特許法第30条第2項適用 ・平成30年度土木学会全国大会予稿集DVD版 (平成30年8月1日発行 公益社団法人土木学会発行) ・平成30年度土木学会全国大会、第73回年次学術講演会(平成30年8月29日~31日、北海道大学札幌キャンパスにて開催) ・奥村組技術研究年報 No.44 (平成30年9月1日 株式会社奥村組発行)
本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル天井面研掃方法は、図1及び図3に示すように、例えば供用開始から30年以上経過して古くなった、ボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面53を、乾式研掃機30を備えるトンネル天井面研掃装置10(以下「研掃装置」とする。)を用いて、効率良く研掃してゆくための方法として採用されたものである。
すなわち、鉄道トンネルの場合、一対のレール部材57aからなる鉄道軌道57上を走行移動することが可能な、トロリー台車等の移動台車51に積み込んで、研掃装置10を天井面53の研掃箇所まで移動させるようになっており、移動台車51に積み込まれた研掃装置10は、鉄道軌道57の延長方向Yには任意の位置に移動できる一方で、鉄道軌道57の延長方向Yと垂直な横幅方向Xへの移動が、鉄道軌道57の敷設位置によって制約されることになる。このため、例えば研掃箇所の天井面53の横幅方向Xの幅が、車両限界の横幅よりも広くなっている場合には、研掃箇所の天井面53の横幅方向Xの両側部分に、研掃装置10では研掃できない研掃残り部が生じ易くなるが、本実施形態のトンネル天井面研掃方法は、このような研掃箇所の天井面53の横幅方向Xの両側部分に、研掃装置10では研掃できない研掃残り部が生じるのを効果的に抑制して、ボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面53を、乾式研掃機30を備える研掃装置10によって、効率良く研掃してゆくことができるようにする機能を備えている。
そして、本実施形態のトンネル天井面研掃方法は、ボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面53を、乾式研掃機30を用いて研掃するための、鉄道軌道57の上を走行可能な移動台車51に積み込んで用いる研掃装置10による研掃方法である。研掃装置10は、図1~図3に示すように、矩形の平面形状を備えるベースフレーム部11と、ベースフレーム部11に支持させて昇降可能に設けられた、矩形の平面形状を備える昇降フレーム部12,13と、昇降フレーム部12,13を昇降させる昇降機14,15,16と、昇降フレーム部12,13の昇降を案内するガイド支柱部17と、昇降フレーム部12,13の上面部に取り付けられた移動レール部18によって、昇降フレーム部12,13の矩形の平面形状の長辺方向及び短辺方向に移動可能に設けられた乾式研掃機30とを含んで構成されている。研掃装置のベースフレーム部11の下端部には、研掃装置10を支持して鉄道軌道57の延長方向Yと交差する横幅方向Xに移動させる、好ましくはチルタンクからなる横行移動部材60が取り付けられており、移動台車51と横行移動部材60との間に介在して、横行移動部材61の横幅方向Xの移動を案内する、好ましくは開放面を上に向けて敷設された溝形鋼からなる横行ガイド部材61が敷設されている。
また、本実施形態のトンネル天井面研掃方法は、研掃装置10及び横行ガイド部材61を、車両限界の横幅を超えない領域に納めると共に、横行移動部材60を固定して移動台車51に積み込んだ状態で、鉄道軌道57に沿って天井面53の研掃箇所まで研掃装置10を移動させる工程と、天井面53の研掃箇所において、移動台車51を固定すると共に、好ましくは研掃装置10をジャッキアップし、しかる後に敷設された横行ガイド部材61を、車両限界の横幅を超える所定の位置まで引き出して敷設し直すことにより、横行ガイド部材61を、車両限界の横幅を超える所定の位置まで張り出させる工程と、好ましくは敷設し直された横行ガイド部材61の上に、ジャッキダウンした研掃装置10の横行移動部材60を載置し直し、固定を解除した横行移動部材60によってトンネル天井面研掃装置10を、車両限界の横幅を超える所定の位置まで横幅方向Xに移動させる工程と、研掃装置10を車両限界の横幅を超える所定の位置まで移動させた状態で、乾式研掃機30を移動レール部18に沿って前後左右に移動させながら、天井面53を研掃する工程とを含んで構成されている。
