JP7114324B2 - ペースト状組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ペースト状組成物、及びその製造方法に関する。
アイスクリームは、通常、原料を均質化した後冷却し、4~24時間エージングした後フリージングし、フリーザーから出てきた半流動性の冷菓を急速凍結により硬化して製造されている(非特許文献1)。
したがって、冷菓製造装置を持っていない一般家庭や食品を提供する店では、アイスクリームを手軽に製造することができなかった。
また、アイスクリームは、冷凍庫から取り出してすぐに食べなければ溶けてしまい、保形性がなくなるだけでなく、アイスクリーム特有のなめらかな口当たりのもととなる空気の泡がこわれてしまって、食感も悪くなってしまう食品である。
このようなアイスクリーム独特の性質により、食べるのが遅い小さい子供や高齢者がアイスクリームを食べる場合、冷菓を溶かしてしまって手や洋服を汚してしまったりするという問題があった。また、老人ホーム、学校、病院等の食事を提供する施設でアイスクリームを食事と一緒に提供した場合、通常、アイスクリームは食後のデザートとして食することが多いので、食事が終わるまでアイスクリームが室温に置かれてしまい、アイスクリームを食べる時には溶けてしまっているという問題もあった。
アイスクリームを溶けにくくするために、寒天を牛乳で溶解し、氷菓材料に混入して作る氷菓子製造方法が開発されていたが、上記問題点を解決するために、さらに長時間溶けにくいアイスクリームが望まれていた(特許文献1)。
特開平11-155491号公報
太田 静行著「食品加工の知識」発行所「株式会社幸書房」、2001年10月31日2版第4刷発行、p.289―292
本発明の目的は、均質化やフリージングといったアイスクリーム製造に必要な工程を実施しなくても、アイスクリームのような外観及び食感を有するペースト状組成物製造することができ、さらに、冷蔵や室温で長時間放置しても保形性を有していて型崩れをしないペースト状組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、原料に特定の粉末油脂組成物を使用することで、均質化やフリージングといった冷菓製造に必要な工程を実施しなくても、アイスクリーム等の冷菓のような外観及び食感を有するペースト状組成物製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に関するものである。
〔1〕次の粉末油脂組成物と植物性クリーム又は生クリームとを含有するペースト状組成物であって、該ペースト状組成物中の該粉末油脂組成物の含量が、22~50質量%であり、該植物性クリーム又は生クリームの含量が、45.5~78質量%であることを特徴とするペースト状組成物。
粉末油脂組成物:全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、
1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する、1種以上のXXX型トリグリセリドを65~99質量%と、
該XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した、1種以上のX2Y型トリグリセリドを35~1質量%とを含有し、
該炭素数xは、10~12から選択される整数で、
該炭素数yは、それぞれ独立して、x+2~x+12から選択される整数で、かつ22以下の整数である、粉末油脂組成物。
〔2〕ケトン食として用いることを特徴とする請求項1に記載のペースト状組成物。
〔3〕請求項1又は2に記載のペースト状組成物を冷凍した冷凍品。
本発明によると、均質化やフリージングといったアイスクリーム製造に必要な工程を実施しなくても、アイスクリームのような外観及び食感を有するペースト状組成物製造することができる。また、本発明によると、冷蔵や室温で長時間放置しても保形性を有していて型崩れをしないペースト状組成物を得ることができる。
図1は、市販のアイスクリームを8ccのアイスクリームディッシャーに充填し、バット上に型抜きしたものの写真である。 図2は、比較例1のペースト状組成物の写真である。 図3は、比較例2のペースト状組成物の写真である。 図4は、比較例3のペースト状組成物の写真である。 図5は、実施例1のペースト状組成物の写真である。 図6は、図1の市販のアイスクリームを20℃の恒温室で60分間放置した時の写真である。 図7は、比較例1のペースト状組成物を20℃の恒温室で60分間放置した時の写真である。 図8は、比較例2のペースト状組成物を20℃の恒温室で60分間放置した時の写真である。 図9は、比較例3のペースト状組成物を20℃の恒温室で60分間放置した時の写真である 図10は、実施例1のペースト状組成物を20℃の恒温室で60分間放置した時の写真である。 図11は、比較例4のペースト状組成物の写真である。 図12は、比較例5のペースト状組成物の写真である。 図13は、比較例6のペースト状組成物の写真である。 図14は、比較例7のペースト状組成物の写真である。 図15は、参考例1のペースト状組成物の写真である。 図16は、参考例2のペースト状組成物の写真である。 図17は、参考例3のペースト状組成物の写真である。 図18は、参考例4のペースト状組成物の写真である。 図19は、比較例8のペースト状組成物の写真である。 図20は、実施例6のペースト状組成物の写真である。 図21は、実施例7のペースト状組成物の写真である。 図22は、アイスクリームを挟んでいたモナカを開いてバットに立てかけた状態の写真である。 図23は、ペースト状組成物を挟んでいたモナカを開いてバットに立てかけた状態の写真である。
まず、本発明に使用する粉末油脂組成物について説明をする。
本発明に使用する粉末油脂組成物は、国際公開第2016/013582号に記載された粉末油脂組成物を使用することができる。
粉末油脂組成物は、全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する1種又はそれ以上のXXX型トリグリセリドを65~99質量%と、該XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した1種以上のX2Y型トリグリセリドを35~1質量%とを含有する粉末油脂組成物であって、該炭素数xは、10~12から選択される整数で、該炭素数yは、それぞれ独立して、x+2~x+12から選択される整数で、かつ22以下の整数であることを特徴とする粉末油脂組成物である。
本発明に使用する粉末油脂組成物は、常温(20℃)で粉末状の固体である。
本発明に使用する粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度は、好ましくは0.1~0.6g/cmであり、より好ましくは0.15~0.5g/cmであり、さらにより好ましくは0.2~0.4g/cmである。
ここで「ゆるめ嵩密度」とは、粉体を自然落下させた状態の充填密度である。ゆるめ嵩密度(g/cm)の測定は、例えば、内径15mm×25mLのメスシリンダーに、当該メスシリンダーの上部開口端から2cm程度上方から粉末油脂組成物の適量を落下させて疎充填し、充填された質量(g)の測定と容量(mL)の読み取りを行い、1mL当たりの当該粉末油脂組成物の質量(g)を算出することで求めることができる。また、ゆるめ嵩密度は、(株)蔵持科学器械製作所のカサ比重測定器を使用し、JIS K-6720(又はISO 1060-1及び2)に基づいて測定したカサ比重から算出することもできる。
具体的には、試料120mLを、受器(内径40mm×高さ85mmの100mL円柱形容器)の上部開口部から38mmの高さの位置から、該受器に落とす。受器から盛り上がった試料はすり落とし、受器の内容積(100mL)分の試料の質量(Ag)を秤量し、以下の式からゆるめ嵩密度を求めることができる。
ゆるめ嵩密度(g/mL)=A(g)/100(mL)
測定は3回行ってその平均値を取ることが好ましい。
また、本発明に使用する粉末油脂組成物は、通常、板状結晶または球状結晶の形態を有し、好ましくは、板状結晶の形態を有し、例えば、50~400μm、好ましくは50~300μm、より好ましくは50~250μm、殊更好ましくは、50~200μmの平均粒径(有効径)を有する。
ここで、平均粒径(有効径)は、粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製、装置名:Microtrac MT3300ExII)でレーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276-1)に基づいて、乾式測定により測定した値(d50)である。
