JP7116623B2 - 電子デバイスの製造に用いる通気性シート - Google Patents

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本発明は、プリンテッドエレクトロニクスに利用して好適な技術であって、真空吸着装置の吸着ステージに吸引固定された基材の表面へ印刷を施す際に、前記吸着ステージと前記基材との間に介在使用する通気性シートに関し、特に、1枚の基材に対して繰り返し印刷を行う多層印刷技術に用いて好適な通気性シートに関する。
電気機器の小型化に伴い、小型で軽量な、或いは厚さの薄い、集積回路や配線材または電子基板などの電子部品(以降、包括的に電子部品と称することがある)の開発が進められている。このような要請に応える技術として、近年、プリンテッドエレクトロニクスが実用に供されている。プリンテッドエレクトロニクスとは、導電性成分或いは絶縁素材などを配合した各種インク(以降、プリンテッドエレクトロニクスに使用される各種インクを単にインクと称することがある)を、フィルムなどの基材表面に印刷し、この基材に種々の電子部品を作り込む技術分野である。プリンテッドエレクトロニクスを用いることで、例えば、フィルムや布帛(不織布、編物、織物)などの軽くて薄い基材や、柔軟性を有する基材の表面に電子部品を作り込み、小型・軽量化されたフレキシブルな電気機器を提供することができる(以下、これら基材を包括的に非通気性基材と称する)。またプリンテッドエレクトロニクスでは、非通気性基材への複数回印刷が可能であるため、例えば導電性インクなどの印刷材で所定パターンを印刷し、これとは異なるパターンを印刷するなどの複雑な回路を印刷のみで形成でき、実装工程の簡易化が可能である(以下、非通気性基材表面に複数回印刷する技術を多層印刷技術と称する)。このプリンテッドエレクトロニクスに用いて好適な技術として、本出願人は特開2018-49961号公報(以下、特許文献1)を提案している。
以下、図1を参照して特許文献1の技術につき説明する。図1は、通気性シートの使用時における模式的断面を示す図であって、通気性シートを吸着ステージに載せ、固定用テープで固定した状態を示す説明図であり、図示紙面の上側に平面視した図、同図に一点鎖線I-Iとした部分の断面を紙面の下側に示している。尚、この図では吸着ステージに設けられた吸引口の図示を省略し、同一の構成成分には一部符号を省略して示す。まず、特許文献1が開示する通気性シート11は、メッシュ状素材を略正方形に裁断した支持層13a(図中、一辺の長さにaの符号を付す)に対して、寸法形状を一回り小さく採った略正方形の不織布層13b(一辺の長さb)を、市販のスチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、ナイロンホットメルトなどを主成分とするスプレー状接着剤により、通気性を損なわないように積層一体化して構成されている。このような寸法関係を有する2つの構成成分は、各々の中心が重なり、かつ各正方形の頂点同士が実質的に一直線となるように構成されている。このうち、不織布層13bは、ポリオレフィン系樹脂を始めとする種々の合成樹脂を周知の不織布技術でシート状に構成したものを用いる。また、支持層13aには、外縁から幅cに渡って非通気性貼着部15が設けられる。この支持層に用いるメッシュ状素材として、通気性を有する金属や合成樹脂からなる織物や編物などの布帛(包括的に布帛と称している)を用いることもでき、具体的には、70メッシュ以上400メッシュ以下のステンレス鋼(SUS)製平織りメッシュが好適と例示される。さらに、この支持層13aに非通気性貼着部15を設けるに当たっては、例えばナイロン、ポリオレフィンなどの合成樹脂からなるホットメルトフィルムを図示の幅cとした帯状に裁断し、これを支持層の周縁部に加熱加圧する手段、或いは、周知のバインダーや接着剤を幅cで塗布した後に硬化して、メッシュの目開きを封止する手段など、周知の手段で「目止め」が為されている。この文献では、このテープ固定による作業を封止または貼着封止と称し、実質的に吸引力が漏れない状態を封止と称している。この際、上述した幅cは、不織布層13bの寸法や積層一体化する位置などで種々に設計することができるが、当該幅cの寸法条件として、固定用テープ17の幅に応じて、不織布層13bとは離間する位置に貼着封止するために十分な幅を持たせている。このような形態で貼着封止を行うことで、通気性シートの再使用に際して、不織布層13bを毛羽立たせることなく、或いは支持層13aとの剥離を生じるなどの損傷を来すことが無いと開示される。