本実施形態のトンネル天井面研掃方法によって天井面53が研掃される、ボックスカルバート型の鉄道トンネルは、例えば現場打ちコンクリートやプレキャストコンクリートによる公知の工法を用いて形成された、中空の矩形断面形状を有するトンネルとなっている。
本実施形態では、研掃装置10が搭載される鉄道軌道57の上を走行可能な移動台車51は、研掃装置10を積み込むのに十分な面積を備える台車であって、例えば鉄道軌道57に沿って移動可能な台車として公知の、トロリー台車を好ましく用いることができる。本実施形態では、例えば自走可能な公知の牽引車両58(図4参照)が、移動台車51を牽引することにより、移動台車51に積み込まれた研掃装置10を、天井面53の研掃箇所まで搬送できるようになっている。
また、本実施形態では、移動台車51に、研掃装置10の他、制御盤54や、発電機56a、集塵機56b、コンプレッサー56c等を積み込むこともできるが、1台の移動台車51に、これらの装置や機器を全て積み込むことができない場合には、図4に示すように、連結された補助台車55に、例えば制御盤54、発電機56a、集塵機56b、コンプレッサー56c等を積み込んだ状態で、天井面53の研掃箇所まで搬送することが可能である。そして、天井面53の研掃箇所では、これらの機器と研掃装置10とを、例えばワンタッチ継手やカムロックやコネクター等の接続手段59を用いて接続して、天井面53の研掃作業を行うようになっている。
本実施形態のトンネル天井面研掃方法に用いる研掃装置10は、上述のように、矩形の平面形状を備えるベースフレーム部11と、ベースフレーム部11に支持させて昇降可能に設けられた、矩形の平面形状を備える昇降フレーム部12,13と、昇降フレーム部12,13を昇降させる、少なくとも前部及び後部に設けられた昇降機14,15,16と、昇降フレーム部12,13の昇降を案内するガイド支柱部17と、昇降フレーム部12,13の上面部に取り付けられた移動レール部18によって、昇降フレーム部12,13の矩形の平面形状の長辺方向及び短辺方向に移動可能に設けられた乾式研掃機30と、上段昇降フレーム部(昇降フレーム部)13の先端部分及び後端部分に取り付けられた距離センサー19とを含んで構成されている。
研掃装置10を構成するベースフレーム部11は、例えば溝形鋼や山形鋼等を組み付けることにより形成され、移動台車51に納まる大きさとして、例えば左右方向の幅が2000mm、前後方向の長さが3500mm程度の大きさの、矩形の平面形状を有している。ベースフレーム部11は、本実施形態では、移動台車51に載置される下段ベースフレーム部11aと、上段ベースフレーム部11bとからなる、2段構造を備えている。これらの下段ベースフレーム部11aと上段ベースフレーム部11bは、例えば周方向に間隔をおいて立設して配置された複数本の連結縦フレーム(図示せず)を介して、例えば上下方向に450mm程度の間隔を置いた状態で、一体として連結されることで、例えば700mm程度の高さの、2段構造の骨組み形状のベースフレーム部11を形成している。
ベースフレーム部11には、図5にも示すように、4箇所の角部分の内側に各々配置されて、後述するガイド支柱部17の内側筒体17aが、下段ベースフレーム部11a及び上段ベースフレーム部11bに下端部分を支持させて(図1参照)、立設した状態で固定されている。また、ベースフレーム部11には、上段ベースフレーム部11bの内側に適宜設けられた支持プレート11cや支持梁11dに支持させて(図5参照)、下段昇降機14の下部固定部14aが固定されていたり、下段昇降機14の上部伸縮部14bを伸縮させるための、伸縮駆動機構40が取り付けられている。伸縮駆動機構40は、一台の駆動モータ40aを用いて、4箇所の下段昇降機14を、同時に、同じ高さで昇降させることが可能な機構となっている。
ベースフレーム部11に支持させて昇降可能に設けられた昇降フレーム部12,13は、本実施形態では、上述のように、下段昇降フレーム部12と、上段昇降フレーム部13とからなる2段構造を有している。下段昇降フレーム部12は、例えば溝形鋼や山形鋼等を組み付けることにより形成され、ベースフレーム部11と同様の、例えば左右方向の幅が2000mm程度、前後方向の長さが3500mm程度の大きさの、矩形の平面形状を備えている。
