JP7112666B2 - 音響制御装置及び電子楽器 - Google Patents

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本発明は、音の指向性や音量、音質等の音響特性を制御する音響制御装置、及び、当該音響制御装置を適用した電子楽器に関する。
電子鍵盤楽器(電子キーボード)や電子管楽器等の電子楽器においては、一般に、筐体の大きさや搭載されるスピーカのサイズによって音質や音の出力の最大値が決定される。そのため、筐体の小さな電子楽器においては、音質や音量(音圧)が制限されることになる。
また、電子鍵盤楽器等に搭載されるスピーカは、一般に、出力される音が周囲に広がる特性を有しているため、例えば広い空間で演奏する際に音が拡散してしまい、聴衆への音量が不足したり音質が低下したりする場合がある。一方、このような電子楽器のスピーカからの音の広がりは、練習時等においては周囲への騒音となることがあるため、スピーカから出力できない場合もある。
特許文献1には、スピーカの放音部に設けられたカバーの開閉によって音の指向性を変化させる技術が記載されている。このような技術によれば、演奏者や聴衆等の特定の方向に向けて十分な音量で音を出力することができる。
特表2016-535966号公報
上述した特許文献1等に記載された技術においては、演奏の目的に応じて音の方向を変化させることはできるが、演奏の目的に合った音響環境をより効果的に実現することが難しかった。
そこで、本発明は、演奏の目的に合った音響環境をより効果的に実現することができる音響制御装置、及び、当該音響制御装置を適用した電子楽器を提供することを目的とする。
本発明に係る音響制御装置は、スピーカの放音部に設けられたカバーと、前記スピーカに対する前記カバー全体の角度を変化させるカバー角度制御機構部と、前記カバーに設けられた貫通孔の大きさを変化させる貫通孔制御機構部と、を備え、前記カバー角度制御機構部により前記スピーカから発せられる音の放出方向を変化させるとともに、前記貫通孔制御機構部により前記スピーカから発せられる音の放出量を変化させることによって、前記スピーカから発せられる音第1の方向に拡散するように放出する第1の状態と、前記スピーカから発せられる音を前記第1の方向とは異なる第2の方向に指向性を有して放出する第2の状態と、を切替えることを特徴とする。
本発明によれば、演奏の目的に合った音響環境をより効果的に実現することができる。
本発明に係る音響制御装置を適用した電子楽器の第1の実施形態を示す外観図である。 第1の実施形態に係る電子楽器の要部を示す概略図である。 第1の実施形態に係る電子楽器に適用されるスピーカカバーを示す断面図である。 第1の実施形態に適用されるスピーカカバーの組付け図である。 第1の実施形態に適用されるスピーカカバーの開閉状態を示す断面図である。 第1の実施形態に係る電子楽器における音響特性を示す概念図である。 第1の実施形態に係る電子楽器に適用されるスピーカカバーの変形例1を示す要部概略図である。 第1の実施形態に係る電子楽器に適用されるスピーカカバーの変形例2を示す要部概略図である。 第1の実施形態に係る電子楽器に適用されるスピーカカバーの変形例3を示す要部概略図である。 第1の実施形態に係る電子楽器に適用されるスピーカカバーの変形例4を示す要部概略図である。 第2の実施形態に係る電子楽器に適用されるスピーカカバーの一例を示す概略図である。 第2の実施形態に適用されるスピーカカバーにおける拡散状態を示す概略図である。 第2の実施形態に適用されるスピーカカバーにおける指向性化状態を示す概略図である。 第3の実施形態に係る電子楽器に適用されるスピーカカバーの一例を示す概略図である。
以下、本発明に係る音響制御装置及び電子楽器について、実施形態を示して詳しく説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明に係る音響制御装置を適用した電子楽器の第1の実施形態を示す外観図である。ここでは、電子楽器の一例として、電子鍵盤楽器(電子キーボード)を示して説明する。図2は、本実施形態に係る電子楽器の要部を示す概略図である。図3は、本実施形態に係る電子楽器に適用されるスピーカカバーを示す断面図であり、図4は、本実施形態に適用されるスピーカカバーの組付け図である。また、図5は、本実施形態に適用されるスピーカカバーの開閉状態を示す断面図であり、図6は、本実施形態に係る電子楽器における音響特性を示す概念図である。なお、図3、図5、図6においては、説明の都合上、便宜的にスリットの数を図1、図2、図4に示す場合よりも少なく示す。
図1に示すように、第1の実施形態に係る音響制御装置を適用した電子楽器100は、大別して、本体ケース110と、鍵盤ユニット120と、スピーカパネル140と、センタパネル160と、を有している。
本体ケース110は、図面左右方向に長い箱型の形状を有し、その一面側に、演奏操作子として音高を指定する白鍵及び黒鍵が配列された周知の鍵盤ユニット120と、楽音等を出音するスピーカ130が組み込まれたスピーカパネル140と、音量調整や音色選択、その他の機能選択等の操作を行うためのスイッチ類162や表示パネル164が配列されたセンタパネル160と、が配置されている。ここで、本明細書においては説明の都合上、図1に示した電子楽器100において、鍵盤ユニット120が配置され、演奏者側となる図面手前側を「楽器手前側」と表記し、スピーカパネル140やセンタパネル160が配置され、聴衆側となる図面奥側を「楽器奥側」と表記する。
スピーカパネル140には、図2、図3に示すように、スピーカ130の放音面(又は、放音部)を覆って保護するためのスピーカネット132と、スピーカ130及びスピーカネット132を覆うスピーカカバー150と、が設けられている。ここで、スピーカカバー150は、例えば図1、図2に示すように、図面上方から見た平面形状が矩形を有するとともに、当該上面に長穴状のスリット154Sが複数設けられている。
また、スピーカカバー150は、スリット154Sが設けられた上面の楽器手前側に取っ手部152を有し、図2(a)、(b)に示すように、楽器奥側に設けられたヒンジ部142を支点にして、スピーカパネル140(又は、本体ケース110)に対して回動して、楽器手前側が開閉するように取り付けられている。
具体的には、スピーカカバー150は、例えば図3及び図4に示すように、複数のスリット154Sが所定の間隔で配列されたカバー部材154と、カバー部材154に対してスライド可能に取り付けられ、カバー部材154のスリット154Sと同様の形状及び配列を有する複数のスリット156Sが設けられたスリット部材156と、を備えている。
