以下、図面を参照しつつ、本発明に従う実施の形態に係る画像形成装置について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される実施の形態および変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
(画像形成装置の全体構成)
図1は、実施の形態に係る画像形成装置の内部構成を示す概略図である。図1に示す画像形成装置1は、コピージョブ、画像印刷ジョブ、スキャンジョブ、ファクスジョブを実行することができる、いわゆる、複合機(MFP:Multi Function Peripheral)である。
図1に示されるように、画像形成装置1は、画像読取部2と、画像処理部3と、画像形成部4と、用紙搬送部5と、定着装置6と、制御部8とを備える。
画像読取部2は、自動原稿給紙装置2aと、原稿画像走査装置2b(スキャナー)とを有している。このうち、原稿画像走査装置2bには、コンタクトガラスと、各種のレンズ系と、CCDセンサー7とが設けられている。CCDセンサー7は、画像処理部3に接続される。画像処理部3は、入力された画像に所定の画像処理を行なう。
画像形成部4は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナーによる画像を形成する画像形成ユニット10(10Y,10M,10C,10K)を有している。これらについては、収容されるトナー以外はいずれも同じ構成を有するので、以後、色を表す記号を省略する。画像形成部4は、さらに、中間転写ユニット20および二次転写ローラー33を有している。
画像形成ユニット10は、露光装置11と、現像装置12と、感光体ドラム13と、帯電装置14と、ドラムクリーニング装置15とを有している。感光体ドラム13の表面は、光導電性を有しており、例えば負帯電型の有機感光体である。感光体ドラム13は、トナー像を担持する像担持体である。
帯電装置14は、例えばコロナ帯電器であるが、帯電ローラーや帯電ブラシ、帯電ブレードなどの接触帯電部材を感光体ドラム13に接触させて帯電させる接触帯電装置であってもよい。露光装置11は、例えば半導体レーザーで構成される。
現像装置12は、例えば二成分現像方式の現像装置であるが、キャリアを含まない一成分現像方式の現像装置であってもよい。
中間転写ユニット20は、中間転写ベルト21と、中間転写ベルトを支持する複数の支持ローラーと、中間転写ベルト21を感光体ドラム13に圧接させる一次転写ローラー22と、ベルトクリーニング装置25とを有している。中間転写ベルト21は、無端状の転写ベルトである。ここで、主として一次転写ローラー22により、感光体ドラム13に担持されたトナー像を中間転写ベルト21に転写する一次転写部が構成されることになる。
中間転写ベルト21は、複数の支持ローラーによりループ状に張架され、回転移動可能となっている。複数の支持ローラーは、中間転写ベルト21を駆動するための駆動ローラー23を含む。駆動ローラー23が回転することにより、中間転写ベルト21は矢印A方向に走行する。複数の支持ローラーは、さらに、中間転写ベルト21を挟んで二次転写ローラー33に対して対向配置される対向ローラー24を含む。
二次転写ローラー33は、無端状の中間転写ベルト21に接し、中間転写ベルト21の外側に位置する。対向ローラー24と二次転写ローラー33とは、中間転写ベルト21を挟持する。言い換えると、対向ローラー24と二次転写ローラー33とによってニップ部が形成され、中間転写ベルト21は当該ニップ部を通過する。二次転写ローラー33および対向ローラー24により、中間転写ベルト21に担持されたトナー像を記録媒体としての用紙に転写する二次転写部30が構成される。
定着装置6は、用紙に転写されたトナー像を用紙上に定着させるためのものであり、用紙上のトナーを加熱および融解する定着ローラー6aと、用紙を定着ローラー6aに向けて押圧する加圧ローラー6bとを有している。
用紙搬送部5は、給紙部5aと、排紙部5bと、搬送経路部5cとを有している。給紙部5aを構成する給紙トレイユニット5a1~5a3には、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部5cは、レジストローラー対5c1などの複数の搬送ローラー対を有している。排紙部5bは、排紙ローラー5b1によって構成されている。
制御部8は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、インターフェイス(I/ F:Interface)とを備える。
CPUは、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することで、画像形成装置1全体の処理を実現する。RAMは、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などであり、CPUがプログラムを動作するために必要なデータおよび画像データを一時的に記憶する。したがって、RAMは、いわゆるワーキングメモリとして機能する。ROMは、典型的には、フラッシュメモリなどであり、CPUで実行されるプログラムおよび、画像形成装置の動作に関係する各種設定情報などを記憶する。インターフェイスは、外部機器との間で各種信号のやりとりを行う。
搬送経路部5cにおける用紙の搬送速度は、制御部8によって決定される。搬送経路部5cは、上述した複数の搬送ローラー対に加えて、モーター、モータードライバ、ギア等を含んでいる。これら複数の搬送ローラー対、モーター、モータードライバ、ギア等は、制御部8からの電気信号を受けて各種モーターを回転させることで、記録媒体としての用紙を搬送する。
上述した各種モーターによって回転させられる部材には、例えば現像装置12に含まれる現像ローラーや、感光体ドラム13、駆動ローラー23、二次転写ローラー33、定着ローラー6a、上述した搬送ローラー対等があるが、これらの部材は、1個のモーターで一元的に駆動されてもよいし、複数のモーターで別々に駆動されてもよい。各部材の外周面は、同じ線速度(この線速度は、一般にシステム速度と称される)で駆動される。すなわち、用紙の搬送速度は、システム速度と同じである。なお、制御部8は、これら各種モーターの回転数やギアを切り替えることにより、システム速度を変更させることができる。後述するように、駆動ローラー23および対向ローラー24のうち少なくとも駆動ローラー23は、表面の移動速度がシステム速度を中心として変動するように駆動される。
(画像形成の処理)
