JP7115381B2 - 衝突前制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自車両が障害物と衝突する可能性がある場合に衝突前制御を実行する衝突前制御装置に関する。
特許文献1が開示する運転支援装置は、自車両側の道路への進入軌跡を推定し、推定した進入軌跡に基づいて、他車両が自車両の走行車線にはみ出して衝突の可能性があると判定した場合、警報出力、強制制動及び回避操舵等の運転支援制御を実行する。
特開2010-83314号公報
ところで、本願発明者は、自車両に向かって走行する対向車両が、自車両の走行車線(自車線)を区画する白線を越えたことを、衝突前制御の実行条件の一つとした衝突前制御装置を、検討している。この衝突前制御装置は、レーダセンサを含む周囲センサを用いて、対向車両を対象物標として認識し、その対象物標の位置を取得(検出)する。
しかしながら、この衝突前制御装置では、自車両に近い位置で、対象物標が自車線の白線を越えるとき、レーダセンサの検出精度が低下することに起因して、対象物標の検出位置の精度が低下する可能性があることが判明した。このため、対象物標が白線を越えたとの判定が、実際に対向車両が白線を越えたタイミングより遅れる可能性があることが判明した。その結果、衝突前制御の実行開始が遅れたり、衝突前制御が実行されるべき状況で、衝突前制御が実行されなくなったりしてしまう可能性があることが判明した。
本発明は上述した課題に対処するためになされた。即ち、本発明の目的の一つは、衝突前制御を適切に実行させることができる衝突前制御装置(以下、「本発明制御装置」とも称呼する。)を提供することにある。
本発明制御装置は、車両(SV)に適用される。
本発明制御装置は、前記車両が走行している走行車線である自車線の範囲外の所定領域を前記車両に向かって移動する他車両(OV)を対象物標として認識し、前記対象物標の位置(Dfx、Dfy)、幅(W)及び長さ(L)を含む物標情報を取得する(ステップ505、ステップ515)物標認識部(11c)と、前記自車線を区画する区画線(WL、WR)を認識し、前記区画線の位置を取得する(ステップ510)区画線認識部(11b)と、前記車両が走行すると予想される予想走行軌跡(SL)と前記対象物標が移動すると予想される予想移動軌跡(OL)を推定し、前記予想走行軌跡及び前記予想移動軌跡に基づいて、前記車両と前記対象物標との衝突時角(θb)を算出する(ステップ520)衝突時角算出部(10)と、前記対象物標の前記幅及び前記長さ、並びに、前記衝突時角に基づいて、前記対象物標の前記車両の幅方向に沿った方向の一端及び他端の間の長さをオフセット量(D1)として算出し(ステップ525)、前記車両の幅方向に沿った方向、且つ、前記車両から離れる方向に、前記オフセット量だけ位置をずらした前記区画線の位置を、判定境界線(DL)として設定する(ステップ530)区画線位置補正部(10)と、前記対象物標が前記判定境界線を越えたか否かを判定する(ステップ530)区画線越境判定部(10)と、前記対象物標が前記判定境界線を越えたと判定された場合(ステップ530での「Yes」との判定)であって、前記対象物標が前記車両に衝突する可能性がある場合(ステップ535での「Yes」との判定)に、衝突前制御を実行する衝突前制御部(10)と、を備える。
本発明制御装置によれば、衝突前制御を適切に実行させることができる。
上記説明においては、本発明の理解を助けるために、後述する実施形態に対応する発明の構成に対し、その実施形態で用いた名称及び/又は符号を括弧書きで添えている。しかしながら、本発明の各構成要素は、前記名称及び/又は符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
図1は本発明の実施形態に係る運転支援装置の概略構成図である。 図2は運転支援装置の作動の概要を説明するための概略平面図である。 図3は運転支援装置の作動の概要を説明するための概略平面図である。 図4の(A)及び(B)は、白線オフセット量の算出方法を説明するための図である。 図5は運転支援ECUのCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
以下、本発明の実施形態に係る運転支援装置(以下、「本実施装置」とも称呼される。)について図面を参照しながら説明する。運転支援装置は、「衝突前制御装置」とも称呼される。
<構成>
図1に示すように、本実施装置は、車両に適用される。なお、本実施装置が適用される車両は、他の車両と区別するために「自車両」と称呼される場合がある。本実施装置は、運転支援ECU10、エンジンECU20、ブレーキECU30、電動パワーステアリングECU(以下、「EPS・ECU」と称呼する。)40、及び警報ECU50を備えている。