このようにして得られた通気性シート11には、支持層13a及びこれに設けた非通気性貼着部15の寸法条件と、不織布層13bとの寸法条件を調整し、幅dにわたる重畳部19が画成される。この幅dを有する重畳部19の作用は、不図示の非通気性基材を載置、吸引した際に当該非通気性基材によって不織布層13bが圧縮されて厚さが減り、図示水平方向にも気密な状態を実現することで、通気性シート11と非通気性基材とを密着固定することを可能としている。さらに、係る通気性シート11は、吸着ステージ21の表面と上述した非通気性貼着部15の表面とに固定用テープ17を貼ることによって封止固定された後、被印刷物であるフィルム等の非通気性基材(不図示)を載置した状態で真空装置(不図示)を動作させ、印刷が実施される。
上述した特許文献1の技術では、真空装置を動作させる前に、吸着ステージ21に対する通気性シート11の固定を固定用テープ17で行う必要がある。この封止固定状態の通気性シートに非通気性基材を直接載置し、真空装置を動作させると、非通気性基材が通気性シート側に引き寄せられ、不織布層が良好なクッション材となって平坦な印刷面を提供し、明瞭な印刷パターンを実現することができる。この技術では、吸着ステージ21に繋がる真空装置の動作に関わらず通気性シート11のみは固定用テープ17で固定されるが、図示していない被印刷物である非通気性基材は真空装置の動作なくして固定することができない。このように真空装置の動作なくして何らかの支持体に非印刷物を固定する技術としては、特開2005-340524号公報(以下、特許文献2)が知られている。
特許文献2には、非通気性基材に相当する配線板用基材を接着保持する保持面を有する配線板用基材保持具が開示されている。保持具本体として、例えばソーダライムガラス、ホウケイ酸系ガラス、石英ガラスなどの無機ガラス類;インバー合金、ステンレススチール、チタン、アルミ、鉄、ステンレスなどの金属;アルミナ、ジルコニア、窒化シリコンなどのセラミックス;ポリカーボネートのような(硬質)プラスチック;ガラス繊維補強樹脂のような繊維強化プラスチック(FRP)等の材質が好適に用いられる。これら材質は、線膨張係数や吸湿膨張係数が小さく、導体配線の形成時における耐熱性、耐薬品性に優れ、また大面積化や表面平滑化が容易であり、さらに塑性変形しにくい点で保持具本体として選択され、これに対して、(1)シランカップリング剤塗布などのプライマー処理、(2)紫外線処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、オゾン処理などの表面改質処理、(3)ケミカルエッチング処理、サンドブラスト処理、微粒子分散層形成などの表面粗化処理などから選ばれた処理を予め保持具本体の表面に施す。この後、例えばウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリサルファイド樹脂、シリコーン樹脂等を含む樹脂組成物を用いて、上述した処理面に有機物層を形成する。これらの樹脂組成物としては、剥離強度が0.1N/cm未満の弱粘着性のものや、剥離強度が0.1N/cm以上の強粘着性のものなどを任意に選択できると記載されており、このうち、剥離強度が比較的大きい保持領域を形成するための有機物層を設ける場合には、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系等の接着剤組成物にて有機物層を形成することが好ましく、特に耐熱性が高い点からシリコーン樹脂系の接着剤組成物を用いることが好ましいと開示がある。
特開2018-49961号公報([特許請求の範囲]、[0016]~[0021]、[図3]など) 特開2005―340524号公報([特許請求の範囲]、[0001]、[0021]~[0025]、[0045]など)
