JP7110906B2 - センサホルダ部を有する保護カバー、及び前記保護カバーを備えた軸受装置 - Google Patents

センサホルダ部を有する保護カバー、及び前記保護カバーを備えた軸受装置 Download PDF

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Description

本発明は、軸受の外輪に圧入されて磁気エンコーダを被うカップ状の保護カバーに関わり、さらに詳しくは、前記磁気エンコーダに対向する磁気センサを保持するセンサホルダ部を有する保護カバーに関する。
自動車に広く普及している、車輪のロックを無くして効率良く安全に制動するアンチロックブレーキシステムは、例えば、回転速度検出装置(車輪速センサ)により各車輪の回転速度を検出し、制御装置により加速度及び減速度を演算するとともに車体速度とスリップ率を推定し、その結果に基づいてアクチュエータを駆動してブレーキ液圧の制御を行うものである。
このような回転速度検出装置を自動車のホイール支持用の転がり軸受(ハブベアリング)に備えた軸受装置も広く用いられており、N極とS極を一定間隔で周方向に交互に並べた磁気エンコーダを軸受の軸方向の一端部の内輪に取り付け、保護カバーを軸受の軸方向の一端部の外輪に取り付けて密封するように構成するものがある(例えば、特許文献1ないし3参照)。
特許文献1及び2に記載された発明の保護カバーである軸受キャップ(特許文献1の符号33、特許文献2の符号8b)は、磁気センサを保持するセンサホルダ部を有する繊維強化合成樹脂製のキャップ本体(特許文献1の符号34、特許文献2の符号9b)と、円筒部(特許文献1及び2の符号40)及び外向フランジ部(特許文献1及び2の符号41)からなる鋼板製の金属環(特許文献1の符号35、特許文献2の符号20a)を備える。
磁気センサを保持するためのセンサ取付穴(特許文献1のホルダ挿入孔46、特許文献2の挿入孔15b)は貫通孔ではなく有底であり、アキシャル型の磁気エンコーダと磁気センサとの間に仕切壁(特許文献2の塞ぎ板部19a)を有する密封タイプであるので、軸受キャップの内部への異物の進入を防止できる。
特許文献2の保護カバー(軸受キャップ8b)は、薄肉化に伴うキャップ本体9bの強度が不足するのを防止すると共に、射出成形の際における溶融樹脂の流れを改善するために、樹脂底板部12bの径方向中心部から放射方向に伸長する複数の平板状リブ46,46,…、及び円筒状リブ47を、樹脂底板部12bの軸方向外側面に形成している。
特許文献3に記載された発明における繊維強化合成樹脂製のキャップ本体(保護カバー10)には、特許文献1及び2に記載された発明のような磁気センサを保持するセンサホルダ部は無い。
そして、特許文献3に記載された発明では、単純な断面コ字状の保護カバー(例えば、特許文献3の図23のカバー60)に対して剛性を高めるために、前記キャップ本体の底部にリブ(水平方向に延びる複数のリブ17、格子状のリブ19,20、垂直方向に延びる複数のリブ29等)を一体形成している。
特開2016-142348号公報 特開2016-196954号公報 特許第5438532号公報
特許文献1及び2のようなセンサホルダ部を有する保護カバーの射出成形において、金属環をインサート品として金型内にセットした状態で、金型内に充填された成形材料である溶融した繊維強化合成樹脂材料は、冷却されて固化する際に体積が収縮する現象である成形収縮を生じる。
したがって、特許文献1及び2のような保護カバーの成形品では、前記成形収縮によるひけにより、磁気センサを保持するためのセンサ取付穴のまわりの円盤部(特許文献1の底板部39、特許文献2の樹脂底板部12b)が中凹み変形してしまう。
よって、前記成形品における磁気センサが当接する座面を精度良く形成できないことから、前記座面を削って平坦にする後加工を行う必要があるので、製造コストが増大している。
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、インサート成形後に磁気センサが当接する座面を削って平坦にする後加工を不要にできるセンサホルダ部を有する保護カバーを提供する点にある。
本発明に係るセンサホルダ部を有する保護カバーは、前記課題解決のために、外周面に内輪軌道面が形成された内輪、及び内周面に外輪軌道面が形成された外輪、並びに、前記内輪軌道面及び前記外輪軌道面間を転動する転動体を有する軸受と、