有効径とは、測定対象となる結晶の実測回折パターンが、球形と仮定して得られる理論的回折パターンに適合する場合の、当該球形の粒径を意味する。このように、レーザー回折散乱法の場合、球形と仮定して得られる理論的回折パターンと、実測回折パターンを適合させて有効径を算出しているので、測定対象が板状結晶であっても球状結晶であっても同じ原理で測定することができる。ここで、球状とは、アスペクト比が1.0以上1.1未満であることを指し、板状とは、アスペクト比が1.1以上であることを指す。なお、アスペクト比とは、粒子図形に対して、面積が最小となるように外接する長方形で囲み、その長方形の長辺の長さと短辺の長さの比と定義される。
〔粉末油脂組成物中のトリグリセリドについて〕
<XXX型トリグリセリド>
XXX型トリグリセリドは、1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するトリグリセリドであり、各脂肪酸残基Xは互いに同一である。そして、該炭素数xは10~12の整数であり、10であることがより好ましい。
脂肪酸残基Xは、飽和脂肪酸残基であっても、不飽和の脂肪酸残基であってもよい。脂肪酸残基Xとして、例えば、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)の残基が挙げられる。その中でも、脂肪酸残基Xは、カプリン酸であることが好ましい。
本発明に使用する粉末油脂組成物は、1種又は2種以上の種類のXXX型トリグリセリドを含むもので、1種類のXXX型トリグリセリドを含むものがより好ましい。
脂組成物中のXXX型トリグリセリドの含量は、粉末油脂組成物中の全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、65~99質量%であり、75~99質量%であることが好ましく、80~99質量%であることがより好ましく、83~98質量%であることがさらに好ましく、85~98質量%であることがさらにより好ましく、90~98質量%であることが最も好ましい。
<X2Y型トリグリセリド>
X2Y型トリグリセリドは、先に説明をしたXXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換したトリグリセリドであり、当該脂肪酸残基Yは、X2Y型トリグリセリドの1位~3位の何れに配置していてもよい。また、1つのX2Y型トリグリセリドに含まれる各脂肪酸残基Xは互いに同一であり、かつXXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xとも同一である。
X2Y型トリグリセリドの脂肪酸残基Yの炭素数yは、それぞれ独立して、x+2~x+12から選択される整数、好ましくはy=x+2~x+10から選択される整数、より好ましくはy=x+4~x+8から選択される整数で、かつ22以下の整数、好ましくは20以下の整数、より好ましくは18以下の整数である。
炭素数yの脂肪酸残基Yは、1種類の脂肪酸残基でも良いが、数種類異なる脂肪酸残基であっても良い。
脂肪酸残基Yは、飽和脂肪酸残基であっても不飽和脂肪酸残基であってもよい。脂肪酸残基Yとして、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、及びベヘン酸の残基が挙げられる。その中でも脂肪酸残基Yは、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、及びベヘン酸であることが好ましく、ミリスチン酸、パルミチン酸、及びステアリン酸であることがより好ましく、ステアリン酸であることがさらに好ましい。
本発明で用いる粉末油脂組成物は、上記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリドを1種又は2種以上含み、好ましくは2種類~5種類含み、より好ましくは3~4種類含む。
各X2Y型トリグリセリドの脂肪酸残基Yの炭素数yは、上述の範囲内から、各X2Y型トリグリセリドごとにそれぞれ独立して選択される。例えば、本発明で用いる粉末油脂組成物を、トリカプリンとパーム核ステアリン極度硬化油とをエステル交換してX2Y型トリグリセリド製造した場合は、X2Y型トリグリセリドのxはすべて10であるが、yは12、14、16及び18の4種類あり、4種類のX2Y型トリグリセリド含む。
脂組成物中のX2Y型トリグリセリドの含量は、粉末油脂組成物中の全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、35~1質量%であり、25~1質量%であることが好ましく、20~1質量%であることがより好ましく、17~1質量%であることがさらに好ましく、15~2質量%であることがさらにより好ましく、10~2質量%であることが最も好ましい。なお、本発明で用いる粉末油脂組成物に複数のX2Y型トリグリセリドが含まれる場合、上記X2Y型トリグリセリドの含有量は、含まれるX2Y型トリグリセリドの合計量である。
<その他のトリグリセリド>
粉末油脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、上記XXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリド以外の、その他のトリグリセリドを含んでいてもよい。その他のトリグリセリドは、複数の種類のトリグリセリドであってもよく、合成油脂であっても天然油脂であってもよい。天然油脂としては、例えば、ココアバター、ヒマワリ油、菜種油、大豆油、綿実油等が挙げられる。
粉末油脂組成物中のその他のトリグリセリドの含量は、粉末油脂組成物中の全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1質量%以上含有させることができて、5~30質量%程度含まれていても問題はなく、好ましくは0~30質量%であり、より好ましくは0~18質量%であり、さらに好ましくは0~15質量%であり、さらにより好ましくは0~8質量%である。
次に、本発明に使用する粉末油脂組成物の製造方法について説明をする。
本発明に使用する粉末油脂組成物は、国際公開第2016/013582号に記載された粉末油脂組成物の製造方法により製造することができる。
本発明で用いる粉末油脂組成物は、以下の工程(a)及び工程(d)を含む製造方法によって製造することができる。また、任意の工程(c)を含んだ方法でも製造することができる。
(a)全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する、1種以上のXXX型トリグリセリドを65~99質量%と、該XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した、1種以上のX2Y型トリグリセリドを35~1質量%とを含有し、該炭素数xは、10~12から選択される整数で、該炭素数yは、それぞれ独立して、x+2~x+12から選択される整数で、かつ22以下の整数である、油脂組成物を調製する工程、
(c)油脂組成物の結晶化を促進させる任意の工程、
(d)前記油脂組成物を、油脂組成物の融点より低い温度で冷却して油脂組成物を結晶化する工程。
後に詳しく説明するが、工程(a)により得られた油脂組成物が溶融状態になかった場合には、工程(a)と工程(d)の間で、油脂組成物を加熱してトリグリセリドを融解し、溶融状態の油脂組成物を得るという工程(b)を行う必要がある。
以下、工程(a)(b)(c)及び(d)について説明をする。
〔工程(a)について〕
特定のトリグリセリドを特定量含有する油脂組成物を調製する工程(a)は、以下に説明をする調製方法(1)(2)、又は(3)により行うことができる。
<工程(a):調製方法(1)>
調製方法(1)は、XXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドとを別々に合成してエステル交換する方法である。
具体的には、原料として1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有するXXX型トリグリセリド(1種又は2種以上)と、1位~3位に炭素数yの脂肪酸残基Yを有するYYY型トリグリセリド(1種又は2種以上)を入手する。それらを、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比が、90/10~99/1となるように混合し反応原料とする。得られた反応原料をエステル交換反応することにより、XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドとを含有する油脂組成物を製造する。