次に、画像形成装置1による画像形成の処理について説明する。原稿画像走査装置2bは、コンタクトガラス上の原稿を光学的に走査して読み取る。原稿からの反射光は、CCDセンサー7により読み取られ、入力画像データとなる。入力画像データは、画像処理部3において所定の画像処理が施され、露光装置11に送られる。なお、入力画像データは、外部パソコンやモバイル機器などから画像形成装置1に送付されたものであってもよい。
感光体ドラム13は、一定の周速度で回転する。帯電装置14は、感光体ドラム13の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置11は、各色成分の入力画像データに対応するレーザー光を感光体ドラム13に照射し、感光体ドラム13の表面に静電潜像を形成する。現像装置12は、感光体ドラム13の表面にトナーを付着させ、感光体ドラム13上の静電潜像を可視化させる。こうして感光体ドラム13の表面に静電潜像に応じたトナー像が形成される。
感光体ドラム13の表面のトナー像は、中間転写ユニット20によって中間転写ベルト21に転写される。転写後に感光体ドラム13の表面に残存する転写残トナーは、感光体ドラム13の表面に摺接するドラムクリーニングブレードを有するドラムクリーニング装置15によって除去される。一次転写ローラー22によって中間転写ベルト21が感光体ドラム13に圧接されることにより、中間転写ベルト21に各色のトナー像が順次重なって転写される(形成される)。
二次転写ローラー33は、中間転写ベルト21を介して、対向ローラー24に圧接される。これにより、ニップ部が形成される。画像形成装置1は、用紙搬送部5によって、中間転写ベルト21と二次転写ローラー33との間に用紙を通過させる。ニップ部に用紙が搬送されると、二次転写ローラー33へ所定の電圧が印加される。この電圧の印加によって、中間転写ベルト21に担持されたトナー像は用紙に転写される。中間転写ベルト21の表面に残存する転写残トナーは、中間転写ベルト21の表面に摺接するベルトクリーニングブレードを有するベルトクリーニング装置25によって除去される。ベルトクリーニング装置25については、中間転写ベルト21上の残留トナーを清掃するものであれば、ブラシによるクリーニング方式を採用したものであってもよい。転写率の高いトナーを使用する場合には、クリーニング装置を使用しない態様もありえる。トナー像が転写された用紙は、定着装置6に向けて搬送される。
定着装置6は、トナー像が転写されて搬送されてきた用紙を加熱および加圧する。こうしてトナー像は用紙に定着する。トナー像が定着された用紙は、排紙ローラー5b1を備えた排紙部5bにより機外に排紙される。
(中間転写ベルトの駆動部)
図2は、中間転写ベルトの駆動部の構成を示す図である。図2に示されるように、画像形成装置1は、モーター41と、ギア42,43と、カップリング44とを有する。制御部8と、モーター41と、ギア42,43と、カップリング44と、駆動ローラー23とは、中間転写ベルト21の駆動部を構成する。
モーター41は、例えばDCモーターである。ギア42は、モーター41の主軸に取り付けられ、モーター41と同じ回転速度で回転する。ギア43は、ギア42と噛み合い、ギア比に応じた回転速度で回転する。カップリング44は、ギア43の回転軸と駆動ローラー23の回転軸とを結合する。これにより、モーター41の回転速度に比例する回転速度で駆動ローラー23が回転する。
駆動ローラー23は、例えば、アルミや鉄等から成る芯金の周りにウレタンゴムやNBR、シリコーンゴム等から成る弾性層を設けたローラーである。中間転写ベルト21と駆動ローラー23との間に適度な摩擦力が発生するように、駆動ローラー23の表面粗さは、1μm以上10μm以下であることが好ましい。なお、表面粗さは、JIS B0601(2001年)に規定された十点平均表面粗さRzである。モーター41の回転トルクが中間転写ベルト21にロスなく伝わるように、弾性層の厚みは、10μm以上5mm以下であることが好ましい。
中間転写ベルト21は、例えば、ポリイミド等の樹脂ベルトである。また、中間転写ベルト21は、基層と基層を覆う弾性層とを含む多層構造であってもよい。基層は、中間転写ベルト21の機械的強度を向上させるための層であり、例えばポリイミド等から構成される。弾性層は、中間転写ベルト21に弾性を付与するための層であり、例えばニトリルブタジエンゴム(NBR)などの粘弾性を有する有機化合物から構成される。これにより、中間転写ベルト21と駆動ローラー23との間に適度な摩擦力が発生する。なお、中間転写ベルト21は、樹脂層のみで構成されていてもよいし、基層、弾性層に加えて、表層やその他の層を設け、多層化することもできる。
駆動ローラー23が回転すると、駆動ローラー23と中間転写ベルト21との摩擦力によって、中間転写ベルト21が搬送される。中間転写ベルト21の表面の移動速度は、駆動ローラー23の回転速度に依存する。
制御部8は、モーター41の回転速度を制御することにより、中間転写ベルト21の表面の移動速度を制御する。例えば、制御部8は、モーター41の励磁電圧を高周波数でオンオフするPWM(Pulse Width Modulation)制御を行なう。制御部8は、PWM制御のデューティー比を変更することにより、モーター41の回転速度を変更することができる。
図3は、モーターへの印加電圧のデューティー比の例を示す図である。制御部8は、図3(a)に示されるように、モーター41への印加電圧のデューティー比を小さくすることにより、モーター41の回転速度を遅くすることができる。制御部8は、図3(b)に示されるように、モーター41への印加電圧のデューティー比を大きくすることにより、モーター41の回転速度を速くすることができる。
制御部8は、PWM制御以外の方法により、モーター41の回転速度を制御してもよい。例えば、パルス電力を受けるたびに一定の角度だけ回転するステッピングモーターによってモーター41が構成される場合、制御部8は、モーター41へのパルスの入力間隔を変えることにより、モーター41の回転速度を変更してもよい。もしくは、圧電素子等の振動エネルギーを特定方向への運動として出力する超音波モーターによってモーター41が構成される場合、制御部8は、圧電素子への印加電圧(あるいは電流)を変化させることにより、モーター41の回転速度を変更してもよい。
(二次転写部の概略構成)
次に、図4を参照して、二次転写部30の概略構成について説明する。図4は、図1に示す二次転写部の概略構成を示す拡大図である。図4に示すように、中間転写ベルト21は、画像形成装置1の二次転写部30を通過するように配置される。
