JP7112419B2 - 非水電解液及び非水電解液電池 - Google Patents
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Description
また、特許文献4に記載の電解液は、引火点や燃焼性では一般的に使用される非フッ素系の低粘性溶媒を用いた電解液と大きな差はなく、難燃性の改善という課題がなお存在していた。
リチウムイオン電池に使用される電解液溶媒には、広い電位窓、低粘性、リチウム塩の溶解性等の種々の特性が求められる。本発明者は、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチル(以下、FMPともいう)は、難燃性と粘度とのバランスが、リチウムイオン電池に用いる非水電解液に非常に適していること、このため、ホスファゼン化合物の添加量が少ない場合であっても高い難燃性を有するとともに、これを用いた非水電解液電池を出力特性に優れたものとすることができることを見出した。
これに対し、低粘性溶媒として従来検討されてきた、種々のフッ素化鎖状エステル化合物は、その難燃化のためには高いフッ素含有量が必要となる。このフッ素化に伴い、同時に粘度も上昇するため、従来のフッ素化鎖状エステル化合物は、不燃性と高い充放電特性とを両立することが難しかった。また例えばフッ素化エーテル化合物のみを用いる場合、不燃化するまでフッ素を導入した場合、リチウム塩の溶解度が低くなり、実用的ではない。
なお、本明細書中の体積比率は、25℃におけるものを指す。
なお、フッ素化された式(1)の化合物とは、R1及びR2の何れか少なくとも一方がフッ素化されている基である化合物をいう。
なお、フッ素化された式(2)の化合物とは、R11、R12、R13及びR14の何れか少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素化されている基である化合物をいう。
なお、フッ素化された式(3)の化合物とは、R21、R22、R23、R24、R25及びR26の何れか少なくとも1つが、フッ素原子又はフッ素化されている基である化合物をいう。
式(1)で表される非フッ素化鎖状エステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、及びエチルプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、及び酪酸ブチル等の鎖状カルボン酸エステル等が挙げられる。
また式(1)で表されるフッ素化鎖状エステルとしては、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(2-フルオロエチル)カーボネート、1-フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2-フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、メチルフルオロメチルカーボネート、エチル(1-フルオロエチル)カーボネート、エチル(2-フルオロエチル)カーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、メチル(1-フルオロエチル)カーボネート、メチル(2-フルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネート、エチル(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、及び2,2,2-トリフルオロエチルプロピルカーボネート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメチルカーボネート等のフッ素化鎖状カーボネート;ギ酸2,2,2-トリフルオロエチル、酢酸2,2-ジフルオロエチル、酢酸2,2,2-トリフルオロエチル(以下、FEAという場合もある)、酢酸トリフルオロメチル、酢酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、2-フルオロプロピオン酸メチル、2-フルオロプロピオン酸エチル、2,2-ジフルオロプロピオン酸メチル、2,2-ジフルオロプロピオン酸エチル、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸エチル、2,2-ジフルオロプロピオン酸2,2,2-トリフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸2,2,2-トリフルオロエチル、2,3,3,3-テトラフルオロプロピオン酸メチル、2,3,3,3-テトラフルオロプロピオン酸エチル、ペンタフルオロプロピオン酸メチル、ペンタフルオロプロピオン酸エチル、ヘプタフルオロ酪酸メチル、ジフルオロ酢酸メチル、ジフルオロ酢酸エチル、ジフルオロ酢酸2,2,2-トリフルオロエチル、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸プロピル、トリフルオロ酢酸トリフルオロメチル、トリフルオロ酢酸2,2,2-トリフルオロエチル、トリフルオロ酢酸ペルフルオロエチル、トリフルオロ酢酸2,2,3,3-テトラフルオロプロピル等のフッ素化鎖状カルボン酸エステル等が挙げられる。