ここで、YYY型トリグリセリドは、1位~3位に炭素数yの脂肪酸残基Yを有するトリグリセリドで、当該炭素数y及び脂肪酸残基Yは、上述した通りである。
また、XXX型トリグリセリド、及びX2Y型トリグリセリドの詳細は、上述した通りである。
以下、調製方法(1)による工程(a)について詳細に説明をする。
XXX型トリグリセリド、上記YYY型トリグリセリドは、市販品を用いたり、天然油脂やその分別油脂、及びそれらの水素添加油脂中に含まれるトリグリセリドを利用することもできるが、脂肪酸又は脂肪酸誘導体とグリセリンを用いた直接合成によって得ることができる。
XXX型トリグリセリドを直接合成する方法としては、(i)炭素数Xの脂肪酸とグリセリンとを直接エステル化する方法(直接エステル合成)、(ii)炭素数xである脂肪酸Xのカルボキシル基がアルコキシル基と結合した脂肪酸アルキル(例えば、脂肪酸メチル及び脂肪酸エチル)とグリセリンとを塩基性または酸性触媒条件下にて反応させる方法(脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成)、(iii)炭素数xである脂肪酸Xのカルボキシル基の水酸基がハロゲンに置換された脂肪酸ハロゲン化物(例えば、脂肪酸クロリド及び脂肪酸ブロミド)とグリセリンとを塩基性触媒下にて反応させる方法(酸ハライド合成)等が挙げられる。
YYY型トリグリセリドを直接合成する方法としては、(i)炭素数Yの脂肪酸とグリセリンとを直接エステル化する方法(直接エステル合成)、(ii)炭素数yである脂肪酸Yのカルボキシル基がアルコキシル基と結合した脂肪酸アルキル(例えば、脂肪酸メチル及び脂肪酸エチル)とグリセリンとを塩基性または酸性触媒条件下にて反応させる方法(脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成)、(iii)炭素数yである脂肪酸Yのカルボキシル基の水酸基がハロゲンに置換された脂肪酸ハロゲン化物(例えば、脂肪酸クロリド及び脂肪酸ブロミド)とグリセリンとを塩基性触媒下にて反応させる方法(酸ハライド合成)等が挙げられる。
XXX型トリグリセリド及びYYY型トリグリセリドの製造は、前述の(i)~(iii)のいずれの方法によっても製造することができるが、製造の容易さの観点から、(i)直接エステル合成又は(ii)脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成による方法が好ましく、(i)直接エステル合成による方法がより好ましい。
ここで、(i)の直接エステル合成によるXXX型トリグリセリド、又はYYY型トリグリセリドの製造についてさらに詳細に説明する。
反応原料であるグリセリンと脂肪酸の仕込み割合は、製造効率の観点から、グリセリン1モルに対して脂肪酸X、又は脂肪酸Yが3~5モルであることが好ましく、3~4モルであることがより好ましい。
直接エステル合成の反応温度は、エステル化反応によって生ずる生成水が系外に除去できる温度であればよく、例えば、120℃~300℃が好ましく、150℃~270℃がより好ましく、180℃~250℃がさらに好ましい。反応を180~250℃で行うことで、XXX型トリグリセリド、又はYYY型トリグリセリドを特に効率的に製造することができる。
直接エステル合成では、エステル化反応を促進する触媒を用いることができる。触媒としては酸触媒、及びアルカリ土類金属のアルコキシド等が挙げられる。触媒の使用量は、反応原料の総質量に対して0.001~1質量%程度であることが好ましい。
また、エステル化反応後、水洗、アルカリ脱酸及び/又は減圧脱酸、及び吸着処理等の公知の精製処理を行うことで、触媒や原料未反応物を除去することができる。更に、脱色・脱臭処理を施すことで、得られた反応物(XXX型トリグリセリド又はYYY型トリグリセリド)をさらに精製することができる。
次に、XXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドとのエステル交換反応について説明をする。
原料であるXXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドを、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比が、90/10~99/1、好ましくは93/7~99/1、より好ましくは95/5~99/1になるように混合し、反応原料を調製する。
特に、脂肪酸残基Xが炭素数10かつ脂肪酸残基Yが炭素数14~18の場合、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比は、95/5~99/1であることが好ましく、また、脂肪酸残基Xが炭素数12かつ脂肪酸残基Yが炭素数16~18の場合、XXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比は、95/5~99/1であることが好ましい。
反応原料には、上記XXX型トリグリセリドやYYY型トリグリセリドの他、本発明の効果を損なわない限り、その他のトリグリセリド含有させることができる。
その他のトリグリセリドとしては、例えば、上記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つが脂肪酸残基Yに置換したX2Y型トリグリセリド、上記XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの2つが脂肪酸残基Yに置換したXY2型トリグリセリド等を挙げることができる。
その他のトリグリセリドの量は、例えば、XXX型トリグリセリド及びYYY型トリグリセリドの合計質量を100質量%とした場合、0~15質量%であり、好ましくは0~7質量%であり、より好ましくは0~4質量%である。
また、上記XXX型トリグリセリドやYYY型トリグリセリドの代わりに、天然由来のトリグリセリド組成物を使用してもよい。天然由来のトリグリセリド組成物としては、例えば、パーム核油、パーム核オレイン、パーム核ステアリン、ナタネ油、ヤシ油、大豆油、ヒマワリ油、サフラワー油、パームステアリン等を挙げることができる。これらの天然由来のトリグリセリド組成物は、さらに水素添加等により改質した硬化油、部分硬化油、極度硬化油であってもよい。
上記天然由来のトリグリセリド組成物の量は、これら天然由来のトリグリセリド組成物に含まれる必要なXXX型トリグリセリド又はYYY型トリグリセリドの量に依存するが、例えば、XXX型トリグリセリドのXがカプリン酸で、YYY型トリグリセリドの由来としてパーム核ステアリン極度硬化油を使用する場合、当該パーム核ステアリン極度硬化油に含まれる1位~3位にY残基を有するトリグリセリドが上述したYYY型トリグリセリドとして必要な量、即ちXXX型トリグリセリド/YYY型トリグリセリドの質量比で90/10~99/1、好ましくは93/7~99/1、より好ましくは95/5~98/2を満たす量で含まれることが適当である。
エステル交換反応の反応原料には、上記トリグリセリドの他、任意に部分グリセリド、抗酸化剤、乳化剤、水などの溶媒等のその他の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、得られる反応原料の質量を100質量%とした場合、その他の成分の含有量は0~5質量%であることが好ましく、0~2質量%でありことがより好ましく、0~1質量%であることがさらに好ましい。
反応原料の混合は、原料を混合できるのであれば、公知のいかなる混合方法を用いてもよく、例えば、パドルミキサー、アジホモミキサー、ディスパーミキサー等で行うことができる。
混合は、必要に応じて加熱しながら行ってもよい。加熱温度は、例えば、50~120℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましく、70~90℃であることがさらに好ましく、75~85℃であることがさらにより好ましい。
混合は、例えば、5~60分間行うことができ、10~50分間行うのが好ましく、20~40分間行うのがより好ましい。
なお、反応の触媒として酵素を使用する場合、酵素添加前に水は極力存在させないことが好ましい。酵素添加前の反応原料中の水の量は、原料全体中10質量%以下であることが好ましく、0.001~5質量%であることが好ましく、0.01~3質量%であることがより好ましく、0.01~2質量%であることがさらに好ましい。
XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドとを含有する油脂組成物は、上記反応原料を、触媒の存在下でエステル交換反応することにより製造することができる。
エステル交換反応の条件には特に限定はなく、通常行われているエステル交換反応の条件を用いることができる。
エステル交換反応時の温度は、50~120℃であることが好ましく、60~100℃であることがより好ましく、70~90℃であることがさらに好ましく、75~85℃であることがさらにより好ましい。
触媒には、酵素、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルコキシド等を使用することができる。酵素としては、固定化酵素及び粉末酵素を使用できるが、酵素活性及び取扱い容易性の面から、粉末酵素であることが好ましい。
粉末酵素は、酵素含有水性液体をスプレードライ、フリーズドライ、溶剤沈澱後の乾燥などの方法で乾燥、粉末化したもので、特に限定する条件はないが、例えば、アルカリゲネス エスピー(Alcaligenes sp.)由来のリパーゼ(名糖産業株式会社、商品名リパーゼQLM)を使用することができる。
固定化酵素としては、酵素をシリカ、セライト、珪藻土、パーライト、ポリビニールアルコール、陰イオン交換樹脂、フェノール吸着樹脂、疎水性担体、陽イオン交換樹脂、キレート樹脂等の担体に固定化したものを用いることができる。
アルカリ金属アルコキシドのアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムを使用するのが好ましい。また、アルカリ土類金属アルコキシドのアルカリ土類金属としては、マグネシウム及びカルシウムを使用するのが好ましい。
アルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、n-ブトキシド、t-ブトキシド等を挙げることができ、メトキシド又はエトキシドが好ましい。
具体的なアルカリ金属アルコキシド及びアルカリ土類金属アルコキシドとして、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド等を挙げることができ、ナトリウムメトキシドを使用するのが好ましい。
これらの触媒は、1種又は2種以上を混合して使用してもよいが、酵素系の触媒とアルコキシド系の触媒は同時に使用しない方が好ましい。
触媒の添加量は、エステル交換反応が十分に進行する量であればよいが、原料であるトリグリセリドの合計質量を100質量%とした場合、0.01~20質量%であることが好ましく、0.05~10質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることがさらに好ましく、0.2~1質量%であることがさらにより好ましい。上記触媒の他、任意の助触媒を使用することができる。
触媒は、反応原料に上記所定量を1度に投入してもよいが、上記所定量の触媒を、例えば、2~30回、好ましくは3~20回、より好ましくは5~15回に分けて反応原料に投入することができる。触媒を投入する時期は、上記工程(a)直後の他、1回目の触媒投入時から1~2時間おきに投入してもよい。
エステル交換反応は、常圧下、又は減圧下の条件で、上述した加熱温度により、0.5~50時間行うのが好ましく、1~40時間行うのがより好ましく、5~30時間行うのがさらに好ましく、10~20時間行うのがさらにより好ましい。また、反応時には攪拌するのが好ましい。
<工程(a):調製方法(2)>
調製方法(2)は、XXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドとを別々に合成してエステル交換するという調製方法(1)とは違って、XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドを同時かつ直接合成する方法である。
具体的には、XXX型トリグリセリドとYYY型トリグリセリドの両方を製造するための原料(脂肪酸または脂肪酸誘導体とグリセリン)を、同じ反応容器に投入し、同時かつ直接合成することで、XXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリドを含有する油脂組成物を製造する。
以下、調製方法(2)による工程(a)について詳細に説明をする。
XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドを同時かつ直接合成する方法としては、(iv)炭素数xである脂肪酸X及び炭素数yの脂肪酸Yとグリセリンとを直接エステル化する方法(直接エステル合成)、(v)炭素数xである脂肪酸X及び炭素数yである脂肪酸Yのカルボキシル基がアルコキシル基と結合した脂肪酸アルキル(例えば、脂肪酸メチル及び脂肪酸エチル)とグリセリンとを塩基性または酸性触媒条件下にて反応させる方法(脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成)、(vi)炭素数xである脂肪酸X及び炭素数yである脂肪酸Yのカルボキシル基の水酸基がハロゲンに置換された脂肪酸ハロゲン化物(例えば、脂肪酸クロリド及び脂肪酸ブロミド)とグリセリンとを塩基性触媒下にて反応させる方法(酸ハライド合成)が挙げられる。
XXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドの製造は、前述の(iv)~(vi)のいずれの方法によっても製造することができるが、製造の容易さの観点から、(iv)直接エステル合成、又は(v)脂肪酸アルキルを用いたエステル交換合成が好ましく、(iv)直接エステル合成がより好ましい。
ここで、(iv)の直接エステル合成による、XXX型トリグリセリド、及びX2Y型トリグリセリドXXX型トリグリセリドを含有する油脂組成物の製造についてさらに詳細に説明する。
直接エステル合成の条件は、得られる油脂組成物中のXXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドの含量が、先に説明した含量することができるのであれば、特に限定されない。ただ、反応後の油脂組成物中のXXX型トリグリセリドとX2Y型トリグリセリドの含量を、確実に先に説明した所望の含量にするために、次に説明をする2段階の反応を行うことが好ましい。
具体的には、1段階目の反応では、グリセリンと、炭素数yである脂肪酸Y及び炭素数xである脂肪酸Xを反応させた後、2段階目の反応では、1段階目の反応で得られた反応物に、炭素鎖xである脂肪酸Xを加えて反応をする。この2段階反応をすることにより、脂肪酸Yを余すことなくグリセリンと確実にエステル化することができ、反応系内でより確実にX2Y型グリセリドを生成させることができる。
1段階目の反応では、全グリセリド中におけるX2Y型トリグリセリドが所望の含量になるように調整するために、反応原料中の脂肪酸Yと脂肪酸Xの総モル量が、グリセリン1モルに対して、0.5~2.8モル量であることが好ましく、0.8~2.57モル量であることがより好ましく、1.1~2.2モルであることが最も好ましい。
直接エステル合成の反応温度は、エステル化反応によって生ずる生成水が系外に除去できる温度であればよく、120℃~300℃であることが好ましく、150℃~270℃であることがより好ましく、180℃~250℃であることがさらに好ましい。特に、反応温度を180~250℃にすることで、効率的にX2Y型トリグリセリドを製造することができる。
直接エステル合成では、エステル化反応を促進する触媒を用いても良い。触媒としては酸触媒、及びアルカリ土類金属のアルコキシド等が挙げられる。触媒の使用量は、反応原料の総質量に対して0.001~1質量%程度であることが好ましい。
(iv)の直接エステル合成では、反応終了後、水洗、アルカリ脱酸、減圧脱酸、吸着処理等の公知の精製処理を行うことで、反応物から触媒や原料未反応物を除去することができる。更に、脱色・脱臭処理を施すことで、反応物をさらに精製することができる。
<工程(a):調製方法(3)>
調製方法(3)は、油脂組成物に、XXX型トリグリセリド及び/又はX2Y型トリグリセリドを添加することで、XXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリドの含有量を、所望の範囲に調製する方法である。
例えば、XXX型トリグリセリド、及びX2Y型トリグリセリドを含む油脂組成物であって、XXX型トリグリセリドの含有量が65~99質量%を満たさない油脂組成物、X2Y型トリグリセリドの含有量が35~1質量%を満たさない油脂組成物、又は、それら両方の含有量を満たさない油脂組成物を調製した後、それらにXXX型トリグリセリド、及び/又はX2Y型トリグリセリドを添加することで、最終的にトリグリセリド含有量を調製する方法である。