二次転写部30は、互いに対向するように平行に配置され、中間転写ベルト21を挟持する二次転写ローラー33および対向ローラー24を含んでいる。二次転写ローラー33と対向ローラー24との間には、ニップ部Nが形成される。中間転写ベルト21は、このニップ部Nを通過するように配置されている。
二次転写ローラー33は、導電性の材料からなり、二次転写ローラー33には、二次転写電源33cが接続されている。対向ローラー24は、導電性の材料からなる芯金24aと、当該芯金24aの周面を覆う導電性の弾性層24bとを含んでおり、このうちの芯金24aは、接地されている。これにより、ニップ部Nには、二次転写ローラー33、対向ローラー24および二次転写電源33cによって所定の電界が形成される。
中間転写ベルト21は、用紙100よりも対向ローラー24側を挿通するように配置されている。用紙100は、中間転写ベルト21と二次転写ローラー33との間を通過するように供給される。
二次転写ローラー33は、図中に示す矢印AR1方向に回転駆動され、対向ローラー24は、図中に示す矢印AR2方向に回転する。二次転写ローラー33は、トナー像の転写に際して図中に示す矢印AR3方向に向けて図示しない押圧機構によって押圧されている。これにより二次転写ローラー33と対向ローラー24とは、中間転写ベルト21および用紙100を介して圧接する。
駆動ローラー23(図1および図2参照)の回転と二次転写ローラー33の回転とに基づき、中間転写ベルト21および用紙100は、それぞれ図中に示す矢印AR4方向および矢印AR5方向に搬送される。その際、ニップ部Nを通過するに当たり、中間転写ベルト21および用紙100が二次転写ローラー33と対向ローラー24とによって加圧された状態で挟み込まれて密着することになる。
その際、密着した部分の中間転写ベルト21および用紙100には、上述した所定の電界が作用することになる。これにより、中間転写ベルト21の第1主面21s1に付着していたトナーが用紙100に付着することになり、トナー像の転写が行なわれる。
(中間転写ベルトに対する変調駆動)
中間転写ベルト21の駆動部は、中間転写ベルト21の表面の移動速度が変動するように、中間転写ベルト21を駆動する。具体的には、中間転写ベルト21の駆動部は、システム速度(つまり、用紙100の搬送速度)を中心として一定の周期で中間転写ベルト21の表面の移動速度を変動させる。本明細書において、移動速度を周期的に変動させるような駆動を「変調駆動」という。また、周期の逆数を「変調駆動の周波数」という。
図5は、中間転写ベルトの移動速度V1とシステム速度Vsとの時間変化の一例を示す図である。図5に示されるように、中間転写ベルト21の移動速度V1は、一定のシステム速度Vs(用紙100の搬送速度)を中心とし、最小速度Vaから最大速度Vbまでの範囲で周期的に変動する。
上述したように、制御部8は、PWM制御のデューティー比を変更して、モーター41の回転速度を変更することにより、中間転写ベルト21の移動速度V1を変動させることができる。
図6は、モーターへの印加電圧のデューティー比と、中間転写ベルトの表面の移動速度と、中間転写ベルトの加速度との時間変化の一例を示す図である。制御部8は、モーター41への印加電圧のデューティー比を時間とともに周期的に変化させることにより、モーター41の回転速度を変動させる。中間転写ベルト21の表面の移動速度V1は、モーター41の回転速度に比例する。そのため、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1は、モーター41の回転速度の変動に合わせて変動する。中間転写ベルト21の加速度は、モーター41の回転速度が上昇するときに正の値となり、モーター41の回転速度が減少するときに負の値となる。なお、中間転写ベルト21の加速度は、中間転写ベルト21の搬送方向(図4に示す矢印AR4の方向)と同じ向きのときに正の値をとる。
中間転写ベルト21の変調駆動の周期Tは、モーター41への印加電圧のデューティー比の変動の周期と一致する。制御部8は、モーター41への印加電圧のデューティー比の変動の周期を調整することにより、中間転写ベルト21の位置の変化幅(一定速度で移動する場合の位置を基準とした振幅)を数十μm程度以下に抑える。これにより、感光体ドラム13から中間転写ベルト21へのトナー像の一次転写、および、中間転写ベルト21から用紙100へのトナー像の二次転写における画像の乱れを抑制できる。
図7は、用紙が平滑である場合のニップ部Nの拡大図である。中間転写ベルト21が変調駆動されることにより、中間転写ベルト21と用紙100との間に、瞬間的に大きな速度差が生じる。用紙100は、一定のシステム速度Vsで搬送される。
中間転写ベルト21の移動速度V1とシステム速度VsとがV1>Vsを満たす場合(例えばV1=Vbの場合)、中間転写ベルト21は、用紙100に対して、矢印AR4で示される中間転写ベルト21の搬送方向に向かって相対的に変位する。逆に、V1<Vsを満たす場合(例えばV1=Vaの場合)、中間転写ベルト21は、用紙100に対して矢印AR4で示される搬送方向と逆向きに相対的に変位する。したがって、用紙100に対する中間転写ベルト21の相対位置は、両矢印AR6で示されるように振動する。
用紙100が平滑である場合、中間転写ベルト21上のトナー200は、用紙100と接触する。用紙100に対する中間転写ベルト21の相対位置が振動しているため、トナー200には、せん断力が作用する。これにより、トナー200の用紙100への転写性が向上する。
変調駆動の周波数(1/T)は、50Hz以上が好ましく、100Hz以上がより好ましい。このような高周波数で中間転写ベルト21を変調駆動することにより、中間転写ベルト21の表面は高周波数で振動する。その結果、中間転写ベルト21上のトナー200は、中間転写ベルト21の搬送方向に平行な方向の大きな加速度を受ける。これにより、トナー200の転写性が向上する。
(凹凸紙に対する転写性の問題点)
図8は、対向ローラーが中間転写ベルトに遅れることなく従動し、かつ、用紙が凹凸紙である場合における、ある瞬間のニップ部の拡大図である。図9は、対向ローラーが中間転写ベルトに遅れることなく従動し、かつ、用紙が凹凸紙である場合における、別の瞬間のニップ部の拡大図である。図8には、中間転写ベルト21が加速しているときの様子が示される。図9には、中間転写ベルト21が減速しているときの様子が示される。
図8および図9に示されるように、凹凸紙である用紙100の凹部101は、中間転写ベルト21上のトナー200と接触しない。そのため、凹部101と対向するトナー200にはせん断力が作用しない。