これらのECUは、CAN(Controller Area Network)を介してデータ交換可能(通信可能)に互いに接続されている。各ECUはマイクロコンピュータを含む。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、及びインターフェース(I/F)等を含む。CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。以下において、運転支援ECU10は、単に、「DSECU」とも称呼される。
DSECUには、周囲センサ11、車輪速センサ12、ヨーレートセンサ13及び加速度センサ14が接続されている。DSECUは、それらのセンサの検出信号又は出力信号を受信するようになっている。各センサは、DSECU以外のECUに接続されていてもよい。その場合、DSECUは、センサが接続されたECUからCANを介してそのセンサの検出信号又は出力信号を受信する。
周囲センサ11は、レーダセンサ11a、カメラセンサ11b及びECU(物標認識部11c)を備えている。ECUは物標認識部11cの機能を備えている。周囲センサ11は、少なくとも自車両の前方の道路を含む自車両の周辺領域、及び、その自車両の周辺領域に存在する立体物を認識し、認識した立体物に関する情報を取得するようになっている。立体物は、例えば、歩行者、車両(例えば、自動車等)等の移動物、並びに、電柱、樹木及びガードレール等の固定物を表す。以下、立体物は「物標」と称呼される場合がある。
周囲センサ11は、レーダセンサ11a及びカメラセンサ11bの少なくとも一つが取得した情報に基づいて、物標を認識する。
周囲センサ11は、認識した物標についての情報(以下に述べる情報を含む物標情報)を演算して出力するようになっている。
・物標の縦距離Dfx:物標の縦距離Dfxは、自車両の前端部と物標(例えば、対向車両)の前端部と間の自車両の中心軸方向(x軸方向)の符号付き距離である。
・物標の横位置Dfy:物標の横位置Dfyは、「物標の中心位置(例えば、対向車両の前端部の車幅方向中心位置)」の、自車両の中心軸と直交する方向(y軸方向)の符号付き距離である。
・物標の相対速度Vfx:物標の相対速度Vfxは、物標の速度Vbと自車両の車速Vsとの差(=Vb-Vs)である。
尚、物標の縦距離Dfx及び横位置Dfyは、「物標の検出位置」とも称呼あれる。
周囲センサ11は、予め規定されたx-y座標に基づいて、これらの値を取得する。x軸は、自車両の前後方向に沿って自車両の前端部の車幅方向中心位置を通るように伸び、前方を正の値として有する座標軸である。y軸は、x軸と直交し、自車両SVの左方向を正の値として有する座標軸である。x軸の原点及びy軸の原点は、自車両SVの所定位置(例えば、自車両SVの前端部の幅方向中心位置)である。
より具体的に述べると、レーダセンサ11aは、レーダ波送受信部と処理部とを備えている。レーダ波送受信部は、例えば、ミリ波帯の電波(以下、「ミリ波」と称呼する。)を少なくとも自車両の前方領域を含む自車両の周辺領域に放射し、且つ、放射したミリ波が立体物の部分(即、反射点)によって反射されることにより生成される反射波を受信する。なお、レーダセンサ11aはミリ波帯以外の周波数帯の電波(レーダ波)を用いるレーダセンサであってもよい。
レーダセンサ11aの処理部は、送信したミリ波と受信した反射波との位相差、反射波の減衰レベル及びミリ波を送信してから反射波を受信するまでの時間等を含む反射点情報に基づいて、物標の有無を判定する。レーダセンサ11aの処理部は、1つの立体物を検出している可能性が高い「複数の反射点」をグルーピングし、グルーピングできた反射点の群を一つの物標として認識する。
更に、レーダセンサ11aの処理部は、認識できた物標に属する反射点の反射点情報に基づいて物標の縦距離Dfx、自車両に対する物標の方位θp及び自車両と物標との相対速度Vfx等(以下、「レーダセンサ検出情報」と称呼される。)を演算する。
カメラセンサ11bは、ステレオカメラ及び画像処理部を備える。ステレオカメラは、自車両の前方の「左側領域及び右側領域」の風景を撮影して左右一対の画像データを取得する。画像処理部は、その撮影した左右一対の画像データに基づいて、撮影領域内に物標が存在するか否かを判定する。