また、50~70質量%のXXX型トリグリセリドと50~30質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を調製した後、XXX型トリグリセリドを添加することで、最終的に65~99質量%のXXX型トリグリセリドと35~1質量%のX2Y型トリグリセリドとを含む油脂組成物を調製してもよい(XXX型トリグリセリドの添加による油脂組成物中のトリグリセリド含量の調製)。
さらに、この調製方法(3)には、まず、上記調製方法(1)又は(2)により、XXX型トリグリセリドを65~99質量%とX2Y型トリグリセリドを35~1質量%とを含有する油脂組成物を調製した後、XXX型トリグリセリド及び/又はX2Y型トリグリセリドを更に添加することによって、油脂組成物中のXXX型トリグリセリド及び/又はX2Y型トリグリセリドの含有量を、より好ましい範囲内へ調節する方法も含まれる(XXX型トリグリセリド又はX2Y型トリグリセリド添加による油脂組成物中の一層好適なトリグリセリド含量の調製)。
〔工程(b)について〕
工程(a)で得られた油脂組成物が、溶融状態であった場合には、工程(b)を行う必要はないが、工程(a)により得られた油脂組成物が、溶融状態でなかった場合には、工程(a)の後に工程(b)を行い、その後工程(d)を行う必要がある。
工程(b)は、工程(a)で得られた油脂組成物が溶融状態になかった場合に、油脂組成物を加熱して、トリグリセリドを融解し、溶融状態の油脂組成物を得る工程である。
加熱温度は、油脂組成物中に含まれるトリグリセリドの融点以上の温度、特に、XXX型トリグリセリド及びX2Y型トリグリセリドの両方を融解できる温度、例えば、70~200℃であることが好ましく、75~150℃であることがより好ましく、80~100℃であることがさらに好ましい。
また、加熱時間は、例えば、0.5~3時間であることが好ましく、0.5~2時間であることがより好ましく、0.5~1時間であることがさらに好ましい。
〔工程(d)について〕
工程(d)は、工程(a)又は工程(b)で得られた溶融状態の油脂組成物を、油脂組成物の融点より低い温度で冷却して油脂組成物を結晶化する工程である。
冷却は、より細かい粉末状の油脂組成物を得るために、油脂組成物を静置した状態で行うのが好ましい。
「油脂組成物の融点より低い温度」とは、例えば、油脂組成物の融点より1~30℃低い温度であることが好ましく、1~20℃より低い温度であることがより好ましく、1~15℃低い温度であることがさらに好ましい。
「油脂組成物の融点より低い温度」、すなわち、工程(d)での冷却温度について、以下に炭素数xの数値ごとに具体的温度を例示する。
炭素数xが10の場合、冷却温度は、10~30℃であることが好ましく、15~25℃であることがより好ましく、18~22℃であることがさらに好ましい。
炭素数xが11又は12の場合、冷却温度は、30~40℃であることが好ましく、32~38℃であることがより好ましく、33~37℃であることがさらに好ましい。
冷却時間は、2時間(120分)以上であることが好ましく、4時間(240分)~6日間であることがより好ましく、6時間~6日間であることがさらに好ましく、6時間~2日間であることがさらにより好ましい。特に、炭素数xが10~12の場合には、2~6日間冷却する場合もある。
〔工程(c)について〕
次に、工程(c)について説明をする。工程(c)は、工程(a)から工程(d)を実施する間に任意に行うことができる工程で、油脂組成物の結晶化を促進させる工程である。
なお、工程(a)から工程(d)を実施する間とは、工程(a)の実施中、工程(a)の後で工程(d)の前、又は工程(d)の実施中のことをいう。なお、工程(b)を行う場合には、工程(b)の実施中に行うこともできる。
工程(c)は、シーディング法による方法(c1)、テンパリング法による方法(c2)、予備冷却法による方法(c3)、及びこれらの方法を複数組み合わせた方法により行うことができる。
以下、これらの方法について説明をする。
まず、シーディング法による方法(c1)について説明をする。
シーディング法は、溶融状態にある油脂組成物に対して行う結晶化促進方法で、詳しくは、溶融状態にある油脂組成物に核(種)を少量添加することで油脂組成物の結晶化を促進する方法である。
具体的なシーディング法について、次に例示する。
まず、冷却する油脂組成物に含まれるXXX型トリグリセリドと同じXXX型トリグリセリドを好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含む油脂粉末を、結晶化の核(種)として準備する。この油脂粉末を、油脂組成物の冷却段階で、当該油脂組成物の品温が、好ましくは工程(d)の冷却温度の±0~+10℃、好ましくは+5~+10℃の温度に到達した時点で、まだ溶融状態にある油脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1~1質量部、より好ましくは0.2~0.8質量部添加することで、油脂組成物の結晶化を促進する。
次に、テンパリング法による方法(c2)について説明をする。
テンパリング法も、溶融状態にある油脂組成物に対して行う結晶化促進方法で、詳しくは、溶融状態にある油脂組成物を、工程(d)の冷却温度よりも低い温度で一定時間冷却した後に、工程(d)の冷却温度で冷却することにより、油脂組成物の粉末化を促進する方法である。
具体的なテンパリング法について、次に例示する。
まず、溶融状態にある油脂組成物を、工程(d)の冷却温度で静置する前に、工程(d)の冷却温度よりも低い温度、例えば、工程(d)の冷却温度よりも5~20℃低い温度、好ましくは7~15℃低い温度、より好ましくは8~12℃低い温度で、好ましくは10~120分間、より好ましくは30~90分間冷却することにより、油脂組成物の結晶化を促進する。この場合の冷却も、油脂組成物を静置して行うのが好ましい。
次に、予備冷却法による方法(c3)について説明をする。
予備冷却法は、前記工程(a)又は(b)で得られた溶融状態の油脂組成物を、工程(d)にて冷却する前に、工程(a)又は(b)で油脂組成物を溶融状態にする温度よりも低くく、工程(d)の冷却温度よりも高い温度で予備冷却する方法である。
工程(a)又は(b)で油脂組成物を溶融状態にする温度よりも低くく、工程(d)の冷却温度よりも高い温度とは、例えば、工程(d)の冷却温度よりも2~40℃高い温度、好ましくは3~30℃高い温度、より好ましくは4~30℃高い温度、さらに好ましくは5~10℃高い温度である。この予備冷却の温度は、冷却温度に近い温度に設定するほど、工程(d)の冷却温度における本冷却時間をより短くすることができる。
この予備冷却法は、シーディング法やテンパリング法と異なり、冷却温度を段階的に下げることで油脂組成物の結晶化を促進できる方法であり、工業的に製造する場合に利点が大きい。
工程(d)で得られた結晶化した油脂組成物は、溶融状態の油脂組成物よりも体積が増加した空隙を有する固体物であるが、この空隙を有した固体物は容易に崩壊して粉末状の物質になるので、特に粉末化工程を設けなくても、結晶化した油脂組成物を容器に充填する充填工程や運搬工程で、固体物の空隙が崩壊して粉末状の物質になる。
また、(d)工程で得られた空隙を有する固体物に、衝撃を与えて粉末化することもできる。衝撃を与える方法は特に限定されないが、例えば、通常の粉砕機を用いて空隙を有する固体物を粉砕する方法、空隙を有する固体物をスパチュラ、ゴムベラ、スコップ等でほぐす方法、容器に入れた空隙を有する固体物を振動させる方法、空隙を有する固体物を篩に掛けて衝撃を加える方法等が挙げられる。
次に、含水系液状食品について説明をする。
本発明に使用する含水系液状食品は、水を含有する液状の食品のことをいう。
含水系液状食品の例としては、水、牛乳、生クリーム、植物性クリーム、ヨーグルト、アルコール飲料(酒、ウイスキー、ブランデー、ワイン、焼酎等)、食酢、果汁、緑茶、抹茶、果汁、果物ジュース、野菜ジュース、スポーツドリンク、ゼリー飲料、乳酸菌飲料、出汁、醤油、ソース等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
また、ここに挙げられていなくても、冷菓の原料に使用できる含水系食品であれば使用することができる。
含水系液状食品には、食品に通常使用されている各種添加物を添加することができる。
添加物としては、味付け用食品素材、甘味料、乳化剤、増粘剤、澱粉、加工澱粉、デキストリン、抗酸化剤、着色料、香料等が挙げられる。
