JP7114369B2 - 加圧式液体吐出具 - Google Patents
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Description
例えば筆記具では、特許文献1(特開2000-335173号公報)のように、インキを収容したレフィールの後方に加圧機構を設けて、ノック体の押圧操作に連動させてインキタンク内を加圧する構造を用いて、ペン先からのインキの流出量を多くして、筆跡を太くあるいは濃くするボールペンが考えられている。
「1.先端チップから吐出具本体の内部に収容した液体を吐出させる加圧式液体吐出具であって、
前記吐出具本体の内方に、前記液体を収容する液体収容管を配設し、
前記液体収容管の外方に、気体収容管を配設し、
前記気体収容管の前方に、先口を着脱可能に装着し、
前記液体収容管の前方に、鍔部を設け、
前記先口と、前記液体収容管とが、前記鍔部を挟持して前記気体収容管の前方を密封し、
前記液体収容管の前方に、前記先端チップを配し、
前記液体収容管の外方に、該液体収容管に収容された液体の後方に位置した後方空間と連通する気体収容部を設け、
前記気体収容管の内方に、前記液体収容管を前後動不能に収容し、
前記吐出具本体の内方に、前記気体収容管及び液体収容管を前後動可能に収容し、
前記気体収容管の後方に、当該気体収容管を押動して前記先端チップを前記吐出具本体の前端開口より突出させた状態で維持する押動体を設け、
前記液体収容管の後方、且つ、前記押動体の内方に、前記液体収容管内の空気と、前記気体収容部内の空気と、を同時に圧縮した状態で維持する加圧機構を設け、前記押動体の押動により前記加圧機構を作動させることを特徴とした加圧式液体吐出具。」である。
大気圧を1000hPaとした場合、例えば粘度が低い筆記具用インキ(一例として20℃の環境下における粘度が1mPa・s~2000mPa・sの筆記具用インキ)では、前記密閉された空間の空気の気圧を前記大気圧である1000hPaを越え1500hPaの範囲となる加圧状態にすることで筆記具用インキを吐出し易くすることができるようになり、例えば粘度が高い液体(一例として20℃の環境下における粘度が3000mPa・s~50000mPa・sの筆記具用インキ)では、前記密閉された空間の空気の気圧を1100hPa~5000hPaの範囲となる加圧状態にすることで筆記用インキを吐出し易くすることができるようになる。しかしながら加圧する数値は特に限定されるものではなく、前述の通り液体の粘度などの特性や先端チップの構造により適宜設定すればよい。
尚、気体収容部に収容される空気の容積を空気Aとし、未使用状態で液体収容管に収容される液体の容積を液体Bとし、液体の後方に配置された空気の容積を空気Cとした場合、空気Aと液体Bと空気Cとの和を、空気Aと空気Cとの和に対して1.5倍以下とすることが好ましい。これは液体Bの減少に伴う加圧力の低下を減少させるためであり、特に1100hPa未満の低い加圧量が好ましい低粘度の液体を用いる加圧式液体吐出具において、液体を使用していない状態から液体が僅かとなった状態に至るまで、好適な吐出量を維持することが可能となる。
また、液体収容管に収容される液体Bが消費されることで、空気Cが増加して空気C’となり、液体が僅かとなった状態では、空気C’は空気Cと液体Bとの和となる。
空気Aの容積または空気Cの容積を大きく設定することで、液体Bの減少に伴う加圧力の低下を減少させることができるが、液体Bの後方に位置する空気Cの容積を大きく設定するためには、吐出具本体の全長を長くする必要があることから、全長が短くコンパクトな加圧式液体吐出具を得るためには、液体収容管の外方に位置する気体収容部の空気Aの容積を大きく設定することが好ましい。気体収容部を大きくするには、吐出具本体内方のスペースが利用できる。