下段昇降フレーム部12には、図6にも示すように、4箇所の角部分の内側に各々配置されて、後述するガイド支柱部17の外側筒体17bが、当該下段昇降フレーム部12に固定されて、上方に立設した状態で取り付けられている。また、下段昇降フレーム部12には、当該下段昇降フレーム部12の内側に適宜設けられた支持プレート12cや支持梁12dに支持させて、上段昇降機15,16の下部固定部15a,16aが固定されていたり、上段昇降機15,16の上部伸縮部15b,16bを伸縮させるための、伸縮駆動機構41が取り付けられている。上段昇降機15,16は、下段昇降フレーム部12の前部及び後部に各々一対設けられている。伸縮駆動機構41は、前部の上段昇降機15と後部の上段昇降機16とを、別々の駆動モータ41aを用いて、異なる高さで個別に昇降させることが可能な機構となっている。前部の上段昇降機15を後部の上段昇降機16よりも多く伸縮させたり、後部の上段昇降機16を前部の上段昇降機15よりも多く伸縮させたりすることによって、下段昇降フレーム部12に対して上段昇降フレーム部13を、傾斜させることができるようになっている。ベースフレーム部11に固定された下段昇降機14の直上部分に配置された支持プレート12cの下面側には、下段昇降機14の上部伸縮部14bの上端接合部14c(図1参照)が接合されており、これにより下段昇降フレーム部12を、下段昇降機14の上部伸縮部14bの伸縮によって、ベースフレーム部11に対して上下に昇降させることができるようになっている。
上段昇降フレーム部13は、例えば溝形鋼や山形鋼等を組み付けることにより形成され、図7及び図8に示すように、本体フレーム部13aと、本体フレーム部13aの長さ方向(鉄道軌道57の延長方向Y)の両側の端部に、回転可能に各々連結された回転フレーム部13bとを含んで構成されている。本体フレーム部13aは、横幅方向Xの幅が下段昇降フレーム部12の幅と同様の、例えば2000mm程度、鉄道軌道57の延長方向Yの長さが下段昇降フレーム部12の長さよりも短い、例えば2500mm程度の大きさの、矩形の平面形状を備えている。本体フレーム部13aを形成する、長さ方向(鉄道軌道57の延長方向Y)の両端部の短辺部分に設けられた端部溝形鋼13eの上端面と、これらの端部溝形鋼13eの中間部分にこれらと平行に延設して設けられた中間部溝形鋼13fの上端面には、各々、後述する移動レール部18を構成する左右方向レール部材18aが敷設されている。
回転フレーム部13bは、各々、横幅方向Xの幅が本体フレーム部13aの幅と同様の、例えば2000mm程度、鉄道軌道の延長方向Yの長さが本体フレーム部13aの長さよりも短い、例えば500mm程度の大きさの、横長の矩形の平面形状を備えている。これによって上段昇降フレーム部13は、全体として、下段昇降フレーム部12と同様の、例えば横幅方向Xの幅が2000mm程度、鉄道軌道の延長方向Yの長さが3500mm程度の大きさの、矩形の平面形状を備えることになる。
回転フレーム部13bは、両端部に雄ネジ部が形成された回転軸部材42を、本体フレーム部13aの長さ方向の両端部分から外側に張り出して設けられた張出し部43aを有する複数のリブプレート43の、当該張出し部43aに形成された挿通孔に挿通すると共に、回転軸部材42の両端部を、横幅方向Xの最も外側に設けられた両側のリブプレート43に各々締着することによって、本体フレーム部13aの前後方向の両端部に、回転可能に連結された状態で各々取り付けられている。
回転フレーム部13bには、これの横幅方向Xの両端部の内側に配置されて、例えば正方形の枠形状を備える筒体取付枠部13cが、各々形成されている。筒体取付枠部13cの内側には、下段昇降フレーム部12に固定されたガイド支柱部17の外側筒体17bの、正方形の外周断面形状と略同様の、正方形の内周断面形状を備えるスライド筒体13dが、一体として取り付けられている。スライド筒体13dは、ガイド支柱部17の外側筒体17bを内側に挿通させた状態で、外側筒体17bに装着されていることで、外側筒体17bの外周面に沿って上下にスライド移動することができるようになっている。これによって上段昇降フレーム部13を、下段昇降フレーム部12に取り付けられた外側筒体17bに案内させて、上下に昇降させることができるようになっている。