各種添加物について具体的に例を挙げて説明すると、味付け用食品素材としては、抹茶パウダー、抹茶エキス、ココアパウダー、ココアエキス、コーヒーパウダー、コーヒーエキス、全脂粉乳、脱脂粉乳、練乳、果汁パウダー等が挙げられる。
また、甘味料としては、砂糖、粉糖、メープルシュガー、黒糖、はちみつ、メープルシロップ、高甘味度甘味料(ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム等)等が挙げられる。
また、乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
また、増粘剤としては、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、ジェランガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、プルラン、アルギン酸及びその塩類、ゼラチン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
また、香料として、バニラ、バニラペースト、バニラエッセンス、油溶性フレーバー、水溶性フレーバー等を使用することができる。
本発明のペースト状組成物は、乳化剤や増粘剤を添加することもできるが、乳化剤や増粘剤を添加しなくても、25℃以下の室温であれば、溶けずに保形性を保つことができる。
次に、粉末油脂組成物と含水系液状食品とを含有するペースト状組成物について説明をする。
本発明のペースト状組成物は、先に説明をした粉末油脂組成物と含水系液状食品とを含有するペースト状の組成物で、外観及び食感が冷菓に似たものである。
ここで、冷菓とは、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等のように、通常冷凍で保管・流通されているもののことをいい、ペースト状組成物は、その冷凍した冷凍品のみならず、冷蔵~25℃以下の品温のものであっても、その外観及び食感が、アイスクリーム、冷菓、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓に似ている。
本発明のペースト状組成物は、25℃以下(冷凍及び冷蔵を含む)の品温のものを、半球形のディッシャーで型抜きをした時に、半球形を維持できる程度の保形性を有している。
また、ディッシャーで型抜きした本発明のペースト状組成物は、型崩れをしない。さらに、半球形のディッシャーで型抜きしたものは、20℃の温度下に60分間放置した場合であっても、半球形を維持していて型崩れをしない。型崩れしてしまうと、商品価値が低下してしまうからである。
例えば、20℃以下の温度下で、本発明のペースト状組成物をアイスクリームディッシャーや絞り袋に入れて絞り出すと、出てきた組成物は保形性を有していて型崩れしない。
また、周りが少し溶けた冷菓(液垂れした冷菓)に類似した外観を持たせるために、粉末油脂組成物の含量を調整することで、保形性を有しつつ、組成物の周りに少し液垂れを生じる程度の硬さに調製しても良い。
本発明のペースト状組成物は、冷菓として商品価値がない外観を有する組成物、例えば、保形性がなくて型崩れをしたペースト状組成物や、やや保形性があるものの型崩れをしたペースト状組成物や、粘度を測定することができる程度の増粘した液状物質とは異なるものである。
本発明のペースト状組成物は、アイスクリーム等の冷菓と違って、25℃以下の室温であれば、溶けずに保形性を保つことができるという特徴を有する。
したがって、本発明のペースト状組成物は、冷凍した冷凍品として流通、販売することもでき、冷蔵して冷蔵品としても流通、販売することもでき、冷凍や冷蔵でなくても25℃以下の品温であれば流通、販売することができる。
また、冷菓を食べるのに時間がかかってしまう子供や高齢者が、時間をかけて食べても冷菓のように溶ないので、手や洋服を汚さなく食べることができる。
また、老人ホーム、学校、病院等の食事を提供する施設で、本発明のペースト状組成物を食事と一緒に提供した場合であっても、ペースト状組成物は、食事が終わるまで溶けないで保形性を保っているので、おいしく食することができる。
さらに、本発明のペースト状組成物は、食したときに、粉末油脂が溶解し、含水系液状食品が口の中に広がるので、口溶けが良く、しかも含水系液状食品本来の味をそのまま味わうことができる。
ペースト状組成物に含まれる粉末油脂組成物の含量は、ペースト状組成物中15~50質量%であることが好ましく、20~35質量%であることがより好ましく、25~35質量%であることがさらに好ましい。
また、ペースト状組成物に含まれる含水系液状食品の含量は、ペースト状組成物中50~85質量%であることが好ましく、65~80質量%であることがより好ましく、65~75質量%であることがさらに好ましい。
粉末油脂組成物及び含水系液状食品の含量がかかる範囲であると、得られるペースト状組成物の周りに液垂れが生じにくく、25℃以下の室温で長時間保形性を保つことができるからである。
次に、本発明のケトン食用のペースト状組成物について説明する。
ケトン食は、食事療法に用いられる高脂肪かつ低糖質の食事で、ケトン食を用いたケトン食療法は、摂取エネルギーの60~90%を脂肪で摂るというものである。これは、食事による糖・炭水化物の摂取量を極端に減らすことで、体内でエネルギー源として通常使われている糖が枯渇して脂肪が分解され、ケトン体が生じるので、これをエネルギー源として利用する方法である。小児の難治性てんかんに有効であるとされて欧米で普及し、日本でもてんかん発作を抑える治療の一環として徐々に取り入れられるようになってきている。
食事中のタンパク質(P)と糖質(C)の合計に対する脂質(F)の割合〔F/(P+C)の重量比〕のことを、ケトン比という。
本発明のペースト状組成物は、油脂を含有しており、また、糖類の配合量を調整することで、高脂肪かつ低糖質なものを作ることができるので、ケトン食としても使用することができる。特に、本発明のペースト状組成物は、てんかん患者における発作の頻度を改善し、発作の重篤度を緩和する上で、有効なケトン食として使用することができる。
ケトン食用のペースト状組成物の含水系液状食品に、生クリームや植物性クリーム等の乳製品を使用するとケトン比が高いケトン食用のペースト状組成物を作りやすくなる。
本発明のケトン食用のペースト状組成物は、食事のメインではなく、デザートとして少量食されることが多いので、より高脂肪かつ低糖質なものを提供することにより、1回の食事全体のケトン比を高めることが期待できる。
したがって、本発明のケトン食用のペースト状組成物は、ケトン比を1.5~15に調製するのが好ましく、1.5~12に調製することがより好ましく、2~9に調製することがさらに好ましく、3~7に調製することがさらにより好ましい。
ケトン比の調整は、砂糖等の糖質の配合量を調整することにより行うことができる。
次に、ペースト状組成物の製造方法について説明をする。
本発明のペースト状組成物の製造方法は、粉末油脂組成物と含水系液状食品とを含有しているものを製造することができるのであれば、その製造方法は特に限定されない。
例えば、先に説明した方法で製造した粉末油脂組成物と市販の含水系食品を混合することにより製造することができる。
また、市販の含水系食品に、先に説明した各種添加剤を添加することで、市販品とは風味や味を変えた含水系食品を作り、それと粉末油脂組成物を混合して製造することもできる。
さらに、このように、あらかじめ調製された含水系液状食品を用いてペースト状組成物を製造することもできるが、含水系液状食品の原料と粉末油脂組成物を混合することで、含水系液状食品を含有するペースト状組成物を製造することもできる。
混合は、容器に入れた粉末油脂組成物と含水系液状食品を、ホイッパー又はヘラを用いて混合することにより行うことができる。ホイップクリームのように、ホイップしなくても保形性を持つものが得られる。
混合は、粉末油脂の融点の関係から、25℃以下の温度条件下で行うのが好ましく、5~25℃の温度条件下で行うのがより好ましく、5~20℃の温度条件下で行うのがより好ましい。
また、混合時間は、30秒~10分間であることが好ましく、1~5分間であることがより好ましく、1~3分間であることがさらに好ましい。
このように、本発明のペースト状組成物は、均質化やフリージングといったアイスクリーム製造に必要な工程を実施しなくても作ることができるため、老人ホーム、学校、病院等の食事を提供する施設であっても簡単に作ることができる。
次に、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
製造例1〔XXX型トリグリセリド(トリカプリン)の合成〕