前記軸受の、自動車の車輪側から車体に向かう軸方向に平行な方向である内方側端部に位置して前記内輪に固定された、N極とS極を一定間隔で周方向に交互に並べてなる磁気エンコーダと、
前記磁気エンコーダの磁極に対向して前記磁気エンコーダの回転を検知するための磁気センサと
を含む軸受装置に用いる、
前記軸受の前記内方側端部を密封するように前記外輪に圧入される、カップ状の保護カバーであって、
インサート成形で一体化された繊維強化合成樹脂製本体及び金属製環体からなり、
前記本体は、
円盤部と、
前記磁気センサを挿入するセンサ取付穴が形成された、前記磁気センサを保持するセンサホルダ部と
を含み、
前記円盤部の厚みT(mm)は、2.0mm≦T≦5.0mmであり、
前記円盤部の前記内方側面の径方向中心と外周縁部との間に、
前記径方向中心から径方向へ延びる放射状リブを形成するように、深さRT(mm)が0.4T≦RT≦0.6Tの肉盗み部を設けてなり、
T-RT≧1.0mmであることを特徴とする(請求項1)。
このような構成によれば、インサート成形で一体化された繊維強化合成樹脂製本体及び金属製環体からなるカップ状であり、磁気センサを保持するセンサホルダ部を有する保護カバーにおいて、円盤部の厚みT(mm)は、2.0mm≦T≦5.0mmであり、円盤部の前記内方側面の径方向中心と外周縁部との間に、前記径方向中心から径方向へ延びる放射状リブを形成するように、深さRT(mm)が0.4T≦RT≦0.6Tの肉盗み部を設けてなり、T-RT≧1.0mmである。
繊維強化合成樹脂製本体の円盤部の厚みT(mm)が2.0mm≦T≦5.0mmと薄く、円盤部の前記内方側面にセンサホルダ部を設けた保護カバーにおいて、センサホルダ部が形成された側である前記内方側面に、放射状リブを形成するように、深さRT(mm)が0.4T≦RT≦0.6Tの肉盗み部を設けてなり、T-RT≧1.0mmであることから、円盤部の樹脂体積を削減して全体的な成形収縮を小さくすることができるので、成形収縮によるひけに基づく円盤部の中凹み変形を効果的に抑制できる。
その上、放射状リブの長手方向に樹脂が流れ、ガラス繊維はその方向に配向することから径方向の収縮が小さくなるので、中凹みを軽減する効果がある。
よって、インサート成形品である保護カバーの磁気センサが当接する座面を精度良く形成できることから、前記座面を削って平坦にする後加工を不要にできるので、製造コストを低減できる。
その上、前記肉盗み部を設けることにより、センサ取付穴を形成する内壁の奥側部分の変形(うねり)も抑制できるので、磁気センサをセンサ取付穴に挿入し難くなることがない。
その上さらに、肉盗み部により体積を削減しながら径方向中心から径方向へ延びる放射状リブを形成しているので、前記放射状リブにより強度及び剛性の低下を抑制できる。
円盤部の厚みT(mm)が、2.0mm≦T≦5.0mmであるので、円盤部2に放射状リブRRを形成するだけの厚みの余裕がありながら、全体的な収縮が過多とならない。
また、肉盗み部の深さ(放射状リブの厚み)RT(mm)が、0.4T≦RT≦0.6Tであるので、樹脂の繊維配向性向上による径方向の収縮低減効果、及び円盤部の樹脂体積を削減して全体的な成形収縮を小さくする効果が小さくなることがなく、流路断面積の極端な変化によるヘジテーション(樹脂の滞り)の原因になることもない。
さらに、T-RT≧1.0mmであるので、円盤部に所要の強度を確保することができる。
ここで、前記放射状リブの幅RW(mm)は、0.6mm≦RW≦3.0mmであるのが好ましい実施態様である(請求項2)。
このような構成によれば、放射状リブの幅RW(mm)を、0.6mm≦RW≦3.0mmとすることにより、充填不良を防止しながら、放射状リブの長手方向に沿って強化繊維が配向することによる成形収縮の抑制効果を確実に発現できる。
また、前記円盤部の前記内方側面の径方向中心と外周縁部との間に、
前記径方向中心を中心とする同心円状リブをさらに設けてなるのがより好ましい実施態様である(請求項3)。
このような構成によれば、径方向中心から径方向へ延びる放射状リブに加えて、径方向中心を中心とする同心円状リブを形成しているので、所要の強度及び剛性の確保が容易になる。
さらに、前記同心円状リブの幅CW(mm)は、0.6mm≦CW≦3.0mmであるのが、一層好ましい実施態様である(請求項4)。