また、回転フレーム部13bには、横幅方向Xの両端部の筒体取付枠部13cの内側に各々隣接して、支持プレート13gが、下段昇降フレーム部12に固定された上段昇降機15,16の直上部分に配置されて取り付けられている。これらの支持プレート13gの下面には、前部の上段昇降機15や後部の上段昇降機16の、上部伸縮部15b,16bの上端接合部15c,16cが、各々接合されている。これにより、前部の上段昇降機15や後部の上段昇降機16の上部伸縮部15b,16bを伸縮させることによって、回転フレーム部13bと共に本体フレーム部13aを、上下に昇降させることができるようになっている。
上段昇降フレーム部(昇降フレーム部)13の上面部に取り付けられた移動レール部18は、図9に示すように、乾式研掃機30を横幅方向Xに移動させる左右方向レール部材18aと、乾式研掃機30を鉄道軌道の延長方向Yに移動させる前後方向レール部材18bとを含んで構成されている。左右方向レール部材18aは、上述のように、本体フレーム部13aを形成する一対の端部溝形鋼13e及び中間部溝形鋼13fの上端面に敷設されて、本体フレーム部13aの幅方向に平行に延設して3列に設けられている。左右方向レール部材18aの上には、前後方向レール部材18bを敷設した横行フレーム部46が、横幅方向Xに走行移動可能に載置されている。
横行フレーム部46は、図1~図3にも示すように、例えば溝形鋼や山形鋼等を組み付けることにより形成され、例えば左右方向の幅が600mm程度、前後方向の長さが下段昇降フレーム部12の長さよりも若干長い、例えば3700mm程度の大きさの、前後方向に縦長の矩形の平面形状を備えている。横行フレーム部46を形成する、左右一対の長辺部分に配置された長辺部溝形鋼46aの上端面には、前後方向レール部材18bが各々敷設されている。前後方向レール部材18bの上には、乾式研掃機30が、前後方向に走行移動可能に載置されている。
また、横行フレーム部46には、当該横行フレーム部46を上段昇降フレーム部13の上面部に敷設された左右方向レール部材18aに沿って走行移動させるための、走行車輪46bや走行駆動装置46c(図1~図3参照)が取り付けられている。移動レール部18は、本実施形態では、左右方向レール部材18a及び前後方向レール部材18bの他、横行フレーム部46や、走行車輪46b、走行駆動装置46c等を含んで構成されている。
移動レール部18によって、上段昇降フレーム部13の長辺方向(鉄道軌道の延長方向Y)及び短辺方向(横幅方向X)に移動可能に設けられた乾式研掃機30は、図10(a)~(c)に示すように、走行基台部31と、走行基台部31との間にロードセル32を介在させて走行基台部31の上方に配置された中間プレート部33と、中間プレート部33との間にエアシリンダー34を介在させて中間プレート部33のさらに上方に配置された研掃機取付けプレート35と、研掃機取付けプレート35に支持されて取り付けられた研掃機本体36とを含んで構成される。走行基台部31の4箇所の角部分から上方に立設して、ガイドシャフト37が設けられており、これらのガイドシャフト37に、研掃機取付けプレート35の4箇所の角部分に設けられたリニアブッシュ38を各々装着することによって、これらのガイドシャフト37やリニアブッシュ38にガイドさせて、研掃機取付けプレート35を、エアシリンダー34の伸縮に伴って、安定した状態で上下に昇降させることができるようになっている。
研掃機本体36は、コンクリートの床面等を研掃して平坦な作業面を形成することが可能な、公知の種々の研削機に、適宜改良を加えることによって用いることができる。このような研削機として、例えば商品名「新型トルネード」(CRT株式会社製)を好ましく用いることができる。研掃機本体36は、切削ディスク36aや、吸引集塵装置36bや、駆動モータ36c等を備えている。また、切削ディスク36aの周囲を囲むようにして、可撓性を備えるヘラ部材やブラシ状部材等からなる飛散防止部材(図示せず)が設けられている。これによって、切削ディスク36aを上向きにした状態で、ボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面53に押し付けて研削する際に生じる粉塵が、研掃機本体36の外に漏れ出るのを、効果的に回避することが可能になる。研掃機本体36に接続して、排出管49が設けられている(図1、図2参照)。