図8に示されるように、中間転写ベルト21が加速しているとき、加速させるための力F1aが中間転写ベルト21に働いている。力F1aは、矢印AR4で示される中間転写ベルト21の搬送方向と同じ向きの力である。一方、図9に示されるように、中間転写ベルト21が減速しているとき、減速させるための力F1bが中間転写ベルト21に働いている。力F1bは、矢印AR4で示される中間転写ベルト21の搬送方向と逆向きの力である。
中間転写ベルト21に接する対向ローラー24(図4参照)が中間転写ベルト21に遅れることなく従動しており、中間転写ベルト21の移動速度V1と対向ローラー24の表面の移動速度とは同じである。そのため、中間転写ベルト21と対向ローラー24との速度差が常に略0であり、中間転写ベルト21は、当該速度差に起因する作用力を受けない。すなわち、中間転写ベルト21には、中間転写ベルト21が加速しているときには力F1aが均一に働いており、中間転写ベルト21が減速しているときには力F1bが均一に働いている。
中間転写ベルト21が加速しているとき、中間転写ベルト21上のトナー200は、中間転写ベルト21に働いている力F1aと同じ向きの力F2aを中間転写ベルト21から受ける。中間転写ベルト21が減速しているとき、中間転写ベルト21上のトナー200は、中間転写ベルト21に働いている力F1bと同じ向きの力F2bを中間転写ベルト21から受ける。
このように、トナー200が中間転写ベルト21から受ける力の向きは、時間の経過とともに変化する。ただし、各瞬間において、ニップ部N内の中間転写ベルト21上の全てのトナー200の各々は、同じ力(力F2aまたは力F2b)を受ける。したがって、中間転写ベルト21が変調駆動されたとしても、用紙100の凹部101と対向するトナー200は、中間転写ベルト21の動きに合わせて一様に移動するだけである。そのため、中間転写ベルト21とトナー200との間の付着力には何の変化も起こらず、用紙100の凹部101と対向するトナー200の用紙100への転写性は低いままである。
(凹凸紙に対する転写性を向上させる構成とそのメカニズム)
本実施の形態に係る画像形成装置1では、凹凸紙である用紙100の凹部101へのトナーの転写性を向上させるために、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1と対向ローラー24の表面の移動速度V2とが異なるように制御される。
中間転写ベルト21は、上述したように、二次転写ローラー33と対向ローラー24とで形成されるニップ部Nを通過する。ニップ部Nの中央以外の領域(ニップ部Nの入口付近および出口付近を含む)では、中間転写ベルト21は、対向ローラー24から受ける圧力が弱いため、変調駆動に従って周期的に振動しながら移動する。
しかしながら、中間転写ベルト21は、ニップ部Nの中央において、二次転写ローラー33と対向ローラー24とから強い圧力を受け、対向ローラー24の表面の移動速度V2と同じ速度で移動する。中間転写ベルト21の表面の移動速度V1と対向ローラー24の表面の移動速度V2とが異なる場合、中間転写ベルト21におけるニップ部Nの中央において、変調駆動させるための力(図8に示す力F1aまたは図9に示す力F1b)と異なる作用力が働く。すなわち、ニップ部N内の位置によって、中間転写ベルト21に働く力が異なる。そのため、ニップ部N内のトナーが中間転写ベルト21から受ける力も不均一となる。その結果、隣り合うトナー同士の衝突が生じ、トナーと中間転写ベルト21との付着力が低下し、用紙100へのトナーの転写性が向上する。
図10は、中間転写ベルトの表面の移動速度V1と対向ローラーの表面の移動速度V2とが異なり、かつ、用紙が凹凸紙である場合における、ある瞬間の二次転写部の一例を示す拡大図である。図10に示す例では、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1と対向ローラー24の表面の移動速度V2との速度差に起因して、変調駆動させるための力F1(図8に示す力F1aまたは図9に示す力F1b)とは逆向きの作用力F3が中間転写ベルト21に発生している。変調駆動させるための力F1は、中間転写ベルト21が駆動ローラー23から受ける力である。作用力F3は、中間転写ベルト21が対向ローラー24から受ける力である。
中間転写ベルト21上のトナー200aには、変調駆動させるための力F1により、中間転写ベルト21との界面において、力F1と同じ向きの力F2が働いている。一方、力F1とは逆向きの作用力F3により、中間転写ベルト21上の別のトナー200bには、中間転写ベルト21との界面において、作用力F3と同じ向きの力F4が働いている。これにより、トナー200aとトナー200bとが接触し、トナー200bがトナー200aを押す力F5が発生する。
このようにして、トナー200aは、中間転写ベルト21と接する点において、力F2を受けるとともに、トナー200bと接する点において、力F2と逆向きの力F5を受ける。この結果、トナー200aには、図面上の反時計回りの方向に回転させようとするモーメントMが働く。トナー200aが少しでも回転すると、トナー200aと中間転写ベルト21との接触の仕方が変化し、不安定な状態になる。すなわち、トナー200aの中間転写ベルト21への付着力が大きく低下する。
この状態において、帯電したトナー200aを用紙100の側に引き付ける電界を受けると、トナー200aは、用紙100の凹部101に向かう方向(矢印AR7の方向)に転写する。
なお、図10に示す例では、変調駆動させるための力F1と逆向きの作用力F3が中間転写ベルト21に働く。これにより、隣り合うトナー200a,200bの激しい衝突が生じ、用紙100の凹部101であっても、トナー200aの転写性がより向上しやすい。ただし、力F1と同じ向きの作用力F3が中間転写ベルト21に働いたとしても、ニップ部N内の位置によってトナーが中間転写ベルト21から受ける力の大きさが異なるため、隣り合うトナーの衝突が生じる。その結果、用紙100の凹部101であっても、トナーの転写性が向上する。
(移動速度V1と移動速度V2とを異ならせる構成の具体例1)
移動速度V1と移動速度V2とを異ならせる構成の具体例1では、対向ローラー24は、中間転写ベルト21の表面の移動に従動するように設けられる。制御部8は、対向ローラー24の回転運動の固有振動数fbよりも大きい周波数fで中間転写ベルト21を変調駆動する。これにより、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1は、対向ローラー24の表面の移動速度V2と異なることになる。