カバー部材154は、図3(a)に示すように、図面右方の楽器奥側の背面部154Bに設けられたヒンジ部142を介してスピーカパネル140(又は、本体ケース110)に対して回動可能に取り付けられている。また、スリット部材156は、図3(a)及び図4に示すように、蝶番144を介してヒンジとなるシャフト146に接続されている。具体的には、蝶番144の一方の取付部144aにスリット部材156がビス止め固定(図4では図示を省略)され、他方の取付部144bにシャフト146の取付部146aがビス止め固定されている。シャフト146は、両端部がスピーカパネル140(又は、本体ケース110)に回動可能に取り付けられている。すなわち、スリット部材156は、蝶番144を支点にして回動し、スリット部材156及び蝶番144は、シャフト146を支点にしてスピーカパネル140(又は、本体ケース110)に対して回動する。
ここで、シャフト146は、図3(a)に示すように、カバー部材154のヒンジ部142とは同軸(同一の位置)ではなく、例えばヒンジ部142よりも図面上方(カバー部材154の上面寄り)の位置に配置されている。また、スリット部材156は、図3(b)に示すように、カバー部材154の内側に設けられたガイド溝154Gに沿って図3(a)の図面左右方向に移動(スライド)可能に取り付けられている。
上述したようなスピーカカバー150において、カバー部材154をヒンジ部142を支点にして回動させることにより、スピーカカバー150の開閉状態が制御され、図2(a)や図5(a)に示すように、スピーカカバー150によりスピーカ130の放音面が覆われたカバー閉状態と、図2(b)や図5(b)に示すように、スピーカ130の放音面が露出したカバー開状態と、のいずれかに設定される。
具体的には、図2(a)や図5(a)に示したカバー閉状態において、演奏者(又は、ユーザ)がスピーカカバー150の取っ手部152を把持して持ち上げることにより、図2(b)や図5(b)に示すように、スピーカカバー150がヒンジ部142を支点にして回動し(図中、曲線矢印参照)、スピーカカバー150の楽器手前側が開いて開口部148が形成され、当該開口部148内にスピーカ130の放音面が露出したカバー開状態に移行する。
ここで、スピーカカバー150のカバー閉状態では、図5(a)に示すように、カバー部材154の各スリット154Sと、スリット部材156の各スリット156Sとの位置が一致して、スピーカカバー150の外側と内側(すなわち、図面上側と下側)とが各スリット154S、156Sを介して貫通したスリット全開状態に設定される。このカバー閉状態かつスリット開状態において、スピーカ130から発音させると、図6(a)の点線矢印で示すように、音がスピーカカバー150の各スリット154S、156Sを介して、電子楽器100の上方に向かって広がる(拡散される)ように放出される(拡散状態)。
一方、スピーカカバー150を回動させてカバー開状態に移行させると、図5(b)の点線矢印で示すように、カバー部材154とスリット部材156とが相対的に逆方向に移動(スライド)して、カバー部材154の各スリット154Sとスリット部材156の各スリット156Sとの位置がずれて塞がり、スピーカカバー150の外側と内側とが遮断されたスリット全閉状態に設定される。このカバー開状態かつスリット閉状態において、スピーカ130から発音させると、図6(b)の点線矢印で示すように、音がスピーカ130の放音面とスピーカカバー150の内側との間に形成された開口部148の空間内で反射、伝搬して、開口部148の図面左方端の放音口を介して、図面左方の楽器手前側に向かって放出される。すなわち、スピーカ130から発せられる音が電子楽器100の演奏者の方向(楽器手前側)に指向性を有して放出される(指向性化状態)。
なお、本実施形態において、上述したスピーカカバー150の開閉状態は、例えば図5(a)に示すように、図面左方のスピーカカバー150の楽器手前側の端部が、図中VA部に示すように、スピーカパネル140(又は、本体ケース110)の上面、或いは、図示を省略したストッパーに当接してスピーカカバー150の回動が制止された状態を、カバー閉状態として規定している。また、例えば図5(b)に示すように、図面右方のスピーカカバー150の楽器奥側の背面部154Bの端部が、図中VB部に示すように、スピーカパネル140(又は、本体ケース110)の背面、或いは、図示を省略したストッパーに当接してスピーカカバー150の回動が制止された状態を、カバー開状態として規定している。
また、本実施形態においては、図5(a)、(b)に示したように、スピーカカバー150のカバー閉状態からカバー開状態への移行に伴って、カバー部材154が相対的に図面右方にスライドするとともに、スリット部材156が相対的に図面左方にスライドして、各スリット154S、156Sが塞がりスリット閉状態に設定される。ここで、スピーカカバー150の開閉時におけるカバー部材154とスリット部材156の相対的なスライド方向は上述した場合に限定されない。すなわち、カバー部材154の形状や寸法、回動支点となるヒンジ部142の配置、スリット部材156と蝶番144とシャフト146との組付け寸法、回動支点となるシャフト146の配置等の設計条件によっては、スピーカカバー150の開閉時におけるカバー部材154とスリット部材156との相対的なスライド方向が、図5(b)に示した点線矢印とは逆方向になるものであってもよい。要するに、スリット開状態であるスピーカカバー150を、カバー閉状態からカバー開状態に移行することにより、カバー部材154とスリット部材156とが相対的にスライドして、スリット閉状態に移行するように設計されているものであれば、本発明に良好に適用することができる。
また、本実施形態においては、図3、図5に示すように、カバー部材154とスリット部材156との間に、両者の密着性を向上させるためのクッション材158が設けられている。ここで、クッション材158には、ラバーシート等を適用することができ、カバー部材154に設けられたスリット154Sと同一の形状及び配列を有する複数のスリットが設けられている。すなわち、スピーカカバー150のカバー閉状態においては、図5(a)に示したように、カバー部材154のスリット154S及びクッション材158のスリットと、スリット部材156のスリット156Sとの位置が一致して、スピーカカバー150の外側と内側とが貫通し、図6(a)に示したように、スピーカ130から発せられた音がこれらのスリットを介して放出される。