式(2)で表される化合物としては、炭素数3以上10以下のものが好ましく、特に炭素数3以上4以下のものが好ましい。具体的な化合物としては以下のものが挙げられる。
式(2)で表される非フッ素化環状エステルとしては、エチレンカーボネート(以下、ECという場合もある)、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネート等の環状カーボネートが挙げられる。
式(2)で表されるフッ素化環状エステルとしては、フルオロエチレンカーボネート(以下、FECという場合もある)、ジフルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等が挙げられる。
式(3)で表される非フッ素化環状エステルとしては、γ-ブチロラクトン、2-メチル-γ-ブチロラクトン、3-メチル-γ-ブチロラクトン、4-メチル-γ-ブチロラクトン、β-プロピオラクトン、及びδ-バレロラクトンが挙げられる。
式(3)で表されるフッ素化環状エステルとしては、これらのラクトンの1以上の水素原子がフッ素原子に置換されたものが挙げられる。
非フッ素化溶媒としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、及び1,2-ジブトキシエタンが挙げられる。
フッ素化溶媒としては、1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル(2,2,3,3テトラフルオロプロピル)エーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルフルオロメチルエーテル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルトリフルオロメチルエーテル、4,4,4,3,3,2,2-ヘプタフルオロブチルジフルオロメチルエーテル、4,4,3,2,2-ペンタフルオロブチル(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、ジフルオロメチル(1,1,1-トリフルオロエチル)エーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル(3,3,3-トリフルオロエチル)エーテル及びジフルオロメチル(1,1,1,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2-トリフルオロメチル-2,3,3,3-テトラフルオロプロピル)メチルエーテル、1-(2-フルオロエトキシ)-2-メトキシエタン、1-(2,2-ジフルオロエトキシ)-2-メトキシエタン、1-メトキシ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、1-エトキシ-2-(2-フルオロエトキシ)エタン、1-(2,2-ジフルオロエトキシ)-2-エトキシエタン、1-エトキシ-2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン等が挙げられる。
CiH2i+1-bFb-O-CjH2j+1-kFk (4)
[式(4)中、iは1~8の整数であり、jは1~8の整数であり、bは0から2i+1までのいずれかの整数であり、kは0から2j+1までのいずれかの整数であり、b及びkのうち少なくとも一方は1以上の整数である。]
電池特性及び難燃性の点から、化合物中のフッ素含有量は60質量%以上のものが好ましい。またi+j=4~7であることが好ましく、i+j=4~6であることが更に好ましい。
非フッ素化リン酸誘導体としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリス(2-クロロエチル)、リン酸トリプロピル、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリトリル、リン酸メチルエチレン、及びリン酸エチルエチレンが挙げられる。
フッ素化リン酸誘導体又はフッ素化ホスホン酸誘導体としては、リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸トリス(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)、リン酸トリス(ヘキサフルオロ-イソプロピル)、(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)リン酸ジメチル、ビス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)リン酸メチル、及びリン酸トリス(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)、リン酸トリス(4-フルオロフェニル)及びリン酸ペンタフルオロフェニル、トリフルオロメチルホスホン酸ジメチル,トリフルオロメチルジ(トリフルオロメチル)ホスホン酸塩、(2,2,3,3-テトラフルオロプロピル)ホスホン酸ジメチル、フェニルジ(トリフルオロメチル)ホスホン酸塩及び4-フルオロフェニルホスホン酸ジメチル等が挙げられる。