乾式研掃機30の走行基台部31には、横行フレーム部46の長辺部溝形鋼46aの上端面に敷設された前後方向レール部材18bに沿って乾式研掃機30を走行移動させるための、走行車輪31aや走行駆動装置31bが取り付けられている。これによって、乾式研掃機30は、横行フレーム部46の上面部に敷設された前後方向レール部材18bに沿って、上段昇降フレーム部13の長辺方向に走行移動できるようになっていると共に、横行フレーム部46を上段昇降フレーム部13の上面部に敷設された左右方向レール部材18aに沿って走行移動させることで、上段昇降フレーム部13の短辺方向にも移動できるようになっている。
乾式研掃機30の中間プレート部33と研掃機取付けプレート35との間に介在して伸縮可能に配置されたエアシリンダー34は、研掃機取付けプレート35の前部と後部に各々取り付けられており、走行基台部31と中間プレート部33との間に介在するロードセル32によって計測される、研掃機本体36による鉄道トンネルの天井面53への押付け力が、例えば0.3~0.9Mpaとなるように、研掃機取付けプレート35を昇降させた状態で、研掃機本体36の切削ディスク36aを天井面53に押し付けることができるようになっている。研掃機取付けプレート34を昇降させるシリンダー部材として、エアシリンダー34を用いたことにより、鉄道トンネルの天井面53に存在する例えば±40mm程度の凹凸に追随させて、これらの凹凸を吸収することが可能になる。
本実施形態では、上段昇降フレーム部(昇降フレーム部)13の先端部分及び後端部分に取り付けられて、鉄道トンネルの天井面53との離れ又は天井面53との接触を検出する距離センサー19は、例えば天井面53との接触を検出する接触式のセンサーとなっている。距離センサー19は、図1、図3、及び図8に示すように、上段昇降フレーム部13の回転フレーム部13bの左右方向の両側の端部から各々前後方向に張り出して設けられた、張出し支持プレート47の先端部分から立設する立設ロッド48の先端部に取り付けられることで、乾式研掃機30の研掃機本体36の切削ディスク36aと同様の高さ位置に配置されて、上段昇降フレーム部13の先端部分及び後端部分に各々一対ずつ、合計4箇所に設けられている。
距離センサー19は、図11に示すように、バネ部材19bにより上方に付勢された状態で設けられたセンサー本体19aや、リミットスイッチ19c、スイッチアジャスター19d等を含んで構成される公知のセンサーであって、センサー本体19aがバネ部材19bによる付勢力に抗して押し込まれることで、天井面53との接触を検出できるようになっている。また、距離センサー19として、接触式のセンサーの他、例えば天井面53に向けて電磁波を放射した際の反射波を検知することで、鉄道トンネルの天井面53との離れを検出することが可能な、公知の各種の非接触式のセンサーを用いることもできる。距離センサー19として、非接触式のセンサーを用いる場合には、距離センサー19を、乾式研掃機30の研掃機本体36の切削ディスク36aと同様の高さ位置に配置する必要がなくなる。距離センサー19は、後述するように、上段昇降フレーム部(昇降フレーム部)13が、鉄道トンネルの天井面53の縦断勾配に沿って当該天井面53と平行又は略平行に配置されるように調整する。
本実施形態では、昇降フレーム部12,13の昇降を案内するガイド支柱部17は、上述のように、ベースフレーム部11から立設して取り付けられた内側筒体17aと、下段昇降フレーム部12に固定されて取り付けられた外側筒体17bとを含んで構成されている。図1~図3に示すように、内側筒体17aは、例えば5mm程度の肉厚を有し、1辺が例えば250mm程度の大きさの正方形の中空断面形状を有する角筒形状の鋼管部材からなる。内側筒体17aは、例えば1800mm程度の長さを有している。内側筒体17aは、ベースフレーム部11の4箇所の角部分の内側部分において、下段ベースフレーム部11a及び上段ベースフレーム部11bに跨るようにして下端部分をこれらのフレームに支持させて(図1、図3参照)、立設した状態で固定されている。内側筒体17aは、これの上方部分を、上段ベースフレーム部11bから例えば1100mm程度の高さで突出させた状態で、ベースフレーム部11の4箇所の角部分に各々取り付けられている。
外側筒体17bは、例えば4.5mm程度の肉厚を有し、内側に内側筒体17aを摺動可能に挿通できる大きさとして、1辺が例えば277mm程度の大きさの正方形の中空断面形状を有する角筒形状の鋼管部材からなる。外側筒体17bは、例えば1300mm程度の長さを有している。外側筒体17bは、下段昇降フレーム部12の4箇所の角部分の内側部分において、当該下段昇降フレーム部12に固定されて、上方及び下方に延設した状態で取り付けられている。外側筒体17bは、下方部分を、下段昇降フレーム部12から下方に例えば270mm程度の長さで突出させると共に、上方部分を、下段昇降フレーム部12から上方に例えば960mm程度の高さで立設させた状態で固定されている。