従来知られている技術では、特許文献1のように吸着ステージと支持体となる通気性シートとの固定テープによる封止固定の後、係る状態で真空装置を動作させ、被印刷物たる非通気性基材を固定する。この種の技術の場合、同一の非通気性基材に複数回の印刷を要する多層印刷技術では、通気性シートと非通気性基材とが吸着ステージ上で真空装置を動作させた状態でのみ一体化されるため、印刷と印刷との間で実施するインクの乾燥工程では、フィルムである非通気性基材のみで持ち運ぶ必要が有った。他方、特許文献2のように、保持具の表面に直接フィルムなどの基材を粘着固定して一体化する場合、上述した取り扱いが容易で、印刷と乾燥とを繰り返しても作業性を損なうことが少ない。しかしながら、保持具には通気性がないため、薄いフィルムを基材とする場合、保持具と基材との間に気泡が含まれる傾向にあり、保持具自体に通気性がないことから、吸着ステージに繋がる真空装置を動作させても気泡は解消することがない。従って、この状態で肉眼確認できない程度の気泡を含んだまま印刷を実施すれば、精細な回路パターンに段差などが生じ、精密な印刷を繰り返し実施することは難しいという問題点が有った。
本願発明は、これら従来の技術に鑑みなされたものであり、プリンテッドエレクトロニクス技術を実施するに当たって、複数回の印刷を要する多層印刷技術においても、取り扱いが容易であり、高精度な回路形成が高い歩留りで実現可能な通気性シートを提供することを目的とする。
この目的の達成を図るため、本発明に係る通気性シートの構成によれば、
非通気性基材に接するための不織布層と、吸着ステージに接するメッシュ状素材からなる支持層とが積層されてなる通気性シートであって、
この通気性シートの上述した不織布層側から平面視した周縁に、前述した支持層の外縁から所定幅で目止めされ、かつ、この支持層の表面及び裏面に露出して被着した非通気性粘着部が設けられてなることを特徴としている。
また、本発明の実施にあたり、前述した非通気性粘着部と前述の不織布層とが平面視で重なる重畳部を設ける構成とすることが好適である。
さらに、本発明の実施に際して、前述した非通気性粘着部は平面視した面内で複数領域に分割配置されていても良い。
本発明に係る技術を適用することで、吸着ステージ(或いは非通気性基材の)全面にわたって吸引固定の均質化を図りつつ、しかも、複数回の印刷を要する多層印刷技術においても、取り扱いが容易であり、高精度な回路形成が高い歩留りで実現可能となる。
背景技術を説明するため、従来の通気性シートの平面並びに断面を模式的に示す説明図。 本発明の好適形態を説明するため、図1と同様に吸着ステージ上に各構成成分を吸引固定した平面並びに断面を模式的に示す説明図。
以下、図面を参照して本発明の技術に関する好適な実施形態を説明する。尚、以下の説明では、本発明の理解を容易とするため、特定の形状、数値的条件、及び配置関係を例示して説明するが、本発明に係る技術は、これら特定の条件にのみ限定されるものではなく、この発明の目的の範囲内で任意好適に設計の変更または変形を行うことができる。さらに、以下で参照する図面には、既に説明した構成成分と同一の機能を有する構成成分には同一の符号とハッチングとを付す。
本発明の通気性シートの構成は、前述した特許文献1の構成を基本としている。まず、本発明に係る通気性シート構成について図2を参照して説明する。図2は、図1と同様に、本発明に好適な形態である矩形の通気性シートについて、非通気性基材を吸着固定する平面を上部に示し、上部に一点鎖線II-IIで示す位置の断面を下部に示す模式的な説明図である。同図に示す本発明の好適例としての通気性シート23が持つ基本的な構造は図1の形態と同様であるが、図1に示した非通気性貼着部15を形成するためのホットメルトフィルムに代えて、粘着剤を目止めに用いた非通気性粘着部25を設けたものである。さらに、当該通気性シート23の吸着ステージ21への封止固定には、支持層23aの外縁から所定幅c’で目止めに用いた非通気性粘着部25の一方の面(吸着ステージ21に接する面)に露出した部分が担うため、図1で示した固定テープ17を用いる必要はない。
上述した非通気性粘着部25の材質としては、特許文献2にも開示されるように、周知の接着剤(本願では粘着剤と称する)を用いることができ、例えばアクリル樹脂系粘着剤、ウレタン樹脂系粘着剤、シリコーン樹脂系粘着剤から選択することができる。特に、繰り返し吸着ステージとの封止固定を図る上では、耐熱性があり、しかも、通気性シートの取り外しを容易とするため、剥離強度が0.1N/cm未満の弱粘着と称されるアクリル樹脂系粘着剤またはシリコーン樹脂系粘着剤を採用するのが好ましい。