なお、ここでいうFMPと式(1)で表されるフッ素化エステル化合物の合計体積とは、式(1)で表されるフッ素化エステル化合物を非含有である場合は、FMPの量である。
リチウム電解質としては4フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)や6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド(LiFSA)、リチウムビス(トリフルオロスルホニル)アミド(LiTSFA)が好適に挙げられる。電解質の濃度は、電解液を構成する溶媒中、例えば0.5mol/L以上3.0mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2.0mol/L以下であることがより好ましく、0.8mol/L以上1.8mol/L以下であることが更に好ましく、0.8mol/L以上1.5mol/L以下であることが最も好ましい。通常は、電解質であるリチウム塩は溶剤に1mol/L程度の濃度として使用されるが、電解質を濃くすればするほど蒸気圧降下によって引火性の溶剤蒸気圧が低下することから、これに伴って引火点や燃焼点も上昇するため、1.2mol/L以上とすることで安全性はより高くなる。
ホスファゼン化合物は、P=N結合を有する化合物である。本発明で用いるホスファゼン化合物は、下記一般式(I)で表される環状ホスファゼン化合物であることが、電池異常時等の高温環境下で分解し、消火作用を発揮する観点から好ましい。
Rとして表されるアルコキシ基としては、炭素数1~12、特に炭素数1~6のものが好ましく挙げられ、具体的には、メトキシ基やエトキシ基等が挙げられる。
Rとして表されるアリールオキシ基としては、炭素数6~14、特に炭素数6~10のものが好ましく挙げられ、具体的には、フェノキシ基やメチルフェノキシ基等が挙げられる。
Rとして表されるアルキル基としては、炭素数1~10、特に炭素数1~6のものが好ましく挙げられ、具体的には、メチル基やエチル基等が挙げられる。
Rとして表されるアミノ基としては、アミノ基の1又は2以上の水素原子が、アルキル基やアリール基で置換された置換型アミノ基を含み、メチルアミノ基などが挙げられる。
Rとして表されるアルキルチオ基としては、炭素数1~12、特に炭素数1~6のものが好ましく挙げられ、具体的には、メチルチオ基やエチルチオ基等が挙げられる。
また、FMPと組み合わせた時の非水電解液の難燃性を高める観点から、複数のRのうち、少なくとも一つがアルコキシ基であるものが好ましい。
その他の添加剤は非水電解液に添加することでリチウムイオン二次電池の特性を改善できることから非常に多くの種類が提案されている。通常はその添加量は例えば5%以下と少なく、またフッ素化エステルよりも引火点が高いことから、引火点、燃焼点に対して悪影響はない。
本発明の非水電解液は、引火点が40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。引火点は高ければ高いほど好ましく、引火点がないことが好ましい。なお、従来技術では、ホスファゼン化合物を用いた非水電解液で引火しない非水電解液は知られていない。
規定条件下で引火源を試料蒸気に近づけたとき、試料蒸気がせん(閃)光を発して瞬間的に燃焼し、かつ、その炎が液面上を伝ぱ(播)する試料の最低温度を 101.3 kPa の値に気圧補正した温度。」
「3.2 燃焼点(fire point)
規定条件下で引火源を試料蒸気に近づけたとき、試料蒸気がせん(閃)光を発して瞬間的に燃焼し、かつ、5秒間以上継続的に燃焼する試料の最低温度を 101.3 kPa の値に気圧補正した温度。」
具体的な方法は以下の通りである。
試料を試料カップの標線まで入れ、試料を毎分14~17℃の速度で上がるように加熱を調節し、試料の予期引火点より56℃低い温度に達したら加熱を弱め、予期引火点より23℃±5℃低い温度から毎分5~6℃の速度で上がるように加熱を調節する。温度計の読みが2℃上昇するごとに,試験炎を試料カップの上に通過させ,試料の蒸気に引火し、かつ、その炎が液面上を伝ぱ(播)する試料の最低温度を、室内の気圧における測定引火点とする。また試験をそのまま継続して、試料の蒸気に引火し、かつ、5秒間以上継続的に燃焼する試料の最低温度を室内の気圧における測定燃焼点とする。これらの温度は,数式を用いて標準気圧における値に補正し、それぞれ引火点及び燃焼点とする。予期引火点は、予備試験として室温から毎分5~6℃の昇温速度で昇温をはじめ、温度が2℃上昇するごとに引火を測定することで求めた。また、引火点が観測されない場合は、その沸点を予期引火点とした。