このような構成によれば、同心円状リブの幅CW(mm)を、0.6mm≦CW≦3.0mmとすることにより、充填不良を防止しながら、同心円状リブの長手方向(周方向)に沿って強化繊維が配向することによる成形収縮の抑制効果を確実に発現できる。
本発明に係る軸受装置は、前記センサホルダ部を有する保護カバーを備えたものである(請求項5)。
以上のような本発明に係るセンサホルダ部を有する保護カバー、及び前記保護カバーを備えた軸受装置によれば、主に以下に示すような効果を奏する。
(1)繊維強化合成樹脂製本体の円盤部の厚みT(mm)が2.0mm≦T≦5.0mmと薄く、円盤部の前記内方側面にセンサホルダ部を設けた保護カバーにおいて、センサホルダ部が形成された側である前記内方側面に、放射状リブを形成するように、深さRT(mm)が0.4T≦RT≦0.6Tの肉盗み部を設けてなり、T-RT≧1.0mmであることから、円盤部の樹脂体積を削減して全体的な成形収縮を小さくすることができるので、成形収縮によるひけに基づく円盤部の中凹み変形を効果的に抑制できる。
(2)放射状リブの長手方向に樹脂が流れ、ガラス繊維はその方向に配向することから径方向の収縮が小さくなるので、中凹みを軽減する効果がある。
(3)インサート成形品である保護カバーの磁気センサが当接する座面を精度良く形成できることから、前記座面を削って平坦にする後加工を不要にできるので、製造コストを低減できる。
(4)前記肉盗み部を設けることにより、センサ取付穴を形成する内壁の奥側部分の変形(うねり)も抑制できるので、磁気センサをセンサ取付穴に挿入し難くなることがない。
(5)肉盗み部により体積を削減しながら径方向中心から径方向へ延びる放射状リブを形成しているので、前記放射状リブにより強度及び剛性の低下を抑制できる。
本発明の実施の形態に係るセンサホルダ部を有する保護カバーを備えた軸受装置の縦断面図である。 本発明の実施の形態に係るセンサホルダ部を有する保護カバーを内方側から見た斜視図である。 同じく外方側から見た斜視図である。 同じく底面図(内方側から見た図)である。 同じく縦断面図である。 本発明の実施の形態に係るセンサホルダ部を有する保護カバーを成形する射出成形金型を示す、図4の矢視X1-X1断面に相当する射出成形用金型の縦断面図である。 変形例である保護カバーを内方側から見た斜視図である。 同じく底面図(内方側から見た図)である。 比較例1の保護カバーを内方側から見た斜視図である。 同じく外方側から見た斜視図である。 同じく縦断面図である。 比較例2の保護カバーを外方側から見た斜視図である。 同じく縦断面図である。
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。
なお、本明細書において、軸受装置Aの回転軸の方向を「軸方向」、軸方向に直交する方向を「径方向」という。
また、軸受11及び保護カバー1について、保護カバー1を軸受11に装着した状態で、自動車の車体から車輪側に向かう軸方向に平行な方向を「外方」、その反対方向を「内方」という。
<軸受装置>
図1の縦断面図に示すように、本発明の実施の形態に係る軸受装置Aは、外輪13に対して内輪12が回転する軸受11の他に、磁気エンコーダ16、保護カバー1、及び磁気センサ9、並びに軸受11の外方(矢印C1参照)側端部に配置したシール部材15等を備える。
軸受11は、外周面に内輪軌道面12Aが形成された内輪12、及び内周面に外輪軌道面13Aが形成された外輪13、並びに、内輪軌道面12A及び外輪軌道面13A間を転動する転動体14,14,…等を有する。
磁気エンコーダ16は、N極とS極を一定間隔で周方向に交互に並べたものであり、軸受11の内方(矢印C2参照)側端部に位置する支持部材17により内輪12に固定される。
保護カバー1は、カップ状であり、軸受11の内方側端部を密封するように外輪13に取り付けられ、磁気センサ9を保持するセンサホルダ部4を有する。
保護カバー1のセンサホルダ部4に装着された磁気センサ9は、仕切壁5Bを隔てて磁気エンコーダ16に対向し、磁気エンコーダ16の回転を検知する。
保護カバー1により、磁気センサ9は、仕切壁5Bを隔てて磁気エンコーダ16に対向し、センサホルダ部4に厚み方向に貫通する貫通穴がないので、Oリング等のシール部材を組み込む必要がない。