一方、スピーカカバー150のカバー開状態においては、図5(b)に示したように、カバー部材154のスリット154S及びクッション材158のスリットと、スリット部材156のスリット156Sとの位置がずれて塞がり、スピーカカバー150の外側と内側とが遮断される。このとき、カバー部材154とスリット部材156とがクッション材158を介して密着し、図6(b)に示したように、スピーカ130から発せられた音がスピーカカバー150の開口部148内で反射、伝搬して(また、一部は開口部148を介して直接)楽器手前側に放出される。なお、本実施形態に示したクッション材158に替えて、カバー部材154とスリット部材156とが接する面(例えばカバー部材154の内側の面やスリット部材156の摺動面)に、クッション材158と同等の密着性を有する表面処理(例えばコーティング剤の塗布等)を施すものであってもよい。
このように、本実施形態においては、スピーカカバー150がカバー閉状態では、開放状態のスリットを介して音を放出することにより、電子楽器100の上方を中心とする周囲に広がる(拡散される)音の放出量を適切に設定することができる(拡散状態)。また、スピーカカバー150がカバー開状態では、スリットが閉塞状態のスピーカカバー150の開口部148から音を放出することにより、演奏者がいる方向に指向性を有しつつ十分な音量や音質を有する音を設定することができる(指向性化状態)。したがって、これら2つの状態を、簡易な構造を有するスピーカカバー150の開閉操作により簡易かつ任意に切替え設定して音響特性を制御し、演奏の目的に合った音響環境をより効果的に実現することができる。また、電子楽器100の筐体の小型化に伴ってスピーカ130を小型化した場合であっても、音響特性を十分に維持、又は、向上させることができる。
<変形例>
次に、上述した第1の実施形態における変形例について、図面を参照して説明する。
(変形例1)
図7は、本実施形態に係る電子楽器に適用されるスピーカカバーの変形例1を示す要部概略図である。ここで、上述した実施形態と同等の構成については、同一の符号を付して説明を簡略化する。なお、以下の変形例及び他の実施形態においても同様とする。
上述した第1の実施形態においては、スピーカカバー150の開閉状態として、図5(a)、(b)に示したように、スピーカカバー150の楽器手前側及び楽器奥側の端部がスピーカパネル140(又は、本体ケース110)に当接してスピーカカバー150の回動が制止された状態を、それぞれカバー閉状態及びカバー開状態として規定した。本実施形態の変形例1においては、スピーカカバー150を回動させた際に、スリットが閉塞状態となる特定の回動位置(開閉角度)でスピーカカバー150を制止させてカバー開状態を規定する形態を有している。
本実施形態の変形例1は、具体的には、例えば図7(a)、(d)及び図7(b)、(e)に示すように、スピーカカバー150の回動支点となるヒンジ部142に取り付けられたカバー部材154の取付部154T、及び、ヒンジ部142周辺のスピーカパネル140(又は、本体ケース110)のそれぞれに、相互に係合する凹部212、214及び凸部202、204を有している。ここで、カバー部材154の取付部154Tに設けられた凹部212、214は、スピーカカバー150の開閉に伴ってヒンジ部142を支点として回動する。また、凹部212、214に係合する凸部202、204は、スピーカパネル140(又は、本体ケース110)の特定の位置に固定的に設けられている。
上述したようなスピーカカバー150において、ヒンジ部142を支点にしてスピーカカバー150を回動させることにより、図5(b)及び図7(c)、(f)に示すように、スピーカカバー150のスリットが閉塞状態となる特定の回動位置で、取付部154Tに設けられた凹部212、214がスピーカパネル140(又は、本体ケース110)に設けられた凸部202、204に係合する。このとき、凹部212、214と凸部202、204との係合に伴ってスピーカカバー150の回動に対して抵抗が生じてスピーカカバー150の回動が制止されてカバー開状態が規定されるとともに、スリットが閉塞状態に設定される。これにより、スピーカ130から発せられた音は、上述した実施形態と同様に、特定の回動位置で制止されてカバー開状態に設定されたスピーカカバー150により形成された開口部148内で反射、伝搬して、楽器手前側に指向性を有して放出される。
このように、本変形例においては、上述した第1の実施形態に示したスピーカカバー150が開放状態となる回動位置(すなわち、図5(b)に示したスピーカカバー150の背面部154Bの端部がスピーカパネル140に当接した状態)に限らず、ヒンジ部142周辺に設けた凹部及び凸部の係合により、任意の回動位置(開閉角度)でスピーカカバー150のカバー開状態及びスリット閉状態を設定することができる。また、本変形例によれば、凹部212、214と凸部202、204との係合に伴って生じる抵抗が、スピーカカバー150を回動させる際に演奏者にクリック感やクリック音として伝達されるので、スピーカカバー150のカバー開状態を感覚的に(触覚や聴覚を通じて)認識することができる。
また、本変形例の他の形態として、上述した変形例1において、任意の複数の回動位置(開閉角度)でスピーカカバー150を制止させてカバー開状態を規定するものであってもよい。具体的には、例えば図7(g)に示すように、ヒンジ部142に取り付けられたカバー部材154の取付部154Tに、スピーカカバー150のスリットが開放状態となる複数の回動位置に対応する角度ごとに複数の凹部216が設けられている。各角度の凹部216は、スピーカカバー150の開閉に伴ってヒンジ部142を支点として回動する。また、ヒンジ部142周辺のスピーカパネル140(又は、本体ケース110)に、取付部154Tの各凹部216に係合する単一の凸部206が固定的に設けられている。ここで、スピーカカバー150の回動が制止されてカバー開状態となる各回動位置においては、スピーカカバー150のスリットが閉塞状態となるように、カバー部材154とスリット部材156のスリット154S、156Sの形状や配列が設定されている。
このようなスピーカカバー150において、ヒンジ部142を支点にしてスピーカカバー150を回動させることにより、図7(h)、(i)に示すように、特定の回動位置ごとに、取付部154Tに設けられた各角度の凹部216がスピーカパネル140(又は、本体ケース110)に設けられた凸部206に係合する。このとき、各回動位置でスピーカカバー150の回動が制止されてカバー開状態が複数の開閉角度で規定されるとともに、スリットが閉塞状態に設定される。
このように、本変形例の他の形態においては、スピーカカバー150のカバー開状態を複数の回動位置(開閉角度)で設定することができるので、スピーカカバー150により形成される開口部148の空間の大きさを変化させて、スピーカ130から発せられた音の指向性や音量、音質等の音響特性を簡易かつ任意に調整し、演奏の目的に合った音響環境をより効果的に実現することができる。
(変形例2)