具体的な引火点及び燃焼点は、後述する実施例に記載の方法にて求めることができる。本明細書では、燃焼点の測定の上限は測定電解液の沸点とし、電解液の沸騰をもって燃焼点なしと判断する。なお、下記の実施例及び比較例において、測定対象の電解液の沸点は概ね100℃であった。
そこで、本発明者では、非水電解液についても可燃性液体の評価試験である引火点及び燃焼点測定によって不燃性の評価、及び難燃性の優劣を判定している。
次いで、本発明の非水電解液電池について説明する。本発明の非水電解液電池は、正極と負極とを備え、電解質として、本発明の非水電解液を含むものであり、好適にはリチウムイオン二次電池である。
負極は、負極集電体、負極活物質層からなる。負極活物質層は、負極活物質を含むいわゆる負極合材から形成され、必要に応じて導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。負極活物質としては、例えば炭素材料、ケイ素(Si)、Sn等の金属又は半金属、Si酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物、ポリリン酸化合物等が挙げられる。
正極は、正極集電体、正極活物質層からなる。正極活物質層は、正極活物質を含むいわゆる正極合材から形成され、必要に応じて導電補助剤、結着剤、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
正極用結着剤としては、負極用結着剤と同様のものと用いることができる。中でも、汎用性や低コストの観点から、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。
正極活物質を含む正極活物質層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助剤を添加してもよい。導電補助剤としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子が挙げられる。
セパレータとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、アラミド等の多孔質フィルムや不織布を用いることができる。これらの樹脂を複合してもよい。また、セパレータとしては、それらを積層したものを用いることもできる。なお、セパレータと電極との間に、無機層が配設されていても良い。
外装体としては、電解液に安定で、かつ十分な水蒸気バリア性を持つものであれば、適宜選択することができ、本発明に係る非水電解液電池の構成については特に限定されるものではなく、コイン状、円筒状、角形、アルミラミネートシート型等の形状の非水電池が組み立てられる。
FECとFMPとを体積比20対80で混合した溶媒に、LiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解した後、ホスファゼン化合物として日本化学工業社製ヒシコーリンE(一般式(I)において、pが3であり、6個のRのうち5個がフッ素原子であり、1個がエトキシ基である化合物)を非水電解液中2質量%の含有率となるように添加して非水電解液を調製した。
LiPF6の量を、溶媒中1.2mol/Lに変更した以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
ECとFMPとを体積比20対80で混合して溶媒を調製した。その点以外は実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
FECとFMPとFEAとを体積比10対50対40で混合して溶媒を調製した。その点以外は実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
ヒシコーリンEの量を非水電解液中5質量%とした以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
ECとEMCとを体積比30対70で混合して溶媒を調製し、ヒシコーリンEの添加量を表1に示す通りとした。その点以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
ヒシコーリンEを添加しなかった。この点以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
ECとDMCとEMCとを体積比30対40対30で混合して溶媒を調製した。また、ヒシコーリンEの量を表1に示す量とした。それらの点以外は実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
ヒシコーリンEを添加しなかった。この点以外は実施例4と同様にして非水電解液を調製した。
実施例1~5及び比較例1~6で得られた非水電解液はアントンパール製クリーブランド引火点測定機CLA5または田中科学機器試作製クリーブランド引火点測定機ace-8を用い、JIS 2265-4:2007に準じて引火点と燃焼点の測定を行った。引火点や燃焼点は燃焼の自動検出機能によって測定されるが、ホスファゼン化合物を添加した電解液は試料容器直上まで火炎が伝播しにくいため装置の検出器が反応しない場合がある。その場合は、目視による引火点の確認温度を採用し、燃焼時間についてはストップウォッチを用いて計測を行った。上述した通り、燃焼点の測定の上限は測定電解液の沸点とし、電解液の沸騰をもって燃焼点なしと判断した。
