間の距離よりも小さい
上記(1)から上記(8)のいずれか1つに記載のろ過装置。
(10)
前記目開きの大きさは、前記第1開口及び前記第2開口よりも小さい
上記(1)から上記(9)のいずれか1つに記載のろ過装置。
(11)
さらに、貫通孔を有する側部筐体と、前記側部筐体を支持する下部筐体と、前記側部筐体の前記貫通孔に挿入される上部筐体と、を有し、
前記第1電極、前記第2電極及び前記ろ材の外縁は、前記側部筐体と前記下部筐体との間に挟まれて固定され、
前記第3電極は、前記上部筐体の前記下部筐体と対向する面に固定され、
前記第1電極、前記第2電極及び前記ろ材と、前記側部筐体の内壁と、前記第3電極とで囲まれた空間に前記ろ室が形成される
上記(1)から上記(10)のいずれか1つに記載のろ過装置。
(12)
前記第3電極は、回転する、
上記(1)から上記(11)のいずれか1つに記載のろ過装置。
(13)
複数のろ過ユニットを有するろ過装置であって、
前記ろ過ユニットは、
複数の第1開口が設けられた第1電極と、
複数の第2開口が設けられ、かつ前記第1電極の一方の面と対向して設けられた第2電極と、
複数の目開きが設けられ、かつ前記第1電極と前記第2電極との間に設けられたろ材と、
前記第1電極の他方の面と接して設けられる第1ろ室と、
前記第1ろ室に設けられ、かつ前記第1電極と対向する第3電極と、を含み、
2つの、前記ろ過ユニットが一方向に並んで配置され、2つの前記第2電極の間に設けられる第2ろ室を備える、ろ過装置。
(14)
一方の前記ろ過ユニットでは、前記一方向において、複数の電極が、前記第3電極、前記第1電極、前記第2電極の順に並び、
他方の前記ろ過ユニットでは、前記一方向において、複数の電極が、前記第2電極、前記第1電極、前記第3電極の順に並ぶ、上記(13)に記載のろ過装置。
(15)
前記第1ろ室には、対象処理液を供給するための供給部と、前記供給部とは異なる位置に設けられ、前記対象処理液の一部を排出するための第1排出部とが接続されている上記(13)又は上記(14)に記載のろ過装置。
(16)
前記一方向に対して直交する他方向に2つの前記ろ過ユニットが並んで配置される
上記(13)から上記(15)のいずれか1つに記載のろ過装置。
(17)
前記第2ろ室には、前記第2ろ室にあるろ液を排出するための第2排出部が接続されている、上記(13)から上記(16)のいずれか1つに記載のろ過装置。
(18)
3つ以上の前記ろ過ユニットが並んで配置され、
2つの並んだ前記第1ろ室の間は、隣り合う前記ろ過ユニットで共用される前記第3電極で区画されている、上記(13)から上記(17)のいずれか1つに記載のろ過装置。
(19)
1つの前記ろ過ユニットにおいて、前記第2電極の第2電位の絶対値は、前記第1電極の第1電位の絶対値よりも大きく、前記第1電位と前記第3電極の第3電位との電位差は、前記第1電位と前記第2電位との電位差よりも大きい、
上記(13)から上記(18)のいずれか1つに記載のろ過装置。
(20)
定電圧電源である第1電源を含み、
1つの前記第1電源が、複数の前記第1電極に第1電位を供給する
上記(13)から上記(19)のいずれか1つに記載のろ過装置。
(21)
第2電源を定電圧電源とした場合、
1つの前記第2電源が、複数の前記第2電極に第2電位を供給する
上記(13)から上記(20)のいずれか1つに記載のろ過装置。
(22)
定電圧電源である第3電源を含み、
1つの前記第3電源が、複数の前記第3電極に第3電位を供給する
上記(13)から上記(21)のいずれか1つに記載のろ過装置。
(23)
第1ろ過装置と、第2ろ過装置とを備え、
前記第1ろ過装置及び前記第2ろ過装置は、それぞれ、
複数の第1開口が設けられた第1電極と、
複数の第2開口が設けられ、前記第1電極の一方の面と対向して設けられた第2電極と、