図11は、中間転写ベルトの変調駆動の周波数fと、中間転写ベルトから対向ローラーへの振動の伝達効率Gとの関係を示す図である。伝達効率Gは、中間転写ベルト21の表面の振動の振幅aと、対向ローラー24の表面の振動の振幅bとの比(b/a)を示す。
図11に示されるように、fを低い値から増大させていくと、ある周波数においてGが最大値を取る。当該周波数は、中間転写ベルト21の振動が最も効率良く対向ローラー24の回転方向の振動に伝わるような周波数である。当該周波数は、対向ローラー24の回転運動の固有振動数fbである。
対向ローラー24の回転運動の固有振動数fb[Hz]は、以下の式(1)で表される。
式(1)において、kは、系の剛性、つまり、中間転写ベルト21や対向ローラー24の硬さ、軸部のねじれ剛性によって定められる。Jは、慣性項であり、主として対向ローラー24の質量によって定められる。
中間転写ベルト21の変調駆動の周波数fをfbよりも大きくすると、伝達効率Gは小さくなる。伝達効率Gが小さくなるのは、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1の変化に、対向ローラー24の回転速度の変化がついて行かず、遅れが発生するためである。つまり、f>fbのとき、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1に対して、対向ローラー24の表面の移動速度V2が遅れる。その結果、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1と対向ローラー24の表面の移動速度V2とが異なる。
図12は、具体例1における中間転写ベルトの表面の移動速度V1と対向ローラーの表面の移動速度V2との時間波形の一例を示す図である。図12(a)には、中間転写ベルト21の変調駆動の周波数fが対向ローラー24の回転運動の固有振動数fbよりも小さい場合の移動速度V1,V2の例が示される。図12(b)には、中間転写ベルト21の変調駆動の周波数fが対向ローラー24の回転運動の固有振動数fbよりも大きい場合の移動速度V1,V2の例が示される。
図12(a)に示されるように、f<fbである場合、中間転写ベルト21の動作は、中間転写ベルト21に従動して回転する対向ローラー24の回転運動に遅れなく伝達される。そのため、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1と対向ローラー24の表面の移動速度V2とは概ね一致する。
一方、図12(b)に示されるように、f>fbである場合、中間転写ベルト21の動作は、対向ローラー24の回転運動に遅れて伝達される。そのため、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1と対向ローラー24の表面の移動速度V2との位相にずれが生じ、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1と対向ローラー24の表面の移動速度V2とが異なる。
図12(a)に示す例では、中間転写ベルト21は、ニップ部内のどの点においても、概ね同じように速度変化することになる。これに対し、図12(b)に示す例では、中間転写ベルト21は、変調駆動に従うニップ部の中央以外(入口付近および出口付近)と、対向ローラーとの間の摩擦力の影響を受けるニップ部の中央とで、異なる力を受ける。特に、図12(b)に示す例のように移動速度V1と移動速度V2との位相差が大きくなると、中間転写ベルト21と対向ローラー24との間の摩擦力により、中間転写ベルト21におけるニップ部の中央には、変調駆動のための力とは逆向きの作用力が働く。そのため、図10に示されるように、用紙100が凹凸紙であっても、凹部101へのトナーの転写性が向上する。
(具体例1の構成の実験結果)
コニカミノルタ株式会社製の画像形成装置(デジタル印刷機:bizhub PRESS C8000)の中間転写ベルトの駆動部を改造して、中間転写ベルトを変調駆動させた。
中間転写ベルトとして、抵抗約1×109Ω・cm、厚み80μmのポリイミドベルトを用いた。
対向ローラーとして、直径18mmの芯金の周りにゴムからなる弾性層を設けた、直径24mmのローラーを用いた。弾性層の材料は、NBR(ニトリルブタジエンゴム)である。ゴム硬度計(高分子計器社製タイプAデュロメータ)で計測した弾性層の硬度は、70度であった。弾性層の抵抗は、約1×108Ω・cmであった。対向ローラーは、中間転写ベルトに従動回転するように設計されている。二次転写部におけるピーク圧を200kPaとした。二次転写部の軸方向長さは、340mmである。
対向ローラーの回転運動の固有振動数は、126Hzであった。対向ローラーの質量は、520gであった。
システム速度(つまり、画像形成時の用紙の搬送速度)を400mm/secに設定した。中間転写ベルトの表面の移動速度が400mm/secを中心として±5%程度変動するように、中間転写ベルトの変調駆動を行なった。
この画像形成装置を用い、中間転写ベルトの変調駆動の周波数を変更しながら、凹凸紙に対してベタ画像を形成し、凹凸紙の凹部へのトナーの転写性を調べた。
凹凸紙として、特種東海製紙株式会社製のエンボス紙(商品名レザック66(登録商標))を使用した。凹凸紙の坪量は、250g/m2であった。
凹部における画像濃度をランク評価し、転写性の指標とした。ランクは1~5の5段階評価とし、ランク4以上が良好なレベルである。
図13は、具体例1の構成の実験結果を示す図である。図13に示されるように、変調駆動の周波数を50Hzおよび100Hzに設定した場合、凹凸紙の凹部へのトナーの転写性は、ランク2(不可レベル)であり、中間転写ベルトの変調駆動を行わない場合に比べても改善されなかった。
これに対し、対向ローラーの回転運動の固有振動数126Hzを超える150Hzの周波数で中間転写ベルトを変調駆動した場合、凹凸紙の凹部へのトナーの転写性は、ランク4(良好レベル)に向上した。このときの変調駆動による中間転写ベルトの表面の振動の振幅は、±15μm程度であった。さらに、変調駆動の周波数を200Hz以上に設定すると、凹凸紙の凹部へのトナーの転写性がランク5(優秀レベル)にまで向上した。
図14は、移動速度の計測点を示す図である。図14に示されるように、中間転写ベルトの表面の移動速度V1と、対向ローラーの表面の移動速度V2とをレーザー速度計(株式会社小野測器製 レーザー面内速度計LV-7000)で確認した。