物標が存在すると判定された場合、画像処理部は、その物標の方位θp、その物標の縦距離Dfx及び自車両とその物標との相対速度Vfx等を演算する。更に、画像処理部は、物標の種類(例えば、歩行者、車両(自動車等)等)をパターンマッチングによって識別し、物標の種類を示す情報を決定(取得)する。画像処理部が演算及び決定したこれらの情報は、「カメラセンサ検出情報」と称呼される。
物標認識部11cは、レーダセンサ11aの処理部及びカメラセンサ11bの画像処理部と通信可能となるように接続され、「レーダセンサ検出情報」及び「カメラセンサ検出情報」を受信するようになっている。
物標認識部11cは、「レーダセンサ検出情報」、及び、「カメラセンサ検出情報」に基づいて、物標の物標情報(即ち、以下に述べる情報)を決定(取得)する。
・物標の検出位置(即ち、縦距離Dfx、横位置Dfy)
・物標の相対速度Vfx
・物標の種類を示す情報
・物標の幅(物標の左右幅)W
・物標の長さL
なお、ある物標について、「レーダセンサ検出情報」及び「カメラセンサ検出情報」の両方が検出されている場合、物標認識部11cは、これらの情報をフュージョン(統合)することにより物標の最終的な物標情報を決定(取得)する。これに対して、ある物標について、「レーダセンサ検出情報」及び「カメラセンサ検出情報」の何れか一方のみが検出されている場合、物標認識部11cは、その検出できている情報のみに基づいて物標の最終的な物標情報を取得(決定)する。
物標認識部17cは、所定時間が経過する毎に、決定した物標の最終的な物標情報をDSECUに送信する。
更に、カメラセンサ17bの画像処理部は、左右一対の画像データに基づいて、道路の左及び右の白線等の車線区画線(以下、単に「白線」とも称呼する。)を認識する。そして、画像処理部は、自車両が走行している車線(走行車線(自車線))を区画する白線の位置(上述のx-y座標上のx座標位置、y座標位置)等を所定時間が経過する毎に演算し、DSECUに送信するようになっている。
車輪速センサ12は、自車両が備える4つの車輪毎に設けられている。DSECUは、車輪速センサ12が検出する各車輪の車輪速度に基づいて自車両の速度を示す車速Vsを取得する。
ヨーレートセンサ13は、自車両のヨーレートを検出し、ヨーレートYrtを表す信号を出力するようになっている。
加速度センサ14は、自車両の加速度を検出し、検出した加速度Gsを表す信号を出力する。加速度Gsが負の値であるとき、その加速度Gsの大きさ(絶対値)は、減速度を表す。
エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21に接続されている。エンジンアクチュエータ21は、エンジン22のスロットル弁の開度を変更するスロットル弁アクチュエータを含む。エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21を駆動することによって、エンジン(内燃機関)22が発生するトルクを変更することができる。エンジン22が発生するトルクは、トランスミッション(不図示)を介して駆動輪に伝達されるようになっている。
従って、エンジンECU20は、エンジンアクチュエータ21を制御することによって、自車両の駆動力を制御し加速状態(加速度)を変更することができる。なお、自車両が、ハイブリッド車両である場合、エンジンECU20は、車両駆動源としての「エンジン及び電動機」の何れか一方又は両方によって発生する自車両の駆動力を制御することができる。更に、自車両が電気自動車である場合、エンジンECU20は、車両駆動源としての電動機によって発生する自車両の駆動力を制御することができる。
ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31に接続されている。ブレーキアクチュエータ31は、ブレーキペダルの踏力によって作動油を加圧する図示しないマスタシリンダと、左右前後輪に設けられる摩擦ブレーキ機構32との間の油圧回路に設けられる。摩擦ブレーキ機構32は、車輪に固定されるブレーキディスク32aと、車体に固定されるブレーキキャリパ32bとを備える。
ブレーキアクチュエータ31は、ブレーキECU30からの指示に応じてブレーキキャリパ32bに内蔵されたホイールシリンダに供給する油圧を調整し、その油圧によりホイールシリンダを作動させることによりブレーキパッドをブレーキディスク32aに押し付けて摩擦制動力を発生させる。従って、ブレーキECU30は、ブレーキアクチュエータ31を制御することによって自車両の制動力を制御し加速状態(減速度(負の加速度Gs))を変更することができる。