また、保護カバー1により軸受11の軸方向の一端部が密封されるので、磁気エンコーダ16に小石や泥水等が当たらないことから磁気エンコーダ16の破損を防止できる。
さらに、保護カバー1により軸受11の内方側端部が密封されるので、磁気エンコーダ16の内方側のシール部材が不要になるため、摺動抵抗の低減により軸受11の回転トルクを低減できる。
さらにまた、保護カバー1がセンサホルダ部4を備えているので、磁気エンコーダ16と磁気センサ9とのエアギャップ調整作業の煩雑さを解消できる。
<保護カバー>
図1の縦断面図、図2及び図3の斜視図、図4の底面図、並びに図5の縦断面図に示すように、本発明の実施の形態に係る保護カバー1は、インサート成形で一体化された繊維強化合成樹脂製本体1A及び金属製環体1Bからなる。
ここで、本体1Aを成形する繊維強化合成樹脂としては、例えば、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66、ナイロン612等)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又はポリブチレンテレフタレート(PBT)等の合成樹脂に、ガラス繊維を20~70重量%、好ましくは40~60重量%含有したものを用いる。
本体1Aは、円盤部2、円筒部3、及びセンサホルダ部4からなり、磁気エンコーダ16及び磁気センサ9間を仕切る、他の部分よりも薄肉の仕切壁5Bを有し、円盤部2の厚みT(mm)は、2.0mm≦T≦5.0mmである。
センサホルダ部4は、磁気センサ9を挿入するセンサ取付穴5Aが形成されたセンサ保持部5、及び磁気センサ9を取り付けるための取付ボルトBが螺合するナット10を保持するナット保持部6からなる。
また、本体1Aには、円盤部2の内方側面S2の径方向中心Oと外周縁部Eとの間に、径方向中心Oから径方向へ延びる放射状リブRRを形成するように、肉盗み部21,21,…を設けており、肉盗み部21の深さ(放射状リブRRの厚み)RT(mm)は、0.4T≦RT≦0.6Tであり、T-RT≧1.0mmとする。
ここで、放射状リブRRの幅RW(mm)は、0.6mm≦RW≦3.0mmとする。
RW(mm)<0.6mmであると、樹脂の流動性が悪く充填不良となる可能性があり、RW(mm)>3.0mmであると、リブ部の繊維の配向が乱れてしまい、放射状リブRRの長手方向に沿って強化繊維が配向することにより成形収縮を抑制するという効果が得られない。
尚、放射状リブRRの隣り合うリブ間の角度は同じでなくてもよい。すなわち放射状リブRRは周方向等分に配したリブでなくてもよい。
環体1Bは、第1円筒部7、及び第1円筒部7の内方側端部から径方向外方へ延出する外向きフランジ部8からなる。
ここで、円盤部2の厚みT(mm)<2.0mmであると、円盤部2に放射状リブRRを形成するだけの厚みの余裕がなくなり、T(mm)>5.0mmであると、全体的な収縮が過多となる。
また、肉盗み部21の深さ(放射状リブRRの厚み)RT(mm)<0.4Tであると、樹脂の繊維配向性向上による径方向の収縮低減効果が小さくなるとともに、円盤部2の樹脂体積を削減して全体的な成形収縮を小さくする効果が小さくなり、RT(mm)>0.6Tであると、流路断面積の極端な変化により、ヘジテーション(樹脂の滞り)の原因になる。
さらに、T-RT<1.0mmであると、円盤部2に所要の強度を確保することができず、落石試験で破壊するおそれがある。
繊維強化合成樹脂製本体1Aの円盤部2の厚みT(mm)が2.0mm≦T≦5.0mmと薄く、円盤部2の内方側面S2にセンサホルダ部4を設けた保護カバー1において、センサホルダ部4が形成された側である内方側面S2に、放射状リブRRを形成するように、深さRT(mm)が0.4T≦RT≦0.6Tの肉盗み部を設けてなり、T-RT≧1.0mmであることから、円盤部2の樹脂体積を削減して全体的な成形収縮を小さくすることができるので、成形収縮によるひけに基づく円盤部2の中凹み変形を効果的に抑制できる。
よって、インサート成形品である保護カバー1の磁気センサ9が当接する座面を精度良く形成できることから、前記座面を削って平坦にする後加工を不要にできるので、製造コストを低減できる。
その上、肉盗み部21,21,…を設けることにより、センサ取付穴5Aを形成する内壁の奥側部分の変形(うねり)も抑制できるので、磁気センサ9をセンサ取付穴5Aに挿入し難くなることがない。