変調駆動の周波数が50Hzおよび100Hzであるとき、移動速度V1,V2の時間波形の位相のずれはほとんど見られなかった。すなわち、変調駆動の周波数が50Hzおよび100Hzであるときには、中間転写ベルトの表面の移動速度V1と対向ローラーの表面の移動速度V2とが略同じであった。そのため、凹凸紙の凹部へのトナーの転写性が向上しなかったものと推測される。
これに対し、変調駆動の周波数が150Hz,200Hz,250Hzであるときには、移動速度V1,V2の時間波形の位相にずれが見られた。すなわち、変調駆動の周波数が150Hz,200Hz,250Hzであるときには、中間転写ベルトの表面の移動速度V1と対向ローラーの表面の移動速度V2とが異なる。そのため、凹凸紙の凹部へのトナーの転写性が向上したものと推測される。
(移動速度V1と移動速度V2とを異ならせる構成の具体例2)
図15は、移動速度V1と移動速度V2とを異ならせる構成の具体例2を示す図である。図15に示されるように、対向ローラー24の芯金24aにはモーター46が接続される。モーター46は、制御部8によって制御される。モーター46および制御部8は、対向ローラー24の駆動部を構成する。
具体例2では、モーター46は、制御部8からの制御に従って、対向ローラー24の表面の移動速度V2がシステム速度Vs(つまり、用紙100の搬送速度)と同じになるように、対向ローラー24を一定速度で回転させる。
さらに、モーター41は、制御部8からの制御に従って、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1がシステム速度Vsを中心として周期的に変動するように、駆動ローラー23を回転させる。
図16は、具体例2における移動速度V1および移動速度V2の時間波形の一例を示す図である。図16に示されるように、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1は、一定である移動速度V2を中心として周期的に変動する。そのため、移動速度V1と移動速度V2とは異なる。図16において、両矢印AR8は、移動速度V1と移動速度V2との最大速度差を示す。
中間転写ベルト21の表面は、ニップ部Nの中央以外(ニップ部Nの入口付近および出口付近)では、変調駆動に従って移動速度V1で移動する。しかしながら、中間転写ベルト21の表面は、ニップ部Nの中央では、対向ローラー24の移動速度V2で移動する。これにより、中間転写ベルト21におけるニップ部Nの中央において、変調駆動させるための力(図8に示す力F1aまたは図9に示す力F1b)と異なる作用力が働く。
図17は、具体例2におけるニップ部内の中間転写ベルトに働く力を説明する図である。ニップ部Nの中央以外(入口付近及び出口付近)では、中間転写ベルト21を変調駆動させる力が働いている。すなわち、中間転写ベルト21を加速させる力F1a(中間転写ベルト21の搬送方向と同じ向きの力)と、中間転写ベルト21を減速させる力F1b(中間転写ベルト21の搬送方向と逆向きの力)とが、時間と共に交互に入れ替わって中間転写ベルト21に働く。
一方、ニップ部Nの中央付近では、一定速度で回転する対向ローラー24によって一定速度で中間転写ベルト21を移動させようとする作用力F6が働いている。
このように、ニップ部Nの中央以外と中央とで中間転写ベルト21に働く力が異なる。そのため、ニップ部N内のトナーが中間転写ベルト21から受ける力が不均一となり、隣り合うトナー同士の衝突が生じ、用紙100の凹部101へのトナーの転写性が向上する。
特に、中間転写ベルト21におけるニップ部Nの入口付近および出口付近に減速させる力F1bが働いているとき、力F1bと中央に働く作用力F6との向きが逆になる。このとき、中間転写ベルト21上の隣り合うトナー同士に激しい衝突が生じ、用紙100の凹部101へのトナーの転写性がさらに向上する。
中間転写ベルト21上の任意の一点がニップ部Nを通過中に少なくとも1回、変調駆動させるための力とニップ部Nの中央に働く作用力とが逆向きになる局面があれば、用紙100の凹部101へのトナーの転写性がさらに向上する。そのため、変調駆動の周波数をf[Hz]、システム速度(つまり、用紙100の搬送速度)をVs[mm/sec]、ニップ部Nの幅をw[mm](図15参照)とするとき、
f×w/Vs≧1
となるように変調駆動の周波数fを設定することが好ましい。例えば、システム速度が400mm/sec、ニップ部Nの幅wが4mmである場合、変調駆動の周波数は、100Hz以上に設定される。これにより、用紙100の凹部101へのトナーの転写性がさらに向上する。
具体例2の構成では、具体例1の構成と異なり、対向ローラー24の固有振動数に関係なく、凹凸紙である用紙100へのトナーの転写性を向上できる。そのため、対向ローラー24を構成する部材の選択の自由度が上がる。
さらに、具体例1の構成では、繰り返しの使用や環境温度によって、対向ローラー24を構成するゴムの物性の変化などによって、対向ローラー24の剛性が変化し得る。この場合、対向ローラー24の回転運動の固有振動数も変化する。その結果、凹凸紙である用紙100へのトナーの転写性が悪化する可能性があるが、具体例2の構成では、そのような可能性を抑制できる。
(具体例2の構成の実験結果)
コニカミノルタ株式会社製の画像形成装置(デジタル印刷機:bizhub PRESS C8000)を用いて、中間転写ベルトの駆動部を改造して、中間転写ベルトを変調駆動させた。さらに、対向ローラーを一定速度に駆動する駆動部を設け、対向ローラーの表面の移動速度をシステム速度Vsと同じ400mm/secに設定した。ニップ部の幅wを4mmに設定した。その他の条件は、具体例1の構成の実験条件と同一とした。
この画像形成装置を用い、中間転写ベルトの変調駆動の周波数fを変更しながら、凹凸紙に対してベタ画像を形成し、凹凸紙の凹部へのトナーの転写性を調べた。
図18は、具体例2の構成の実験結果を示す図である。図18に示されるように、変調駆動の周波数fが100Hz以上のとき、凹部の濃度ムラは発生せず、凹部へのトナーの転写性もランク4(良好レベル)以上であった。
変調駆動の周波数が100Hz以上のとき、f×w/Vs≧1を満たしていた。そのため、各トナーがニップ部を通過する間に、変調駆動させるための力とニップ部Nの中央に働く作用力とが逆向きになる局面が少なくとも1回発生する。これにより、中間転写ベルト21上の隣り合うトナー同士に激しい衝突が生じ、凹部へのトナーの転写性が非常に高くなったため、凹部の濃度ムラが発生せず、各凹部へのトナーの転写性がランク4以上になったものと推測される。
変調駆動の周波数が40Hz,50Hz,75Hzのときでも、中間転写ベルトの表面の移動速度と対向ローラーの表面の移動速度とが異なるため、凹部へのトナーの転写性が向上する。ただし、一部の凹部へのトナーの転写が不十分であり、凹部の濃度ムラが発生した。凹部へのトナーの転写性は、場所によって異なり、濃度の高い場所ではランク4以上であった。ただし、濃度の低い場所ではランク2であった。