この場合、先端チップの内部と外部との連通状態を、コイルスプリングなどの弾発力で開閉可能な弁機構を設け、先端チップを紙面等に押し付けていない状態では、先端チップから液体が吐出しないようにすることで、粘度が低い液体を用いる場合でも、押動体を押動して加圧しただけでは液体が吐出しないようにすることが可能となる。
また、熱変色材料を含有したマイクロカプセル顔料を着色剤として用いた熱変色性インキは、カプセル内に色材を含有することから、一般的に筆跡濃度を高くし難い傾向にあるが、本発明構造の加圧式液体吐出具を用いることで、加圧によるインキ流出量の増加で筆跡濃度を高くすることが可能となる。
尚、マイクロカプセル顔料を含有した熱変色性インキの筆跡濃度を高くする方法としては、着色剤となるマイクロカプセル顔料の量を多くする場合や、マイクロカプセル顔料の粒径を大きくする場合もあるが、前記マイクロカプセル顔料の量を多くした場合にはインキの粘度が高くなって流出し難くなり、前記マイクロカプセル顔料の粒径を大きくした場合には当該顔料がインキ流路を通り難くなり、インキの流出がし難くなる虞がある。
しかしながら、この様なインキでも、本発明構造の加圧式液体吐出具は、インキを加圧することで強制的に当該インキを吐出させることができることから使用可能である。
また、液中に酸化チタンや光輝性顔料などの比重が比較的大きい固形分を含み、その固形分が液中で沈降しないように静置時の粘度を高くしたインキでも、本発明構造の加圧式液体吐出具は、前記マイクロカプセル顔料を含有した熱変色性インキと同様に、インキを加圧することで強制的に当該インキを吐出させることができる。
また、修正液や液体糊のように、乾燥した液体が先端チップに付着してしまうような場合でも、液体を加圧して吐出し易くすることができる。
この様に本発明の加圧式液体吐出具は様々な液体の吐出具として適した構造である。
本実施形態においては、先端チップがある方を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。説明を分かり易くするために、図面中の同様の部材、同様の部分については同じ符号を付してある。
クリップ5は、後軸4の側面に突設した突部4aに回動可能に軸支されており、クリップ5の後部と後軸4の後部との間に配設したコイルバネ6で、クリップ5の内面に形成した突起5aが、後軸4の側面に当接するよう弾発してある。
液体収容管8の外方には、気体収容管9を配設してあり、液体収容管8の前方に設けたエラストマー製の鍔部材8cを、気体収容管9の前端部と、当該気体収容管9に螺合される先口10の内段10aとで挟持してある。これにより気体収容管9の前方が密封され空気の流出入を防ぐことができる。
また、気体収容管9の後方には、ピストン部材11の前方部が挿着される。ピストン部材11は、側面に形成したフランジ11aが、気体収容管9の後端に当接するまで挿着され、ピストン部材11に形成した凹部11bへ係止されたエラストマー製のOリング12が、気体収容管9の内面に当接される。これにより気体収容管9の後方が密封され空気の流出入を防ぐことができる。
液体収容管8の外面と気体収容管9の内面との間には気体収容部9aが形成され、空気K2が収容される。
ピストン部材11に形成された前記溝部11dは、液体収容管8内の空気K1と、気体収容部9a内の空気K2とを連通させる。本実施形態では、溝部11dを、ピストン部材11の内底面11eと内側面11fとが連通するよう形成され、軸心に対して放射状に複数設けてある。したがって、液体収容管8が長く形成され、内底面11eに当接してしまう場合でも、液体収容管8内の空気K1と気体収容部9a内の空気K2とを、溝部11dにより確実に連通させることができる。
ピストン部材11の小径部11hに形成した凹部11iへ係止されたエラストマー製のOリング15は、シリンダ部材14の内面に当接される。これによりピストン部材11とシリンダ部材14との間における空気の流出入を防ぐことができる。
押動体13の内部後方には、半球状の弁部16aを有するエラストマー製の弁体16が挿着される。弁体16は、外周に形成した円環部16bを、押動体13の内面に形成した縦リブ13cの前端に当接させ、後方への移動が規制される。