その上さらに、肉盗み部21,21,…により体積を削減しながら径方向中心Oから径方向へ延びる放射状リブRRを形成しているので、放射状リブRRにより強度及び剛性の低下を抑制できる。
<インサート成形>
次に、図2ないし図5に示す保護カバー1のインサート成形について、図4の矢視X1-X1断面に相当する射出成形用金型の縦断面図である図6を参照して説明する。
先ず、図6の縦断面図に示すように、インサート品であるナット10を固定型18の支持軸20にセットし、インサート品である金属製環体1Bを可動型19にセットした後、射出成形機に取り付けられた固定型18及び可動型19を型締めする。
次に、溶融した繊維強化合成樹脂材料を図示しないゲートから固定型18及び可動型19間のキャビティ内に充填する。
なお、ゲートの配置は、プラスチック射出成形用シミュレーションツールなどを用いて、仕切壁5Bへの充填性を考慮して適宜設定する。
次に、前記繊維強化合成樹脂材料を冷却・固化させた後、可動型19を開いてインサート成形品を取り出す。
以上のようなインサート成形を経て製造されたインサート成形品である保護カバー1において、ナット10の周溝10Aに合成樹脂が入り込んでいるので、ナット10の抜け止めがされる。
また、金属製環体1Bの外方(矢印C1参照)側端部に円筒部3が回り込んでいるので、金属製環体1Bと繊維強化合成樹脂製本体1Aは機械的に結合する。
<変形例>
図7の斜視図、及び図8の底面図に示すように、円盤部2の内方側面S2の径方向中心Oと外周縁部Eとの間に、径方向中心Oを中心とする同心円状リブCRをさらに設けてもよく、同心円状リブCRの幅CW(mm)は、0.6mm≦CW≦3.0mmとする。
同心円状リブCRは、主に強度を補強する効果がある。
ここで、CW(mm)<0.6mmであると、樹脂の流動性が悪く充填不良となる可能性があり、CW(mm)>3.0mmであると、リブ部の繊維の配向が乱れてしまい、同心円状リブの長手方向(周方向)に沿って強化繊維が配向することにより成形収縮を抑制するという効果が得られない。
同心円状リブCRを設けることにより、図5に示す肉盗み部21は、図8に示す肉盗み21A,21B,21Cのように分割される。
径方向中心Oから径方向へ延びる放射状リブRRに加えて、径方向中心Oを中心とする同心円状リブCRを設けることにより、所要の強度及び剛性の確保が容易になる。
<射出成形後の反り変形解析>
プラスチック射出成形用シミュレーションツールであるSimulation Moldflowを使用して射出成形後の反り変形解析を行った。
(解析条件及び評価項目)
繊維強化合成樹脂の材料データをPA66にガラス繊維を50重量%添加したもの、金属製環体1Bの材料データをSPCC、ナット10の材料データを真鍮とした。
成形条件を、樹脂温度を290℃、金型温度を100℃、保圧を80MPaとし、保護カバーにおけるナット10の傾斜を評価項目とした。
(実施例及び比較例)
以下の実施例並びに比較例1及び2の評価を行った。
(実施例)
図2及び図3の斜視図、図4の底面図、並びに図5の縦断面図に示す、繊維強化合成樹脂製本体1Aの円盤部2の内方側面S2に肉盗み部21,21,…及び放射状リブRRを有する保護カバー1において、図4の内方側面S2の放射状リブRRの幅RWを2mm、図5の円盤部2の厚みTを3mm、図5の内方側面S2の肉盗み部21の深さ(放射状リブRRの厚み)RTを1.5mmとしたものを実施例とした。
(比較例1)
図9及び図10の斜視図、並びに図11の縦断面図に示す、繊維強化合成樹脂製本体1A’の円盤部2’の内方側面S2及び外方側面S1の両面ともに肉盗み部が無い保護カバー1’において、図12の円盤部2の厚みTを3mmとしたものを比較例1とした。
(比較例2)
図12の斜視図、及び図13の縦断面図に示す、繊維強化合成樹脂製本体1A”の円盤部2”の外方側面S1に肉盗み部22,22,…及び放射状リブRRを有する保護カバー1”において、図12の外方側面S1の放射状リブRRの幅RWを2mm、図13の円盤部2の厚みTを3mm、図13の外方側面S1の肉盗み部22の深さ(放射状リブRRの厚み)RTを1.5mmとしたものを比較例2とした。
(解析結果及び考察)