変調駆動の周波数が40Hz,50Hz,75Hzのときでは、f×w/Vs≧1を満たさない。そのため、変調駆動させるための力とニップ部Nの中央に働く作用力とが逆向きになる局面を一度も経ずにニップ部Nを通過してしまう場所が発生する。当該場所でも、中間転写ベルトの表面の移動速度と対向ローラーの表面の移動速度とが異なるため、凹部へのトナーの転写性が向上する。ただし、転写性の向上の度合いが、変調駆動させるための力とニップ部Nの中央に働く作用力とが逆向きになるときの度合いと比べて小さいために、濃度ムラが発生したものと推測される。
(移動速度V1と移動速度V2とを異ならせる構成の具体例3)
移動速度V1と移動速度V2とを異ならせる構成の具体例3は、図15に示す具体例2の構成と同じである。ただし、制御部8は、対向ローラー24の表面の移動速度V2がシステム速度Vsを中心として周期的に変動するように、モーター46を制御する。すなわち、対向ローラー24も変調駆動される。さらに、制御部8は、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1の時間波形の位相と、対向ローラー24の表面の移動速度V2の時間波形の位相とが異なるように、モーター41,46を制御する。
図19は、具体例3における中間転写ベルトの表面の移動速度V1と対向ローラーの表面の移動速度V2との一例を示す図である。図20は、具体例3における中間転写ベルトの表面の移動速度V1と対向ローラーの表面の移動速度V2との別の例を示す図である。図19には、位相が90°ずれた移動速度V1,V2が示される。図20には、位相が180°ずれた移動速度V1,V2が示される。
図19において、両矢印AR9は、移動速度V1と移動速度V2との最大速度差を示す。移動速度V1の時間波形の位相と移動速度V2の時間波形の位相とを90°以上ずらすことにより、具体例2における移動速度V1と移動速度V2との最大速度差(図16の両矢印AR8参照)と同様の十分大きな最大速度差を得ることができる。これにより、位相差を90°以上にすることにより、凹凸紙である用紙100の凹部101へのトナーの転写性を向上させることができる。
図21は、具体例3におけるニップ部内の中間転写ベルトに働く力を説明する図である。中間転写ベルト21におけるニップ部Nの中央以外(入口付近および出口付近)には、加速させる力F1a(中間転写ベルト21の搬送方向と同じ向きの力)と、減速させる力F1b(中間転写ベルト21の搬送方向と逆向きの力)とが、時間と共に交互に入れ替わって働く。
一方、中間転写ベルト21におけるニップ部Nの中央では、対向ローラー24の変調駆動に応じた作用力が働く。すなわち、対向ローラー24の回転運動が加速しているときには、中間転写ベルト21の搬送方向と同じ向きの作用力(以下、「作用力F7a」という)が中間転写ベルト21におけるニップ部Nの中央に働く。対向ローラー24の回転運動が減速しているときには、中間転写ベルト21の搬送方向と逆向きの作用力(以下、「作用力F7b」という)が中間転写ベルト21におけるニップ部Nの中央に働く。
図21に示されるように、移動速度V1の時間波形の位相と移動速度V2との時間波形の位相とがずれている場合、中間転写ベルト21の変調駆動の1周期において、第1~第4の状態が順に発生する。
第1の状態は、中間転写ベルト21に力F1aと作用力F7bとが働いている状態である。第2の状態は、中間転写ベルト21に力F1aと作用力F7aとが働いている状態である。第3の状態は、中間転写ベルト21に力F1bと作用力F7aとが働いている状態である。第4の状態は、中間転写ベルト21に力F1bと作用力F7bとが働いている状態である。第1の状態および第3の状態では、中間転写ベルト21を変調駆動するための力と逆向きの作用力が中間転写ベルト21におけるニップ部Nの中央に働く。第2の状態および第4の状態では、中間転写ベルト21を変調駆動するための力と同じ向きの作用力が中間転写ベルト21におけるニップ部Nの中央に働く。
図21に示されるように、具体例3では、中間転写ベルト21の変調駆動の1周期において、中間転写ベルト21を変調駆動するための力の逆向きの作用力が中間転写ベルト21におけるニップ部Nの中央に働く曲面が2回となる。そのため、中間転写ベルト21の変調駆動の周波数をf[Hz]、システム速度(つまり、用紙100の搬送速度)をVs[mm/sec]、ニップ部Nの幅をw[mm](図15参照)とするとき、
f×w/Vs≧0.5
となるように変調駆動の周波数fを設定することが好ましい。これにより、中間転写ベルト21上の任意の一点がニップ部Nを通過中に少なくとも1回、変調駆動させるための力とニップ部Nの中央に働く作用力とが逆向きになる局面が生じる。
具体例3の構成では、中間転写ベルトの表面の移動速度V1の時間波形の位相と対向ローラーの表面の移動速度V2の時間波形の位相との差を180°に設定することにより、凹凸紙の凹部へのトナーの転写性を大きく向上させることができる。そのため、高温高湿環境や低温低湿環境下での使用あるいは繰返しの使用によって部材が劣化した場合であっても、安定した品質を確保することができる。
さらに、具体例2の構成に比べてf×w/Vsの好ましい範囲が拡がるので、システム速度がより速くなっても、凹凸紙の凹部へのトナーの転写性をさらに向上させやすくなる。
(具体例3の構成の実験結果)
コニカミノルタ株式会社製の画像形成装置(デジタル印刷機:bizhub PRESS C8000)を用いて、中間転写ベルトの駆動部を改造して、中間転写ベルトを変調駆動させた。さらに、対向ローラーを変調駆動する駆動部を設け、対向ローラーの表面の移動速度を400mm/secを中心として±5%変動させた。中間転写ベルトの表面の移動速度V1の時間波形の位相と対向ローラーの表面の移動速度V2の時間波形の位相との差を180°とした。その他の条件は、具体例2の構成の実験条件と同一とした。
この画像形成装置を用い、中間転写ベルトの変調駆動の周波数を変更しながら、凹凸紙に対してベタ画像を形成し、凹凸紙の凹部へのトナーの転写性を調べた。
図22は、具体例3の構成の実験結果を示す図である。図22に示されるように、変調駆動の周波数fが50Hz以上のとき、凹部の濃度ムラは、発生せず、凹部へのトナーの転写性もランク4(良好レベル)以上であった。