EPS・ECU40は、周知の電動パワーステアリングシステムの制御装置であって、モータドライバ41に接続されている。モータドライバ41は、転舵用モータ42に接続されている。転舵用モータ42は、「操舵ハンドルSW、ステアリングシャフトSF、及び、図示しない操舵用ギア機構等を含むステアリング機構」に組み込まれている。転舵用モータ42は、モータドライバ41から供給される電力によってトルクを発生し、このトルクによって操舵アシストトルクを発生したり、左右の操舵輪を転舵したりすることができる。即ち、転舵用モータ42は、自車両の操舵角(「転舵角」又は「舵角」とも称呼される。)を変更することができる。
更に、EPS・ECU40は、操舵角センサ43及び操舵トルクセンサ44に接続されている。操舵角センサ43は、自車両の操舵ハンドルSWの操舵角を検出し、操舵角θsを表す信号を出力するようになっている。操舵トルクセンサ44は、操舵ハンドルSWの操作により自車両のステアリングシャフトSFに加わる操舵トルクを検出し、操舵トルクを表す信号を出力するようになっている。操舵角θs及び操舵トルクは、自車両の左旋回方向への操舵が行われる場合に正の値になり、自車両SVの右旋回方向への操舵が行われる場合に負の値になるように定義されている。
EPS・ECU40は、操舵トルクセンサ44によって、運転者が操舵ハンドルSWに入力した操舵トルクを検出し、この操舵トルクに基づいて転舵用モータ42を駆動する。EPS・ECU40は、この転舵用モータ42の駆動によってステアリング機構に操舵トルク(操舵アシストトルク)を付与し、これにより、運転者の操舵操作をアシストすることができる。
EPS・ECU40は、DSECUから操舵指令を受信した場合、その操舵指令に基づいて転舵用モータ42を駆動する。従って、DSECUは、EPS・ECU40を介して自車両の転舵輪の操舵角を自動的に(即ち、運転者による操舵操作を必要とせずに)変更することができる(転舵輪を転舵できる。)。
警報ECU50は、ブザー51及び表示器52に接続されている。警報ECU50は、DSECUからの指示に応じて、ブザー51に警報音を出力させる。更に、警報ECU50は、警報ECU50からの指示に応じて、表示器52に注意喚起用のマーク(例えば、ウォーニングランプ)等を表示させる。
<作動の概要>
(衝突前制御の概要)
DSECUは、自車両と衝突する可能性が高い立体物である障害物(物標)が存在すると判定した場合に、当該障害物との衝突を回避するための周知の衝突前制御を実行する。
障害物と自車両とが衝突する可能性の判定(換言すると、衝突前制御の実行開始条件が成立するか否かの判定)については、従来から知られている種々の手法を採用することができる。例えば、DSECUは、自車両が障害物と衝突するまでの予想時間である衝突時間TTCを障害物の縦距離Dfx及び相対速度Vfxに基づいて算出する。
具体的には、衝突時間TTCは、縦距離Dfxを相対速度Vfxにより除して得られる値の符号を反転することによって算出される(即ち、TTC=-Dfx/Vfx。)。算出した衝突時間TTCが所定の時間閾値Tthよりも小さいと(具体的には、衝突時間TTCが正の値であって且つ衝突時間TTCの絶対値が時間閾値Tthよりも小さいと)、DSECUは、自車両と衝突する可能性が高い障害物が存在する(衝突前制御の実行開始条件が成立する)と判定する。
衝突前制御は、例えば、運転者に注意喚起を行うための周知の警報制御及び障害物との衝突を回避するための周知の衝突回避制御(自動制動制御、自動操舵回避制御)等の少なくとも一つを含む。衝突前制御は、プリクラッシュセーフティー制御(Pre Crash Safety Control)とも称呼される。
DSECUは、警報ECU50に指令を出力することにより、警報制御(例えば、ドライバーの注意を喚起させるための警報音をブザー51に発生させる制御、及び、ドライバーの注意を喚起させるための画面を表示器52に表示する制御)を実行する。DSECUは、ブレーキECU30に指令を出力することにより、自動制動制御を実行する。DSECUは、EPS・ECU40に指令を出力することにより、自動操舵回避制御を実行する。
(白線越境判定)
図2に示すように、対向車両OVが、自車両SVの走行車線(自車線)に隣接する隣接車線を自車両SVに向かって走行している状況を想定する。この場合、DSECUは、対向車両OVを判定対象となる物標(対象物標)として認識する。そして、DSECUは、認識した対象物標が自車線を区画する白線を越えたか否かを判定する白線越境判定を行う。
なお、白線越境判定は、「区画線越境判定」とも称呼される。
白線越境判定は、例えば、次のように実行される。DSECUは、自車線の左白線WL及び右白線WRのうち対象物標に近い側の白線(本例において、左白線WL)の位置に基づいて、対象物標が白線を越えたか否かを判定する。