図8は、本実施形態に係る電子楽器に適用されるスピーカカバーの変形例2を示す要部概略図である。
上述した第1の実施形態においては、図1~図6に示したように、演奏者側となる楽器手前側に開口部148が形成されるようにスピーカカバー150が開閉する形態を示した。本実施形態の変形例2においては、聴衆側に開口部が形成されるようにスピーカカバー150が開閉する形態を有している。
本実施形態の変形例2は、具体的には、例えば図8(a)、(b)に示すように、スピーカカバー150が楽器手前側に設けられたヒンジ部142を支点にして回動して、聴衆側となる楽器奥側が開閉するように取り付けられている。また、本変形例の他の形態として、例えば図8(c)、(d)に示すように、スピーカカバー150が本体ケース110の長手方向(楽器手前側から見て左右いずれかの方向)に開閉するように取り付けられている。ここで、本変形例に適用されるスピーカカバー150は、上述した第1の実施形態や変形例1に示した機構をそのまま用い、スピーカパネル140(又は、本体ケース110)に取り付ける向き(すなわち、スピーカカバー150の開閉により開口部148が形成される方向)を変更することにより実現することができる。このように、本変形例においては、演奏者から見て楽器奥側や左右方向にいる聴衆に向かって指向性を有しつつ十分な音量や音質を有する音を設定することができる。
(変形例3)
図9は、本実施形態に係る電子楽器に適用されるスピーカカバーの変形例3を示す要部概略図である。ここでは、説明を簡略化するために、本変形例に適用されるカバー部材154、及び、スピーカ130が搭載されたスピーカ搭載部134のみを示し、第1の実施形態に示されたスリット部材156や蝶番144、シャフト146等の周辺の部品の表示を省略する。
上述した第1の実施形態及びその変形例においては、図3、図5に示したように、スピーカ130の放音面が電子楽器100の上方を向くように、スピーカ130がスピーカパネル140(又は、本体ケース110)に固定的に組み込まれた形態を示した。本実施形態の変形例3においては、スピーカカバー150の開閉状態に連動してスピーカ130の放音面(又は、放音部の方向)が向いている角度が変化する形態を有している。
本実施形態の変形例3は、具体的には、例えば図9に示すように、スピーカ130が搭載され、楽器手前側に設けられたヒンジ部136を支点にしてスピーカパネル140(又は、本体ケース110)に対して回動可能に取り付けられたスピーカ搭載部134を有している。スピーカ搭載部134の楽器奥側には、本体ケース110の短手方向(楽器手前側から見て前後方向)に延在する長穴を有するスライド係合部138が設けられ、カバー部材154から突出するカバー係合部154Fがスライド可能な状態で係合している。ここで、カバー部材154をヒンジ部142を支点にして回動させることにより、カバー係合部154Fがスライド係合部138の長穴をスライドしながらスピーカ搭載部134の楽器奥側を引き上げて、スピーカ搭載部134がヒンジ部136を支点にして回動する。
上述したようなスピーカカバー150のカバー閉状態においては、図9(a)、(b)に示すように、カバー部材154のカバー係合部154Fがスピーカ搭載部134に設けられたスライド係合部138の長穴の楽器手前側の端部(図9(b)の左方端)に係合した状態になる。これにより、スピーカ搭載部134は、電子楽器100(又は、スピーカパネル140)の上面に略平行になり、スピーカ130の放音面が電子楽器100の上方に向いた状態に設定される。このカバー閉状態では、上述したように、スリット開状態に設定されているので、スピーカ130の放音面から発せられた音は開放状態のスリット154Sを介して電子楽器100の上方に向かって放出される。
一方、図9(c)、(d)に示すように、スピーカカバー150回動させてカバー開状態に移行させると(図9(d)の曲線矢印)、カバー部材154のカバー係合部154Fがスピーカ搭載部134に設けられたスライド係合部138の長穴を、楽器奥側の端部(図9(d)の右方端)に向かってスライドしながらスピーカ搭載部134の楽器奥側を引き上げて、スピーカ搭載部134をヒンジ部136を支点にして回動させる。これにより、スピーカ搭載部134が電子楽器100(又は、スピーカパネル140)の上面に対して傾斜した状態に変化して、スピーカ130の放音面がスピーカカバー150により形成された開口部148内で楽器手前側に向いた状態に設定される。このカバー開状態では、上述したように、スリット閉状態に設定されているので、スピーカ130の放音面から発せられた音は開口部148内で反射、伝搬して、或いは、開口部148を介して直接、楽器手前側に指向性を有して放出される。
このように、本変形例においては、スピーカカバー150の開閉状態に連動してスピーカ130の放音面が開口部148の放音口の方向に傾斜することにより、スピーカ130から発せられた音が高い指向性や十分な音量や音質を有して放出されて、優れた音響特性を実現することができる。
なお、上述した第1の実施形態及びその変形例においては、スピーカカバー150の回動に伴って、カバー部材154に対してスリット部材156が相対的にスライドしてスリット154Sが開閉する形態を示した。ここで、スリット部材156が蝶番144を介してシャフト146に取り付けられた形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば図10(a)に示すように、スリット部材222として、可撓性や弾性を有する薄板状の樹脂部材や金属部材を適用し、その一端側に上述したスリット部材156と同様の形状及び配列を有するスリット222Sを設け、他端側をスピーカパネル140(又は本体ケース110)にビス止め固定したものであってもよい。この場合においても、図10(a)、(b)に示すように、上述した実施形態と同様に、スピーカカバー150の開閉状態に応じて、スリット154Sの開閉状態が設定されて、スピーカ130から発せられる音の音響特性を制御することができる。ここで、図10は、本実施形態に係る電子楽器に適用されるスピーカカバーの変形例4を示す要部概略図である。また、スピーカカバー150の回動に伴って、カバー部材154に対してスリット部材156が自動的にスライドしてスリット154Sが開閉する形態に限定されるものではなく、演奏者(又は、ユーザ)がスピーカカバー150の開閉操作時に、スリット154Sの開閉状態を手動で設定するものであってもよい。