一方、一般的な電解液では比較例3に示すように、ホスファゼン化合物を10質量%混合しても燃焼点が無くなることはなかった。添加量が10質量%であるため、電池特性への影響が懸念される。比較例4のようにフッ素化エステルを主成分としていてもホスファゼン化合物を添加しない場合の燃焼点は60℃であった。したがって、FMPとホスファゼン化合物の相乗効果により、燃焼点が観測されない状態まで自己消火性が改善されたと言える。
ヒシコーリンEを添加しなかった。この点以外は実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
ヒシコーリンEの添加量を非水電解液中5質量%とした。この点以外は実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
ヒシコーリンEの添加量を非水電解液中10質量%とした。この点以外は実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
LiPF6の濃度を1.2mol/Lから1.5mol/Lに変更した。その点以外は実施例6と同様として非水電解液を調製した。
LiPF6の濃度を1.2mol/Lから1.5mol/Lに変更した。その点以外は実施例7と同様として非水電解液を調製した。
LiPF6の濃度を1.5mol/Lから1.8mol/Lに変更した。その点以外は実施例9と同様として非水電解液を調製した。
LiPF6の濃度を1.5mol/Lから1.6mol/Lに変更し、またFECの量とFMPとの量比を体積比29:71に変更した。その点以外は実施例8と同様にして非水電解液を調製した。
ヒシコーリンEの量を非水電解液中5質量%に変更し、またLiPF6を溶媒中2.7mol/Lとなる量に変更した。その点以外は実施例10と同様として非水電解液を調製した。
LiPF6の濃度を1.5mol/Lから1.8mol/Lに変更した。また1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(HFE347 pc-f)を、非水電解液中5質量%(FECとFMPの合計体積100容量部に対して6容量部)添加した。それらの点以外は実施例8と同様として非水電解液を調製した。
1,1,2,2-テトラフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(HFE347 pc-f)の添加量を非水電解液中10質量%(FECとFMPの合計体積100容量部に対して13容量部)とした。それらの点以外は実施例13と同様として非水電解液を調製した。
ヒシコーリンEの添加量を非水電解液中2質量%とした。それらの点以外は実施例14と同様として非水電解液を調製した。
HFE347 pc-fの代わりに、3M社製のNOVEC7100を非水電解液中10質量%(FECとFMPの合計体積100容量部に対して12容量部)添加した以外は、実施例14と同様にして非水電解液を調製した。NOVEC7100はC4F9OCH3からなる。
HFE347 pc-fの代わりに、3M社製のNOVEC7200を非水電解液中10質量%(FECとFMPの合計体積100容量部に対して13容量部)添加した以外は、実施例14と同様にして非水電解液を調製した。NOVEC7200はC4F9OC2H5からなる。
HFE347 pc-fの代わりに、3M社製のNOVEC7300を非水電解液中10質量%(FECとFMPの合計体積100容量部に対して11容量部)添加した以外は、実施例14と同様にして非水電解液を調製した。NOVEC7300はC2F5CF(OCH3)C3F7からなる。
HFE347 pc-fを添加せず、C3F7COOCH3(ヘプタフルオロ酪酸メチル)を非水電解液中10質量%(FECとFMPの合計100容量部に対して13容量部)添加した以外は、実施例14と同様にして非水電解液を調製した。
LiPF6を用いず、溶媒として、FMPのみを用いた。その点以外は比較例1と同様とした。
LiPF6を用いず、溶媒として、EMCのみを用いた。その点以外は比較例1と同様とした。
結果を表5に示す。
[二次電池の作製]
<正極の作製>
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)93質量部を用い、アセチレンブラック4質量部とポリフッ化ビニリデン3質量部を混合し、N-メチル-2-ピロリドンを加えスラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔の片面に均一に12.7mg/cm2となるように塗布、乾燥した後、正極活物質層の密度が2.8g/cm3になるようにプレスして正極とした。