外側筒体17bは、内側に内側筒体17aを挿通しつつ、内側筒体17aの上方から内側筒体17aの外側を覆うようにして装着されることで、内側筒体17aと共に2重の筒状部分を形成する。これによって、ガイド支柱部17は、ベースフレーム部11と下段昇降フレーム部12との間に介在して取り付けられた下段昇降機14(図1参照)の伸縮に伴って、内側筒体17aに対して外側筒体17bをスライド移動させることで伸縮して、下段昇降フレーム部12の昇降を案内できるようになっている。
また、本実施形態では、上述のように、4箇所の角部分に設けられた外側筒体17bにおける、下段昇降フレーム部12から上方に立設する上方部分には、各々、上段昇降フレーム部13の回転フレーム部13bの筒体取付枠部13cに取り付けられたスライド筒体13dが、上下にスライド移動可能に装着されている。スライド筒体13dは、本実施形態では、例えば4.5mm程度の肉厚を有し、内側に外側筒体17bを摺動可能に挿通できる大きさとして、1辺が例えば304mm程度の大きさの正方形の中空断面形状を有する角筒形状の鋼管部材からなる。スライド筒体13dは、例えば400mm程度の長さを有している。スライド筒体13dは、上段昇降フレーム部13の回転フレーム部13bにおける4箇所の角部分の内側部分において、筒体取付枠部13cに取り付けられて、下方に延設した状態で設けられている。
スライド筒体13dは、内側に外側筒体17bを挿通しつつ、外側筒体17bの上方から外側筒体17bの周囲を囲むようにして装着される。これによって、スライド筒体13dは、下段昇降フレーム部12と上段昇降フレーム部13との間に介在して取り付けられた上段昇降機15,16(図3参照)の伸縮に伴って、外側筒体17bの外周面に沿ってスライド移動することで、上段昇降フレーム部13を、下段昇降フレーム部12に取り付けられた外側筒体17bに案内させつつ、昇降させることができるようになっている。
そして、本実施形態では、図1及び図2に示すように、研掃装置10を構成するベースフレーム部11の下端部には、研掃装置10を支持して鉄道軌道57の延長方向Yと交差する横幅方向Xに移動させる横行移動部材60が取り付けられており、移動台車51の平坦な上面と横行移動部材60との間に介在して、横行移動部材60の横幅方向Xの移動を案内する横行ガイド部材61が敷設されている。
本実施形態では、横行移動部材60は、好ましくは、重量物移動用のエンドレスコロとして公知の部材であるチルタンクを用いることができる。チルタンク60は、センタープレートの周囲にローラを配し、リングプレートとピンによってエンドレスに連結したものとなっており、フレームと接地ローラのみに荷重がかかる、シンプルな構造を備えている。チルタンク60は、矩形の平面形状を有するベースフレーム部11を構成する、下段ベースフレーム部11aの4箇所の角部分に、下段ベースフレーム部11aの下面側に接合されて、矩形の平面形状の短辺方向に接地ローラの回転方向を沿わせた状態で、各々取り付けられている。
また、横行ガイド部材61は、好ましくは、公知の溝形鋼を用いることができる。溝形鋼は、一対のリブプレートの間隔部分にチルタンク60を収容可能な大きさの収容凹部を備えており、開放面を上に向けた状態で、移動台車51の平坦な上面に、鉄道軌道57の延長方向Yと交差する横幅方向X(移動台車51の横幅方向)に沿って敷設されている。溝形鋼による横行ガイド部材61は、移動台車51の横幅と同様の長さを備えており、移動台車51の前端部分及び後端部分に、一対敷設されると共に、各々の横行ガイド部材61による上方に向けて開放された収容凹部には、ベースフレーム部11の前端部及び後端部に設けられた各一対のチルタンク60が、各々収容されている。溝形鋼による横行ガイド部材61は、研掃装置10が移動台車51に積み込まれて天井面53の研掃箇所まで搬送されている間は、移動台車51から横幅方向に張り出さない状態で、移動台車51の上面に敷設されている(図12(a)参照)。