また、上述した第1の実施形態及びその変形例においては、スピーカカバー150のカバー閉状態において、スピーカカバー150の上面に設けられたスリット154Sが開放状態になるように設定された形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば図3に示したスピーカカバー150のカバー部材154において、上面側のスリット154Sに加え、ヒンジ部142が設けられた背面部154B側にも複数のスリットを設けたものであってもよい。これにより、スピーカカバー150の開閉状態に応じて、スピーカカバーの上面及び背面部154Bに設けられたスリットの開閉状態が設定されて、カバー閉状態ではスピーカ130から発せられた音をスリットを介して電子楽器100の上方、及び、聴衆側となる楽器奥側に同時に放出することができる。
また、上述した第1の実施形態及びその変形例においては、スピーカカバー150がカバー閉状態のときスリット開状態に設定され、一方、カバー開状態のときスリット閉状態に設定され、これらの2つの状態のいずれかに設定される形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばスピーカカバー150の回動位置(開閉角度)に応じて、スリット154Sの開放状態(開放比率)を、例えば半開させるような特定の状態に設定したり、100%→60%→30%→0%のように段階的に変化するように設定したり、或いは、連続的に変化させたりするものであってもよい。これにより、スピーカカバー150のカバー開状態において、開口部148が形成された方向に指向性を設定しつつ、特定の比率で開放されたスリット154Sを介して、電子楽器100の上方を中心とする周囲や、開口部とは逆方向に音を放出することができ、多様な音響環境を実現することができる。
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る音響制御装置及び電子楽器の第2の実施形態について図面を参照して説明する。
図11は、第2の実施形態に係る電子楽器に適用されるスピーカカバーの一例を示す概略図である。また、図12は、本実施形態に適用されるスピーカカバーにおける拡散状態を示す概略図であり、図13は、本実施形態に適用されるスピーカカバーにおける指向性化状態を示す概略図である。
上述した第1の実施形態及びその変形例においては、楽器手前側や楽器奥側等の、予め設定された特定の一方向に開口部148が形成されて指向性を有するようにスピーカカバー150が開閉する形態を示した。第2の実施形態においては、単一のスピーカカバー150により、任意の方向に指向性を設定することができる形態を有している。
第2の実施形態に係る電子楽器100は、例えば図11(a)に示すように、スピーカパネル140に組み込まれたスピーカ130の上方に、球面の一部の領域を切り出したドーム形状(又は、半球状)の突出部を有するスピーカカバー170が設けられている。スピーカカバー170は、例えば図11(a)、(b)に示すように、上側カバー部材174と下側カバー部材176とを有し、下側カバー部材176が上側カバー部材174のドーム形状の内側に回転可能な状態で重ね合わされるとともに、スピーカパネル140の上面に対して回転可能な状態で取り付けられている。すなわち、上側カバー部材174と下側カバー部材176とはそれぞれドーム形状の外周に沿って回転し、上側カバー部材174及び下側カバー部材176からなるスピーカカバー170全体が、スピーカパネル140に対してドーム形状の外周に沿って回転するように形成されている(図中、両矢印参照)。
上側カバー部材174には、ドーム形状の突出部の頂点付近から外周方向に向かって放射状に、ドーム形状の外曲面に沿って長穴状のスリット174Sが複数設けられている。また、下側カバー部材176には、ドーム形状の突出部の曲面の所定の領域(図では突出部の略半分の領域)に開口部176Hが設けられているとともに、それ以外の領域には上側カバー部材174のスリット174Sと同様の形状及び配列を有する複数のスリット176Sが設けられている。また、上側カバー部材174及び下側カバー部材176の外周部分には、それぞれ上側カバー部材174及び下側カバー部材176を任意の方向に回転させる際に演奏者(又は、ユーザ)が把持するつまみ部172A、172Bが設けられている。これらのつまみ部172A、172Bは、それぞれ上側カバー部材174及び下側カバー部材176に設けられるスリット174S、176Sに対して特定の位置関係になるように設定されている。
上述したようなスピーカカバー170において、重ね合わされた上側カバー部材174及び下側カバー部材176を相対的に回転させることによりスリットの開閉状態が制御される。すなわち、スピーカカバー170の回転操作により、図12に示すように、スピーカ130の放音面(又は、放音部)を覆うスピーカカバー170の全てのスリット174Sが開放状態に設定された拡散状態と、図13に示すように、スピーカカバー150の開口部176Hに重なる位置のスリット174Sのみが開放状態に設定された指向性化状態と、のいずれかに設定される。
具体的には、上側カバー部材174及び下側カバー部材176が重ね合わされた状態で、演奏者(又は、ユーザ)が各つまみ部172A、172Bを把持してスピーカカバー170の外周に沿って相対的に回転させて、図12(a)、(b)に示すように、上側カバー部材174のスリット174Sを下側カバー部材176のスリット176Sの位置に重なるように一致させることにより、スピーカカバー170が拡散状態に設定される。
この拡散状態においては、上側カバー部材174の全てのスリット174Sが下側カバー部材176のスリット176Sと位置が一致、又は、開口部176Hと位置が重なって、スピーカカバー170の外側と内側のカバー内空間178とが各スリット174Sを介して貫通したスリット全開状態に設定される。この拡散状態(スリット全開状態)において、スピーカ130から発音させると、図12(c)の矢印で示すように、音がスピーカカバー170の各スリット174Sを介して、電子楽器100の上方を中心とする周囲に広がる(拡散される)ように放出される。
一方、上側カバー部材174及び下側カバー部材176を相対的に回転させて、図13(a)、(b)に示すように、上側カバー部材174のスリット174Sを下側カバー部材176のスリット176Sの位置に重ならないようにすることにより、スピーカカバー170が指向性化状態に設定される。
この指向性化状態においては、上側カバー部材174のスリット174Sのうち、下側カバー部材176の開口部176Hと位置が重なるスリット174Sのみが貫通し、それ以外のスリット174Sはスリット176Sの位置がずれて塞がった一部スリット開状態に設定される。この指向性化状態(一部スリット開状態)において、スピーカ130から発音させると、図13(c)の矢印で示すように、音がスリット174Sが塞がれたカバー内空間178で反射、伝搬して、下側カバー部材176の開口部176Hと位置が重なる各スリット174Sのみを介して、図面左方の電子楽器100の演奏者の方向(楽器手前側)に指向性を有して放出される。