黒鉛(日立化成MAG-D)97質量部に、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)と、バインダーとしてスチレン-ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度50質量%)を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に7.5mg/cm2となるように塗布して乾燥し、その後、負極活物質層の密度が1.36g/cm3になるようにプレスして負極とした。また、スラリーは乾燥後の負極において、黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレン-ブタジエンゴム=97.3:1.5:1.2の質量比となるように作成した。
前記の正極及び負極それぞれの塗工面を、セパレータを挟んで互いに対向させた。セパレータにはポリプロピレン製、厚み20μm、空孔率54%のものを用いた。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、前述の電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。更に、電極間の密着性を高めるために、アルミ板でシート状電池を挟んで加圧した。
<出力特性の測定>
45℃の恒温槽中、シート状の非水系電解液二次電池を1Cで20分充電後、15時間休止させ、その後4.2Vまで0.2Cで定電流-定電圧充電し、これに続いて0.2Cで2.75Vまで定電流放電した。その後、4.2Vまでの定電流-定電圧充電と、これに続く2.75Vまでの定電流放電とを、0.2C、1C,0.2Cの順番で繰り返して初期のコンディショニングを行った。続いて、4.2Vまでの0.2Cで定電流-定電圧充電と、これに続く0.2Cで2.75Vまでの定電流放電とを行って、その放電容量を出力特性の基準とした。次に、4.2Vまでの0.2C定電流-定電圧充電と、これに続く2.75Vまでの定電流放電を、放電電流は0.5C、1C、2C、3C、5C、7C、10Cの順番で変更しながら繰り返した。これにより0.2Cの放電容量に対する5C、7C、10C時の放電容量比を求めた。なお、1Cとは電池の全容量を1時間で放電させる場合の電流値のことである。
特に、リチウム電解質の量が同レベルである実施例4及び6では、0.2C容量に対する効率放電容量10Cが実施例4の方が高く、出力特性を維持しながらも安全性に優れた電解液であると言える。
更に、実施例14の放電容量が高いことから、FMPの存在下においては、フッ素化エーテル溶媒の添加によっても出力特性に優れた電解液が得られることが判る。
Claims (11)
- 3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチル以外のフッ素化エステル化合物を更に含有する請求項1に記載の非水電解液。
- 前記3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチル以外のフッ素化エステル化合物が、フルオロエチレンカーボネート又は酢酸2,2,2-トリフルオロエチルである、請求項2に記載の非水電解液。
- ホスファゼン化合物の含有量が0.1質量%以上20質量%以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の非水電解液。
- ホスファゼン化合物の含有量が0.1質量%以上9質量%以下である、請求項1~3の何れか1項に記載の非水電解液。
- 更に、下記一般式(4)で表されるフッ素化鎖状エーテルを含む、請求項1~5の何れか1項に記載の非水電解液。
CiH2i+1-bFb-O-CjH2j+1-kFk (4)
(式中、iは1~8の整数であり、jは1~8の整数であり、bは0から2i+1までのいずれかの整数であり、kは0から2j+1までのいずれかの整数であり、b及びkのうち少なくとも一方は1以上の整数である。) - 非水電解液中の全溶剤体積に対して、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチルの含有量が30体積%以上である、請求項1~6の何れか1項に記載の非水電解液。
- 非水電解液中の全溶剤体積に対して、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸メチル以外のフッ素化エステル化合物の量が5体積%以上70体積%以下である、請求項2又は3に記載の非水電解液。
- 正極と負極とを備え、請求項1~8の何れか1項に記載の非水電解液を含む非水電解液電池。
- 一般式(I)におけるRがそれぞれ独立してハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基及びアルキルチオ基から選ばれる基を表す、請求項1~8の何れか1項に記載の非水電解液。
- 一般式(I)におけるRのうち少なくとも一つがアルコキシ基である、請求項1~8の何れか1項に記載の非水電解液。
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