上述の構成を備える研掃装置10を用いて、ボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面53を研掃するには、まず、研掃装置10及び横行ガイド部材61を、車両限界の横幅を超えない領域に納めると共に、横行移動部材60をレバーブロック(登録商標)等を用いて固定して移動台車51に積み込んだ状態で、鉄道軌道57に沿って天井面53の研掃箇所まで、研掃装置10を移動させる。研掃装置10と共に移動させた移動台車51は、天井面53の研掃箇所に至ったら、当該研掃箇所おいて固定される。移動時には、研掃装置10は、下段昇降フレーム部12及び上段昇降フレーム部13を、最も下降させた状態とする(図12(a)参照)。これによって、最上部に配置される乾式研掃機30や距離センサー19が、車両限界を超えない高さに配置されるようにして、トンネル天井面研掃装置10を移動台車51に積み込むことが可能になって、鉄道トンネルにおける天井面53の研掃箇所まで、研掃装置10をスピーディーに搬送することが可能になる。
研掃装置10と共に移動させた移動台車51を、天井面53の研掃箇所において固定したら、好ましくは研掃装置10を、例えば爪付油圧ジャッキを用いて移動台車51からジャッキアップする(図12(b)参照)。しかる後に、移動台車51に敷設された横行ガイド部材61を、車両限界の横幅を超える所定の位置まで、横幅方向の一方の側に引き出して敷設し直すことにより、当該横行ガイド部材61を車両限界の横幅を超える所定の位置まで張り出させる(図12(b)参照)。また、一方の引き出された横行ガイド部材61の横幅方向の他方の端部には、同様の溝形鋼からなる補助横行ガイド部材61aを連接して、移動台車51の上に設置する。重量物である研掃装置10を、敷設し直された横行ガイド部材61及び補助横行ガイド部材61aに沿って、横幅方向Xに移動させる必要があるので、横行ガイド部材61や補助横行ガイド部材61aの端部には、端部ストッパーとして、例えばH形鋼クランプ(図示せず)を取り付けておく。
横行ガイド部材61を、車両限界の横幅を超える所定の位置まで側に引き出して敷設し直すと共に、補助横行ガイド部材61aを連接して設置したら、好ましくは敷設し直された横行ガイド部材61や補助横行ガイド部材61aの上に、研掃装置10をジャッキダウンして、横行ガイド部材61や補助横行ガイド部材61aの収容凹部に横行移動部材60を載置し直す(図12(c)参照)。しかる後に、横行移動部材60の固定を解除することによって、研掃装置10を、張り出した横行ガイド部材61を介して、例えばレバーブロック(登録商標)等を用いて、車両限界の横幅を超える所定の位置まで横幅方向Xに移動させることが可能になる(図12(d)参照)。また研掃装置10を車両限界の横幅を超える所定の位置まで移動させた状態で、昇降フレーム部12,13を所定の高さまで上昇させることにより(図3参照)、乾式研掃機30を移動レール部18に沿って前後左右に移動させながら、車両限界の横幅を超える位置まで研掃装置10を横幅方向Xに移動させた領域を含めて、乾式研掃機30によって天井面53を効率良く研掃することが可能になる。
なお、天井面の研掃箇所において、移動台車51を固定した後に、車両限界の横幅を超える所定の位置まで横行ガイド部材61を横幅方向にXに張り出せて研掃装置10を移動させる方法としては、上述した横行ガイド部材61を引き出して敷設し直す方法の他に、研掃装置10をジャッキアップしたりジャッキダウンしたりしないまま、横行ガイド部材61の横幅方向Xの端部に、当該端部から横幅方向Xに張り出して延長する横行ガイド延長部材(図示せず)を、接合プレート等を介して溶接等により接合したり、ボルト接合等の公知の接合手段を用いることで、着脱可能な状態で横行ガイド部材61の端部に接合したりすることによって、横行ガイド部材61を横幅方向Xに張り出させて、研掃装置10を車両限界の横幅を超える所定の位置まで移動させるようにすることもできる。
本実施形態では、研掃装置10を車両限界の横幅を超える所定の位置まで移動させた状態で、天井面53を研掃するには、例えば図4に示すように、必要に応じて補助移動台車55に積み込まれた、例えば発電機56a、集塵機56b、コンプレッサー56c等の補助機器と、研掃装置10とを、例えばワンタッチ継手やカムロックやコネクター等の接続手段59を用いて接続する。しかる後に、例えば補助移動台車55に設けられた制御盤54と接続させた例えばペンダントスイッチ等によるコントローラ54aを用いて、図1及び図3に示すように、以下のようにして天井面53の研掃作業が行なわれるようになっている。