そして、DSECUは、対象物標が白線を越えたと判定した場合であって、対象物標が自車両SVと衝突する可能性があると判定された(衝突前制御の実行開始条件が成立した)場合、上述の衝突前制御を実行する。一方、DSECUは、対象物標が白線を越えていないと判定した場合、上述の衝突前制御は実行されない。このように白線越境判定の結果を、衝突前制御の実行条件の一つとすることによって、衝突前制御の不要な実行を低減できる。
しかし、図3に示すように、対向車両OVが自車両SVに近い位置で自車両SVの走行車線の白線を越える場合、対向車両OVがレーダセンサ11aに近いことによるレーダセンサ11aの検出精度の低下等に起因して、対象物標の検出位置に誤差が生じる。即ち、例えば、対象物標の検出位置が、白線を越えた位置P0(対向車両OVの前端位置に対応する本来の検出位置)ではなく、白線を越えていない位置P1になるという誤差が生じることがあり得る。
このため、点線で示す対向車両OVが実際に左白線WLを越えているにも関わらず、左白線WLを越えていると判定されない可能性がある。この場合、衝突前制御の実行が許可されないので、衝突前制御の実行が遅れてしまうことや衝突前制御が実行されるべき状況で、衝突前制御の実行が適切に行われなくなってしまう可能性があり、好ましくない。
そこで、DSECUは、対象物標の大きさ(対象物標の幅W及び長さL)及び衝突時角θbに基づいて、白線オフセット量D1(即ち、白線位置のずらし量)を次のように、算出する。
(白線オフセット量の算出)
図4の(A)に示すように、DSECUは、対象物標の過去に所定経過時間毎に取得された複数の検出位置と、現地点の検出位置に基づいて、対象物標が移動すると予想される予想移動軌跡OLを取得する。具体的に述べると、例えば、DSECUは、対象物標の過去の複数の検出位置及び現時点の検出位置に基づいて、最小二乗法等により近似直線の傾きを求める。そして、DSECUは、現時点の対象物標の検出位置に基づいて特定した位置から延び、且つ、求めた上記傾きを有する直線を、対象物標の予想移動軌跡OLとして取得する。更に、DSECUは、自車両SVの操舵角θs及びヨーレートYrtに基づいて、自車両SVが走行すると予想される自車両SVの予想走行軌跡SLを取得する。
そして、DSECUは、対象物標の予想移動軌跡OLと自車両SVの予想走行軌跡SLとの交点Q1を特定する。自車両SVの予想走行軌跡SLが直線の場合、その交点Q1にて、対象物標の予想移動軌跡OLと自車両SVの予想走行軌跡SLとが形成する角度を衝突時角θbとして取得する。なお、図示は省略するが、自車両SVの予想走行軌跡SLが曲線である場合、その交点Q1にて、対象物標の予想移動軌跡OLと、自車両SVの予想走行軌跡SLのその交点Q1における接線とが形成する角度を衝突時角θbとして取得する。
図4の(B)に示すように、DSECUは、対象物標の幅W及び長さLと、衝突時角θbとを用いて、下記計算式により、白線オフセット量D1を算出する。

(計算式)
「白線オフセット量D1」=「対象物標の長さL」×|sinθb|+「対象物標の幅W」×|cosθb|
このように算出された白線オフセット量D1は、対象物標の検出位置(特に横位置Dfy)の最大誤差(換言すると、対象物標のy軸方向(自車両SVの幅方向に沿う方向)の一端及び他端の間の長さ)に対応する。DSECUは、算出した白線オフセット量D1だけ、白線の位置(y座標位置)を、y軸方向(自車両SVの幅方向に沿う方向)且つ自車両SVから離れる方向にずらす。
そして、DSECUは、白線オフセット量D1だけ位置がずらされた白線の位置を、白線越境判定の判定基準となる判定境界線DLとして設定する。そして、DSECUは、対象物標の検出位置及び判定境界線DLに基づいて、その対象物標の白線越境判定を行う。このように、判定境界線DLに基づいて、対象物標の白線越境判定を行うことにより、対象物標の検出位置の誤差に起因して、対象物標が白線を越えたと判定されるタイミングが、実際に対象物標(対向車両OV)が白線を越えたタイミングに対して遅れる可能性を低減できる。
<具体的作動>
DSECUのCPU(単に「CPU」と称呼する。)は、所定時間が経過する毎に図5にフローチャートにより示したルーチンを実行するようになっている。
従って、所定のタイミングになると、CPUは、図5のステップ500から処理を開始して、以下に述べるステップ505乃至ステップ525を順に行った後、ステップ530に進む。