図1に示すように、先端チップ8aが軸筒2内に没入した状態では、シリンダ部材14の後方に形成した截頭錐体状で貫通孔を有する突部14aが、弁体16の弁部16aから離間しており、押動体13とシリンダ部材14との隙間、及びピストン部材11と押動体13との隙間を通じて、シリンダ部材14内の空気K3と、ピストン部材11内の空気K4と、液体収容管8内の空気K1と、気体収容部9a内の空気K2と、が外気と連通して大気圧となる。
押動体13の内方にはコイルバネ18が収容されており、その前端をピストン部材11の外段11jに当接させ、その後端を押動体13の前部内段13eに当接させ、ピストン部材11に対して押動体13が常時後方へ弾発される。押動体13は、コイルバネ18に弾発されることにより、後軸4の後端開口4bから突出する。
本実施形態では、コイルバネ17は、初期バネ力が3.0Nで配設されており、コイルバネ18は、初期バネ力が1.8Nで配設されている。
本実施形態のボールペン1は、押動体13の押動部13aを押動することで、先端チップ8aを前端開口3aから突出させ、クリップ5の突起5aが、押動体13の側面に形成した膨出部13dに係止されることで、前記先端チップ8aの突出状態が維持される。前記膨出部13dは、後軸4の側面に軸線方向daに沿って形成された窓部4cへ、前後動可能に挿通してある。
本実施形態では、液体収容管8の後方のピストン部材11とシリンダ部材14とOリング15とで加圧機構が構成される。
また、気体収容管9は、シリンダ部材14及びピストン部材11を介して前進され、押動体13の膨出部13dが、後軸4の窓部4cの前端縁4eに当接されるまで前進する。この際、コイルバネ6を圧縮しながらクリップ5の突起5aが押動体13の膨出部13dを乗り越え、コイルバネ6の弾発力で突起5aが、膨出部13dに係止されることで、先端チップ8aが前端開口3aから突出した状態で維持される。
したがって、ボールペン1が筆記可能な状態にあるとき、つまり先端チップ8aが前端開口3aから突出して維持されたときは、インキ7が加圧された状態で維持される。
本実施形態では、気体収容部9aに収容される空気K2の容積1657mm3と、未使用状態で液体収容管8に収容される液体の容積208mm3と、液体の後方に配置された空気K1の容積31mm3と、空気K3の容積184mm3と、空気K4の容積40mm3との和が、空気K2の容積1657mm3と、液体の後方に配置された空気K1の容積31mm3と、空気K3の容積184mm3と、空気K4の容積40mm3との和の1.109倍となっており、その差が少ないことから、インキ7が消費された場合でも加圧力の低下を減少させることができ、安定した吐出量を維持することができる。
前記摩擦体132を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等があげられる。
弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)ではなく、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料であり、摩擦体132にて、前記インキ7による筆跡を摩擦することで、摩擦熱を発生して筆跡を消色することができる。また、押動体13の押動部13aが前述の通り弾性材料(摩擦体132)であることから、押動体13を後方へ弾発するコイルバネ17やコイルバネ18の弾発力が強くても、押動体13を押動する指が滑り難く、操作し易い構造である。
尚、10m当たりのインキ消費量は、JIS規格S6054に準じて測定(20℃、筆記角度70度、筆記速度4m/min、自公転、筆記荷重100gf、下敷きステンレス板)測定したものであり、10m筆記後にインキ残量を測定して計算によって求めたものである。また、こうした試験を連続して5回(計50m)、計5本行い、その平均値によって求められるものである。