このように、通気性シート23を吸着ステージ21上に載置することで、非通気性粘着部25と吸着ステージ21とが接する面は仮接着され、続いて、この通気性シート23上に被印刷物であるフィルム等の非通気性基材を載置することで、当該非通気性基材と、通気性シート23の図示上側(不織布層側)の非通気性粘着部25とが仮接着する。この後、真空装置を動作させることで、通気性シート23の内部に残存した空気が吸引され、吸着ステージ、通気性シート及び被通気性基材の3つが密着、平坦化した状態で印刷を実施することができる。さらに、印刷後には、これら3つが実質的に相互に貼着されているため、通気性シートと吸着ステージとの間を剥離し、通気性シートと被通気性基材とを一体的に取り扱うことで乾燥工程に搬送でき、取り扱いが極めて容易になる。よって、一連の多層印刷を目的とした工程では、少なくとも通気性シートと吸着ステージとの剥離を繰り返すことになり、最終的に印刷を完了した時点で、通気性シートと非通気性基材とを1回のみ剥離すれば、印刷工程を完了する。
以上、本発明の実施に最適な形態を図示例によって説明したが、本発明は、この形態にのみ限定されるものではない。図2では、不織布層13bの周縁が被通気性粘着部25と接する重畳部19を設けた場合を例示した。これは、吸着ステージ上に通気性シートと被通気性基材とを順次積層した後の真空装置の動作によって、通気性シート内に残存する空気を効率的に除くための好適形態であるが、非通気性基材を載置した状態で真空装置を動作させた際に吸引漏れなく非通気性基材を固定できる場合、重畳部を設けない態様であっても良い。また、非通気性粘着部は必ずしも、この支持層の外縁全周に設けられる必要はなく、印刷と印刷との間で実施するインクの乾燥工程において非通気性基材が通気性シートから離れなければ、非通気性粘着部が部分的に設けられた態様であっても良い。この場合、非通気性粘着部を設けない領域には、特許文献1に示すのと同様なホットメルトフィルムなどで目止め処理をし、非通気性粘着部を分割配置するのが好ましい。係る形態を採る場合、非通気性基材と通気性シートとの間に残存し得る気泡をより効率的に逃がすことが可能である。
さらに、上述した図2に例示する好適形態では、支持層と、これより小さな寸法の不織布層とを接着し、通気性シートの周縁部に、支持層が粘着剤で目止めされた非通気性粘着部を有する場合を説明した。しかしながら、この支持層と不織布層とを同形状かつ同寸法で重ね合わせて接着し、その周囲の所定幅に渡って、表裏に粘着剤からなる層を設けてもよい。その場合、通気性シートの端面も任意好適な材質によって目止め処理されていれば、図2に例示する形態と同様に、通気性シートの不織布層側には非通気性基材を、また、支持層側では吸着ステージを、各々、貼着し、同等の効果を奏する。
11,23:通気性シート、13a,23a:支持層、13b:不織布層、
15:非通気性貼着部、17:固定用テープ、19:重畳部、21:吸着ステージ、
25:非通気性粘着部、a:支持層の一辺長、b:不織布層の一辺長、
c:非通気性貼着部の幅、c’:非通気性粘着部の幅、d:重畳部の幅。

Claims (3)

  1. 非通気性基材に接するための不織布層と、吸着ステージに接するメッシュ状素材からなる支持層とが積層されてなる通気性シートであって、
    該通気性シートの前記不織布層側から平面視した周縁には、前記支持層の外縁から所定幅で目止めされ、かつ該支持層の表面及び裏面に露出して被着した非通気性粘着部が設けられてなることを特徴とする通気性シート。
  2. 前記非通気性粘着部と前記不織布層とが平面視で重なる重畳部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の通気性シート。
  3. 前記非通気性粘着部が複数領域に分割配置されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の通気性シート。
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