ナット10の傾斜は、円盤部2の内方側面S2及び外方側面S1の両面ともに肉盗み部が無い比較例1(図11)の保護カバー1’を100として、円盤部2の外方側面S1に肉盗み部を有する比較例2(図13)の保護カバー1”は100であり、円盤部2の内方側面S2に肉盗み部を有する実施例(図5)の保護カバー1は71であった。
円盤部2の厚みTが薄く(2.0mm≦T≦5.0mm)、円盤部2の内方側面S2にセンサホルダ部4を設けた保護カバーにおいては、円盤部2の外方側面S1に肉盗み部を設けてもナット10の傾斜を低減する効果は無く、円盤部2の内方側面S2に肉盗み部を設けることにより、ナット10の傾斜を大幅に低減できることが分かる。
その理由は、繊維強化合成樹脂製本体1Aの円盤部2のセンサホルダ部4が形成された側である内方側面S2に、所要の深さの肉盗み部21,21,…を設けることにより、円盤部2の樹脂体積を削減して全体的な成形収縮を小さくすることができるとともに、肉盗み部21,21,…を設けることにより形成される放射状リブRRの長手方向に樹脂が流れ、ガラス繊維はその方向に配向することから径方向の収縮が小さくなるためであると考えられる。
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
1,1’,1” 保護カバー(インサート成形品)
1A,1A’,1A” 繊維強化合成樹脂製本体
1B 金属製環体(インサート品)
2,2’,2” 円盤部
3 円筒部
4 センサホルダ部
5 センサ保持部
5A センサ取付穴
5B 仕切壁
6 ナット保持部
7 円筒部
8 外向きフランジ部
9 磁気センサ
10 ナット(インサート品)
10A 周溝
11 軸受
12 内輪
12A 内輪軌道面
13 外輪
13A 外輪軌道
14 転動体
15 シール部材
16 磁気エンコーダ
17 支持部材
18 固定型
19 可動型
20 支持軸
21,21A,21B,21C,22 肉盗み部
A 軸受装置
B 取付ボルト
C1 外方
C2 内方
CR 同心円状リブ
CW 同心円状リブの幅
E 外周縁
O 径方向中心
P 溶融した繊維強化樹脂材料
RR 放射状リブ
RT リブの厚み(肉盗み部の深さ)
RW 放射状リブの幅
S1 外方側面
S2 内方側面
T 円盤部の厚み

Claims (5)

  1. 外周面に内輪軌道面が形成された内輪、及び内周面に外輪軌道面が形成された外輪、並びに、前記内輪軌道面及び前記外輪軌道面間を転動する転動体を有する軸受と、
    前記軸受の、自動車の車輪側から車体に向かう軸方向に平行な方向である内方側端部に位置して前記内輪に固定された、N極とS極を一定間隔で周方向に交互に並べてなる磁気エンコーダと、
    前記磁気エンコーダの磁極に対向して前記磁気エンコーダの回転を検知するための磁気センサと
    を含む軸受装置に用いる、
    前記軸受の前記内方側端部を密封するように前記外輪に圧入される、カップ状の保護カバーであって、
    インサート成形で一体化された繊維強化合成樹脂製本体及び金属製環体からなり、
    前記本体は、
    円盤部と、
    前記磁気センサを挿入するセンサ取付穴が形成された、前記磁気センサを保持するセンサホルダ部と
    を含み、
    前記円盤部の厚みT(mm)は、2.0mm≦T≦5.0mmであり、
    前記円盤部の前記内方側面の径方向中心と外周縁部との間に、
    前記径方向中心から径方向へ延びる放射状リブを形成するように、深さRT(mm)が0.4T≦RT≦0.6Tの肉盗み部を設けてなり、
    T-RT≧1.0mmであることを特徴とする、
    センサホルダ部を有する保護カバー。
  2. 前記放射状リブの幅RW(mm)は、0.6mm≦RW≦3.0mmである、
    請求項1記載のセンサホルダ部を有する保護カバー。
  3. 前記円盤部の前記内方側面の径方向中心と外周縁部との間に、
    前記径方向中心を中心とする同心円状リブをさらに設けてなる、
    請求項1又は2記載のセンサホルダ部を有する保護カバー。
  4. 前記同心円状リブの幅CW(mm)は、0.6mm≦CW≦3.0mmである、
    請求項3記載のセンサホルダ部を有する保護カバー。
  5. 請求項1~4の何れか1項に記載のセンサホルダ部を有する保護カバーを備えた軸受装置。
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