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた3000mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)288.9g(3.14mol)とカプリン酸{Palmac99-10(アシッドケム社製)}1911.2g(11.1mol;グリセリン1モルに対して3.5モル)とを仕込んだ。窒素気流下、180℃で2時間反応をさせた後、250℃に昇温し10時間反応させた。過剰のカプリン酸を170℃、400Pa(3Torr)の減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物(トリカプリン)を1505g得た。
製造例2〔粉末油脂組成物の製造〕
攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び水分分離機を備えた500mLの四つ口フラスコに、グリセリン(阪本薬品工業社製)44.4g(0.482mol)と、ミリスチン酸(Palmac98-14(アシッドケム社製))25.6g(0.112mol)とカプリン酸(Palmac99-10(アシッドケム社製))265.6g(1.541mol)を仕込み、窒素気流下、250℃の温度で15時間反応させた。過剰のカプリン酸を190℃、減圧下にて留去した後、脱色・濾過、脱臭を行い、50℃において淡黄色液状の反応物を186g得た(x=10、y=14、XXX型:80.6質量%、X2Y型:17.0質量%)。得られた反応物80gと、製造例1のトリカプリン120gを混合し原料油脂とした。得られた原料油脂を80℃で0.5時間維持して完全に融解した。
また、製造例1のトリカプリンを用いて、油脂粉末(核(種))を調製した。具体的には、製造例1のトリカプリン約100gを液体窒素で冷却固化させ、冷却固化したものを凍結粉砕機(アズワン株式会社製)で粉砕することにより油脂粉末(核(種))を調製した。
次に、原料油脂を27℃恒温槽にて品温が27℃になるまで冷却した後、調製した油脂粉末(核(種))を原料油脂に対して0.1質量%添加し、20℃恒温槽にて6時間静置することで油脂組成物を結晶化し、体積が増加した空隙を有する固形物を得た(シーディング法)。得られた固体物を、スパチュラでほぐすことで粉末油脂組成物を得た。
得られた粉末油脂組成物の融点は約28℃であった。
また、以下に示す条件で、得られた粉末油脂組成物のトリグリ組成分析した結果、粉末油脂組成物は、全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、1位~3位に炭素数10の脂肪酸残基X(カプリン酸残基)を有する、XXX型トリグリセリドを91.9質量%、XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基X(カプリン酸残基)の1つを炭素数14の脂肪酸残基Y(ミリスチン酸残基)に置換したX2Y型トリグリセリドを6.8質量%含有するものであった。
また、得られた粉末油脂組成物の平均粒径を、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、装置名:Microtrac MT3300ExII)で、レーザー回折散乱法(ISO133201,ISO9276-1)基づいて、乾式測定により測定した。
詳しくは、粒度分布測定装置に乾式測定用ブロック(日機装株式会社製、名称:One-Shot Dry)を取り付け、試料0.2gを1.25ml容量の計量スプーンにとり、吸引させて測定した。得られた粒度分布における積算値50%の粒径の測定値(d50)を、平均粒径とした。
その結果、得られた粉末油脂組成物の平均粒径(d50)は、75μmであった。
また、得られた粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度(g/cm3)は次の方法で測定した。
内径15mm×25mLのメスシリンダーに、当該メスシリンダーの上部開口端から2cm程度上方から粉末油脂組成物を落下させて疎充填し、充填された質量(g)の測定と容量(mL)の読み取りを行い、1mL当たりの当該粉末油脂組成物の質量(g)を算出することで、ゆるめ嵩密度を求めた。その結果、得られた粉末油脂組成物のゆるめ嵩密度は、0.2g/cmであった。
[分析方法]
・トリグリセリド組成
ガスクロマトグラフィー分析条件
DB1-ht(0.32mm×0.1μm×5m)Agilent Technologies社(123-1131)
注入量 :1.0μL
注入口 :370℃
検出器 :370℃
スプリット比 :50/1 35.1kPa コンスタントプレッシャー
カラムCT :200℃(0min hold)~(15℃/min)~370℃(4min hold)
比較例1~3、実施例1、参考例1〔含水系液状食品として植物性クリームを使用〕
表1及び表2に示す配合でペースト状組成物を製造した。なお、製造は20℃の恒温室で行った。
具体的には、ボールに、油脂粉末(菜種硬化油)、中鎖脂肪酸油含有粉末油脂、又は製造例1で得られた粉末油脂組成物、及び冷蔵庫から取り出した植物性クリーム(雪印メグミルク(株)販売、商品名「ホイップ」、植物性脂肪分40質量%、無脂乳固形分3.5質量%)を入れた後、スパチュラで約1分間混合することによりペースト状組成物を製造した。
比較例1の油脂粉末(菜種硬化油)の配合量、比較例2の中鎖脂肪酸油含有粉末油脂の配合量、及び実施例1の粉末油脂組成物の配合量は、すべて33.0質量%とし、比較例3の中鎖脂肪酸油含有粉末油脂の配合量は、ペースト状組成物中の中鎖脂肪酸油の含量が33.0質量になる量を配合した。
なお、油脂粉末(菜種硬化油)は、理研ビタミン(株)販売の商品(商品名「スプレーファットNR-100」、平均粒径(d50、乾式測定):100.8μm)、中鎖脂肪酸油含有粉末油脂は、日清オイリオ(株)販売の商品(商品名「日清MCTパウダー」、脂質が74.3質量%で、中鎖脂肪酸油、デキストリン、及び加工でん粉を含有する粉末油脂)を使用した。
得られたペースト状組成物の保形性を確認するために、20℃の恒温室内で容量8ccのアイスクリームディッシャーに充填し、バット上に型抜きした。型抜きしたペースト状組成物の写真を、図2~図5に示す。また、型抜きしたペースト状組成物を20℃の恒温室に60分間放置した時の写真を、図7~10に示す。
さらに、本願発明のペースト状組成物と市販のアイスクリームの外観が類似していることを確認するため、及び20℃60分間放置したときの保形性の違いを確認するために、市販のアイスクリームについても、同様の試験を行った(参考例1)。
具体的には、冷凍庫から取り出した市販のアイスクリーム(バニラ味、無脂乳固形分:9%、乳脂肪分:14%)を、8ccのアイスクリームディッシャーに充填し、バット上に型抜きした。型抜きしたアイスクリームの写真を、図1に示す。また、型抜きしたアイスクリームを20℃の恒温室に60分間放置した。その時の写真を、図6に示す。
Figure 0007114324000001
Figure 0007114324000002
〔ペースト状組成物の評価〕
(1)外観
バット上に型抜きした比較例1~3、及び実施例1のペースト状組成物について、保形性及び液垂れについて目視で観察した。また、型抜きしたペースト状組成物を20℃の恒温室に60分間放置した後、同じように保形性及び液垂れについて目視で観察した。評価結果を表3及び4に示す。
(2)風味評価
製造直後、及び20℃の恒温室で60分間放置した後の比較例1~3、及び実施例1のペースト状組成物を食してその食感を評価した。結果を表3及び4に示す。
Figure 0007114324000003
Figure 0007114324000004
表3及び表4の結果から、製造直後の比較例1~3のペースト組成物は、型抜き直後の参考例のアイスクリームと違って保形性がなかったが、製造直後の実施例1のペースト状組成物は、保形性があり、外観が型抜き直後の参考例のアイスクリームに似ていた。
また、参考例のアイスクリームは、20℃で60分間放置後、液体状になって溶けてしまったが、実施例1のペースト状組成物は、20℃で60分間放置後であっても、アイスクリームと違って保形性を有しており、型崩れもしていなかった。
このことから、本願発明のペースト状組成物は、冷菓を食べるのに時間がかかってしまう子供や高齢者が、時間をかけて食べても冷菓のように溶ないので、手や洋服を汚さなく食べることができる。
比較例4~7、参考例1~4〔粉末油脂組成物の配合量を変化(含水系液状食品として牛乳を使用)〕
粉末油脂組成物の配合量によるペースト状組成物の保形性を確認するために、製造例1で得られた粉末油脂組成物を用いて、表5~7に示す配合でペースト状組成物を製造した。なお、製造は20℃の恒温室で行った。