また、筆跡幅及び筆跡濃度は、前記筆記によって得られた筆跡をISO13660に準じて、筆跡幅(mm)は、反射率の60%以下の領域、筆跡濃度は、反射率75%以下の範囲内の平均値を測定したもので、本願発明における筆跡幅及び筆跡濃度は、パーソナル画質評価装置(QEA(Quality Engineering Associates)社製、PIAS-II)によって求めることができる。尚、本発明においては、15箇所を測定し、その平均値によって求めたものである。
インキ粘度は、ブルックフィールド社製DV-II粘度計(コーンローター CPE整42)を用いて20℃の環境下で、剪断速度3.84sec-1(10rpm)、剪断速度384sec-1(100rpm)の条件にてインキ粘度を測定する。
図2に示したクリップ5の後端を、コイルバネ6の弾発力に抗して軸筒2側へ押動することで、押動体13の膨出部13dとクリップ5の突起5aとの係止状態を解除し、コイルバネ17及びコイルバネ18の弾発力で、液体収容管8、気体収容管9、ピストン部材11、押動体13、シリンダ部材14のそれぞれが、図1の状態まで後退され、再び先端チップ8aが前端開口3a内に没入する。
前述の通り、先端チップ8aが軸筒2内に没入した状態では、シリンダ部材14の後方に形成した截頭錐体状で貫通孔を有する突部14aが、弁体16の弁部16aから離間しており、押動体13とシリンダ部材14との隙間、及びピストン部材11と押動体13との隙間を通じて、シリンダ部材14内の空気K3と、ピストン部材11内の空気K4と、液体収容管8内の空気K1と、気体収容部9a内の空気K2と、が外気と連通して再び大気圧となる。
2…軸筒、
3…前軸、3a…前端開口、3b…内段、
4…後軸、4a…突部、4b…後端開口、4c…窓部、4d…段部、4e…前端縁、
5…クリップ、5a…突起、
6…コイルバネ、
7…インキ、7a…インキ追従体、
8…液体収容管、8a…先端チップ、8b…後方空間、8c…鍔部、8d…チップ本体、8e…ボール、8f…コイルスプリング、
9…気体収容管、9a…気体収容部、9b…外段、9c…鍔部、
10…先口、10a…内段、
11…ピストン部材、11a…フランジ、11b…凹部、11c…前方開口、11d…溝部、11e…内底面、11f…内側面、11g…大径部、11h…小径部、11i…凹部、11j…外段、11k…後壁、
12…Oリング、
13…押動体、13a…押動部、13b…前方開口、13c…縦リブ、13d…膨出部、13e…前部内段、13f…後部内段、13g…基体、13h…摩擦体、
14…シリンダ部材、14a…突部、
15…Oリング、
16…弁体、16a…弁部、16b…円環部、
17…コイルバネ、
18…コイルバネ、
K1,K2,K3,K4…空気。
Claims (1)
- 先端チップから吐出具本体の内部に収容した液体を吐出させる加圧式液体吐出具であって、
前記吐出具本体の内方に、前記液体を収容する液体収容管を配設し、
前記液体収容管の外方に、気体収容管を配設し、
前記気体収容管の前方に、先口を着脱可能に装着し、
前記液体収容管の前方に、鍔部を設け、
前記先口と、前記液体収容管とが、前記鍔部を挟持して前記気体収容管の前方を密封し、
前記液体収容管の前方に、前記先端チップを配し、
前記液体収容管の外方に、該液体収容管に収容された液体の後方に位置した後方空間と連通する気体収容部を設け、
前記気体収容管の内方に、前記液体収容管を前後動不能に収容し、
前記吐出具本体の内方に、前記気体収容管及び液体収容管を前後動可能に収容し、
前記気体収容管の後方に、当該気体収容管を押動して前記先端チップを前記吐出具本体の前端開口より突出させた状態で維持する押動体を設け、
前記液体収容管の後方、且つ、前記押動体の内方に、前記液体収容管内の空気と、前記気体収容部内の空気と、を同時に圧縮した状態で維持する加圧機構を設け、前記押動体の押動により前記加圧機構を作動させることを特徴とした加圧式液体吐出具。
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