ステップ505:CPUは、周囲センサ11を用いて、周囲センサ11が取得している全ての物標の物標情報を取得する。CPUは、物標情報に基づいて、取得した物標の中から対向車両OV(例えば、自車線の範囲外の所定領域(例えば、自車線に隣接する隣接車線内)を自車両SVに向かって走行する対向車両OV)として認識された物標を、対象物標として特定する。
ステップ510:CPUは、カメラセンサ11bを用いて、自車線を区画する左白線WL及び右白線WRを検出し、これらの白線の位置をそれぞれ取得する。
ステップ515:CPUは、対象物標の物標情報に基づいて、対象物標の大きさ(幅W及び長さL)を取得する。
ステップ520:CPUは、対象物標と自車両SVとの衝突時角θbを取得(推定)する。
ステップ525:CPUは、対象物標の幅W及び長さL、衝突時角θbに基づいて、白線オフセット量D1を算出する。具体的に述べると、CPUは、対象物標の幅W及び長さL、衝突時角θbを上述の計算式に代入することにより、白線オフセット量D1を算出する。
CPUは、ステップ530に進むと、対象物標が、白線オフセット量D1だけy軸方向(自車両SVの幅方向に沿った方向)且つ自車両SVから離れる方向に位置をずらした白線(即ち、判定境界線DL)を、超えたか否かを判定する。
対象物標が判定境界線DLを越えていないと判定した場合、CPUはステップ530にて「No」と判定して、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
対象物標が判定境界線DLを越えたと判定した場合、CPUはステップ530にて「Yes」と判定して、ステップ535に進んで、自車両SVが対象物標と衝突する可能性があるか否かを判定する。即ち、衝突前制御の実行開始条件が成立するか否かを判定する。
衝突前制御の実行開始条件が成立しない場合、CPUはステップ535にて「No」と判定してステップ595に進み、本ルーチンを一旦終了する。
これに対して、衝突前制御の実行開始条件が成立する場合、CPUはステップ535にて「Yes」と判定してステップ540に進み、上述した衝突前制御を実行する。その後、CPUはステップ595に進み、本ルーチンを一旦終了する。
以上説明した本実施装置によれば、判定境界線DLに基づいて、対象物標の白線越境判定を行うことにより、対象物標の検出位置の誤差に起因して、対象物標が白線を越えたと判定されるタイミングが、実際に対象物標(対向車両OV)が白線を越えたタイミングに対して遅れる可能性を低減できる。従って、本実施装置は、衝突前制御を適切に実行させることができる
<変形例>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の技術的思想に基づく各種の変形例を採用し得る。例えば、上述の実施形態において挙げた構成及び方法等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成及び方法等を用いてもよい。
10…運転支援ECU、11…周囲センサ、11a…レーダセンサ、11b…カメラセンサ、11c…物標認識部、12…車輪速センサ、13…ヨーレートセンサ、14…加速度センサ、20…エンジンECU、30…ブレーキECU、40…EPS・ECU、50…警報ECU

Claims (1)

  1. 車両に適用される衝突前制御装置であって、
    前記車両が走行している走行車線である自車線の範囲外の所定領域を前記車両に向かって移動する他車両を対象物標として認識し、前記対象物標の位置、幅及び長さを含む物標情報を取得する物標認識部と、
    前記自車線を区画する区画線を認識し、前記区画線の位置を取得する区画線認識部と、
    前記車両が走行すると予想される予想走行軌跡と前記対象物標が移動すると予想される予想移動軌跡を推定し、前記予想走行軌跡及び前記予想移動軌跡に基づいて、前記車両と前記対象物標との衝突時角を算出する衝突時角算出部と、
    前記対象物標の前記幅及び前記長さ、並びに、前記衝突時角に基づいて、前記対象物標の前記車両の幅方向に沿った方向の一端及び他端の間の長さをオフセット量として算出し、前記車両の幅方向に沿った方向、且つ、前記車両から離れる方向に、前記オフセット量だけ位置をずらした前記区画線の位置を、判定境界線として設定する区画線位置補正部と、
    前記対象物標が前記判定境界線を越えたか否かを判定する区画線越境判定部と、
    前記対象物標が前記判定境界線を越えたと判定された場合であって、前記対象物標が前記車両に衝突する可能性がある場合に、衝突前制御を実行する衝突前制御部と、
    を備えた
    衝突前制御装置。
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