また、この指向性化状態において、上側カバー部材174と下側カバー部材176とが重ね合わされたスピーカカバー150全体を、スピーカパネル140(又は、本体ケース110)に対して任意の方向に回転させることにより、図11(a)に示した演奏者側となる楽器手前側だけでなく、聴衆側となる楽器奥側や左右方向等の、電子楽器100の全周における任意の方向に指向性が設定される。
このように、本実施形態においては、スピーカカバー150のドーム形状の突出部に設けられた全てのスリット174Sを介して、電子楽器100の上方を中心とする周囲に広がる(拡散される)ように音を放出する拡散状態(スリット全開状態)と、開口部176Hと位置が重なるスリット174Sのみを介して、特定の方向に音を放出する指向性化状態(一部スリット開状態)と、を上側カバー部材174及び下側カバー部材176の回転操作により簡易かつ任意に設定して音響特性を制御し、演奏の目的に合った音響環境をより効果的に実現することができる。また、スピーカカバー150全体をスピーカパネル140に対して回転させることにより、開口部176Hが向いた任意の方向に指向性を設定することができる。
<第3の実施形態>
次に、本発明に係る音響制御装置及び電子楽器の第3の実施形態について図面を参照して説明する。
図14は、本実施形態に係る電子楽器に適用されるスピーカカバーの一例を示す概略図である。ここでは、説明を簡略化するために、本実施形態に適用されるスピーカカバー180とスピーカ130のみを示し、上述した各実施形態に示された本体ケース110やスピーカパネル140等の周辺の部品の表示を省略する。
上述した各実施形態及び変形例においては、スピーカカバー150を拡散状態又は指向性化状態に設定するための手段として、スピーカ130の上方に各状態に応じて開閉するスリットを設けた形態を示した。第3の実施形態においては、スピーカカバー150にスリットを用いることなく、上記の各状態に設定することができる形態を有している。
第3の実施形態に係る電子楽器100は、例えば図14に示すように、スピーカ130の上方に、ヒンジにより蛇腹が伸縮する機構を有するスピーカカバー180が設けられている。スピーカカバー180は、例えば図14(a)、(c)に示すように、スピーカパネル140に取り付けられるパネル取付部184と、パネル取付部184に対してヒンジ部188及び蛇腹186を介して取り付けられるカバーフレーム(放音口)182と、を有している。ここで、パネル取付部184とカバーフレーム182とは同等の角形のフレームを有し、パネル取付部184及びカバーフレーム182の特定の一辺側に共通に設けられたヒンジ部188を支点にして回動する。このとき、パネル取付部184及びカバーフレーム182の他の三辺に取り付けられた蛇腹186が、ヒンジ部188を支点とするカバーフレーム182の回動に伴って伸縮する。
上述したようなスピーカカバー180において、カバーフレーム182をヒンジ部188を支点にして回動させることにより蛇腹186の展開状態が制御される。すなわち、スピーカカバー180の開閉操作により、図14(a)、(b)に示すように、蛇腹186が収納されて、スピーカ130の放音面が露出したカバー閉状態と、図14(c)、(d)に示すように、蛇腹186が展開されて、スピーカカバー180によりスピーカ130の放音面が覆われたカバー開状態と、のいずれかに設定される。
具体的には、図14(a)に示すように、蛇腹186を折り畳んで収納し、カバーフレーム182をパネル取付部184に重ね合わせて密着させることにより、カバー閉状態に設定され、スピーカ130の放音面が電子楽器100(又は、スピーカパネル140)の上方に向けて露出した状態に設定される。
このカバー閉状態において、スピーカ130から発音させると、図14(b)の矢印で示すように、音がパネル取付部184及びカバーフレーム182を介して、電子楽器100の上方を中心とする周囲に広がる(拡散される)ように放出される。
一方、図14(c)に示すように、カバーフレーム182をヒンジ部188を支点として回動させて、蛇腹186を引き伸ばして展開させることにより、カバー開状態に設定され、スピーカ130の放音面が蛇腹186により形成された開口部190により覆われた状態に設定される。
このカバー閉状態において、スピーカ130から発音させると、図14(d)の矢印で示すように、音が蛇腹186による開口部190内で反射、伝搬して、図面左方のカバーフレーム182を介して、例えば電子楽器100の演奏者の方向(楽器手前側)に指向性を有して放出される。
このように、本実施形態においては、スピーカ130の放音面が露出するカバーフレーム182を介して、電子楽器100の上方を中心とする周囲に広がる(拡散される)ように音を放出する拡散状態と、展開された蛇腹186により形成された開口部190を介して、特定の方向に音を放出する指向性化状態と、をスピーカカバー180の開閉操作により簡易かつ任意に設定して音響特性を制御し、演奏の目的に合った音響環境をより効果的に実現することができる。また、電子楽器100の筐体の小型化に伴ってスピーカ130を小型化した場合であっても、音響特性を十分に維持、又は、向上させることができる。
なお、本実施形態においては、スピーカカバー180のカバーフレーム182が、ヒンジ部188及び蛇腹186を介してパネル取付部184に取り付けられるとともに、パネル取付部184がスピーカパネル140に固定的に取り付けられ、ヒンジ部188により規定される方向に回動する形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばスピーカカバー180全体をスピーカパネル140(又は、本体ケース110)の上面に対して回転させる機構を介して取り付けるものであってもよい。これにより、スピーカ130を小型化した場合であっても、電子楽器100の全周における任意の方向にカバーフレーム182を回転させて、任意の方向に指向性を有しつつ十分な音量や音質を有する音を設定して、簡易な操作により演奏の目的に合った音響環境をより効果的に実現することができる。
また、本実施形態に示したヒンジ部188を用いることなく、蛇腹186のみを介してカバーフレーム182をパネル取付部184に取り付けた形態を適用することにより、蛇腹186を電子楽器100の全周における任意の方向に屈曲させながら引き伸ばして、カバーフレーム182を任意の方向に向けて、指向性を設定するものであってもよい。