具体的には、ボールに粉末油脂組成物、及び冷蔵庫から取り出した牛乳(乳脂肪分3.6%)を入れた後、スパチュラで約1分間混合することによりペースト状組成物を製造した。
得られたペースト状組成物の保形性を確認するために、20℃の恒温室内で容量8ccのアイスクリームディッシャーに充填し、バット上に型抜きした。型抜きしたペースト状組成物の写真を、図11~18に示す。
Figure 0007114324000005
Figure 0007114324000006
Figure 0007114324000007
〔ペースト状組成物の評価〕
(1)外観
バット上に型抜きした比較例4~7、及び参考例1~4のペースト状組成物について、保形性及び液垂れについて目視で観察した。また、型抜きしたペースト状組成物を20℃の恒温室に約60分間放置した後、同じように保形性及び液垂れについて目視で観察した。評価結果を表8~10に示す。
(2)風味評価
製造直後、及び20℃の恒温室で60分間放置した後の比較例4~7、及び参考例1~4のペースト状組成物を食してその食感を評価した。結果を表8~10に示す。
Figure 0007114324000008
Figure 0007114324000009
Figure 0007114324000010
比較例8、実施例6、7〔粉末油脂組成物の配合量を変化(含水系液状食品として生クリームを使用)〕
粉末油脂組成物の配合量によるペースト状組成物の保形性を確認するために、製造例1で得られた粉末油脂組成物を用いて、表11に示す配合でペースト状組成物を製造した。なお、製造は20℃の恒温室で行った。
具体的には、ボールに粉末油脂組成物、及び冷蔵庫から取り出した生クリーム(タカナシ乳業株式会社販売、商品名「特選北海道純生クリーム35」、乳脂肪分35%)を入れた後、スパチュラで約1分間混合することによりペースト状組成物を製造した。
得られたペースト状組成物の保形性を確認するために、20℃の恒温室内で容量8ccのアイスクリームディッシャーに充填し、バット上に型抜きした。型抜きしたペースト状組成物の写真を、図19~図21に示す。
Figure 0007114324000011
〔ペースト状組成物の評価〕
(1)外観
バット上に型抜きした比較例8、及び実施例6、7のペースト状組成物について、保形性及び液垂れについて目視で観察した。また、型抜きしたペースト状組成物を20℃の恒温室に60分間放置した後、同じように保形性及び液垂れについて目視で観察した。評価結果を表12に示す。
(2)風味評価
製造直後、及び20℃の恒温室で60分間放置した後の比較例8、及び実施例6、7のペースト状組成物を食してその食感を評価した。結果を表12に示す。
Figure 0007114324000012
実施例8~10〔各種味のペースト状組成物の製造〕
製造例1で得られた粉末油脂組成物を用いて、表13に示す配合で、色々な味のペースト状組成物を製造した。なお、製造は20℃の恒温室で行った。
具体的には、ボールに粉末油脂組成物、及び含水系液状食品の原料を入れた後、スパチュラで約1分間混合することによりペースト状組成物を製造した。なお、生クリームは実施例6と同じものを使用し、冷蔵庫で保管していたものを使用した。
得られたペースト状組成物の保形性を確認するために、20℃の恒温室内で容量8ccのアイスクリームディッシャーに充填し、バット上に型抜きした。
Figure 0007114324000013
〔ペースト状組成物の評価〕
(1)外観
バット上に型抜きした実施例8~10のペースト状組成物について、保形性及び液垂れについて目視で観察した。結果を表14に示す。
(2)風味評価
製造直後の実施例8~10のペースト状組成物を食してその食感を評価した。結果を表14に示す。
Figure 0007114324000014
実施例11~14、及び参考例5~7〔各種味のケトン食用のペースト状組成物の製造〕
製造例1で得られた粉末油脂組成物を用いて、表15~表17に示す配合で、色々な味のケトン食用のペースト状組成物を製造した。なお、製造は20℃の恒温室で行った。
配合は、ケトン比が、1.5~12の範囲内となるようにするために、粉糖を配合せず、甘味料として、糖質を含まない高甘味度甘味料、又は低カロリー甘味料を使用した。高甘味度甘味料として、ネオテーム製剤(DSP五協フード&ケミカル(株)販売、商品名:ミラスィー200)を使用し、低カロリー甘味料として、エリスリトール/羅漢果抽出物含有製剤(サラヤ(株)製、商品名:ラカントスイートパウダー)を使用した。また、粉末酒としては、佐藤食品工業(株)製の商品「粉末酒ラムAタイプ」を使用した。
具体的には、ボールに粉末油脂組成物、及び含水系液状食品の原料を入れた後、スパチュラで約1分間混合することによりペースト状組成物を製造した。なお、生クリームは実施例6と同じものを使用し、牛乳は参考例1と同じものを使用し、両方とも冷蔵庫で保管していたものを使用した。
得られたペースト状組成物の保形性を確認するために、20℃の恒温室内で容量8ccのアイスクリームディッシャーに充填し、バット上に型抜きした。
Figure 0007114324000015
Figure 0007114324000016
Figure 0007114324000017
〔ケトン食用のペースト状組成物の評価〕
(1)外観
バット上に型抜きした実施例11~14、及び参考例5~7のケトン食用のペースト状組成物について、保形性及び液垂れについて目視で観察した。結果を表18~表20に示す。
(2)風味評価
製造直後の実施例11~14、及び参考例5~7のケトン食用のペースト状組成物を食してその食感を評価した。結果を表18~表20に示す。
Figure 0007114324000018
Figure 0007114324000019
Figure 0007114324000020


比較例9、実施例18〔モナカに入れたペースト状組成物の保存試験)〕
モナカに入れたペースト状組成物の25℃での保存性を確認するために、製造例1で得られた粉末油脂組成物を用いて、表21に示す配合でペースト状組成物を製造した。なお、製造は20℃の恒温室で行った。
具体的には、ボールに粉末油脂組成物と含水系液状食品の原料を入れた後、スパチュラで約1分間混合することによりペースト状組成物を製造した。得られたペースト状組成物約18gをモナカの皮で挟み、25℃の恒温槽で60分間保存した。なお、生クリームは実施例6と同じものを使用し、冷蔵庫で保管していたものを使用した。
比較として、冷凍庫で保管していた市販のアイスクリーム(バニラ味、無脂乳固形分:9%、乳脂肪分:14%)を冷凍庫から取り出し、約18gをモナカの皮で挟み、25℃の恒温槽で60分間保存した(比較例9)。
保存後、実施例18のペースト状組成物を挟んだモナカを開いてバットの縁に斜めに立てかけたが、ペースト状組成物はモナカに付着したままで流動しなかった。
一方、アイスクリームの方は、完全に溶けており、アイスクリームを挟んだモナカを開いてバットの縁に斜めに立てかけると、アイスクリームが溶けていたためモナカの外に流れ出た。
25℃の恒温槽で60分間保存後、アイスクリーム及びペースト状組成物を挟んでいたモナカを開いてバットに立てかけた状態の写真を、図22、図23に示す。
Figure 0007114324000021
本発明は、食品分野で、これまでにない物性を有する食品として利用することができる。

Claims (3)

  1. 次の粉末油脂組成物と植物性クリーム又は生クリームとを含有するペースト状組成物であって、該ペースト状組成物中の該粉末油脂組成物の含量が、22~50質量%であり、該植物性クリーム又は生クリームの含量が、45.5~78質量%であることを特徴とするペースト状組成物。
    粉末油脂組成物:全トリグリセリド含有量を100質量%とした場合、
    1位~3位に炭素数xの脂肪酸残基Xを有する、1種以上のXXX型トリグリセリドを65~99質量%と、
    該XXX型トリグリセリドの脂肪酸残基Xの1つを炭素数yの脂肪酸残基Yに置換した、1種以上のX2Y型トリグリセリドを35~1質量%とを含有し、
    該炭素数xは、10~12から選択される整数で、
    該炭素数yは、それぞれ独立して、x+2~x+12から選択される整数で、かつ22以下の整数である、粉末油脂組成物。
  2. ケトン食として用いることを特徴とする請求項1に記載のペースト状組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のペースト状組成物を冷凍した冷凍品。
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