変調駆動の周波数fが50Hz以上のとき、f×w/Vs≧0.5を満たしていた。そのため、各トナーがニップ部を通過する間に、変調駆動させるための力とニップ部Nの中央に働く作用力とが逆向きになる局面が少なくとも1回発生する。これにより、中間転写ベルト21上の隣り合うトナー同士に激しい衝突が生じ、凹部へのトナーの転写性が非常に高くなったため、凹部の濃度ムラが発生せず、各凹部へのトナーの転写性がランク4以上になったものと推測される。
一方、変調駆動の周波数fが40Hzのときでも、中間転写ベルトの表面の移動速度と対向ローラーの表面の移動速度とが異なるため、凹部へのトナーの転写性が向上する。ただし、一部の凹部へのトナーの転写が不十分であり、凹部の濃度ムラが発生した。凹部へのトナーの転写性は、場所によって異なり、濃度の高い場所ではランク4以上であった。ただし、濃度の低い場所ではランク2であった。
変調駆動の周波数fが40Hzのときでは、f×w/Vs≧0.5を満たさない。そのため、変調駆動させるための力とニップ部Nの中央に働く作用力とが逆向きになる局面を一度も経ずにニップ部を通過してしまう場所が発生する。当該場所でも、中間転写ベルトの表面の移動速度と対向ローラーの表面の移動速度とが異なるため、凹部へのトナーの転写性が向上する。ただし、転写性の向上の度合いが、変調駆動させるための力とニップ部Nの中央に働く作用力とが逆向きになるときの度合いと比べて小さいために、濃度ムラが発生したものと推測される。
(利点)
以上のように、本実施の形態の画像形成装置1は、中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21を挟持する対向ローラー24および二次転写ローラー33とを備える。中間転写ベルト21と二次転写ローラー33との間に記録媒体である用紙100を通過させることにより、中間転写ベルト21に担持されたトナー像が用紙100に転写される。画像形成装置1は、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1が変動するように、中間転写ベルト21を駆動する駆動部をさらに備える。当該駆動部は、制御部8、モーター41および駆動ローラー23によって構成される。中間転写ベルト21の表面の移動速度V1と対向ローラー24の表面の移動速度V2とが異なる。
これにより、中間転写ベルト21におけるニップ部Nの中央において、変調駆動させるための力と異なる作用力が働く。すなわち、ニップ部N内の位置によって、中間転写ベルト21に働く力が異なる。そのため、ニップ部N内のトナーが中間転写ベルト21から受ける力も不均一となる。その結果、凹凸紙である用紙100の凹部101であっても、隣り合うトナー同士の衝突が生じ、トナーと中間転写ベルト21との付着力が低下し、用紙100へのトナーの転写性が向上する。
中間転写ベルト21が駆動ローラー23から受ける力の方向と、中間転写ベルト21が対向ローラー24から受ける力の方向とが逆向きであることが好ましい。
これにより、隣り合うトナー間で激しい衝突が生じ、用紙100の凹部101であっても、トナー200aの転写性がより向上しやすい。
上記の具体例1では、対向ローラー24は、中間転写ベルト21の表面の移動に伴って従動回転する。中間転写ベルト21の駆動部は、対向ローラー24の回転運動の固有振動数よりも大きい周波数に従って、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1を周期的に変動させる。
これにより、中間転写ベルト21の動作は、対向ローラー24の回転運動に遅れて伝達される。そのため、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1と対向ローラー24の表面の移動速度V2との位相にずれが生じ、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1と対向ローラー24の表面の移動速度V2とを異ならせることができる。
上記の具体例2では、画像形成装置1は、対向ローラー24の表面の移動速度V2が用紙100の搬送速度(つまり、システム速度Vs)と同じになるように、対向ローラー24を一定速度で回転させる駆動部をさらに備える。当該駆動部は、制御部8およびモーター46によって構成される。中間転写ベルト21の駆動部は、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1が用紙100の搬送速度を中心として周期的に変動するように、中間転写ベルト21を駆動する。
これにより、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1と対向ローラー24の表面の移動速度V2とを異ならせることができる。
対向ローラー24と二次転写ローラー33との間のニップ部Nの幅をw、用紙100の搬送速度をVs、移動速度V1の変動の周波数をfとするとき、f×w/Vs≧1が満たされる。
これにより、中間転写ベルト21上の任意の一点がニップ部Nを通過中に少なくとも1回、変調駆動させるための力とニップ部Nの中央に働く作用力とが逆向きになる局面が生じる。その結果、用紙100の凹部101へのトナーの転写性がさらに向上する。
上記の具体例3では、画像形成装置1は、対向ローラー24の表面の移動速度V2が用紙100の搬送速度(つまり、システム速度Vs)を中心として周期的に変動するように、対向ローラー24を回転駆動する駆動部をさらに備える。当該駆動部は、制御部8およびモーター46によって構成される。中間転写ベルト21の駆動部は、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1が用紙100の搬送速度を中心として周期的に変動するように、中間転写ベルト21を駆動する。対向ローラー24の表面の移動速度V2の時間波形の位相は、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1の時間波形の位相と異なる。
これにより、中間転写ベルト21の表面の移動速度V1と対向ローラー24の表面の移動速度V2とを異ならせることができる。
対向ローラー24と二次転写ローラー33との間のニップ部Nの幅をw、用紙100の搬送速度をVs、移動速度V1の変動の周波数をfとするとき、f×w/Vs≧0.5が満たされる。
これにより、中間転写ベルト21上の任意の一点がニップ部Nを通過中に少なくとも1回、変調駆動させるための力とニップ部Nの中央に働く作用力とが逆向きになる局面が生じる。その結果、用紙100の凹部101へのトナーの転写性がさらに向上する。
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。