なお、上述した第2、第3の実施形態においては、スピーカカバーとして、ドーム形状の外観や蛇腹を備え、電子楽器100の全周における任意の方向に指向性を設定する形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上述した第1の実施形態に示したカバー部材154にスリット部材156を組付けた形態の技術思想を応用して、電子楽器100の全周における複数の方向に指向性を設定するものであってもよい。
具体的には、例えば、カバー部材にスリット部材が組付けられたスピーカカバーにおいて、楽器奥側と楽器手前側との両方に着脱可能なヒンジ部を設け、いずれか一方のヒンジ部を支点としてカバー部材を回動させることにより、演奏者側である楽器手前側に開口部が形成される第1の指向性化状態と、聴衆側である楽器奥側に開口部が形成される第2の指向性化状態とのいずれかの状態を設定するものであってもよい。ここで、第1又は第2の指向性化状態のいずれにおいても、上述した第1の実施形態と同様に、スピーカカバー150の開閉状態に応じて、スリットの開閉状態が設定される(すなわち、カバー閉状態でスリット開状態に設定され、カバー開状態でスリット閉状態に設定される)。このような形態において、スピーカカバーの回動方向を2つのヒンジ部間で切替えることにより、単一のスピーカカバーで例えば演奏者側又は聴衆側のいずれかに指向性を設定することができる。
また、例えば、スピーカ130の上方を楽器手前側と奥側の2つの領域に分け、各領域に第1の実施形態と同等の機構を有し、開口部が形成される方向が異なるスピーカカバーを設けたものであってもよい。すなわち、スピーカ130の上方の楽器手前側には、カバー部材を回動させることにより、楽器手前側に開口部が形成されて指向性が設定される第1のスピーカカバーを設け、スピーカ130の上方の楽器奥側には、カバー部材を回動させることにより、楽器奥側に開口部が形成されて指向性が設定される第2のスピーカカバーを設ける。このような形態において、2つのスピーカカバーを回動させてカバー開状態に設定することにより、演奏者側及び聴衆側の両方向に指向性を設定して、スピーカ130から発せられた音を同時に放出することができる。
なお、上述した各実施形態及び変形例においては、スピーカカバーに長穴状のスリットを設けた形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、スピーカカバーの開閉状態や回転状態に応じて、スリットが開放状態に設定されてスピーカからの音が拡散されたり、スリットが閉塞状態に設定されて音が特定方向に放出されたりするように、スリットの開閉状態が設定されるものであれば、多角形や円形、楕円形等、任意の形状や配列に設定されているものであってもよい。
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、実行可能な範囲で上記複数の実施形態の各構成を組合せしてなしたものを含み、また特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
[1]
スピーカの放音部に設けられたカバーを有し、
前記スピーカに対する前記カバーの形態を変化させることにより、前記スピーカから発せられる音を、第1の方向に拡散するように放出する第1の状態と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に指向性を有して放出する第2の状態と、を切替えることを特徴とする音響制御装置。
[2]
前記スピーカに対する前記カバー全体の角度を変化させるカバー角度制御機構部と、
前記カバーに設けられた貫通孔の大きさを変化させる貫通孔制御機構部と、
を備え、
前記カバー角度制御機構部により前記スピーカから発せられる音の放出方向を変化させるとともに、前記貫通孔制御機構部により前記スピーカから発せられる音の放出量を変化させることによって、前記第1の状態と前記第2の状態と、を切替えることを特徴とする[1]に記載の音響制御装置。
[3]
前記カバーの角度と前記貫通孔の大きさとを連動して変化させる貫通孔連動機構部を、更に備えることを特徴とする[2]に記載の音響制御装置。
[4]
前記貫通孔は、前記カバーを閉じた状態で大きく設定され、前記カバーを開くことにより小さくなるように設定されることを特徴とする[2]又は[3]に記載の音響制御装置。
[5]
前記カバーは、第1の貫通孔が設けられた第1のカバー部材と、前記第1のカバー部材に対してスライド可能に取り付けられ、第2の貫通孔が設けられた第2のカバー部材と、を有し、
前記カバー角度制御機構部は、前記第1のカバー部材を第1のヒンジ部を支点にして、前記スピーカに対して回動させ、
前記貫通孔制御機構部は、前記第1のカバー部材の回動に応じて、前記第2のカバー部材を前記第1のカバー部材に沿ってスライドさせ、前記カバーを閉じた状態で前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが重なって前記貫通孔が大きくなるように設定し、前記カバーを開くことにより前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔との重なりが小さくなって前記貫通孔が小さくなるように設定することを特徴とする[4]に記載の音響制御装置。
[6]
前記貫通孔は、前記カバーを特定の角度で開いた状態で塞がるように設定されることを特徴とする[4]又は[5]に記載の音響制御装置。
[7]
前記カバーの角度と前記スピーカの放音部の方向とを連動して変化させる放音部連動機構部を、更に備えることを特徴とする[2]乃至[6]のいずれかに記載の音響制御装置。
[8]
前記カバーに設けられた貫通孔の大きさを変化させる貫通孔制御機構部を備え、
前記貫通孔制御機構部により前記スピーカから発せられる音の放出方向を変化させるとともに、前記音の放出量を変化させることによって、前記第1の状態と前記第2の状態と、を切替えることを特徴とする[1]に記載の音響制御装置。
[9]
前記カバーは、第1の貫通孔が設けられた第1のカバー部材と、前記第1のカバー部材に対して回転可能に重ね合わされ、第2の貫通孔及び開口部が設けられた第2のカバー部材と、を有し、
前記貫通孔制御機構部は、前記第1のカバー部材と前記第2のカバー部材とを相対的に回転させ、
前記第1の状態で前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔及び前記開口部とが重なって前記貫通孔が大きくなるように設定し、前記第2の状態で前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが重ならず、前記第1の貫通孔と前記開口部のみが重なって前記貫通孔が小さくなるように設定することを特徴とする[8]に記載の音響制御装置。
[10]
前記スピーカから発せられる音を放出する前記カバーの放音口の方向を変化させる方向制御機構部を備え、