すなわち、研掃装置10を、車両限界の横幅を超える所定の位置まで移動させた状態で、昇降フレーム部12,13を、上段昇降フレーム部13の前後方向の先端部分及び後端部分に取り付けられた距離センサー19の何れか一方が天井面53と接触したことを検出するまで、昇降機14,15,16によって上昇させる。前後方向Xの先端部分及び後端部分に取り付けられた距離センサー19の何れか一方が天井面53と接触したことを検出するまで、上段昇降フレーム部13を上昇させたら、上段昇降フレーム部13の前部又は後部を、天井面53と接触したことを検出しなかった他方の距離センサー19が、天井面53と接触したことを検出するまで、昇降機14,15,16によって上昇させて、上段昇降フレーム部13が、天井面53の縦断勾配に沿って天井面53と平行又は略平行に配置されるように調整する。本実施形態では、このような、上段昇降フレーム部13の前部又は後部を、天井面53と接触したことを検出しなかった他方の距離センサー19が、天井面53と接触したことを検出するまで上昇させる工程は、上段昇降フレーム部13の前部又は後部を、前部の上段昇降機15や後部の上段昇降機16の何れか一方を伸長させて上昇させることによって、容易に行なうことができる。
上段昇降フレーム部13が、天井面53の縦断勾配に沿って天井面53と平行又は略平行に配置されるように調整したら、昇降フレーム部13の上面部に設けられた移動レール部18によって、乾式研掃機30を前後左右に移動させながら、乾式研掃機30を稼働させることにより、鉄道トンネルの天井面53を、効率良く研掃してゆくことが可能になる。
移動台車51に敷設された横行ガイド部材61を、車両限界の横幅を超える所定の位置まで、横幅方向の一方の側に引き出して、研掃装置10を横幅方向Xの一方の側に移動させた領域を含めて、乾式研掃機30によって天井面53を研掃したら、必要に応じて同様の工程を繰返して、横行ガイド部材61を、車両限界を超える所定の位置まで横幅方向の他方の側に引き出し、研掃装置10を横幅方向Xの他方の側に移動させた領域を含めて、乾式研掃機30によって天井面53を研掃する。これによって、移動台車51を固定した、当該研掃箇所の天井面53の研掃装置10による研掃作業が終了する。当該研掃箇所における天井面53の研掃作業が終了したら、研掃装置10を移動台車51と共に次の研掃箇所に移動させて、同様の作業工程を繰り返すことにより、天井面53の研掃装置10による研掃作業が引き続き繰り返して行われることになる。
したがって、本実施形態のトンネル天井面研掃方法は、研掃装置10及び横行ガイド部材61を、車両限界の横幅を超えない領域に納めると共に、横行移動部材60を固定して移動台車51に積み込んだ状態で、鉄道軌道57に沿って天井面53の研掃箇所まで研掃装置10を移動させる工程と、天井面53の研掃箇所において、移動台車51を固定すると共に、好ましくは研掃装置10をジャッキアップし、しかる後に敷設された横行ガイド部材61を、車両限界の横幅を超える所定の位置まで張り出させて敷設し直す工程と、好ましくは敷設し直された横行ガイド部材61の上に、ジャッキダウンした研掃装置10の横行移動部材60を載置し直し、固定を解除した横行移動部材60によってトンネル天井面研掃装置10を、車両限界の横幅を超える所定の位置まで横幅方向Xに移動させる工程と、研掃装置10を車両限界の横幅を超える所定の位置まで移動させた状態で、乾式研掃機30を移動レール部18に沿って前後左右に移動させながら、天井面53を研掃する工程とを含んで構成されることになる。
またこれによって、本実施形態のトンネル天井面研掃方法及びトンネル天井面研掃装置10によれば、研掃箇所の天井面53の横幅方向Xの幅が、車両限界の横幅よりも広くなっている場合でも、研掃箇所の天井面53の横幅方向Xの両側部分に研掃残り部が生じるのを、効果的に抑制することが可能になって、ボックスカルバート型の鉄道トンネルの天井面53を、乾式研掃機30を備える研掃装置10によって、効率良く研掃してゆくことが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、トンネル天井面研掃装置を支持して横幅方向に移動させる横行移動部材は、チルタンクである必要は必ずしも無く、重量部を支持して移動させることが可能な、その他の種々の横行移動部材であっても良い。横行移動部材の横幅方向の移動を案内する横行ガイド部材は、溝形鋼である必要は必ずしも無く、その他の種々のレール部材であっても良い。