複数の目開きが設けられ、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられたろ材と、
前記第1電極の他方の面と接して設けられる第1ろ室と、
前記第1ろ室に設けられ、前記第1電極と対向する第3電極と、
前記第2電極の他方の面と接して設けられる第2ろ室と、
を有し、
前記第1ろ過装置の第2ろ室の中間処理液が、前記第2ろ過装置の第1ろ室へ供給される、
ろ過システム。
(24)
前記第2電極の第2電位の絶対値は、前記第1電極の第1電位の絶対値よりも大きく、
前記第1電位と前記第3電極の第3電位との第1電位差は、前記第1電位と前記第2電位との第2電位差よりも大きく、
前記第2ろ過装置における第1電位差は、前記第1ろ過装置における第1電位差よりも大きい、
上記(23)に記載のろ過システム。
(25)
前記第2ろ過装置における第1ろ室へ、前記第1ろ過装置における、第2ろ室の中間処理液を供給するための加圧装置をさらに備える、
上記(23)又は上記(24)に記載のろ過システム。
(26)
第3ろ過装置をさらに備え、
前記第3ろ過装置は、
複数の第1開口が設けられた第1電極と、
複数の第2開口が設けられ、当該第1電極の一方の面と対向して設けられた第2電極と、
複数の目開きが設けられ、当該第1電極と当該第2電極との間に設けられたろ材と、
当該第1電極の他方の面と接して設けられる第1ろ室と、
当該第1ろ室に設けられ、当該第1電極と対向する第3電極と、
当該第2電極の他方の面と接して設けられる第2ろ室と、
を有し、
前記第3ろ過装置において、前記第1電極の第1電位と前記第3電極の第3電位との第1電位差は、前記第1電位と前記第2電極の第2電位との第2電位差よりも大きく、
前記第2ろ過装置における、第2ろ室の中間処理液が、前記第3ろ過装置における第1ろ室へ供給され、
前記第3ろ過装置における第1電位差は、前記第2ろ過装置における第1電位差よりも大きい、
上記(23)から上記(25)のいずれか1つに記載のろ過システム。
(27)
複数の第1開口が設けられた第1電極と、
複数の第2開口が設けられ、前記第1電極の一方の面と対向して設けられた第2電極と、
複数の第1目開きが設けられ、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた第1ろ材と、
前記第1電極の他方の面と接して設けられる第1ろ室と、
前記第1ろ室に設けられ、前記第1電極と対向する第3電極と、
前記第2電極の他方の面と接して設けられる第2ろ室と、
前記第2電極との間に前記第2ろ室を挟み、複数の第4開口が設けられた第4電極と、
複数の第5開口が設けられ、前記第4電極の一方の面と対向して設けられた第5電極と、
複数の第2目開きが設けられ、前記第4電極と前記第5電極との間に設けられた第2ろ材と、
前記第5電極の他方の面と接して設けられる第3ろ室と、
を有し、
前記第1電極の第1電位と前記第3電極の第3電位との電位差は、前記第1電位と前記第2電極の第2電位との電位差よりも大きく、
前記第4電極の第4電位と前記第3電位との電位差は、前記第4電位と前記第5電極の第5電位との電位差よりも大きく、
前記第4電位と前記第3電位との電位差は、前記第1電位と前記第3電位との電位差よりも大きい、
ろ過装置。
(28)
前記第5電極との間に第3ろ室を挟み、複数の第6開口が設けられた第6電極と、
複数の第7開口が設けられ、前記第6電極の一方の面と対向して設けられた第7電極と、
複数の第3目開きが設けられ、前記第6電極と前記第7電極との間に設けられた第3ろ材と、
前記第7電極の他方の面と接して設けられる第4ろ室と、
を有し、
前記第6電極の第6電位と前記第3電位との電位差は、前記第6電位と前記第7電極の第7電位との電位差よりも大きく、
前記第6電位と前記第3電位との電位差は、前記第4電位と前記第3電位との電位差よりも大きい、
上記(27)に記載のろ過装置。