前記方向制御機構部により前記スピーカに対する前記音の放出方向を変化させるとともに、前記音の放出量を変化させることによって、前記第1の状態と前記第2の状態と、を切替えることを特徴とする[1]に記載の音響制御装置。
[11]
前記カバーは、屈曲及び伸縮可能な部材からなる蛇腹を有し、
前記方向制御機構部は、前記スピーカに対して前記放音口の方向を任意に変化させ、
前記第1の状態で前記蛇腹を収納して前記放音口に前記スピーカの放音部が露出するように設定し、前記第2の状態で前記蛇腹を展開して前記スピーカの放音部を覆うとともに、前記放音口を任意の方向に向くように設定することを特徴とする[10]に記載の音響制御装置。
[12]
[1]乃至[11]のいずれかに記載の音響制御装置と、
音高を指定する演奏操作子が配列された鍵盤ユニットと、
前記演奏操作子により指定された音高に基づく楽音を発するスピーカと、
を備え、
前記音響制御装置は、前記スピーカから発せられる前記楽音を、第1の方向に拡散するように放出する第1の状態と、前記第1の方向とは異なる第2の方向に指向性を有して放出する第2の状態と、に切替え設定することを特徴とする電子楽器。
100 電子楽器
110 本体ケース
120 鍵盤ユニット
130 スピーカ
140 スピーカパネル
142 ヒンジ部(カバー角度制御機構部、貫通孔連動機構部、第1のヒンジ部)
148 開口部
150 スピーカカバー
154 カバー部材(カバー角度制御機構部、貫通孔連動機構部、第1のカバー部材)
154G ガイド溝(貫通孔制御機構部)
154S スリット(貫通孔、第1の貫通孔)
156 スリット部材(貫通孔連動機構部、第2のカバー部材)
156S スリット(貫通孔制御機構部、第2の貫通孔)
160 センタパネル
170 スピーカカバー
174 上側カバー部材(貫通孔制御機構部、第1のカバー部材)
174S スリット(貫通孔、第1の貫通孔)
176 下側カバー部材(貫通孔制御機構部、第2のカバー部材)
176H 開口部
176S スリット(第2の貫通孔)
180 スピーカカバー
182 カバーフレーム(放音口、方向制御機構部)
184 パネル取付部
186 蛇腹(方向制御機構部)
188 ヒンジ部(方向制御機構部)

Claims (8)

  1. スピーカの放音部に設けられたカバーと、
    前記スピーカに対する前記カバー全体の角度を変化させるカバー角度制御機構部と、
    前記カバーに設けられた貫通孔の大きさを変化させる貫通孔制御機構部と、
    を備え、
    前記カバー角度制御機構部により前記スピーカから発せられる音の放出方向を変化させるとともに、前記貫通孔制御機構部により前記スピーカから発せられる音の放出量を変化させることによって、前記スピーカから発せられる音を第1の方向に拡散するように放出する第1の状態と、前記スピーカから発せられる音を前記第1の方向とは異なる第2の方向に指向性を有して放出する第2の状態と、を切替えることを特徴とする音響制御装置。
  2. 前記貫通孔は、前記カバーを閉じた状態で大きく設定され、前記カバーを開くことにより小さくなるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の音響制御装置。
  3. 前記カバーは、第1の貫通孔が設けられた第1のカバー部材と、前記第1のカバー部材に対してスライド可能に取り付けられ、第2の貫通孔が設けられた第2のカバー部材と、
    を有し、
    前記カバー角度制御機構部は、前記第1のカバー部材を第1のヒンジ部を支点にして、前記スピーカに対して回動させ、
    前記貫通孔制御機構部は、前記第1のカバー部材の回動に応じて、前記第2のカバー部材を前記第1のカバー部材に沿ってスライドさせ、前記カバーを閉じた状態で前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが重なって前記貫通孔が大きくなるように設定し、前記カバーを開くことにより前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔との重なりが小さくなって前記貫通孔が小さくなるように設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の音響制御装置。
  4. 前記貫通孔は、前記カバーを特定の角度で開いた状態で塞がるように設定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の音響制御装置。
  5. 前記カバーの角度と前記スピーカの放音部の方向とを連動して変化させる放音部連動機構部を、更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の音響制御装置。
  6. スピーカの放音部に設けられたカバーと、
    前記カバーに設けられた貫通孔の大きさを変化させる貫通孔制御機構部と、
    を備え、
    前記貫通孔制御機構部により前記スピーカから発せられる音の放出方向を変化させるとともに、前記音の放出量を変化させることによって、前記スピーカから発せられる音を第1の方向に拡散するように放出する第1の状態と、前記スピーカから発せられる音を前記第1の方向とは異なる第2の方向に指向性を有して放出する第2の状態と、を切替えることを特徴とする音響制御装置。
  7. 前記カバーは、第1の貫通孔が設けられた第1のカバー部材と、前記第1のカバー部材に対して回転可能に重ね合わされ、第2の貫通孔及び開口部が設けられた第2のカバー部材と、を有し、
    前記貫通孔制御機構部は、前記第1のカバー部材と前記第2のカバー部材とを相対的に回転させ、
    前記第1の状態で前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔及び前記開口部とが重なって前記貫通孔が大きくなるように設定し、前記第2の状態で前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔とが重ならず、前記第1の貫通孔と前記開口部のみが重なって前記貫通孔が小さくなるように設定することを特徴とする請求項6に記載の音響制御装置。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の音響制御装置と、
    音高を指定する演奏操作子が配列された鍵盤ユニットと、
    前記演奏操作子により指定された音高に基づく楽音を発するスピーカと、
    を備え、
    前記音響制御装置により、前記第1の状態と、前記第2の状態と、を切替え設定することを特徴とする電子楽器。
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